(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6353602
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】真空コーティングプラントにおいて搬送速度を増加させつつエネルギをセーブする方法及び装置
(51)【国際特許分類】
C23C 14/56 20060101AFI20180625BHJP
C23C 14/34 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
C23C14/56 G
C23C14/34 V
C23C14/34 M
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-504378(P2017-504378)
(86)(22)【出願日】2015年8月5日
(65)【公表番号】特表2017-524071(P2017-524071A)
(43)【公表日】2017年8月24日
(86)【国際出願番号】DE2015000397
(87)【国際公開番号】WO2016023533
(87)【国際公開日】20160218
【審査請求日】2017年3月23日
(31)【優先権主張番号】102014011877.0
(32)【優先日】2014年8月11日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】314014416
【氏名又は名称】グレンツェバッハ・マシーネンバウ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100121692
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 勝美
(74)【代理人】
【識別番号】100125221
【弁理士】
【氏名又は名称】水田 愼一
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 真之
(72)【発明者】
【氏名】クライデ−ター,ゲルト
(72)【発明者】
【氏名】クリシュ,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】フコウスキ−,ヨルク
(72)【発明者】
【氏名】ガーヴェル,オ−ラフ
【審査官】
岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−81857(JP,A)
【文献】
特開平5−311403(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
H01L 21/203
H01L 21/363
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパッタリングセグメント(3)及びガス分離セグメント(2)のシークエンスから成り連続した基板プレーン(1)を備えた真空コーティング設備においてスループット速度を増加させつつエネルギをセーブするための装置であって、
d)前記スパッタリングセグメント(3)は、基板(1)を輸送するための輸送機器(11)を内装したタンクタブ(12)と、前記タンクタブ(12)にカバーフランジ(6)により接続された少なくとも一つのタンクカバー(4)と、を備え、前記カバーフランジ(6)は、前記基板プレーン(1)の上ごく近傍に配置され、ターゲット(8)及びガス流入ダクト(10)と共にカソード支持ブロック(5)は、前記タンクカバー(4)内においてスプラッシュガード(9)と共に前記基板(1)のごく近傍に配置され、
e)前記ガス分離セグメント(2)は、前記基板プレーン(1)の領域に前記ガス分離セグメント(2)の全長に亘って伸びるトンネルカバー(14)を有し、前記トンネルカバー(14)は、該トンネルカバー(14)と前記基板(1)との間で垂直方向に小さなクリアランスギャップ(18)しか生じないよう、複数の昇降部材(17)により前記基板(1)の厚みに対応可能となっており、
f)前記スパッタリングセグメント(3)及び/又は前記ガス分離セグメント(2)は、一つ又は複数の真空ポンプ(15)により脱気され、このプロセスで搬送された空気は、容量可変エアリザーバ(25)に回収され、前記セグメント(3、2)が次に再びエアレーションされる場合には該セグメント(3、2)に戻されることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記タンクカバー(4)の上部領域においてコーティングプロセスを監視するため、複数の検知部材(32)が、配置機器上で移動可能とされると共に、配置に関わらず検知範囲に対して回転可能となっていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記カソード支持ブロック(5)は、一方の上にもう一方が配置された二つのダブルターゲット形状のマルチカソードを有し、これらは前記スプラッシュガード(9)と共に共通回転軸(37)に関して回転可能となるようにマウントされ、四つの異なるコーティング構成を可能としていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の装置。
【請求項4】
互いに隣接して配置された二つのチャンバ(41、42)は、全周に亘って設けられたシーリングリング(40)により外界からシールされ、外部シーリングストリップ(39)が更にこの領域に設けられ、前記シーリングリング(40)と前記外部シーリングストリップ(39)との間のスペースは、真空センサ(38)によりモニタされることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
スパッタリングセグメント(3)及びガス分離セグメント(2)のシークエンスから成り連続した基板プレーン(1)を備えた真空コーティング設備においてスループット速度を増加させつつエネルギをセーブするための方法であって、
d)プロセス変更及びメンテナンス作業時に、タンクカバー(4)全体をその内容物ごと時間節約的及びコスト効率的様式で迅速に変更可能とするために、前記スパッタリングセグメント(3)においてタンクタブ(12)と前記タンクカバー(4)とを接続するカバーフランジ(6)が、前記基板プレーン(1)の上ごく近傍に配置され、
e)前記ガス分離セグメント(2)には、該ガス分離セグメント(2)の隣接領域に対して基板を区切るためのトンネルカバー(14)が前記ガス分離セグメント(2)の全長に亘って設けられ、前記トンネルカバー(14)の高さは、該トンネルカバー(14)と前記基板との間のクリアランスギャップが最少となるように、複数の昇降部材(17)で前記トンネルカバー(14)の配置を変更することで前記基板の厚みに対応可能となっており、
f)前記スパッタリングセグメント(3)及び/又は前記ガス分離セグメント(2)は、一つ又は複数の真空ポンプ(15)により脱気され、このプロセスで搬送された空気は、容量可変エアリザーバ(25)に回収され、前記セグメント(3、2)が次に再びエアレーションされる場合には、一度すでに調整された空気を時間節約的及びコスト効率的様式で再利用するために該セグメント(3、2)に戻されることを特徴とする方法。
【請求項6】
前記タンクカバー(4)の上部領域においてリアルタイムでコーティングプロセスを監視するために、複数の検知部材(32)が、配置機器上で移動可能とされると共に、配置に関わらず検知範囲に対して回転可能となっていることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
コーティングプロセスを最適化するためにカソード支持ブロック(5)は、一方の上にもう一方が配置された二つのダブルターゲット形状のマルチカソードを有し、これらはスプラッシュガード(9)と共に共通回転軸(37)に関して回転可能となるようにマウントされていることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の方法。
【請求項8】
プログラムがコンピュータ上で実行される場合、請求項5乃至請求項7のいずれか一項でクレームされる方法ステップを実行するためのプログラムコードを持つコンピュータプログラム。
【請求項9】
プログラムがコンピュータ上で実行される場合、請求項5乃至請求項7のいずれか一項でクレームされる方法を実行するためのコンピュータプログラムのプログラムコードを持つ機械可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空コーティング設備においてスループット速度を増加させつつエネルギをセーブする方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁場アシステッドマグネトロンスパッタリングは、近代表面技術の多くの分野で応用されている。磁場アシステッドマグネトロンスパッタリングは、マイクロエレクトロニクスでの応用から始まり、現在、建築用ガラス、フラットスクリーン、眼鏡用レンズ、テープ材料、ツール、装飾用品及び機能部品の産業用コーティング法として確立されている。この場合、機能部品には、単層又は複層技術を用い、TiN、TaN、VN、ZrNといった窒化物又はTiCNのような炭窒化物から成る腐食防止或いは硬質材料コーティングがしばしば行われる。また、50GPaまでの硬度値を有するナノ複層コーティングに基づいた超硬質コーティングも用いられるようになってきている。自動車産業では、摩擦及び損耗低減金属/炭素コーティングが非常に成功している。
【0003】
最も大きい真空コーティング設備及びこれにしばしば伴うエネルギ必要量の高い設備は、典型的には建築用ガラスコーティングのための水平インライン設備である。
【0004】
従来技術として以下の文献を参照する。DE 10 2012 110 334 B3は、従来技術の欠点を有さず且つ特により均一な磁場が得られる平面マグネトロンを生み出すことを目的として、そのような平面マグネトロンを開示している。ここでいう欠点は、US 5 407 551 Aに開示された従来技術に詳述されている。
【0005】
請求項1は、縦方向に伸びるポールシューが一体に形成された磁化可能なヨークプレート及び永久磁石を有する磁石装置と、磁石装置上の少なくとも一つのターゲットと、平面マグネトロンを通って冷却流体を通すための冷却ダクトと、を備えてガラス板又は他のフラット基板をコーティングする真空コーティング設備のための平面マグネトロンに関する。
【0006】
上記平面マグネトロンは、ヨークプレートがその全長に亘って一定の断面を有し、ヨークプレートにおいて縦に伸び且つフィードライン及びリターンラインを有する少なくとも一つの冷却ダクトや少なくとも一つのターゲットを固定するための鉤爪ストリップのようなアタッチメント部を固定するレセプタクルを有することを特徴とする。
【0007】
更に、DE 101 22 310 A1は、メンテナンスを容易にすると共によりコスト効率を高めるために伸長真空コーティング設備におけるガラス輸送プレーンへのアクセシビリティの改善を目的とした伸長真空コーティング設備について記載している。
【0008】
輸送方向に移動されるコーティングフラット基板に対する伸長真空コーティング設備における上記目的は、輸送方向に連続して配置された少なくとも二つのコーティングセクションを有する少なくとも一つのコーティングモジュールと、基板のための輸送スペースを上部に有する輸送システムと、により達成される。この場合、輸送スペースは、コーティングセクションの壁に設けられた基板ガイドスロットを介してコーティングセクションを通って伸び、各々のコーティングセクションは、カバー開口を塞いで輸送スペースの上に配置された少なくとも一つのマグネトロンが固定されたカバーを有し、コーティングセクションは、真空ガイドダクトを介して真空ポンプにより脱気することができる。
【0009】
上記真空コーティング設備は、輸送スペースの上において真空コーティング設備がコーティングモジュールのすべてのコーティングセクションに共通したチャンバ下部と、コーティングモジュールのすべてのコーティングセクションに共通したチャンバ上部と、に分割され、これらチャンバ部は、作動位置で互いに真空気密様式により閉じることが可能で、且つメンテナンス位置で互いに移動可能となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
安定且つ効率的なプロセス制御に決定的なことは、基板に対するカソードの配置である。配置の全体的なジオメトリは、コーティングの質及び生産性に影響を及ぼす。この場合、カソード及びアノード、開口ダイヤフラム、輸送ローラ、ガス分配及び磁場構成の配置は言及すべきである。エネルギセーブコーティング設備に対する既知の解決法は、しばしば上記特性の少なくとも一つについて技術的にベストな解決法を与えていないという欠点を有する。特に、ガスガイダンスシステムへのアクセシビリティ及びメンテナンスが、基板及び輸送システムへの近さにより極めて制限されているので、ガス通路は、しばしば基板に対して直接且つ上部に配置されていない。
【0011】
本発明は、真空コーティング設備においてスループット速度を増加させつつエネルギをセーブする方法及び装置を特定することを目的とする。これにより、同設備の生産性及び耐用年数を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、請求項1でクレームされる装置により達成される。
スパッタリングセグメント(3)及びガス分離セグメント(2)のシークエンスから成り連続した基板プレーン(1)を備えた真空コーティング設備においてスループット速度を増加させつつエネルギをセーブするための装置であって、
a)前記スパッタリングセグメント(3)は、基板(1)を輸送するための輸送機器(11)を内装したタンクタブ(12)と、前記タンクタブ(12)にカバーフランジ(6)により接続された少なくとも一つのタンクカバー(4)と、を備え、前記カバーフランジ(6)は、前記基板プレーン(1)の上ごく近傍に配置され、ターゲット(8)及びガス流入ダクト(10)と共にカソード支持ブロック(5)は、前記タンクカバー(4)内においてスプラッシュガード(9)と共に前記基板(1)のごく近傍に配置され、
b)前記ガス分離セグメント(2)は、前記基板プレーン(1)の領域に前記ガス分離セグメント(2)の全長に亘って伸びるトンネルカバー(14)を有し、前記トンネルカバー(14)は、該トンネルカバー(14)と前記基板(1)との間で垂直方向に小さなクリアランスギャップ(18)しか生じないよう、複数の昇降部材(17)により前記基板(1)の厚みに対応可能となっており、
c)前記スパッタリングセグメント(3)及び/又は前記ガス分離セグメント(2)は、一つ又は複数の真空ポンプ(15)により脱気され、このプロセスで搬送された空気は、容量可変エアリザーバ(25)に回収され、前記セグメント(3、2)が次に再びエアレーションされる場合には該セグメント(3、2)に戻されることを特徴とする装置。
【0013】
また、前記タンクカバー(4)の上部領域においてコーティングプロセスを監視するため、複数の検知部材(32)が、配置機器上で移動可能とされると共に、配置に関わらず検知範囲に対して回転可能となっていることもクレームされる。
【0014】
また、前記カソード支持ブロック(5)は、一方の上にもう一方が配置された二つのダブルターゲット形状のマルチカソードを有し、これらは前記スプラッシュガード(9)と共に共通回転軸(37)に関して回転可能となるようにマウントされ、四つの異なるコーティング構成を可能としていることもクレームされる。
【0015】
また、互いに隣接して配置された二つのチャンバ(41、42)は、全周に亘って設けられたシーリングリング(40)により外界からシールされ、外部シーリングストリップ(39)が更にこの領域に設けられ、前記シーリングリング(40)と前記外部シーリングストリップ(39)との間のスペースは、真空センサ(38)によりモニタされることもクレームされる。
【0016】
また、上記目的は、請求項5でクレームされる方法により達成される。
スパッタリングセグメント(3)及びガス分離セグメント(2)のシークエンスから成り連続した基板プレーン(1)を備えた真空コーティング設備においてスループット速度を増加させつつエネルギをセーブするための方法であって、
a)プロセス変更及びメンテナンス作業時に、タンクカバー(4)全体をその内容物ごと時間節約的及びコスト効率的様式で迅速に変更可能とするために、前記スパッタリングセグメント(3)においてタンクタブ(12)と前記タンクカバー(4)とを接続するカバーフランジ(6)が、前記基板プレーン(1)の上ごく近傍に配置され、
b)前記ガス分離セグメント(2)には、該ガス分離セグメント(2)の隣接領域に対して基板を区切るためのトンネルカバー(14)が前記ガス分離セグメント(2)の全長に亘って設けられ、前記トンネルカバー(14)の高さは、該トンネルカバー(14)と前記基板との間のクリアランスギャップが最少となるように、複数の昇降部材(17)で前記トンネルカバー(14)の配置を変更することで前記基板の厚みに対応可能となっており、
c)前記スパッタリングセグメント(3)及び/又は前記ガス分離セグメント(2)は、一つ又は複数の真空ポンプ(15)により脱気され、このプロセスで搬送された空気は、容量可変エアリザーバ(25)に回収され、前記セグメント(3、2)が次に再びエアレーションされる場合には、一度すでに調整された空気を時間節約的及びコスト効率的様式で再利用するために該セグメント(3、2)に戻されることを特徴とする方法。
【0017】
また、前記タンクカバー(4)の上部領域においてリアルタイムでコーティングプロセスを監視するために、複数の検知部材(32)が、配置機器上で移動可能とされると共に、配置に関わらず検知範囲に対して回転可能となっていることもクレームされる。
【0018】
また、コーティングプロセスを最適化するためにカソード支持ブロック(5)は、一方の上にもう一方が配置された二つのダブルターゲット形状のマルチカソードを有し、これらはスプラッシュガード(9)と共に共通回転軸(37)に関して回転可能となるようにマウントされていることもクレームされる。
【0019】
プログラムがコンピュータ上で実行される場合、上記方法ステップを実行するためのプログラムコードを持つコンピュータプログラムがクレームされる。更に、プログラムがコンピュータ上で実行される場合、請求項5乃至請求項7のいずれか一項でクレームされる方法を実行するためのコンピュータプログラムのプログラムコードを持つ機械可読媒体もクレームされる。
【0020】
本発明に係る装置は、以下でより詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図4】エア(真空)リザーバ25の基本構造を示す図。
【
図5】エアリザーバ25及びスパッタリングセグメントを示す図。
【
図8】個々のタンクタブ12のシーリングを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、真空コーティング設備の基本構造を示す。
真空コーティング設備は、実質的にスパッタリングセグメント3及びガス分離セグメント2のシークエンスから成る。コーティングされる基板は、図示された基板プレーン1上で一つのセグメントから隣のセグメントへと搬送される。
【0023】
図2は、タンクの二つの配置の比較を示す。
図2aではスパッタリングタンクの従来構造が断面で示され、
図2bでは本発明に係るスパッタリングタンクの構造が断面で示されている。
【0024】
ここでは個々のカバーフランジ6の位置に関し、上記二つの構造間の違いが明確になっている。左側の従来構造ではカバーフランジ6が比較的高い位置にあるのに対し、右側の構造ではそうなっていない。これは、左側の従来構造ではタンクカバー4が交換されるときに、スパッタリング領域スクリーンのスプラッシュガード9(左側及び右側に示される)が二つのカソード支持ブロック5と共に二つのカバー(ベアリング)フランジ6から取り外されるのに対し、コーティングタンクのメインボディにあるガス流入ダクト10(左側及び右側に示される)は残るためである。そのため、
図2aに示す従来構造では、タンクカバー4の交換毎に大掛かりで時間のかかる清掃作業が生じ、高い原価要素が許容される必要がある。しかしながら、
図2bに示す本発明に係る構造では、スパッタリングプロセスの前又は後において、タンクカバー4と一体に構成されたガス流入ダクト10をタンクカバー4の他の構成と共に入念且つ落ち着いてコスト効率的に清掃することができるので、タンクカバー4をより迅速に交換することができる。また、個々のタンクタブ12及び基板1を輸送するための輸送機器11が、
図2で示されている。更に、プラズマ領域7及び個々の磁気バー13と共にターゲットユニット8が、従来構造で示されている。
【0025】
図3は、
図1に示した典型的なセグメントの詳細図を示す。
ここで示されるセグメントは、右側及び左側にスパッタリングセグメントを有し、これら二つのスパッタリングセグメントは、ガス分離セグメントにより分離されている。すべてのセグメントに共通する基板プレーン1上において、コーティングされる個々の基板がこれらセグメントを通過する。異なるターゲット及び異なるガス混合物を用いる異なるコーティングプロセスは、一般に各々のスパッタリングセグメントで起こる。そのため、一のスパッタリングセグメントからのガス混合物が他のスパッタリングセグメントからのガス混合物と接触するのを防止するために、例示されているよう二つのスパッタリングセグメントの間にガス分離セグメントが介在している。
【0026】
図3において左側のスパッタリングセグメントでは、二つのターゲット8及び二つのガス流入ダクト10が指し示されている。右側のスパッタリングセグメントでは、特に、スパッタリング領域スクリーンの二つのスプラッシュガード9及び基板を輸送するための輸送機器11の二つのランニングローラが指し示されている。真ん中のガス分離セグメントでは、フィードダクトを介して個々の隣接するスパッタリングセグメントにパーティションプレートにより割り当てられた二つの真空ポンプ15が、タンクカバー内に示されている。基板プレーン1の領域において特筆すべきことは、いわゆるトンネルカバー14のための二つの昇降部材17が示されていることである。このような配置により、ガス分離セグメントの残りスペースから基板の全長及び全幅に亘って基板をトンネルカバー14により覆うことができ、いわゆるクリアランスギャップが最少となるように通過する基板の異なる厚みに対応するようにトンネルカバー14を昇降することができる。ここで、クリアランスギャップ18は、基板1と基板1を覆うトンネルカバー14との間のスペースであり、個々の基板1の安定な通過に不可欠である。この場合、通過する基板1の厚みは、センサ(不図示)により速やかに決定され、これにより得られた制御信号が、昇降部材17を制御するのに用いられる。ガス分離セグメントの分離壁領域には、個々の隣接するセグメントから混合されたガスが流入しないようにするための逆止め弁として作用するトンネルカバーフラップ16が、基板プレーンのレベルに配置されている。
【0027】
図4は、エア(真空)リザーバ25の基本構造を示す。
ここで、
図4aは、
図4bに示す基本機能原理の技術的実施形態例を示す。
【0028】
個々の真空チャンバ27は、一つ又は複数の真空ポンプ15により脱気される。このプロセスで真空ポンプ15により吸引された空気は、容量可変エアリザーバ25に回収される。容量可変エアリザーバ25は、一般に真空ポンプ15により生み出された圧力で膨張されるように設計されている。
【0029】
真空チャンバ27の次のエアレーションでは、容量可変エアリザーバ25に溜められていた空気が、負圧により真空チャンバ27に戻される。
図4bに示した方法の利点は、一度すでに調整され特定の乾燥度を持つ空気が再利用されるので、新しい空気を乾燥させる装置が不要となることである。図示された遮断弁28は、エアフローを制御するのに用いられる。
【0030】
真空チャンバ27のエアレーションの間、容量可変エアリザーバ25に溜められていた空気の流入操作は、エアリザーバ25に作用してエアリザーバ25の体積を減少させる力により推進される。これは、例えば、エアリザーバ25の上方領域においてリザーバカバー20に取り付けられたカバークロス22により達成される。カバークロス22は、張力ケーブル23により引き下ろされ、張力ケーブル23は、エアリザーバ25のベースに設けられた張力ケーブルシーリング部材29及び更なる偏向ローラ(詳細示さず)を通って伸び、張力ケーブル駆動部材24へと繋がっている。
【0031】
この場合、エアリザーバ25は、リザーバガントリ19に取り付けられた偏向ローラ21により固定される。
【0032】
真空チャンバ27の更に次の脱気操作を行う際の更なる推進力のため、四つのスプリング部材26がエアリザーバ25の下方領域に設けられ得る。これらスプリング部材26は、カバークロス22に対応して配置され、張力ケーブル23を介して圧縮されることでエネルギ貯蔵体として作用する。このようにしてスプリング部材26に貯蔵されたエネルギは、以降の脱気プロセスで真空ポンプ15の働きをサポートする。
【0033】
図5は、エアリザーバ25及びスパッタリングセグメントを示す。
スパッタリングセグメントは、その上部に容量可変エアリザーバ25が一体化された状態で示されている。ここで新たな符号で示されるのは、タンクの左側及び右側にあり個々の真空ポンプ15に繋がった吸い込み口30である。その他の符号については既に記載している。
【0034】
更に、特定のスプラッシュガード9の正確な位置調整のための移動機器31が、タンクの右側に見られる。この移動機器31は、タンクの左側にも配置されている。
【0035】
このようなエアリザーバは、好ましくはインレットチャンバ又はトランスファチャンバに配置される。
【0036】
図6は、ターゲット領域の断面図を示す。
図6では、本発明に係るタンクのフラットデザインが、断面において特に明確である。タンクカバー4及びタンクタブ12に加えて、カバーフランジ6及び基板プレーン1も示されている。基板を搬送するために、輸送ローラドライブ36を有する輸送機器11のローラ(断面で示す)が用いられる。シリンダ状のターゲット8は、右側ではカソード支持ブロック5によりマウントされ、左側ではタンク内の対応するマウントによりマウントされている。ターゲットドライブ33は、冷却水回路34により冷却される。電源35も、この領域に配置される。100ボルトまでのDC電圧が印加され、陽極はハウジングに設けられ、陰極はターゲット8に設けられている。
【0037】
コーティングプロセスの結果を監視するために、検知部材32が用いられる。検知部材32は、それらの配置機器上で移動可能とされると共に、配置に関わらず検知範囲に対して回転可能となっている。付随する機器については、図が複雑になるので図示していない。
【0038】
図7は、マルチカソードを示す。
基板1を有するタンクタブ12、輸送機器11及び真空ポンプ15が断面で示され、タンクカバー4の内部に特定の構成を有するカソード支持ブロック5が設けられている。カソード支持ブロック5は、タンクの真ん中に配置され、一方の上にもう一方が配置された二つのノーマルダブルターゲット8形状のマルチカソードを有する。これらのターゲット8は、スプラッシュガード9と共に共通回転軸37に関して回転可能となるようにマウントされている。これにより、個々のタンクを開ける必要無く、エロ―ジョン後に二つのターゲットを交換することができる。しかしながら、エロ―ジョンを考慮せず、コーティングプロセスの間に異なる種類のターゲットを用いることも可能である。ガス流入ダクト10は、影響を受けない。
【0039】
このような配置は、スプラッシュガード及びコーティングカソードを連動させることなく、互いに90度ずつオフセットした四つの作用位置、すなわち、四つの異なるコーティング構成を可能とする。
【0040】
図8は、個々のタンクタブ12のシーリングを示す。
コーティングプロセスの間に真空状態を維持するため、個々のスパッタリングセグメント3及び/又はガス分離セグメント2の間で、コーティングされるセグメントの移動時に基板プレーンの個々のポート開口43の連続した接続を保証する信頼性の高いシーリングを生み出すことが必要である。
【0041】
例として、タンク形態の二つのチャンバ41、42間の接続が、
図8に示されている。輸送機器11の走行軸を有し三次元的に示されたタンクタブ12は、全周に亘って外部に設けられると共にポート開口43を封止するシーリングリング40を有する。
【0042】
また、
図8では、二つのチャンバ41、42において互いに隣接して通常空気圧下にあるコーナー領域が、シーリングリング40により外界から封止されている。
【0043】
更に、外部シーリングストリップ39が設けられ、シーリングリング40と外部シーリングストリップ39との間のスペース(図案化して示す)は、真空センサ38によりモニタされる。
【符号の説明】
【0044】
1 基板、基板プレーン
2 ガス分離セグメント
3 スパッタリングセグメント
4 タンクカバー
5 カソード支持ブロック
6 カバーフランジ
7 プラズマ領域
8 ターゲット
9 スプラッシュガード、スパッタ領域スクリーン
10 ガス流入ダクト
11 輸送機器
12 タンクタブ
13 磁気バー
14 トンネルカバー
15 真空ポンプ
16 トンネルカバーフラップ
17 トンネルカバーの昇降部材
18 クリアランスギャップ
19 リザーバガントリ
20 リザーバカバー
21 偏向ローラ
22 カバークロス、スプリング部材26の止め具
23 張力ケーブル
24 張力ケーブル駆動部材
25 容量可変エアリザーバ
26 スプリング部材、真空操作における力強化部材
27 真空チャンバ(タンク)
28 遮断弁
29 張力ケーブルシーリング部材
30 吸い込み口
31 スプラッシュガード9のための移動機器
32 コーティング監視のための検知部材
33 ターゲットドライブ
34 冷却水回路
35 電源との接続
36 輸送ローラドライブ