(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
箱形のケースと、前記ケースにおける正面側を向く壁部と間隔をあけて配置された表パネルと、前記ケースの前記壁部と前記表パネルとの間に設けられ、それらを互いに固定する複数の支柱部と、雰囲気の熱を検知する熱検知部の設けられた先端部が前記ケースの前記壁部から前記表パネルに向けて突出するように配置された熱検知センサと、を有し、正面視において前記熱検知センサを中心とする円周上に、前記複数の支柱部が互いに間隔をあけて配置された熱式火災警報器において、
互いに隣接された2つの前記支柱部の間に前記円周の内側に沿うように配置され、幅方向が前記熱検知センサを向くように前記ケースの前記壁部又は前記表パネルに立設された板状の複数の導入柱を有し、
前記複数の支柱部が、互いに等間隔に配置され、
前記複数の導入柱が、互いに等間隔に配置され、
前記複数の支柱部は、各々が、互いに隣接する2つの前記導入柱の中間位置に配置されていることを特徴とする熱式火災警報器。
【背景技術】
【0002】
従来の熱式火災警報器として、例えば、箱形のケースに熱検知センサとしてのサーミスタ部が実装された基板回路が収容され、サーミスタ部の先端がケースにおける正面側を向く壁部に設けられた開口から外部に突出して配置された構成のものが知られている。
【0003】
しかしながら、このような火災警報器では、サーミスタ部の先端がむき出しに配置されているので、美観が損なわれ外観上好ましくない。そこで、熱検知センサを目立たないようにした火災警報器が、例えば、特許文献1などに開示されている。
【0004】
特許文献1に開示されている熱式の火災警報器801は、
図8に示すように、ケースとしての箱形の本体810に、熱検知センサ825が実装された回路基板813が収容されている。また、表パネルとしての平板状の整流板830が、本体810における正面側(図中左側)を向く壁部811と間隔をあけて平行に配置されている。そして、熱検知センサ825の先端部825aが、本体810の壁部811に設けられた開口から整流板830に向けて突出して配置されている。この熱式の火災警報器801によれば、整流板830によって壁部811から突出された熱検知センサ825を隠すことで美観を向上させている。
【0005】
また、
図9(a)〜(c)に示す他の熱式の火災警報器901は、正面視円形上の箱形のケース910と、ケース910における正面側(
図9(a)の手前側、(b)の上方側(c)の左方側)を向く壁部911と間隔をあけて平行に配置された円板状の表パネル931と、ケース910の壁部911と表パネル931とを互いに固定する支柱部934a〜934dと、先端部925aがケース910の壁部911から表パネル931に向けて突出された熱検知センサ925と、を有している。熱検知センサの先端部925aは、表パネル931とケース910との間に配置されている。表パネル931における熱検知センサ925の先端部925aが対向する箇所には、火災警報器901の正面側から流動してくる雰囲気を表パネル931とケース910との間の空間Kに取り込んで熱検知センサ925に導く雰囲気取込孔932が設けられている。
【0006】
この火災警報器901によれば、表パネル931によって熱検知センサ925を隠すことで美観を向上させるとともに、表パネル931に雰囲気取込孔932を設けることで正面側から流動してくる雰囲気に対する火災検知速度を確保していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した火災警報器901は、ケース910の壁部911と表パネル931とを互いに固定する4つの矩形板状の支柱部934a〜934dを備えており、これら複数の支柱部934a〜934dは、
図10に示すように、正面視において熱検知センサ925を中心とした円周E上に互いに等間隔にかつ幅方向が熱検知センサ925を向くように配置されている。また、支柱部934a〜934dは、ケース910と表パネル931とを固定するため、それらを支えるための剛性を確保する程度に厚みをもって形成されている。
【0009】
そのため、一の支柱部934aから熱検知センサ925に向かう方向(即ち、熱検知センサ925が一の支柱部934aの下流に位置する方向。以下、「流動方向M」という。)に雰囲気を流動させると、一の支柱部934aにぶつかった気流F1は、該一の支柱部934aによって流動方向Mに直交する方向に分かれたのち、引き続き流動方向Mに向かって進み、熱検知センサ925を避けて通過してしまう。また、一の支柱部934aの両隣の他の支柱部934b、934dは、雰囲気の流動方向Mについて熱検知センサ925と同一位置に配置されており(つまり、流動方向Mに直交する方向に並べて配置されており)、これら他の支柱部934b、934dにぶつかった気流F2、F3も上記と同様に他の支柱部934b、934dによって流動方向Mに直交する方向に分かれたのち、引き続き流動方向Mに向かって進み、熱検知センサ925に向かうことなく通過してしまう。これにより、流動方向Mに雰囲気を流動させたときに、雰囲気が熱検知センサ925付近を流動せず、その結果、特定の方向(具体的には、流動方向M)から雰囲気を流動させたときの火災検知速度が低下してしまうという問題があった。
【0010】
本発明は、かかる問題を解決することを目的としている。即ち、本発明は、特定の方向から雰囲気を流動させたときの火災検知速度の低下を抑制して、いずれの方向から雰囲気が流動してきたときでも火災検知速度を均等にすることができる火災警報器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載された発明は、上記目的を達成するために、箱形のケースと、前記ケースにおける正面側を向く壁部と間隔をあけて配置された表パネルと、前記ケースの前記壁部と前記表パネルとの間に設けられ、それらを互いに固定する複数の支柱部と、雰囲気の熱を検知する熱検知部の設けられた先端部が前記ケースの前記壁部から前記表パネルに向けて突出するように配置された熱検知センサと、を有し、正面視において前記熱検知センサを中心とする円周上に、前記複数の支柱部が互いに間隔をあけて配置された熱式火災警報器において、互いに隣接された2つの前記支柱部の間に前記円周の内側に沿うように配置され、幅方向が前記熱検知センサを向くように前記ケースの前記壁部又は前記表パネルに立設された板状の複数の導入柱を有し、前記複数の支柱部が、互いに等間隔に配置され、前記複数の導入柱が、互いに等間隔に配置され、前記複数の支柱部
は、各々が、互いに隣接する2つの前記導入柱の中間位置に配置されていることを特徴とする熱式火災警報器である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載された発明によれば、ケースにおける正面側を向く壁部と表パネルとを互いに固定する複数の支柱部が、正面視において熱検知センサを中心とする円周上に互いに間隔をあけて配置されている。そして、互いに隣接された2つの支柱部の間に前記円周の内側に沿うように配置され、幅方向が熱検知センサを向くようにケースの壁部又は表パネルに立設された板状の複数の導入柱を有している。そのため、雰囲気を一の支柱部から熱検知センサに向かう方向に流動させたときに、該一の支柱部にぶつかって上記雰囲気の流動方向に直交する方向に分かれた気流が、該一の支柱部に隣接する導入柱によって熱検知センサに向けて導かれる。また、一の支柱部に隣接する他の支柱部に向かう気流についても、該他の支柱部にぶつかる前に該他の支柱部に隣接する導入柱によって熱検知センサに向けて導かれる。これにより、雰囲気が熱検知センサ付近を流動することなく通過してしまうことを回避して、特定の方向から雰囲気を流動させたときの火災検知速度の低下を抑制して、いずれの方向から雰囲気が流動してきたときでも火災検知速度を均等にすることができる。
【0015】
請求項
1に記載された発明によれば、複数の支柱部が、互いに等間隔に配置され、複数の導入柱が、互いに等間隔に配置されている。そのため、複数の支柱部及び複数の導入柱が円周方向に均等に配置され、これにより、特定の方向から雰囲気を流動させたときの火災検知速度の低下をさらに抑制して、いずれの方向から雰囲気が流動してきたときでも火災検知速度をより均等にすることができる。
【0016】
請求項
1に記載された発明によれば、複数の支柱部が、互いに隣接する2つの導入柱の中間位置に配置されている。そのため、複数の支柱部及び複数の導入柱が円周方向により均等に配置され、これにより、特定の方向から雰囲気を流動させたときの火災検知速度の低下をさらに抑制して、いずれの方向から雰囲気が流動してきたときでも火災検知速度をより均等にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態の熱式火災警報器について、
図1〜
図7を参照して説明する。熱式火災警報器は、屋内の天井や天井付近の壁面などに設置されて、雰囲気の熱に基づき火災を検出して警報を行う装置である。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態の熱式火災警報器であって、(a)は正面図であり、(b)は側面図である。
図2は、
図1(a)のX−X線に沿う断面図である。
図3は、
図1の熱式火災警報器が備えるカバー部であって、(a)は斜視図であり、(b)は正面図であり、(c)は側面図である。
図4は、
図1の熱式火災警報器が備える表パネル及びそれと一体の複数の支柱部であって、(a)は正面図であり、(b)は側面図であり、(c)は背面図であり、(d)は、(a)のY−Y線に沿う断面図である。
図5は、
図1(b)のX1−X1線に沿う断面図であって、
図1の熱式火災警報器のケース上を流動する雰囲気の様子を模式的に示す図である。
図6は、
図1(b)のX1−X1線に沿う断面図であって、評価試験における雰囲気の流動方向を模式的に示す図である。
図7は、雰囲気の流動方向と熱応答時間との関係を示すグラフである。
【0020】
図1、
図2に示すように、熱式火災警報器(図中、符号1で示す)は、ケース10と、回路基板20と、熱検知センサ25と、表パネル31と、複数の支柱部34a〜34dと、を備えている。
【0021】
ケース10は、例えば、合成樹脂を材料として正面視略円形の中空箱形に形成されている。ケース10は、背面側のベース11及び正面側のカバー14が組み合わされて構成されている。
【0022】
ベース11は、略円板状に形成された背面壁部12と、背面壁部12の周縁から立設されたベース周壁部13と、を備えている。
【0023】
カバー14は、
図3(a)〜(c)に示すように、正面壁部15と、カバー周壁部18と、を有している。正面壁部15は、円環平板状の周縁部分15aと、周縁部分15aの内縁に段差部15bを設けて一体に連接された円環平板状の中間部分15cと、中間部分15cの内縁にさらに同方向に段差部15dを設けて一体に連接された円形平板状の中央部分15eと、がそれぞれ同心に配置されて構成されている。
【0024】
中央部分15eの中心には、該中央部分15eを貫通して形成されたセンサ挿通孔15fが設けられ、このセンサ挿通孔15fの周縁から正面側(
図3(b)の手前側)に向けて円筒状のセンサ支持部15gが立設されている。
【0025】
正面壁部15の段差部15dと中央部分15eとによって、センサ挿通孔15f及びセンサ支持部15gを囲むケース凹部16が形成されている。
【0026】
中間部分15cには、矩形板状に形成された導入柱17a〜17hが中間部分15cの内縁部に周方向全周にわたって等間隔で立設されている。本実施形態において、複数の導入柱17a〜17hは8本設けられている。これら複数の導入柱17a〜17hは、それぞれ幅方向が中央部分15eの半径方向(後述する円周Eの半径方向)に向けられている。つまり、複数の導入柱17a〜17hは、それぞれの幅方向を中央部分15eの中心に向けて放射状に配置されている。これにより、熱式火災警報器1の外部から流動してきた雰囲気は、導入柱17a〜17hに当たると中央部分15eの中心に向けて誘導される。複数の導入柱17a〜17hは、雰囲気の流動方向を変えるためのものであるため、雰囲気によって折れ曲がらない程度の剛性を確保できればよく、薄く形成することができる。以下の説明において、複数の導入柱17a〜17hについて個々に区別を要しないときは、a〜hの符号を省略して、導入柱17として示す。
【0027】
カバー周壁部18は、正面壁部15の周縁部分15aの外縁から段差部15bと同方向に立設されている。また、カバー周壁部18の内径は、ベース11のベース周壁部13の外径と略同一になるように形成されており、カバー周壁部18とベース周壁部13とには、例えば互いに係止可能な図示しない係止爪部及び係止爪受部などが設けられている。
【0028】
ベース11とカバー14とは、カバー周壁部18の内側にベース周壁部13が挿入されて、カバー周壁部18の内周面とベース周壁部13の外周面とが密に重ねられるとともに、図示しない係止爪部及び係止爪受部が互いに係止することで、一体に組み合わせて固定される。または、このような係止爪部及び係止爪受部に代えて、例えば、図示しないタップねじ及び該タップねじが螺合される固定用ボスなどの固定手段によって、ベース11とカバー14とを一体に組み合わせて固定する構成としてもよい。
【0029】
回路基板20は、表面に配線パターンが形成されたプリント基板上に、後述する熱検知センサ25、及び、熱検知センサ25の出力に基づいて火災を検出して警報を行うための周辺回路を成す電子部品(図示なし)などが実装されて構成されている。回路基板20は、上述したベース11及びカバー14に設けられた複数のリブ19aや複数のボス19bによって、ケース10内に正面壁部15と平行(略平行含む)に固定された状態で収容されている。
【0030】
熱検知センサ25は、例えば、サーミスタなどの熱検知素子を含む熱検知部26が先端部25aに設けられており、この熱検知部26が検知した温度に応じた電圧を出力する電子部品である。熱検知センサ25は、回路基板20におけるカバー14の正面壁部15側を向く面20aに立設して実装されている。また、熱検知センサ25は、先端部25aが正面壁部15のセンサ挿通孔15f及びセンサ支持部15gに挿通されて正面壁部15の外側に突出され、先端部25aを支える柱部25bが、センサ支持部15gによって支持されている。
【0031】
表パネル31は、
図4に示すように、例えば、合成樹脂を材料としてカバー14の正面壁部15における中間部分15cの外径と略同一の外径の円板形状に形成されている。表パネル31の中心には、該表パネル31を貫通する円形の雰囲気取込孔32が設けられている。雰囲気取込孔32は、熱検知センサ25の先端部25aの直径より若干大きい径となるように形成されている。また、表パネル31の裏面31a(カバー14の正面壁部15側を向く面)における雰囲気取込孔32の周囲には、平面視円形状の表パネル凹部33が形成されている。
【0032】
複数の支柱部34a〜34dは、上述した導入柱17より厚みのある矩形板状に形成され、表パネル31と一体に設けられている。複数の支柱部34a〜34dは、表パネル凹部33の周囲に立設されている。本実施形態において、複数の支柱部34a〜34dは4本設けられ、互いに等間隔で配置されている。これら複数の支柱部34a〜34dは、それぞれ幅方向が表パネル31の半径方向(後述する円周Eの半径方向)に向けられている。つまり、複数の支柱部34a〜34dは、それぞれの幅方向を表パネル31の中心に向けて放射状に配置されている。これにより、熱式火災警報器1の外部から流動してきた雰囲気は、複数の支柱部34a〜34dに当たると中央部分15eの中心に向けて誘導される。複数の支柱部34a〜34dは、長さ及び幅ともに上述したカバー14の複数の導入柱17a〜17hより若干大きく形成されている。また、複数の支柱部34a〜34dは、ケース10と表パネル31とを固定するため、それらを支えるための剛性を確保する程度に厚みをもって形成されている。以下の説明において、複数の支柱部34a〜34dについて個々に区別を要しないときは、a〜dの符号を省略して支柱部34として示す。
【0033】
表パネル31は、該表パネル31と一体に設けられた複数の支柱部34a〜34dの先端が、それらに対応してカバー14の中間部分15cに設けられた複数の取付孔15hに嵌合されて、ケース10に固定される。
【0034】
表パネル31とケース10とが複数の支柱部34a〜34dによって固定されると、表パネル31は、カバー14の正面壁部15と平行(略平行含む)に配置される。また、正面壁部15のセンサ挿通孔15fと、熱検知センサ25の先端部25aと、表パネル31の雰囲気取込孔32と、のそれぞれが熱検知センサ25の柱部25bの軸心を通る直線上に並んで配置される。また、複数の支柱部34a〜34dが、正面視において熱検知センサ25を中心とする円周E上に等間隔に配置され、複数の導入柱17a〜17hが、円周Eの内側に沿って等間隔に配置される。つまり、複数の導入柱17a〜17hは、互いに隣接された2つの支柱部の間に配置され、幅方向が熱検知センサ25を向くようにケース10の正面壁部15に立設される。また、複数の支柱部34a〜34dが、互いに隣接する2つの導入柱17の中間位置(具体的には、導入柱17b、17cの中間位置、導入柱17d、17eの中間位置、導入柱17f、17gの中間位置、及び、導入柱17h、17aの中間位置)に配置される。
【0035】
表パネル31は、主に熱検知センサ25を隠すための装飾部材であり、熱式火災警報器1が屋内の天井又は天井付近に設けられて下方から若干の角度をつけて見上げられたときに、熱検知センサ25が視認されない程度の大きさにされている。また、表パネル31は、カバー14の正面壁部15との間に空間Kを形成して、当該空間K内に配置された熱検知センサ25の先端部25aに雰囲気を導く整流部材としても機能する。また、表パネル31は、熱検知センサ25を保護する保護部材としても機能する。
【0036】
次に、上述した熱式火災警報器1の本発明に係る機能(作用)を、
図5を参照して説明する。
【0037】
図5に示すように、一の支柱部34aから熱検知センサ25に向かう方向(即ち、熱検知センサ25が一の支柱部34aの下流に位置する方向。以下、「流動方向M」という。)に雰囲気を流動させると、一の支柱部34aにぶつかった気流F1は、該一の支柱部34aによって流動方向Mに直交する方向に分かれるが、その両隣にある導入柱17a、17hにぶつかって、その進行方向が円周Eの中心方向、つまり、熱検知センサ25に向けられる。また、一の支柱部34aの両隣の他の支柱部34b、34dに向かう気流F2、F3は、これら他の支柱部34b、34dに至る前に、それらに隣接された導入柱17b、17gにぶつかって、その進行方向が円周Eの中心方向、つまり、熱検知センサ25に向けられる。これにより、一の支柱部34から熱検知センサ25に向かう方向に雰囲気を流動させると、熱検知センサ25が一の支柱部34に隠れてしまい、一の支柱部34により雰囲気が熱検知センサ25に直接当たることを妨げられてしまうところ、導入柱17a〜17hによって、雰囲気の進行方向を熱検知センサ25に向けることができ、雰囲気を熱検知センサ25付近に流動させることが可能となる。
【0038】
本実施形態の熱式火災警報器1は、箱形のケース10と、ケース10における正面側を向く正面壁部15と間隔をあけて配置された表パネル31と、ケース10の正面壁部15と表パネル31との間に設けられ、それらを互いに固定する複数の支柱部34a〜34dと、雰囲気の熱を検知する熱検知部26の設けられた先端部25aがケース10の正面壁部15から表パネル31に向けて突出するように配置された熱検知センサ25と、を有し、正面視において熱検知センサ25を中心とする円周E上に、複数の支柱部34a〜34dが互いに間隔をあけて配置されている。そして、互いに隣接された2つの支柱部34の間に円周Eの内側に沿うように配置され、幅方向が熱検知センサ25を向くようにケース10の正面壁部15に立設された矩形板状の複数の導入柱17a〜17hを有している。
【0039】
また、熱式火災警報器1は、複数の支柱部34a〜34dが、互いに等間隔に配置され、複数の導入柱17a〜17hが、互いに等間隔に配置されている。
【0040】
また、熱式火災警報器1は、複数の支柱部34a〜34dが、互いに隣接する2つの導入柱17の中間位置に配置されている。
【0041】
以上より、本実施形態によれば、ケース10における正面側を向く正面壁部15と表パネル31とを互いに固定する複数の支柱部34a〜34dが、正面視において熱検知センサ25を中心とする円周E上に互いに間隔をあけて配置されている。そして、互いに隣接された2つの支柱部34の間に円周Eの内側に沿うように配置され、幅方向が熱検知センサ25を向くようにケース10の正面壁部15に立設された矩形板状の複数の導入柱17a〜17hを有している。そのため、雰囲気を一の支柱部34から熱検知センサ25に向かう方向に流動させたときに、該一の支柱部34にぶつかって上記雰囲気の流動方向に直交する方向に分かれた気流が、該一の支柱部34に隣接する導入柱17によって熱検知センサ25に向けて導かれる。また、一の支柱部34に隣接する他の支柱部34に向かう気流についても、該他の支柱部34にぶつかる前に該他の支柱部34に隣接する導入柱17によって熱検知センサ25に向けて導かれる。これにより、雰囲気が熱検知センサ25付近を流動することなく通過してしまうことを回避して、特定の方向から雰囲気を流動させたときの火災検知速度の低下を抑制して、いずれの方向から雰囲気が流動してきたときでも火災検知速度を均等にすることができる。
【0042】
また、複数の支柱部34a〜34dが、互いに等間隔に配置され、複数の導入柱17a〜17hが、互いに等間隔に配置されている。そのため、複数の支柱部34a〜34d及び複数の導入柱17a〜17hが円周E方向に均等に配置され、これにより、特定の方向から雰囲気を流動させたときの火災検知速度の低下をさらに抑制して、いずれの方向から雰囲気が流動してきたときでも火災検知速度をより均等にすることができる。
【0043】
請求項3に記載された発明によれば、複数の支柱部34a〜34dが、互いに隣接する2つの導入柱17の中間位置に配置されている。そのため、複数の支柱部34a〜34d及び複数の導入柱17a〜17hが円周E方向により均等に配置され、これにより、特定の方向から雰囲気を流動させたときの火災検知速度の低下をさらに抑制して、いずれの方向から雰囲気が流動してきたときでも火災検知速度をより均等にすることができる。
【0044】
以上、本発明について、好ましい実施形態を挙げて説明したが、本発明の熱式火災警報器は上記実施形態の構成に限定されるものではない。
【0045】
例えば、上述した実施形態では、4つの支柱部34a〜34d及び8つの導入柱17a〜17hを備えた構成であったが、これに限定されるものではなく、本発明の目的に反しない限り、複数の支柱部及び複数の導入柱の数は任意である。特に、複数の支柱部34が4つ以下のときは、これらを円周E上に等間隔に配置すると、互いに隣接する2つの支柱部34と円周Eの中心とを結ぶ直線のなす角が90度以上となる。換言すると、互いに隣接する2つの支柱部の円周Eにおける中心角が90度以上となる。この場合、互いに隣接する支柱部34の間隔が、上記中心角が90度未満となる構成に比べてより広くなる。このような構成において複数の導入柱17を設けることで、上述した効果がより顕著に得られる。また、複数の支柱部34及び複数の導入柱17は矩形板状に形成されていることが好ましいが、本発明の目的に反しない限り、それら形状についても任意である。特に、導入柱17は、支柱部34とは異なりケース10と表パネル31とを固定する構造部材ではないため、支柱部34より厚みを小さく(薄く)することができる。
【0046】
また、上述した実施形態では、8つの導入柱17a〜17hがケース10の正面壁部15から表パネル31に向かって立設された構成であったが、これに限定されるものではなく、これら複数の導入柱17は、表パネル31の裏面31aから正面壁部15に向かって立設されていてもよい。
【0047】
また、上述した実施形態では、4つの支柱部34a〜34dが等間隔で配置され、8つの導入柱17a〜17hが等間隔で配置され、4つの支柱部34a〜34dが、互いに隣接する導入柱17の中間位置に配置された構成であったが、これに限定されるものではない。4つの支柱部34a〜34d及び8つの導入柱17a〜17hがそれぞれ間隔をあけて配置されていれば等間隔でなくてもよく、また、4つの支柱部34a〜34dは、互いに隣接する導入柱17の中間位置に配置されていなくてもよい。
【0048】
また、上述した実施形態では、ケース10が正面視略円形状の中空箱形に形成されているものであったが、これに限定されるものではなく、例えば、正面視楕円形状や多角形状など、その内部に警報器に必要な部材を収容できる箱形であれば、本発明の目的に反しない限り、ケースの形状は任意である。
【0049】
また、上述した実施形態では、ケース10のカバー14にケース凹部16が設けられ、表パネル31の裏面31aに表パネル凹部33が設けられた構成であったが、これに限定されるものではなく、ケース凹部16及び表パネル凹部33のいずれか一方、又は、両方を省略した構成であってもよい。
【0050】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の熱式火災警報器の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【0051】
(評価)
本発明者らは、本発明の効果を確認するために、以下の実施例1及び比較例1に示す熱式火災警報器を作成して、以下の評価試験を実施した。
【0052】
(実施例1)
実施例1の熱式火災警報器として、上述した実施形態の熱式火災警報器1を作製した。
【0053】
(比較例1)
比較例1の熱式火災警報器として、上記実施例1の熱式火災警報器において、複数の導入柱17a〜17hを省略した以外は、上記実施例1と同一の構成として作製した。
【0054】
(評価試験)
図6に模式的に示すように、実施例1及び比較例1の熱式火災警報器を、その正面(具体的には、ケース10の正面壁部15等)を下方(図中、手前側)に向けた状態で天井面に設置する。そして、実施例1及び比較例1の熱式火災警報器に、天井面に平行で且つ熱検知センサに向かう風速1メートル毎秒、温度81.25度の気流を方向A〜方向Xまで向きを変えて与えたときの、気流の与え始めから警報までに要した時間(熱応答時間)を計測して、以下の評価基準に基づいて評価を行った。
○・・・熱応答時間の最大値と最小値との差異が10秒以内である。
×・・・熱応答時間の最大値と最小値との差異が10秒超である。
【0055】
(評価結果)
実施例1・・・○
比較例1・・・×
評価結果のグラフを
図7に示す。
図7において、周方向は気流の角度(方向)である。また、半径方向は熱応答時間であり、中心から離れるほど熱応答時間が長いことを示している。
【0056】
図7に示すように、比較例1では、方向A、方向G、方向M、方向Sについて、他の方向に比べて熱応答時間が極端に長くなることが確認された。これら方向A、方向G、方向M、方向Sは、一の支柱部34から熱検知センサ25に向かう方向、即ち、熱検知センサ25が一の支柱部34の下流に位置する方向である。一方、実施例1では、いずれの方向から気流を与えた場合でも、熱応答時間が概ね15秒〜20秒の範囲に含まれており、いずれの方向から雰囲気が流動してきたときでも火災検知速度を均等になることが確認された。つまり、実施例1では、特定の方向(方向A、方向G、方向M、方向S)から雰囲気を流動させたときの火災検知速度の低下を抑制して、いずれの方向から雰囲気が流動してきたときでも火災検知速度が均等になる。
【0057】
このように、実際に熱式火災警報器を用いて行った評価試験においても、本発明の効果を確認することができた。