特許第6353607号(P6353607)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6353607
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】薬剤送達装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/31 20060101AFI20180625BHJP
   A61M 5/20 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   A61M5/31
   A61M5/20
【請求項の数】16
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-527285(P2017-527285)
(86)(22)【出願日】2015年10月22日
(65)【公表番号】特表2017-536177(P2017-536177A)
(43)【公表日】2017年12月7日
(86)【国際出願番号】EP2015074463
(87)【国際公開番号】WO2016078863
(87)【国際公開日】20160526
【審査請求日】2017年5月19日
(31)【優先権主張番号】1451399-8
(32)【優先日】2014年11月20日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】513186729
【氏名又は名称】ケアベイ・ヨーロッパ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CAREBAY EUROPE LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レンシュタット,ラスムス
(72)【発明者】
【氏名】サール,ダニエル
【審査官】 和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−507314(JP,A)
【文献】 特開平11−267207(JP,A)
【文献】 特表2014−525326(JP,A)
【文献】 特表2013−526904(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/178512(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/31
A61M 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤送達装置であって、
ハウジング(10;100)を備え、前記ハウジング(10;100)は、薬剤容器(18;108)を収容するように構成され、
駆動機構(34;116)を備え、前記駆動機構は、作動されると、前記薬剤容器(18;108)に作用することができ、
通信ユニット(60;160)を備え、前記通信ユニットは、前記ハウジング(10;100)に接続され、
スイッチ(58;144)を備え、前記スイッチ(58;144)は、前記駆動機構(34;116)に動作可能に接続可能であり、作動されると、前記通信ユニット(60;160)に接続され、前記通信ユニット(60;160)を作動させ、
前記スイッチ(58;144)は、薬剤送達手順の終了時に前記駆動機構(34;116)によって作動され
前記駆動機構は、薬剤送達手順の終了時に解放され、前記スイッチに作用するように構成された切換要素(48,132)を含む、薬剤送達装置。
【請求項2】
前記駆動機構(36,38;116)は、力要素(38;122)をさらに備え、
前記力要素(38;122)は、前記切換要素が前記スイッチに作用することを可能にする、請求項に記載の薬剤送達装置。
【請求項3】
前記力要素(38;122)は、前記駆動機構のプランジャロッドに作用し、前記プランジャロッドを近位方向に移動するように構成された駆動ばねである、請求項に記載の薬剤送達装置。
【請求項4】
前記駆動ばね(38)は、前記切換要素(48)に作用することによって、前記薬剤送達手順の終了時に前記切換要素を遠位方向に移動するように構成される、請求項に記載の薬剤送達装置。
【請求項5】
前記駆動ばね(122)は、前記駆動機構のプランジャロッド駆動部(118)に作用することによって、前記プランジャロッド駆動部を近位方向に移動し、前記薬剤送達手順の終了時に前記切換要素(132)に作用するように構成される、請求項に記載の薬剤送達装置。
【請求項6】
前記通信ユニット(60;160)は、使用者と直接に通信するように構成される、請求項1〜のいずれか1項に記載の薬剤送達装置。
【請求項7】
前記通信は、可聴的におよび/または可視的に行われる、請求項に記載の薬剤送達装置。
【請求項8】
前記通信ユニット(60;160)は、スマートデバイスを介して通信するように構成される、請求項1〜のいずれか1項に記載の薬剤送達装置。
【請求項9】
前記通信ユニットは、データの送信および受信を含む、無線ネットワークおよび/または移動通信ネットワークと通信するように構成される、請求項のいずれか1項に記載の薬剤送達装置。
【請求項10】
前記通信ユニットは、前記薬剤送達装置内の多数のセンサに動作可能に接続される、請求項のいずれか1項に記載の薬剤送達装置。
【請求項11】
前記通信ユニットは、患者の遵守に関する情報を取得するように構成される、請求項10に記載の薬剤送達装置。
【請求項12】
前記通信ユニットは、データ記憶モジュールを備える、請求項11のいずれか1項に記載の薬剤送達装置。
【請求項13】
前記通信ユニットは、緊急コールセンタに自動的に接続するように構成される、請求項12のいずれか1項に記載の薬剤送達装置。
【請求項14】
前記通信ユニットは、使用者と緊急コールセンタとの間で音声情報を可能にするためのスピーカおよびマイクを備える、請求項13に記載の薬剤送達装置。
【請求項15】
前記通信ユニットは、前記スイッチが作動されたときに、地理位置を取得し、前記地理位置を緊急コールセンタに送信することができる測位機能をさらに備える、請求項13または14に記載の薬剤送達装置。
【請求項16】
前記通信ユニットは、前記薬剤送達装置に組み込まれる、または前記薬剤送達装置に接続可能な別個のユニットとして構成される、請求項1〜15のいずれか1項に記載の薬剤送達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、通信機能を備えた薬剤送達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
資格を有する看護スタッフまたは医師ではない使用者によって使用および操作される(すなわち、患者自身によって操作される)ように意図され、設計される薬剤送達装置は、開発されつつある。患者が特定の治療計画に基づいて自分で治療を行うため、患者を治療する医師は、治療計画が処方通りに行われたか否かに関する情報を直接に得ることができない。
【0003】
治療に関するさらなる情報を得るために、薬剤の送達操作を監視し、情報を記憶することができる多くの装置が開発されている。一部の装置は、情報を訓練された医療従事者にアクセス可能な外部記憶場所に送信することもできる。これによって、患者の医師は、関連する薬剤送達情報を利用することができる。
【0004】
米国特許第8361026号は、装置の動作を監視することができる多数のインテリジェント機能を備えた薬剤送達装置を開示している。これらの機能の中には、装置および/または患者の遵守を監視する機能、および情報を遠隔装置の適切な記憶手段にアップロードする機能を含む。遠隔装置の例として、遠隔通信ネットワーク、コンピュータ、スマートフォン、携帯情報端末(PDA)などが挙げられる。また、装置内の薬剤の薬物成分が薬物製造業者によって回収された場合、または薬物が期限切れた場合または使用者情報を更新した場合に、これらの情報が薬剤送達装置にダウンロード可能であり、使用者に利用することができる。この場合、装置は、異なる機能段階で作動される多数のスイッチを備える。
【0005】
装置を機能させるためには、使用前にスタートボタンを押して、装置に電力を供給する。したがって、装置を使用できるようにするためには、特定の操作手順が必要である。さらに、装置に電力を供給すると、装置の異なる電子部品および多くの機能がエネルギーを消費する。このことは、装置を通電してから何らかの理由ですぐに使用しない場合、顕著な欠点となり得る。また、スタートボタンが意図せず作動され、誤って装置に電力を供給してしまう危険性があり、後で装置を使用するときに、装置の電源の電力がなくなってしまう可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来の薬剤送達装置の欠点を改善することである。この目的は、独立請求項の特徴を含む薬剤送達装置によって達成される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項の主題を形成する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、薬剤送達装置は、薬剤容器を収容するように構成されたハウジングを備えることができる。さらに、駆動機構が、作動されると、一定量の薬剤を排出するために薬剤容器に作用できるように構成されている。
【0008】
好ましい特徴によれば、通信ユニットがハウジングに接続されてもよい。すなわち、通信ユニットは、薬剤送達装置に組み込まれてもよく、または薬剤送達装置に接続可能な別個のユニットとして構成されてもよい。通信ユニットは、薬剤送達装置と周囲環境との間の通信(使用者との直接通信、およびインターネットなどを介して遠隔に位置する情報レシーバと情報トランシーバとの無線通信)を可能にする多くの特徴および機能を有することができる。
【0009】
薬剤送達装置は、好ましくは、駆動機構に動作可能に接続され、作動されると、通信ユニットに接続され、通信ユニットを作動させるスイッチを含む。この場合、有利なことは、スイッチは、薬剤送達手順の終了時に駆動機構によって作動されることである。この特徴は、薬剤送達装置が特定の作動操作によって予め作動される必要がないという利点を与える。これによって、薬剤送達の終了時にスイッチが作動されるため、使用者に必要とされる操作の数が減らされる。さらに、薬剤送達装置が一定量の薬剤を送達するまで非作動または「非活動」状態にあるため、エネルギーの消費が低減される。
【0010】
好ましい解決策によれば、駆動機構は、力要素をさらに備え、この力要素は、駆動機構がスイッチに作用することを可能にする。力要素は、駆動機構の自動操作を可能にし、使用者が手動で薬剤送達を行う必要がない。この場合、力要素は、駆動機構のプランジャロッドに作用し、プランジャロッドを近位方向に移動するように構成された駆動ばねであってもよい。駆動ばね自身の力を利用するためには、好ましくは、薬剤送達手順の終了時に遠位方向に作用するように駆動ばねを構成することができる。これによって、駆動ばねの残力がスイッチを作動し、その結果、通信ユニットが作動される。したがって、スイッチを作動するために、追加の力要素を設ける必要がない。
【0011】
1つの実現可能な解決策によれば、ばねは、切換要素に作用するように構成されることができ、切換要素は、薬剤送達手順の終了時に解放され、スイッチに作用するように構成される。この解決策は、一定量の薬剤が送達されるまで、切換要素を保持またはロックする必要がある。この場合、駆動ばねの遠位端は、切換要素に接触して作用し、薬剤が送達されると、切換要素は、解放され、駆動ばねによって遠位方向に押圧され、スイッチに接触するまで移動される。
【0012】
変形例として、プランジャロッド駆動部を使用する。駆動ばねは、駆動機構のプランジャロッド駆動部に作用することによって、プランジャロッド駆動部を近位方向に移動し、薬剤送達手順の終了時に切換要素に作用するように構成される。この場合、プランジャロッド駆動部と切換要素との間の接触により、スイッチが閉じられる。
【0013】
通信ユニットは、多くの異なる方法で通信するように構成されることができる。1つの単純で強固な解決策によれば、通信ユニットは、使用者と直接に通信するように構成されている。したがって、薬剤送達操作の終了時に、装置は、通信ユニットに記憶された特定の情報を使用者に提供することができる。情報は、使用者に可聴的におよび/または可視的に提示されてもよい。
【0014】
代替案として、通信ユニットは、スマートデバイスを介して通信するように構成されてもよい。この解決策によれば、スマートデバイスの機能を使用して、使用者に通知する。したがって、投与操作が終了すると、スマートデバイスがトリガされ、情報を使用者に可聴的におよび/または可視的に提供することができる。この解決策によれば、薬剤送達装置は、直接に通信するように構成された場合よりも、より少ない構成要素および機能を必要とする。外部レシーバとの通信に関して、薬剤送達装置は、データの送信および受信を含む、無線ネットワークと通信することができる通信要素を備えるように構成されてもよい。このように設計されると、薬剤送達装置は、例えば、機能およびイベントに関する情報を医師または医療センタに送信することによって、使用者の薬剤処置を監視し、使用者の薬剤処置を処方された治療計画と比較することができる。
【0015】
この場合、より多くの情報を取得するために、通信ユニットは、薬剤送達装置内の多数のセンサに動作可能に接続されてもよい。例えば、センサは、薬剤容器から情報を得ることができる機能を含んでもよい。情報は、EANコード、QRコード(登録商標)またはRFIDチップのような多くの方法で格納することができる。薬剤容器からの情報は、データベースに格納された情報、例えば製造日、バッチ番号および有効期限と比較することができる。いくつかの機能の例示として、比較結果を用いて、有効期限が過ぎており、薬剤容器を新品に交換すべきこと、またはそのバッチの薬剤が回収されており、その薬剤容器を廃棄するかまたは製造業者に返品すべきことを使用者に警告することができる。
【0016】
他の種類のセンサは、使用者が設定した用量を感知できる(装置がこの機能を備えている場合)用量設定センサであってもよい。その後、設定された用量および使用された用量は、送信され、治療計画による必要な用量と比較され得る。したがって、通信ユニットによって薬剤送達装置から収集されたデータを用いて、患者の遵守を監視することができる。この場合、通信ユニットは、患者の遵守に関する情報を取得するように構成されてもよい。取得された情報は、使用者に送信されてもよい。
【0017】
好ましくは、通信ユニットは、装置のセンサから得られた情報、および、外部から得られ、通信ユニットに送信された情報を効果的に処理するために、データ記憶手段を備えてもよい。この解決策によれば、薬剤送達装置が使用されるときに得られたデータを記憶することができ、直接に送信する必要はない。この構成は、例えば薬剤送達装置が通信接続を確立できない場所で使用される場合に有利であり得る。したがって、データは、最初に記憶され、その後、通信接続が確立されたときに外部のレシーバに送信される。
【0018】
薬剤送達装置の特定の解決策によれば、通信ユニットは、緊急コールセンタに自動的に接続する機能を備えることができる。この構成は、使用者に危険がある場合に、例えば即時型過敏症が発症する危険性のあるアレルギー発作の場合に使用される緊急装置として、薬剤送達装置を設計している場合に有利であり得る。薬剤送達装置は、緊急コールセンタに自動的に接続し、通報することができる。この場合、通信ユニットは、使用者と緊急コールセンタとの間で音声情報を可能にするためのスピーカおよびマイクを備えてもよい。
【0019】
さらに、通信ユニットは、スイッチが作動されたときに、地理位置を取得し、地理位置を緊急コールセンタに送信することができる測位機能を備えてもよい。これにより、緊急コールセンタは、助けを必要としている使用者の場所に、適切な医療補助を送ることができる。
【0020】
本発明のこれらおよび他の態様および利点は、本発明の以下の詳細な説明および添付の図面から明らかになるであろう。
【0021】
以下の本発明の詳細な説明では、添付図面が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】通信ユニットを備えた薬剤送達装置の第1実施形態を示す詳細図である。
図2】通信ユニットを備えた薬剤送達装置の第1実施形態を示す詳細図である。
図3】通信ユニットを備えた薬剤送達装置の第1実施形態を示す詳細図である。
図4a】通信ユニットを備えた薬剤送達装置の第1実施形態を示す詳細図である。
図4b】通信ユニットを備えた薬剤送達装置の第1実施形態を示す詳細図である。
図5a】通信ユニットを備えた薬剤送達装置の第1実施形態を示す詳細図である。
図5b】通信ユニットを備えた薬剤送達装置の第1実施形態を示す詳細図である。
図5c】通信ユニットを備えた薬剤送達装置の第1実施形態を示す詳細図である。
図6a】通信ユニットの作動を概略的に示す図である。
図6b】通信ユニットの作動を概略的に示す図である。
図6c】通信ユニットの作動を概略的に示す図である。
図7a】第1実施形態の薬剤送達装置に含まれるスイッチの第1実施形態を示す図である。
図7b】第1実施形態の薬剤送達装置に含まれるスイッチの第1実施形態を示す図である。
図8a】閉合位置に位置する図7の実施形態を示す図である。
図8b】閉合位置に位置する図7の実施形態を示す図である。
図9a】第1実施形態の薬剤送達装置に含まれるスイッチの第2実施形態を示す図である。
図9b】第1実施形態の薬剤送達装置に含まれるスイッチの第2実施形態を示す図である。
図10a】閉合位置に位置する図9の実施形態を示す図である。
図10b】閉合位置に位置する図9の実施形態を示す図である。
図11】は、通信ユニットを備えた薬剤送達装置の第2実施形態を示す部分分解斜視図である。
図12図7の実施形態と異なる詳細を示す図である。
図13図7の実施形態と異なる詳細を示す図である。
図14図7の実施形態と異なる詳細を示す図である。
図15図7の実施形態と異なる詳細を示す図である。
図16】本発明による通信ユニットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
発明の詳細な説明
本願において、用語「遠位部/遠位端」が使用される場合、装置の使用中に、患者の薬剤送達部位から離れて一番遠くに配置されている装置の一部/端部または装置にある部材の一部/端部を指す。同様に、用語「近位部/近位端」が使用される場合、装置の使用中に、患者の薬剤送達部位に一番近くに配置されている装置の一部/端部または装置にある部材の一部/端部を指す。
【0024】
以下の説明では、スマートデバイスという用語が使用される。この文脈では、スマートデバイスは、コンピュータプログラムを実行することができるプロセッサと、プログラムおよび異なる外部ソースから取得したデータを記憶するための記憶スペースとを備えた電子装置を含むことができる。理解すべきことは、スマートデバイスは、異なるデータベースにアクセスするために、データネットワークと通信することができる通信システムを備えることである。また、理解すべきことは、データベースは、インターネットを介してアクセスできるもの、所謂クラウドサービスであってもよく、および/または、ローカルエリアネットワークに直接に接続され、ローカルエリアネットワークを介してアクセスできるものであってもよいことである。この文脈では、スマートデバイスは、双方向通信を行うためのある種の人間−機械インターフェイスを含むことをさらに理解すべきである。人間−機械インターフェイスは、ディスプレイ、キーボード、マイク、スピーカ、周辺機器を接続するためのI/Oポートを含むことができる。さらに、スマートデバイスは、ネットワークと無線通信を行うためのアンテナを備えてもよい。また、スマートデバイスは、NFCタグと通信することができる送受信機構、ならびにNFCタグとの間の通信を確立および処理することができるプログラムを備えてもよい。
【0025】
また、以下の説明では、薬剤送達装置という用語が使用される。この文脈では、薬剤送達装置は、一定量の薬剤を使用者に送達することができる多くの装置、例えば、注射針を有するまたは有しない注射器、粉末吸入器、エアロゾル吸入器、ガス吸入器、経口部材または経鼻部材を有する噴霧器、錠剤の形状にした薬剤を分配するための投与装置、点眼装置を含むことができる。薬剤送達装置は、使い捨てタイプまたは再使用可能タイプのいずれかであってもよく、特定の形状を有する特定の薬剤に合わせて適切に構成された薬剤容器を備えていてもよい。
【0026】
図1に示すように、本発明を構成する薬剤送達装置は、近位端12および反対側の遠位端14を有する管状のハウジング10を備えることができる。ハウジング10は、容器保持部16(図3)をさらに備える。容器保持部16は、ハウジング内に同軸に配置され、薬剤容器18を保持する。薬剤送達装置は、さらに、ハウジングの遠位端14に固定されたエンドキャップ20を含む。
【0027】
図2に示すように、薬剤送達装置は、薬剤送達部材ガードの形にした管状の作動部材22をさらに備えてもよい。作動部材22は、第1共働要素24を備えてもよい。例示的な実施形態において、第1共働要素24は、以下で詳細に説明するように薬剤送達装置を作動させるために使用される2つの突起である。本発明の一実施形態によれば、引張ばね25が、作動部材22の近位端に配置され、作動部材を近位方向に移動させる。
【0028】
図3は、薬剤送達装置の内部を示す。薬剤容器18は、容器保持部16内に配置され、所定量の薬剤を収容し、摺動可能なストッパ26と薬剤送達部材28とを有する。薬剤容器18は、送達部材として注射針28を備えた注射器であってもよいが、本発明は、これに限定されない。薬剤送達装置は、管状の回転部30(図4a)をさらに備えることができる。管状の回転部30は、その外面に溝32を含み、溝32は、薬剤送達部材ガード22の突起24(図2)に相互作用的に接続される。
【0029】
また、薬剤送達装置は、駆動機構34(図5)を備えている。この駆動機構は、プランジャロッド36と、プランジャロッド36内に配置された圧縮ばね38とを備える。プランジャロッド36は、切欠き/凹部40(図5)を備える。切欠き/凹部40は、作動装置46の近位方向に向いている可撓性アーム44上の内向き突起42(図4b)に相互作用的に接続される。プランジャロッド36の近位端は、摺動可能なストッパ26と接触している。回転部30(図4a)は、作動装置46の周りに回転可能且つ同軸に配置され、可撓性アーム44に作用する。
【0030】
駆動機構34は、後述の用途を有する切換要素48をさらに備えている。図示の実施形態において、切換要素48は、細長いU字形ブラケットを備え、このU字形ブラケットは、近位方向に向けられた少なくとも2つの細長いアーム50と、薬剤送達装置の遠位方向に向けられ、横行きの遠位端壁としての下部52とを備える。切換要素48は、金属、プラスチック、またはこれらの材料の任意の組み合わせから形成することができる。
【0031】
切換要素48のアーム50の近位端には、切換要素48の長手軸に対して概ね径方向外向きに延在する角度付きの支持突起54が設けられている。切換要素48のアーム50は、プランジャロッド36(図5a)の長さに沿って延在するように構成され、支持突起54は、プランジャロッド36および圧縮ばね38が引張状態にあるときに、すなわち、作動装置46の可撓性舌状部44の内向き突起42がプランジャロッド36の凹部40内に位置するときに、作動装置46の近位方向に向いている端面56上に載るように構成される。プランジャロッド36および圧縮ばね38が予備引張状態にあるときに、切換要素48の遠位端は、スイッチ58(図6a)の遠位内面から所定の距離「D」を有するように構成される。スイッチ58の機能は、以下で詳細に説明される。
【0032】
本発明の薬剤送達装置は、以下のように機能する。使用者は、薬物送達部材ガード22を薬剤送達部位に当接させながら、装置の近位端を押圧する。薬剤送達部材28として注射針を使用する場合、注射針は、使用者の皮膚を穿刺する。この穿刺によって、ハウジング10は、薬剤送達部材ガード22に対して近位方向に移動される。その結果、薬剤送達部材ガード22の突起24は、回転部30の溝32内で移動する。よって、突起24は、傾斜溝32iに当接することにより、回転部30を薬剤送達装置の長手軸の周りに回転させる。
【0033】
回転部30の回転によって、作動装置46のアーム44が解放され、駆動機構34が作動される。その後、アーム44は、外側に撓む。これによって、アーム44の内向き突起42は、プランジャロッド36の凹部40と接触しないように移動される。その後、プランジャロッド36の駆動ばね38は、薬剤容器18のストッパ26が最も近位位置に到達するまで、プランジャロッド36を近位方向に押圧することによって、薬剤送達部材28を通って一定量の薬剤を排出する。
【0034】
ストッパ26がプランジャロッド36によってほぼ薬剤容器18内の近位端に移動されると、図6cに示すように、プランジャロッド36は、切換要素48のアーム50と接触しないように移動される。したがって、切換要素48のアーム50は、内側に自在に撓む。これによって、支持突起54は、作動装置46の端面56と接触しないように移動される。切換要素48の下部52に当接し且つ作用する圧縮ばね38の力によって、切換要素48は、その遠位端がスイッチ58に当たるまで、遠位方向に距離Dで急速に移動され、スイッチ58(図6c)を作動させる。スイッチの作動によって、通信ユニット60が作動され、通信ユニットに電力を供給する。通信ユニットの機能は、以下で詳細に説明される。
【0035】
理解すべきことは、装置およびその動作要素の種類ならびに取得する信号の種類に応じて、スイッチは、多数の異なる設計を有することができることである。図7および8は、上記の実施形態に関連して説明した切換要素と共に使用することができる1種のスイッチを示している。
【0036】
作動装置46の遠位端には、略矩形状の切欠64を設けた端壁62が配置されている。切欠の両側には、近位方向に向けられ、やや傾斜した2つの接触面66が配置されている。切換要素48は、解放されたときに、この接触面に当接する。傾斜した接触面には、導電性材料が設けられている。導電性材料は、リード線68として、切欠64を通って延在する。適切な電線管70(図6c)は、これらのリード線68に接続され、通信ユニット60まで延在する。また、切換要素48は、金属から製造されてもよい。したがって、切換要素48が移動され、接触面66に当接すると、スイッチが閉じられる。代替案として、切換要素の遠位端面72を導電性材料で覆うこともできる。切換要素48と接触面66との間の接触信頼性を高めるために、接触面66は、突起74(図7b)を備えてもよい。図8は、切換要素が移動され、接触面に当接している状態を示している。
【0037】
図9および10は、上述した薬剤送達装置と共に使用されるスイッチの別の実施形態を示している。同様に、作動装置は、その遠位端に設けられた端壁62を備える。端壁62には、略矩形状の切欠76が設けられている。近位方向に向けられ、やや傾斜した接触面78が、切欠の1つの縁に隣接して配置される。接触面には、導電性材料が配置されており、この導電性材料は、リード線79として切欠を通って延在する。適切な電線管は、このリード線に接続され、通信ユニット60まで延在する。接触要素80が設けられる。この接触要素は、影響を受けない初期位置にあるときに、薬剤送達装置の長手軸Lの法線に対して傾斜角αをもって、作動装置の内部に延在する可撓性材料の舌状部82を含む。また、影響を受けない初期位置では、舌状部82の自由端と接触面78との間に一定の隙間がある。たとえ舌状部82が可撓性を有するように構成されているとしても、例えば薬剤送達装置が床に落下した場合、舌状部82は、接触面に当接しても、移動されないような剛性を有する。
【0038】
舌状部82は、作動装置46の遠位部を取り囲むほぼ管状のシート84に取り付けられるまたは一体化される。シート84は、導電性材料を備え、適切な電線管70を介して通信ユニット60に接続される。切換要素48がその下部52で舌状部82を遠位方向に押す場合、図10に示すように、舌状部82が動かされ接触面78に当接して、スイッチを閉じる。この実施形態において、切換要素は、金属から製造される必要がなく、任意の適切な材料から製造されてもよい。
【0039】
上述した実施形態の接触面およびリード線は、多くの方法で作製することができる。それらは、接着などの適切な方法で部品に接着される薄い導電性シート材料から作製することができる。代替案として、レーザ直接構造化(LDS)技術を利用して、異なる部品上で導電性表面を作製することができる。この場合、第1実施形態のスイッチの切換要素は、非導電性材料から作製され、遠位方向に向けられた端面は、導電性材料例えばLDSで処理されてもよい。
【0040】
図11〜15は、本発明を構成する薬剤送達装置の第2実施形態を示す。図面に示された実施形態は、概ね細長い主ハウジング100を備え、ハウジング100は、遠位端102および近位端104を有する(図11)。
【0041】
ハウジング100は、薬剤容器108(図14)を収容するように設計されている。適切な薬剤送達部材110(図14)は、薬剤容器108に取り付けられるまたは一体化される。
【0042】
薬剤送達部材シールド114(図11)が、薬剤容器108を取り込み且つに薬剤容器108と同軸である。薬剤送達部材シールド114は、ハウジング100に対して、長手方向に移動することができる。
【0043】
この装置は、駆動機構116(図13)をさらに備える。駆動機構116は、ハウジング100内に配置され、軸方向に移動可能なプランジャロッド駆動部118を含む。プランジャロッド駆動部118の近位端は、細長いプランジャロッド120(図11)の遠位端に動作可能に接続される。
【0044】
駆動機構116は、駆動ばね122をさらに備える。図13に示すように、駆動ばね122は、螺旋状のコイルばねであり、プランジャロッド駆動部118をその近位端位置に向かって付勢する。駆動機構116のプランジャロッド駆動部118を遠位位置または圧縮位置から近位位置または伸長位置に解放するための手動操作する解除ボタン124(図11)が、ハウジング100内に延在するように構成される。解放ボタン124は、駆動機構ロック要素126に動作可能に接続される。駆動機構ロック要素126は、溝130内に配置された近位に向けられたレッジ128を介してプランジャロッド駆動部118に係合し、プランジャロッド駆動部118と相互作用することによって、駆動ばね122でプランジャロッド駆動部118を緊張状態に保持する。
【0045】
第2実施形態において、駆動機構116は、切換機構を備える。この切換機構は、切換要素132(図12)を含む。切換要素132は、細長い管状の本体134と、プランジャロッド120の遠位方向に向く端面と接触するように意図され、近位方向に向く端面を有する円形の端板136とを備える。また、切換要素132の本体134の側面には、周方向溝138(図12)が設けられている。本体134は、プランジャロッド駆動部118(図13)の近位部に取り付けられた管状要素142の中央通路140に嵌合するように構成される。
【0046】
管状要素142は、プランジャロッド駆動部118(図12)の近位端に配置された近位方向に向く環状スイッチ144を備える。スイッチ144は、多くの異なる構成および設計を有することができる。例えば、スイッチ144は、機械的な影響を受けたときに電気信号を提供することができる圧電素子であってもよい。また、以下に説明するように、このスイッチは、機械的な影響を受けたときに接触される電気接点を有する機械的接触であってもよい。図16に示すように、スイッチ144は、薬剤送達装置の通信ユニット160のマイクロコントローラ145に接続されている。後述するように、マイクロコントローラ145は、多数の機能を実行するように構成されている。
【0047】
切換要素132の近位方向に位置するプランジャロッド駆動部118の領域は、端板136の直径よりもやや大きい直径を有する。その結果、図12に示すように、端板136は、プランジャロッド駆動部118の近位端に嵌合することができる。
【0048】
好ましくは、装置は、切換遅延機構を備える。切換遅延機構は、切換要素132の周方向溝138に嵌合するように構成された摩擦増強要素146を含む。図示の実施形態において、摩擦増強要素は、ゴムなどの弾性材料で作られたOリングである。管状要素142の中央通路140は、第1部分147(図13)を備える。第1部分147は、周方向溝に嵌合されたOリングの直径よりもやや小さい直径を有する。したがって、Oリングは、第1部分108に配置されたときに圧縮される。中央通路は、第2部分148(図13)を有する。第2部分148は、Oリングの直径よりも僅かに大きい直径を有する。Oリングの機能は、以下で説明される。
【0049】
さらに、解放機構用の切換機構が、プランジャロッド駆動部118に設けられている。この切換機構は、プランジャロッド駆動部118に取り付けられ、近位方向に延在する2つのアーム150(図13)を含む。2つのアーム150は、中央通路140の両側に配置される。各アーム150は、概ね径方向内向きレッジ152を備える。内向きレッジ152は、中央通路140内に延在するように構成される。アーム150はさらに、径方向外向きレッジ154を備える。レッジ154の機能は、以下で説明される。
【0050】
この第2実施形態は、以下のように機能することを意図している。薬剤送達装置を使用する場合、薬剤送達装置の近位端を薬剤送達部位に押し付ける。使用者は、トリガボタン124を押すことによって、駆動ばね122を解放する。その後、プランジャロッド駆動部118および駆動ばね122は、プランジャロッド120に作用し、プランジャロッド120を近位方向に付勢することによって、薬剤容器108内のストッパ112に作用する。薬剤が非圧縮性であり且つ薬剤送達部材110内の通路が狭いため、薬剤容器108は、近位方向に移動される。薬剤容器108の動きにより、薬剤送達部材110が使用者の皮膚を穿刺する。
【0051】
駆動ばね122からの力は、プランジャロッド120を薬剤容器108に対して近位方向に付勢することによって、ストッパ112を近位方向に移動させる。これによって、一定量の薬剤が使用者の体内に送達される。プランジャロッド120が近位方向に向かって移動しているときに、切換要素132も近位方向に向かって移動する。その原因は、図13に示すように、薬剤送達部材ガード114の内面と接触している内向きレッジ154によって、アーム150が径方向内側に付勢されているためである。アーム150の内向きレッジ152は、切換要素132の端板136の遠位面に当接する。
【0052】
図14および15に示すように、プランジャロッド駆動部118、切換要素132、プランジャロッド120およびストッパ112がストッパ112の遠位端に近い位置に到達すると、アーム150の外向きレッジ154は、薬剤送達部材シールド114の切欠156に進入する。外向きレッジ154が切欠156に進入すると、アーム150は、径方向外側に自由に移動することができる。これにより、内向きレッジ152は、切換要素132の端板136と接触しないように移動する。
【0053】
駆動ばね122からの力は、プランジャロッド駆動部118を切換要素132に対して近位方向に付勢し続ける。しかしながら、プランジャロッド駆動部118と切換要素132との間の相対運動は、プランジャロッド駆動部118の管状要素142の内面に摩擦して作用する摩擦増強要素146によって減速される。また、摩擦は、一部の力をプランジャロッド120に伝達し、注射手順を終了させることにも支援する。
【0054】
相対移動は、プランジャロッド駆動部118と切換要素132との間で継続する。図1
4に示すように、摩擦増強要素146は、第1部分147に沿ってさらに移動されると、
第2部分148に達する。このときに、摩擦増強要素146は、管状要素142の内面と
接触しないように移動される。図14に示すように、端板136の遠位面は、スイッチ1
44から距離dで離れて配置されている。ばね122からの力は、続けてプランジャロッ
ド駆動部118に作用する。この場合、図15に示すように、プランジャロッド駆動部1
18は、自由に移動できるため、端板136の遠位方向の表面がスイッチ144と接触す
るまで距離dで近位方向に沿って加速する。次いで、スイッチは、薬剤送達装置の通信ユ
ニット160を作動させる。
【0055】
本発明によれば、装置が作動されると、意図された装置の所望の用途に依存して、多くの機能を実行することができる。
【0056】
図16に示すように、本発明の一態様によれば、スイッチは、作動されると、例えば通
信装置のマイクロコントローラ145を装置内に配置された適切な電源15に接続する
ことによって、マイクロコントローラ145をトリガする。電源は、例えばボタン電池な
どであってもよい。他の種類の電源は、ピエゾ素子、太陽電池パネルなどであってもよい
。マイクロコントローラ145は、通信ユニット60、160内の少なくとも1つの電子
モジュール12を制御するように構成される。電子モジュールは、異なる種類のセンサ
を備えてもよい。また、電子モジュールは、電源により給電されてもよい。
【0057】
電子モジュールは、単独でまたは他の機能体と組み合わせて、いくつかの異なる機能を
実行することができる。電子モジュールが実行できる1つの基本機能は、装置の使用者と
直接に通信することである。この通信は、電子モジュールに格納された文章を装置上の適
切なディスプレイ14上に表示させることによって、可視的に行われてもよい。それに
加えてまたはその代わりに、通信は、電子モジュールに記憶された録音メッセージを電子
モジュールまたは装置の適切なスピーカ16で再生させることによって、可聴的に行わ
れてもよい。
【0058】
この場合、電子モジュールは、他の装置と通信することができる通信モジュール、好ましくは無線で他の装置と通信することができる通信モジュールを備えてもよい。装置は、適切な通信システム、例えば、Bluetooth(登録商標)、ANT、またはGSM(登録商標)、4G、5G、WLANなどの移動通信システムを使用して、その状態を適切なレシーバに送信することができる。
【0059】
適切なレシーバは、薬剤送達装置からの情報を処理するように構成されたデータベースであってもよい。データベースは、薬剤送達装置の通信ユニットを介して使用者に通信し、使用者に特定の情報を提供するように構成することができる。この場合、情報は、無線ネットワークを介してデータベースから送信されてもよく、通信ユニットに予め記憶され、データベースからの送信信号に従って送信されてもよい。
【0060】
使用者が受け取り得る情報に関して、記憶された情報または起動時に受信した情報は、装置の種類、使用者の処方箋、薬物の種類などによって異なる場合がある。
【0061】
例えば、装置が使い捨て注射装置である場合、使用者は、安全な方法で装置を廃棄する、例えば装置を安全な容器に入れるように指示される。さらに、損傷を避けるために、薬剤送達部材に保護キャップを取り付けるような情報を使用者に提示することができる。一方、装置が再使用可能である場合、次回の薬剤送達を行うように装置を準備するために、使用済み薬剤容器を新しい容器に交換するような情報を使用者に提示することができる。また、使用者は、使用済み薬剤送達部材を取り外し、新しい無菌薬剤送達部材に交換するよう指示されてもよい。
【0062】
使用者に与える情報は、所定の処方計画に基づいて、次回の用量を取るべき時間を示す指示をさらに含むことができる。処方計画は、電子モジュール、スマートデバイス、またはクラウドに格納され、作動時に薬剤送達装置またはスマートデバイスにダウンロードされてもよい。他の種類の情報は、薬剤送達装置の保管、例えば温度および/または露光に関するものであってもよい。
【0063】
電子モジュールからの情報は、例えば、患者/使用者の医師にとって重要な特徴を含むことができる。この情報は、薬剤を使用者に送達した日時などのイベントデータを含むことができる。この場合、電子モジュールの起動は、起動日時の記録/ロギングをトリガすることができる。電子モジュールは、薬剤送達装置の外部から情報を得る手段を有する場合、この情報を電子モジュール内に格納することができる。また、電子モジュールからの信号またはスマートデバイスを介して電子モジュールからの信号がコンピュータまたはインターネットに接続されたデータベース上で日時記録をトリガすることができる場合、情報をインターネット上に格納してもよい。
【0064】
イベントデータは、使用済み薬剤容器を新しい薬剤容器に交換することをさらに含むことができる。この場合、スイッチを用いて薬剤送達装置を作動したときに、薬剤送達装置内の多くのセンサが使用され、作動されることがある。例えば、薬剤容器の存在を感知することができるセンサを配置することができる。最も単純な設計として、センサは、薬剤容器の存在および/または除去によって影響される近接センサまたは接触スイッチであってもよい。
【0065】
センサは、特定の情報を得ることができるように、より知能的であってもよい。この場合、薬剤容器は、薬剤容器内の薬物に特異的に関連する情報を有してもよい。情報は、薬物の種類、薬物の濃度または強度、薬物の有効期限、必要に応じて、温度要件などを含み得る。この情報は、適切な方法で、好ましくは改ざんまたは破壊されない方法で、薬剤容器上に保管されてもよい。例えば、情報は、薬剤容器の外面にしっかりと取り付けられたラベル上に記載することができる。情報は、EANコード、QRコードまたは同様の可読コードなどの異なる形で提示することができる。
【0066】
その場合、薬剤送達装置は、これらの種類のコードから情報を得ることができる適切なセンサまたは読取器を備えることができる。代わりに、ラベルは、無線周波数チップまたはRFIDチップ、および適切なNFCチップを備えてもよい。センサは、チップを読み取り、チップに記憶された情報を読出すように構成される。その後、情報は、スマートデバイスおよび/または無線ネットワークに送信されてもよい。また、スマートデバイスがNFCチップの読み取りを可能にする機能を備える場合、NFCチップを使用することによって、スマートデバイスは、チップを読み取ることができる。さらに、ラベルを使用する代わりに、情報を改ざんするリスクをさらに低減するために、NFCチップを薬剤容器の材料に埋め込むことができる。
【0067】
温度に関して、NFCチップは、温度センサを備えるため、薬剤容器が特定の許可範囲を超える温度に曝されているか否かに関する情報を得ることができる。薬剤容器が許可範囲を超える温度に曝された場合、NFCチップからこの情報を読み取ることができる。
【0068】
投与量切換の最後までの薬剤送達装置の起動は、さらなる情報を提供し得る。例えば、電子モジュールは、測位機能を備えることができる。これによって、使用者の地理位置を取得することができ、異なる目的に使用することができる。この場合、位置の特定は、異なる機能によって得られる。電子モジュールは、GPS機能を備え、薬剤を投与したときに使用者の実際の位置は、GPS座標で記録される。代替的には、GSM機能を使用して、位置を特定することができる。室内の位置特定を改善するために、GPS機能およびGSM機能はさらに、WIFI(登録商標)測位機能と組み合わせられてもよい。
【0069】
位置情報の用途に応じて、異なる精度の測位機能を使用する。たとえば、使用者が無料でまたは多くの補助金で薬を受け取った場合、その薬が適切な国に使用されているか否かを知ることが重要である場合、例えばその薬が他の国に輸入または販売されていないことを追跡できるために、国別の測位情報を取得すればよい。その場合、GSM機能を使用して、薬剤送達装置が使用されている国の情報を得ることができる。
【0070】
一方、薬剤送達装置が緊急装置である場合、例えば患者が即時型過敏症によるアレルギー発作を発症した緊急事態にのみ使用される緊急装置である場合、測位精度が重要である。即時型過敏症は、エピネフリンで治療される。いくつかの患者は、エピネフリンを充填した自動注射器を持っている。しかしながら、薬剤送達装置を使用した場合、エピネフリンの注射が完全に効いておらず、患者をさらに看護する必要がある可能性がある。その場合、患者の位置特定が精確且つ正確であり、よって、救急救命士がその患者を発見することができることが非常に重要である。したがって、好ましくは、GPS機能を使用しもしくはWIFIまたはネットワーク測位機能と共に使用し、両者から測位情報を取得する。GPS機能は、好ましくは、薬剤送達装置がスイッチオフされるまたはバッテリが消耗されるまで、連続的に送信する。その理由は、薬剤送達装置の緊急使用が移動している車両上で行われ、患者の位置が変化しており、救急救命士が患者を発見するために、患者の位置を連続的に受け取る必要があるのである。
【0071】
緊急装置からの信号は、ヘルスケアコールセンタに自動緊急通報をすることができる。
患者は、マイク18を介して医師または看護師に直接に話すことができ、医師または看
護師は、患者の状況を把握することができる。薬剤送達装置がコール機能、スピーカおよ
びマイクを備えていれば、薬剤送達装置でコールを行うことができる。
【0072】
測位機能は、薬剤送達装置に直接に提供されてもよく、または薬剤送達装置と通信することができるスマートデバイスに組み込まれてもよい。しかしながら、測位機能が緊急装置に使用される場合、測位機能を装置に直接に設けることは、有利である。さもなければ、信号伝達は、2つの装置に依存する。この場合、患者がスマートデバイスを持っていないか、またはスマートデバイスのバッテリがなくなった可能性があるため、不利である。
【0073】
代替案として、薬剤送達装置は、スマート装置と共に使用することもできる。薬剤送達装置の通信ユニットは、スマート装置と接続することができる回路を備えてもよい。スマートデバイスは、情報を送受信できる任意のスマートデバイスであってもよい。スマートデバイスは、薬剤送達装置からの情報を受信した場合、その情報を使用者に直接に送信することができる。同様に、通信は、例えばスマートデバイスに格納されたテキストを可視的に行うことができる。また、通信は、スマートデバイスのスピーカを介して、スマートデバイスに記憶された録音メッセージを再生させることによって、可聴的に行うことができる。この場合、スマートデバイスは、スマートデバイスが薬剤送達装置の電子モジュールから情報を受信すると、作動するコンピュータプログラムまたはアプリケーションを備えてもよい。
【0074】
この場合、スマートデバイスは、WIFIネットワーク、移動通信ネットワークなどの無線ネットワークと通信することができる通信モジュールを備えてもよい。これにより、スマートデバイスは、薬剤送達装置の電子モジュールにより作動されると、情報の送信および/または送信を行うことができる。例えば、プログラムまたはアプリケーションをスマートデバイスに格納する代わりに、スマートデバイスは、インターネット上の適切なサイトに接続し、使用者に適切な情報を提示することができる。
【0075】
治療薬を充填した薬剤容器に関連して薬剤送達装置を説明したが、理解すべきことは、薬剤容器は、薬剤を一切含まず、練習の目的に使用できる所謂ダミーであってもよいことである。さらに理解すべきことは、通信ユニットは、薬剤送達装置に一体化されてもよく、薬剤送達装置に接続可能な別個のユニット、例えば付属品として構成されてもよいことである。
【0076】
理解すべきことは、上記に説明され且つ図面に示された実施形態は、本発明の非限定的な例のみとしてみなされ、特許請求の範囲に含まれる多くの方法で修正することができることである。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5a
図5b
図5c
図6a
図6b
図6c
図7a
図7b
図8a
図8b
図9a
図9b
図10a
図10b
図11
図12
図13
図14
図15
図16