(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
円板状の基板の側壁面と、前記側壁面と前記基板の主表面の間に設けられる面取り面と、を有する端面を、研磨砥粒と磁性粒子を含む磁気機能性流体を用いて同時に研磨する端面研磨処理を含み、磁気ディスク用基板を製造する基板の製造方法であって、
前記端面研磨処理の前に、磁性粒子の粒径に対する研磨砥粒の粒径比と、該粒径比の磁性粒子と研磨砥粒を有する磁気機能性流体を用いて基板の端面の研磨をしたときの基板の側壁面における研磨レートに対する基板の面取り面における研磨レートの比との関係を予め取得しておき、前記端面研磨処理の対象とする基板の側壁面と面取り面との間の目標とする研磨レートの比から、前記粒径比の値を設定し、設定した粒径比の値となる磁性粒子と研磨砥粒を有する磁気機能性流体を作製し、
前記端面研磨処理では、
磁気発生手段によって前記磁気機能性流体の塊を形成させ、
端面研磨処理の対象とする基板の端面を、前記塊と接触させた状態で相対移動させることにより、基板の端面を研磨する、ことを特徴とする基板の製造方法。
ガラスからなる円板状の基板の側壁面と、前記側壁面と前記基板の主表面の間に設けられる面取り面と、を有する端面を、研磨砥粒と磁性粒子を含む磁気機能性流体を用いて同時に研磨する端面研磨処理を含む基板の製造方法であって、
前記端面研磨処理の前に、磁性粒子の粒径に対する研磨砥粒の粒径比と、該粒径比の磁性粒子と研磨砥粒を有する磁気機能性流体を用いて基板の端面の研磨をしたときの基板の側壁面における研磨レートに対する基板の面取り面における研磨レートの比との関係を予め取得しておき、前記端面研磨処理の対象とする基板の側壁面と面取り面との間の目標とする研磨レートの比から、前記粒径比の値を設定し、設定した粒径比の値となる磁性粒子と研磨砥粒を有する磁気機能性流体を作製し、
前記端面研磨処理では、
磁気発生手段によって前記磁気機能性流体の塊を形成させ、
端面研磨処理の対象とする基板の端面を、前記塊と接触させた状態で相対移動させることにより、基板の端面を研磨する、ことを特徴とする基板の製造方法。
前記基板は、主表面同士を貼り付けて複数枚積層した基板積層体の各積層基板であって、前記端面研磨処理では、前記基板積層体の各積層基板の端面を同時に研磨する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の基板の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の
基板の製造方法について詳細に説明する。
本願発明者は、磁力線を発生させた空間内で、研磨砥粒と磁性粒子を含む磁気機能性流体を用いて側壁面及び面取り面を同時に研磨する端面研磨処理において、この研磨の条件を種々変更しながら、側壁面と面取り面の研磨取代量を調べた結果、研磨砥粒と磁性粒子の粒径比によって研磨取代量が変化することを知見し、この知見により、以下の技術を想到した。
【0019】
(磁気ディスクおよび磁気ディスク用ガラス基板)
本実施形態の磁気ディスクは、円板形状の中心部分が同心円形状にくり抜かれたリング状を成し、リングの中心の周りに回転するものである。この磁気ディスクは、磁気ディスク用非磁性基板と磁性層を少なくとも備える。本実施形態では、非磁性基板としてガラス基板を用いるが、アルミニウム合金製基板を用いることもできる。なお、磁性層以外には、例えば、付着層、軟磁性層、非磁性下地層、垂直磁気記録層、保護層および潤滑層等がガラス基板上に成膜される。付着層には、例えばCr合金等が用いられる。付着層は、ガラス基板との接着層として機能する。軟磁性層には、例えばCoTaZr合金等が用いられる。非磁性下地層には、例えばグラニュラー非磁性層等が用いられる。垂直磁気記録層には、例えばグラニュラー磁性層等が用いられる。保護層には、水素カーボンからなる材料が用いられる。潤滑層には、例えばフッ素系樹脂等が用いられる。
磁気ディスクに用いるガラス基板も円板形状の中心部分が同心円形状にくり抜かれたリング状を成している。ガラス基板の内周側端面及び外周側端面は、側壁面及び面取り面を含む。側壁面は、断面視において、ガラス基板の主表面に対して垂直に延びる面である。面取り面は、断面視において、側壁面と主表面との間に2つ設けられ、側壁面に対して傾斜し、主表面に向かって直線状あるいは円弧状に延びる面である。なお、面取り面は、断面視において直線状と円弧状とが組み合わされてもよい。
磁気ディスク用ガラス基板の直径については特に制限はなく、ガラス基板は、例えば公称1.8〜3.5インチサイズの基板に使用することができる。板厚についても特に制限はなく、例えば0.3〜3mmとすることができる。
【0020】
本実施形態における磁気ディスク用ガラス基板の材料として、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ボロシリケートガラスなどを用いることができる。特に、化学強化を施すことができ、また主表面の平面度及び基板の強度において優れた磁気ディスク用ガラス基板を作製することができるという点で、アルミノシリケートガラスを好適に用いることができる。
【0021】
本実施形態の磁気ディスク用ガラス基板の組成を限定するものではないが、アルミノシリケートガラスとして、酸化物基準に換算した際に、モル%表示で、SiO
2を50〜75%、Al
2O
3を0%超15%以下、Li
2O、Na
2O及びK
2Oから選択される少なくとも1種の成分を合計で12〜35%、MgO、CaO、SrO、BaO及びZnOから選択される少なくとも1種の成分を合計で0〜20%、及び、ZrO
2、TiO
2、La
2O
3、Y
2O
3、Ta
2O
5、Nb
2O
5及びHfO
2から選択される少なくとも1種の成分を合計で0〜10%、有する組成からなるアルミノシリケートガラスを用いることが好ましい。
また、本実施形態のガラス基板は、例えば特開2009−99239号公報に開示されるように、質量%表示にて、SiO
2を57〜75%、Al
2O
3を5〜20%、(ただし、SiO
2とAl
2O
3の合計量が74%以上)、ZrO
2、HfO
2、Nb
2O
5、Ta
2O
5、La
2O
3、Y
2O
3およびTiO
2を合計で0%超6%以下、Li
2Oを1%超9%以下、Na
2Oを5〜18%(ただし、質量比Li
2O/Na
2Oが0.5以下)、K
2Oを0〜6%、MgOを0〜4%、CaOを0%超5%以下(ただし、MgOとCaOの合計量は5%以下であり、かつCaOの含有量はMgOの含有量よりも多い)、SrO+BaOを0〜3%、有する組成からなるアモルファスのアルミノシリケートガラスであってもよい。
【0022】
(端面研磨処理)
図1(a)〜(c)は、本実施形態のガラス基板の製造方法のうちの一処理である端面研磨処理に用いる装置を説明する図であり、
図2は、本実施形態の端面研磨処理を説明する図である。
図2の例は、ガラス基板の内周側端面の研磨を説明している。端面研磨については、ガラス基板の外周側端面の研磨も同様の方法で適用することができる。
端面研磨処理では、磁気発生手段によって後述する磁気機能性流体の塊を形成させ、端面研磨処理の対象とする基板の端面を、前記塊と接触させた状態で相対移動させることにより、基板の端面を研磨する。
このとき、磁気発生手段を用いて、端面研磨処理の対象とする基板の厚さ方向に進む磁力線を形成し、この磁力線に作製した磁気機能性流体を配することにより、磁気機能性流体を磁力線に沿って保持させ、端面研磨処理の対象とする基板の端面を、磁力線によって保持された磁気機能性流体と接触させた状態で相対移動させることにより基板の端面を研磨する。
端面研磨を行う装置10の概要を説明すると、
図1(a)に示すように、装置10は、永久磁石である一対の磁石12,14と、スペーサ16と、を含み、一方向に延びた回転体形状をなしている。磁石12と磁石14の間にスペーサ16が設けられている。端面研磨を行うガラス基板11は、図示されない保持具によって把持されている。保持具に把持されたガラス基板11の円形状の孔に装置10を貫通させ、後述する磁性粒子と研磨砥粒を含む磁気機能性流体の塊20(
図1(c),
図2参照)とガラス基板11の内周側端面とを接触させる。磁気機能性流体は、装置10の周りで円環形状の塊20となっている。このとき、ガラス基板11の中心軸と装置10の磁石12,14及びスペーサ16の中心軸が同じ向きに向くようにガラス基板11は配置される。装置10及びガラス基板11のそれぞれを保持する図示されない保持具は、図示されない駆動モータと機械的に接続されている。回転体形状の装置10とガラス基板11の保持具が、それぞれの中心軸の周りに回転してガラス基板11の端面と塊20とを相対的に移動させる。
図2に示すように、ガラス基板11の端面と塊20の回転方向は、同じ方向でもよいし、逆方向でもよい。これにより、ガラス基板11の内周側端面を研磨することができる。なお、磁石12,14及びスペーサ16を覆うように、外装部材が設けられてもよい。
図2に示す例では、ガラス基板11の中心軸と装置10の中心軸がオフセットされているが、ガラス基板11の中心軸と装置10の中心軸は一致してもよい。
【0023】
ガラス基板11の内周側端面を研磨するとき、装置10の中心軸の周りの回転によって磁気機能性流体の塊20は回転し、一方ガラス基板11も中心軸周りに回転する。このとき、ガラス基板11と磁気機能性流体の塊20の接触位置におけるガラス基板11の、磁性スラリの塊20に対する周速度の相対速度は、効率よく端面研磨をするために、50〜500m/分であることが好ましく、より好ましくは、上記相対速度は200〜400m/分である。なお、ガラス基板11の内周側端面の全周と塊20の全周とを接触させて、回転させることもできる。磁気機能性流体の塊20は、円環形状に形成されているので、ガラス基板11の円形の貫通孔の内壁面である内周側端面を、円孔の形状を変形させないように研磨することができる。この場合、ガラス基板11の回転数は例えば500〜4000rpmとし、塊20の回転数は例えば50〜300rpmとすることが好ましい。なお、後述するように、ガラス基板11の外周側端面を研磨する場合も、ガラス基板11の回転数は例えば500〜4000rpmとし、塊20の回転数は例えば50〜300rpmとすることが好ましい。このような回転数により、端面研磨を効率よく行なうことができる。
【0024】
ガラス基板11の回転方向と塊20の回転方向はガラス基板11と塊20の接触位置において逆方向であることが、端面研磨処理を効率よく行なう点で好ましい。一方、端面研磨処理後の端面の表面凹凸を小さくする点からは、ガラス基板11の回転方向と塊20の回転方向は、ガラス基板11と塊20の接触位置において同方向であることが好ましい。
なお、ガラス基板11の端面と塊20とを相対的に移動させることができれば、塊20を回転させずガラス基板11を回転させてもよい。
【0025】
端面研磨をより具体的に説明すると、磁石12と磁石14は、互いに近接して、磁気発生手段として機能し、
図1(b)に示すような磁力線19を形成する。この磁力線19の一部は、磁石12,14の中心から直線状に進み、ガラス基板11の厚さ方向に進む。また、磁力線19の一部は、磁石12,14の中心から外側に向けて突出するように進み、かつ、ガラス基板11の厚さ方向に進む。
図1(b)に示す例では、ガラス基板11の厚さ方向に、N極の面とS極の面が互いに対向するように離間した状態で配置された磁石の対が磁気発生手段として用いられる。面が互いに対向するとは、面と面が平行に向き合うこと、すなわち正対することをいう。磁石12,14との間には、磁石12のN極の端面と磁石14のS極の端面との間の離間距離を予め定めた距離とするために、非磁性体からなるスペーサ16が設けられる。磁石12のN極の端面と磁石14のS極の端面との間の離間距離を予め定めた距離とするのは、磁力線19の一部を、
図1(b)に示すように磁石12と磁石14の間の凹状の溝内を図中の下方に進ませるほか、磁力線19の一部を磁石12及び磁石14の外側に突出させることにより、
図1(c)に示すような磁性スラリの塊20を装置10の外周に沿ってつくるためである。塊20は、ガラス基板11の端面と接触し、この端面との間で相対運動する部分であるため、塊20の剛性を確保する点から、磁力はある程度強いことが望まれる。このため、磁石12のN極の端面と磁石14のS極の端面との間の離間距離は短いことが好ましいが、過度に離間距離が短い場合、塊20を十分に形成することができなくなる。このため、磁石12のN極の端面と磁石14のS極の端面との間の離間距離はある所定の範囲に定められる。
【0026】
本実施形態のガラス基板の端面研磨では、ガラス基板11の端面は塊20の内部に磁力線と直交する方向に押し付けられて研磨されることが、研磨レートを高める点で好ましい。磁力線と直交する方向に押し付けることで、ガラス基板11の端面は塊20から大きな抗力を受けるので、研磨が促進される。
本実施形態のガラス基板11の端面は、磁性スラリの塊20内部の、磁石12のN極と磁石14のS極とを接続する磁力線、すなわち、磁力線がN極からあるいはS極から延びてS極あるいはN極で終了する磁力線に保持される部分と接触するように、塊20の内部に押し付けられる。磁石12のN極と磁石14のS極とを接続する磁力線に沿って保持される磁性スラリの部分は、磁力線が磁石の極で終了しない部分に比べて剛性が高まり高い研磨レートを実現する。一方、ガラス基板11の主表面は、大部分がガラス基板11で遮断されて磁石の極に到達しない磁力線に保持される剛性の低い塊20の部分と接触するため、塊20とガラス基板11の主表面が接触しても殆ど研磨されない。
塊20は、スペーサ16の外周面を溝底面とし磁石12と磁石14の端面を側壁面とする凹状の溝内に形成され、この溝内の塊20内にガラス基板の端面を押し付けてもよいが、
図1(c)に示すように、磁石12と磁石14の間の凹部から突出し、この突出部内に、ガラス基板の端面を押し付けてもよい。
【0027】
上述したように側壁面と面取り面が同時に研磨されるように、ガラス基板11を塊20の内部に押し込むが、このとき、ガラス基板の主表面のうち塊20に接触する部分は実質的に研磨されない。
【0028】
なお、
図1(a)〜(c)及び
図2に示す例では、磁気発生手段として永久磁石を用いるが、電磁石を用いることもできる。また、磁石12のN極の端面と磁石14のS極の端面との間の離間距離を一定の距離に確保するために、スペーサ16を用いたが、スペーサ16を用いず、図示されない外装部材に磁石12,14が固定されて、磁石12のN極の端面と磁石14のS極の端面との間の離間距離を一定に確保することもできる。
【0029】
端面研磨に用いる磁気機能性流体には、例えば、Feからなる磁性粒子を3〜5g/cm
3含む非極性オイル、及び界面活性剤を含んだ磁気粘性流体が用いられる。本明細書では、この磁気粘性流体に研磨砥粒を含ませることにより磁気機能性流体となる。非極性オイルあるいは極性オイルは、例えば、室温(20℃)において100〜1000(mPa・秒)の粘度を有する。磁性粒子の平均粒径d50(直径)は、2.0〜7.0μmであることが、後述するように、側壁面に対する面取り面の研磨レートの比を好適に調整することができる点で好ましい。平均粒径d50は、粒径の分布のメディアン値である。
磁気機能性流体により形成される塊20は、磁気機能性流体が磁力線上に塊として形成されるとき、磁性粒子と同様に研磨砥粒も塊20に含まれる。磁気機能性流体中の研磨砥粒は、磁気浮揚効果により磁力勾配の低い部分に押し出されるため、ガラス基板の研磨しようとする端面近傍に偏って存在する。しかも、磁力線により比較的高い弾性特性を有する塊となるので、ガラス基板の端面を塊20に押圧することにより効率よく研磨することができる。すなわち、研磨レートを高くすることができ、効率よく研磨をすることができる。
【0030】
磁気機能性流体に含まれる研磨砥粒として、酸化セリウム、コロイダルシリカ、酸化ジルコニア、アルミナ砥粒、ダイヤモンド砥粒、シリカ砥粒、SiC砥粒等の公知のガラス基板の研磨砥粒を用いることができる。研磨砥粒の粒径については、例えば0.4〜3.0μmであることが、側壁面に対する面取り面の研磨レートの比を好適に調整することができ、高品質な表面を効率よく得ることができる点で好ましい。この範囲の研磨砥粒を用いることにより、ガラス基板の内周側端面を良好に研磨することができる。研磨砥粒は、磁気機能性流体中に、例えば3〜15vol%含まれる。なお、研磨レートは、研磨取代量を研磨時間で割った値であるので、同じ研磨時間であれば、研磨レートの比と研磨取代量の比は同じ値となり、同義である。したがって、この場合、研磨レートの比を調整することは研磨取代量の比を調整することでもある。
【0031】
磁気粘性流体を用いた磁気機能性流体の粘度は、磁気粘性流体の濃度調整により、室温(20℃)で1000〜2000[mPa・秒]であることが、塊20を形成させ、端面研磨を効率よく行う点で好ましい。粘度が低い(磁気粘性流体の濃度が低い)と塊20を形成し難くなり、ガラス基板11の端面に押圧された状態で相対運動させて研磨することは難しい。一方、磁気機能性流体の粘度が過度に高い場合、塊20が研磨中にガラス基板11の端部形状に沿って凹んだ形状となり、その形状から復元しにくくなり、塊20にガラス基板11の形が強く残ってしまうため、均一な押圧状態が形成し難い。また、磁気発生手段における磁束密度は、塊20を形成させ、端面研磨を効率よく行う点で、0.3〜2[テスラ]であることが好ましい。また、磁気粘性流体の降伏応力は、0.4[テスラ]の磁場を印加した状態で30kPa以上であることが好ましく、30〜60kPaであることがより好ましい。
【0032】
本実施形態では、このような端面研磨処理の前に、磁性粒子の粒径に対する研磨砥粒の粒径比と、この粒径比の磁性粒子と研磨砥粒を有する磁性スラリを用いて端面研磨処理をしたときのガラス基板11の側壁面における研磨レートに対するガラス基板11の面取り面における研磨レートの比との関係を予め取得しておく。さらに、ガラス基板11の側壁面と面取り面における目標とする研磨レートの比から、上記粒径比の値を設定し、設定した粒径比の値となる磁性粒子と研磨砥粒を有する磁気機能性流体を作製する。このような磁気機能性流体を作製するのは、磁性粒子に対する研磨砥粒の粒径比と、側壁面に対する面取り面の研磨レートの比との間に相関関係があり、後述するように、上記粒径比を小さくするほど、上記研磨レートの比が向上することを見出したことに依る。
【0033】
図3は、磁性粒子に対する研磨砥粒の粒径比と、側壁面の研磨レートに対する面取り面の研磨レートの比との間の関係の一例を示す図である。
図3に示す例は、磁性粒子の平均粒径d50(直径)が2μm、4μm、7μmのFeからなる磁性粒子を用い、研磨砥粒としてジルコニア砥粒を用いた。このとき、研磨砥粒の平均粒径d50(直径)を種々変更することにより上記粒径比を種々変更した。
【0034】
なお、側壁面の研磨レートと面取り面の研磨レートを求めるために、
図4に示すように、端面の側壁面11a及び面取り面11bの断面形状を、輪郭形状測定機により端面研磨処理の前後で測定した。測定した断面形状から、側壁面11aの板厚方向の中央部と面取り面11bの面の方向に沿った中央部における研磨取代量P
1,P
2を得ることにより、研磨レートの比を求めた。なお、
図4は、研磨取代量を説明する図である。
【0035】
図3から判るように、磁性粒子の平均粒径d50(直径)が2μm、4μm、7μmのいずれの場合においても、略同じ相関関係を示す。この相関関係から、粒径比を小さくすることにより(研磨砥粒の粒径を小さくする、あるいは、磁性粒子の粒径を大きくすることにより)、側壁面11aに対する面取り面11bの研磨レートの比を向上させることができることがわかる。したがって、面取り面11bにおける研磨残りが生じる場合、研磨砥粒の平均粒径d50(直径)を小さくすることにより、あるいは、磁性粒子の粒径を大きくすることにより、側壁面11aと面取り面11bの研磨レートを略同等にして、研磨残りが生じないように研磨することができる。
【0036】
このように、磁性粒子の平均粒径d50(直径)に対する研磨砥粒の平均粒径d50(直径)の比を用いて、研磨レートの比を定めることができる。これより、磁性粒子及び研磨砥粒のいずれか一方の平均粒径d50(直径)を変化させて粒径比を調整することにより、側壁面11aと面取り面11bとの間の研磨レートの比を調整することができることがわかる。
このような相関関係は、研磨砥粒の平均粒径d50(直径)が0.1〜10μmの範囲にある場合に確認されている。また、磁性粒子の平均粒径d50(直径)が0.5〜20μmの範囲にある場合に確認されている。この中で、研磨砥粒の平均粒径d50(直径)が0.4〜3.0μmであることが、目標とする研磨レートの比をより精度よく達成することができ、高品質な表面を効率よく得ることができる点から好ましく、磁性粒子の平均粒径d50(直径)が2.0〜7.0μmであることが、目標とする研磨レートの比をより精度よく達成することができ、高品質な表面を効率よく得ることができる点から好ましい。
【0037】
このような関係の発生メカニズムは明確ではないが、以下のように推察される。すなわち、
図1(c)に示すように磁気機能性流体が塊20の状態では、磁気機能性流体中の磁性粒子が磁力線に沿って並んだ磁性粒子のラインを形成し、塊20は高い剛性を有する。このとき、磁性粒子の周りに研磨砥粒が分散している。この状態でガラス基板11の端面が塊20の内部に進入すると、塊20は弾性変形して形状変化する。一方、塊20の高い剛性により、ガラス基板11の端面は塊20に押し付けることができ、この押し付け力と塊20とガラス基板11の端面との間の相対速度によってガラス基板11の端面は塊20に対して摺動し、端面は研磨される。このとき、塊20の形状変形により研磨砥粒の粒径が大きいほど磁性粒子の上記ラインに割り込もうとする力が大きくなるので、上記ラインは切断し易くなる。
ここで、塊20内にガラス基板11の端面が進入するので、塊20内の磁性粒子のラインは、側壁面11aと面取り面11bからなる端面の形状に沿うように谷形状に窪むように変形し、塊20は、ガラス基板11の端面に向かって抗力を発する。このとき、変形した塊20内の側壁面11aの近傍に位置する磁性粒子のラインの領域は、磁性粒子のラインの延びる方向と直交する方向から側壁面11aの力を受けるのに対して、面取り面11bの近傍に位置する磁性粒子のラインの領域は、谷形状に変形したラインの傾斜部分に位置するのでガラス基板11の進入する方向に沿って延在している。このラインの傾斜部分は、ガラス基板11からガラス基板11が進入する方向の力を受ける。特に、面取り面11b近傍に位置するラインの傾斜した部分に、大きな粒径の研磨砥粒がラインに割り込むと、ガラス基板11からガラス基板11の進入方向に向いた力を受けて上記ライン上の磁性粒子間の距離は長くなるので上記ラインが容易に切断され易くなる。このため、この領域の磁性スラリは高い剛性を維持できなくなるので、磁性粒子のラインに支えられていた研磨砥粒が面取り面11bに与える力は低下する。このため、面取り面11bにおける研磨レートは、側壁面11aに比べて低下し易くなる。一方、研磨砥粒の粒径が小さい場合、面取り面11b近傍に位置する磁性粒子のラインに割り込もうとする研磨砥粒の力は弱いので、ラインの切断は生じ難い。
研磨砥粒の粒径が一定であって、磁性粒子の粒径が変化する場合においても、上述したことは言える。したがって、磁性粒子に対する研磨砥粒の粒径比を大きくすると、側壁面11aに対する面取り面11bの研磨レートの比が低下し、粒径比を小さくすると、側壁面11aに対する面取り面11bの研磨レートの比は向上し、1.0に近づく。
【0038】
このような磁性スラリを用いた端面研磨処理が行われた後の側壁面11a及び面取り面11bの表面粗さに関しては、最大高さRz(JIS B0601:2001)は0.15μm以下であることが好ましい。これにより、側壁面11a及び面取り面11bに発生する微小な溝の深さは浅くなるため、微粒子が付着する可能性は少なくなる。また、端面研磨処理後の側壁面11a及び面取り面11bの算術平均粗さRa(JIS B0601:2001)は0.015μm以下であることが好ましい。
このような表面粗さは、レーザ顕微鏡を用いて、50μm四方の評価領域にて以下の条件下で測定したときの最大高さRz及び算術平均粗さRaである。このとき、高さ方向の分解能は1nm以下が好ましい。また、観察倍率は測定面の大きさに応じて、1000〜3000倍程度の範囲で適宜選択すればよい。
観察倍率:3000倍、
高さ方向(Z軸)の測定ピッチ:0.01μm、
カットオフ値λs:0.25μm、
カットオフ値λc:80μm。
【0039】
なお、粒径比を小さくすると、側壁面11aに対する面取り面11bの研磨レートの比は向上するが、研磨砥粒の粒径が小さくなるので、研磨力が低下し、研磨レートの値自体は低下する。
図5は、側壁面11aの研磨レートの指数の一例を示す図である。
図5に示す例では、磁性粒子の平均粒径d50(直径)を2μmとして一定にし、研磨砥粒の平均粒径d50(直径)の粒径を種々変化させた。上記研磨レートの指数は、粒径比1.2における研磨レートを1.00として規格化したものである(指数が高いほど研磨レートは高い)。
図5によると、粒径比が小さいほど研磨レートが低下することがわかる。このため、ガラス基板11の端面研磨処理の処理時間を長時間にしないためには、粒径比が0.1以上であることが好ましく、0.2以上であることがより好ましい。
【0040】
なお、ガラス基板の製造過程では、側壁面11a及び面取り面11bは、ガラス基板の端面を研削砥石で削る形状加工により形成される。この研削砥石によって形成された側壁面11a及び面取り面11bの表面粗さは同程度である場合が多い。このため、端面研磨処理における側壁面11a及び面取り面11bに必要とされる研磨取代量は略同じである場合が多い。したがって、この場合、端面研磨処理では、側壁面11aと面取り面11bの研磨レートは略同じであることが好ましい。この点で、側壁面11aと面取り面11bにおける研磨レートの比を0.8以上にすることが好ましく、0.9以上にすることがより好ましい。研磨レートの比を0.8未満にすると、面取り面11bにおける研磨レートが側壁面11aにおける研磨レートに比べて極端に低下し、側壁面11aの研磨取代量に合わせて端面研磨処理を終了すると、面取り面に研磨残りが生じ、面取り面の表面粗さが目標に対して粗い場合がある。一方、端面研磨処理を、面取り面の研磨取代量に合わせて端面研磨処理を終了すると、終了までに要する時間が長く生産性が低下する。したがって、上記好ましい研磨レートの比が達成されるように、上記好ましい研磨レートの比と、
図3に示す相関関係を用いて、磁性粒子に対する研磨砥粒の粒径比を定めることが好ましい。
【0041】
上記研磨レートの比を0.8以上とするためには、
図3に示す相関関係から、粒径比は0.6以下とする。したがって、本実施形態の一形態では、端面研磨処理で用いる磁性スラリ中の磁性粒子の粒径に対する研磨砥粒の粒径比は0.6以下である。このとき、側壁面11aの研磨レートを大きく低下させない点から、上記粒径比は0.1以上であることが好ましく、0.2以上であることがより好ましい。すなわち、粒径比を0.1以上0.6以下とすること、さらには、0.2以上0.6以下とすることにより、側壁面11aと面取り面11bの研磨を略同時に終了させることができ、かつ、研磨時間は長くならず、ガラス基板11の端面研磨処理を効率的に行うことができる。
【0042】
なお、側壁面11aと面取り面11bの形状加工の仕方によっては、形状加工直後の側壁面11aと面取り面11bの表面粗さに違いが生じる場合がある。この場合、側壁面11aと面取り面11bの研磨取代量も異なる。このため、異なる研磨取代量に応じて、研磨レートの比を定め、
図3に示す相関関係を用いて、粒径比を定めることができる。これにより、側壁面11aと面取り面11bの研磨取代量を異ならせて端面研磨をする場合、研磨レートの比を調整することにより、側壁面11aの研磨終了時と面取り面11bの研磨終了時を揃えることができる。
【0043】
以上説明した端面研磨処理は、ガラス基板11の内周側端面の端面研磨処理であるが、ガラス基板11の外周側端面の端面研磨処理にも適用することができる。
図6は、ガラス基板11の内周側端面及び外周側端面の端面研磨処理を同時に行なう例を説明する図である。
図6に示す例では、ガラス基板11の内周側端面を研磨するとともに、ガラス基板11の外周側端面を同時に研磨する。すなわち、塊20が形成された装置10を、ガラス基板11の中心に設けられた円形状の貫通孔に貫通させ、磁性スラリの塊20とガラス基板11の内周側端面とを接触させる。同時に、磁石12,14とスペーサ16と同様の磁石60,64の間の図示されないスペーサの外周の表面に、磁性スラリの塊62を形成させる。塊62がガラス基板11と接触するように磁石60,64及び図示されないスペーサは位置決めされている。磁石60,64及び図示されないスペーサは、磁石12,14及びスペーサ16と同様に図示されない駆動モータと機械的に接続されており、回転可能になっている。したがって、磁石12,14とスペーサ16を含む装置10と、及び磁石60,64と図示されないスペーサを含む装置を、ガラス基板11と異なる方向に回転させることにより、ガラス基板11の内周側端面及び外周側端面を同時に研磨することができ、効率のよい端面研磨を実現する。なお、
図6に示す例では、ガラス基板11の回転軸である中心軸が、磁石12,14及びスペーサ16の回転軸である中心軸に対してオフセットされており、ガラス基板11の内周側端面の一部のみが、塊20と接触して端面研磨される様子を示している。勿論、ガラス基板11の回転軸である中心軸が、磁石12,14及びスペーサ16の回転軸である中心軸と一致し、ガラス基板11の内周端面全体が均一に同時に研磨されてもよい。
このような端面研磨処理は、複数のガラス基板を磁石及びスペーサを含んだ装置の中心軸方向に沿って並べ、さらに、装置の外周に複数の塊20,62を形成させ、塊20,62毎に異なるガラス基板と当接させることにより、複数のガラス基板の端面を同時に研磨することもできる。
本実施形態の側壁面11aは、断面視において、ガラス基板の主表面に対して垂直に延び、面取り面11bは、断面視において、側壁面に対して傾斜し、主表面に向かって直線状に延びるが、側壁面11a及び面取り面11bは、断面視において円弧状に形成されてもよい。
なお、本実施形態では、1枚のガラス基板の端面研磨処理する形態について説明したが、主表面同士を貼り付けて複数枚積層した基板積層体の各積層基板の端面を、端面研磨処理で同時に研磨することもできる。この場合、積層基板の主表面は、接着剤、例えば熱硬化性樹脂等により貼り付けて基板積層体とすることができる。これにより、基板の生産性が向上する。
以上の端面研磨処理は、以下に説明するガラス基板の製造方法の一処理として行なわれる。
【0044】
(ガラス基板の製造方法)
次に、本実施形態の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法を説明する。先ず、一対の主表面を有する板状の磁気ディスク用ガラス基板の素材となるガラスブランクをプレス成形により作製する(プレス成形処理)。なお、本実施形態ではガラスブランクをプレス成形で作製するが、周知のフロート法、リドロー法、あるいはフュージョン法でガラス板を形成し、ガラス板から上記ガラスブランクと同じ形状のガラスブランクを切り出してもよい。次に、作製されたガラスブランクの中心部分に円孔を形成しリング形状(円環状)のガラス基板とする(円孔形成処理)。次に、円孔を形成したガラス基板に対して形状加工を行う(形状加工処理)。これにより、ガラス基板が生成される。次に、形状加工されたガラス基板に対して端面研磨を行う(端面研磨処理)。端面研磨の行われたガラス基板の主表面に研削を行う(研削処理)。次に、ガラス基板の主表面に第1研磨を行う(第1研磨処理)。次に、必要に応じてガラス基板に対して化学強化を行う(化学強化処理)。次に、ガラス基板に対して第2研磨を行う(第2研磨処理)。その後、第2研磨処理後のガラス基板に対して超音波洗浄を行う(超音波洗浄処理)。以上の処理を経て、磁気ディスク用ガラス基板が得られる。以下、各処理について、詳細に説明する。
【0045】
(a)プレス成形処理
熔融ガラス流の先端部を切断器により切断し、切断された熔融ガラス塊を一対の金型のプレス成形面の間に挟みこみ、プレスしてガラスブランクを成形する。所定時間プレスを行った後、金型を開いてガラスブランクが取り出される。
【0046】
(b)円孔形成処理
ガラスブランクに対してドリル等を用いて円孔を形成することにより円形状の孔があいたディスク状のガラス基板を得ることもできる。
【0047】
(c)形状加工処理
形状加工処理では、円孔形成処理後のガラス基板の端部に対する面取り加工を行う。面取り加工は、研削砥石等を用いて行なわれる。面取り加工により、ガラス基板の端面に、ガラス基板の主表面に対して垂直に延びる基板の側壁面と、この側壁面と主表面の間に設けられ、側壁面に対して傾斜して延びる面取り面とを有する端面が形成される。
【0048】
(d)端面研磨処理
端面研磨処理では、ガラス基板の内側端面及び外周側端面に対して、上述した磁気機能性流体を用いて
図1に示す端面研磨処理により鏡面仕上げを行う。このとき、磁気機能性流体には、磁性粒子の他に、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、ダイヤモンド等の研磨砥粒が含まれる。なお、端面研磨処理は、下記研削処理と処理の順番を入れ替えてもよい。
【0049】
(e)研削処理
研削処理では、遊星歯車機構を備えた両面研削装置を用いて、ガラス基板の主表面に対して研削加工を行う。具体的には、ガラス基板を、両面研削装置の保持部材に設けられた保持孔内に保持しながらガラス基板の両側の主表面の研削を行う。両面研削装置は、上下一対の定盤(上定盤および下定盤)を有しており、上定盤および下定盤の間にガラス基板が狭持される。そして、上定盤または下定盤のいずれか一方、または、双方を移動操作させ、ガラス基板と各定盤とを相対的に移動させることにより、ガラス基板の両主表面を研削することができる。
【0050】
(f)第1研磨処理
次に、研削のガラス基板の主表面に第1研磨が施される。具体的には、ガラス基板を、両面研磨装置の研磨用キャリアに設けられた保持孔内に保持しながらガラス基板の両側の主表面の研磨が行われる。第1研磨は、研削処理後の主表面に残留したキズや歪みの除去、あるいは微小な表面凹凸(マイクロウェービネス、粗さ)の調整を目的とする。
【0051】
第1研磨処理では、固定砥粒による研削処理に用いる両面研削装置と同様の構成を備えた両面研磨装置を用いて、研磨スラリを与えながらガラス基板が研磨される。第1研磨処理では、遊離砥粒を含んだ研磨スラリが用いられる。第1研磨に用いる遊離砥粒として、例えば、酸化セリウム砥粒、あるいはジルコニア砥粒などが用いられる。両面研磨装置も、両面研削装置と同様に、上下一対の定盤の間にガラス基板が狭持される。下定盤の上面及び上定盤の底面には、全体として円環形状の平板の研磨パッド(例えば、樹脂ポリッシャ)が取り付けられている。そして、上定盤または下定盤のいずれか一方、または、双方を移動操作させることで、ガラス基板と各定盤とを相対的に移動させることにより、ガラス基板の両主表面を研磨する。
【0052】
(g)化学強化処理
ガラス基板を化学強化する場合、化学強化液として、例えば硝酸カリウムと硫酸ナトリウムの混合熔融液等を用い、ガラス基板を化学強化液中に浸漬する。
【0053】
(h)第2研磨(最終研磨)処理
次に、ガラス基板に第2研磨が施される。第2研磨処理は、主表面の鏡面研磨を目的とする。第2研磨においても、第1研磨に用いる両面研磨装置と同様の構成を有する両面研磨装置が用いられる。具体的には、ガラス基板の外周側端面を、両面研磨装置の研磨用キャリアに設けられた保持孔内に保持させながら、ガラス基板の両側の主表面の研磨が行われる。第2研磨処理が第1研磨処理と異なる点は、遊離砥粒の種類及び粒子サイズが異なることと、樹脂ポリッシャの硬度が異なることである。例えばコロイダルシリカを遊離砥粒として含む研磨液が両面研磨装置の研磨パッドとガラス基板の主表面との間に供給され、ガラス基板の主表面が研磨される。
本実施形態では、化学強化処理を行なうが、必要に応じて化学強化処理は行なわなくてもよい。第1研磨処理及び第2研磨処理の他にさらに別の研磨処理を加えてもよく、2つの主表面の研磨処理を1つの研磨処理で済ませてもよい。また、上記各処理の順番は、適宜変更してもよい。
【0054】
(実施例)
本実施形態の効果を確認するために、以下の方法でガラス基板を作製した。
具体的には、プレス法により得た円盤状のガラスブランクに円孔形成処理を施し、中央部に円孔を有する円盤状ガラス基板を得た。この円盤状ガラス板の上下主表面の研削処理を一対の研削定盤を備えた両面研削装置を用いて行い、板厚0.7mmとした。次に、この円盤状ガラス板の端面を、面取り幅0.15mm、面取り角度45°となるように形状加工処理を行って内周側端面と外周側端面を得た後、端面研磨処理を実施した。形状加工処理では、総型砥石を用いて、最初に砥石を傾けない研削処理による粗加工を行ない、次に砥石を変えて傾き3°のヘリカル研削処理による仕上げ加工を行った。
その後、形状加工処理をしたガラス基板の側壁面及び面取り面に種々の端面研磨処理を施した。ガラス基板11の端面と塊20の回転方向は、端面と塊20が接触する加工点において同方向とした。なお、端面研磨処理以外の処理については、上記の実施形態に沿った内容で行い、磁気ディスク用ガラス基板を製造した。
端面研磨処理以降の処理として、具体的には、
・第1研磨(酸化セリウム(d50:1μm)と硬質のポリウレタン研磨パッドを用いて行なった)、
・化学強化処理、
・第2研磨(コロイダルシリカ(d50:30nm)と軟質のポリウレタン研磨パッドを用いて行なった)、
・洗浄処理、
を順次行い、磁気ディスク用ガラス基板を製造した。製造した磁気ディスク用ガラス基板は、外径約65mm、内径約20mm、板厚約0.635mmの公称2.5インチサイズの磁気ディスク用ガラス基板である。
端面研磨処理では、磁性粒子の平均粒径d50を2μmに固定し、研磨砥粒の平均粒径d50を種々変化させて、粒径比を変更して面取り面に対する側壁面の研磨レートの比を求めた。端面研磨処理では、内周側端面を研磨対象とした。
使用した磁気粘性流体は、室温(20℃)において1000(mPa・秒)の粘度を有していた。
磁性粒子としてFe粒子を用い、研磨砥粒としてジルコニア粒子を用いた。
研磨レート比は、端面研磨を3分間行なった後の側壁面及び面取り面の中央部における研磨取代量から求めた。
表1は、粒径比と研磨レート比の結果を示す。
【0056】
これより、側壁面と面取り面の研磨レートを略同じにするために研磨レート比を0.8以上とするには、粒径比は0.6以下とすることが好ましいことがわかる。粒径比を0.4以下とすることにより、研磨レート比を0.85以上にすることができ、より好ましい。外周側端面の研磨においても上記の内周側端面と同様の結果が得られた。
【0057】
また、磁性粒子の平均粒径d50を5μmに固定し、研磨砥粒の平均粒径d50を種々変化させて、粒径比を変更して側壁面の研磨レートの指数を求めた。研磨レートの指数は、後述する粒径比が1.20のサンプル8の研磨レートを1.00とした。研磨レートの指数は、研磨レートの値が小さいほど小さいことを意味する。
磁性粒子としてFe粒子を用い、研磨砥粒としてジルコニア粒子を用いた。
研磨レート比は、端面研磨を3分間行なった後の側壁面及び面取り面の中央部における研磨取代量から求めた。
表2は、粒径比と研磨レート比の結果を示す。
【0059】
表2より、粒径比を小さくすると、側壁面の研磨レートが低下することがわかる。側壁面の研磨レートの指数が0.80以上を確保するために、粒径比は0.1以上であることが好ましい。特に、端面研磨処理を効率よく行なうためには、粒径比は0.2以上であることがより好ましい。
【0060】
以上、本発明の
基板の製造方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態及び変形例に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。