特許第6353565号(P6353565)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6353565
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】RFID機能作動を備える灌流システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/36 20060101AFI20180625BHJP
   A61M 1/16 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   A61M1/36 100
   A61M1/36 117
   A61M1/16 107
【請求項の数】12
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2017-11021(P2017-11021)
(22)【出願日】2017年1月25日
(62)【分割の表示】特願2015-532531(P2015-532531)の分割
【原出願日】2013年7月24日
(65)【公開番号】特開2017-124178(P2017-124178A)
(43)【公開日】2017年7月20日
【審査請求日】2017年2月15日
(31)【優先権主張番号】13/622,634
(32)【優先日】2012年9月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506161186
【氏名又は名称】ソリン・グループ・イタリア・ソシエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100137039
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 靖子
(72)【発明者】
【氏名】ロッシ,イヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ボンバルダ,ラファエッラ
【審査官】 川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/132123(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0099498(US,A1)
【文献】 特開2006−314800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/36
A61M 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工心肺(12)と、データ管理システム(29)と、前記人工心肺(12)と共に使用されるように構成される1つまたは複数の使い捨て要素(14)と、を備える、統合された灌流システムであって、
前記人工心肺(12)は、
複数のポンプモジュール(16)であって、前記複数のポンプモジュール(16)の各々が制御ユニット(18)を有する、複数のポンプモジュール(16)と、
前記制御ユニット(18)の各々と通信する制御装置(20)と、
前記制御装置(20)と通信し、かつユーザから動作設定情報を受け入れるように構成された入力装置(22)と、
前記制御装置(20)と通信し、かつ前記複数のポンプモジュール(16)の動作パラメータを表示するように構成された出力装置(24)と、
を含み、
前記データ管理システム(29)は、前記制御装置(20)と通信し且つ代謝アルゴリズムを動作させ表示するように構成されており、
RFセンサ(26)と、
前記RFセンサ(26)と通信するプロセッサ(27)と、
を含み、
前記1つまたは複数の使い捨て要素(14)は、RFIDタグ(28)を含み、前記RFIDタグ(28)は、前記RFセンサ(26)により読み取り可能であり、且つ、前記データ管理システム内の前記代謝アルゴリズムのロックを解除するために、前記プロセッサ(27)により使用可能である、前記1つまたは複数の使い捨て要素(14)のうち少なくとも1つに関する識別情報でプログラムされている、
統合された灌流システム。
【請求項2】
前記データ管理システム(29)が、前記人工心肺(12)から、また任意選択で外部の供給源からデータを受け取り、かつ記録するように構成される、請求項1に記載の統合された灌流システム。
【請求項3】
前記データ管理システム(29)が、前記人工心肺(12)から、また任意選択で外部の供給源から受け取ったデータを表示するように構成される、請求項2に記載の統合された灌流システム。
【請求項4】
前記1つまたは複数の使い捨て要素(14)が、血液貯蔵器、酸素化装置、熱交換器、または動脈フィルタのうちの1つまたは複数を含む、請求項1に記載の統合された灌流システム。
【請求項5】
前記血液貯蔵器が、静脈血貯蔵器、吸引血液貯蔵器、排出血液貯蔵器、またはそれらの組合せを含む、請求項4に記載の統合された灌流システム。
【請求項6】
前記1つまたは複数の使い捨て要素(14)が、受動的なRFIDタグ(28)を含む、請求項1に記載の統合された灌流システム。
【請求項7】
前記入力装置(22)が、タッチスクリーン式コンピュータを含む、請求項1に記載の統合された灌流システム。
【請求項8】
前記RFIDタグ(28)が、前記1つまたは複数の使い捨て要素(14)の性能特性を識別する情報を用いてさらにプログラムされる、請求項1に記載の統合された灌流システム。
【請求項9】
前記データ管理システム(29)が、前記1つまたは複数の使い捨て要素の前記識別された性能特性を用いて、プライミング量シミュレータを表示するように構成される、請求項8に記載の統合された灌流システム。
【請求項10】
人工心肺(12)と、RFセンサ(26)を含み且つ代謝アルゴリズムを動作させ表示するように構成されたデータ管理システム(29)と、を含む統合された灌流システムを形成する方法であって、
使い捨て要素に関する識別情報を有するRFIDタグ(28)を有する前記使い捨て構成要素(14)を前記人工心肺(12)に取り付けるステップと、
前記RFセンサ(26)を用いて前記RFIDタグ(28)を読み取るステップと、
前記RFIDタグ(28)から読み取られた情報に従って、前記データ管理システム(29)内の前記代謝アルゴリズムのロックを解除するステップと、
前記データ管理システム(29)が、ロックが解除された前記代謝アルゴリズムを動作させるステップであって、前記データ管理システム(29)は、前記ロックが解除された代謝アルゴリズムを用いて決定されたパラメータ値を、前記統合された灌流システムの画面に表示するように構成されている、ステップと
を含む方法。
【請求項11】
前記RFIDタグから前記RFセンサ(26)に提供される情報を表示するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
RFIDタグ(28)を有する前記使い捨て構成要素(14)を前記人工心肺(12)に取り付けるステップが、前記RFセンサ(26)で前記RFIDタグ(28)を読み取るステップの前に行われる、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本開示は、一般に、灌流システムに関し、またより詳細には、システムの構成要素間で、構成要素特有の情報を伝達するように構成される統合された灌流システムに関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]灌流は、ヒトまたは動物の体もしくは体の一部の血管を通る血液など、生理学的な溶液を促進することを含む。灌流を使用できる状況を示す例は、心肺バイパス手術、ならびに他の手術における体外循環を含む。いくつかの例では、灌流は、様々な治療処置中に体外循環を提供することに有用でありうる。灌流は、特定の体の部分が体内に残っている間に、または体の部分が移植のためになど体外にある間に、または体の部分が、他の体構造へのアクセスを提供するため一時的に除去された場合に、特定の臓器もしくは四肢などの体の部分の生存能力を維持するために有用でありうる。いくつかの例では、灌流は、通常、約6時間未満と規定される短い時間期間に使用することができる。いくつかの場合では、灌流は、約6時間を超える延長された時間期間に対して有用でありうる。
【0003】
[0003]いくつかの例では、血液灌流システムは、患者の血管系と相互に接続された体外回路中に1つまたは複数のポンプを含む。心肺バイパス(CPB)手術は、通常、心臓および肺の機能に置き換わることにより心臓の一時的な停止を可能にする灌流システムを必要とする。これは、静止した手術野(operating field)を生成し、かつ血管狭窄、血管障害、ならびに先天性心臓欠損および大血管欠損の外科的な修正を可能にする。心肺バイパス手術で使用される灌流システムでは、心臓および肺の機能に置き換わるために、少なくとも1つのポンプおよび酸素化装置を含む体外の血液回路が確立される。
【0004】
[0004]より具体的には、心肺バイパス手術では、酸素不足の血液(すなわち、静脈血)は、心臓に入る大静脈、または体内の他の(例えば、大腿の)静脈から重力で排出される、または真空吸引され、静脈ラインを通って体外回路に移送される。静脈血は、血液への酸素移動を行う酸素化装置へとポンプで送られる。酸素は、薄膜を介する移動により、または頻度は少ないが、血液を介して酸素を泡立てることにより、血液中に導入されうる。それと同時に、二酸化炭素が薄膜を介して除かれる。酸素化された血液は、次いで、動脈ラインを通って、大動脈、大腿動脈、または他の主動脈に戻る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
[0005]本発明の一実施形態によれば、統合された灌流システムは、複数のポンプモジュールを含み、そのそれぞれが制御ユニットを有する人工心肺を含む。制御装置は、制御ユニットのそれぞれと通信する。入力装置は、制御装置と通信し、かつユーザから動作設定情報を受け入れるように構成される。出力装置は、制御装置と通信し、かつ複数のポンプモジュールの動作パラメータを表示するように構成される。統合された灌流システムは、制御装置と通信するデータ管理システムを含む。
【0006】
[0006]データ管理システムは、RFセンサ、およびRFセンサと通信するプロセッサを含む。1つまたは複数の使い捨て要素は、人工心肺と共に使用されるように構成され、またRFセンサで読み取ることができ、かつプロセッサにより使用されてデータ管理システム内の機能のロックを解除できる識別情報でプログラムされたRFIDタグを含む。
【0007】
[0007]本発明の他の実施形態によれば、統合された灌流システムは、人工心肺とデータ管理システムとを含み、データ管理システムはRFセンサを含む。統合された灌流システムは、RFIDタグを有する使い捨て構成要素を人工心肺に取り付け、RFIDタグをRFセンサで読み取り、RFIDタグから読み取られた情報に従ってデータ管理システム内の機能のロックを解除し、かつロックが解除された機能を動作させることにより構成されうる。
【0008】
[0008]複数の実施形態が開示されるが、当業者であれば、本発明の例示的な実施形態を示し、かつ述べている以下の詳細な説明から、本発明のさらなる他の実施形態が明らかとなろう。したがって、図面および詳細な説明は、限定的なものではなく、例示的な性質のものと見なされるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】[0009]本発明の実施形態による人工心肺およびデータ管理システムを含む統合された灌流システムの概略図である。
図2】[0010]図1の統合された灌流システムにより行うことができる方法を示す流れ図である。
図3】[0011]図1の統合された灌流システムにより行うことができる方法を示す流れ図である。
図4】[0012]図1の統合された灌流システムで使用できる人工心肺パックの概略図である。
図5】[0013]本発明の実施形態による灌流システムの概略図である。
図6】[0014]図5の灌流システムで使用できる血液レベルセンサの図である。
図7】[0015]図5の灌流システムで使用できるラベルに組み込まれた血液レベルセンサの図である。
図8】[0016]本発明の実施形態による血液レベルセンサを含む血液貯蔵器の図である。
図9】[0017]本発明の実施形態による血液レベルセンサを含む硬い外殻の血液貯蔵器の図である。
図10】[0018]本発明の実施形態による血液レベルセンサを含む柔らかい外殻の血液貯蔵器の図である。
図11】[0019]図5の灌流システムを用いて行うことのできる方法を示す流れ図である。
図12】[0020]本発明の実施形態による血液レベルセンサを含む血液貯蔵器の図である。
図13】[0021]本発明の実施形態による血液レベルセンサを含む血液貯蔵器の図である。
図14】[0022]身体的運動下の運動選手におけるVO2とDO2の間の関係を示すグラフである。
図15】[0023]心臓手術下の患者におけるVO2とDO2の間の関係を示すグラフである。
図16】[0024]VCO2とVO2の間の関係を示すグラフである。
図17】[0025]LACとVCO2iの間の関係を示すグラフである。
図18】[0026]本発明の実施形態による灌流システムの実施形態の概略図である。
図19】[0027]本発明の実施形態による監視システムを示すブロック図である。
図20】[0028]本発明の実施形態による画面取込みの概略図である。
図21】[0029]本発明の実施形態による画面取込みの概略図である。
図22】[0030]本発明の実施形態による画面取込みの概略図である。
図23】[0031]本発明の実施形態による画面取込みの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[0032]本開示は、設定し、使用し、バイパス手術中に監視するのが容易な灌流システムに関する。いくつかの実施形態では、本開示は、灌流システムと共に使用される少なくともいくつかの使い捨て構成要素が、設定パラメータ、および/または動作パラメータで符号化される灌流システムに関する。いくつかの実施形態では、本開示は、灌流システムで使用される使い捨て構成要素の少なくともいくつかが、灌流システム内のさらなる機能のロックを解除できる識別情報で符号化される灌流システムに関する。
【0011】
[0033]いくつかの実施形態では、本開示は、血液貯蔵器内の血液レベル(level:換言
すれば、液面高さ)または容積を監視するために使用できる血液レベルセンサに関する。血液レベルセンサは、使い捨て構成要素が、上記で述べたように、灌流システムと通信するように構成される一体化された灌流システムで使用することができる。いくつかの実施形態では、血液レベルセンサは、使い捨てにされる物と通信することのない灌流システムで使用することができる。
【0012】
[0034]図1は、統合された灌流システム10の概略図である。統合された灌流システム10は、人工心肺(HLM)12および使い捨て要素14を含む。図示のように、いくつかの実施形態では、統合された灌流システム10はまた、データ管理システム(DMS)29を含む。HLM12およびDMS29は別個の構成要素として示されているが、いくつかの実施形態では、DMS29の少なくともいくつかの機能は、HLM12の中に統合されうることが理解されよう。いくつかの実施形態では、HLM12およびDMS29は、所望に応じて共に接続されうる、または別々に使用されうるモジュール式の構成要素またはシステムである。
【0013】
[0035]いくつかの場合には、それに代えて、DMS29に関して述べた機能の少なくともいくつかは、インライン血液モニタ、すなわちILBMの中に組み込まれうる。ILBMは、HLM12に接続することができ、また血液ライン上のセンサを介して直接データを測定し、かつ/または監視することができる。いくつかの実施形態では、ILBMは、HLM12および/またはDMS29から情報を受け取ることができる。ILBMは、手動で入力されたデータを受け入れることができ、かつ手動で入力された、またはHLM12もしくは他の装置から受け取ったデータを表示することができる。
【0014】
[0036]分かりやすくするために単一の使い捨て要素14だけが示されているが、多くの実施形態で、複数の様々な使い捨て要素14がHLM12と組み合わせて使用されうることが理解されよう。HLM12、使い捨て要素14およびDMS29のそれぞれは、この後でより詳細に説明するものとする。HLM12はいくつかの異なる構成要素を含む。HLM12の一部として本明細書で例示された特定の構成要素は、単なる例に過ぎず、HLM12は、他の構成要素、または様々な数の構成要素を含みうることを理解されたい。
【0015】
[0037]例示の実施形態では、HLM12は、3つのポンプモジュール16を含むが、より少ない2つのポンプモジュール16、または6もしくは7個ものポンプモジュール16を含むことができる。いくつかの実施形態では、ポンプモジュール16は、ローラポンプまたはぜん動ポンプとすることができる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のポンプモジュール16は、遠心力ポンプとすることができる。ポンプモジュール16のそれぞれは、心腔および/または外科手術野に送達し、あるいはそこから除去するように、流体を提供するのに使用されうる。例示的なものであり、限定しない例では、1つのポンプモジュール16が、心臓から血液を引き抜き、他のモジュールは、外科的な吸引を行い、また第3のモジュールは、心臓停止液(心臓を停止させるための高カリウム溶液)を送る。さらなるポンプモジュール16(図示せず)が追加され、さらなる液の移送を行うことができる。
【0016】
[0038]各ポンプモジュール16は、制御ユニット18を含む。いくつかの実施形態では、各制御ユニット18は、それが取り付けられた、またはその他の形で接続された特定のポンプモジュール16を動作させ、かつその動作を監視するように構成することができる。いくつかの実施形態では、各制御ユニット18は、灌流技師が特定のポンプモジュール16の動作を調整できるように、スイッチ、ノブ、ボタン、タッチスクリーンなど、1つまたは複数の入力装置(図示せず)を含むことができる。各ポンプモジュール16は、制御ユニット18が、例えば、設定値、現在の動作パラメータの値、ポンプモジュール16が正常に動作しているという確認などを表示するために使用できる英数字表示を含むことができる。
【0017】
[0039]HLM12は、制御ユニット18と通信し、かつHLM12を動作させるように構成された制御装置20を含む。いくつかの実施形では、制御装置20は、HLM12の動作を監視するために、HLM12上に、かつ/または使い捨て要素14内に分散させることのできる1つまたは複数のセンサを監視するように構成される。このようなセンサ(分かりやすくするために図示せず)の例は、これだけに限らないが、流量計、圧力センサ、温度センサ、血液ガス分析装置などを含む。
【0018】
[0040]制御ユニット18、および制御装置20が、別個の要素として示されているが、いくつかの実施形態では、これらの要素は、単一の制御装置中に組み合わせることが可能であることが企図される。いくつかの実施形態では、制御ユニット18は、組み合わされてHLM12を動作させるように構成され、それにより、制御装置20に対する必要性をなくすことが可能であることも企図される。
【0019】
[0041]制御装置20は、入力装置22および出力装置24と通信する。入力装置22は、普通であれば制御ユニット18には入力されない情報を入力するために、灌流技師により使用することができる。出力装置24は、関係する情報を灌流技師に表示するためにHLM12により使用することができる。いくつかの実施形態では、入力装置22は、キーパッド、キーボード、タッチスクリーンなどとすることができる。いくつかの実施形態では、出力装置24はモニタとすることができる。いくつかの実施形態では、入力装置22および/または出力装置24のいずれも、パーソナルコンピュータ、ラップトップコンピュータ、ノートブックコンピュータ、またはタブレットコンピュータなどのコンピュータとすることができる。いくつかの場合では、入力装置22および出力装置24は、単一のコンピュータで表すこともできる。
【0020】
[0042]いくつかの実施形態では、DMS29は、HLM12、様々な外部センサ、および監視装置を含む様々な供給源からのデータを記録するフライトレコーダと同様に機能するものと見なすことができる。図示のように、いくつかの場合では、DMSは、RFセンサ26およびプロセッサ27を含むことができる。DMS29は、HLM12と通信することができる。いくつかの実施形態では、本明細書で述べるように、DMS29はまた、HLM12および/またはDMS29を使用する間にロックを解除できるさらなる機能を提供することもできる。
【0021】
[0043]DMS29は、HLM12からデータを受け取り、記録するように構成される。いくつかの実施形態では、DMS29は、外部装置など、他の供給源からのデータも同様に受け取り、記録することができる。DMS29は、ユーザが手動で情報を入力できるようにする入力装置を含むことができる。いくつかの実施形態では、本明細書で論ずるように、DMS29は、さらなる機能を動作させ、かつ表示するように構成されうる。いくつかの実施形態では、DMS29は、統合された灌流システム10で使用される使い捨て構成要素14の少なくともいくつかが、DMS29内のさらなる機能のロックを解除できる
識別情報で符号化されるように構成することができる。使い捨て構成要素の識別に応じて、さらなる様々な異なる機能のロックが解除されうる。
【0022】
[0044]いくつかの実施形態では、DMS29は、代謝アルゴリズムを動作させ、かつ表示するように構成することができる。適切な代謝アルゴリズムの例示的な、限定することのない例は、Ranucciアルゴリズムとして知られている。Ranucciアルゴリズムは、患者の酸素供給量(DO2)、および患者の二酸化炭素生成量値(VCO2)、ならびに患者の代謝要求に対するDO2の妥当性に関する連続的な実時間情報を提供する。Ranucciアルゴリズムは、例えば、米国特許第7,435,200号、第7,927,286号、および第7,931,601号で述べられており、参照により本明細書に組み込む。
【0023】
[0045]RFセンサ26は、使い捨て構成要素の前述の識別を含む、使い捨て要素14に配置された能動的なRFIDタグから情報を受け取るように構成することができる。
【0024】
[0046]いくつかの実施形態では、RFセンサ26は、使い捨て要素14上の受動的なRFIDタグを走査するために使用される手持ち式装置とすることができる。他の実施形態によれば、RFセンサ26は、任意の様々な知られた無線通信受信機と置き換えられる。使い捨て要素14はRFIDタグ28を含む。様々な実施形態によれば、使い捨て要素14は、RFセンサ26と通信するように構成された能動的なRFIDタグ、または受動的なRFIDタグ(またはその両方)を含む。他の実施形態では、RFIDタグ28は、任意の様々な知られた無線通信送信機で置き換えられる。
【0025】
[0047]受動的なRFIDタグは電源を欠いており、その代わりに、到来する高周波による走査で生ずる誘導電流により電力が与えられる。搭載された電源がないので、受動的なRFIDタグは小型であり、費用がかからない。能動的なRFIDタグは、電池などの搭載された電源を含む。これは、RFIDタグの寸法および費用を増加させるが、RFIDタグが、より多くの情報を記憶でき、かつより遠くに送信できるという利点がある。RFIDタグは能動的であれ、受動的であれ、必要に応じて、様々な周波数で送信するように選択することができる。選択肢は、低周波数(約100から500キロヘルツ)、高周波数(約10から15メガヘルツ)、超高周波数(約860から960メガヘルツ)、およびマイクロ波(約2.45ギガヘルツ)を含む。
【0026】
[0048]上記で述べたように、使い捨て要素14は、HLM12と共に使用できる1つ、2つ、または複数の様々な使い捨て要素を総称的に表していると見なすことができる。使い捨て要素14の例示的な、ただし、非限定的な例は、管類セット、血液貯蔵器、酸素化装置、熱交換器、および動脈フィルタを含む。いくつかの実施形態では、管類セットは、HLM12の構成要素間で流体の流れを提供するために、ならびにHLM12と患者の間で流体の流れを提供するために、おそらく様々な長さおよび寸法の、いくつかの異なる管を含む。
【0027】
[0049]いくつかの実施形態では、使い捨て要素14は、静脈血貯蔵器、排出血液(vent blood)貯蔵器、心臓切開または吸引血液貯蔵器などの血液貯蔵器とすることができる。いくつかの実施形態では、使い捨て要素14は、静脈血貯蔵器、排出貯蔵器、および/または吸引貯蔵器の1つまたは複数を、単一の構造中に組み合わせた血液貯蔵器とすることができる。いくつかの実施形態では、前述のセンサの1つまたは複数は、センサを識別する情報を提供するための、またはさらに、感知した値を制御装置20に送信するためのRFIDタグ28を含む使い捨て要素とすることができる。
【0028】
[0050]RFIDタグ28は、任意の適切な方法で、使い捨て要素14に取り付けること
ができる。いくつかの実施形態では、RFIDタグ28は、使い捨て要素14に接着で固定することができる。いくつかの実施形態では、RFIDタグ28は、使い捨て要素14中に成形することができる。いくつかの実施形態では、RFIDタグ28は、クレジットカードに寸法および形状が類似した独立したカードとすることができ、それは、ユーザが取り外して、RFセンサ26により読み取らせることができるように、単に、使い捨て要素14と一まとめにしておくことができる。しかし、RFIDタグ28は取り付けられて、使い捨て要素14に関する広範囲な情報でプログラムされうるが、その他の形で、その情報を含めるように構成することもできる。
【0029】
[0051]いくつかの実施形態では、RFIDタグ28は、使い捨て要素14に関するデータ、または識別情報を含むことができる。識別情報の例示的な、ただし非限定的な例は、特定の使い捨て要素14の名前、参照コード、シリアル番号、ロット番号、有効期限、および同様のものなどを含む。いくつかの実施形態では、この情報は、制御装置20に伝達することができ、また例えば、特定の設定、患者などに対して、適正な使い捨て要素14が使用されていることを確認するために制御装置20で使用することができる。例として、制御装置20は、小児科用の管類セットが、成人用寸法の血液貯蔵器、または他の構成要素と組み合わせて使用されていることを認識することができる。他の例として、制御装置20は、期待する構成要素がないことを認識することができる。1つまたは複数の使い捨て要素14のそれぞれに取り付けられたRFIDタグ28により提供される情報の結果として制御装置20により認識されうる、機器における潜在的な様々な他の不適当な組合せが存在する。
【0030】
[0052]いくつかの実施形態では、RFIDタグ28は、使い捨て要素14に関する記述情報、または設計情報を含むことができる。記述情報、または設計情報の例示的な、ただし非限定的な例は、特定の材料、構成要素のリスト、構成要素または管類回路のプライミング量、管類の寸法、管類の長さ、最小および最大の使用圧力、最小および最大の使用容積などを含む。いくつかの実施形態では、この情報は、制御装置20に伝達することができ、HLM12を少なくとも部分的に構成し、かつ/または動作させるために、制御装置20により使用することができる。例として、制御装置20は、HLM12に対する動作血液量を決定するために、使い捨て要素14のそれぞれから提供される寸法情報を使用することができる。
【0031】
[0053]いくつかの実施形態では、RFIDタグ28から得られる情報はまた、灌流技師に提供することもできる。いくつかの実施形態では、出力装置24は、取得された情報の英数字、またはグラフィカルな表現を提供するように構成されうる。いくつかの場合、RFIDタグ28は、特定の使い捨て要素14の最適な設定、および/または動作を灌流技師に指示するために出力装置24により表示することのできる指示的な情報を含むことができる。RFIDタグ28は、RFIDタグ28から送信され、出力装置24上で表示されうる警告情報を含むことができる。いくつかの実施形態では、この警告情報は、使い捨て要素14と共にパッケージされた印刷材料として含まれうる警告情報を補足する、またはこれに置き代わることができる。
【0032】
[0054]様々な実施形態では、出力装置24は、パーソナルコンピュータ、ラップトップコンピュータ、ノートブックコンピュータ、またはタブレットコンピュータなどのコンピュータとすることができる。いくつかの実施形態では、RFIDタグ28は、使用されている特定の構成要素に基づいて、またはおそらく、更新された使用指示に基づいて、例えば、最適な回路設計を示唆する表示可能な情報を含むことができる。いくつかの実施形態では、RFIDタグ28からの情報は、DMS29上に表示される。
【0033】
[0055]いくつかの実施形態では、RFIDタグ28は、使い捨て要素14の製造者がユ
ーザに提供することを望む情報を含むことができる。このような情報の例は、前のバージョンから、またはさらに前のバッチから変更した使い捨て要素14の技術的な特徴を含むことができる。他の例は、制御装置20が、特定の手順に進む前に、ユーザが情報を受信したことを知らせることを必要とする、出力装置24により表示できる情報を含む。いくつかの場合では、RFIDタグ28は、DMS29および/または制御装置20からエラーメッセージを受け取ることができ、その場合、RFIDタグ28は、製造者に返されて、それにより使い捨て要素14ならびに他の構成要素の性能に関するフィードバックを製造者に提供することができる。
【0034】
[0056]いくつかの実施形態では、RFIDタグ28は、在庫追跡システムにより使用されうる情報を含むことができる。いくつかの実施形態では、在庫追跡システムは、灌流システム10と通信することができる。いくつかの実施形態では、在庫追跡システムは、灌流システム10を介して通信することなく、RFIDタグ28からの情報を独立して、かつ直接受け取ることができる。
【0035】
[0057]図2は、図1の灌流システム10を用いて行うことのできる方法を示す流れ図である。RFIDタグ28を有する使い捨て要素14は、ブロック30で概略的に示すように、HLM12に取り付けることができる。ブロック32で、RFIDタグ28が読み取られる。上記で述べたように、RFIDタグ28は、能動的なRFIDタグ、または受動的なRFIDタグとすることができる。いくつかの実施形態では、RFIDタグ28は、使い捨て要素14がHLM12に取り付けられる前に読み取ることができる。いくつかの実施形態では、RFIDタグ28は、取り付けた後に読み取ることができる。ブロック34で、HLM12は、ブロック32でRFIDタグ28から読み取られた情報に少なくとも部分的に基づいて構成される。いくつかの実施形態では、制御装置20が、この情報に応じて、HLM12を自動的に構成する。いくつかの実施形態では、RFIDタグ28から読み取られた情報の少なくともいくつかは、DMS29によって取り込むことができる。
【0036】
[0058]図3は、図1の灌流システム10を用いて行うことのできる方法を示す流れ図である。RFIDタグ28を有する使い捨て要素14は、ブロック30で概略的に示すように、HLM12に取り付けることができる。ブロック32で、RFIDタグ28は読み取られる。RFIDタグ28は、使い捨て要素14が、HLM12に取り付けられる前、または後に読み取ることができる。ブロック34で、HLM12は、ブロック32でRFIDタグ28から読み取られた情報に少なくとも部分的に基づいて構成される。いくつかの実施形態では、制御装置20は、この情報に応じて、HLM12を自動的に構成する。RFIDタグ28から読み取られた情報の少なくともいくつかは、ブロック36で分かるように、出力装置24上またはDMS29上で表示することができる。
【0037】
[0059]図4は、図1の灌流システム10と共に使用できる人工心肺パック38の概略図である。いくつかの実施形態では、人工心肺パック38は、特定の患者に対して共に使用され、かつ特定の患者用にカスタマイズされうる使い捨て要素14のすべてを含むことができる。いくつかの実施形態では、人工心肺パック38はハウジング40を含むことができ、ハウジング40は、満たされた後、内容物を清浄に、かつ無菌に保つように密封されうる。
【0038】
[0060]例示の実施形態では、人工心肺パック38は、管類セット42および使い捨て構成要素44を含む。管類セット42は、複数の様々な管を含むことができる。使い捨て構成要素44は、使い捨て要素14に関して上記で論じた使い捨て構成要素の任意のものとすることができる。いくつかの実施形態では、人工心肺パック38は、複数の異なる使い捨て構成要素44を含むことになる。管類セット42は、第1のRFIDタグ46を含む
が、使い捨て構成要素44は、第2のRFIDタグ48を含む。上記で論じたように、第1のRFIDタグ46および第2のRFIDタグ48のそれぞれは、能動的、または受動的なRFIDタグとすることができ、またそれらが取り付けられた構成要素に関する読み取り可能な情報を含むことができる。いくつかの例では、ハウジング40は、例えば、人工心肺パック38の内容物を識別する第3のRFIDタグ50を含むことができる。いくつかの実施形態では、第3のRFIDタグ50は、管類セット42および使い捨て構成要素44に関するすべての情報で符号化できるので、第1のRFIDタグ46および第2のRFIDタグ48を含めなくてもよい。
【0039】
[0061]図5は、灌流システム52の概略図である。灌流システム52は、いくつかの実施形態では、図1に関して論じたHLM12に構造および動作の点で同様のものでありうるHLM54を含む。灌流システム52はまた、血液貯蔵器56、血液レベルセンサ58、および制御装置60を含む。血液貯蔵器56は、静脈血貯蔵器、排出血液貯蔵器、心臓切開または吸引血液貯蔵器とすることができる。いくつかの実施形態では、血液貯蔵器56は、静脈血貯蔵器、排出貯蔵器、および/または吸引貯蔵器の1つまたは複数を単一の構造に組み合わせた血液貯蔵器とすることができる。
【0040】
[0062]血液レベルセンサ58は、血液貯蔵器56内で変化する血液レベルを連続的に監視するように構成されうる。血液レベルセンサは、様々な異なる感知技術から選択することができる。いくつかの実施形態では、図12および13に関して後で述べるように、血液レベルセンサ58は、血液貯蔵器56内の血液レベルを検出するために超音波が使用される超音波センサとすることができる。いくつかの実施形態では、血液レベルセンサ58は、レーザビーム、または赤外光源からの光が、液−空気界面で反射され、その反射された光のビームが、血液レベルセンサ58により検出される光学的なセンサとすることができる。例示的な実施形態によれば、血液レベルセンサ58は、独国Owen/Teck所在のLeuze electronic GmbH(ロイツェ エレクトロニック社)により市販されているタイプ(例えば、ODSL8、ODSL30、またはODS96)の光学的距離センサである。いくつかの実施形態では、血液レベルセンサ58は、血液貯蔵器56の質量を測定し、それにより。その中の血液の容積を求めるように構成されたロードセルまたは荷重計とすることができる。
【0041】
[0063]いくつかの実施形態では、血液レベルセンサ58は、血液貯蔵器56内の血液レベルに比例する、またはその他の形で関係する電気信号を出力する静電容量形センサとすることができる(後の図でよく説明する)。電気信号は、有線または無線で、制御装置60に伝達されうる。制御装置60は、別個の要素として示されているが、いくつかの実施形態では、制御装置60は、HLM54を動作させる(制御装置20と同様の)制御装置の一部として表される。
【0042】
[0064]いくつかの実施形態では、血液レベルセンサ58は、連続する液レベルの無接触測定を行うように構成された、独国Puchheim(プッフハイム)所在のSensortechnics GmbH(センサーテクニクス社)から市販されている静電容量形センサ(例えば、CLCまたはCLWシリーズ)にならって作ることができる。Sensortechnics社から入手できるセンサは、容器の外側表面上に設けることができ、また容器内の液レベルを表す電気信号を提供する。いくつかの例では、Sensortechnics社のセンサは、センサ内の液から5ミリメートルほど離間させることができるが、センサと液の間の空気の間隙の約20パーセントを超えないようにする。様々な実施形態によれば、静電容量形センサ58は、コネクタだけが貯蔵器の外側でアクセスできるように、血液貯蔵器56の内側に成形される。これらの実施形態では、センサ58は、血液貯蔵器のプラスチック材料により保護される。
【0043】
[0065]いくつかの実施形態では、センサには、容器それ自体の特性、ならびに容器内の液の特性に、センサを適合させるための初期構成を行うことができる。いくつかの実施形態では、血液レベルセンサ58は、電圧源、アナログ信号出力、デジタル信号出力、ティーチイン(teach−in)ピン、およびグランドを含む5ピンの電気的コネクタを有する。いくつかの実施形態では、レベルセンサ58は、独国Neuhausen(ノイハウゼン)所在のBalluff GmbH(バルーフ社)により市販されているBalluff SmartLevelセンサなどの静電容量形センサである。
【0044】
[0066]制御装置60は、血液貯蔵器56内の血液レベルに比例した、または少なくとも関係する電気信号を受信することができる。制御装置60は、この電気信号に基づいて、ならびに血液貯蔵器56の知られた形もしくは幾何形状に基づいて血液量を計算することができる。いくつかの実施形態では、血液貯蔵器56は、制御装置60に、血液貯蔵器56の知られた幾何形状に関する情報を提供するRFIDタグ(図示せず)を含むことができる。
【0045】
[0067]血液貯蔵器56が、硬い外殻の血液貯蔵器である場合、血液貯蔵器56の知られた幾何形状は、血液貯蔵器56の横断面積、または血液貯蔵器56の幅および深さ、ならびにこの横断面積が、血液貯蔵器56内の高さに対してどのように変化するかに関する細部を含むことができる。血液貯蔵器56が、柔らかい外殻の貯蔵器である場合、知られた幾何形状は、血液貯蔵器56内の血液レベルに対する柔らかい外殻の貯蔵器の知られた横方向拡大率に少なくとも部分的に基づくことができる。
【0046】
[0068]図6で分かるように、血液レベルセンサ58は、第1の細長い電極60、および第2の細長い電極62を含む。第1の細長い電極60、および第2の細長い電極62は、可撓性のある基板64に沿って配置される。いくつかの実施形態では、可撓性のある基板64は、血液レベルセンサ58を血液貯蔵器56に固定するために使用できる接着層を含むことができる。コネクタソケット66は、可撓性のある基板64に固定され、第1および第2の電極60、62と、電気ケーブル(この図には示さず)との間で電気的な接続ができるように、第1の細長い電極60および第2の細長い電極62に電気的に接続される。いくつかの実施形態では、細長いセンサではなく、血液レベルセンサ58は、Balluff社から市販されているものなど、2つ以上の別個のSMARTLEVEL(商標)静電容量形センサを含むことができる。これらのセンサは、2値のyes/no信号を送ることができる。これらのセンサのいくつかを、血液貯蔵器56の近傍の異なる高さに配置することにより、血液貯蔵器56内の血液レベルを測定することができる。
【0047】
[0069]いくつかの実施形態では、血液レベルセンサ58は、図7で示すように、ラベル68に取り付ける、またはその他の形で一体化することができる。ラベル68は、使用説明、容積指示など、様々な表示70を含むことができる。いくつかの実施形態では、ラベル68は、血液貯蔵器56の外側表面に取り付けるために、接着側面を含むことができる。いくつかの実施形態では、ラベル68は、血液レベルセンサ58の下側部分が、血液貯蔵器56の底部に、またはその近くに位置合せされるように血液貯蔵器上で方向付けられる。
【0048】
[0070]いくつかの実施形態では、血液レベルセンサは、図12および13で示されるように、超音波の血液レベルセンサとすることができる。図12は、ある量の血液を含む血液貯蔵器82の図である。血液量は、血液貯蔵器82内の血液量と、空気もしくは他の液との間の界面84を画定する。いくつかの実施形態では、血液貯蔵器82の下側表面、またはその近傍に位置する超音波変換器86は、界面84に向けて超音波88を送信することにより、界面84の位置を特定するために使用することができる。超音波88の反射率は、超音波が通過する液に少なくとも部分的に依存する。したがって、反射率を測定する
ことにより、超音波変換器86は、界面84がどのくらい遠くにあるかを測定することができ、それにより、流体レベルを求めることができる。流体レベル、および血液貯蔵器82の幾何的形状に基づいて、制御装置は、血液貯蔵器82内の血液量を決定することができる。いくつかの実施形態では、ケーブル90は、超音波変換器86から制御装置へと信号を送信する。いくつかの実施形態では、情報は、超音波変換器に取り付けられたRFIDタグを介するなど、無線で送信される。
【0049】
[0071]図13は、図12と同様のものであるが、界面94を画定する血液量を有する血液貯蔵器92を示す。この実施形態では、超音波変換器96は、血液貯蔵器92の上部に、またはその近傍に位置しており、超音波98を界面94に向けて下方に送信する。いくつかの実施形態では、ケーブル100は、超音波変換器96からの信号を送信するが、他の実施形態では、これは、超音波変換器96に取り付けられたRFIDタグなどを用いて無線で行われる。図12図13で示された実施形態の間の主な差は、図12では、界面84が下から、または血液を通して検出されるが、図13では、界面94が上からまたは空気を介して検出されることである。
【0050】
[0072]いくつかの実施形態では、血液レベルセンサは、赤外(IR)光血液レベルセンサとすることができる。いくつかの実施形態では、血液貯蔵器82の下側表面もしくはその近傍に配置された赤外光源は、赤外光を界面に向けて送ることにより、血液貯蔵器82内の液/空気界面の位置を特定するために使用することができる。代替的には、赤外光血液レベルセンサは、界面の上方に位置することもできる。いくつかの実施形態では、赤外光血液レベルセンサは、血液貯蔵器82から少し離れて位置することができ、したがって、血液レベル貯蔵器82への機械的なホルダに取り付けることができる。
【0051】
[0073]いくつかの例では、赤外光は、反射して赤外光血液レベルセンサに戻る。反射率を測定することにより、界面の位置を求めることができる。いくつかの実施形態では、赤外光は血液を通り、赤外光血液レベルセンサの反対側に位置する赤外光センサへと進む。受信した光の変化を検出することにより、界面位置を求めることができる。界面位置を、血液貯蔵器82の知られた幾何形状パラメータと組み合わせることにより、制御装置20は、血液貯蔵器82内の血液量を求めることができる。いくつかの実施形態では、この情報は、赤外光血液レベルセンサに取り付けられたRFIDタグなどを介して、無線で制御装置20に送信される。
【0052】
[0074]図8は、血液貯蔵器56に取り付けられた血液レベルセンサ58の図である。電気ケーブル72は、血液レベルセンサ58と制御装置60の間の電気的接続を提供する。電気ケーブル72は、電気的コネクタ66に接続されるように構成されたプラグ73を含む。いくつかの実施形態では、プラグ73は、検出されたキャパシタンスを、制御装置60が血液量を計算するのに使用できる電圧信号に変換する回路を含む。いくつかの実施形態では、プラグ73は、血液量を計算するための回路をさらに含む。
【0053】
[0075]上記で述べたように、血液貯蔵器56は、硬い外殻の血液貯蔵器、または柔らかい外殻の血液貯蔵器とすることができる。図9は、血液レベルセンサ58を担持する硬い外殻の血液貯蔵器74を示しているが、図10は、血液レベルセンサ58を含む柔らかい外殻の貯蔵器76を示す。いずれの場合も、貯蔵器は、血液レベルセンサ58を含むように構成することができる。いくつかの実施形態では、血液レベルセンサ58は、既存の血液貯蔵器に接着で固定することができる。
【0054】
[0076]図11図5の、灌流システム52を用いて行うことができる方法を示す流れ図である。ブロック78で参照されるように、第1の電極と第2の電極の間のキャパシタンスを検出することができる。いくつかの実施形態では、前に論じたように、キャパシタン
スは、プラグ73内の回路により、血液レベルを表す電気信号へと変換することができる。CLCシリーズのSensortechnics社センサを用いる実施形態では、例えば、センサは、0.5と4.5ボルトの間の電圧を出力する。センサパッドが貯蔵器上に適切に配置されていると仮定すると、この電圧は、貯蔵器中の液のレベルまたは高さを示す。ブロック80で、制御装置60は、検出されたキャパシタンス、および血液貯蔵器56の知られた寸法または幾何形状に基づいて血液量を計算することができる。いくつかの実施形態では、制御装置60(またはHLM54内の他の回路)は、プラグ73の回路に、血液貯蔵器56に関する十分な情報(例えば、寸法または幾何形状)を提供することができ、回路が血液量の計算を実施できるようにする。いくつかの実施形態では、計算された血液量は、HLM54の動作パラメータを調整することができるようにHLM54に伝達される。様々な例示的な実施形態では、HLM54は、血液貯蔵器56に流入または流出する血流を増加もしくは減少させるためにポンプ速度を変えることができる。例えば、貯蔵器56内の血液レベルが、一定の最小レベルまたは容積以下になることを阻止することが重要である可能性がある。したがって、様々な実施形態では、HLM54は、血液レベルまたは容積を、この最小レベルと比較して、適切にポンプ速度を調整することになる。
【0055】
[0077]他の実施形態によれば、HLM54は、例えば、ポンプ閉鎖の自動調節、ポンプセグメントの自動搭載、自動閉鎖試験を行うこと、自動プライミングの実施、自動的な再循環および脱泡、圧力試験を自動で行うこと、またはシステムの排出を自動で行うことを含む様々な用途に対して血液量情報を使用することができる。
【0056】
[0078]いくつかの実施形態では、上記で述べたように、灌流システム10は、灌流システム10と共に使用される使い捨て構成要素の少なくともいくつかが、灌流システム内のさらなる機能のロックを解除できる識別情報で符号化されるように構成することができる。使い捨て構成要素の識別に応じて、さらなる様々な異なる機能のロックが解除されうる。
【0057】
[0079]いくつかの実施形態では、例えば、使い捨て構成要素が、(図4で示す管類セット42などの)管類セットである、またはその他の形で管類セットを含む場合、管類セットは、血液循環システムのプライミング量を決定するようにプログラムされた、またはその他の形で灌流システム10により使用されうる情報を含むRFIDタグ(図4で示された第1のRFID46など)を含むことができる。血液循環システムは、管類セットにだけ含まれる品目だけを含む、または血液循環システムは、さらなる品目を含むことができる。
【0058】
[0080]管類セットの存在により、DMS29はプライミング量シミュレータを動作させ、かつ表示できるようになる。いくつかの実施形態では、例えば、異なる管類セットが使用される場合、またはおそらく異なる製造者からの管類セットが使用される場合、プライミング量シミュレータは使用不可になる、またはその他の形で機能できなくなる。したがって、特定の管類セット(または他の使い捨て構成要素)が存在することにより、プライミング量シミュレータのさらなる機能のロックを解除することができる。
【0059】
[0081]いくつかの実施形態では、DMS29は、患者の代謝に関するデータを監視し、かつ/または提供するアルゴリズムを動作させ、かつ表示するように構成することができる。いくつかの実施形態では、アルゴリズムは、使い捨て構成要素14の識別に応じて、DMS29によりロックが解除されうる。様々な異なるアルゴリズムが知られており、DMS29によりロックを解除することができるが、灌流システム10の中にプログラムすることができ、かつ適切な使い捨て構成要素14が使用される場合にロックを解除できるアルゴリズムの例示的な、限定することのない例は、プライミング量シミュレータを含む
。他の例は、上記で参照されたRanucciアルゴリズムとして知られている代謝アルゴリズムである。
【0060】
[0082]Ranucciアルゴリズムを理解し、かつ述べる上で、いくつかの定義が有用である。
【0061】
[0083]HCT:ヘマトクリット(%)
[0084]Hb:ヘモグロビン(g/dL)
[0085]CPB:心肺バイパス
[0086]T:温度(℃)
[0087]VO2=酸素消費量(mL/min)
[0088]VO2i=指数化された酸素消費量(mL/min/m
[0089]DO2=酸素供給量(mL/min)
[0090]DO2i=指数化された酸素供給量(mL/min/m
[0091]O2 ER=酸素抽出率(%)
[0092]VCO2=二酸化炭素生成量(mL/min)
[0093]VCO2i=指数化された二酸化炭素生成量(mL/min/m
[0094]Ve=換気量(L/min)
[0095]eCO2=呼気された二酸化炭素(mmHg)
[0096]AT=嫌気性閾値
[0097]LAC=乳酸塩
[0098]Qc=心拍出量(mL/min)
[0099]IC=心係数(Qc/m)、(mL/min/m
[00100]Qp=ポンプ流量(mL/min)
[00101]IP=指数化されたポンプ流量(Qp/m)、(mL/min/m
[00102]CaO2=動脈酸素含有量(mL/dL)
[00103]CvO2=静脈酸素含有量(mL/dL)
[00104]PaO2=動脈酸素分圧(mmHg)
[00105]PvO2=静脈酸素分圧(mmHg)
[00106]a=動脈
[00107]v=静脈
[00108]Sat=Hb飽和度(%)
[00109]以下の式はRanucciアルゴリズムで有用である。
【0062】
[00110]正常な循環において、VO2=Qc×(CaO2−CvO2) (1)
[00111]CPB中において、VO2=Qp×(CaO2−CvO2) (2)
[00112]正常な循環において、DO2=Qc×CaO2 (3)
[00113]CPB中において、DO2=Qp×CaO2 (4)
[00114]O2 ER=VO2/DO2(%) (5)
[00115]Hb=HCT/3 (6)
[00116]CaO2=Hb×1.36×Sat(a)+PaO2×0.003 (7)
[00117]CvO2=Hb×1.36×Sat(v)+PvO2×0.003 (8)
[00118]VCO2=Ve×eCO2×1.15 (9)
[00119]酸素消費量(VO2)は、各特定の臓器の代謝必要量の総和であり、したがっ
て、生体全体の代謝必要量を表す。基本条件下(休息時)で、それは、約3〜4mL/min/kg、すなわち、70kgの体重の被験者に対して約250ml/minである。式(3)および(7)を適用すると、酸素供給量(DO2)を計算することができ、それは約1000mL/minになる。したがって、DO2はVO2よりも約4倍大きいので、かなりの機能的な余力がある。VO2は、(基本的には、身体的な運動下であるが、敗血症性ショックなどの病理学的条件であっても)代謝必要量に応じて増加する可能性があ
る。耐久力がトップレベルの運動選手は、約5000mL/minの最大VO2に達することもある。
【0063】
[00120]当然であるが、これらの増加する酸素要求を満たすためには、DO2も同様に
増加しなくてはならない。それは、運動中の選手において、6000mL/minの値に達する可能性がある(Qc:30L/min、20mL/dLの変化しない動脈酸素含有量を含む)。その結果、O2 ERは、最高で75%まで増加しうる。
【0064】
[00121]図14は、身体的な運動中の選手におけるDO2とVO2の間の関係を示す図
である。運動選手(例えば、マラソンを走っている)が、暗い三角形の(DO2がVO2をサポートできない)範囲に含まれる場合、運動選手は、機械的エネルギーを引き出すために、他の代謝メカニズムを使用するように強制される。特に運動選手は、嫌気性乳酸代謝を受けることになり、それは、乳酸形成、局所的および全身のアシドーシスを代償としてエネルギーを生ずるが、最終的に、通常2分以内に運動は停止する。言い換えると、VO2は、生理学的にDO2に依存している。
【0065】
[00122]当然であるが、医療分野では状況が異なる。DO2は、貧血症により動脈酸素
含有量が減少した場合、低酸素症により動脈酸素含有量が減少した場合、かつ心拍出量が減少した場合、病理学的に減少する可能性がある。しかし、前述の生理学的余力の存在により、O2 ERが増加するため、約600mL/min(DO2iが320mL/min/m)までDO2が減少した場合であっても、VO2は維持されうる。
【0066】
[00123]図15は、医療状態(すなわち、心臓手術)中に観察された範囲におけるDO
2とVO2の間の関係を示す図である。600mL/minのDO2以下で、VO2は減少し始める。患者は、乳酸塩(LAC)生成により、運動選手と全く同様に乳酸アシドーシスを経験する。言い換えると、患者はショックを経験する。VO2が、それ以下では減少を開始し、かつ病理学的にDO2に依存するようになるDO2レベルは、臨界DO2(DO2crit)と呼ばれる。DO2をこの閾値より上に維持することは、アシドーシスショック状態を回避するために、多くの病理学的状態で非常に重要である。DO2critは、敗血症性ショック中ではより高くなる。
【0067】
[00124]1994年以来、「Perfusion(灌流)」で発表された論文において
、Ranucciおよび協力者は、CPBを用いた心筋血管再生を受けた一連の300人の連続する患者において、重篤な血液希釈の存在が、術後の急性腎不全(ARF)に対する独立した危険因子であることを示した。特に、遮断値は、HCT<25%であることが特定された。
【0068】
[00125]その後に続いて、他の著者が、CPB中における最も低いHCTは、心臓手術
における多くの「有害な影響」に対する独立した危険因子であることを示している。Stafford−Smithおよび協力者は、1998(Anesth Analg)に、血液希釈とARFの間の関係を確認した。
【0069】
[00126]より最近では、CPBにおける最も低いヘマトクリットは、Fangおよび協
力者により(Circulation(血液循環)、1997)、術後の低い心拍出量および院内死亡率に対する独立した危険因子として認識され、また2003年にHabibおよび協力者により(J Thorac Cardiovasc Surg(胸部心臓外科誌))、印象的な一連の術後の悪影響事象に対する独立した危険因子として認識されてきた。血液希釈とARFの間の関係は、その後に続いて、2003年にSwaminathanおよび協力者により(Ann Thorac Surg(胸部外科年報))、2004年および2005年にRanucciおよび協力者により(Ann Thorac
Surg)、また2005年にKarkoutiおよび協力者により(J Thorac
Cardiovasc Surg)確認されている。ARFの危険が、それ以下では顕著に増加する臨界HCT値は、23%と26%の間に位置する。
【0070】
[00127]ほとんどすべての著者は、この関係を、様々な臓器への不十分な酸素供給量(
DO2)が原因であると考えている。特に腎臓は、低酸素性灌流のその生理学的条件のため、高い危険があるように見える。
【0071】
[00128]驚くべきことに、HCTとARFの間の関係、または他の臓器の損傷を示すす
べての研究は、HCTがCPBにおけるDO2の2つの決定因子のうちの一方に過ぎず、他方はポンプ流量(Qp)であると見なすことに欠けている。これは、Qpが一定であった場合にはDO2に影響を与えることはないが、この場合は当てはまらない。すべての研究において、ポンプ流量(Qp)は、2.0L/min/mのQpiから3.0L/min/mのQpiへと変動し、その変動は灌流圧力に依存した。24%のHCTは、Qpiが2.0L/min/mである場合、230ml/min/mのDO2iなり、Qpiが3.0L/min/mである場合、344ml/min/mのDO2iとなる。
【0072】
[00129]「Annals of Thoracic Surgery」における科学的
な論文では、Ranucciおよび協力者は、HCTではなくDO2iが、ARFの最良の予測因子であることを実際に示した。さらに、手術時に輸血が存在する場合、DO2iは、ARFの唯一の決定因子のままである。この論文で特定されたDO2critは、272ml/min/mであり、VO2が、それ以下ではDO2に病理学的に依存するようになるDO2iとして前に定義されたものに極めて近い。言い換えると、DO2iをこの閾値より上に維持することは、低酸素性の臓器機能不全を減少させる、または低酸素性の臓器機能不全をなくすことを可能にする。低HCTの存在下で、Qpの適切な増加は、低酸素血症の有害な影響を最小化することができる。その結果、DO2の連続的な監視が、術後の合併症、すなわち、腎臓の合併症を制限するために最も重要である。
【0073】
[00130]唯一の可能な(かつ論議の余地のある)対策は輸血であるため、低HCTを測
定することは臨床的価値が低い。他方で、DO2は、ポンプ流量を増加させることにより、調節することができる。
【0074】
[00131]LAC生成が、それ以下では開始するDO2critのレベルは、「嫌気性閾
値」(AT)の概念により特定される。それは、運動選手では、LAC生成が開始する発現された機械的パワーのレベルであり、患者では、LAC生成がそれ以下では開始するDO2critのレベルである。
【0075】
[00132]CPB中のLAC値は、術後の合併症を予測可能であることが示されてきた。
問題は、LAC値は、オンラインでは利用可能ではなく、いくつかの装置(血液ガス分析装置)がそれを提供できるに過ぎない。しかし、ATの「間接的な」評価を行うことは可能である。実際問題として、定常状態下では、VO2/VCO2の比は一定であるが、嫌気性乳酸代謝中は、VCO2がVO2よりも増加する。これは、乳酸が以下の変換、すなわち、
H LAC+NaHCO=LAC Na+HCO
を受けるために生じ、HCOは、HOおよびCO2に分解され、さらにCOが生成される。
【0076】
[00133]図16は、VO2とVCO2の間の関係を示す図である。VCO2とLAC生
成の間の関係は、発明者自身により行われた実験的なテストで、CPB下の15人の連続
する患者で示されてきた。図17では、VCO2とLAC生成の間のグラフによる関係が報告されている。この関係から、60ml/min/mのVCOi値が乳酸性アシドーシスの感度のよい予測因子であることが分かる。
【0077】
[00134]正常な休息状態下では、酸素供給量は、臓器の代謝要求全体に一致しており、
また酸素消費量(VO2)は、酸素供給量(DO2)の約25%であり、エネルギーは、基本的に有酸素メカニズム(酸化的リン酸化)により生成される。DO2が減少し始めたとき(心拍出量の減少、極度の血液希釈、またはその両方により)、VO2は、「臨界レベル」に達するまで維持される。この臨界点より低くなると、酸素消費量が減少し始め、酸素供給量に依存するようになり、有酸素エネルギー生成の障害は、徐々に、嫌気性のアデノシン三リン酸生成によって置き換えられる(乳酸塩へのピルビン酸変換)。
【0078】
[00135]その結果、血中乳酸濃度は上昇し始めるが、数多くの研究は、循環性ショック
における全身組織低酸素症のマーカとして乳酸塩の使用を確立している。これらの環境下で、嫌気性代謝は、陽子の過剰生成および組織アシドーシスを生じ、重炭酸塩イオンによる陽子の中和は、次いで、嫌気性二酸化炭素生成(VCO2)を生ずる。したがって、臨界DO2より低いと、VO2とVCO2は共に直線的に減少するが、嫌気性CO2生成に起因して、呼吸商(VCO2/VO2)RQは増加する。心拍出量の減少(心原性ショック)のため臨界DO2に達したときは、上記の関係はより複雑になる。
【0079】
[00136]低下した肺血流量および換気−血流の不釣合いにより、二酸化炭素を除去する
肺の能力が損なわれ、二酸化炭素の除去、および呼気終末の二酸化炭素分圧が減少する。その結果、二酸化炭素は、静脈コンパートメントに蓄積し始め、静動脈の二酸化炭素勾配が増加する。言い換えると、(組織による二酸化炭素生成として意図された)VCO2が、二酸化炭素除去よりも徐々に高くなる。
【0080】
[00137]CPB状態下では、上記のパターンは再度変化する。人工肺は、二酸化炭素の
除去の点で自然の肺よりもはるかに効率的であり、非常に低いポンプ流量であっても維持される。偶然ではなく、超低体温などの特定の状況下で、かつpH戦略に従って、著しく、かつ危険な低炭酸症のパターンを回避するために、ガス流に二酸化炭素を加えることが臨床的に必要になる。この状況において、VCO2が、二酸化炭素の除去に厳密に相関する。
【0081】
[00138]したがって、通常の状況においては、静脈二酸化炭素分圧(PvCO2)は、
二酸化炭素の除去に反比例しており、CPB中に2つのパラメータは正の相関がある。その後に続いて、Ranucciおよび協力者は、CPB中における高乳酸塩血症の最良の予測因子は、カットオフ値が約5.0のDO2/VCO2比であり、またカットオフ値が60mL/min/mのVCO2であることを見出した。
【0082】
[00139]いくつかの実施形態では、CPB中におけるDO2の低い値は、腎臓に対して
虚血性環境を生成する可能性があると考えられる。DO2の極端に低い値は、乳酸塩生成を伴う嫌気性代謝をトリガする可能性がある。これは、CO2由来のパラメータを用いて検出することができる。
【0083】
[00140]いくつかの実施形態では、したがって、統合された灌流システム14は、1つ
または複数のポンプ流量読取り装置と、ヘマトクリット値読取り装置とを含むことができる。統合された灌流10システムは、入力装置22と、測定されたポンプ流量(Qp)、測定されたヘマトクリット(HCT)、動脈酸素飽和度(Sat(a))の事前設定値、および動脈酸素分圧(PaO2)の事前設定値に基づいて酸素供給量(DO2i)を計算するようにプログラムされた、またはそのほかの形で構成された制御装置20と、ディス
プレイとを含む。
【0084】
[00141]いくつかの実施形態では、灌流システム14はまた、HLMの酸素化装置のガ
ス排出口において、呼気されたCO2(eCO2)を連続的に検出するためのCO2読取り装置を含む。入力装置22は、操作者がガス流量値(Ve)を挿入できるようにし、また制御装置20は、事前設定のガス流量(Ve)値と、検出された呼気CO2(eCO2)とに基づいて、CO2生成(VCO2i)を計算し、また出力装置24は、CO2生成(VCO2i)の計算された値を示す。
【0085】
[00142]いくつかの実施形態では、制御装置20は、上記で述べた酸素供給量(DO2
i)値を、酸素供給量の閾値(DO2icrit)と比較し、かつ酸素供給量(DO2i)値が酸素供給量の閾値(DO2icrit)よりも下がったときに警報器をトリガするようにプログラムされ、またはその他の形で構成される。一実施形態では、酸素供給量の閾値(DO2icrit)は、操作者により約270ml/min/mの値に事前設定される。
【0086】
[00143]いくつかの実施形態では、灌流システム10は、患者の体温(T)を連続的に
測定し、かつ温度値を制御装置20へと送り、その後に出力装置24で表示されるように構成された温度検出装置をさらに含む。制御装置20は、患者の温度(T)に基づき、酸素供給量閾値を計算するようにプログラムされ、またはそのほかの形で計算するように構成されうる。いくつかの実施形態では、制御装置20は、検出されたヘマトクリット(HCT)値からヘモグロビン(Hb)値を計算するようにプログラムされ、またはその他の形で計算するように構成される。
【0087】
[00144]図18は、手術台102に横たわっている患者101を示している。HLM1
03の実施形態が患者101に接続されている。HLM103は、患者の静脈系から血液を収集する静脈体外回路を含む。ローラポンプ、または遠心力を利用した機械的ポンプ104は、静脈血を静脈体外回路から酸素化装置105に向けてポンプ送りするが、酸素化装置105の役割は、静脈血からCO2を除去して酸素(O2)を供給することである。酸素化装置105によって酸素化された血液は、同じローラポンプまたは遠心力ポンプ104により再度、患者の動脈系に接続された動脈体外回路へと送られ、したがって、患者の心臓および肺の完全バイパスが生み出される。
【0088】
[00145]監視システム110は、人工心肺103に動作可能に接続され、かつ次に説明
するように計算を行うことのできるプロセッサと、操作者とのインターフェースを提供するモニタ画面またはディスプレイ111とを含むことができる。ノブ50(図20および図21に示されている)を用いれば、操作者は手動でデータを入力することができる。
【0089】
[00146]手動で入力されうるデータの例は、これだけに限らないが、患者の身長および
体重、動脈酸素飽和度(Sat(a))を含む。この値は通常100パーセントであるが、酸素化装置の動作不良などのいくつかの状況では、値は減少する可能性がある。いくつかの実施形態では、動脈酸素飽和値は、DMS29に接続されうる外部装置により連続的に、または飛び飛びに(20分ごとになど)監視することができる。いくつかの実施形態では、Sat(a)値が監視されない場合、DMS29は、値が100%であると仮定してプログラムされうる。
【0090】
[00147]動脈酸素分圧値(PaO2)はまた、手動で入力することもできる。PaO2
値は、適切な、特有の装置を使用し、血液ガス分析を用いて、患者の動脈血に対して灌流技師により測定される。いくつかの実施形態では、動脈酸素分圧値は、DMS29に接続された外部装置により連続的に、または飛び飛びに(20分ごとになど)監視することが
できる。
【0091】
[00148]ガス流量値(Ve)は、手動で入力することができる。Ve値は、人工心肺1
03を動作させる灌流技師により確立される。概して、Veは、患者のパラメータに従って流量計で調整される。このVe値は、CPB手術中ほとんど変化することなく、したがって、操作者により手動で挿入することができる。しかし、代替的に、監視システム110は、Ve値を連続的に検出するために、人工心肺103に接続された電子的な流量計を含むこともできる。
【0092】
[00149]いくつかの実施形態では、DMS29は、酸素消費量(VO2)および/また
は二酸化炭素生成量(VCO2)を計算し、表示するように構成することができる。上記で述べたように、VO2値は式2を用いて計算することができ、VCO2値は式9を用いて計算することができる。
【0093】
CPB中において、VO2=Qp×(CaO2−CvO2) (2)
VCO2=Ve×eCO2×1.15 (9)
[00150]いくつかの実施形態では、Ve値(ガス流量)は、HLM12に接続されたガ
ス混合器から自動的に、かつ連続して取得することができる。いくつかの場合には、Ve値は、DMS29に手動で入力することができる。いくつかの実施形態では、呼気されたCO2値(eCO2)は、HLM12に接続された外部装置により、連続的に、または飛び飛びに(約20分ごとになど)監視されうる。eCO2値は、別個に監視され、手動でDMS29に入力することができる。
【0094】
[00151]いくつかの実施形態では、監視装置110は、人工心肺の特定の位置に配置さ
れた適切なセンサにより収集されたデータを連続的に受け取るために、HLM103に電気的に接続される。連続的に収集されるデータの例示的な、限定することのない例は、患者の体温(T)を含む。温度Tは、患者の食道もしくは直腸、または他の臓器の内部に挿入された温度プローブ140によって連続的に測定することができる。温度プローブ140は、温度の電子信号を、HLM103のモニタに送り、温度値を実時間で視覚化する。この場合、温度値Tの連続的な入力のためには、監視装置110とのHLM103のモニタの電気的接続とインターフェースをとることで十分である。
【0095】
[00152]他の監視される値は、呼気される二酸化炭素(eCO2)を含む。eCO2値
は、酸素化装置105から排出される副流CO2を検出するために、酸素化装置105のガス排出口に配置されたCO2検出器141を通して連続的に測定される。CO2検出器141は、様々な市販の、再使用可能なカプノグラフの中で、任意の種類のCO2検出器とすることができる。
【0096】
[00153]他の監視される値は、ヘマトクリット(HCT)を含む。HCT値は、HLM
103の動脈または静脈回路の内部に配置されたヘマトクリット読取りセル142により連続的に測定される。いくつかの実施形態では、HCT値は、DMS29に接続されうる外部装置により、例えば、約20分ごとになど、飛び飛びに測定することができる。いくつかの実施形態では、HCT値は、独立して監視され、また制御装置20および/またはDMS29に手動で入力することができる。例えば、図18では、ヘマトクリット読取りセル142が、ポンプ104と酸素化装置105の間の動脈ライン内に配置される。ヘマトクリット読取りセル142は市販されており、使い捨てのものである。
【0097】
[00154]他の監視される値は、ポンプ流量(Qp)を含む。Qp値は、HLM103の
動脈ラインに配置されたドップラー読取りセル143により連続的に測定される。この種のドップラー読取りセル143は、ドップラー原理(赤血球速度)に基づいて血液流量を
測定する。
【0098】
[00155]いくつかの実施形態では、ポンプ104が遠心力ポンプである場合、ドップラ
ー読取りセル143をすでに備えている。逆に、ポンプ104がローラポンプである場合、ドップラー読取りセル143を追加することができる。代替的に、ローラポンプヘッドは、流量測定システムを備えているので、ドップラー読取りセル143を除くこともできる。この場合、ポンプ流量Qpに関するデータは、監視装置110へと直接送られる。
【0099】
[00156]図19を特に参照して、監視システム110の動作を以下で述べる。監視シス
テム110のプロセッサは、操作者により入力された患者の体重および身長に基づいて、事前に定義されたテーブルにより、患者の体表面積(BSA)を計算する第1の計算プログラム112を含む。
【0100】
[00157]BSA値は、HLM103のポンプ104により検出されたポンプ流量Qpの
入力値を受け取る第2の計算プログラム113へと送られる。第2の計算プログラム113は、関係QpI=Qp/BSAにより、指数化されたポンプ流量Qpiを計算する。
【0101】
[00158]第3の計算プログラム114は、人工心肺の静脈または動脈ライン内に配置さ
れるヘマトクリット読取りセル143により検出された入力値HCTを受け取る。第3の計算プログラム114は、式(6)に基づき、ヘモグロビン値Hbを計算する。Hb値は、ディスプレイ111に送られ、ディスプレイ111のウィンドウ151に表示される(図20)。
【0102】
[00159]第2の計算プログラム113により計算された、指数化されたポンプ流量Qp
iと、第3の計算プログラム114により計算されたヘモグロビン値Hbとは、操作者により手動で入力される動脈酸素飽和度(Sat(a))、および動脈酸素分圧(PaO2)の値を入力値として受け取る第4の計算プログラム115へと送られる。第4の計算プログラム115は、式(4)に従って、指数化された酸素供給量値(DO2i)を計算する。
【0103】
[00160]図20で示すように、DO2i値は、ディスプレイ111のウィンドウ153
に実時間で、かつグラフの形152として(時間の関数として)視覚化される。ディスプレイ111は、CPBの開始から経過した時間を示すクロノメータウィンドウ156を備える。
【0104】
[00161]図19で示すように、DO2i値は比較器118へと送られ、比較器118は
、それを閾値DO2icritと比較し、それがディスプレイ111のウィンドウ154(図20)で表示される。この閾値は、34℃と37℃の間の温度で270ml/min/mに設定することができ、温度に応じて直線的に減少する。
【0105】
[00162]したがって、閾値DO2icritは、操作者によって事前設定することがで
きるが、あるいは温度プローブ140により測定された温度値Tに応じて、計算プログラム117により計算することができる。プローブ140により測定された温度T値は、ディスプレイ111に送られてウィンドウ155で表示される。
【0106】
[00163]DO2i値がDO2icritより低くなった場合、比較装置は、制御信号を
、トリガされる警報器116に送り、潜在的に危険な状態にあることを操作者に警告する。
【0107】
[00164]いくつかの実施形態では、警報器116は、ポンプ流量Qpの(CPB中にし
ばしば必要になる)短時間の減少によってはトリガされない。したがって、警報器116は、DO2iより低いDO2iを5分間連続して検出した後に起動されるように設定することもできる。しかし、短期間の低流量が多い場合に、さらなる影響を生ずることのある可能性を解析し、かつ回避するために、低流量のすべての期間の記録を行うことができる。約90分続く正常のCPB中に、DO2icritより低いDO2iは(合計で)20分を超えないと考えることは理にかなっている。監視装置110は、入力値として、CO2センサ141により検出された、呼気された二酸化炭素eCO2、および操作者により設定されたガス流量Veを受け取る計算プログラム119を備えている。この入力データにより、計算プログラム119は、式(9)を適用して、指数化された二酸化炭素生成量VCO2iを計算する。
【0108】
[00165]計算プログラム119により計算されたVCO2i値は、ディスプレイ111
に送られて、ウィンドウ157(図20)で時間に応じたそのグラフ的な関係158が実時間で表示される。
【0109】
[00166]VCO2i値は、第2の比較器120に送られて、操作者により設定された嫌
気性閾値VCO2icritと比較される。VCO2icritは、デフォルトで60ml/min/mに事前設定される。図20で示すように、ディスプレイ111は、操作者により設定された嫌気性閾値VCO2icritの値を示すウィンドウ159を備える。
【0110】
[00167]図19に戻ると、VCO2iがVCO2icritを超えたとき、警告信号が
第2の警報器121に送られ、警報器121は、トリガされたとき、警戒状態にあることを操作者に警告する。さらに図20で示すように、ディスプレイ111は、操作者により設定されたガス流量値Veが表示されるウィンドウ160と、計算プログラム113から届いた指数化されたポンプ流量値Qpiが表示されるウィンドウ161と、計算プログラム112により計算された、患者の体表面積が表示されるウィンドウ162とを備える。
【0111】
[00168]いくつかの実施形態では、監視システム110は、データ記録システムおよび
プリンタインターフェース、および/またはデジタルデータ記録システムを備えることができる。ディスプレイ111は、図20で示すように、完全な構成と、図21で示すように、DO2パラメータを考慮するだけの縮小させた構成との2つの構成を含むこともできる。
【0112】
[00169]いくつかの実施形態では、DMS29は、様々な異なる代謝パラメータを追跡
し、かつ表示することができる。図22および図23は、DMS29により表示されうるいくつかの代謝パラメータの例示的な、限定することのない例を提供する画面取込みである。前に論じたように、これらのパラメータのいくつかは測定されるが、他のパラメータは、測定されたパラメータを用いてDMS29により計算されうる。パラメータの例は、指数化された酸素供給量(DO2i)、指数化された酸素消費量(VO2i)および指数化された二酸化炭素生成量(VCO2i)を含む。表示されうる比の例は、DO2i/VCO2i、VCO2i/VO2i、およびVO2i/DO2iである。
【0113】
[00170]様々な変更および追加を、本発明の範囲から逸脱することなく、前に論じた例
示的な実施形態に対して行うことができる。例えば、上記で述べた実施形態では特定の特徴を参照するが、本発明の範囲はまた、上記で述べた特徴のすべてを含まない特徴および実施形態の様々な組合せを有する実施形態も含む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23