(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6353595
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】ログハウス
(51)【国際特許分類】
E04B 2/86 20060101AFI20180625BHJP
E04B 2/02 20060101ALI20180625BHJP
E04B 2/70 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
E04B2/86 611W
E04B2/02
E04B2/70
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-161775(P2017-161775)
(22)【出願日】2017年8月25日
【審査請求日】2017年12月13日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517034433
【氏名又は名称】株式会社タロ・インターナショナル
(74)【代理人】
【識別番号】100103872
【弁理士】
【氏名又は名称】粕川 敏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100088856
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 佳之夫
(74)【代理人】
【識別番号】100149456
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 喜幹
(74)【代理人】
【識別番号】100194238
【弁理士】
【氏名又は名称】狩生 咲
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼柳 和夫
(72)【発明者】
【氏名】安達 博俊
【審査官】
土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】
特許第5164963(JP,B2)
【文献】
特開平06−136911(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/86
E04B 2/02
E04B 2/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横倒させた複数のログ材を高さ方向に積み上げてなるログ壁を備えたログハウスであって、
鉛直方向に隣接し、上記ログ壁を構成する上記ログ材の間には、略帯状の第一の防水テープが上記ログ材の長さ方向に介装され、
鉛直方向に隣接し、ノッチ部から外側へ突出する上記ログ材の突出部には、略帯状の第二の防水テープが上記ログ材の幅方向に介装され、
上記第一の防水テープの両端は、上記ログ材の幅方向に折曲して外側へ導出され、
上記第二の防水テープの両端は、上記ノッチ部近傍から上記ログ材の幅方向に沿って外側へ導出されている、
ことを特徴とするログハウス。
【請求項2】
上記第一の防水テープの両端は、ノッチ部近傍において、上記ログ材の幅方向に折曲して外側へ導出されている、
請求項1記載のログハウス。
【請求項3】
上記ログ材の鉛直方向の上下の端面には、上方に隣接する上記ログ材と嵌合する第一の嵌合部と、下方に隣接する上記ログ材と嵌合する第二の嵌合部と、が形成されており、
上記第一の嵌合部は、内側及び外側に設けられた一対の第一の突条と、当該一対の第一の突条の間に設けられた第一の条溝と、からなり、
上記第二の嵌合部は、上記一対の第一の突条に対応した一対の第二の条溝と、上記第一の条溝に対応した第二の突条と、からなり、
上記第一の防水テープは、外側に設けられた上記第一の突条と、当該外側に設けられた上記第一の突条に対応する上記第二の条溝の間に介装されている、
請求項1又は2項に記載のログハウス。
【請求項4】
上記第一の防水テープは所定の厚みを有し、
上記第一の防水テープにより、鉛直方向に隣接する上記ログ材の間の隙間が埋められている、
請求項1乃至3いずれかの項に記載のログハウス。
【請求項5】
上記第一の防水テープの端部が外側へ導出される部分にはコーキング処理が施されている、
請求項1乃至4いずれかの項に記載のログハウス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ログハウスにおいて雨水の浸入を防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
丸太組構法による建築物、所謂ログハウスは、丸太、製材その他これに類する木材等のログ材を、欠き込みを入れて交差させながら水平に積み上げることで壁面(ログ壁)を構築している。そのため、板で壁面を構成する建物とは異なり、隣接するログ材の隙間に雨水等の水分が浸入することが懸念され、これを防止するための構造が必要となる。
【0003】
この点、特許文献1〜3では、鉛直方向に積み上げられるログ材の上下端に形成されている凸条部分に防水部材あるいはシーリングテープを貼り付けた上で、当該ログ材を組み上げてログハウスを構築する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3280561号公報
【特許文献2】特許第5164963号公報
【特許文献3】特許第5906526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1〜3記載のログハウスでは、シーリングテープや防水部材によって屋外からの雨水の浸入を一定程度、防ぐことができるが、ログ材間あるいはログ材と防水部材等との間に形成される僅かな隙間に浸入してきた雨水は、この僅かな隙間の中で、毛細管現象によって防水部材等をつたい、屋内へ浸入してしまう。
【0006】
そこで、本発明は、屋外から浸入してくる雨水等の水分の浸入を効果的に防ぐことのできるログハウスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係るログハウスは、横倒させた複数のログ材を高さ方向に積み上げてなるログ壁を備えたログハウスであって、鉛直方向に隣接し、上記ログ壁を構成する上記ログ材の間には、略帯状の第一の防水テープが上記ログ材の長さ方向に介装され、上記第一の防水テープの両端は、上記ログ材の幅方向に折曲して外側へ導出されていることを特徴とする。
【0008】
また、上記第一の防水テープの両端は、ノッチ部近傍において、上記ログ材の幅方向に折曲して外側へ導出されているものとしてもよい。
【0009】
また、鉛直方向に隣接し、ノッチ部から外側へ突出する上記ログ材の突出部には、略帯状の第二の防水テープが上記ログ材の幅方向に介装され、上記第二の防水テープの両端は、上記ノッチ部近傍から上記ログ材の幅方向に沿って外側へ導出されているものとしてもよい。
【0010】
また、上記ログ材の鉛直方向の上下の端面には、上方に隣接する上記ログ材と嵌合する第一の嵌合部と、下方に隣接する上記ログ材と嵌合する第二の嵌合部と、が形成されており、上記第一の嵌合部は、内側及び外側に設けられた一対の第一の突条と、当該一対の第一の突条の間に設けられた第一の条溝と、からなり、上記第二の嵌合部は、上記一対の第一の突条に対応した一対の第二の条溝と、上記第一の条溝に対応した第二の突条と、からなり、上記第一の防水テープは、外側に設けられた上記第一の突条と、当該外側に設けられた上記第一の突条に対応する上記第二の条溝の間に介装されているものとしてもよい。
【0011】
また、上記第一の防水テープは所定の厚みを有し、上記第一の防水テープにより、鉛直方向に隣接する上記ログ材の間の隙間が埋められているものとしてもよい。
【0012】
また、上記第一の防水テープの端部が外側へ導出される部分にはコーキング処理が施されているものとしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ログハウスにおいて、屋外から浸入してくる雨水等の水分の浸入を効果的に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係るログハウスの構造を部分的に示した斜視図である。
【
図2】本実施形態に係るログハウスを構成する壁面の断面を示したA−A断面図である。
【
図3】本実施形態に係るログハウスの構造する壁面の断面を示したB−B断面図である。
【
図4】本実施形態に係るログハウスの構造を部分的に示した斜視図である。
【0015】
以下、本発明の実施形態に係るログハウスについて、図を参照して説明する。
本発明の実施形態に係るログハウスLの構造を
図1に示す。
なお、各図面では本発明の説明に必要な範囲で各部材等を図示しているのであり、ログハウスLが備えるべき基礎や梁、屋根等は図示を省略しているが、通常のログハウスの構築上、必要なものは適宜、設けられる。
【0016】
ログハウスLの壁面を構成するログ壁Wは、横倒させた複数のログ材1を高さ方向に積み上げてなる。
図1の例では、ログ材1の一端部近傍に、所定の形状に切り欠いたノッチ部11が形成され、交差する二つのログ壁Wを構成するログ材1のノッチ部11同士が嵌合している。また、ログ材1の他端部は、窓や扉を構成する枠材4と接合している。なお、
図1の例に限らず、ログハウスLの設計次第で、あるいはログハウスLを構成する箇所次第で、ログ壁Wを構成するログ材1の端部は、両端がノッチ部11を構成することもあれば、枠材2と接合することもある。
【0017】
図2及び
図3に示されるように、ログ材1の鉛直方向又は積み上げ方向の上下の端面には夫々、上方に隣接するログ材1と嵌合する嵌合部12と、下方に隣接するログ材1と嵌合する嵌合部13とが形成されている。
嵌合部12は、屋内側及び屋外側に設けられた一対の突条12a、12bと、一対の突条12a、12bの間に設けられた条溝12cとからなる。
嵌合部13は、一対の突条12a、12bに対応した一対の条溝13a、13bと、条溝12bに対応して一対の条溝13a、13bの間に設けられた突条13cとからなる。
【0018】
鉛直方向に隣接し、壁面Wを構成するログ材1の間には、略帯状の防水テープ2がログ材1の長さ方向に介装されている。
特に本実施形態では、防水テープ2は、屋外側に設けられた突条12bと、当該屋外側に設けられた突条12bに対応する条溝13bの間に介装されている。
【0019】
防水テープ2は、所定の厚みを有する略帯状のテープであり、ビニル樹脂等、防水性を有する材質からなる。
この防水テープ2が所定の厚みを有していることにより、ログ材1が積み上げられると、鉛直方向に隣接するログ材1の間の隙間、即ち目地が防水テープ2で埋められ、ログ材1間からの雨水等の浸入を防ぐことができる。
【0020】
防水テープ2の裏面側には、防水テープをログ材1に貼り付けるための粘着剤が塗布されており、ログ材1に防水テープ2を貼り付けることができる。
なお、本実施例では、防水テープ2は突条12b上に貼り付けられるものとしているが、防水テープ2の表裏両面に粘着剤を塗布し、ログ材1の突条12b及び条溝13bに対して表裏面を貼り付けるようにすることもできる。
また、防水テープ2に粘着剤が塗布されていると、ログ材1を積み上げる際に防水テープ2が剥がれることがないし、粘着剤によってログ材1と防水テープ2の間の隙間が埋められるが、防水テープ2に粘着剤を塗布しない場合でも、ログ材1の間に介装させることは可能であり、この場合でも雨水等の浸入を防ぐことができる。
【0021】
防水テープ2は、ログ材1の長さ方向に延びる基体部21と、ログ材1の幅方向に屈曲して屋外側へ導出される両端の導出部22、23とからなる。
本実施形態では、防水テープ2の基体部21がログ材1の長さ方向に沿って突条12b上に貼り付けられている。防水テープ2の一端はノッチ部11近傍において折り曲げられて導出部22を構成し、ログ材1の幅方向に沿って外側へ導出されている。また、防水テープ2の他端は、枠材4近傍において折り曲げられて導出部23を構成し、ログ材1の幅方向に沿って外側へ導出されている。
【0022】
これにより、隣接するログ材1の間に浸入してくる雨水等は防水テープ2によって屋内への浸入を妨げられる。詳細には、ログ材1の間に浸入してきた雨水等は主に、防水テープ2の基体部21によって屋内への浸入を妨げられる。そして、基体部21から防水テープ2の両端へ伝う雨水等は、導出部22、23から屋外側へ排水されることになり、その結果、雨水等がログ材1の端部近傍から屋内へ浸入することもない。
【0023】
なお、本実施例では、防水テープ2の端部は、ノッチ部11の近傍あるいは枠材4の近傍において折り曲げられ、ログ材1の幅方向に沿って外側へ導出されるものとしたが、他の例では折り曲げることなく、基体部21と導出部22、23とで別体の3つの防水テープを用意し、ノッチ部11の近傍あるいは枠材4の近傍において貼り合わせようにすることもできる。
【0024】
また、本実施形態では、ログ材1のノッチ部11から外側へ突出する突出部1aにおいて、鉛直方向あるいは積み上げ方向に隣接するログ材11間に防水テープ3が介装されている。詳細には、防水テープ3は突出部1aのノッチ部11近傍において、ログ材11の幅方向に介装されており、両端は外側へ導出されている。
【0025】
防水テープ3は、防水テープ2と同様、所定の厚みを有する略帯状のテープであり、ビニル樹脂等、防水性を有する材質からなる。また、防水テープ2と同様、表裏面のうちの少なくとも裏面側には粘着剤を塗布しておくのが好適であり、これによりログ材1に貼り付けることができる。
【0026】
この防水テープ3により、ログ材1が積み上げられたログ壁Wにおいて、鉛直方向に隣接するログ材1の間の隙間が埋められ、ログ材1間からノッチ部11へ雨水等が浸入するのを防ぐことができる。また、ログ材1の突出部1a近傍から浸入してくる雨水等は防水テープ3によってノッチ部11、さらには屋内へと浸入するのを妨げられる。詳細には、ログ材1の突出部1aへ浸入してきた雨水等は、防水テープ3によって浸入を妨げられると共に、防水テープ3を伝って端部から屋外へ排水される。
【0027】
本実施形態では
図4に示されるように、防水テープ2、3に加えて、ノッチ部11近傍の入隅部14にコーキング処理を施してもよい。
図4は、コーキング処理によって入隅部14にコーキング材からなるコーキング部14aが形成されている状態を示している。
入隅部14にコーキング処理を施すことにより、入隅部14の防水テープ2、3によって仕切られていない部分がコーキング材で覆われるため、当該入隅部14からの雨水等の浸入を防ぐことができる。
【0028】
また、枠材4近傍においては、防水テープ2の導出部23が導出される箇所にコーキング処理を施してコーキング部15aを形成し、その上から防水テープ5を貼り付けるようにしてもよい。防水テープ5は例えば、略帯状のブチルテープであり、裏面に塗布された粘着剤によりログ壁Wに貼り付けることができる。防水テープ5は、ログ材1の幅方向に沿って、防水テープ2の導出部23が導出されているコーキング部15aと共に、ログ材1と枠材4の接合箇所を覆う。これにより、防水テープ2が介装されていないログ材1と枠材4の接合箇所への雨水等の浸入を防ぐことができる。
【0029】
以上の本実施形態に係るログハウスLによれば、屋外から浸入してくる雨水等の水分の浸入を効果的に防ぐことができる。特に、防水テープ2の端部が屋外方向へ導出されていることから、防水テープ2を伝う雨水等も端部から屋外へ排水される。
【0030】
なお、本実施形態において、防水テープ2、3をログ材1間に介装させる際には、ログ材1から外側へはみ出す部分は適宜の長さにカットし、ログ材1間から防水テープ2、3が不必要に外側へはみ出して外観を損ねるのを避けるのが好ましい。
【0031】
また、ログ材1は、I型ログ、D型ログ、丸ログなど、各種の形状のログ材を用いることができ、これらのログ材についても、本発明の適用は可能である。
【0032】
また、上述のログハウスLは、ログハウスLを構成する部材、即ち、複数のログ材1、及び防水テープ2、3等を含めた組立キットとして提供することもできる。この組立キットを所定の工程に従って組み立てることで、ログハウスLが建築される。
【符号の説明】
【0033】
L ログハウス
W ログ壁
1 ログ材
1a 突出部
11 ノッチ部
12 嵌合部
13 嵌合部
14 入隅部
2 防水テープ
21 基体部
22 導出部
23 導出部
3 防水テープ
4 枠材
5 防水テープ
【要約】
【課題】屋外から浸入してくる雨水等の水分の浸入を効果的に防ぐことのできるログハウスを提供する。
【解決手段】横倒させた複数のログ材1を高さ方向に積み上げてなるログ壁Wを備えたログハウスLは、鉛直方向に隣接してログ壁Wを構成するログ材1の間に、略帯状の防水テープ2がログ材1の長さ方向に介装されている。また、防水テープ2の両端は導出部22、23を構成しており、ログ材1の幅方向に折曲して屋外側へ導出されている。
【選択図】
図1