特許第6353535号(P6353535)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6353535
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】単電極タッチセンサ
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/044 20060101AFI20180625BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   G06F3/044 110
   G06F3/041 420
   G06F3/041 495
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-533784(P2016-533784)
(86)(22)【出願日】2014年2月18日
(65)【公表番号】特表2016-535894(P2016-535894A)
(43)【公表日】2016年11月17日
(86)【国際出願番号】CN2014072191
(87)【国際公開番号】WO2015021761
(87)【国際公開日】20150219
【審査請求日】2016年6月14日
(31)【優先権主張番号】201310349759.6
(32)【優先日】2013年8月12日
(33)【優先権主張国】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516044129
【氏名又は名称】北京納米能源与系統研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】王中林
(72)【発明者】
【氏名】楊亜
(72)【発明者】
【氏名】張虎林
【審査官】 間野 裕一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−190902(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0049531(US,A1)
【文献】 特開2004−239808(JP,A)
【文献】 特開2012−238304(JP,A)
【文献】 特開2011−181057(JP,A)
【文献】 特開2012−181815(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3176454(JP,U)
【文献】 特開2009−157698(JP,A)
【文献】 特開2012−108895(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/044
G06F 3/041
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチ層と、一端が等電位源に電気的に接続される検知電極層と、信号監視素子とを備え、
前記検知電極層は、前記タッチ層の下面に貼り合わせられ、
前記検知電極層は、前記信号監視素子に直接に電気的に接続され、
前記検知電極層は、前記タッチ層の下面に貼り合わせた複数の独立した電極セルからなり、各前記電極セルは、ともに前記信号監視素子に電気的に接続され、
前記タッチ層は、複数のタッチセルからなり、前記独立した電極セルは、前記タッチセルの下面に貼り合わせたものであり、
隣り合う前記電極セルと、隣り合う前記タッチセルとの間の間隔を充填するための隔離層を更に備え、
前記隔離層は、摩擦電気が中性である物質であることを特徴とする単電極タッチセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単電極タッチセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の摩擦電気発電機の動作原理は、2種類の異なる摩擦電気材料の相互接触・分離に基づくものである。しかしながら、報告された全て摩擦発電機は、導電性金属を摩擦電気薄膜材料の表面に堆積することによって、外部への電力出力を実現している。これにより、部品の作製コストが高くなる。そして、電極は、例えば皮膚、空気などの摩擦材料に作製しにくい。これらの制限は、このような摩擦電気発電機の発展の障害になる。
【0003】
タッチセンサは、タッチ装置の信号を、その信号と線形又は任意の関数関係のある抵抗又は電圧に変換して出力し、タッチに対する検知を実現するものである。それは、ロボット、HMI(ヒューマンインタフェース)及びセキュリティシステム分野に広く適用されている。従来のタッチセンサは、主に、ピエゾ抵抗と容量の変化の動作原理に基づくものであり、これらのセンサの正常な動作のために、外部の電力供給は必要不可欠なものである。外部の電力供給に依存するタッチセンサが未来のエネルギー危機に広く適用されにくいため、自己駆動のタッチセンサの開発は、これらの機器の長期及び安定な動作を解決するキーポイントである。摩擦電気発電機によってタッチセンサを作製すれば、タッチをリアルタイムで記録及び監視でき、電源を外部へ出力し、他の機器に電力を供給することもできる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来のシステムの上記の技術的な不備を克服し、自己駆動のタッチセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、タッチ層と、一端が等電位源に電気的に接続される検知電極層と、信号監視素子とを備え、前記検知電極層は、前記タッチ層の下面に貼り合わせられ、前記検知電極層は、前記信号監視素子に直接に電気的に接続され、前記検知電極層は、前記タッチ層の下面に貼り合わせた複数の独立した電極セルからなり、各前記電極セルは、ともに前記信号監視素子に電気的に接続され、前記タッチ層は、複数のタッチセルからなり、前記独立した電極セルは、前記タッチセルの下面に貼り合わせたものであり、隣り合う前記電極セルと、隣り合う前記タッチセルとの間の間隔を充填するための隔離層を更に備え、前記隔離層は、摩擦電気が中性である物質であることを特徴とする単電極タッチセンサを提供する。
【発明の効果】
【0011】
従来技術と比べると、本発明の単電極タッチセンサは以下のメリットを備える。
1.単電極摩擦電気発電機に基づく自己駆動のタッチセンサが初めて作製されたものである。当該センサは、外部の電力供給セルを必要とせず、主に、指又はタッチペンとタッチ層材料との接触、分離及びスライドによって摩擦電気発電機を触発して信号を発生し、タッチ動作に対するリアルタイムの記録及び監視を実現する。
【0012】
2.当該タッチセンサは、構造が簡単であり、作製しやすいメリットを有し、携帯電話やタブレットなどのスマート機器及びHMIに適用されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
添付される図面によって、本発明の上述の目的及びその他の目的、特徴並びに利点は、より明らかになろう。図面において、同じ符号は、同じ部分を示す。実際のサイズに基づいて等比例的に拡大または縮小したものではなく、本発明の主旨を示すのにその目的がある。なお、本明細書には、特定値を含むパラメーターを例示したが、パラメーターは相応的な値と確実に同じである必要がなく、納得可能な誤差範囲又は設計約束内に相応的な値に近づいてもよい。また、以下の実施例に言及される、例えば「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」などの方向用語は、図面を参照する方向のみである。したがって、使用される方向用語は、本発明を説明するものであり、本発明を制限するものではない。
図1】本発明のタッチセンサの典型的な構造を示す模式図である。
図2】本発明のタッチセンサの接触−分離動作に対する検知を示す動作原理図である。
図3】本発明のタッチセンサの他の典型的な構造を示す模式図である。
図4】本発明のタッチセンサのスライド動作に対する検知を示す動作原理図である。
図5】本発明のタッチセンサの他の典型的な構造を示す模式図である。
図6】本発明のタッチセンサの他の典型的な構造を示す模式図である。
図7】本発明のタッチセンサの他の典型的な構造を示す模式図である。
図8図7に示す構造のスライド動作に対する検知を示す動作原理図である。
図9】本発明のタッチセンサの他の典型的な構造を示す模式図である。
図10】本発明の実施例2によって作製されるタッチセンサの指の接触・分離に対する応答信号を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の図面を参照しながら、本発明の実施例を明らかに説明する。もちろん、説明する実施例は、本発明の一部の実施例に過ぎず、全ての実施例ではない。本発明の実施例に基づいて、進歩性に値する労力なしに取得しうる全ての実施例も、本発明の保護範囲に含まれる。
【0015】
次に、本発明に関して、模式図を参照しながら詳細に説明するが、本発明の実施例を詳細に説明するとき、前記模式図は説明の便宜上の例示に過ぎず、本発明の保護範囲を限定するものではない。
【0016】
図1は、本発明のタッチセンサの典型的な構造を示している。この構造は、タッチ層10と、一端が等電位源40に電気的に接続される検知電極層20と、信号監視素子30とを順に備え、検知電極層20をタッチ層10の下面に貼り合せ、検知電極層20は、信号監視素子30に電気的に接続される。説明の便宜上、図1の典型的な構造に基づいて本発明の原理、各部材の選択原則及び材料範囲を説明するが、もちろん、これらの内容は図1に示す実施例に限られず、本発明に開示される全ての技術的解決法に適用されることができる。
【0017】
図2を参照して、本発明の発電機の動作原理を説明する。動作原理がタッチ動作の印加物とタッチ層とが互いに接触する部分のみに関するため、図2には、両者が実際に接触する部分の表面のみに対して説明する。タッチ動作の印加物100、例えば、指がタッチ層10に接触すると、皮膚とタッチ層10との摩擦電気性質が異なるため、両者間の電子の取込み能力が異なる。皮膚の電子を失う能力が強いことを例にすれば、両者が接触した後に、接触表面の微小構造間に小さい接触スライドが発生し、これにより、摩擦が生じ表面電荷が発生される。そして、皮膚の表面に正の電荷を帯電させ、タッチ層10の表面に負の電荷を帯電させる(図2-a参照)。指100が離れると、皮膚とタッチ層10との表面電荷のバランスがこわれ、電子が検知電極層20から等電位源40に流れ、信号監視素子30が相応的な電気信号の出力を監視することができる(図2-b参照)。指100がタッチ層10から完全に離れた後に、電荷がバランス状態になって電子の流れがなくなる(図2-c参照)。指100が再びにタッチ層10の表面に近づくと、電子が等電位源40から検知電極層20に流れ、逆方向の電流を信号監視素子30に出力する(図2-d参照)。指100がタッチ層10に再びに完全に接触した後に、表面電荷がバランス状態となるため、電子が外部回路に流れず、電流の出力は観察されない(図2-a参照)。
【0018】
本発明に係る材料の摩擦電気性質とは、ある材料が他の材料と摩擦・接触する過程における電子の取込み能力であり、即ち、2種類の材料が接触・摩擦するとき、一方がプラスに帯電し、他方がマイナスに帯電する。この2種類の材料の電子の取込み能力が異なると、両者の摩擦電気性質が異なる。例えば、ポリマーナイロンはアルミニウム箔に接触すると、その表面がプラスに帯電する。即ち、電子を失う能力が強い。ポリマーポリテトラフルオロエチレンはアルミニウム箔に接触すると、その表面がマイナスに帯電する。即ち、電子の取込み能力が強い。
【0019】
ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリイソチレン、ポリウレタン弾性スポンジ、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルブチラール、ポリクロロプレン、天然ゴム、ポリアクリロニトリル、ポリジフェノールカーボネート、塩化ポリエーテル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリジメチルシロキサン、ポリテトラフルオロエチレンは、いずれも本発明のタッチ層10に適用可能なものであり、電子に対する取込み能力が上記した順でだんだん強くなる。紙幅の関係で、使用可能な全ての材料を例示することができないため、ここでは、参照として、いくつかの具体的なポリマー材料を例示した。勿論、これらの具体的な材料は、本発明の保護範囲を限定するものではない。当業者は、発明の示唆で、これらの材料の摩擦帯電の特性に応じて、類似する他の材料を容易に選択することができるだろう。
【0020】
本発明者らは、テストを通じて、タッチ層10の材料とタッチ動作の印加物との電子に対する取込み能力の差異が大きいほど、摩擦電気発電機から出力される電気信号が強くなることを見い出した。このため、タッチ動作の印加物の材料が確定された場合、上記に挙げられた材料の順に基づき、適宜なポリマー材料をタッチ層10とすることで、電気信号の最適な出力性能を取得することができる。
【0021】
摩擦電気発電機の出力性能を向上するために、タッチ層10の上面、即ち、検知電極層20が設けられていない表面に、マイクロナノ構造を全体又は一部に配置することで、タッチ層10とタッチ動作の印加物100との間の有効な接触面積を増加させ、両者の表面電荷の密度を向上させることが好ましい。当該マイクロナノ構造は、ナノワイヤ、マイクロワイヤ、ナノ粒子、ナノロッド、マイクロロッド、ナノチューブ、マイクロチューブ、ナノフラワー又は前記の構成から形成されるアレイであることが好ましい。特に、ナノワイヤ、ナノチューブ又はナノロッドからなるナノアレイであることが好ましい。当該アレイは、フォトエッチング法などの方法によって形成された線状、立方体又は四角錐の形状のアレイであってもよい。アレイにおける各マイクロナノ構造のセルのサイズは、ナノ−ミクロンレベルであり、10nm-50μmであることが好ましく、さらに50nm-10μmであることが好ましく、さらに100nm-5μmであることがさらに好ましい。具体的なマイクロナノ構造のセルのサイズや形状は、本発明の範囲を限定するものではない。
【0022】
タッチ層10は一般的に単層の薄層又は薄膜であり、厚さは100nm-1mmであり、500nm-800μmであることが好ましく、さらに10μm-500μmであることが好ましい。販売されている薄膜を使用してもよいし、スピン塗布などの方法によって作製してもよい。
【0023】
タッチ動作の印加物は一般的に手又はタッチペンであり、その中、指の皮膚が乾燥していれば、絶縁体状態となり、湿潤の条件であれば、導体となる場合がある。しかしながら、いずれの状態であっても、皮膚でないタッチ層10の材料と比べると、その摩擦電気特性が大きく異なっている。このため、その材料によるタッチ動作が明らかな信号出力を発生する。若し、タッチペンを使用すれば、タッチペンとタッチ層とが接触する接点の材料がタッチ層10の材料と異なり、両者の摩擦電気特性が大きく異なっており、センサの感度を良好にすることが好ましいことに注意すべきである。しかしながら、タッチペンの接点の材料が導体、半導体又は絶縁体であることに限られない。これは、これらの材料において、摩擦層10材料の摩擦電気特性と大きく異なる材料が存在するからである。そして、摩擦層10材料によって調整する必要がある。例えば、タッチ層10がポリジメチルシロキサン(PDMS)であれば、タッチペンの接点の材料は、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリエステル及びポリイソプチレンなどであってもよい。本発明に摩擦層10とタッチペン接点との材料間の作用原理及び材料選択の原理が提供されることを基礎とし、当業者は、簡単な試験によって、両者の材料の種類を容易に具体的に確定することができる。したがって、タッチ動作の印加物である接点の材料に対する選択は、本発明の保護範囲に属する。
【0024】
検知電極層20は導電材料からなり、前記導電材料は、金属、酸化インジウム・スズ、有機物導体又はドープ半導体であってもよいし、検知電極層20は、平板、シート又は薄膜であってもよい。その中、薄膜の厚さ選択可能な範囲は、10nm-5 mmであり、さらに50nm-1mmであることが好ましく、さらに100nm-500μmであることがより好ましい。本分野によく使用される材料は、金属、導電酸化物及び有機物導体であり、その中、金属は、金、銀、白金、アルミニウム、ニッケル、銅、チタン、クロム又はセレン、及びこれらの金属からなる合金を含み、導電酸化物は、例えば酸化インジウム・スズITOであり、有機物導体は一般的に導電高分子であり、ポリピロール、ポリフェニレンスルフィド、ポリフタロシアニン系化合物、ポリアニリン及び/又はポリチオフェンを含む。検知電極層20を、直接的な貼り合わせ又は堆積などの常法によって、タッチ層10の下面に貼り合わせ、密着な接触を形成することができる。
【0025】
本発明では、タッチ層10及び検知電極層20が必ず硬質材料であることに限られず、フレキシブル材料であってもよい。材料の硬さは、タッチ動作に対する検知及び電気信号の出力効果に明らかな影響を与えない。摩擦面が平面であることが必要であれば、他の部品の支持によって実現してもよい。したがって、当業者は、実際な状況に応じて、タッチ層10及び検知電極層20の材料の硬さを選択してもよい。
【0026】
検知電極層20と等電位源40とが電気的に接続されることは、本発明のセンサが正常に動作するキーポイントであり、当該等電位源は、接地されてもよいし、外部の補償回路によって提供されてもよい。本発明に記載の「接地」とは、大量の電荷を提供し又は受け可能な物体に接続されることを意味する。その「地」は、いずれかの電位が慣例的に零とされる大地又は導電物質、例えば、艦船又は搬送工具、または電子機器の金属ケースなどである。前記電気的な接続は、信号監視素子30によって直接に実現されてもよいし、ロード抵抗を接続することによって実現されてもよい(図3-b参照、符号701、702、……及び705はロード抵抗である)。即ち、検知電極層20は、当該ロード抵抗を介して等電位源40に電気的に接続されている。電力供給され、又は、信号監視を行う信号監視素子30は、当該ロード抵抗に並列に又は直列に接続されることによって、電気信号を監視する。ロード抵抗及び信号監視素子30の抵抗値が、出力電圧に大きい影響を与え、抵抗値が大きければ、負荷及び信号監視素子30に分配される電圧が増大する。一般的には、その抵抗値を1MΩ -200MΩとし、好ましくは10MΩ -100MΩとする。
【0027】
図3-aは、本発明のタッチセンサの他の典型的な構造を示している。この構造は、タッチ層10と、一端が等電位源40に電気的に接続される検知電極層20と、信号監視素子30とを含み、前記検知電極層20は、タッチ層10の下面に貼り合わせたいくつかの独立した電極セル201からなり、電極セル201はそれぞれ信号監視素子30に電気的に接続されている。当該センサの各部品の選択原則が図1に記載の方式と同じであるため、ここでは贅言しない。
【0028】
電極セル201について、その材料の選択及び厚さは、前記検知電極20と同じであり、薄膜であることが好ましく、堆積の方式によってタッチ層10の下面に作製されることが望ましい。各電極セル201は、規則のパターンであってもよいし、非規則のパターンであってもよい。具体的には、需要に応じて選択されることができる。全体のアレイ設計のために、規則のパターンであることが好ましく、特に、中心対称のパターンであることが好ましく、例えば、三角形、正方形、菱形、正六角形、正八角形などの規則の多角形であってもよいし、円形であってもよい。図5及び図6はそれぞれ電極セル201が正方形又は正六角形である場合のアレイ設計である。この2種類のアレイはいずれもタッチ層10の下面に電極セル201を敷き詰め、その目的は、タッチ層10全体に対してタッチ検知を行うことである。このために、隅部に他の形状の電極セル(例えば、ラダー電極セル202及び三角形の電極セル203)を補充する必要がある。タッチ層10の一部の下面に電極セル201を設けて、監視すべく位置のみに対するタッチセンシングを実現してもよい。全ての電極セルのサイズ及び形状が同じであってもよいし、異なってもよい。アレイの需要に応じて調整することができる。
【0029】
電極セル201とタッチ層10との貼合部分のサイズ、及び、隣り合う電極セル201間の間隔は全てタッチセンサの精度に関連している。面積が同じであるタッチ層10において、配布される電極セル201が大きいほど、接触位置に対する位置決めが正確になる。一方、電極セル201のサイズが大きいほど、電気信号の出力が強くなる。そして、電極セル201のサイズは、タッチ動作の印加物(例えば、指又はタッチペン)がタッチ動作を印加するとき、タッチ層10との接触表面のサイズに合わせるべきである。両者のサイズが比較可能であることが好ましく、両者がほぼ同じであり、あるいは、タッチ動作の印加物がタッチ動作を印加するときに、タッチ層10と接触する表面のサイズが電極セル201とタッチ層10との貼合部分のサイズより大きいか、あるいはほぼ同じであることがより好ましい。
【0030】
本実施形態は、図1の示す方式と類似するように、接触−分離式のタッチ動作に対して検知信号を発生できる以外、スライド式のタッチ動作を監視することもできる。その原理について、図4に示すように、タッチ動作の印加物100がタッチ層10に接触した後に、接触摩擦効果のため、タッチ動作の印加物100の下面に正の電荷を発生し、タッチ層10の相応的な部分に同量の負の電荷を発生する(図4-a参照)。タッチ動作の印加物100がタッチ層10の上面に、矢印方向に沿ってスライドすると、両者の接触面の変化により、表面電荷がバランスをなくし、これによる電位差をバランスするために、負の電荷は、電極セル201から等電位源40に流れ、これにより、電気信号が信号監視素子30から出力される。当該信号監視素子30は、位置決めの機能によって、当該位置にタッチ動作があることを表示することができる(図4-b参照)。タッチ動作の印加物100が続いて矢印方向に沿ってスライドし、左側の第1番目の電極セル201から完全に分離した後に、対応的なタッチ層10に留まれる表面電荷をバランスにするように、当該電極セル201に、同量の正の電荷が誘導される。そして、タッチ動作の印加物100とタッチ層10との間に、ステップaの動作を繰り返し、即ち、両者の接触表面に、スライド摩擦によって同量の表面電荷が流れる(図4-c参照)。左側の第1番目の電極セル201及びそれに対応するタッチ層10における表面電荷、および、電極セル201に対応しないタッチ層10における表面電荷については、環境の条件において徐々になくなって、最終的に、摩擦なしの初期状態に回復する。当該回復過程に発生する微小の電流は、ノイズとして遮蔽されることができ、センサの正常な動作に影響を与えない。
【0031】
図3-bは、タッチセンサにロード抵抗を接続する典型的な構造である。その主要な構造は、図3-aと同じである。違いは、各電極セル201がロード抵抗を介して等電位源40に電気的に接続され、複数の信号監視セル(符号が301、302、303、304及び305である)がそれぞれロード抵抗に並列に接続されるということにある。このような方式により、ロード抵抗の抵抗値を調整することによって、出力信号の強さを簡便に制御することができる。2以上のロード抵抗が含まれる場合、これらのロード抵抗が同じであってもよいし、異なってもよい。ロード抵抗の抵抗値が増加すると、出力電圧が増加し、使用者は、実際な需要に応じて、異なる位置の電極セル201に接続されるロード抵抗を調整し、需要を出力信号に満たさせることができる。
【0032】
図5は、本発明のタッチセンサの他の典型的な構造を示している。この構造は、タッチ層10と、一端が等電位源40に電気的に接続される検知電極層20と、信号監視素子30とを含み、前記検知電極層20は、タッチ層10の下面に貼り合わせるいくつかの独立した電極セル201からなり、各電極セル201は、信号監視素子30に電気的に接続され、前記信号監視素子30は、いくつかの信号監視セルを含み、図面には、第1の信号監視セル301、第2の信号監視セル302及び第3の信号監視セル303として示されている。これらの信号監視セルの類型が同じであり、異なる電極セル201に接続されている。このような技術的解決法は、一信号監視セルの監視通路数が不十分の状況に適用される。信号監視セルの監視通路数が十分である場合、各信号監視セルは、全ての電極セル201に接続されることができる。しかしながら、これらの信号監視セルの類型が異なり、例えば、第1の信号監視セル301は電流を監視し、第2の信号監視セル302は電圧を監視し、第3の信号監視セル303は電流密度を監視する。このような技術的解決法は、複数種の信号を同時に取得することができる。これにより、タッチ動作に対して複数次元の分析を実現し、センサの信号をより正確にする。信号検出セルの選択については、それは本分野の常用な手段であり、本発明の主旨がこれでないため、ここでは贅言しない。
【0033】
図7は、本発明のタッチセンサの他の典型的な構造を示している。この構造は、タッチ層10と、一端が等電位源40に電気的に接続される検知電極層20と、信号監視素子30とを含み、前記タッチ層10は、いくつかのタッチセル101からなり、前記検知電極層20は、タッチセル101の下面に貼り合わせるいくつかの独立した電極セル201からなり、各電極セル201は、信号監視素子30に電気的に接続されている。
【0034】
タッチセル101は、それぞれ、独立であってもよいし、一部が接続されて一定のパターン配列を形成してもよい。そして、各タッチセルは同じであってもよいし、異なってもよい。例えば、感度に対する要求が高い部位に対して、表面にマイクロナノ構造を有する材料、あるいは、摩擦電気特性がタッチ動作の印加物と大きく異なる材料を採用することができる。位置決めの精度に対する要求が高い部位に対して、小サイズのタッチセルを採用することで、アレイ密度を向上することができる。これらの調整原則の教示の下で、当業者は、適宜なアレイを形成するように、実際な状況に応じて、タッチセル101について、材料、サイズ及び形状を組み合わせることができる。
【0035】
図7に示す電極セル201は、タッチセル101の形状及びサイズとほぼ同じであり、そして、各タッチセル101の下面に、1つの電極セル201を対応的に貼り合せる。これは具体的な実施形態であり、実際に適用過程においてはこのような制限がない。各タッチセル101の下面に、電極セル201を1個設けてもよいし、複数設けてもよい。その形状は、タッチセル101に類似してもよいし、完全に異なってもよい。
【0036】
検知電極層20下面に位置する支持素子50は、センサ自身の一部分であってもよいし、センサの実装環境から提供されてもよい。このため、センサの組成要素でなくても良い。支持素子50を作製する材料は、絶縁体であることが好ましい。一定の機械的な強度を有し、タッチセル101及び電極セル201を支持できれば、硬質であってもよいし、フレキシブルであってもよい。
【0037】
このような構造のタッチセンサの動作原理は図8に示す通りである。具体的には、タッチ動作の印加物100がタッチセル101に接触した後に、接触摩擦効果のため、タッチ動作の印加物100の下面に正の電荷を発生し、タッチセル101の上面に同量の負の電荷を発生する(図8-a参照)。タッチ動作の印加物100が矢印方向に沿ってスライドすると、摩擦面積の変化により、タッチセル101の表面電荷にバランスをなくし、これによる電位差をバランスするために、負の電荷が電極セル201から等電位源40に流れる。これにより、信号監視素子30から信号が出力される。当該信号監視素子30は、位置決め機能によって、第1番目のタッチセル101の位置にタッチ動作があることを表示できる(図8-b参照)。タッチ動作印加物100が続いて矢印方向に沿ってスライドし、左側の第1番目のタッチセル101から完全に分離した後に、タッチセル101に留まれる表面電荷をバランスするように、それに対応する電極セル201に同量の正の電荷が誘導され、タッチ動作の印加物100と第2番目のタッチセル101との間に、スライド摩擦によって、第2番目のタッチセル101の上面の一部に負の電荷を帯電させる(図8-c参照)。タッチ動作の印加物100が第2番目のタッチセル101に完全に接触した後に、第2番目のタッチセル101の上面に形成される表面電荷が最も多くなる(図8-d参照)。タッチ動作の印加物100が続いて矢印方向に沿ってスライドすると、ステップa-dの動作の繰返しに相当する。
【0038】
図9に示す実施形態は、図7に示す実施形態と類似しており、その区別は、隣り合う電極セル201間と隣り合うタッチセル101間の間隔に、隔離層60が充填されることにある。当該隔離層60の作用は、タッチの平面を平坦化にするとともに、その機械的な強度及び寿命を増加することである。摩擦電気特性が中性である材料(例えば、木板及び有機ガラス)によって作製することが好ましい。
【0039】
本発明のタッチセンサは、タッチ動作に対して検知、位置決めを行えるとともに、タッチ際に印加される圧力を検知することもできる。タッチ層10がポリジメチルシロキサンであり、検知電極層20が酸化インジウム・スズITO薄膜であり、図3に示す方式によって形成される4×4センサを例にして、タッチ圧力に対する出力電気信号の応答を調べた。その結果、異なる電極セル201に対応するタッチ層10部分を押すと、信号検出素子30において相応的な位置に電気信号の出力があることを表示するとともに、押し力の増加と伴って、出力電圧が増大する。当該センサをプラスチック筒に固定した後に、そのセンシング特性が変化しておらず、指によってセンサの異なる位置に異なる圧力を印加すると、出力信号に明らかな違いがある。
【0040】
以下の方法によって本発明のタッチセンサを作製する。
(1)タッチ層10を用意する。
(2)必要な検知電極層20を用意し、信号監視素子30の一方の出力端に電気的に接続する。
(3)信号監視セル30の他方の出力端を等電位源40に電気的に接続する。
(4)タッチ層10を検知電極層20の上面に貼り合わせ、両者を密着に接触させる。
【0041】
指などのタッチ動作の印加物がタッチ層10に接触すると、皮膚とタッチ層10との材料の摩擦電気特性が異なるため、センサが外部へ信号を出力する。信号監視素子30によって、これらの信号をリアルタイムで採集し、これらの信号を分析することによって、タッチ動作の発生する位置が分かる。
【0042】
検知電極20が複数の電極セル201から構成すれば、ステップ(2)において、まず、複数の電極セル201が所定のパターンになるように配列し、各電極セル201を信号監視セル30に電気的に接続して、ステップ(3)を行う必要がある。
【0043】
信号監視素子30の抵抗が小さければ、ステップ(3)の後に前記検知電極層と等電位源との間にロード抵抗が接続され、このロード抵抗を前記信号監視素子に並列に接続するステップ(3-1)を更に含む。
【0044】
検知電極層20が金属材料であるタッチセンサに対して、ステップ(2)において、タッチ層10の下面に、堆積、マグネトロンスパッタリング、蒸着又は印刷プリント技術という方法によって検知電極層20を作製し、この検知電極層20を信号監視素子30の一方の入力端に電気的に接続するとともに、ステップ(4)を省略することが好ましい。
【0045】
例1:単一検知電極タッチセンサの作製
長さ10cm×幅10cm×厚さ25μmのであるAl箔を切断して電極層とする。電極層の上面に、摩擦電気材料として、スピン塗布の方法によって一層のポリマー層(PDMS)を作製する。銅のリード線がAl箔に接続され、さらに抵抗の一端に接続される。抵抗の他端は、グランドに接続される。銅線は電圧計にも接続される。手がポリマー層(PDMS)にタッチした場合、電圧計に電気信号の出力があるため、機械エネルギーを電気エネルギーに変換して発電できることを証明する。指がポリマー層(PDMS)から分離した場合、逆の電気信号が観察された。
【0046】
例2:複数電極セルタッチセンサの作製
レーザーによって、長さ10cm×幅10cm×厚さ1.59 mmである有機ガラスを切断して部品の支持素子とする。マグネトロンスパッタリングの方法によって、支持素子において、長さ1cm×幅1cmである透明な電極セル(ITO)アレイを16個作製して、検知電極層を形成する。16本の銅のリード線によって、16個の電極セルをそれぞれ16個の抵抗に接続し、各抵抗の他端はグランドに接続される。そして、各抵抗は、電圧計測装置に並列に接続される。検知電極層の上面に、一層のポリマー材料であるポリジメチルシロキサン層(PDMS)を作製し、電極アレイ全体を覆わせる。指が電極セルの上面のポリマー材料表面に接触すると、皮膚とポリマー層との摩擦性質の相違により、外部へ電気信号を出力することができる。これらの信号を収集することで、タッチの位置及び圧力に対する検知を実現することができる。当該システムは、摩擦発電機を直接に触発センサとして、外部からの電力供給を必要としないので、省エネルギーを実現し、長期間かつ安定に動作することができる。図10は、指が接触・分離するときタッチセンサから出力される電圧信号である。
【0047】
以上の記載は、本発明の最適な実施例に過ぎず、本発明を制限するものではない。当業者は、本発明の技術範囲を逸脱しない範囲で、上記に開示された方法及び技術内容に基づいて、本発明の技術的解決法に対して、いろいろ可能な変更及び修正を行ってもよいし、また、同等に変化した等価実施例に変更してもよい。したがって、本発明の技術的解決法の内容を逸脱しない限り、本発明の技術に基づいて実質的に以上の実施例に対する全ても簡単な変更、等価変化及び修正は、全て本発明の技術的解決法が保護する範囲内に属する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10