特許第6353574号(P6353574)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6353574コンプライアントな組織ファスナのための送達装置および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6353574
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】コンプライアントな組織ファスナのための送達装置および方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/10 20060101AFI20180625BHJP
【FI】
   A61B17/10
【請求項の数】5
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-49531(P2017-49531)
(22)【出願日】2017年3月15日
(62)【分割の表示】特願2015-116009(P2015-116009)の分割
【原出願日】2010年8月11日
(65)【公開番号】特開2017-104665(P2017-104665A)
(43)【公開日】2017年6月15日
【審査請求日】2017年3月15日
(31)【優先権主張番号】61/233,011
(32)【優先日】2009年8月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515230383
【氏名又は名称】データスコープ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】アシク エー. モハン
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム ケー. ホイーラー
【審査官】 中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/131110(WO,A2)
【文献】 特開平08−336540(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0140095(US,A1)
【文献】 特表2006−507042(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織を分離するための組織分離システムであって、該組織分離システムは、
シャフトと、
該シャフトの遠位端に取り付けられるハンドルと、
該シャフトの遠位端に位置する第1のジョーおよび第2のジョーであって、該第1のジョーおよび該第2のジョーは、相互に対して移動するように適合されている、第1のジョーおよび第2のジョーと、
該ジョーのうちの少なくとも1つに対して移動可能な複数のスタッドと、
トリガ機構と
を備え、
該トリガ機構は、
該第1のジョーおよび該第2のジョーのうちの1つと作用可能に関連付けられた第1のトリガアセンブリであって、該第1のトリガアセンブリは、第1のトリガを備え、該第1のトリガは、該ハンドルに向かって第1の方向に移動して、該ジョーを相互に対して閉鎖し、組織を貫通するように構成されたファスナを備える圧縮体が該第1のジョーと該第2のジョーとの間に位置付けられたときに該組織の上で該圧縮体を展開する、第1のトリガアセンブリと、
該第1のトリガアセンブリと作用可能に関連付けられた第2のトリガアセンブリであって、該第2のトリガアセンブリは、第2のトリガを備え、該第2のトリガは、該第1のトリガ閉鎖されたときに該第1のトリガと係合し該第1のトリガを該ハンドルと相互係止する相互係止具に取り付けられた傾斜した表面と該第2のトリガ内の第2のピンを係合するように該第1の方向に該第1のトリガと一緒に移動するように第1のピンにより該第1のトリガ上に旋回可能に載置され、該第1の方向における該第2のトリガのさらなる移動が該傾斜した表面を下方に移動させて相互係止具を該ハンドルから係脱することにより、該第1のトリガおよび該第2のトリガが該ハンドルから離れる第2の方向に移動可能であるようにし、かつ、該第1のジョーおよび該第2のジョーから該圧縮体を解放するようにする、第2のトリガアセンブリと
を備え、
該トリガ機構は、起動時、かつ、該圧縮体が該第1のジョーと該第2のジョーとの間に位置付けられたときに、以下の動作:(i)該第1のトリガが該第1の方向に移動したときの該スタッドに係合するような該ジョーの相互に対する閉鎖および該ファスナの展開、(ii)該第1のトリガに対して閉鎖するように該第2のトリガが該第1の方向に移動したときの該ファスナとの係合からの該スタッドの後退、(iii)該第1のトリガおよび該第2のトリガが該第2の方向に移動したときの該ジョーの相互に対する開放を順に生じさせるように構成されている、システム。
【請求項2】
前記第1のジョーおよび前記第2のジョーは、第1の平面内で相互に対して開放および閉鎖し、該第1の平面は、前記シャフトの軸を通る第2の平面に対する角度オフセットで配置されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記圧縮体は、2つの脚を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1のトリガが、前記ジョーを閉鎖し、かつ前記圧縮体を閉鎖するように前記第1の方向に十分に移動したときに、クリッカピンが移動して、該圧縮体が前記組織の上で閉鎖されたことを示す聴覚的なクリック音を発生させる、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記相互係止具は、前記ハンドル内の複数のピンと該相互係止具のラチェット歯を係合することにより前記第1のトリガを該ハンドルと相互係止し、前記第1の方向における前記第2のトリガの前記さらなる移動が前記傾斜した表面を下方に移動させて該相互係止具の該ラチェット歯を該複数のピンから離して引っ張ることにより該相互係止具を該ハンドルから係脱する、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、医療機器、システム、および方法に関する。より具体的には、本発明は、例えば、左心耳およびそれらの基部の近傍の他の組織構造を分離するために、組織近接のためのコンプライアントなファスナおよび圧縮構造を送達するための、ツール、システム、および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
心房細動は、左心房および右心房の非常に速い鼓動により特徴付けられる比較的一般的な病状である。心房細動は、通常それ自体は致命的ではないが、脳梗塞のリスク増加と関連している。速い鼓動により血液が左心耳に溜まり、塞栓が生じて左心房に放出され、そこから塞栓が脳血管系に入り、脳梗塞をもたらすと考えられる。脳梗塞に加えて、塞栓は冠循環に入り心筋梗塞を生じる可能性、または末梢循環に入り末梢血管疾患を生じる可能性がある。
【0003】
心房細動のある患者の脳梗塞リスクは、種々の方法で軽減できる。例えば、血液抗凝固薬を使用し、血栓形成のリスクを軽減できる。しかし、血液抗凝固薬の使用は、出血性疾患の危険がある患者には禁忌である。
【0004】
左心耳を閉鎖することを含む、さらに積極的な治療プロトコルが提案されている。閉鎖および切除は、開心外科手術において行われる場合があり、通常は患者にバイパス術を行い、胸骨を通じて胸部を開く必要がある。代替的に、胸腔鏡および他の低侵襲性手技が提案されている。特許文献1は、鼓動している心臓で行うこと以外は従来の手術技術を使用する手術の実行について教示する。心臓が鼓動している間の、小さな胸部貫通を通じた従来技術の使用は、実行するのが困難であり得る。特許文献2は、ツールを、血管系を通じて導入し、左心房へ通す血管内手法を説明する。ツールを使用し、エネルギ、接着剤等を用いて左心耳を内側から切除または融合する。また特許文献2は、心耳の頚部にテザーを配置し、結紮して分離する胸腔鏡手術についても説明する。特許文献2は、縫合糸、ステープル、形状記憶ワイヤ、生体適合性接着剤等を含む、他の閉鎖要素をなおさらに提唱する。特許文献3は、左心耳の遠位端を把持し、左心耳の基部を取り囲む捕捉ループを通じて後方に引っ張る経腹膜心臓手術について説明する。
【0005】
本発明にとって特に関心がある左心耳の密閉のためのコンプライアントな閉鎖構造が、同時係属の共有に係る特許文献4(出願第11/744,135号)において説明され、この完全な開示は、参照することによって本明細書に先に組み込まれる。特許文献4において説明されるコンプライアントな構造は、それらの間の開口を規定するように楕円形またはU形状の構成で配置され得る、一対の対向する脚を有する、弾性体を備える。左心耳上で脚間に開口を配置し、開口を左心耳の基部と整列させることによって、所望の密閉を提供するように、構造は閉鎖され得る。構造を閉鎖された状態で保持するために、いくつかの別個の軸方向に離間する組織貫通ファスナが、脚の各々の長さに沿って配置される。ファスナをプレス嵌めするために、脚を一緒に圧縮することによって、左心耳を効果的に分離する、コンプライアントな密閉を提供するように、コンプライアントな構造が閉鎖され得る。
【0006】
特許文献4は、コンプライアントな閉鎖構造のための特定の送達ツールを説明する。送達ツールは、閉鎖構造の脚の中に挿入され、左心耳の上で脚の中でジョーを閉鎖するように起動されることが可能なジョーを含む。ジョーは、コンプライアントな構造をその閉鎖された密閉構成に保持するために、ファスナを係合およびプレス嵌めする、コームスタッドをさらに含む。スタッドは、送達ツールが除去されることを可能にするように、後退されることが意図される。
【0007】
機能的ではあるが、特許文献4の送達ツールは、ある欠点を有する。例えば、ジョーの起動、およびコームスタッドの後退は、不適切に実行される可能性があり、コンプライアントな構造の送達が失敗するリスクを増加させる。さらに、送達ツールの位置付けおよび配向は、特に、ツールが、左心房に接近するように、肋間貫通を通じて導入される場合、困難である可能性がある。また、特許文献4の装置内のジョーは、装置シャフトの軸平面において取り付けられる。かかる直線的取り付けは、ジョーを、左心耳の基部に整列させ、および左心耳につながる心房の口にわたって整列させることをより困難にする可能性がある。閉鎖装置が、完全に閉鎖するように、基部にわたって整列されない場合、口、間隙、または開口(「盲管」と称する)は、閉鎖部位に残る可能性があり、心房における血栓形成のリスクを増加させる。かかる盲管を含まない口の完全な密閉の形成の重要性は、非特許文献1において説明されている。
【0008】
これらの理由により、特許文献4において説明される組織閉鎖装置とともに使用するための、改善された送達ツールを提供することが望ましいであろう。送達ツールおよびそれらの使用方法が、他の組織閉鎖装置の送達、および左心耳の閉鎖に加えた手技に対して適合性がある場合、さらに望ましいであろう。これらの目的のうちの少なくとも一部は、以降に説明される本発明によって満たされる。
【0009】
左心耳を閉鎖するための低侵襲性および他の手技は、米国特許第6,488,689号、第5,865,791号、および第5,306,234号、ならびに出願公開第2005/0154404号、および第2004/0030335号において説明されている。他の組織結紮ツール、ならびに関連装置および技術は、米国特許第6,790,172号、第6,436,108号、第6,325,810号、第6,273,897号、第6,051,003号、第5,964,774号、第5,624,453号、第5,507,797号、および第4,257,419号において説明されている。上に説明される米国特許出願公開第2007/0260278号もまた参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,306,234号明細書
【特許文献2】米国特許第5,865,791号明細書
【特許文献3】米国特許第6,488,689号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2007/0260278号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Salzberg他、(2008)Eur.J.Cardiothoracic Surg.34:766−770
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、対向する組織係合表面、および前記表面間で展開可能な複数の組織貫通ファスナを伴う、2つの脚を有する、圧縮体を含む、閉鎖装置とともに使用するための、閉鎖装置アプリケータを提供する。かかる圧縮体は、同時係属の共有に係る出願である、米国特許出願公開第2007/0260278号において説明され、この完全な開示は、参照することによって本明細書に先に組み込まれる。しかしながら、本発明のアプリケータはまた、類似の構造を有する他の閉鎖装置との使用も見出すであろう。
【0013】
本発明の閉鎖装置アプリケータは、シャフトと、シャフトの近位端に取り付けられるハンドルと、シャフトの遠位端に旋回可能に取り付けられる一対のジョーとを備える。各ジョーは、複数の後退可能なスタッドを有し、ジョーは、スタッドが、閉鎖装置内の個々のファスナに係合した状態で、組織閉鎖装置の脚を着脱可能に係合および保持するように適合される。ハンドルは、第1のトリガと、第2のトリガとを含む。典型的に、シャフトを形成する連結アセンブリは、ハンドルをジョーに接合し、第1のトリガおよび第2のトリガは、ジョーを閉鎖するために、およびファスナを展開するように、ファスナに対して、スタッドを同時に係合するために、ハンドルに向かって一緒に後退させられる。次いで、第2のトリガは、スタッドをファスナから係脱するように、第1のトリガに対して後退させられてもよく、第1および第2のトリガは、ジョーを開放するように、一緒にハンドルから離れさせられる。ジョーが完全に閉鎖される(以下に説明されるように「クリッカ」を介して)場合、およびスタッドが後退させられる前の不慮の開放を防止するように、ジョーが係止される場合、聴覚的確認が与えられる。
【0014】
上に説明されるように、別個のトリガを提供することは、それが、ジョーの閉鎖および開放が、スタッド後退から分離されることを可能にするため、有利である。特に、以下に説明されるように、相互係止具を提供することによって、閉鎖装置アプリケータは、(1)ファスナ展開を伴うジョー閉鎖、(2)スタッドの後退、および(3)ジョーの開放を、順に提供するように構成することができる。ファスナが展開される前にスタッドを後退すること、またはファスナが後退させられる前にジョーを開放することは、手技の失敗の著しいリスクをもたらす。ステップの特定の順序付けは、連結アセンブリの具体的な構造、ならびに装置が適切に展開された場合の相互係止具および聴覚的フィードバックの包含によって提供される。
【0015】
具体的な実施例において、連結アセンブリは、トリガをジョーおよびスタッドに接合するシャフトを一緒になって規定する、固定されたロッドに沿って配置される、一対のスリーブを備える。典型的に、スリーブは同軸であり、第1のトリガは、ジョーを閉鎖するように、第1のスリーブを移動させるように接続され、第2のトリガは、スタッドを係脱するように、第2のスリーブに接続される。通常、第1のトリガは、ハンドル上に旋回可能に載置され、第2のトリガは、第1のトリガ上に旋回可能に載置される。
【0016】
他の具体的な実施形態において、第1のトリガは、第1のレバーによって、第1のスリーブに結合され、第2のトリガは、第2のレバーによって、第2のスリーブに結合される。好ましくは、相互係止具は、相互係止具が、第1および第2のトリガが、ジョーを閉鎖するように一緒に後退させられる場合に、係合され、かつ第2のトリガが、スタッドを後退させるように、第1のトリガに対して後退させられる場合に、解放されるように、第1のトリガとハンドルとの間に配置される。相互係止具は、スタッドが、第2のトリガを使用して後退させられる前の、ジョーの偶発的な開放を防止する。
【0017】
本発明の第2の態様において、左心耳上で圧縮体を閉鎖するための閉鎖装置は、シャフトと、シャフトの遠位端に旋回可能に接続される一対のジョーと、シャフトの近位端に取り付けられるハンドルと、ジョーを閉鎖し、左心耳上で圧縮体を展開するように、ジョーに結合される、ハンドル上のトリガ機構とを備える。左心耳への肋間貫通を介して、ジョー上に支持される圧縮体の導入を促進するために、ジョーは、シャフトの軸に対して、10°から20°、典型的に15°の範囲内の角度で配置される平面内で、開放および閉鎖するように構成される。この角度は、シャフトが、患者の身体の前後平面に対して、対応する角度で導入されることを可能にし、前後平面は、矢状面に垂直である。この改善は、先の同時係属出願第2007/0260278号において開示される設計を使用した場合、肋間送達プロトコルにおいて、軸方向に整列された平面において配向される展開ジョーは、位置付けることが困難であろうという、本明細書における本発明者による発明に起因した。特に、角度付けられたジョーは、盲管を含まないように、左心房壁における口を完全に閉鎖することができるように、閉鎖部材が、左心耳の基部にわたって整列されることを可能にする。
【0018】
本発明のなおさらなる態様において、システムは、同時係属の共有に係る第US2007/0260278号において説明されるもの、および上に説明される装置アプリケータのうちのいずれかといった、閉鎖装置を備える。
【0019】
組織構造を閉鎖するための本発明による方法は、圧縮体を、少なくとも2つのコンプライアントな組織係合表面が、組織構造の両側に係合する状態で、左心耳といった組織構造上に位置付けるステップを含む。圧縮体を保持する、一対のジョーに結合される、第1のトリガは、ジョーを閉鎖し、組織係合表面間で、および組織構造を通って、複数のファスナを展開するように、引っ張られる。次いで、第2のトリガは、ジョー上の複数のスタッドを、ファスナとの接触から係脱するように引っ張られ、第1のトリガは、ジョーを開放し、圧縮体を解放するように、解放される。好ましくは、少なくとも第1および第2のトリガは、スタッドが解放されるまで、ジョーの開放を防止するように、選択的に相互係止され得る。
【0020】
左心耳の基部を閉鎖するための本発明によるさらなる方法は、シャフトを、肋間切開を通って、左心耳に向かって、挿入するステップを含む。圧縮体を支持するジョーは、左心耳上に位置付けられ、ジョーは、シャフトの軸に対して、10°から20°、典型的に15°の範囲内の角度で配置される平面内で、起動可能である。次いで、ジョーは、左心耳上で圧縮体を展開するように閉鎖される。角度付けられたジョーの利点は、上述されている。
本明細書は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
閉鎖装置と使用するための閉鎖装置アプリケータであって、該閉鎖装置は、対向する組織係合表面を有する2つの脚を有する圧縮体と、該表面の間で展開可能な複数の組織貫通ファスナとを含み、
該アプリケータは、
シャフトと、
該シャフトの近位端に取り付けられたハンドルであって、第1のトリガおよび第2のトリガを有するハンドルと、
該シャフトの遠位端に旋回可能に取り付けられた一対のジョーであって、各ジョーは、複数の後退可能なスタッドを有し、該ジョーは、該スタッドが該閉鎖装置の該ファスナを係合することによって、該閉鎖装置を着脱可能に保持するように適合されている、一対のジョーと、
該ハンドルを該一対のジョーに接合する連結アセンブリと
を備え、
該第1のトリガおよび該第2のトリガは、該ハンドルに向かって一緒に後退させられることにより、該ジョーを閉鎖し、かつ、該ファスナを展開し、
該第2のトリガは、該第1のトリガに対して後退させられることにより、該スタッドを該ファスナから係脱させ、
該第1のトリガおよび該第2のトリガは、一緒に該ハンドルから離れさせられることにより、該ジョーを開放する、
アプリケータ。
(項目2)
前記連結アセンブリは、前記シャフトに沿って配置された一対のスリーブを備え、該一対のスリーブは、前記トリガを前記ジョーおよびスタッドに接合する、項目1に記載のアプリケータ。
(項目3)
前記スリーブは、同軸である、項目2に記載のアプリケータ。
(項目4)
前記第1のトリガは、前記ジョーを閉鎖するために、第1のスリーブを移動させるように接続され、前記第2のトリガは、前記スタッドを係脱するために、第2のスリーブに接続されている、項目3に記載のアプリケータ。
(項目5)
前記第1のトリガは、前記ハンドル上に旋回可能に載置されている、項目4に記載のアプリケータ。
(項目6)
前記第2のトリガは、前記第1のトリガ上に旋回可能に載置されている、項目5に記載のアプリケータ。
(項目7)
前記第1のトリガと、前記第1のスリーブとの間に結合された第1のレバーと、前記第2のトリガと、前記第2のスリーブとの間に結合された第2のレバーとをさらに備えている、項目6に記載のアプリケータ。
(項目8)
前記第1のトリガと前記ハンドルとの間の相互係止具をさらに備え、該相互係止具は、該第1のトリガおよび前記第2のトリガが、一緒に後退させられる場合に係合され、該第2のトリガが、該第1のトリガに対して後退させられる場合に解放される、項目1に記載のアプリケータ。
(項目9)
前記ジョーは、前記シャフトの軸に対して、10°から20°の範囲内の角度で配置された平面内で、開放および閉鎖する、項目1に記載のアプリケータ。
(項目10)
前記連結アセンブリは、前記第2のトリガと前記スタッドとの間で接続されたワイヤを備え、該ワイヤは、前記ジョーと前記シャフトとの間の角度に従っている、項目9に記載のアプリケータ。
(項目11)
左心耳の上で圧縮体を閉鎖するための閉鎖装置であって、該装置は、
シャフトと、
該シャフトの遠位端に旋回可能に接続された一対のジョーと、
該シャフトの近位端に取り付けられたハンドルと、
該ハンドル上のトリガ機構であって、該左心耳の上で該ジョーを閉鎖し、該圧縮体を展開するために、該ジョーに結合されたトリガ機構と
を備え、
該ジョーは、該シャフトの軸に対して、10°から20°の範囲内の角度で配置された平面内で、開放および閉鎖する、装置。
(項目12)
閉鎖装置と、項目1から10のうちのいずれか1項に記載のアプリケータとを備えている、システム。
(項目13)
組織構造を閉鎖する方法であって、該方法は、
圧縮体を該組織構造上に位置付けることであって、少なくとも2つのコンプライアントな組織係合表面が、該構造の両側を係合する、ことと、
該ジョーを閉鎖し、該組織係合表面の間かつ該組織構造を通して複数のファスナを展開するために、該圧縮体を保持する一対のジョーに結合された第1のトリガを引っ張ることと、
該ジョーの複数のスタッドを、該ファスナとの接触から係脱するために、第2のトリガを引っ張ることと、
該ジョーを開放し、該圧縮体を解放するために、該第1のトリガを解放することと
を含む、方法。
(項目14)
左心耳の基部を閉鎖する方法であって、該方法は、
肋間切開を通して、該左心耳に向かいシャフトを挿入することと、
圧縮体を支持するジョーを該左心耳の上に位置付けることであって、該ジョーは、該シャフトの軸に対して、10°から20°の範囲内の角度で配置された平面内で、起動可能である、ことと、
該左心耳の上で該圧縮体を展開するために、該ジョーを閉鎖することと
を含む、方法。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の原理に従って構築される、閉鎖装置アプリケータの斜視図である。
図2図2は、ジョーが、図1に示される位置に対して、90°で開放および回転させられた状態で示される、図1の閉鎖装置アプリケータの部分的な断面図である。
図3図3は、第1および第2のレバーが、ジョーを閉鎖するために、ハンドルに対して閉鎖された状態で示される、図2に類似の装置アプリケータの部分的な断面図である。
図4図4は、第2のトリガが、ファスナ係合スタッドを後退させるために、第1のトリガに対して閉鎖された状態の、図2および3に示されるものと類似の閉鎖装置アプリケータの部分的な断面図である。
図5図5は、第1および第2のトリガが、ファスナ係合スタッドが後退させられたままである間にジョーを開放するために、再開放された状態で示される、図2〜4の閉鎖装置アプリケータの部分的な断面図である。
図6A図6A〜6Dは、ジョーの移動、および組織閉鎖装置のファスナとのスタッドの係合を例解する。
図6B図6A〜6Dは、ジョーの移動、および組織閉鎖装置のファスナとのスタッドの係合を例解する。
図6C図6A〜6Dは、ジョーの移動、および組織閉鎖装置のファスナとのスタッドの係合を例解する。
図6D図6A〜6Dは、ジョーの移動、および組織閉鎖装置のファスナとのスタッドの係合を例解する。
図7図7は、それによってファスナ係合スタッドがジョー内で後退させられる機構を例解する。
図8図8は、本発明の原理に従う、左心耳上で閉鎖装置を閉鎖するための本発明の閉鎖装置アプリケータの使用を例解する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、患者の組織構造、例えば、左心耳からの循環に放出された塞栓に起因する脳梗塞または他の有害事象の危険がある患者の左心耳上で、閉鎖装置を展開するための代替および改善された装置、システム、および方法を提供する。本発明の手技の利益を受ける患者は、心房細動に罹患する者を含み、心房細動は、左心耳において血餅および血栓形成を引き起こし、塞栓放出の危険性を増加させる可能性がある。
【0023】
本発明は、組織構造を基部で閉鎖するために、閉鎖装置を組織構造の基部の上に導入し、適所に保持するための閉鎖装置アプリケータを提供する。次いで、基部の上にある組織構造の部分は、切除または除去され得るが、これは、医師の選好により残され得る。組織閉鎖装置は、組織構造の両側の上に配置される少なくとも2つの対向するコンプライアントな組織係合表面を有する圧縮体を含む。組織係合表面は、複数の軸方向に離間した組織貫通ファスナによりともに保持され、ファスナは、一方の表面から中間組織を介して他方の表面に延在し、圧縮体を適所に保持し、かつ、望ましいレベルの圧縮力を適用する。この圧縮力は、圧縮体の柔らかさとそれらが完全に取り付けられた場合の表面間の距離の両方により決定される。ウェルをファスナの組織貫通バーブの周囲にある圧縮体内に提供し、組織における穿通部位の周囲にある圧縮体によりガスケット密閉が形成されるようにし得る。安定化リップが圧縮体の一方の脚に提供され、圧縮体の他方の脚に対する一方の脚の回転運動を回避し得る。これは、直線状に整列された2つの対向する軟質部材を維持する。閉鎖装置のより詳細な説明は、共有に係る同時係属の第US2007/0260278号において見出され、この完全な開示は、参照することによって本明細書に先に組み込まれる。
【0024】
ここで図1を参照すると、本発明の原理に従って構築される、閉鎖装置アプリケータ10は、その近位端にあるハンドルアセンブリ14と、遠位端にあるジョーアセンブリ16とを有するシャフトアセンブリ12を備え、個々のジョー18および20は、図6A〜6Dにおいて最良に例解されるように、閉鎖装置22を支持するように適合されている。閉鎖装置22は、図1、2、および6Aにおいて示されるように、ジョーが開放している場合、左心耳または他の組織構造を受け取るためのV形状の領域24を規定するU形状の構成を有する。複数のスタッド26が、図6Aにおいて最良に示されるように、貫通構成要素28とレセプタクル構成要素30とを備えている組織貫通ファスナを係合するために、各ジョー20および18の内面に沿って形成される。ハンドルアセンブリ14は、ハンドル32と、第1のトリガ34と、第2のトリガ36とを含む。
【0025】
ここで図2および6Aを参照すると、閉鎖装置アプリケータ10が、その保管または送達構成で示され、閉鎖装置22が、ジョーアセンブリ16上に受け取られており、装置内のV形状の開口24が、左心耳(図8を参照されたい)または他の組織構造の上に配置される準備が整っている。第1のトリガ34および第2のトリガ36は、完全に開放されており、即ち、完全に旋回されハンドル32から離れている。
【0026】
閉鎖装置22が、左心耳または他の標的組織構造の上に前進された後、ジョー18および20は、図3および6Bにおいて示されるように、第1のトリガ34をハンドル32に向かって手動で引っ張ることによって、閉鎖される。トリガ34は、ハンドルアセンブリ14に固定して固着される、ピボット40上に載置される。トリガ34を閉鎖すること、即ち、ピボット40上で旋回することは、ピン41およびレバー43によって、トリガに連結されるロッド42を、近位に後退させる。ロッド42は、ジョー18および20の近位端に旋回可能に取り付けられたピン44(図6B)に取り付けられ、ロッド42は、ジョーが、静止スリーブ52に取り付けられたエンドフレーム50のピン48の上のスロット46の移動によって閉鎖されるように、ジョーを近位に後退させる。ジョー18および20が閉鎖される場合、スタッド26は、図6Bにおいて示されるように、組織貫通構成要素28、および組織貫通レセプタクル30が、相互に係合および係止し、このため、閉鎖装置22の2つの脚を閉鎖するように、それらを係合する。第2のトリガ36は、それが、第1のトリガ34と一緒に閉鎖するように、ピン41上に載置される。
【0027】
第1のトリガ34と第2のトリガ36とが一緒に閉鎖されている場合、ラチェット歯表面62を有する相互係止具60は、図3において示されるように、一度ジョーが閉鎖されると、トリガ34を開放することができないように、ピン64に対して閉鎖される。以下に説明されるように、第2のトリガ36を閉鎖することによって、スタッド26を後退させる前には、ジョーは開放されるべきではないため、上に説明されるとおり、これは有利である。
【0028】
さらに、第1のトリガ34が、ジョーアセンブリ16のジョー18および20を閉鎖するように、閉鎖される場合、相互係止具60の角66(図7)が、クリッカピン70上の傾斜した表面68に係合し、クリッカピンを保持ピン72から係脱させ、このため、バネ74がピン70を下方向に押下し、底面76がハンドルの底部に突当することを可能にし、このため、ジョーが閉鎖され、相互係止具が係合されたことを、医師に聴覚的に警告するように大きなクリック音が発生される。この聴覚的確認は、閉鎖装置22が閉鎖されたこと、およびスタッド26を後退させることができることを、医師に示す。
【0029】
ここで図4および6Cを参照すると、スタッド26は、図4において示されるように、第1のトリガ34に対して、第2のトリガ36を閉鎖することによって、後退される。第2のトリガ34の閉鎖は、静止スリーブ52の上の外スリーブ54を近位に引き寄せ、外スリーブ54は、図7において示されるように、スタッドコーム84を近位に引っ張るように、プルワイヤ80を近位に引き寄せる。スタッドコーム84は、ジョー18および20の各々に形成されるスロット88の中で移動するピン86上に載置されている。第2のトリガ36は、ピン41によって、第1のトリガ上に旋回可能に載置され、ピン90および91、ならびにレバー92によって、静止スリーブに結合されている。
【0030】
第2のトリガ36の閉鎖は、第2のトリガ内の固定されたピン96に対して、相互係止具に取り付けられた傾斜した表面94に係合することによって、相互係止具60を係脱させる。ピン96は、表面94に係合するように、図3において破線で示される経路をたどる。図4および5において示されるように、傾斜した表面94は、下方に移動させられ、ラチェット歯62を、固定されたピン64から離して引っ張る。ここで、トリガ34および36は、以降に説明されるように、ジョーを開放するために、開放される準備が整う。
【0031】
ここで図5および7Cを参照すると、ジョー18および20は、第1および第2のトリガ34および36上の手動圧縮を解放することによって、開放され得、第1のトリガ34の閉鎖中に圧縮されていたバネ98が、ロッド42(ピボット44に取り付けられる)を遠位に前方へ押しやることを可能にし、ジョーを開放し、かつ閉鎖装置22を所定の位置に残す。
【0032】
ここで図8を参照すると、本発明の閉鎖装置アプリケータは、開胸拍動心臓手技において、左心耳LAAの基部の上に閉鎖装置22を送達するために使用することができる。心臓上の作業空間を提供するように、胸骨Sが開かれ、肋骨Rを広げる。心膜を開いた後、図8において示されるように、開口内で左心耳を露出させるために、心臓が、例えば、心臓の後方に配置される、ガーゼまたは他の材料のシートを使用して、持ち上げられ、変向され得る。左心耳LAAを露出させた後、閉鎖装置アプリケータのジョー18および20は、図8において示されるように、シャフト12を操作することによって、左心耳の基部周囲に配置される。典型的に約15°である、シャフトに対するジョー18および20の角度は、ジョーが、左心耳と左心房LAとの間の口と略平行であるように、ジョーが左心耳の基部に係合することを可能にするため、極めて有利である。ジョーの平面が、シャフトと整列されている場合、この配向を達成することが困難であり、左心耳を閉鎖し、盲管(口の後方、および左心耳の内部への開放空間)を残すリスクが大幅に増加される。かかる盲管は、血栓源である可能性があり、形成された場合、同じまたは後の手技において、閉鎖されなければならないため、問題となる。一度ジョー18および20が、左心耳の基部の周囲に閉鎖装置22を適切に位置付けると、先に説明されるように、ジョーは起動され、閉鎖装置は展開される。
【0033】
上記は、本発明の好適な実施形態に関する完全な説明であるが、種々の代替例、修正、および相当物を使用し得る。したがって、上記の説明は本発明の範囲を限定するものと見なすべきではなく、添付の請求項により定義される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8