特許第6353619号(P6353619)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6353619大型飛行機解体用剪断機及び大型飛行機解体用作業車
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6353619
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】大型飛行機解体用剪断機及び大型飛行機解体用作業車
(51)【国際特許分類】
   B23D 25/14 20060101AFI20180625BHJP
   B23D 17/00 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   B23D25/14 Z
   B23D17/00 Z
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-33247(P2018-33247)
(22)【出願日】2018年2月27日
【審査請求日】2018年4月17日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591000584
【氏名又は名称】高倉 可明
(74)【代理人】
【識別番号】100101432
【弁理士】
【氏名又は名称】花村 太
(72)【発明者】
【氏名】高倉 可明
【審査官】 山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】 特表平11−505772(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第4205781(DE,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0308075(US,A1)
【文献】 特開2011−36981(JP,A)
【文献】 特開2007−307646(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 15/00−19/08,23/00−31/04,
E04G 23/00−23/08,
E02F 3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開放位置と閉鎖位置との間で相対的に回動するように装備された剪断刃で剪断対象物を剪断する第1ジョー部及び第2ジョー部と、
前記第1ジョー部及び/又は前記第2ジョー部を回動する油圧駆動手段とを備えた剪断機であって、
前記第1ジョー部の剪断刃として、
この第1ジョー部の厚さと同じ最大幅を有し、前記第1ジョー部の先端領域に配されて剪断対象物に対して切っ先が侵入する先端刃と、
この先端刃に隣接して前記第1ジョー部の両面に各々配置された一対の第1平行剪断刃と、
この第1平行剪断刃の取付部に対して鈍角状に曲折して前記第1ジョー部の両面に各々配置された一対の第2平行剪断刃とを備え、
前記先端刃として、
前記第1ジョー部の先端に配されて剪断対象物に最初に当接する第1ジョー部の厚さよりも小さい刃幅の小口部と、この小口部の両側に配され後端に向かって連続的に刃幅が増加される一対の先端テーパー刃とを備えた切っ先刃と、
前記切っ先刃の先端テーパー刃の後端部の各々の取付部に対して鈍角状に曲折して前記第1平行剪断刃の各々に亘って互いの距離を離す方向に配された一対のテーパー刃とを備え、
前記第2ジョー部の剪断刃として、
前記第1ジョー部との相対移動の際に先端刃と一対の第1平行剪断刃との全部及び一対の第2平行剪断刃の各々の一部を通過可能に受け入れる溝部と、
前記通過する先端刃の外周面を囲むように前記第1平行剪断刃が通過する以外の領域の前記溝部の内壁面に配された先端刃受け刃と、
前記第1平行剪断刃の両外周面が通過する領域の前記溝部の内壁面に沿って各々配置された一対の第1平行剪断刃受け刃と、
前記第2平行剪断刃の両外周面が通過する領域の前記溝部の内壁面に沿って各々配置された一対の第2平行剪断刃受け刃とを備えたことを特徴とする大型飛行機解体用剪断機。
【請求項2】
前記油圧駆動システムが、
前記第1ジョー部を回動する第1油圧駆動手段と、
前記第2ジョー部を回動する第2油圧駆動手段とを各々備えたことを特徴とする請求項1に記載の大型飛行機解体用剪断機。
【請求項3】
前記先端刃受け刃が、
前記切っ先刃の小口部の外辺に対向する幅受け刃と、
前記切っ先刃の先端テーバー刃とすり合う一対の先端テーパー刃受け刃と、
前記一対のテーパー刃とすり合う一対のテーパー刃受け刃とを備えたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の大型飛行機解体用剪断機。
【請求項4】
前記先端刃受け刃の幅受け刃と一対の先端テーパー刃受け刃とからなる切っ先刃受け刃部分が、前記第2ジョー部の第1ジョー部に対向する面から第1ジョー部に対向する方向に傾斜して配されていることを特徴とする請求項3に記載の大型飛行機解体用剪断機。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の飛行機解体用剪断機を自走車両に旋回可能及び伏仰可能に搭載された油圧作動ブームの先端に取付けられたことを特徴とする大型飛行機解体用作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高強度のアルミ合金等を使用した旅客機等の大型飛行機を解体するに好適な大型飛行機解体用剪断機及びその剪断機を備えた大型飛行機解体用作業車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、廃棄自動車のみならず、それ以外の種々のスクラップ対象物、例えば鉄筋や窓枠サッシ等の建築廃材、或いは給水管や配水管等の配管廃材等が通常の解体作業では処理しきれず、各地に各種のスクラップ対象物が集積されて解体を待つ状況となりつつある。これに対して、船舶、鉄骨建築、プラント、大型車両などの解体切断作業に際して、現場まで出向いて、鋼材等を切断してトラック等へ積み込み、製鉄所等へ原料として搬送することを目的として、自走車両に大型鋼材剪断機を備えた切断機が開発に至っている。このような切断機としては、自走車両に旋回可能及び伏仰可能に搭載された油圧作動ブームと、該ブームの先端に取付けられた遠隔操作によって開閉作動する切断用剪断機とを備える。
【0003】
この切断用剪断機は、ブーム構造へ取付け可能なフレームと、取付け部を有するワークピース破壊用の一対のジョーと、これらジョーをフレームに対して取付けるためのジョー取付け手段とを有し、ジョー取付け手段は前記両方のジョーをフレームに対してかつ相互に一つの軸のまわりに揺動させ得るようにジョーをフレームに取付け、ジョー取付け手段がジョーをフレームの取付け部へ取り外し可能に取付けるためのピン部を有し、ジョー取付け手段がピン部及びフレームと独立に両方のジョーを一体に保持するような回転可能な結合部を有するように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
これにより、切断対象スクラップを切断する際に、切断対象スクラップの端面から切断される部分が平面視で矩形状に切断できるが、その切断の幅は内側に侵入する破壊用ジョーの幅と同じとなる。即ち、一対のジョーのうちの内側に侵入する破壊用ジョーの両面及びこれら面にすり合う外側の破壊ジョーの各々の切り刃のすり合わせで鋏で紙を切るように切断対象スクラップを連続して切断できるので、鋼板等の切断対象スクラップの切断作業における手間と労力と時間を低減し、切断作業能率を向上することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平6−92705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の切断用剪断機では、高強度のアルミ合金等を使用した旅客機等の飛行機を解体する場合には、高強度のアルミ合金を挟み切ることに対して剪断開始時に切り刃が切断対象スクラップに入らず、結果的に良好に挟み切ることができない場合があった。特に、飛行機の胴部と主翼等の羽根部とは、溶接ではなく、多数のリベットで胴部と羽根部とを結合するリベット結合が行われているため、剪断開始時に切り刃の先端がリベット結合で良好に侵入できず、良好に侵入した後でも良好なすり合わせ状態で切り刃に多大な負担が掛かって挟み切ることができない場合があった。
【0007】
本発明は、高強度のアルミ合金等を使用した旅客機等の大型飛行機を解体するに好適な大型飛行機解体用剪断機及び大型飛行機解体用作業車を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載された発明に係る大型飛行機解体用剪断機は、開放位置と閉鎖位置との間で相対的に回動するように装備された剪断刃で剪断対象物を剪断する第1ジョー部及び第2ジョー部と、
前記第1ジョー部及び/又は前記第2ジョー部を回動する油圧駆動手段とを備えた剪断機であって、
前記第1ジョー部の剪断刃として、
この第1ジョー部の厚さと同じ最大幅を有し、前記第1ジョー部の先端領域に配されて剪断対象物に対して切っ先が侵入する先端刃と、
この先端刃に隣接して前記第1ジョー部の両面に各々配置された一対の第1平行剪断刃と、
この第1平行剪断刃の取付部に対して鈍角状に曲折して前記第1ジョー部の両面に各々配置された一対の第2平行剪断刃とを備え、
前記先端刃として、
前記第1ジョー部の先端に配されて剪断対象物に最初に当接する第1ジョー部の厚さよりも小さい刃幅の小口部と、この小口部の両側に配され後端に向かって連続的に刃幅が増加される一対の先端テーパー刃とを備えた切っ先刃と、
前記切っ先刃の先端テーパー刃の後端部の各々の取付部に対して鈍角状に曲折して前記第1平行剪断刃の各々に亘って互いの距離を離す方向に配された一対のテーパー刃とを備え、
前記第2ジョー部の剪断刃として、
前記第1ジョー部との相対移動の際に先端刃と一対の第1平行剪断刃との全部及び一対の第2平行剪断刃の各々の一部を通過可能に受け入れる溝部と、
前記通過する先端刃の外周面を囲むように前記第1平行剪断刃が通過する以外の領域の前記溝部の内壁面に配された先端刃受け刃と、
前記第1平行剪断刃の両外周面が通過する領域の前記溝部の内壁面に沿って各々配置された一対の第1平行剪断刃受け刃と、
前記第2平行剪断刃の両外周面が通過する領域の前記溝部の内壁面に沿って各々配置された一対の第2平行剪断刃受け刃とを備えたことを特徴とするものである。
【0009】
請求項2に記載された発明に係る大型飛行機解体用剪断機は、請求項1に記載の油圧駆動システムが、前記第1ジョー部を回動する第1油圧駆動手段と、前記第2ジョー部を回動する第2油圧駆動手段とを各々備えたことを特徴とするものである。
【0010】
請求項3に記載された発明に係る大型飛行機解体用剪断機は、請求項1又は2に記載の先端刃受け刃が、前記切っ先刃の小口部の外辺に対向する幅受け刃と、前記切っ先刃の先端テーバー刃とすり合う一対の先端テーパー刃受け刃と、前記一対のテーパー刃とすり合う一対のテーパー刃受け刃とを備えたものであることを特徴とするものである。
【0011】
請求項4に記載された発明に係る大型飛行機解体用剪断機は、請求項3に記載の先端刃受け刃の幅受け刃と一対の先端テーパー刃受け刃とからなる切っ先刃受け刃部分が、前記第2ジョー部の第1ジョー部に対向する面から第1ジョー部に対向する方向に傾斜して配されていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項5に記載された発明に係る大型飛行機解体用作業車は、請求項1〜4の何れか1項に記載の飛行機解体用剪断機を自走車両に旋回可能及び伏仰可能に搭載された油圧作動ブームの先端に取付けられたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、高強度のアルミ合金等を使用した旅客機等の大型飛行機を解体するに好適な大型飛行機解体用剪断機及び大型飛行機解体用作業車を得ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の大型飛行機解体用剪断機を備えた飛行機用解体作業車の一実施例の構成を示す説明図である。
図2図1に示した大型飛行機解体用剪断機の構成を示す説明図である。
図3図2に示した大型飛行機解体用剪断機の第1ジョー部の先端刃の拡大図、側面図及び平面図である。
図4図2の第2ジョー部の先端刃受け刃の平面図である。
図5図2に示した大型飛行機解体用剪断機の要部の剪断動作を示す説明図である。
図6】別の実施例の大型飛行機解体用剪断機の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明においては、開放位置と閉鎖位置との間で相対的に回動するように装備された剪断刃で剪断対象物を剪断する第1ジョー部及び第2ジョー部と、第1ジョー部及び/又は第2ジョー部を回動する油圧駆動手段とを備えた剪断機である。この剪断機において、第1ジョー部の剪断刃として、この第1ジョー部の厚さと同じ最大幅を有し、剪断対象物に対して切っ先が侵入する先端刃と、この先端刃に隣接して第1ジョー部の両面に各々配置された一対の第1平行剪断刃と、この第1平行剪断刃の取付部に対して鈍角状に曲折して第1ジョー部の両面に各々配置された一対の第2平行剪断刃とを備える。
【0016】
更に、第2ジョー部の剪断刃としては、第1ジョー部との相対移動の際に先端刃と一対の第1平行剪断刃との全部及び一対の第2平行剪断刃の各々の一部を通過可能に受け入れる溝部と、通過する先端刃の外周面を囲むように第1平行剪断刃が通過する以外の領域の溝部の内壁面に配された先端刃受け刃と、第1平行剪断刃の両外周面が通過する領域の溝部の内壁面に沿って各々配置された一対の第1平行剪断刃受け刃と、第2平行剪断刃の両外周面が通過する領域の溝部の内壁面に沿って各々配置された一対の第2平行剪断刃受け刃とを備える。
【0017】
このため、剪断開始時に第1ジョー部の先端刃の切っ先が剪断対象物に当接し、油圧駆動システムの圧力をこの切っ先に集中させることができるため、高強度のアルミ合金等を使用した旅客機等の大型飛行機を解体することも容易に行うことができる。即ち、第1ジョー部の先端刃の切っ先のみが大型飛行機の高強度のアルミ合金に当接することにより、油圧の圧力を集中して与えることにより、穿設孔が形成される。形成された穿設孔に続いて第1平行剪断刃と第1平行剪断刃受け刃とによって良好に剪断されることができる。
【0018】
尚、第1ジョー部の先端刃の切っ先は、剪断対象物に対して略垂直方向に押圧されることにより、切っ先が押圧箇所から外れることがなく油圧の圧力が良好に押圧箇所に集中して成されることができる。即ち、溶接ではなく、多数のリベットで胴部と羽根部とを結合するリベット結合が行われている飛行機の胴部と主翼等の羽根部との切断においては、第1ジョー部の先端刃の切っ先を切断箇所に押し当て、この切っ先部分に圧力を集中させることにより、切っ先が押圧箇所から外れることがなく、切っ先によって穿設孔が容易に形成され、先端刃の後方の第1平行剪断刃及び第2平行剪断刃によって、高強度のアルミ合金が剪断される。
【0019】
このような本発明の剪断機において、先端刃として、第1ジョー部の先端に配されて剪断対象物に最初に当接する第1ジョー部の厚さよりも小さい刃幅の小口部と、この小口部の両側に配され後端に向かって連続的に刃幅が増加される一対の先端テーパー刃とを備えた切っ先刃と、切っ先刃の先端テーパー刃の後端部の各々の取付部に対して鈍角状に曲折して第1平行剪断刃の各々に亘って互いの距離を離す方向に配された一対のテーパー刃とを備える。
【0020】
このため、第1ジョー部の先端刃の小口部が、剪断対象物に最初に当接して、高強度のアルミ合金を穿設した後に、一対の先端テーパー刃が穿設された孔を広げ、更に引き続く、一対のテーパー刃で切断しながら第1平行剪断刃の幅に広げる。これにより、多数のリベットで結合されたリベット接合部については、小刻みに第1ジョー部を駆動することにより、先端刃の小口部で穿設孔を多数作りながら破断させることができ、リベット接合部領域を通り過ぎた後に、一対のテーパー刃で切断しながら第1平行剪断刃の幅に広げ、第1平行剪断刃及び第2平行剪断刃によって、高強度のアルミ合金が剪断される。
【0021】
本発明の剪断機の第1ジョー部と第2ジョー部とは、開放位置と閉鎖位置との間で相対的に回動するように装備された剪断刃で剪断対象物を剪断するものであればよく、第1ジョー部と第2ジョー部とは各々油圧ピストン・シリンダからなる油圧駆動手段で回動させてもよいし、一方のジョー部のみを1つの油圧駆動手段で回動させてもよい。
【0022】
しかしながら、剪断対象物に対して、先端刃の切っ先を略垂直方向から押圧させることにより、切っ先が押圧箇所から外れることがなく、油圧駆動手段の押圧力を良好に剪断対象物の押圧箇所に集中させるため、第1ジョー部と第2ジョー部との両方を回動させ、第1ジョー部の先端刃の切っ先に対して、第2ジョー部の開閉角度を調節して、厚みのある剪断対象物であっても、先端刃の切っ先を略垂直方向から押圧されるように調整することが好ましい。従って、本発明の油圧駆動システムとしては、より好ましくは、第1ジョー部を回動する第1油圧駆動手段と、前記第2ジョー部を回動する第2油圧駆動手段とを各々備える。
【0023】
本発明の先端刃としては、第1ジョー部の剪断刃として、第1ジョー部の厚さと同じ最大幅を有し、剪断対象物に対して切っ先が侵入するものであればよく、より好ましくは、切っ先刃としては、第1ジョー部の先端に配されて剪断対象物に最初に当接する第1ジョー部の厚さよりも小さい刃幅の小口部と、この小口部の両側に配され後端に向かって連続的に刃幅が増加される一対の先端テーパー刃とを備える。この切っ先刃の先端テーパー刃の後端部には、各々の取付部に対して鈍角状に曲折して前記第1平行剪断刃の各々に亘って互いの距離を離す方向に配された一対のテーパー刃とを備える。これにより、第1ジョー部の厚さよりも小さい幅の小口面と幅受け刃とに油圧駆動システムの押圧力が良好に剪断応力が発生し、高強度のアルミ合金の剪断対象物でも容易に先端刃の切っ先が侵入し、穿設孔が形成される。
【0024】
本発明の先端刃受け刃については、好ましくは、幅受け刃と一対の先端テーパー刃受け刃とからなる切っ先刃受け刃部分が、第1ジョー部に対向する方向に傾斜して配されている。即ち、傾斜角度を先端刃の小口部の押圧方向が剪断対象物に対して垂直となるように調整することにより、切っ先が押圧箇所から外れることがなく油圧の圧力が良好に押圧箇所により集中して成されることができる。
【0025】
尚、本発明の剪断刃の互いに対向する刃の開き角度であるシャー角は、直線状の刃においては、片側の刃物(通常は、可動側の刃物)に角度をつけることで、切断に必要な力を減少し、一方向から連続して切り進むことできれいな切り口を得るようになる。シャー角を大きくすると「最大せん断力」が小さくなり、シャー(切断機)のパワーも小さくできるが、シャー角が大きくなるにつれて、 切断時の曲りやねじれが大きくなったり、板の寸法が切りはじめと切り終わり側で異なってくる等、せん断製品の品質・品位が低下する。
【0026】
更に、本発明の剪断刃の対向する刃のすきま(クリアランス)の大きさによって、切り口の良否や必要なせん断力、側方力などが変化する。せん断機では、切断する板厚やいくらかの鋼種分類でクリアランス値の標準値を示している場合も多いが、被切断材の機械的性質の違いや機械精度、板押さえ力などに切り口の性状(良否)が変わるために、最適なクリアランスを選定する。例えば、20mm板厚に対してその厚さの20%のクリアランスを取る。
【0027】
本発明の大型飛行機解体用剪断機を、自走車両に旋回可能及び伏仰可能に搭載された油圧作動ブームの先端に取付けて大型飛行機用解体作業車とすることができる。
【実施例】
【0028】
図1は本発明の大型飛行機解体用剪断機を備えた飛行機用解体作業車の一実施例の構成を示す説明図である。図2図1に示した大型飛行機解体用剪断機の構成を示す説明図である。図3図2に示した大型飛行機解体用剪断機の第1ジョー部の先端刃の拡大図、側面図及び平面図である。図4図2の第2ジョー部の先端刃受け刃の平面図である。図5図2に示した大型飛行機解体用剪断機の要部の剪断動作を示す説明図である。
【0029】
図1に示す通り、本実施例の大型飛行機用解体作業車10は、自走車両11と、この自走車両11に旋回可能、伏仰可能に搭載された油圧作動ブーム14の先端に取り付けられた解体用剪断機20とからなる。より詳しくは、自走車両11にはエンジン出力又は外部電源から供給される電力で駆動される旋回ステージ12が搭載されている。
【0030】
ステージ12上には、走行時に前向きとなるように運転キャビン13が前部左側に設けられており、また、中央部には油圧作動ブーム14が起伏シリンダ15で起伏可能に枢支されており、ブーム14は先端に油圧ピストン・シリンダからなる油圧駆動手段16で伏仰可能に枢支された解体用剪断機20を有している。また、このステージ12の後方には油圧発生装置17が搭載されている。尚、このブーム14は車両11をトレーラトラック等によって搬送する際には所定の角度に伏仰され、折りたたまれる。
【0031】
図2に示す通り、大型飛行機解体用剪断機20は、図示しない回動手段によって回動するフレーム台を備えたフレーム装置21上で自在に保持される。フレーム装置21は支点22によって油圧作動ブーム14へ傾斜可能に取付けられている。フレーム装置21は運転キャビン13の操縦によって回動手段及び油圧駆動手段16を駆動して様々な角度に回動及び伏仰される。
【0032】
解体用剪断機20は、フレーム装置21のフレーム台上に設置された2つのパネルを備えた本体部23と、本体部23の2つのパネルの間に配された開放位置と閉鎖位置との間で相対的に支点24を中心として回動される第1ジョー部25と第2ジョー部26と、第1ジョー部25を支点24を中心にして回動させる第1油圧駆動手段27と、第2ジョー部26を支点24を中心にして回動させる第2油圧駆動手段28とを備える。
【0033】
第1ジョー部25は、支点24より前方の剪断刃として、剪断対象物に対して最初に切っ先が侵入する先端刃31と、先端刃31の侵入方向に対して鈍角状に曲折して第1ジョー部25の両面に各々配置された一対の第1平行剪断刃33と、第1平行剪断刃取付部に対して鈍角状に曲折して第1ジョー部25の両面に各々配置された一対の第2平行剪断刃34とを備える。
【0034】
第2ジョー部26も、支点24より前方の剪断刃として、第1ジョー部25との相対移動の際に先端刃31と一対の第1平行剪断刃33との全部及び一対の第2平行剪断刃34の各々の一部が通過する先端刃31の外周面を囲むように配された溝部35と、先端刃31が通過する外周囲を囲み第1平行剪断刃領域が通過する以外の領域の溝部35の内壁面に沿って配された先端刃受け刃36と、第1平行剪断刃33の各々が通過する領域の溝部35の内壁面に沿って各々配置された一対の第1平行剪断刃受け刃38と、第2平行剪断刃34の各々が通過する領域の溝部35の内壁面に沿って各々配置された一対の第2平行剪断刃受け刃39とを備える。
【0035】
より詳しくは、図2の第1ジョー部25の先端部は、第1ジョー部25の先端部に着脱可能に取付けられ、図3に示す通り、先端刃31の切っ先は第1ジョー部25の厚さよりも小さい刃幅を有し、剪断対象物に対して当接可能な小口面31aを備える。小口面31aの幅方向の長手辺は、図4に示す通り、第2ジョー部26の先端受け刃36の幅受け刃36aと対向して配置され、これら幅辺同士で剪断することにより、小口面31aが穿設される。
【0036】
小口面31aの両側には一対の先端テーパー刃31bが後端に向うに従って連続的に刃幅が増加されるように配置されており、これら一対の先端テーパー刃31bの外方の稜線部が刃部となり、第1ジョー部25と第2ジョー部26とが回動して交差することにより、一対の先端テーパー刃31bと先端テーパー刃受け刃36bとがすり合わされて剪断対象物が剪断される。
【0037】
尚、先端刃31は、第1ジョー部25への取付ボルト(図示せず)を取り外して、この先端刃31は小口面31aの中心を通る軸で180°回転させることにより、一方の小口面31aの刃及び先端テーパー刃31bが摩耗した場合に、対向する小口面31aの刃及び先端テーパー刃31bと交換することができ、先端刃31の寿命を倍にすることが可能となる。
【0038】
図2及び図3のa図に示す通り、第1ジョー部25の一対の先端テーパー刃31bの各々の後端部には、各々の取付部に対して鈍角状に曲折して後続の第1平行剪断刃33の各々に亘って互いの距離を離す方向に配された一対のテーパー刃32が配置されている。このテーパー刃32の第2ジョー部26の対向位置には、図4に示す通り、テーパー刃受け刃37が備わっている。
【0039】
尚、一対のテーパー刃32、一対の第1平行剪断刃33、一対の第2平行剪断刃34、及びこれらと対向する一対のテーパー刃受け刃37、一対の第1平行剪断刃受け刃38、一対の第2平行剪断刃受け刃39については、直方体状の取り換え可能な刃で構成され、4つの長手辺を剪断刃として構成されているため、個々の取付ボルト(図示せず)を取り外して、個々の剪断刃を取り換えて装着することにより、個々の剪断刃の寿命を4倍とすることが可能となる。
【0040】
第1ジョー部25及び第2ジョー部26の動きとしては、即ち、例えば翼状の剪断対象物50を剪断する場合を説明する。図5のa図に示す通り、開放状態の第1ジョー部25及び第2ジョー部26を徐々に閉塞させていく。この場合、第1ジョー部25の先端刃31の切っ先の小口面31aが剪断対象物50に対して、略垂直方向に押圧するように第1ジョー部25と第2ジョー部26とを調整する(a図)。
【0041】
図5のb図に示す通り、a図に示した状態から第1油圧駆動手段27及び第2油圧駆動手段28とを駆動して、小口面31aを剪断対象物50に侵入させるように押圧する。即ち、図3に示す通り、第1ジョー部25の厚さよりも小さい幅を有し、剪断対象物に対して当接可能な小口面31aを有する先端刃31は略垂直方向から剪断対象物50に当接して第1ジョー部25及び第2ジョー部26を各々の油圧駆動手段27,28で回動するため、押圧力が良好に剪断応力が発生し、高強度のアルミ合金の剪断対象物でも容易に先端刃の切っ先が侵入し、穿設孔が形成される。
【0042】
また、先端刃31の侵入に伴って、穿設孔が徐々に広くなり、先端刃受け刃36の先端テーパー刃受け刃36bで剪断されつつ、図5のb図からc図に示す通り、支点24側の第1平行剪断刃33と第1平行剪断刃受け刃38との剪断によって貫通孔が切り開かれ、図5のd図に示す通り、第2平行剪断刃34と第2平行剪断刃受け刃39との剪断によって剪断対象物50が剪断される。
【0043】
図6は別の実施例の大型飛行機解体用剪断機の構成を示す説明図であり、a図は側面図、b図は先端刃の拡大図、c図は先端刃受け刃の拡大図である。図6に示された実施例の大型飛行機解体用剪断機60では、図2に示した実施例と同様に、解体用剪断機60は、本体部63の2つのパネルの間に配された開放位置と閉鎖位置との間で相対的に支点64を中心として回動される第1ジョー部65と第2ジョー部66とが第1油圧駆動手段67と第2油圧駆動手段68とで回動される。
【0044】
第1ジョー部65は、図2の第1ジョー部25と同様に、先端刃71と一対の第1平行剪断刃73と一対の第2平行剪断刃74とを備える。先端刃61の切っ先には小口面71aと、先端テーパー刃71bとを備える。更に、その後端には、一対のテーパー刃72、一対の第1平行剪断刃73、一対の第2平行剪断刃74を備える。第2ジョー部66はも、第1ジョー部65の先端が通過する溝部75の内壁に、幅受け刃76aと先端テーパー刃受け刃76bとからなる先端刃受け刃76と、テーパー刃受け刃77と、第1平行剪断刃受け刃78と、第2平行剪断刃受け刃79とを備える。
【0045】
このような第2ジョー部66について、幅受け刃76aと一対の先端テーパー刃受け刃76bとからなる先端刃受け刃76部分が、第1ジョー部65に対向する方向に傾斜して配されている。即ち、傾斜角度を先端刃の小口部の押圧方向が剪断対象物に対して垂直となるように調整することにより、切っ先が押圧箇所から外れることがなく油圧の圧力が良好に押圧箇所により集中して成されることができる。
【符号の説明】
【0046】
10 …大型飛行機用解体作業車、
11 …自走車両、
12 …旋回ステージ、
13 …運転キャビン、
14 …油圧作動ブーム、
15 …起伏シリンダ、
16 …油圧駆動手段、
17 …油圧発生装置、
20 、60 …解体用剪断機、
21 …フレーム装置、
22 …支点、
23 、63 …本体部、
24 、64 …支点、
25 、65 …第1ジョー部、
26 、66 …第2ジョー部、
27 、67 …第1油圧駆動手段、
28 、68 …第2油圧駆動手段、
31 、71 …先端刃、
31a、71a…小口面、
31b、71b…先端テーパー刃、
32 、72 …テーパー刃、
33 、73 …第1平行剪断刃、
34 、74 …第2平行剪断刃、
35 、75 …溝部、
36 、76 …先端刃受け刃、
36a、76a…幅受け刃、
36b、76b…先端テーパー刃受け刃、
37 、77 …テーパー刃受け刃、
38 、78 …第1平行剪断刃受け刃、
39 、79 …第2平行剪断刃受け刃、
50 …剪断対象物、
【要約】
【課題】 強度のアルミ合金等を使用した旅客機等の飛行機を解体するに好適な大型飛行機解体用剪断機を得る。
【解決手段】 剪断対象物に対して切っ先が侵入する先端刃と、この先端刃の侵入方向に対して鈍角状に曲折して刃幅両面に配置された一対の第1平行剪断刃と、この第1平行剪断刃取付部に対して鈍角状に曲折して刃幅両面に配置された一対の第2平行剪断刃とを備えた第1ジョー部の剪断刃と、これら剪断刃の受け刃を備えた第2ジョー部の剪断刃とを備え、先端刃として、小口部とこの小口部の両側に後端に向かって刃幅が増加される一対の先端テーパー刃とを備えた切っ先刃と、先端テーパー刃の後端部の取付部に対して鈍角状に曲折して第1平行剪断刃に亘って配された一対のテーパー刃とを備える。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6