(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記音道に沿う距離と音道断面積との関係を示す音道プロファイルのカーブのうちで、前記第1ホーン部、前記第2ホーン部、及び前記第3ホーン部に対応する部分のカーブは、設定カーブに一致し、
前記音道プロファイルのカーブのうちで、前記第4ホーン部に対応する部分のカーブは、前記設定カーブを含むように構成され、
前記設定カーブは、エクスポネンシャルカーブ、ハイパボリックカーブ、またはこれらに近似するカーブである
請求項1または請求項2に記載のホーンスピーカー。
音波を生成するドライバユニットと、前記音波を増幅しかつホーン開口部から伝搬方向に音波を出力するように構成された折り返し音道を含むホーンとを備えるホーンスピーカーにおいて、
前記ホーンの前記折り返し音道は、
前記ドライバユニットから前記伝搬方向または前記伝搬方向とは反対の反伝搬方向に出力された前記音波を前記反伝搬方向に誘導する第1非屈曲区間と、
前記第1非屈曲区間の下流端に接続された第1屈曲区間と、
前記第1屈曲区間の下流端に接続され、前記音波を前記伝搬方向に誘導する第2非屈曲区間と、
前記第2非屈曲区間の下流端に接続された第2屈曲区間と、
前記第2屈曲区間の下流端に接続され、前記音波を前記反伝搬方向に誘導する第3非屈曲区間と、
前記第3非屈曲区間の下流端に接続された第3屈曲区間と、
前記第3屈曲区間の下流端に接続され、前記音波を前記伝搬方向に誘導する第4非屈曲区間であって、前記ホーン開口部として機能する下流端を含む前記第4非屈曲区間とを含み、
前記ホーンは、前記第2非屈曲区間及び前記第3非屈曲区間の各々が前記第1非屈曲区間よりも短く、前記第2屈曲区間は前記ホーン開口部から制御された距離だけ前記反伝搬方向に離れ、前記第2屈曲区間と前記ホーン開口部との間の空間が音道の空間の一部となるように構成された、エクスポネンシャルホーンまたはハイパボリックホーンである、ホーンスピーカー。
複数のホーンスピーカーが一定間隔で一列または複数列に配列されたホーンアレイスピーカーにおいて、各ホーンスピーカーが請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のホーンスピーカーである、ホーンアレイスピーカー。
【発明の概要】
【0004】
ところで、宣伝や災害避難勧告等の用途にホーンスピーカーが車両に取り付けられる場合がある。このような車載用のホーンスピーカーには車両の走行による風圧が加わるため、この種のホーンスピーカーに更なる小型化が要求される。電柱等の屋外設備に取り付けられる災害報知用のホーンスピーカーには耐風性が要求される。このため、この種のホーンスピーカーにも更なる小型化が要求される。このような小型化の要求に対して、例えば、特許文献2に示されるホーンスピーカーのように音道の折り返し回数を増やすことによりホーンスピーカーの更なる小型化を図ることが可能である。しかし、音道の折り返し回数の増加は、ホーン開口部の前面投影面積の増大を伴うため、正面から受ける風に対するホーンスピーカーの耐風性が低下する。
【0005】
本発明の目的は、ホーン開口部の前面投影面積が小さいホーンスピーカー及びこのホーンスピーカーを備えるホーンアレイスピーカーを提供することにある。
【0006】
本発明の一側面に従うホーンスピーカーは、音波を生成するドライバユニットと、前記音波を増幅し、伝搬方向に音波を出力するホーンとを備える。前記ホーンは、前記音波の伝搬方向とは反対方向に前記音波を誘導する第1ホーン部と、第1折返し部を介して前記第1ホーン部に接続されて、前記伝搬方向に沿う方向に前記音波を誘導する第2ホーン部と、第2折返し部を介して前記第2ホーン部に接続されて、前記伝搬方向とは反対方向に前記音波を誘導する第3ホーン部と、第3折返し部を介して前記第3ホーン部に接続されて、前記伝搬方向に沿う方向に前記音波を誘導し、末端部であるホーン開口部から前記音波を放出する第4ホーン部とを有する。前記第1ホーン部、第2ホーン部、第3ホーン部及び第4ホーン部により構成される音道が、音波の進行方向に沿って断面積が漸次拡大するように構成される。更に、前記ホーン開口部と前記第2折返し部との距離が、前記ホーン開口部と前記第1ホーン部の閉端部との距離よりも長くなるように構成される。
そして、前記第2折返し部に対して前記ホーン開口部側の空間は、音道の空間の一部を構成する。
【0007】
この構成によれば、第2ホーン部と第3ホーン部との間を接続する第2折返し部が、第1ホーン部の閉端部よりも、ホーン開口部から遠い位置に配置される。これにより、第4ホーン部により構成される音道は内方向と外方向との両方向に拡大するようになる。このため、第4ホーン部において音道が外方向だけに拡大して所定のホーン開口面積を確保したホーンスピーカーに比べて、ホーン開口部の前面投影面積を小さくすることができる。
【0008】
上記ホーンスピーカーにおいて、前記ドライバユニットは、前記第1ホーン部の前記閉端部内に配置され、前記ドライバユニットから出力される前記音波が前記閉端部側から前記伝搬方向とは反対方向に誘導されることが好ましい。この構成では、第1ホーン部内にドライバユニットが配置される。これにより、ホーンスピーカーを小型化することができる。
【0009】
上記ホーンスピーカーにおいて、前記音道に沿う距離と音道断面積との関係を示す音道プロファイルのカーブのうちで、前記第1ホーン部、前記第2ホーン部、及び前記第3ホーン部に対応する部分のカーブは、設定カーブに一致し、前記音道プロファイルのカーブのうちで、前記第4ホーン部に対応する部分のカーブは、前記設定カーブを含むように構成されることが好ましい。ここで、前記設定カーブは、エクスポネンシャルカーブ、ハイパボリックカーブ、またはこれらに近似するカーブであり得る。
【0010】
この構成によれば、音道プロファイルのカーブの大部分がエクスポネンシャルカーブ、ハイパボリックカーブ、またはこれらに近似するカーブに一致する。このため、音波が効率的に増幅される。また、音道プロファイルのカーブのうちの第4ホーン部に対応する部分のカーブは、設定カーブを含むような態様に構成される。音道の全長にわたって、エクスポネンシャルカーブ、ハイパボリックカーブ、またはこれらに近似するカーブに基づいて設定される断面積が確保される。このため、第4ホーン部に対応する部分のカーブが設定カーブを含まないように構成されることにより、この部分の音道が設定カーブにより構成される音道よりも狭まる場合に比べて、周波数特性が向上する。
【0011】
上記ホーンスピーカーにおいて、前記ホーン開口部が矩形の外形を有す
る。さらに、前記ホーン開口部の角部を構成する2面の間の稜線と前記伝搬方向に沿う線とのなす角が45度以上に設定されていることが好ましい。これにより、ホーン開口部における音響インピーダンスの整合性が向上する。
【0012】
好ましい例では、ホーンスピーカーは、音波を生成するドライバユニットと、前記音波を増幅しかつホーン開口部から伝搬方向に音波を出力するように構成された折り返し音道を含むホーンとを備え、前記ホーンの前記折り返し音道は、前記ドライバユニットから前記伝搬方向または前記伝搬方向とは反対の反伝搬方向に出力された前記音波を前記反伝搬方向に誘導する第1非屈曲区間と、前記第1非屈曲区間の下流端に接続された第1屈曲区間と、前記第1屈曲区間の下流端に接続され、前記音波を前記伝搬方向に誘導する第2非屈曲区間と、前記第2非屈曲区間の下流端に接続された第2屈曲区間と、前記第2屈曲区間の下流端に接続され、前記音波を前記反伝搬方向に誘導する第3非屈曲区間と、前記第3非屈曲区間の下流端に接続された第3屈曲区間と、前記第3屈曲区間の下流端に接続され、前記音波を前記伝搬方向に誘導する第4非屈曲区間であって、前記ホーン開口部として機能する下流端を含む前記第4非屈曲区間とを含み、前記ホーンは、前記第2非屈曲区間及び前記第3非屈曲区間の各々が前記第1非屈曲区間よりも短く、前記第2屈曲区間は前記ホーン開口部から制御された距離だけ前記反伝搬方向に離
れ、前記第2屈曲区間と前記ホーン開口部との間の空間が音道の空間の一部となるように構成された、エクスポネンシャルホーンまたはハイパボリックホーンである。この構成によれば、所望の出力音圧と、ホーン開口部の前面投影面積の低減とを両立できるホーンスピーカーが得られ
る。
【0013】
本発明の別の側面に従うホーンアレイスピーカーは、一定間隔で一列または複数列に配列された複数のホーンスピーカーを備え、各ホーンスピーカーが上記一側面に従うホーンスピーカーである。
【0014】
上記ホーンスピーカーは、ホーン開口部の前面投影面積が小さい。このため、上記構成によれば、ホーンアレイスピーカーの正面面積を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ホーン開口部の前面投影面積が小さいホーンスピーカーが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
図1〜
図8を参照して第1実施形態に係るホーンスピーカー1について説明する。
【0018】
図1に示すように、ホーンスピーカー1は、音波を生成するドライバユニット10と、ドライバユニット10から出力される音波を増幅するホーン20とを備える。
【0019】
ドライバユニット10は、振動板と、コイルと、永久磁石とにより構成されている。コイルは音声信号によって励磁され、振動板を振動させ音波を生成する。
図1の例では、ドライバユニット10は、前壁部11に設けられた出力開口部12から音波を出力する。
【0020】
図2に示すように、ホーン20は、音波の入力端であるスロート20aと、音波の出力端であるホーン開口部20bとを有する。スロート20aからホーン開口部20bまで連通する通路は、折り返し音道を構成する。折り返し音道により、ホーン20はコンパクトに構成されている。
【0021】
図示した例では、ホーン20は中心線Cを有しており、スロート20aの中心とホーン開口部20bの中心とは中心線C上に整列されている。本明細書において、ホーン20から外方に向かって放出される音波の進行方向(中心線Cに沿った進行方向)を「伝搬方向Da」と呼ぶことがある。また、ホーン20はホーン開口部20bとは反対側に基端部20cを有する。
【0022】
図1及び
図2を参照して、ホーン20の構成について説明する。
【0023】
ホーン20は、第1ホーン部21と、第1折返し部25を介して第1ホーン部21に接続される第2ホーン部22と、第2折返し部26を介して第2ホーン部22に接続される第3ホーン部23と、第3折返し部27を介して第3ホーン部23に接続される第4ホーン部24とを備える。
【0024】
第1ホーン部21の内部において音道が折返されるように、中心線Cに沿って伝搬方向Daに延びる内部ホーン21Aが配置される。
【0025】
内部ホーン21Aは、後述する円筒状の第1部材31によって構成される。内部ホーン21Aは伝搬方向Daに開口する外方開口端21Axと、ドライバユニット10に接続された内方開口端21Azとを含む。内部ホーン21Aにおける音道の断面は円形または楕円形であり、この音道の断面積は、音波の進行方向に沿って漸次拡大する。内部ホーン21Aは、伝搬方向Daに音波を誘導する。
【0026】
第1ホーン部21は、内部ホーン21Aを囲い、中心線Cに沿って延びるカップ状であり得る。第1ホーン部21は、閉端部21aと、閉端部21aの周縁から延長して内部ホーン21Aの側面に対面しかつ内部ホーン21Aから離間した外周壁21bとを有する。閉端部21aは、内部ホーン21Aの外方開口端21Axに対向する位置に配置される。
【0027】
第1ホーン部21と内部ホーン21Aとにより構成される音道は、リング状の断面を有し、この音道の断面積は、音波の進行方向に沿って漸次拡大する。第1ホーン部21は、伝搬方向Daとは反対方向に音波を誘導する。
【0028】
第1ホーン部21の閉端部21aは、ホーン開口部20bと同じ位置に配置されることが好ましい。
【0029】
この構成により、閉端部21aが伝搬方向Daとは反対方向にホーン開口部20bから離れたところに配置されるホーンスピーカーに比べて、音道が長くなる。また、ドライバユニット10から出力される音波が最初に入力されるホーンである内部ホーン21Aが長くなることにより、ホーンスピーカー1の能率(特に、低周波帯域)が高くなる。
【0030】
第2ホーン部22は、伝搬方向Daに沿う方向に音波を誘導する。
【0031】
例えば、第2ホーン部22は、内周壁22aと外周壁22bとを有する。
【0032】
第2ホーン部22の内周壁22aは、第1ホーン部21の外周壁21bに対面しかつ外周壁21bから離間している。第2ホーン部22の外周壁22bは、第2ホーン部22の内周壁22aに対面しかつ内周壁22aから離間している。
【0033】
内周壁22aと外周壁22bとの間に構成される音道は、リング形状の断面を有し、この音道の断面積は、音波の進行方向に沿って漸次拡大する。
【0034】
第2ホーン部22の一端は、第1折返し部25を介して第1ホーン部21に接続されている。図示した例では、第1折返し部25は、ドライバユニット10の前壁部11により構成されている。
【0035】
第3ホーン部23は、伝搬方向Daとは反対方向に音波を誘導する。
【0036】
例えば、第3ホーン部23は、内周壁23aと外周壁23bとを有する。
【0037】
第3ホーン部23の内周壁23aは、第2ホーン部22の外周壁22bに対面しかつ外周壁22bから離間している。第3ホーン部23の外周壁23bは、第3ホーン部23の内周壁23aに対面しかつ内周壁23aから離間している。
【0038】
内周壁23aと外周壁23bとの間に構成される音道は、リング形状の断面を有し、この音道の断面積は、音波の進行方向に沿って漸次拡大する。
【0039】
第3ホーン部23の一端は、第2折返し部26を介して第2ホーン部22に接続されている。
【0040】
第2折返し部26は、ホーン開口部20bと第2折返し部26との距離d2が、ホーン開口部20bと第1ホーン部21の閉端部21aとの距離d1よりも長くなるように、配置される。すなわち、第2折返し部26は、ホーン開口部20bから制御された距離d2(例えば、予め設定された距離d2)だけ伝搬方向Daに離れている。閉端部21aは伝搬方向Daにおいてホーン開口部20bと同じ位置であり得る。
【0041】
第4ホーン部24は、伝搬方向Daに沿う方向に音波を誘導する。
【0042】
例えば、第4ホーン部24は第3ホーン部23の外周壁23bに対面しかつ外周壁23bから離間したフレアー側壁であり得る。第4ホーン部24は、第3折返し部27を介して第3ホーン部23に接続される。第4ホーン部24における音道の断面積は、音波の進行方向に沿って漸次拡大する。
【0043】
第4ホーン部24のまたは音道の末端部であるホーン開口部20bは矩形に構成されている。
【0044】
このホーン開口部20bの各角部20bxを構成する2面間の稜線24aは、曲線又は直線であり得るが、その稜線24aは、ホーン開口部20bにおいて中心線Cから外向きに角度θをもって傾斜又は湾曲している。その角度θは45度以上であることが好ましい。
【0045】
次に、ホーン20を構成する部品について説明する。
【0046】
ホーン20は、第1部材31と、第2部材32と、第3部材33とにより構成されている。
【0047】
図3に示すように、第1部材31は、基端から先端に向かって内径が大きくなる円筒である。第1部材31の基端部側(すなわち、ホーン20の基端部20c側)は、ドライバユニット10の出力開口部12に係合する係合部21Ayとして機能する。第1部材31は内部ホーン21Aを構成する。
【0048】
図4に示すように、第2部材32は、ホーン20のうちの、正面側の音壁(ホーン開口部20b側からみて正面側に配置されて、音道を構成するための壁)を構成する。図示した例では、第2部材32は、第1ホーン部21と、第2ホーン部22の内周壁22aと、第2折返し部26と、第3ホーン部23の外周壁23bとを含む。
【0049】
図示した例では、第2部材32には、この第2部材32を第3部材33に固定するための締結用貫通孔32aが設けられている。例えば、
図4に示すように、締結用貫通孔32aは、第2折返し部26を構成する部分に設けられている。
【0050】
図5に示すように、第3部材33は、ホーン20のうちの、裏面側の音壁(ホーン開口部20b側からみて裏面側に配置されて、音道を構成するための壁)を構成する。例えば、第3部材33は、第2ホーン部22の外周壁22bと、第3ホーン部23の内周壁23aと、第3折返し部27と、第4ホーン部24とを構成する。
【0051】
また、第3部材33には、第2部材32を第3部材33に固定するための締結用孔33aが設けられている。例えば、
図5に示すように、締結用孔33aは、第2ホーン部22の外周壁22bと第3ホーン部23の内周壁23aとの間の接続部分に設けられている。この接続部分の周方向において音道を確保するため、この締結用孔33aの部分だけが突出し、締結用孔33aの部分だけが第2部材32に当接するように構成されている。第2部材32は、ねじ等の締結部材が締結用貫通孔32aを挿通して締結用孔33aに係合することで、第3部材33に固定される。
【0052】
図6及び
図7を参照して、ホーン20の構造について説明する。
【0053】
ホーン20の音道は、起点(内部ホーン21Aの内方開口端21Az)からの距離(以下、「音道の距離」)に対して音道の断面積(音波の進行方向に対して垂直な面における音道の断面積。)が漸次大きくなるように、構成される。例えば、音道の距離と音道断面積との関係を示す音道プロファイルのカーブが、予め設定された漸次増大曲線(以下、「設定カーブ」という。)に沿うように構成される。例えば、設定カーブは、エクスポネンシャルカーブ若しくはこれに近似したカーブ、またはハイパーポリックカーブ若しくはこれに近似したカーブであり得る。エクスポネンシャルカーブやハイパーポリックカーブによれば、音波の増幅効果が高くなるためである。
【0054】
また、エクスポネンシャルカーブやハイパーポリックカーブの係数及び定数は、スロート20aの開口面積、フレアーコンスタント等に基づいて設定される。開口面積とは、音道の経路に沿う方向に垂直な面における、音道の断面積を示す。
【0055】
例えば、エクスポネンシャルカーブは、「S=Sa×EXP(k×r),S:音道の断面積,r:音道の起点からの距離,k:フレアーコンスタント,Sa:スロート20aの断面積」のように設定される。フレアーコンスタント「k」は、「4・π・fc/c,(fc:カットオフ周波数,c:音速)」を示す。
【0056】
ところで、音道の断面構造(すなわち設定カーブ)が同じに設定された複数のホーンスピーカーであっても、音道の折り返し方によって、ホーンスピーカーの構造及び周波数特性は異なる。以下、音道の折り返し方の違いによる、ホーンスピーカー1の構造や周波数特性の違いについて説明する。
【0057】
図6は、エクスポネンシャルホーンについて、その音道の起点からの距離と音道断面積との関係を示す音道プロファイルを示す。縦軸は音道の断面積を示し、横軸は音道に沿う距離(音道の起点からの距離)を示す。この例では、音道は、音道の起点における音道断面積(A)、ホーン開口部20bにおける音道断面積(ホーン開口面積)(B)、及び、全長(L)を有するように設定されている。
【0058】
図7(a)は、
図6に示した音道プロファイルを有するホーンを所定の折り畳み方で折り畳んだ第1参考例のホーンスピーカーの折畳構造を示す。縦軸は音道の断面積を示し、横軸は音道に沿う距離(音道の起点からの距離)を示す。第1参考例のホーンスピーカー100は、5等分された音道部分と、4か所の折り返し部とを含む音道構造を有する。
【0059】
第1参考例によれば、ホーン高さHは、3等分された音道部分と2か所の折り返し部とを含む従来の2つ折りのホーンスピーカーのものに比べ低減される。
【0060】
しかし、ホーン開口部120bの前面投影面積(frontal projected area)は増大する。以下、この点について説明する。
【0061】
第1参考例のホーンスピーカー100では、第1ホーン121の閉端部121aと第2折返し部126とが中心線C(伝搬方向Da)に沿う方向においてホーン開口部120bと同じ位置に、配置されている。この構造において、ホーン開口面積(B)を確保するためには、
図7(a)に示すように、ホーン開口部120bの前面投影面積を、ホーン開口面積(B(すなわちB/2×2))と、閉端部121aの前面投影面積及び第2折返し部126の前面投影面積の和(BX)との和(BX+B)に設定する必要がある。この場合、従来の2つ折りのホーンスピーカーに比べて、第2折返し部126の前面投影面積の分だけホーン開口部120bの前面投影面積(BX+B)は大きくなる。このようなことから、ホーンスピーカー100が正面から受ける風力は、従来の2つ折りのホーンスピーカーに比べて大きくなる。一方、この点を考慮し、ホーン開口部120bの前面投影面積のみを小さくする(
図7(a)の2点鎖線参照。)と、ホーン開口部120bにおける音道断面積が当初設定したホーン開口面積(B)よりも小さくなるため、周波数特性が低下するといった問題が生じる。
【0062】
図7(b)に、第1実施形態に係るホーンスピーカー1について、その音道の折畳構造を示す。
【0063】
このホーンスピーカー1では、ホーン開口部20bと第2折返し部26との距離d2が、ホーン開口部20bと第1ホーン部21の閉端部21aとの距離d1よりも長くなるように構成されている。すなわち、第2折返し部26は、中心線Cに沿う方向において、閉端部21aよりもホーン開口部20bから遠い位置に配置される。
【0064】
このような構成の場合、ホーン開口部20bの前面投影面積(SE)は、ホーン開口面積(B)と、閉端部21aの前面投影面積(BY)との和になる(
図7(b)参照)。すなわち、第4ホーン部24における音道は、外方向だけでなく内方向にも拡大する。このため、このホーンスピーカー1は、第1参考例のホーンスピーカー100に比べて、ホーン開口部20bの前面投影面積が小さくなる。従って、この構成によれば、第1参考例のホーンスピーカー100に比べて、ホーンスピーカー1が正面から受ける風力が小さくなる。
【0065】
また、第1実施形態のホーンスピーカー1は、第1参考例のホーンスピーカー100においてホーン開口部120bの前面投影面積を第1実施形態のホーンスピーカー1のホーン開口部20bの前面投影面積(SE)と等しくしたもの(以下、「第2参考例のホーンスピーカー」という。
図7(a)の2点鎖線参照。)に比べて、周波数特性に優れる。これは、第1実施形態のホーンスピーカー1では、ホーン開口面積が、十分に確保されているためである。
【0066】
図8に、第1実施形態のホーンスピーカー1の周波数特性グラフ(実線で示したグラフ)と、第2参考例のホーンスピーカーの周波数特性グラフ(破線で示したグラフ)とを示す。第1実施形態のホーンスピーカー1の周波数特性を測定する際の測定条件(信号入力波形及び強度、測定装置、ホーンスピーカー1と測定装置との間の距離等)は、第2参考例のホーンスピーカーの周波数特性を測定する際の測定条件と同じである。
【0067】
図8に示されるように、低周波帯域(700Hz〜1200Hz)において、第1実施形態のホーンスピーカー1は第2参考例のホーンスピーカーに比べて音圧レベルが高い。高周波帯域(1200Hz〜20000Hz)においては、第1実施形態のホーンスピーカー1の音圧レベルが第2参考例のホーンスピーカーの音圧レベルよりも低くなるところがあるが、ピーク周波数は一致しており全体としては略等しい音圧特性を有する。
【0068】
図7(b)に示す第1実施形態に係るホーンスピーカー1においては、音道プロファイルのカーブは、第4ホーン部24における第2折返し部26の部分で非連続的に変化するため、次のように構成することが好ましい。
【0069】
すなわち、音道プロファイルのカーブのうちで、第1ホーン部21、第2ホーン部22、及び第3ホーン部23に対応する部分のカーブは、設定カーブに一致するように構成される。音道プロファイルのカーブのうちで、第4ホーン部24に対応する部分のカーブ(
図7(b)に示す曲線CS)は、設定カーブ(
図7(b)の曲線CE)を含む(包含する)ように構成される。
【0070】
以上に説明したように、第1実施形態に係るホーンスピーカー1は次の効果を奏する。
【0071】
(1)第1実施形態では、ホーン開口部20bと第2折返し部26との距離d2が、ホーン開口部20bと第1ホーン部21の閉端部21aとの距離d1よりも長い。すなわち、第2折返し部26が、第1ホーン部21の閉端部21aよりも、ホーン開口部20bから遠い位置に配置される。
【0072】
これにより、第4ホーン部24により構成される音道はホーンスピーカー1の内方向と外方向との両方向に拡大するようになる。このため、第4ホーン部24において音道が外方向だけに拡大することによって所定のホーンの開口面積を確保した第1参考例のホーンスピーカー100に比べて、ホーン開口部20bの前面投影面積を小さくすることができる。
【0073】
(2)第1実施形態では、ホーンスピーカー1は、第1ホーン部21の内部に配置される内部ホーン21Aを更に備える。このため、音道が長くなる。音道が長くなる程、カットオフ周波数を下げる効果があり、この構成により、ホーンスピーカーの低周波帯域(カットオフ周波数付近)の能率を向上させることができる。
【0074】
(3)第1実施形態では、第1ホーン部21の閉端部21aが伝搬方向Daにおいてホーン開口部20bと同じ位置にある。
【0075】
この構成によれば、第1ホーン部21の閉端部21aが伝搬方向Daとは反対方向にホーン開口部20bから離れた位置に配置される場合に比べて、音道を長くすることができる。
【0076】
(4)第1実施形態では、音道プロファイルのカーブのうちで、第1ホーン部21、第2ホーン部22、及び第3ホーン部23に対応する部分のカーブは、設定カーブに一致する。また、音道プロファイルのカーブのうちで、第4ホーン部24に対応する部分のカーブ(
図7(b)の曲線CS参照。)は、設定カーブ(
図7(b)の曲線CE参照。)を含むように構成される。設定カーブは、エクスポネンシャルカーブ、ハイパボリックカーブ、またはこれらに近似するカーブであり得る。
【0077】
すなわち、音道プロファイルのカーブの大部分がエクスポネンシャルカーブ、ハイパボリックカーブ、またはこれらに近似するカーブに一致する。このため、音波が効率的に増幅される。また、音道プロファイルのカーブのうちの第4ホーン部24に対応する部分のカーブは、設定カーブを含むように構成される。すなわち、音道の全長にわたって、エクスポネンシャルカーブ、ハイパボリックカーブ、またはこれらに近似するカーブに基づいて設定される断面積が確保される。このため、第4ホーン部24に対応する部分のカーブが設定カーブを含まないように構成されることにより(
図7(b)の曲線CR参照。)、この部分の音道が設定カーブ(
図7(b)の曲線CE参照。)により構成される音道よりも狭まる場合に比べて、周波数特性が向上する。
【0078】
(5)第1実施形態では、ホーン開口部20bの外形が矩形に構成される。ホーン開口部20bの各角部20bxを構成する2面の間の稜線24aと、伝搬方向Daに沿う線(中心線C)とのなす角が45度以上に設定されている。
【0079】
音響インピーダンスの整合性の観点から、ホーン開口部20bを構成する側面の傾斜または湾曲角度は大きいほうが好ましい。しかし、音道プロファイルのカーブが設定されると、ホーン開口部20bの各辺を構成する各面の傾斜または湾曲角度は所定の値に設定される。このため、この部分の角度を自由に設定することが難しい。一方、ホーン開口部20bの角部20bxにおける傾斜又は湾曲角度については設計上の自由度が残されている。そこで、ホーン開口部20bの角部20bxを区画する2面間の稜線24aの傾斜又は湾曲角度を45度以上に設定することにより、音道の開放端であるホーン開口部20bにおける音響インピーダンスの整合性が向上する。
【0080】
(第2実施形態)
図9を参照して、第2実施形態に係るホーンスピーカー101について第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0081】
第2実施形態に係るホーンスピーカー101では、内部ホーン21Aが省略されている。また、第1実施形態に係るホーンスピーカー1では、ドライバユニット10は、ホーンスピーカー1の基端部20cに隣接して配置されているが、第2実施形態に係るホーンスピーカー101では、ドライバユニット110は第1ホーン部21の閉端部21a内に配置される。このような構成によれば、ホーンスピーカー101の長さ(中心線Cに沿うホーンスピーカー101全長)が短くなる。
【0082】
また、
図9に示すように、第2実施形態に係るホーンスピーカー101においても、ホーン開口部20bと第2折返し部26との距離d2が、ホーン開口部20bと閉端部21aとの距離d1よりも長いため、ホーン開口部20bの前面投影面積を小さくすることができる。
【0083】
第2実施形態に係るホーンスピーカー101では、ドライバユニット10が、第1ホーン部21の閉端部21a内に配置されている。このため、ホーンスピーカー101を小型化することができる。
【0084】
(第3実施形態)
図10に示すように、第3実施形態に係るホーンアレイスピーカー200は、所定の一定間隔Dsを置いて一列に配置された複数のホーンスピーカーを備え、各ホーンスピーカーは、第1または第2実施形態に係るホーンスピーカー1,101である。図示した例では、所定の一定間隔Dsは、ホーンアレイスピーカー200が線音源として作用するように決められた距離である。
【0085】
各ホーンスピーカー1,101のホーン開口部20bの前面投影面積は小さいことから、ホーンアレイスピーカー200の正面面積は、従来のホーンアレイスピーカーのものに比べて小さくなる。これにより、ホーンアレイスピーカー200が受ける風力を小さくすることができる。
【0086】
ホーンアレイスピーカー200の横幅Wは、電柱の直径程度(規格寸法の直径)に設定されることが好ましい。この構成によれば、電柱へのホーンアレイスピーカー200の取付け性が高くなる。また、電柱にホーンアレイスピーカー200が取り付けられた場合には、電柱が風よけになるため、ホーンアレイスピーカー200に加わる風圧が低減する。
【0087】
実施形態は例えば以下のように変更することもできる。
【0088】
・第1ホーン部21の閉端部21aはホーン開口部20bと一致するところに配置されなくてもよい。例えば、第1ホーン部21の閉端部21aは、ホーン開口部20bよりも基端部20cに近い位置に配置される。この場合、第2折返し部26は、ホーン開口部20bから、閉端部21aよりも更に基端部20cに接近して配置される。この場合においても、第4ホーン部24により構成される音道がホーンスピーカー1の内方向と外方向との両方向に拡大させることができるようになるため、ホーン開口部20bの前面投影面積を小さくすることができる。
【0089】
・上記第1及び第2実施形態に係るホーンスピーカー1,101では、第1ホーン部21と第2ホーン部22との間に谷間が設けられる。このような谷間は、周波数特性に影響を与える虞があるため、この谷間を覆うカバーを設けてもよい。カバーは例えば、
図7(b)の破線に示す位置に設けることができる。カバーは、設定カーブ(
図7(b)の曲線CE参照。)に一致するように構成されることが好ましい。
【0090】
・ホーンアレイスピーカー200において、ホーンスピーカーは、2列または3列以上に配列されてもよい。ホーンスピーカーの列が複数である場合、水平方向への音波の広がりが抑制される。すなわち、この構成によりホーンアレイスピーカー200は面音源として作用する。
【0091】
本発明の主題は開示した特定の実施形態の全ての特徴より少ない特徴に存在する可能性がある。そのため、請求の範囲は詳細な説明に組込まれ、各請求項は別個の実施形態として自分自身を主張することができる。本発明は、請求の範囲を参照して、請求の範囲が権利を与えられる均等物の全範囲と共に確定されるべきである。