特許第6353600号(P6353600)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6353600圧縮漏れ診断方法およびエンジンシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6353600
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】圧縮漏れ診断方法およびエンジンシステム
(51)【国際特許分類】
   F02D 45/00 20060101AFI20180625BHJP
【FI】
   F02D45/00 345Z
   F02D45/00 364
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-254636(P2017-254636)
(22)【出願日】2017年12月28日
【審査請求日】2017年12月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 洋平
(72)【発明者】
【氏名】吉原 伸太朗
(72)【発明者】
【氏名】今井 啓之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 慎二
【審査官】 田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−78628(JP,A)
【文献】 特開2017−203431(JP,A)
【文献】 特開平8−246941(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D13/00 − 29/06
F02D41/00 − 45/00
F01L 3/00 − 7/18
F01L11/00 − 11/06
F01L15/00 − 35/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機およびタービンを含む過給機と接続され、シリンダ内で燃料と空気の混合ガスを燃焼させるレシプロエンジンにおける圧縮行程での混合ガスの漏れである圧縮漏れを診断する方法であって、
前記圧縮機から前記レシプロエンジンへの給気の圧力である給気圧および前記シリンダ内の圧力であるシリンダ圧を検出し、
点火タイミングの前の所定タイミングにおいて、検出されたシリンダ圧が、給気圧が高くなるほど高くなるように設定された閾値のうちの検出された給気圧に対応する閾値よりも低い場合に、圧縮漏れが生じたと判定し、
前記レシプロエンジンからの排気の温度を検出し、
前記所定タイミングでのシリンダ圧が前記閾値よりも低い場合であっても、前記排気の温度が設定値よりも低い場合は、圧縮漏れが生じたと判定せずに、シリンダ圧を検出する圧力センサが故障したと判定する、圧縮漏れ診断方法。
【請求項2】
前記閾値は第1閾値であり、
前記所定タイミングでのシリンダ圧が前記第1閾値よりも高い第2閾値よりも高い場合には、前記シリンダ圧を検出する圧力センサが故障したと判定する、請求項に記載の圧縮漏れ診断方法。
【請求項3】
シリンダ内で燃料と空気の混合ガスを燃焼させるレシプロエンジンと、
前記レシプロエンジンと接続された、圧縮機およびタービンを含む過給機と、
前記圧縮機から前記レシプロエンジンへの給気の圧力である給気圧を検出する第1圧力センサと、
前記シリンダ内の圧力であるシリンダ圧を検出する第2圧力センサと、
給気圧が高くなるほど高くなるように設定された閾値が格納された診断装置と
前記レシプロエンジンからの排気の温度を検出する温度センサと、を備え、
前記診断装置は、点火タイミングの前の所定タイミングにおいて、前記第2圧力センサで検出されたシリンダ圧が前記閾値のうちの前記第1圧力センサで検出された給気圧に対応する閾値よりも低い場合に、圧縮行程での混合ガスの漏れである圧縮漏れが生じたと判定するとともに、
前記所定タイミングでのシリンダ圧が前記閾値よりも低い場合であっても、前記温度センサにより検出される排気の温度が設定値よりも低い場合は、圧縮漏れが生じたと判定せずに、前記第2圧力センサが故障したと判定する、エンジンシステム。
【請求項4】
前記閾値は第1閾値であり、
前記診断装置には、給気圧が高くなるほど高くなるように設定された、前記第1閾値よりも高い第2閾値も格納されており、
前記診断装置は、前記所定タイミングでのシリンダ圧が前記第2閾値のうちの検出された給気圧に対応する第2閾値よりも高い場合には、前記第2圧力センサが故障したと判定する、請求項に記載のエンジンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レシプロエンジンにおける圧縮行程での燃料と空気の混合ガスの漏れである圧縮漏れを診断する方法およびその診断方法を実行するエンジンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、圧縮機およびタービンを含む過給機と接続された、シリンダ内で燃料(燃料油および/または燃料ガス)と空気の混合ガスを燃焼させるレシプロエンジンが知られている。レシプロエンジンにおいては、種々の不具合を診断することが望まれる。例えば、特許文献1には、シリンダ内の圧力であるシリンダ圧に基いて異常燃焼の予兆を判定する診断方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−203882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レシプロエンジンの不具合の1つとしては、圧縮行程での混合ガスの漏れである圧縮漏れがあり、これが生じたか否かを診断したいという要望がある。この圧縮漏れは、1サイクルの位相角に応じて開閉する弁(4ストロークの場合は給気弁および排気弁、2ストロークの場合は掃気弁)のシール不良に起因する。
【0005】
そこで、本発明は、圧縮漏れが生じたか否かを診断することができる圧縮漏れ診断方法およびこの診断方法を実行可能なエンジンシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の発明者らは、正常なレシプロエンジンにおいては点火タイミングの前では給気圧が高くなるほどシリンダ圧が高くなる傾向があることに着目し、そのような閾値を設定するとともに給気圧およびシリンダ圧を検出し、検出されたシリンダ圧を検出された給気圧に対応する閾値と比較することによって圧縮漏れが生じたか否かを診断できることを見出した。本発明は、このような観点からなされたものである。
【0007】
すなわち、本発明の圧縮漏れ診断方法は、圧縮機およびタービンを含む過給機と接続され、シリンダ内で燃料と空気の混合ガスを燃焼させるレシプロエンジンにおける圧縮行程での混合ガスの漏れである圧縮漏れを診断する方法であって、前記圧縮機から前記レシプロエンジンへの給気の圧力である給気圧および前記シリンダ内の圧力であるシリンダ圧を検出し、点火タイミングの前の所定タイミングにおいて、検出されたシリンダ圧が、給気圧が高くなるほど高くなるように設定された閾値のうちの検出された給気圧に対応する閾値よりも低い場合に、圧縮漏れが生じたと判定する、ことを特徴とする。
【0008】
上記の構成によれば、圧縮漏れが生じたか否かを診断することができる。
【0009】
上記の圧縮漏れ診断方法においては、前記レシプロエンジンからの排気の温度を検出し、前記所定タイミングでのシリンダ圧が前記閾値よりも低い場合であっても、前記排気の温度が設定値よりも低い場合は、圧縮漏れが生じたと判定せずに、シリンダ圧を検出する圧力センサが故障したと判定してもよい。本発明の発明者らは、鋭意研究の結果、圧縮漏れが生じたときには排気温度が高くなることを見出した。従って、所定タイミングでのシリンダ圧が閾値よりも低い場合であっても、排気温度が設定値よりも低ければ、シリンダ圧を検出する圧力センサの故障であると判定することができる。これにより、圧縮漏れが生じたか否かを正確に診断することができる。
【0010】
前記閾値は第1閾値であり、前記所定タイミングでのシリンダ圧が前記第1閾値よりも高い第2閾値よりも高い場合には、前記シリンダ圧を検出する圧力センサが故障したと判定してもよい。本発明の発明者らは、正常なレシプロエンジンでは点火タイミングの前では給気圧とシリンダ圧により定まる運転点が一定の帯状の領域内に納まることを見出した。従って、シリンダ圧が第2閾値よりも高ければ、シリンダ圧を検出する圧力センサの故障であると判定することができる。
【0011】
また、本発明のエンジンシステムは、シリンダ内で燃料と空気の混合ガスを燃焼させるレシプロエンジンと、前記レシプロエンジンと接続された、圧縮機およびタービンを含む過給機と、前記圧縮機から前記レシプロエンジンへの給気の圧力である給気圧を検出する第1圧力センサと、前記シリンダ内の圧力であるシリンダ圧を検出する第2圧力センサと、給気圧が高くなるほど高くなるように設定された閾値が格納された診断装置と、を備え、前記診断装置は、点火タイミングの前の所定タイミングにおいて、前記第2圧力センサで検出されたシリンダ圧が前記閾値のうちの前記第1圧力センサで検出された給気圧に対応する閾値よりも低い場合に、圧縮行程での混合ガスの漏れである圧縮漏れが生じたと判定する、ことを特徴とする。
【0012】
上記の構成によれば、本発明の圧縮漏れ診断方法と同様の効果を得ることができる。
【0013】
上記のエンジンシステムは、前記レシプロエンジンからの排気の温度を検出する温度センサをさらに備え、前記診断装置は、前記所定タイミングでのシリンダ圧が前記閾値よりも低い場合であっても、前記温度センサにより検出される排気の温度が設定値よりも低い場合は、圧縮漏れが生じたと判定せずに、前記第2圧力センサが故障したと判定してもよい。
【0014】
前記閾値は第1閾値であり、前記診断装置には、給気圧が高くなるほど高くなるように設定された、前記第1閾値よりも高い第2閾値も格納されており、前記診断装置は、前記所定タイミングでのシリンダ圧が前記第2閾値のうちの検出された給気圧に対応する第2閾値よりも高い場合には、前記第2圧力センサが故障したと判定してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、圧縮漏れが生じたか否かを診断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係るエンジンシステムの概略構成図である。
図2】診断装置が行う処理のフローチャートである。
図3】シリンダ圧の波形の一例を示す図である。
図4】第1閾値および第2閾値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に、本発明の一実施形態に係るエンジンシステム1を示す。このシステム1は、レシプロエンジン4、過給機2および診断装置6を含む。
【0018】
本実施形態では、レシプロエンジン4が4ストロークのガスエンジンである。ガスエンジンは、燃料が燃料ガス(例えば、天然ガス)のみであるガス専焼エンジンであってもよいし、燃料が燃料ガスおよび/または燃料油である二元燃料エンジンであってもよい。ただし、レシプロエンジン4は必ずしもガスエンジンである必要はなく、レシプロエンジン4の燃料が燃料油のみであってもよい。また、レシプロエンジン4は2ストロークエンジンであってもよい。
【0019】
例えば、レシプロエンジン4は、地上の発電設備に組み込まれる。ただし、レシプロエンジン4は、例えば船舶の主機として用いられてもよい。この場合、レシプロエンジン4が直接的にスクリュープロペラを回転駆動してもよいし、発電機およびモータを介してスクリュープロペラを回転駆動してもよい。
【0020】
レシプロエンジン4は、複数のシリンダ41を含む。シリンダ41の数は、例えば5〜18である(図1では、図面の簡略化のために3つのみを図示)。レシプロエンジン4には、シリンダ41にそれぞれ対応する複数の燃料噴射弁(図示せず)が設けられている。各燃料噴射弁は、対応するシリンダ41へ供給される空気(給気)中に燃料ガスを噴射し、燃料ガスと空気の混合ガスを生成する。各シリンダ41内では、点火装置(図示せず)により混合ガスが点火され、混合ガスが燃焼される。
【0021】
各シリンダ41内には、ピストン(図示せず)が配置されており、このピストンと対向するシリンダヘッドに給気弁および排気弁(いずれも図示せず)が設けられる。そして、ピストンとシリンダヘッドの間に燃焼室が形成される。例えば、燃焼室は、主室と副室に仕切られ、主室内に上述した混合ガスであってリーンな混合ガスが導入され、副室内には上述した燃料噴射弁とは別の燃料噴射弁から燃料ガスが噴射されてリッチな混合ガスが生成されてもよい。この場合、まず副室内のリッチな混合ガスが点火プラグ(点火装置の一例)により点火され、ついで副室から主室に伝播する火炎によって主室内のリーンな混合ガスが点火される。
【0022】
ただし、点火装置は、副室内の混合ガスに点火する点火プラグに限られない。例えば、燃焼室が主室と副室に仕切られない場合は、点火装置は、燃焼室内に高圧のパイロット燃料(油またはガス)を直接的に噴射することにより当該パイロット燃料を自己発火させるパイロット燃料噴射弁であってもよい。
【0023】
4ストロークエンジンの場合、各シリンダ41において、ピストンが二往復することにより、レシプロエンジン4の1サイクル(給気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程)が行われる。各シリンダ41における1サイクルの間のレシプロエンジン4の位相角(0〜720度)は、位相角検出器61により検出される。位相角としては、クランク軸の回転角(クランク角)やピストンの位置などを用いることができる。例えば、位相角検出器61は、電磁ピックアップ、近接スイッチまたはロータリーエンコーダである。
【0024】
上述した過給機2は、レシプロエンジン4と接続されている。より詳しくは、過給機2は、圧縮機21とタービン22を含み、圧縮機21で圧縮された空気(給気)が給気路3を通じてシリンダ41へ導かれ、シリンダ41から排出された排気が排気路5を通じてタービン22へ導かれる。
【0025】
より詳しくは、給気路3は、給気マニホールド32と、給気マニホールド32と圧縮機21とを接続する主流路31と、給気マニホールド32とシリンダ41とを接続する複数の支流路33を含む。排気路5は、排気マニホールド52と、シリンダ41と排気マニホールド52とを接続する複数の支流路51と、排気マニホールド52とタービン22とを接続する主流路53を含む。
【0026】
給気路3の主流路31には、給気を冷却するためのエアクーラ35が設けられている。また、主流路31には、エアクーラ35の下流側に、圧縮機21からレシプロエンジン4への給気の圧力である給気圧Psを検出する第1圧力センサ71が設けられている。ただし、第1圧力センサ71は、給気マニホールド32に設けられてもよい。
【0027】
さらに、各シリンダ41には、当該シリンダ41内の圧力であるシリンダ圧Pcを検出する第2圧力センサ72が設けられている。また、排気路5の各支流路51には、レシプロエンジン4(より正確には、対応するシリンダ41)からの排気の温度Teを検出する温度センサ73が設けられている。
【0028】
第1圧力センサ71、第2圧力センサ72および温度センサ73は、診断装置6と電気的に接続されている。診断装置6は、上述した位相角検出器61とも電気的に接続されている。診断装置6は、例えば、ROMやRAMなどのメモリとCPUを有するコンピュータであり、ROMに格納されたプログラムがCPUにより実行される。
【0029】
診断装置6は、各シリンダ41に対して、圧縮行程での混合ガスの漏れである圧縮漏れが生じたか否かを診断する。図2に、診断装置6が行う処理のフローチャートを示す。
【0030】
診断装置6には、図4に示すような第1閾値αと第2閾値βが予め格納されている。第1閾値αおよび第2閾値βは、給気圧Psに対するシリンダ圧Pcの正常範囲を規定するものであり、第2閾値βは第1閾値αよりも高い。より詳しくは、第1閾値αおよび第2閾値βのそれぞれは、給気圧Psが高くなるほど高くなるように設定されている。
【0031】
まず、診断装置6は、図3に示すように点火タイミングの前の所定タイミングにおいて検出されたシリンダ圧Pc、給気圧Psおよび排気温度Teを取得する(ステップS1)。所定タイミングは、点火タイミングの直前であることが望ましい。
【0032】
次に、診断装置6は、検出されたシリンダ圧Pcを、検出された給気圧Psに対応する第1閾値αと比較する(ステップS2)。シリンダ圧Pcが第1閾値αよりも低い場合は(ステップD2でYES)ステップS3に進み、シリンダ圧Pcが第1閾値αよりも高い場合は(ステップD2でNO)ステップS4に進む。
【0033】
ステップS3では、診断装置6は、検出された排気温度Teを設定値γと比較する。設定値γは、実験等により適宜決定可能である。排気温度Teが設定値γよりも高い場合(ステップS3でYES)、診断装置6は圧縮漏れが生じたと判定する(ステップS5)。一方、排気温度Teが設定値γよりも低い場合(ステップS3でNO)、診断装置6はシリンダ圧Pcを検出する第2圧力センサ72が故障したと判定する(ステップS6)。
【0034】
ステップS4では、診断装置6は、検出されたシリンダ圧Pcを、検出された給気圧Psに対応する第2閾値βと比較する。シリンダ圧Pcが第2閾値βよりも高い場合(ステップS4でYES)、診断装置6はシリンダ圧Pcを検出する第2圧力センサ72が故障したと判定する(ステップS6)。一方、シリンダ圧Pcが第2閾値βよりも低い場合(ステップS4でNO)、診断装置6は異常無しと判定する(ステップS7)。
【0035】
以上説明したように、本実施形態のエンジンシステム1では、点火タイミングの前の所定タイミングでのシリンダ圧Pcをそのときの給気圧Psに対応する第1閾値αと比較することで、圧縮漏れが生じたか否かを診断することができる。
【0036】
(変形例)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0037】
例えば、ステップS3が省略され、所定タイミングにおいてシリンダ圧Pcが給気圧Psに対応する第1閾値αよりも低い場合に(ステップS2でYES)、診断装置6が圧縮漏れが生じたと判定してもよい。ただし、この場合には、シリンダ圧Pcを検出する第2圧力センサ72の故障によって、シリンダ圧Pcが誤って低い値となっている可能性がある。これに対し、本発明の発明者らは、鋭意研究の結果、圧縮漏れが生じたときには排気温度が高くなることを見出した。従って、所定タイミングでのシリンダ圧Pcが第1閾値αよりも低い場合であっても、排気温度Teが設定値γよりも低ければ、第2圧力センサ72の故障であると判定することができる。これにより、圧縮漏れが生じたか否かを正確に診断することができる。
【0038】
また、ステップS4が省略され、所定タイミングにおいてシリンダ圧Pcが給気圧Psに対応する第1閾値αよりも高い場合に(ステップS2でNO)、診断装置6が異常無しと判定してもよい。ただし、この場合には、シリンダ圧Pcを検出する第2圧力センサ72の故障によって、シリンダ圧Pcが誤って高い値となっている可能性がある。これに対し、本発明の発明者らは、正常なレシプロエンジンでは点火タイミングの前では給気圧Psとシリンダ圧Pcにより定まる運転点が一定の帯状の領域内に納まることを見出した。従って、シリンダ圧Pcが第2閾値βよりも高ければ、第2圧力センサ72の故障であると判定することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 エンジンシステム
2 過給機
21 圧縮機
22 タービン
4 レシプロエンジン
41 シリンダ
6 診断装置
71 第1圧力センサ
72 第2圧力センサ
73 温度センサ
【要約】
【課題】圧縮漏れが生じたか否かを診断することができる圧縮漏れ診断方法を提供する。
【解決手段】圧縮機およびタービンを含む過給機と接続され、シリンダ内で燃料と空気の混合ガスを燃焼させるレシプロエンジンにおける圧縮行程での混合ガスの漏れである圧縮漏れを診断する方法であって、圧縮機からレシプロエンジンへの給気の圧力である給気圧およびシリンダ内の圧力であるシリンダ圧を検出し、点火タイミングの前の所定タイミングにおいて、検出されたシリンダ圧が、給気圧が高くなるほど高くなるように設定された閾値のうちの検出された給気圧に対応する閾値よりも低い場合に、圧縮漏れが生じたと判定する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4