特許第6353553号(P6353553)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6353553無水フタル酸の製造のための最適化された表面積を有する触媒配置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6353553
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】無水フタル酸の製造のための最適化された表面積を有する触媒配置
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/02 20060101AFI20180625BHJP
   B01J 27/198 20060101ALI20180625BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20180625BHJP
   C07D 307/89 20060101ALI20180625BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20180625BHJP
【FI】
   B01J35/02 P
   B01J27/198 Z
   B01J35/10 301J
   C07D307/89 A
   !C07B61/00 300
【請求項の数】16
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-563425(P2016-563425)
(86)(22)【出願日】2015年4月23日
(65)【公表番号】特表2017-514674(P2017-514674A)
(43)【公表日】2017年6月8日
(86)【国際出願番号】EP2015058854
(87)【国際公開番号】WO2015162230
(87)【国際公開日】20151029
【審査請求日】2016年12月6日
(31)【優先権主張番号】102014005939.1
(32)【優先日】2014年4月24日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】596081005
【氏名又は名称】クラリアント・インターナシヨナル・リミテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】リヒター・オーリヴァー
(72)【発明者】
【氏名】メストル・ゲルハルト
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ・フェリクス
(72)【発明者】
【氏名】ピッチ・ヴェルナー
(72)【発明者】
【氏名】フロム・ナディネ
(72)【発明者】
【氏名】シンケ・ペーター
【審査官】 西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−541245(JP,A)
【文献】 特表2008−540124(JP,A)
【文献】 国際公開第98/017608(WO,A1)
【文献】 特表2010−513380(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J21/00−38/74
C07D307/89
C07B61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出発ガス用のガス入口部および生成ガス用のガス出口部、ならびに触媒体から構成される第1触媒領域および少なくとも、触媒体から構成される第2触媒領域を有する反応器を含み、上記第1触媒領域が上記ガス入口部に、そして上記第2触媒領域がガス流方向において第1触媒領域の後に続いて配置され、上記触媒体が活性組成物の外層を有する、芳香族炭化水素の気相酸化により無水フタル酸を製造するための触媒装置であって、上記第1触媒領域および/または上記第2触媒領域において、上記活性組成物含有量が触媒体の全重量を基準として7重量%未満であり、そして、各触媒領域において、活性組成物の全表面積と触媒領域の体積との比が、10000cm−1〜20000cm−1であることを特徴とする触媒装置。
【請求項2】
第1触媒領域および/または第2触媒領域の上記活性組成物含有量が、触媒体の全重量を基準として、6重量%未満であることを特徴とする、請求項1に記載の触媒装置。
【請求項3】
第1触媒領域における活性組成物の全表面積と触媒領域の体積との比と、第触媒領域における比との間の相違が、15%未満であることを特徴とする、請求項1または2に記載の触媒装置。
【請求項4】
第1触媒領域の触媒体の質量を基準とした第1触媒領域の触媒体における活性組成物担持が、第2触媒領域の触媒体の質量を基準とした第2触媒領域の触媒体における活性組成物担持よりも高いことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1つに記載の触媒装置。
【請求項5】
第1触媒領域の触媒体の活性組成物が、第2触媒領域の触媒体の活性組成物よりも低いBET表面積を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1つに記載の触媒装置。
【請求項6】
第1触媒領域の触媒体が、活性組成物の質量を基準として、第2触媒領域の触媒体よりも低いパーセントのV含有量を有する活性組成物を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1つに記載の触媒装置。
【請求項7】
第1触媒領域の触媒体が、活性組成物の質量を基準として、第2触媒領域の触媒体よりも低いパーセントのプロモーター含有量を有する活性組成物を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1つに記載の触媒装置。
【請求項8】
少なくとも第3触媒領域がガス流通方向において第2触媒領域に続いて配置され、当該第3触媒領域における活性組成物の全表面積と触媒領域の体積との比と、第1触媒領域における比との間の相違が、15%未満であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1つに記載の触媒装置。
【請求項9】
第2触媒領域の触媒体の質量を基準とした第2触媒領域の触媒体における活性組成物担持が、第3触媒領域の触媒体の質量を基準とした第3触媒領域の触媒体における活性組成物担持よりも低いことを特徴とする、請求項8に記載の触媒装置。
【請求項10】
第2触媒領域の触媒体が、第3触媒領域の触媒体よりも高いBET表面積を有する活性組成物を有することを特徴とする、請求項8または9に記載の触媒装置。
【請求項11】
第2触媒領域の触媒体が、活性組成物の質量を基準として、第3触媒領域の触媒体よりも高いパーセントのV含有量を有する活性組成物を有することを特徴とする、請求項8〜10のいずれか1つに記載の触媒装置。
【請求項12】
第2触媒領域の触媒体が、活性組成物の質量を基準として、第3触媒領域の触媒体よりも高いプロモーター含有量を有する活性組成物を有することを特徴とする、請求項8〜11のいずれか1つに記載の触媒装置。
【請求項13】
ガス流通方向における第1触媒領域の長さが、ガス流通方向における反応器の長さの5〜25%であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1つに記載の触媒装置。
【請求項14】
ガス流通方向における第2触媒領域の長さが、ガス流通方向における反応器の長さの30〜60%であることを特徴とする、請求項8〜12のいずれか1つに記載の触媒装置。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1つに記載の触媒装置に芳香族炭化水素を含む出発ガスを装入することを特徴とする、芳香族炭化水素の気相酸化により無水フタル酸を製造するための方法。
【請求項16】
無水フタル酸の製造のための、請求項1〜14のいずれか1つに記載の触媒装置の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出発ガス用のガス入口部および生成ガス用のガス出口部、ならびに触媒体から構成される第1触媒領域および少なくとも、触媒体から構成される第2触媒領域を有する反応器を含み、上記第1触媒領域が上記ガス入口部に、そして上記第2触媒領域がガス流方向において第1触媒領域の後に続いて配置され、上記触媒体が活性組成物の外層を有する、芳香族炭化水素の気相酸化により無水フタル酸を製造するための触媒装置であって、上記第1触媒領域および/または上記第2触媒領域において、上記活性組成物含有量が触媒体の全重量を基準として7重量%未満であり、そして、各触媒領域において、活性組成物の全表面積と触媒領域の体積との比が、好ましくは10000cm−1〜20000cm−1、特に好ましくは12000cm−1〜16000cm−1であることを特徴とする触媒装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無水フタル酸の大規模生産は、オルト−キシレンおよび/またはナフタレンの触媒的な気相酸化により行われる。この目的のためには、上記反応に適した触媒、通常バナジウム含有触媒が反応器に供され、反応ガスを触媒に導入する。好ましくは、反応器としては、多数の管が平行に配置され、冷却剤が周囲を流れる、いわゆる管束型反応器(Rohrbuendelreaktor)が使用される。冷却剤としては、通常、融解塩、例えばNaNOおよびKNOからの共融混合物が使用される。触媒は触媒体の形態で管内に充填される。最も簡単な場合、均一床が使用される。その後、当該床にわたって、酸素含有ガス(大抵は空気)および酸化すべき炭化水素(大抵はオルト−キシレンまたはナフタレン)からの混合物を含有する反応ガスを導入する。
【0003】
近年は、担体リング(大抵はステアタイト)上に層として塗布されたV−TiO含有活性組成物をベースとする工業的な無水フタル酸触媒が使用されている。炭化水素の酸化は非常に発熱性であり、その結果、特に反応器入口の領域において強い熱の発生が観察され、それが炭化水素の完全酸化および触媒の不活性化をもたらし得る。それによって生じる生産性の損失を避けるために、管内において異なる活性の触媒の領域が重なり合って配置されている構造化された触媒床、すなわち触媒装置を使用するように変わってきている。現在、多くの場合に、三領域−または四領域の触媒床が使用され、ここで、反応器入口部に比較的低い活性を有する第1触媒領域が配置され、その後に徐々に高められた活性を有する触媒領域が続く。従って、最も高い活性を有する触媒領域が、反応器出口部に配置される。このような系は、例えば、文献WO99/61434A1(特許文献1)、WO99/61433A1(特許文献2)またはWO2004/103944A1(特許文献3)から公知である。
【0004】
最近になって、4つまたはそれ以上の領域を有する触媒系であって、反応器入口部に最初に、より高い活性の触媒の比較的短い領域が配置される触媒系が使用されるように変わってきている。より高い活性のこの領域に、より低い活性を有する領域が続き、それに触媒活性が再び上昇するさらなる領域が続く。このような触媒系は、例えば、文献WO2007/134849A1(特許文献4)およびWO2011/032658A1(特許文献5)から公知である。
【0005】
WO2006/092304A1(特許文献6)は、ガス入口部に最も近く存在する少なくとも1つの触媒領域、ガス出口部により近くに存在する第2の触媒領域、およびガス出口部にさらに近いかまたはガス出口部に存在する第3の触媒領域を含み、上記触媒領域が、好ましくは、それぞれTiOを含有する活性組成物を有する触媒の、o−キシレンおよび/またはナフタレンの気相酸化による無水フタル酸の製造のための使用であって、第1触媒領域の触媒活性が第2触媒領域の触媒活性よりも高いことを特徴とする使用を開示している。第1触媒領域の活性は、当業者に知られている全ての方法により、それが後続の第2触媒領域の活性よりも高くなるように調節することができる。好ましい実施態様によれば、第1触媒領域における高められた活性は、例えば、第1触媒領域における嵩密度を高くすることにより、例えば、使用した不活性成形体の他の(環状の)形状を使用することにより達成することができる。
【0006】
WO2008/077791A1(特許文献7)は、芳香族炭化水素および分子状酸素を含むガス状流を2つまたはそれ以上の触媒領域を通して導入する、気相酸化のための方法を記載している。さらに、この公開公報は、前方層の使用下における気相反応のための触媒系に関する。直径×高さの積、または前方にある不活性リングおよび/または触媒リングの体積は、少なくとも1つの後続の触媒層より小さいか、あるいは、前方にある不活性リングおよび/または触媒リングの体積あたりの表面積の指数は、少なくとも1つの後続の触媒層よりも大きい。
【0007】
EP0985648A1(特許文献8)は、分子状酸素含有ガスと置換基を有してもよい炭化水素とを含むガス状混合物を固定触媒床に装入する、炭化水素の気相酸化に関し、そして、原料のガス状混合物の流通方向に対して、触媒層の空隙率が流れ方向に1段階以上にわたって増大する固定触媒床に原料ガス混合物を装入することによって実施される気相酸化のための方法を提供する。
【0008】
オルト−キシレンまたはナフタレンの酸化では、所望の生成物である無水フタル酸の他に、一連の望ましくない副生成物も生じ、これらは不完全な酸化によりまたは過剰な酸化により発生する。不完全な酸化により生じる副生成物は、主にオルト−トリルアルデヒドおよびフタリドである。過剰酸化により生じる副生成物は、主に一酸化炭素、二酸化炭素および無水マレイン酸と、より少量の安息香酸およびシトラコン酸無水物である。最終生成物において出来るだけ少ない率の副生成物(特に無水マレイン酸を含む)を伴う、無水フタル酸への酸化のできるだけ高い選択性と、同時に出発生成物の高い転化率が望ましい。
【0009】
現在、83モル%までの無水フタル酸のモル選択率が達成されている。オルト−キシレンまたはナフタレンから無水フタル酸への酸化の選択性をさらに高めるために、触媒系の種々のパラメーターを変えることができる。従って、触媒の組成を変えるか、または触媒床の特性を変えることもできる。このために、例えば、個々の触媒領域の配置および長さを変えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO99/61434A1
【特許文献2】WO99/61433A1
【特許文献3】WO2004/103944A1
【特許文献4】WO2007/134849A1
【特許文献5】WO2011/032658A1
【特許文献6】WO2006/092304A1
【特許文献7】WO2008/077791A1
【特許文献8】EP0985648A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、芳香族炭化水素の気相酸化により無水フタル酸を製造するための触媒装置であって、従来技術から公知の触媒装置と比較して、無水フタル酸の高められた収率を可能にし、より高い純度を有する粗製無水フタル酸が得られる装置を提供することである。
【0012】
本発明の課題は、出発ガス用のガス入口部および生成ガス用のガス出口部、ならびに触媒体から構成される第1触媒領域および少なくとも、触媒体から構成される第2触媒領域を有する反応器を含み、上記第1触媒領域が上記ガス入口部に、そして上記第2触媒領域がガス流方向において第1触媒領域の後に続いて配置され、上記触媒体が活性組成物の外層を有する、芳香族炭化水素の気相酸化により無水フタル酸を製造するための触媒装置であって、上記第1触媒領域および/または上記第2触媒領域において、上記活性組成物含有量が触媒体の全重量を基準として7重量%未満であり、そして、各触媒領域において、活性組成物の全表面積と触媒領域の体積との比が、好ましくは10000cm−1〜20000cm−1、特に好ましくは12000cm−1〜16000cm−1であることを特徴とする触媒装置により、解決される。
【0013】
本発明の方法は、1つまたは複数の反応器において実施され、上記1つまたは複数の反応器は好ましくは管状である(反応管または管)。反応器の開口部、典型的には反応管の2つの開口部が、フィードガスのための反応器入口および生成ガスのための反応器出口を形成し、その結果、ガス入口部、ガス出口部およびガス流通方向が存在する。反応器は、例えば、塩浴において340℃〜450℃の温度に加熱され、発熱反応によりおよび任意選択的に存在する異なる触媒領域により、温度プロファイルが形成される。
【0014】
好ましくは管状の反応器は、それぞれの場合に直径(D)を有し、ここでは反応器の内径を指す。好ましくは、10〜50mm、より好ましくは20〜40mmの範囲内の反応器の直径(D)が選択される。上記管状反応器は、同様に、例えば2〜5mの通常の範囲において選択される管の長さ(L)を有する。ここで、上記の管の長さLは、触媒体を充填する反応管の長さの割合に対応する。
【0015】
上記反応器はそれぞれの場合に、オルト−キシレンまたはナフタレンの気相酸化を触媒する触媒体で充填される。上記触媒体は、通常、バナジウム含有活性組成物を、すなわち触媒的に活性な組成物が負荷される不活性な担体からなる。本発明では、少なくとも2つの触媒領域が形成されなければならず、ここで1つの触媒領域は反応器において触媒体の均一な床である。ここで、反応器における軸方向のまたはガス流通方向の床の広がりが、各触媒領域xの長さLに相当する。垂直に配置された管として反応器が形成される場合、各触媒領域の長さは、各触媒領域の充填高さと同義である。x番目の触媒領域は、ガス入口部から数える。反応を実施するために、反応器を通して、例えば上部から下部まで、1時間あたり約2〜5Nmの空気を30〜100gオルト−キシレン/Nm空気の負荷で、約1.2〜1.6barの全圧において装入する。一般に、相前後して続く触媒領域は、直接的に相前後して続くことができ、すなわち、接触していることができ、あるいは不活性体の領域によって互いに隔てて存在することもできる。
【0016】
第1触媒領域は、反応器のガス入口部へ向けられ、そこにガス流通方向に第1の触媒領域の触媒体とは異なる触媒体からなる少なくとも第2の触媒領域が直接続く。本発明において、第1触媒領域は、第2触媒領域よりも高い空隙率を有することができる。
【0017】
第1触媒領域は、1m未満の、好ましくは10〜50cmの長さを有することができる。第1触媒領域は管の長さLの5〜25%、特に好ましくは15〜25%の長さ比を有することが好ましい。
【0018】
第2触媒領域は、0.3〜3m、好ましくは0.85〜2m、特に好ましくは1〜2mの長さを有することができる。第2触媒領域は管の長さLの15〜60%、特に好ましくは20〜60%または30〜50%の長さ比を有することが好ましい。
【0019】
第2触媒領域に、ガス流通方向においてさらなる触媒領域、例えば第2触媒領域に直接接続される第3触媒領域が続くことができ、そして任意選択的に該第3触媒領域に直接接続される第4触媒領域が続くことができる。対応の第5触媒領域も、通常は不要であるが、可能である。
【0020】
第3触媒領域は、1m未満の、好ましくは50〜70cmの長さを有することができる。第3触媒領域は、管の長さLの約10〜30%の長さ比を占めることができ、特に第3触媒領域が最後の、すなわち反応器出口の最も近くにある触媒領域である場合には、好ましくは管の長さLの20〜50%という第3触媒領域に関する長さ比が好ましい。
【0021】
第4触媒領域は、30〜150cm、好ましくは55〜75cmの長さを有することができる。そのような第4触媒領域は、管の長さLの約10〜40%、特に好ましくは10〜30%の長さ比を占めることができ、特に第4触媒領域が最後の、すなわち反応器出口の最も近くにある触媒領域である場合には、管の長さLの15〜25%という第4触媒領域に関する長さ比が好ましい。
【0022】
さらに特に好ましい実施態様において、第1触媒領域の管の長さLに対する長さ比は15〜25%であり、第2触媒領域は20〜50%、第3触媒領域は20〜50%、第4触媒領域は15〜25%である。
【0023】
本発明において、第1触媒領域に関しておよび/または第2触媒領域に関して、活性組成物の全表面積と触媒領域の体積との比(OF/V)は、好ましくは10000cm−1〜20000cm−1、特に好ましくは12000cm−1〜16000cm−1である。活性組成物の全表面積は式1に従って算出される:
【0024】
【数1】
【0025】
上記全質量は、計量によって、または嵩密度を通して式2によって決定することができる:
【0026】
【数2】
【0027】
触媒領域の体積Vは、式3に従って算出される:
【0028】
【数3】
【0029】
活性組成物の全表面積と触媒領域の体積との比は、第1触媒領域と第2触媒領域の間で、5%を超えて、または7%を超えて異なることができる。
【0030】
異なる触媒領域の触媒体はまた、活性組成物含有量でも異なっていることができる。本発明において、第1触媒領域および/または第2触媒領域の触媒体は、触媒体の全重量を基準として、1〜7重量%、好ましくは2〜6重量%、特に好ましくは3〜5重量%、より好ましくは4重量%未満の活性組成物含有量を有する。本発明において、第3触媒領域および/または第4触媒領域の触媒体は、触媒体の全重量を基準として、3〜12重量%、好ましくは4〜10重量%の活性組成物含有量を有する。
【0031】
第1触媒領域の活性組成物含有量が、第2触媒領域の活性組成物含有量より高いことが好ましい。例えば、それぞれの場合に触媒体の全重量を基準として、第1触媒領域の触媒体の活性組成物含有量は7〜9重量%であり、第2触媒領域の活性組成物含有量は2〜6重量%であることができる。任意選択的に続く第3および第4の触媒領域に関して、活性組成物含有量mは第2から第4触媒領域まで増加するか、あるいは第2から第3触媒領域まで増加し、第3から第4触媒領域は同じままであることが好ましい。
【0032】
活性組成物は、バナジウムの他に、多数のプロモーター、例えばアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属、アンチモン、リン、鉄、ニオブ、コバルト、モリブデン、銀、タングステン、スズ、鉛、ジルコニウム、銅、金および/またはビスマス、ならびに上記成分の2つまたはそれ以上の混合物を有することができる。1つの実施態様において、個々の領域の触媒体は、それらの活性組成物の組成が異なる。表1に活性組成物の典型的な組成の概要を示す。
【0033】
【表1】
【0034】
上記活性組成物は好ましくは、それぞれの場合に、活性組成物の全重量を基準として、5〜15重量%のV、0〜5重量%のSb、0.2〜0.75重量%のCs、0〜5重量%のNbを含む。上記成分の他に、上記活性組成物の残りは、完全にまたは本質的にTiOからなる。そのような活性組成物は、例えば有利には、第1触媒領域または第2触媒領域の触媒体において使用することができる。
【0035】
好ましくは、上記触媒体は、触媒層に依存して、様々に組み合わされた活性組成物を有し、および/または個々の触媒層の活性組成物は物理化学的特性の点で異なる。1つの実施態様において、触媒のもしくは活性組成物のBET表面積は、15〜約30m/gである。しかしながら、上記活性組成物は例えば、触媒体においてそれぞれの場合に、触媒層に依存して、異なるBET表面積を有することができる。
【0036】
ここで、好ましい実施態様において、第1触媒領域の活性組成物のBET表面積は、第4触媒領域の活性組成物まで増加する。BET表面積に関して適当な範囲は、例えば、第1触媒領域に関して15〜25m/g、第2触媒領域に関して15〜30m/g、第3触媒領域に関して15〜30m/g、そして第4触媒領域に関して20〜45m/gである。
【0037】
特に好ましい実施態様において、第1触媒領域の触媒体の活性組成物は、それぞれの場合に、活性組成物の全重量を基準として、5〜16重量%のV、0〜5重量%のSb、0.2〜0.75重量%のCs、0〜1重量%のPおよび0〜3重量%のNbを含む。活性組成物の残りは、少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、さらに好ましくは少なくとも98重量%、特に少なくとも99重量%、より好ましくは少なくとも99.5重量%、特に100重量%までTiOからなる。ここで特に好ましい実施態様において、TiOのBET表面積は15〜約25m/gである。
【0038】
特に好ましい実施態様において、第2触媒領域の触媒体の活性組成物は、それぞれの場合に、活性組成物の全重量を基準として、5〜15重量%のV、0〜5重量%のSb、0.2〜0.75重量%のCs、0〜1重量%のPおよび0〜2重量%のNbを含む。活性組成物の残りは、少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、さらに好ましくは少なくとも98重量%、特に少なくとも99重量%、より好ましくは少なくとも99.5重量%、特に100重量%までTiOからなる。ここで特に好ましい実施態様において、TiOのBET表面積は15〜約45m/gである。
【0039】
特に好ましい実施態様において、第3触媒領域の触媒体の活性組成物は、それぞれの場合に、活性組成物の全重量を基準として、5〜15重量%のV、0〜4重量%のSb、0.05〜0.5重量%のCs、0〜1重量%のPおよび0〜2重量%のNbを含む。活性組成物の残りは、少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、さらに好ましくは少なくとも98重量%、特に少なくとも99重量%、より好ましくは少なくとも99.5重量%、特に100重量%までTiOからなる。ここで、TiOが15〜25m/gのBET表面積を有することが好ましい。
【0040】
特に好ましい実施態様において、第4触媒領域の触媒体の活性組成物は、それぞれの場合に、活性組成物の全重量を基準として、5〜25重量%のV、0〜5重量%のSb、0〜0.2重量%のCs、0〜2重量%のPおよび0〜1重量%のNbを含む。活性組成物の残りは、少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、さらに好ましくは少なくとも98重量%、特に少なくとも99重量%、より好ましくは少なくとも99.5重量%、特に100重量%までTiOからなる。上記第4触媒領域が反応器のガス出口部に位置する(最後の)触媒領域である場合、よりガス入口部の近くにある触媒領域のTiOのBET表面積よりもいくらか高いTiOのBET表面積が好ましい。第4触媒領域の活性組成物のTiOは、約15〜45m/gの範囲であることが好ましい。
【0041】
さらに、個々の触媒領域の触媒体はそれらの固有活性の点で異なっていることができ、異なる固有活性は、例えば、活性組成物の異なる組成により生じ得る。本発明において、第1触媒領域の触媒体は、第2触媒領域の触媒体よりも高い固有活性を有することが好ましい。
【0042】
触媒体の固有活性Kは、反応が極小の小さい触媒粒子において進行し、反応が周辺の粒子により影響を受けない条件下での所定の反応のための活性組成物の活性と理解される。そのような条件は、0℃の反応器にわたる温度勾配、ガスの無限の空時速度および極小の小さい触媒粒子間の無限の距離に相当するであろう。そのような固有活性は、例えば一連の実験により決定することができ、それにより、そのような理想状態に相当する状態における触媒体の活性を外挿することが可能である(例えば、0の転化率への実験結果の外挿)。
【0043】
固有活性の決定の実際的な実施において、1つの実施態様において、所定の形状および活性組成物の所定の含有量を有する触媒体が製造される。さらに、上記反応は、反応が実際に進行する次数に関係なく、一次で進行すると仮定する。この標準化触媒体をその後、ガス入口部およびガス出口部の間の温度差が25℃未満、好ましくは10℃未満となるように不活性体で希釈し、すなわち、反応はほぼ等温条件下で進行し、ここで反応器に関して圧力の低下は30mbar未満、好ましくは10mbar未満であり、転化率は65〜95%の範囲の値に調節される。
【0044】
このために、触媒体を不活性体で希釈する。触媒体および不活性体の形状は、要求されるわずかな圧力低下が実現するように選択される。不活性体と触媒体との比は、要求される転化率が達成され、同時に要求されるガス入口とガス出口の間の低い温度差が保たれるように熱発生が低くなるように選択される。触媒体または不活性体の嵩密度から求められる体積を基準として、触媒体と不活性体との比は、好ましくは、1:5〜1:10から選択される。試験反応器の寸法は、観察する反応に応じて、反応器の長さに関しては1〜6m、直径に関しては18〜32mmの間で選択される。速い反応では短い長さが選択されるのに対して、遅く進行する反応では要求される転化率を達成するためにより大きい反応距離が必要である。
【0045】
次いで、特定の空時速度および種々の特定の温度で、触媒体の活性組成物により触媒される反応の転化率を測定する。その後、転化率から、転化率に依存する、活性組成物を基準とした触媒の活性定数Aを式4に従って算出することができる:
【0046】
【数4】
【0047】
ここで以下を意味する:
:所定の温度およびGHSVにおける、活性組成物を基準とした活性組成物の活性定数;
GHSV:空時速度[h−1
Aktivmasse:反応器に導入した活性組成物の量[g];
U:出発物質の転化率、ここでUは式5に従って算出される。
【0048】
【数5】
【0049】
その後、転化率Uの関数として求めた活性組成物をベースとする活性定数Aから、0の転化率に対する直線外挿により触媒の固有活性Aibを決定する。外挿のために採用されるべき転化率は、これらが転化率の活性組成物ベースの活性定数に依存性の直線範囲に存在するように選択される(例えば60%〜90%の転化率)。
【0050】
触媒装置の稼働の間、温度プロファイルが形成される。ここで、当該温度プロファイルは、芳香族炭化水素の気相酸化において、第1触媒領域における最大温度が、第2触媒領域におけるよりも10〜100℃、より好ましくは20〜90℃、最も好ましくは30〜70℃低いようなものが好ましい。
【0051】
第3触媒領域が存在する場合、第3触媒領域の固有活性は好ましくは第2触媒領域のものよりも高い。好ましくは、反応の間、第2触媒領域から第3触媒領域まで低下する温度プロファイルが形成される。特に、当該温度ファイルは、炭化水素の気相酸化において、第3触媒領域における最大温度が、第2触媒領域におけるよりも10〜100℃、より好ましくは20〜90℃、最も好ましくは30〜70℃低いようなものである。
【0052】
第4触媒領域が存在する場合、第4触媒領域の固有活性は好ましくは第3触媒領域のものよりも高い。ここで、好ましくは、温度プロファイルは第2触媒領域から第4触媒領域まで(およびまた第3触媒領域まで)低下する(それぞれの場合に各領域における最大温度を基準として、T>T>T)。特に、当該温度ファイルは、炭化水素の気相酸化において、第4触媒領域における最大温度が、第2触媒領域におけるよりも10〜100℃、より好ましくは20〜90℃、最も好ましくは30〜70℃低く、そして第3触媒領域におけるよりも1〜50℃、より好ましくは5〜25℃、最も好ましくは5〜10℃低いようなものである。
【0053】
特に、固有活性が第1触媒領域から第2触媒領域まで低下し、その後第2触媒から第4触媒まで上昇するのが好ましい(A>A<A<A。A=各領域における活性組成物の固有活性)。さらに、第1触媒領域から第2触媒領域まで上昇し、第2触媒領域から第4触媒領域まで低下し(それぞれの場合に各領域における最大温度を基準として、T<T>T>T)、第2触媒領域において温度最大値が形成される温度プロファイルが好ましい。
【0054】
上記触媒体は、不活性な担体およびその上に担持された活性組成物からなる。触媒領域の触媒体は、活性組成物の薄い層を不活性な担体上に載せる通常の方法により製造される。このためには例えば、活性組成物の懸濁液、または活性組成物の成分に変換される前駆体化合の溶液もしくは懸濁液を、不活性担体上に噴霧することができる。これは例えば、80〜200℃の温度で流動床において行うことができる。しかしながら、上記活性物質を、例えば、コーティングドラムタイプにおいて不活性担体上に塗布することもできる。
【0055】
コーティング工程のために、活性成分および有機バインダー、好ましくは酢酸ビニル/ラウリン酸ビニル、酢酸ビニル/エチレンまたはスチレン/アクリレートのコポリマーの水溶液もしくは水性懸濁液を、1つまたは複数のノズルを通して、加熱し流動化した担体上に噴霧する。最も高い生成物速度の位置に噴霧液を導入するのが特に有利であり、それにより、噴霧物質を均一に床上に分布させることができる。噴霧工程は、懸濁液が消費されるかまたは必要量の活性成分が担体上に施されるまで継続される。活性成分は、活性組成物の成分、特に活性組成物に含まれる金属化合物であると理解される。上記活性成分は、酸化物として、または前駆体化合物の形態で使用することができる。前駆体化合物は、例えば空気中での加熱により活性組成物の成分、すなわち酸化物に変換できる化合物であると理解される。適切な前駆体化合物は例えば、金属の硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、酢酸塩または塩化物である。
【0056】
1つの実施態様において、活性組成物を適当なバインダーを用いて流動床または移動床にいおいて施し、その結果コーティングされた触媒が生産される。適当なバインダーには、当業者に公知の有機バインダー、好ましくはコポリマー、有利には酢酸ビニル/ラウリン酸ビニル、酢酸ビニル/アクリレート、スチレン、アクリレート、酢酸ビニル/マレエートおよび酢酸ビニル/エチレンの水性懸濁液の形態のコポリマーが含まれる。特に好ましくは、有機ポリマーもしくはコポリマー接着剤、特に酢酸ビニルコポリマー接着剤がバインダーとして使用される。使用されるバインダーは、通常の量で、例えば活性組成物の固体含有量を基準として10〜20重量%で、活性組成物に添加される。例えば、EP744214が参照される。
【0057】
バインダー含有量の測定は、コーティングされた触媒体を450℃で7時間焼成することによって行われ、ここで有機バインダーは完全に熱分解する。バインダー含有量は、焼成に引き続いて式6に従って決定される:
【0058】
【数6】
【0059】
活性組成物の物理化学的な特性分析(BET、化学分析)を、バインダーの熱分解後に、活性組成物を篩を用いて担体リングから機械的に分離することにより行う。残りの、なおも担体リングに付着している部分の活性組成物は、超音波処理によって完全に除去する。引き続き、洗浄した担体リングを120℃で乾燥オーブンにおいて乾燥し、重量を測定した。引き続き、活性組成物の割合を式7に従って決定する。
【0060】
【数7】
【0061】
上記材料の比表面積の測定は、DIN66131に従ってBET法で行い;BET法の文献はJ.Am.Chem.Soc.60,309(1938)にも見出される。測定すべきサンプルを、石英管において350℃で減圧下で乾燥した(1.5時間、F=50ml(分))。その後、反応器を室温に冷却し、真空にし、液体窒素を含むDewar容器に浸した。窒素吸着を、RXM100 sorption system(Advanced Scientific Design,Inc.)を用いて77Kで行った。
なお、本願は特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る:
1.出発ガス用のガス入口部および生成ガス用のガス出口部、ならびに触媒体から構成される第1触媒領域および少なくとも、触媒体から構成される第2触媒領域を有する反応器を含み、上記第1触媒領域が上記ガス入口部に、そして上記第2触媒領域がガス流方向において第1触媒領域の後に続いて配置され、上記触媒体が活性組成物の外層を有する、芳香族炭化水素の気相酸化により無水フタル酸を製造するための触媒装置であって、上記第1触媒領域および/または上記第2触媒領域において、上記活性組成物含有量が触媒体の全重量を基準として7重量%未満であり、そして、各触媒領域において、活性組成物の全表面積と触媒領域の体積との比が、10000cm−1〜20000cm−1、好ましくは12000cm−1〜16000cm−1であることを特徴とする触媒装置。
2.第1触媒領域および/または第2触媒領域の上記活性組成物含有量が、触媒体の全重量を基準として、6重量%未満、特に好ましくは5重量%未満またはより一層好ましくは4重量%未満であることを特徴とする、上記1に記載の触媒装置。
3.第1触媒領域における活性組成物の全表面積と触媒領域の体積との比と、第2触媒領域における比との間の相違が、15%未満、好ましくは10%未満であることを特徴とする、上記1または2に記載の触媒装置。
4.それぞれの場合に触媒体の質量を基準として、第1触媒領域の触媒体が第2触媒領域の触媒体よりも高い活性組成物担持を有することを特徴とする、上記1〜3のいずれか1つに記載の触媒装置。
5.第1触媒領域の触媒体の活性組成物が、第2触媒領域の触媒体の活性組成物よりも低いBET表面積を有することを特徴とする、上記1〜4のいずれか1つに記載の触媒装置。
6.第1触媒領域の触媒体が、活性組成物の質量を基準として、第2触媒領域の触媒体よりも低いパーセントのV含有量を有する活性組成物を有することを特徴とする、上記1〜5のいずれか1つに記載の触媒装置。
7.第1触媒領域の触媒体が、活性組成物の質量を基準として、第2触媒領域の触媒体よりも低いパーセントのプロモーター含有量を有する活性組成物を有することを特徴とする、上記1〜6のいずれか1つに記載の触媒装置。
8.少なくとも第3触媒領域がガス流通方向において第2触媒領域に続いて配置され、当該第3触媒領域における活性組成物の全表面積と触媒領域の体積との比と、第1触媒領域における比との間の相違が、15%未満、好ましくは10%未満であることを特徴とする、上記1〜7のいずれか1つに記載の触媒装置。
9.それぞれの場合に触媒体の質量を基準として、第2触媒領域の触媒体が第3触媒領域の触媒体よりも低い活性組成物担持を有することを特徴とする、上記8に記載の触媒装置。
10.第2触媒領域の触媒体が、第3触媒領域の触媒体よりも高いBET表面積を有する活性組成物を有することを特徴とする、上記8または9に記載の触媒装置。
11.第2触媒領域の触媒体が、活性組成物の質量を基準として、第3触媒領域の触媒体よりも高いパーセントのV含有量を有する活性組成物を有することを特徴とする、上記8〜10のいずれか1つに記載の触媒装置。
12.第2触媒領域の触媒体が、活性組成物の質量を基準として、第3触媒領域の触媒体よりも高いプロモーター含有量を有する活性組成物を有することを特徴とする、上記8〜11のいずれか1つに記載の触媒装置。
13.ガス流通方向における第1触媒領域の長さが、ガス流通方向における反応器の長さの5〜25%であることを特徴とする、上記1〜12のいずれか1つに記載の触媒装置。
14.ガス流通方向における第2触媒領域の長さが、ガス流通方向における反応器の長さの30〜60%であることを特徴とする、上記8〜12のいずれか1つに記載の触媒装置。
15.上記1〜14のいずれか1つに記載の触媒装置に芳香族炭化水素を含む出発ガスを装入することを特徴とする、芳香族炭化水素の気相酸化により無水フタル酸を製造するための方法。
16.無水フタル酸の製造のための、上記1〜14のいずれか1つに記載の触媒装置の使用。
【実施例】
【0062】

触媒的測定を、触媒体から構成される4領域触媒装置上で実施した。触媒体の合成のために、Ring8x6x5およびRing6x5x4と表される2つの異なるタイプのステアタイトリングを成形体として使用した。リングの幾何的寸法の命名法は、外径(Da)[mm]×高さ(H)[mm]×内径(Di)[mm]に対応する。コーティングされていない成形体の幾何的寸法は表2から明らかである。コーティングされていない成形体を、コーティング装置に導入し、活性組成物で均一にコーティングした。コーティング工程の間、活性成分および有機バインダーの水性懸濁液を、約50〜150μmの活性組成物層が形成されるまで、加熱して流動化した担体上に複数のノズルを通して噴霧する。表3は、使用した触媒体およびそれぞれの場合における活性組成物の組成に関する概要を示す。
【0063】
触媒領域の形成のために、25mmの内径および4mの長さを有する塩浴冷却管に、各触媒体を充填した。温度測定のための伸縮自在要素が取り付けられた3mmのサーモスリーブ(Thermohuelse)を、管において中央に配置した。
【0064】
触媒的測定の実施のために、反応器を通して、上部から下部まで1時間あたり約3.7〜4.0Nm(標準立法メートル)の空気を30〜100gオルト−キシレン/Nm空気(オルト−キシレン純度>98%)の負荷で、約1500mbarの全圧において装入した。それぞれの場合において、約40〜100gオルト−キシレン/Nm空気の負荷、および350〜390℃の塩浴温度で、測定を実施した。
【0065】
無水フタル酸収量を式8を用いて算出した:
【0066】
【数8】
【0067】
式8からわかるように、無水フタル酸の収率は、3つの最も重要な副生成物CO、COおよび無水マレイン酸の形成に直接依存する。
【0068】
【表2】
【0069】
【表3】
【0070】
【表4】
【0071】
【表5】
【0072】
【表6】
【0073】
【表7】
【0074】
【表8】
【0075】
【表9】
【0076】
【表10】
【0077】
【表11】
【0078】
【表12】
【0079】
【表13】