特許第6353639号(P6353639)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6353639
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】ミシンの拡大鏡
(51)【国際特許分類】
   D05B 87/04 20060101AFI20180625BHJP
【FI】
   D05B87/04
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-171934(P2013-171934)
(22)【出願日】2013年8月22日
(65)【公開番号】特開2015-39518(P2015-39518A)
(43)【公開日】2015年3月2日
【審査請求日】2016年8月12日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002244
【氏名又は名称】蛇の目ミシン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080090
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 邦男
(72)【発明者】
【氏名】横山 潮
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 洋介
(72)【発明者】
【氏名】前田 浩二
【審査官】 西本 浩司
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭48−000138(JP,B1)
【文献】 特開平10−258197(JP,A)
【文献】 特開平03−143479(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D05B 87/04,83/00,79/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミシン本体に装着して上下動する針棒先端に装着された針の先端と布押え付近を拡大視するミシンの拡大鏡において、一端にはレンズを着脱可能に保持する保持手段を有するレンズ保持部を設け、他端にはミシン本体に装着するための装着部を設けた支持腕部と、前記レンズ保持部に対して着脱可能な被接続部と該被接続部に連続して形成されたレンズ部とからなるレンズ本体とからなり、前記支持腕部のレンズ保持部と、前記レンズ本体には、該レンズ本体の回動角度を所定範囲に規制する回動規制手段が具備され、前記レンズ保持部に装着された前記レンズ本体の回動角度を所定範囲に規制し、前記回動規制手段は、前記レンズ保持部側に規制部材が形成され、前記レンズ本体の被接続部には、前記規制部材が遊挿する規制溝部が形成されてなることを特徴とするミシンの拡大鏡。
【請求項2】
ミシン本体に装着して上下動する針棒先端に装着された針の先端と布押え付近を拡大視するミシンの拡大鏡において、一端にはレンズを着脱可能に保持する保持手段を有するレンズ保持部を設け、他端にはミシン本体に装着するための装着部を設けた支持腕部と、前記レンズ保持部に対して着脱可能な被接続部と該被接続部に連続して形成されたレンズ部とからなるレンズ本体とからなり、前記支持腕部のレンズ保持部と、前記レンズ本体には、該レンズ本体の回動角度を所定範囲に規制する回動規制手段が具備され、前記レンズ保持部に装着された前記レンズ本体の回動角度を所定範囲に規制し、前記回動規制手段は、前記レンズ本体の前記被接続部には第1突起と第2突起とが設けられ、前記レンズ本体の回動にて前記第1突起と前記第2突起が前記レンズ保持部に当接することによって回動規制してなることを特徴とするミシンの拡大鏡。
【請求項3】
前記回動規制手段によるレンズ本体の回動範囲はレンズ部が水平状態から垂直状態となる範囲としてなることを特徴とする請求項1又は2に記載のミシンの拡大鏡。
【請求項4】
前記装着部の外周面に形成された被嵌合溝部と、前記ミシン本体の面板に設けられた嵌合弾性板片とが回転可能に嵌合接続され、前記支持腕部は水平面上を回動自在としてなること特徴とする請求項1,2又は3のいずれか1項に記載のミシンの拡大鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミシンに簡単に装着することができると共に、倍率の異なるレンズの交換が可能であり、作業員の視線に沿って水平及び垂直方向の角度調整の自由度を高くしたミシンの拡大鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、家庭用のミシンでは、作業の準備段階として、ミシン針の針孔に糸を通すことが必ず行われる。現在多く使用されているミシンのほとんどのものには、針孔の糸通し装置が備わっているものが多い。しかし、このような糸通し装置が備わっていないミシンも存在し、このようなものでは、手作業で針孔に糸を通さなくてはならない。
【0003】
そのために、この糸通し作業を補助するために、ミシンに装着することができる拡大鏡(レンズ)が必要となる。また、ミシン針の針孔に、糸が通っているか否かを、目視にて判断するときにも拡大鏡が必要である。
【0004】
さらに、ミシン針或いは布押え等の器具の交換作業や、針板周辺の布屑等の清掃を行う際にも、拡大鏡を必要とする場合がある。そしてこのようなミシンに装着可能な拡大鏡が、特許文献1,特許文献2,特許文献3及び特許文献4等に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−267388号公報
【特許文献2】特開2002−18168号公報
【特許文献3】実開平7−9279号公報
【特許文献4】米国特許第3,822,088号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ミシンの作業者は、それぞれの視力、視界は異なることが普通である。したがって、特許文献1乃至特許文献4に開示されているものでは、レンズの位置或いは角度の多少の変更は可能であるが、作業者の満足のゆくものではなかった。また、特許文献4では、レンズの位置や角度調整の自由度は高いものであるが、その構造が複雑であり、しかも装置が比較的大型のものである。
【0007】
特に、特許文献4では、装置が大型であるため、本来のミシンの縫製作業の障害になるおそれも十分にある。そこで、本発明の目的(解決しようとする技術的課題)は、極めて簡単な構造にて、レンズの水平位置及び垂直位置の調整が可能となるミシンの拡大鏡を提供することある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意、研究を重ねた結果、請求項1の発明を、ミシン本体に装着して上下動する針棒先端に装着された針の先端と布押え付近を拡大視するミシンの拡大鏡において、一端にはレンズを着脱可能に保持する保持手段を有するレンズ保持部を設け、他端にはミシン本体に装着するための装着部を設けた支持腕部と、前記レンズ保持部に対して着脱可能な被接続部と該被接続部に連続して形成されたレンズ部とからなるレンズ本体とからなり、前記支持腕部のレンズ保持部と、前記レンズ本体には、該レンズ本体の回動角度を所定範囲に規制する回動規制手段が具備され、前記レンズ保持部に装着された前記レンズ本体の回動角度を所定範囲に規制し、前記回動規制手段は、前記レンズ保持部側に規制部材が形成され、前記レンズ本体の被接続部には、前記規制部材が遊挿する規制溝部が形成されてなるミシンの拡大鏡としたことにより、上記課題を解決した。
【0009】
請求項2の発明を、ミシン本体に装着して上下動する針棒先端に装着された針の先端と布押え付近を拡大視するミシンの拡大鏡において、一端にはレンズを着脱可能に保持する保持手段を有するレンズ保持部を設け、他端にはミシン本体に装着するための装着部を設けた支持腕部と、前記レンズ保持部に対して着脱可能な被接続部と該被接続部に連続して形成されたレンズ部とからなるレンズ本体とからなり、前記支持腕部のレンズ保持部と、前記レンズ本体には、該レンズ本体の回動角度を所定範囲に規制する回動規制手段が具備され、前記レンズ保持部に装着された前記レンズ本体の回動角度を所定範囲に規制し、前記回動規制手段は、前記レンズ本体の前記被接続部には第1突起と第2突起とが設けられ、前記レンズ本体の回動にて前記第1突起と前記第2突起が前記レンズ保持部に当接することによって回動規制してなるミシンの拡大鏡としたことにより、上記課題を解決した。
【0010】
請求項3の発明を、前記回動規制手段によるレンズ本体の回動範囲はレンズ部が水平状態から垂直状態となる範囲としてなる請求項1又は2に記載のミシンの拡大鏡としたことにより、上記課題を解決した。
【0011】
請求項4の発明を、前記装着部の外周面に形成された被嵌合溝部と、前記ミシン本体の面板に設けられた嵌合弾性板片とが回転可能に嵌合接続され、前記支持腕部は水平面上を回動自在としてなる請求項1,2又は3のいずれか1項に記載のミシンの拡大鏡としたことにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明では、支持腕部のレンズ保持部には、水平軸に対して回動自在となるように着脱自在とした被接続部を有するレンズ本体が装着され、前記レンズ保持部には前記レンズ本体を保持する保持手段が具備されたものである。前記支持腕部とレンズ本体には、該レンズ本体の回動角度を所定範囲に規制する回動規制手段が具備されている。
【0013】
そして、この回動規制手段による規制範囲を、あらかじめ、ミシン針や、該ミシン針を装着される針棒等との位置が相互に干渉しないように設定することにより、ミシン本体の下動する針棒先端に装着された針の先端と、布押え付近を拡大視するという目的のみならず、初心作業者の縫製作業における作業中の針の折損による怪我等の事故を防止し、安全性を確保することができる。
【0014】
また、レンズ本体は、支持腕部のレンズ保持部に、水平軸に対して回動自在となるようにしているので、レンズ本体は、水平軸に対して、所望の角度に設定することができ、作業者にとって、最適な傾斜角度に設定することにより、針孔の糸通しを行い易くすることができる。
【0015】
さらに、支持腕部とレンズ本体とは、着脱自在とした構造であり、縫製作業にかかるときは、レンズ本体を支持腕部から取り外すことで、通常のミシンの作業スペースを確保することができる。なお、保持手段は、レンズを着脱自在に装着することができるもので、前記保持手段に適応する被接続部を備えたレンズであるならば交換が自由にできるものある。
【0016】
さらに、請求項1の発明では、回動規制手段は、前記レンズ保持部側に規制部材が形成され、前記レンズ本体の被接続部には、前記規制部材が遊挿する規制溝部が形成される構成としたことで、極めて簡単な構成にて回動角度の規制を行うことができる。特に、前記規制部材として、軸状のピン材を使用することにより、簡易な構造の回動規制手段にすることができる。
【0017】
請求項2の発明では、回動規制手段は、前記レンズ本体の被接続部外周部に前記レンズ保持部に突起部を形成するのみで、レンズ保持部側には何ら加工する必要がなく、極めて簡単に回動規制手段を構成することができる。
【0018】
請求項3の発明では、回動規制手段によるレンズ本体の回動範囲はレンズ部が水平状態から垂直状態となる範囲としたことにより、レンズ本体がミシン本体の他の部分との干渉を防止することができる。具体的には、レンズ本体が垂直状の位置にて回動が停止するので、レンズ本体が針棒に装着された針と接触することを防止できる。
【0019】
また、レンズ本体が水平状のときに回動が停止するので、ミシン本体に備わっている操作ボタン等を塞いでしまうことを防止することができる。さらに、レンズ部が水平状態から垂直状態となる範囲としたことにより、この範囲内は、レンズ部は目標となる針先の針孔の部分を最も見易い位置であり、適正な回動角度を設定し易いものである。
【0020】
請求項4の発明を、装着部の外周面に形成された溝部と、前記ミシン本体の面板に設けられた嵌合弾性板片とが回転可能に嵌合接続され、前記支持腕部は水平面上を回動自在としたことにより、本発明の拡大鏡をミシン本体に極めて簡易且つ迅速に装着することができ、縫製作業全体の作業効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】(A)はミシン本体に本発明の拡大鏡を装着した状態の斜視図、(B)は(A)の(Q1)部拡大図、(C)は(B)のY1−Y1矢視拡大断面図である。
図2】(A)は本発明の平面図、(B)は本発明の分解斜視図である。
図3】(A)は図2(A)の(Q2)部の拡大断面図、(B)は図2(A)の(Q2)部の支持腕部とレンズ本体とを分離した拡大断面図である。
図4】(A)はレンズ本体の平面図、(B)は(A)のY2−Y2矢視図、(C)は(A)のY3−Y3矢視断面図である。
図5】(A)は支持腕部に装着されたレンズ本体が回動する状態を示す要部縦断側面図、(B)は(A)の(Q3)部においてレンズ本体が垂直状態である拡大図、(C)は(A)の(Q3)部においてレンズ本体が傾斜した拡大図、(D)は(A)の(Q3)部においてレンズ本体が水平状態となった拡大図である。
図6】(A)は回動規制手段の別の実施形態における支持腕部に装着されたレンズ本体が回動する状態を示す要部縦断側面図、(B)は(A)の(Q4)部においてレンズ本体が垂直である拡大図、(C)は(A)の(δ)部においてレンズ本体が傾斜した拡大図、(D)は(A)の(Q4)部においてレンズ本体が水平状態となった拡大図である。
図7】(A)はミシン面板に本発明の拡大鏡を装着しようとする斜視図、(B)は(A)の(Q5)部拡大図、(C)は(B)のY4−Y4矢視断面図である。
図8】(A)はミシン針が針板付近に位置した状態のミシン針を拡大鏡を介して目視している状態の一部切除した側面図、(B)はミシン針が高い位置に移動した状態のミシン針を拡大鏡を介して目視している状態の一部切除した側面図、(C)はレンズ本体を介して拡大されたミシン針の針孔に糸が通されている状態図である。
図9】(A)は拡大鏡をミシン正面に位置させてミシン針に糸が通されている状態を確認している状態の一部省略した平面図、(B)は(A)のレンズ本体より見たミシン針の先端図、(C)は拡大鏡をミシン正面に対して斜め方向に位置させてミシン針に糸が通されている状態を確認している状態の一部省略した平面図、(D)は(C)のレンズ本体より見たミシン針の先端図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本発明は、図1(B),図2図3等に示すように、支持腕部Aと、レンズ本体Bとから構成される。前記支持腕部Aは、図2(A),(B)に示すように、レンズ保持部2,装着部3とから構成される。またレンズ本体Bは、レンズ部5と被接続部6とから構成される〔図2(B),図4等参照〕。
【0023】
支持腕部Aは、薄板金属材から形成され、平面から見て、直線状腕片11と傾斜状腕片12とから構成されている。該傾斜状腕片12は、前記直線状腕片11に対して、水平面上にて適宜の角度を有して傾斜形成されている〔図1(B),図2参照〕。
【0024】
支持腕部Aの傾斜状腕片12の長手方向の一端側にレンズ保持部2が形成され、長手方向の他端側に装着部3が形成されている(図2参照)。具体的には、支持腕部Aの傾斜状腕片12にレンズ保持部2が設けられ、直線状腕片11の端部箇所に装着部3が垂直状に設けられる〔図1(B),図2(B),図7等参照〕。
【0025】
前記レンズ保持部2は、レンズ本体Bの被接続部6が着脱自在に接続される構成となっている(図3参照)。レンズ保持部2の具体的な構造は、保持枠21が形成され、該保持枠21は、主枠片21a,第1側片21b及び第2側片21cとから構成される〔図1(B),図2図3参照〕。
【0026】
前記主枠片21aは、略長方形の板片であり、前記支持腕部Aの傾斜状腕片12の端部から外方且つ上方に傾斜状に形成されている〔図2(B),図5等参照〕。また、前記主枠片21aの長手方向両端には、第1側片21bと第2側片21cとが、前記主枠片21aと直角(略直角も含む)をなすようにして折曲形成されている(図2図3参照)。前記保持枠21の第1側片21bには、軸貫通孔21dが形成され、第2側片21cの内面側には、円形座板21eが形成されている。
【0027】
レンズ保持部2には、保持手段4が具備されている。保持手段4は、主に保持軸41と、つまみ42と、弾性部材43とから構成される(図2図3参照)。保持軸41は、軸方向の一端に円錐形状の押圧先端部41aが形成され、軸方向他端に枢支ピン41bが挿入される。つまみ42は、前記枢支ピン41bを介して保持軸41に連結される。
【0028】
つまみ42は、レバー部42aと2つの挟持片42b,42bとからなる〔図1(B),図2(B)等参照〕。レバー部42aは、略三角形状に形成されている。挟持片42bは、略半円状又は、略「U」字形状に形成され、幅方向両側は平坦面に形成されている(図2図3参照)。
【0029】
両挟持片42b,42bは、平行状態で対向する二股状の部分である〔図2(B)参照〕。両挟持片42b,42b間には、保持軸41の軸方向他端が配置され、前記枢支ピン41bによって、つまみ42と保持軸41とが枢支連結される(図2図3参照)。つまみ42は、前記枢支ピン41bを回動中心として、保持軸41に対して回動自在である〔図2(A),図3参照〕。
【0030】
それぞれの挟持片42bにおける枢支ピン41bの装着位置は、前記レバー部42aと挟持片42bを上下方向に配置した状態〔図2(A),図3参照〕を、つまみ42の垂直方向とすると、前記挟持片42bの垂直方向線に対していずれかの側に偏心して連結される(図3参照)。両挟持片42b,42bの外周側面は円弧状に形成され、前記保持枠21の第1外側片21bの外面側に当接する〔図2(A),図3参照〕。
【0031】
弾性部材43は、具体的にはコイルスプリングが使用される〔図2(B),図3参照〕。コイルスプリングとした弾性部材43には、前記保持軸41が貫通する(図3参照)。保持軸41の押圧先端部41aが保持枠21の内方側(主枠片21aと第1側片21bと第2側片21cとで包囲された内部側)に入り込むようにして、第1側片21bの軸貫通孔21dに遊挿される〔図2(B),図3参照〕。
【0032】
前記つまみ42は、枢支ピン41bを回動中心として略180度に亘って回動させることで、保持軸41は軸貫通孔21dを出入するようにして軸方向に移動する(図3参照)。保持軸41の押圧先端部41a側には座金44が装着され、該座金44は留輪45にて固定される。そして、前記弾性部材43は、前記保持枠21の第1側片21bと、前記座金44との間に配置される(図2図3参照)。
【0033】
該座金44と共に保持軸41の押圧先端部41aは、弾性部材43によって、常時、第2側片21c側方向に向かって弾性付勢される。つまみ42は、枢支ピン41bを中心にして180度だけ往復回動させることにより、保持軸41は、軸貫通孔21dを往復移動する(図3参照)。
【0034】
装着部3は、柱状軸部31の上端付近に被嵌合溝部32が形成されている〔図1(B),図2及び図7参照〕。装着部3は、ミシン本体8の面板81に形成された被装着部Cに嵌合状態で装着される(図7参照)。該被装着部Cは、抱持片82,82と嵌合弾性板片83とから構成され、具体的には、前記面板81の内面側には、2個の抱持片82,82が形成され、両抱持片82,82の間に嵌合弾性板片83が装着されている(図7参照)。
【0035】
嵌合弾性板片83には、嵌合屈曲部83aが形成され、前記柱状軸部31の被嵌合溝部32と嵌合しつつ支持腕部Aを面板81に装着することができる〔図7(C)参照〕。これによって、支持腕部Aは、柱状軸部31を中心として水平面上を回動することができる〔図9(A),(C)参照〕。また、前記支持腕部Aの中間箇所には、操作片13が形成されている。該操作片13は、略円板状に形成されており、作業者の指でつまみ易い形状となっている〔図1(B),図2参照〕。
【0036】
レンズ本体Bは、プラスチック又はアクリル樹脂等の合成樹脂にて一体形成されたものであり、レンズ部5と被接続部6とから構成される(図2図4参照)。レンズ部5は、角が円弧状とした長方形状に形成されたものである。そして、被接続部6は、前記支持腕部Aのレンズ保持部2に保持手段4を介して着脱自在に装着されるものである。
【0037】
被接続部6は、前記レンズ部5の長手方向の一端側から外方に突出するように連続形成されたものであり、円筒部61,差込み溝部62によって形成される(図2図3参照)。円筒部61は、直径中心位置に軸芯孔61aが形成されている。前記差込み溝部62は、円筒部61の軸方向に対して直交するように形成される〔図2(D)参照〕。差込み溝部62には、前記支持腕部Aのレンズ保持部2を構成する第2側片21cが挿入可能な溝幅を有している(図3参照)。
【0038】
また、軸芯孔61aの外方側の開口には、前記保持手段4の保持軸41の押圧先端部41aが挿入可能であり、また前記差込み溝部62の軸芯孔61aには、前記保持枠21の第2側片21cに形成された円形座板21eが挿入する構造となっている〔図1(B),図3参照〕。
【0039】
次に、支持腕部Aのレンズ保持部2に、レンズ本体Bを装着する行程について図3に基づいて説明する。まず、支持腕部Aのレンズ保持部2におけるつまみ42を回動させて、保持軸41を保持枠21の外側に最大限引き出す〔図3(B)参照〕。
【0040】
この状態で、レンズ本体Bの被接続部6を、保持枠21内の保持軸41の押圧先端部41aと、第2側片21cとの間に配置する。このとき円筒部61の軸方向は、保持軸41の押圧先端部41aと、第2側片21cとを結ぶ線状に一致している。また、第2側片21cは、円筒部61の差込み溝部62に挿入し、且つ円形座板21eは、軸芯孔61aに挿入する状態となる〔図3(A)参照〕。
【0041】
そして、前記つまみ42を180度回動させると、弾性部材43の弾性力によって、保持軸41が保持枠21の内方側で且つ第2側片21c側に向かって移動する。これによって、保持軸41の押圧先端部41aが円筒部61の軸芯孔61aの開口に挿入し、円筒部61の外端側の軸芯孔61aの開口と、差込み溝部62との間が、前記保持軸41の押圧先端部41aと、第2側片21cとによって弾性的な圧力を有して挟持されることになる〔図3(A)参照〕。
【0042】
このように、支持腕部Aのレンズ保持部2と保持手段4とによって、レンズ本体Bは、支持腕部Aにおける水平軸Lに対して回動自在となる〔図1(B),(C)図2(A),図5等参照〕。また、前記弾性部材43の弾性付勢力によって、円筒部61は軸方向の外端と差込み溝部62との間が弾性的な圧力を有して挟持されることになる。
【0043】
したがって、レンズ本体Bのレンズ部5は、任意の位置に留まって、停止状態を維持することができる。つまり、作業者は、レンズ部5を所望の傾斜角度にて、使用することができる。
【0044】
また、支持腕部Aからレンズ本体Bを外して分離するときには、つまみ42を、レンズ本体Bを装着した状態から180度回動させることで、レンズ本体Bの円筒部61の外端開口を押圧している保持軸41を保持枠21の外側に引き出す。これによって、レンズ本体Bの円筒部61は、保持手段4による保持状態から開放され、支持腕部Aから分離することができる。
【0045】
次に、回動規制手段7について説明する。該回動規制手段7は、支持腕部Aに対して、レンズ本体Bの回動を規制する役目をなすものである。作業者は、この回動規制手段7によって規制された、レンズ本体Bの回動範囲内で、レンズ本体Bを水平軸Lに対して、回動させ、作業者が最も作業状態を確認し易い傾斜角度に設定するものである〔図1(A),図5参照〕。
【0046】
具体的には、回動規制手段7によって設定された回動範囲内を、レンズ本体Bのレンズ部5を垂下状から水平状の間にわたって設定し、作業者にとって、最も適正な位置で停止させて、ミシン針84の針孔84aに糸nを通す作業を容易にしたり、或いは縫いの状態を確認する。また、レンズ本体Bの回動範囲を規制することによって、レンズ部5が垂下状態を超えて、レンズ部5がミシン針84の位置に接近しすぎて位置的に干渉することを防止する役目もなす。
【0047】
回動規制手段7には、複数の実施形態が存在し、その第1実施形態としては、規制ピン71と規制溝72とから構成される〔図1(C),図2(B),図3図5等参照〕。規制ピン71は、前記支持腕部Aの保持枠21の主枠片21aの内方側に突出するように形成される〔図1(C),図2(B),図3図5参照〕。
【0048】
また、前記レンズ本体Bの円筒部61の中間位置に規制溝72が形成される。該規制溝72は、円筒部61の円周方向に沿って、所定の範囲の角度θ1にて形成される〔図1(C),図4(C)参照〕。この規制溝72の角度θ1に対してレンズ本体Bは角度θ2だけ回動することができる〔図1(C),図5参照〕。
【0049】
具体的には、規制溝72の周方向における両終端を、第1終端部72aと第2終端部72bとする。そして、第1終端部72aと第2終端部72bとのなす角度がθ1である。ここで、角度θ1を90度とすると、レンズ本体Bの回動範囲の角度θ2は、水平軸Lに対して90度となる〔図1(C),図5参照〕。
【0050】
そして、規制溝72に挿入する規制ピン71が第1終端部72aと当接するときの状態を、レンズ本体Bが垂下状となるように設定し〔図5(B)参照〕、前記規制ピン71が規制溝72の第2終端部72bと当接するときには、レンズ部5は水平状となるように設定する〔図5(D)参照〕。
【0051】
このように設定することで、レンズ本体Bは垂下状から水平状の間で回動することができる〔図5(A),(B),(D)参照〕。また、レンズ部5が傾斜状となる場合には、規制ピン71と、規制溝72の第1終端部72a或いは第2終端部72bとは、当接せずにその中間に位置することができる〔図5(C)参照〕。
【0052】
次に、回動規制手段7の第2実施形態としては、円筒部61の外周に第1突起73aと第2突起73bとが設けられたものである(図6参照)。前記第1突起73a及び第2突起73bは、円筒部61の外周面から外方に向かって突出形成された部位であって、円筒部61が回動することによって、保持枠21の主枠片21aに当接し、この当接した状態において円筒部61がそれ以上同方向に回動することができないストッパーとしての役目をなすものである。
【0053】
そして、レンズ本体Bのレンズ部5が垂下状となるときには第1突起73aが支持腕部Aの保持枠21の主枠片21aに当接し〔図6(B)参照〕、レンズ部5が水平状となるときには第2突起73bが主枠片21aに当接するように設定する〔図6(D)参照〕。このように、レンズ本体部Bの円筒部61に第1突起73aと第2突起73bを設けるのみで、支持腕部Aには、前記規制ピン71は不要となり、回動規制手段7を簡単な構成にすることができる。
【0054】
次に、本発明の具体的な使用法について説明する。支持腕部Aは、装着部3を介してミシン本体8の面板8に装着する。作業者は、自分の視力に適応する倍率のレンズ本体Bを複数個の中から選択して、支持腕部Aに装着する。
【0055】
作業者の目の高さ位置等に合わせて、レンズ部5の傾斜角度を設定する(図6参照)。特に、ミシン針84の高さ位置は、状況により変化するものであるが、その高さに応じてレンズ部5の傾斜角度を適宜変更し〔図8(A),(B)参照〕、ミシン針84の針孔84aの位置を拡大して見ることができる〔図8(C)参照〕。
【0056】
本発明は、レンズ本体Bがミシン本体8の正面側に位置させることが多い〔図9(A),(B)参照〕。しかし、必要に応じてミシン本体8の正面に対して僅かに斜め側の位置にレンズ本体Bを設定し、ミシン針84の針孔84aを拡大して見ることにより、糸nが針孔84aに確実に通っているか否かを確認することもできる〔図9(C),(D)参照〕。また、このように使用することで、針孔84aに糸nを通す作業のみではなく、ミシン針84或いは布押え85の交換作業等にも有効である。
【符号の説明】
【0057】
A…支持腕部、B…レンズ本体、2…レンズ保持部、21…保持枠、3…装着部、
32…被嵌合溝部、4…保持手段、41…保持軸、42…つまみ、43…弾性部材、
5…レンズ部、6…被接続部、62…差込み溝部、7…回動規制手段、71…規制ピン、
72…規制溝部、8…ミシン本体、81…面板、83…嵌合弾性板片、84…ミシン針、
84a…針孔。
図1
図2
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