特許第6353650号(P6353650)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6353650手で操縦される作業機用の気化器および手で操縦される作業機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6353650
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】手で操縦される作業機用の気化器および手で操縦される作業機
(51)【国際特許分類】
   F02M 9/08 20060101AFI20180625BHJP
   F02M 19/00 20060101ALI20180625BHJP
   F02M 9/12 20060101ALI20180625BHJP
   F02B 63/02 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   F02M9/08 A
   F02M19/00 Q
   F02M19/00 Z
   F02M9/12 C
   F02B63/02
【請求項の数】17
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-262341(P2013-262341)
(22)【出願日】2013年12月19日
(65)【公開番号】特開2014-122631(P2014-122631A)
(43)【公開日】2014年7月3日
【審査請求日】2016年11月17日
(31)【優先権主張番号】10 2012 025 321.4
(32)【優先日】2012年12月22日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】598052609
【氏名又は名称】アンドレアス シュティール アクチエンゲゼルシャフト ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100091867
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 アキラ
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】カイ オッペンレンダー
(72)【発明者】
【氏名】アントーニオ ファットルッソ
(72)【発明者】
【氏名】イェルク アマン
(72)【発明者】
【氏名】アルネ ゲッツェル
【審査官】 種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−069767(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 9/08
F02B 63/02
F02M 9/12
F02M 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手で操縦される作業機用の気化器であって、気化器ローラ(37)を回転軸線(76)のまわりに回転可能に支持する気化器ケース(40)を備え、前記気化器ローラ(37)に、前記気化器(36)の燃料穴(90)内へ突出しているニードル(48)が固定され、前記気化器ローラ(37)に対する前記ニードル(48)の位置を位置調整要素(49)を介して調整可能であり、前記位置調整要素(49)が、該位置調整要素(49)を変位させるために工具を係合させることのできる係合輪郭部(52)を有し、該係合輪郭部(52)が、周壁(54)によって画成されている凹部(53)内に配置されている前記気化器において、
前記気化器(36)が、補助工具を係合させるための保持輪郭部(19)を有し、該保持輪郭部(19)は、前記気化器ローラ(37)と相対回転不能に結合され、回転可能に支持されている前記気化器ローラ(37)を固定し、該保持輪郭部(19)に対して前記位置調整要素(49)を相対移動させることを可能にし、その結果前記気化器ローラ(37)が一緒に回転することなく、該気化器ローラ(37)に対する前記ニードル(48)の相対位置の調整が可能であること、
前記保持輪郭部(19)が前記周壁(54)に配置されていること、
前記保持輪郭部(19)のどの位置においても該保持輪郭部(19)と前記回転軸線(76)との間隔(g)が10mmよりも小さいこと、
を特徴とする気化器。
【請求項2】
前記保持輪郭部(19)が前記周壁(54)の端面に配置されていることを特徴とする、請求項に記載の気化器。
【請求項3】
前記保持輪郭部(19)の周壁(54)の外径(c)が15mmよりも小さいことを特徴とする、請求項1または2に記載の気化器。
【請求項4】
前記周壁(54)の、前記凹部(53)とは逆の側の外面(91)に、スタート装置の一部であるロック要素が配置されていることを特徴とする、請求項からまでのいずれか一つに記載の気化器。
【請求項5】
前記周壁(54)が円形横断面を有していることを特徴とする、請求項からまでのいずれか一つに記載の気化器。
【請求項6】
前記周壁(54)と前記係合輪郭部(19)との間の間隔(d)が最大で2.5mmであることを特徴とする、請求項からまでのいずれか一つに記載の気化器。
【請求項7】
前記保持輪郭部(19)が少なくとも1つの歯(56)を有していることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか一つに記載の気化器。
【請求項8】
前記保持輪郭部(19)が少なくとも1つの第1の側面部(69)を有し、該第1の側面部(69)が前記気化器ローラ(37)の前記回転軸線(76)と10゜よりも小さな角度を成していることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか一つに記載の気化器。
【請求項9】
前記第1の側面部(69)がアイドリング位置(88)からフルスロットル位置(89)への前記気化器ローラ(37)の回転方向(72)とは逆の方向に方向づけられていることを特徴とする、請求項に記載の気化器。
【請求項10】
前記保持輪郭部(19)が少なくとも1つの第2の側面部(70)を有し、該第2の側面部(70)が前記気化器ローラ(37)の前記回転軸線(76)と20゜ないし70゜の角度(α)を成していることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか一つに記載の気化器。
【請求項11】
前記係合輪郭部(52)が特殊工具(80)を用いて変位可能な特殊輪郭部であることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか一つに記載の気化器。
【請求項12】
内燃エンジン(20)のために燃料と燃焼空気とを供給するための気化器(36)が配置されているケーシング(2)を備えた、手で操縦される作業機であって、前記気化器(36)が気化器ケース(40)を有し、該気化器ケース(40)内に気化器ローラ(37)が回転軸線(76)のまわりに回転可能に支持され、前記気化器ローラ(37)に、前記気化器(36)の燃料穴(90)内へ突出しているニードル(48)が固定され、前記気化器ローラ(37)に対する前記ニードル(48)の位置を位置調整要素(49)を介して調整可能であり、前記位置調整要素(49)が、該位置調整要素(49)を変位させるために工具を係合させることのできる係合輪郭部(52)を有し、該係合輪郭部(52)が、周壁(54)によって画成されている凹部(53)内に配置されている前記作業機において、
前記気化器(36)が、補助工具を係合させるための保持輪郭部(19)を有し、該保持輪郭部(19)は、前記気化器ローラ(37)と相対回転不能に結合され、回転可能に支持されている前記気化器ローラ(37)を固定し、該保持輪郭部(19)に対して前記位置調整要素(49)を相対移動させることを可能にし、その結果前記気化器ローラ(37)が一緒に回転することなく、該気化器ローラ(37)に対する前記ニードル(48)の相対位置の調整が可能であること、
前記保持輪郭部(19)が前記周壁(54)に配置されていること、
前記保持輪郭部(19)のどの位置においても該保持輪郭部(19)と前記回転軸線(76)との間隔(g)が10mmよりも小さいこと、
を特徴とする作業機。
【請求項13】
前記保持輪郭部(19)が前記周壁(54)の端面に配置されていることを特徴とする、請求項12に記載の作業機。
【請求項14】
前記ケーシング(2)が前記保持輪郭部(19)にアクセスするためのケーシング開口部(18)を有し、前記保持輪郭部(19)と前記ケーシング開口部(18)との間にスリット(78)が形成されていることを特徴とする、請求項12または13に記載の作業機。
【請求項15】
前記スリット(78)の最大幅(f)が7mmよりも小さく、前記スリット(78)の前記幅(f)は前記気化器ローラ(37)の前記回転軸線(76)に対し垂直な平面内で測ったものであることを特徴とする、請求項14に記載の作業機。
【請求項16】
前記スリット(78)の最大幅(f)が前記係合輪郭部(52)の径(a)よりも小さく、前記スリット(78)の前記幅(f)は前記気化器ローラ(37)の前記回転軸線(76)に対し垂直な平面内で測ったものであることを特徴とする、請求項14または15に記載の作業機。
【請求項17】
前記スリット(78)は、7mm径の丸棒を該スリット(78)に差し込みできないように構成されていることを特徴とする、請求項14から16までのいずれか一つに記載の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手で操縦される作業機用の気化器および手で操縦される作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1から、燃料穴内での気化器ニードルの位置を位置調整ねじを介して調整可能にした、手で操縦される作業機用の気化器が知られている。位置調整ねじは凹部内に配置され、周壁によって取り囲まれている。
【0003】
周壁と位置調整要素との間の間隔を小さくして、位置調整要素を調整ために設けられた特殊工具を用いなければ調整できないようにすることが知られている。調整は特に製造時および保守時に行う必要がある。これによって操作者による誤調整が避けられる。
【0004】
気化器ローラに対するニードルの相対位置は、作業機の製造時に幾何学的観点に従って調整される。気化器ローラに対するニードルの実際の相対位置は製造公差に依存しており、その結果作動中に内燃エンジンに供給される燃料供給量は公差の位置に応じて気化器ごとに異なっていることがある。可能なすべての公差組み合わせに対して内燃エンジンの優れた回転挙動を確保するには、気化器を比較的燃料濃厚に調整しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−068772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、優れた回転挙動と少ない排ガス値とを有する、手で操縦される作業機を提供することである。本発明の他の課題は、燃料消費量を少なくして内燃エンジンの優れた回転挙動を可能にする、手で操縦される作業機用の気化器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1の構成を備えた気化器によって解決される。手で操縦される作業機に関しては、前記課題は請求項12の構成を備えた、手で操縦される作業機によって解決される。
【0008】
保持輪郭部は、回転可能に支持されている気化器ローラを固定すること、該保持輪郭部に対して位置調整要素を相対移動させることを可能にする。気化器ローラを固定することにより、気化器ローラが一緒に回転することなく、気化器ローラに対するニードルの相対位置の調整が可能である。保持輪郭部の固定は、簡潔に構成された補助工具を介して行うことができる。気化器ローラが位置調整要素を調整するための保持輪郭部を介して簡単に固定できることにより、作動中にもすなわち内燃エンジンが回転しているときにもニードルの調整が可能である。これによって特に正確な調整を達成できる。この場合調整は手動でも自動でも行うことができる。保持輪郭部を介して気化器ローラを、ニードルを位置調整するために有利には気化器ローラのアイドリング位置で保持することができる。しかし、保持輪郭部を介して、気化器ローラの所定の回転位置を調整し、この回転位置に対して気化器ローラに対するニードルの位置を調整することも可能である。これにより特に正確な位置調整が可能になる。正確な位置調整により、内燃エンジンの排ガス値を少なくさせることができる。燃料穴内でのニードルの位置の純粋に幾何学的な調整の際には考慮することができない製造公差は、保持輪郭部によって可能になる、内燃エンジンの作動中でのニードルの位置調整の際に、補正することができる。
【0009】
気化器の調整は、気化器が手で操縦される作業機に取り付けられている場合に有利に行われる。それ故、保持輪郭部は外部から、すなわち作業機のケーシングを通じてアクセス可能である。作動中に汚染されることが多い手で操縦される作業機に対しては、ケーシングの外被が十分に閉じていることが望ましい。それにもかかわらず気化器の調整を作動中に可能にするため、本発明によれば、保持輪郭部を気化器ローラの回転軸線付近に配置する。保持輪郭部と回転軸線との間隔は、保持輪郭部のどの個所においてもほぼ10mmよりも小さい。これにより、保持輪郭部にアクセスするためのケーシング開口部を比較的小さく形成させることができる。なお、前記間隔は気化器ローラの回転軸線に対し垂直な1平面内で測定したものである。気化器ローラは作動中に回転運動を行うため、ニードルは、該ニードルの長手軸線が気化器ローラの回転軸線と一致するように配置されていなければならない。これにより、保持輪郭部と調整輪郭部とは1つの共通のケーシング開口部を通じてアクセス可能であるように配置することができる。有利には、保持輪郭部と回転軸線との間隔は、保持輪郭部のどの個所においてもほぼ8mmよりも小さい。
【0010】
保持輪郭部は、特に気化器ローラの回転軸線に同心に配置されている。有利には、係合輪郭部は周壁によって画成されている凹部内に配置されている。周壁は係合輪郭部へのアクセスを制限し、ニードルの位置調整用ではない工具が係合輪郭部と係合するのを阻止する。
【0011】
有利には、保持輪郭部は周壁に配置されている。これにより、保持輪郭部のために付加的な構成空間を必要としない。保持輪郭部は特に周壁の端面に配置されている。保持輪郭部を固定するための工具は、周壁の端面に配置されている保持輪郭部に簡単に係合することができる。保持輪郭部を固定するための工具は、位置調整輪郭部を変位させるための工具のまわりのスリーブとして形成されていてよい。これによってコンパクトな簡潔な構成が得られる。
【0012】
保持輪郭部が直接周壁に形成されていれば、簡潔な構成が得られる。保持輪郭部は、有利には、周壁の端面から周壁内部まで延在している、周壁内の凹部によって形成される。これにより、保持輪郭部を形成するために付加的な部材を必要としない。周壁は有利にはプラスチックから成っており、その結果保持輪郭部はプラスチック射出成形法で周壁とともに製造することができる。これにより、保持輪郭部の製造のために付加的な製造ステップを必要としない。
【0013】
周壁の外周は比較的短く、その結果コンパクトな構成が得られる。保持輪郭部の周壁の外径はほぼ15mmよりも小さいのが有利である。特に、保持輪郭部の周壁の外径はほぼ12mmよりも小さい。周壁の外径は、有利には最大で係合輪郭部の径の2.5倍である。なお、周壁のこの外径は保持輪郭部において測ったものであり、保持輪郭部の周壁の最大外径である。
【0014】
有利には、周壁は円形横断面を有している。この場合、周壁は気化器ローラの回転軸線に対し同心に配置されているのが有利である。周壁は、有利には、係合輪郭部のために特別に設けられた工具のみが係合輪郭部に係合できるほどの狭さで係合輪郭部を取り囲んでいる。周壁と係合輪郭部との間の間隔は、有利には最大で係合輪郭部の径の半分に相当している。この場合、係合輪郭部が不規則に形成されば、係合輪郭部の径とは最大径である。係合輪郭部が位置調整要素の端面に形成されているようにしてもよい。このケースでは、周壁は位置調整要素を非常に小さな間隔で狭く取り囲むことができる。周壁と係合輪郭部との間の間隔は、有利には最大でほぼ2.5mmである。係合輪郭部の位置調整のために特殊工具を設けるのが有利である。係合輪郭部に対する他の工具の係合を回避するため、周壁と係合輪郭部との間の間隔は特に最大でほぼ1.5mmである。有利には、周壁と係合輪郭部との間の間隔はほぼ0.8mmないしほぼ1.2mmである。
【0015】
保持輪郭部は有利には少なくとも1つの歯を有している。特に、複数の歯が周壁の端面に均等に配分して配置されている。4つの歯を設けるのが特に有利であることが明らかになった。しかし他の歯数も有利である。保持輪郭部は、有利には、少なくとも1つの第1の側面部を有し、該第1の側面部は気化器ローラの回転軸線とほぼ10゜、特に5゜よりも小さな角度を成している。第1の側面部は特に気化器ローラの回転軸線に対しほぼ平行に方向づけられている。保持輪郭部の第1の側面部が気化器ローラの回転軸線に対し小さな角度でまたはほぼ平行に方向づけられていることにより、保持力を特に好適に伝達させることができる。この場合、有利には、第1の側面部はアイドリング位置からフルスロットル位置への気化器ローラの回転方向とは逆の方向に方向づけられている。気化器ローラがアイドリング位置からフルスロットル位置への回転方向に回転する際、第1の側面部は下流側の側面部である。これにより気化器ローラをアイドリング位置で好適に固定することができ、その結果特にアイドリング時のニードルの位置調整が簡単に可能である。有利には、保持輪郭部は気化器ローラの回転軸線に対し傾斜して延びる少なくとも1つの第2の側面部を有している。第2の側面部は気化器ローラの回転軸線と有利にはほぼ20゜ないしほぼ70゜の角度を成している。第2の側面部と回転軸線との間の角度は特にほぼ30゜ないしほぼ60゜である。第2の側面部は、気化器ローラの回転軸線に対し傾斜していることにより、保持輪郭部への保持工具の容易な係合と、両側面部間の自動調心とを可能にする。これによって位置調整要素の自動位置調整も容易になる。第1の側面部と第2の側面部とは有利には少なくとも1つの歯に形成されている。
【0016】
係合輪郭部は、合目的には、特殊工具を用いて変位可能な特殊輪郭部である。これにより、気化器の調整を作業機の製造時のみまたは保守時のみ行うことができるよう保証される。これによって気化器の不適切な調整が回避される。
【0017】
内燃エンジンのために燃料と燃焼空気とを供給するための気化器が配置されているケーシングを備えた、手で操縦される作業機であって、気化器が気化器ケースを有し、該気化器ケース内に気化器ローラが回転軸線のまわりに回転可能に支持され、気化器ローラに、気化器の燃料穴内へ突出しているニードルが固定され、気化器ローラに対するニードルの位置を位置調整要素を介して調整可能であり、位置調整要素が、該位置調整要素を変位させるために工具を係合させることのできる係合輪郭部を有している前記作業機に対しては、本発明によれば、気化器は気化器ローラと相対回転不能に結合されている保持輪郭部を有し、保持輪郭部のどの位置においても該保持輪郭部と回転軸線との間隔はほぼ10mmよりも小さく、特に8mmよりも小さい。
【0018】
有利には、ケーシングは保持輪郭部にアクセスするためのケーシング開口部を有している。これにより、内燃エンジンが回転しているときの、すなわち作動中の位置調整要素の調整が難なく可能である。ケーシング内部の汚染と衝撃時のケーシングの損傷とを回避するため、ケーシング開口部は可能な限り小さくすべきである。保持輪郭部とケーシング開口部との間にスリットが形成されている。回転軸線に対し垂直な平面内で測ったスリットの最大幅fほぼ7mmよりも小さく、特にほぼ4mmよりも小さい。スリットの最大幅は、有利には、係合輪郭部の径よりも小さい。有利には、保持輪郭部は周壁の端部に形成され、その結果保持輪郭部に対しては非常に小さな構成空間を必要とするにすぎず、よって保持輪郭部に工具を係合させるために非常に小さなケーシング開口部を必要とするにすぎない。スリットは、有利には、7mm径の丸棒を該スリットに差し込みできないように構成されている。これにより作動中に枝等がスリットを通じてケーシングに侵入して損傷させることを回避できる。
【0019】
作業機は、有利には、内燃エンジンをスタートさせることのできるスタート装置を有している。スタート装置は、有利には、気化器ローラをスタート位置へ調整するために用いる。周壁の、凹部とは逆の側の外面に、スタート装置の一部であるロック輪郭部が配置されていれば、簡潔な構成が得られる。周壁には、さらに、1つまたは複数の補強突張りが設けられていてよい。これらの構成要素は周壁の外側に配置されているので、位置調整要素を調整するために気化器ローラを固定するには適していない。というのは、これらの構成要素はケーシング開口部を通じて外部からアクセスできず、従って作動中の調整ができないからである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
次に、本発明の1実施形態を図面を用いて説明する。
図1】作業機の概略斜視図である。
図2】作業機のケーシングの斜視図である。
図3】作業機の内燃エンジンの概略断面図である。
図4】作業機の気化器の概略断面図である。
図5】気化器の位置調整要素を調整するための工具の側面図である。
図6】気化器の平面図である。
図7図6の気化器ローラの拡大平面図である。
図8図4の気化器の保持輪郭部の領域の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は手で操縦される作業機1、すなわち刈払い機である。しかし作業機1はたとえば、パワーソー、ディスクグラインダ、剪定ばさみ、送風機、オリーブ加振機のような収穫機等の他の手で操縦される作業機であってもよい。作業機が送風機または吸引機である場合は、駆動原動機によって駆動される工具は、作業空気流を搬送するファンホイールである。
【0022】
作業機1はケーシング2を有し、ケーシングからは、該ケーシング2内に配置されている内燃エンジン(図1では概略を示した)20をスタートさせるためのスタートグリップ3が突出している。ケーシング2は案内管4を介してギヤヘッド9と結合されている。案内管4を貫通突出して駆動軸(図示せず)が設けられ、該駆動軸は、ギヤヘッド9内に配置されている伝動装置を介して、工具10を回転軸線11のまわりに回転駆動させる。工具10は本実施形態ではカッターである。しかし工具10は糸刈り取りヘッド等であってもよい。ギヤヘッド9に隣接するように案内管4には保護部12が固定されている。
【0023】
作業機1を操縦するため、案内管4には、2つのハンドグリップ6を担持するグリップハンドル5が固定されている。両ハンドグリップ6のうちの一方のハンドグリップには、スロットルコントロールレバー7とスロットルコントロールレバーロック8とが支持されている。スロットルコントロールレバー7は内燃エンジンの操作に用いる。
【0024】
図2が示すように、ケーシング2は多数の冷却空気穴13を有している。冷却空気穴13は冷却空気を出入させるために用いる。ケーシング2はエアフィルタカバー16を有し、該エアフィルタカバーの下に、図3に図示したエアフィルタ35が配置されている。エアフィルタすバー16はケーシング2の一部を形成している。ケーシング2からは、燃料を作業機1の気化器の燃料システム内へ搬送するために用いるパージャーベーローズ(Purgerbalg)14が突出している。ケーシング2を案内管4に固定するため、固定ブラケット17が設けられている。作業機1はさらに燃料タンク15を有している。
【0025】
図2が示すように、エアフィルタカバー16に隣接してケーシング開口部18がケーシング2に形成されている。ケーシング開口部18を介して、該ケーシング開口部18のすぐ下に配置されている保持輪郭部19にアクセスすることができる。
【0026】
図3は作業機1の内燃エンジン20の概略構成図である。内燃エンジン20は有利には2サイクルエンジンであり、特に単気筒エンジンである。
【0027】
内燃エンジン20はシリンダ21を有し、シリンダ21内には燃焼室22が形成されている。燃焼室22はシリンダ21内を往復動するように支持されているピストン24によって画成されている。ピストン24は、連接棒25を介して、クランクケース23内に回転可能に支持されているクランク軸26を回転駆動させる。燃焼室22からは排気部34が出ている。シリンダ21では、混合気通路28が混合気取り入れ口30でもって、そして空気通路27が少なくとも1つの空気取り込み口29でもってクランクケースに開口している。空気取り込み口29は、ピストン24がその上死点範囲にあるときに、ピストン24に形成されているピストンポケット31を介して、1つまたは複数の掃気通路32の1つまたは複数の掃気窓33と連通する。掃気通路32は、ピストン24の上死点範囲で、クランクケース23の内部空間を燃焼室22と連通させる。空気通路27と混合気通路28とは、仕切り壁38を介して、その長さの少なくとも一部にわたって互いに切り離されている。空気通路27と混合気通路28とは部分的に気化器36内に形成されており、エアフィルタ35の浄化室に開口している。エアフィルタ35はエアフィルタカバー16とエアフィルタ底部77との間で保持されている。本実施形態では、エアフィルタ35はフラットフィルタとして示されている。しかし、エアフィルタ35の異なる構成も可能である。エアフィルタ35は有利にはエアフィルタカバー16によって固定される。
【0028】
気化器36はローラ型気化器として構成され、回転軸線76のまわりに回転可能に支持されている気化器ローラ37を有している。気化器ローラ37は、その回転時に、回転軸線76の方向において軸線方向に移動する。このため、図3に概略を示したカム輪郭部79が設けられている。図3では、気化器ローラ37はその全負荷位置89で図示されており、すなわち気化器ローラ37は空気通路27および混合気通路28の流動横断面を十分に、特に完全に開放している。
【0029】
作動時においては、燃料空気混合気は流動方向39において混合気通路28を通って、ピストン24がその上死点の範囲にあるときに混合気取り込み口30を介してクランクケース23内へ流入する。ピストン24の下降行程時に、クランクケース23内の燃料空気混合気が圧縮され、ピストン24の下死点範囲で燃焼室22内に流入し、そこでピストン24の上昇行程時の新たな圧縮時に点火される。燃焼はピストン24を加速させて再びその下死点方向へ戻す。ピストン24が排気部34を開口させると、排ガスが燃焼室22から流出する。
【0030】
ピストン24が上死点範囲にあるとき、空気通路27を介して、燃料希薄な空気または燃料を含んでいない空気が掃気通路32に予蓄積される。この空気はピストン24の下死点範囲で燃料室22内へ流入し、排ガスを排気部34から掃気する。その後、新鮮な燃料空気混合気がクランクケース23の内部空間から掃気通路32を介して燃焼室22内へ溢流する。
【0031】
図4は気化器36の構成を詳細に示している。気化器36は気化器ケース40を有し、該気化器ケース内に気化器ロール37が回転軸線76のまわりに回転可能に支持されている。気化器ロール37が気化器ケース40内へ押し込まれる側で、気化器ケース40はカバー41によって閉鎖されている。回転軸線76に同心に燃料通路44が気化器ロール37内へ突出している。燃料通路44は、本実施形態では燃料管45内で案内されている。燃料通路44の端部には、混合気通路28に開口する燃料穴90が形成されている。燃料通路44は、図4に図示した、通常どおりに構成された制御室43から燃料の供給を受ける。制御室43は制御ダイヤフラム92によって補償室42から切り離されている。従って、気化器36はダイヤフラム気化器として構成されている。本実施形態では、制御室43は、気化器36の、混合気通路28とは逆の側に配置されている。燃料管45は空気通路27を貫通、突出している。燃料穴90は仕切り壁部分46の領域に配置されている。仕切り壁部分46は、空気通路27と混合気通路28とを切り離している仕切り壁38(図3)の一部であり、気化器ロール37に形成されている。
【0032】
気化器36の、燃料通路44および制御室43とは反対の側で、ニードル48が燃料穴90内へ突出している。ニードル48が燃料管45内へ侵入する深さを介して、燃料穴90を通じて供給される燃料量を調整することができる。図4が示すように、燃料管45とニードル48とは互いに反対側から仕切り壁部分46の開口部47内へ突出している。燃料管45が仕切り壁部分46を開口部47において貫通突出するようにしてもよい。
【0033】
気化器ローラ37は、所定の距離だけ回転軸線76の方向に沿って変位可能である。アイドリング位置88からフルスロットル位置89への回転運動により気化器ローラ37が軸線方向に変位すると、ニードル48は燃料管45から出て、混合気通路28に供給される燃料量を増大させる。気化器ローラ37はばね61によって弾性付勢されており、ばね61は、ニードル48が最も深く燃料管45内に侵入する方向に気化器ローラ37を予め緊張させている。
【0034】
図4では、気化器ローラ37は、ニードル48が燃料管45内に最も深く侵入しているアイドリング位置88で図示されている。混合気通路28および空気通路27の、気化器ローラ37内に形成されている部分が、流動方向(図3)に対し横方向に配置されているので、流動横断面はわずかだけ開放されている。図3は、混合気通路28および空気通路27の、気化器ローラ37内に形成されている部分が、流動方向39に配向されて最大自由流動横断面が生じているフルスロットル位置89で気化器ローラ37を示している。
【0035】
内燃エンジン20をスタートさせるため、操作ボタン58を含んでいるスタート装置が設けられている。操作ボタン58はガイド59内で回転可能に且つその長手方向に変位可能に支持されている。長手方向への変位は構造的に設定された位置でのみ可能である。回転方向にも軸線方向にも操作ボタン58はばね60によって弾性付勢されており、ばね60は操作ボタン58をその非操作位置の方向に予め緊張させている。操作ボタン58は図4および図6に図示したフック68を有し、フック68はロック要素を形成し、気化器ローラ37と相対回転不能に結合されているフック63とスタート位置で係合する。
【0036】
図4が示すように、フック63は、気化器ローラ37と相対回転不能に結合されている操作要素62に形成されている。操作要素62と気化器ローラ37とは、気化器36の互いに反対側でカバー41に配置されている。操作要素62は気化器ローラ37と固定結合され、すなわち回転軸線76のまわりでの回転方向にも回転軸線76の長手方向においても不動に気化器ローラ37と固定結合されている。
【0037】
燃料通路45内でのニードル48の位置を調整して、混合気通路48内に供給される燃料量を調整できるようにするため、回転軸線76の長手方向におけるニードル48の位置は気化器ローラ37に対し相対的に調整可能である。このために位置調整要素49が設けられている。位置調整要素49は、本実施形態では、ニードル48と固定結合されている、ねじ山50にねじ込み可能なねじとして形成されている。ねじ山50は、気化器ローラ37に形成され、または、気化器ローラ37と固定結合されている要素に形成されている。位置調整要素49はヘッド51を有し、該ヘッドの外周には係合輪郭部52が形成されている。係合輪郭部52は、規格化されていない、特殊工具でのみ変位可能な特殊輪郭部である。本実施形態では、係合輪郭部52は丸みを帯びた六角形として形成されている。しかし任意の他の係合輪郭部も可能であり、たとえば丸みを帯びた外側輪郭部、或いは、端面に設けられる、たとえば特殊な構成のスリットまたは十字スリットのような係合輪郭部が設けられていてよい。位置調整要素49をねじ山50に出入させることにより、すなわち位置調整要素49を気化器ローラ37に対し相対的に回転させることにより、燃料通路45内へのニードル48の侵入深さが調整される。
【0038】
係合輪郭部52は周壁54によって取り囲まれている。これにより、位置調整要素49がこのために周壁5に挿入できるように設けられている特殊工具でなければ変位できないよう保証される。周壁54は回転軸線76のまわりに同心に配置され、本実施形態では、円形横断面を有している。射出成形法で周壁54を製造する際に脱型を可能にするため、周壁54は回転軸線76の長手方向にわずかに傾斜した壁でもってほぼ筒状に延在している。気化器ローラ37に対するニードル48の相対位置の調整を、内燃エンジン20が回転しているときも作業機のケーシング2を通じて可能にするため、図2にも図示した、ケーシング2の外面からアクセス可能な保持輪郭部19が設けられている。保持輪郭部19は周壁54の端面55に形成され、複数の歯56、本実施形態では4つの歯を含んでいる。フック63は、周壁54の、回転軸線76に関し外側に配置される外面91に配置されている。周壁54は筒状に形成された凹部53を画成し、該凹部の底部には位置調整要素49のヘッド51が配置されている。
【0039】
図4および図6が示すように、カバー41には、ボーデンケーブルの外被のための保持部57が配置されている。本実施形態では、保持部57は、気化器36の、操作ヘッド58とは反対側に配置されている。
【0040】
図5はニードル48の位置を調整するための特殊工具80を示している。特殊工具80は、通常の態様でシャンク93を介して係合部分81と結合されているグリップ87を有している。係合部分81は本実施形態ではほぼ筒状に形成されており、その内面に特殊輪郭部(図示せず)を有している。特殊輪郭部はヘッド51の係合輪郭部52に対応しており、これに係合することができる。特殊輪郭部は規格化された輪郭ではなく、特別に係合輪郭部52に整合した輪郭である。シャンク93には保持機構82が押し込まれている。保持機構82は有利にはシャンク93に緩く押し込まれている。しかし保持機構82を軸線方向に位置固定し且つ回転可能にシャンク93に取り付けてもよい。保持機構82は保持部分86を有し、この保持部分に保持機構82の操作具または位置調整器を固定することができる。保持機構82は、グリップ87および保持部分86とは逆の側の正面側端部に、保持輪郭部19に係合することのできる対向輪郭部83を有している。対向輪郭部83は以下に詳細に説明する側面部84と85を有している。保持機構82には位置調整部分96が配置され、位置調整部分96は有利には保持機構82にクランプ保持され、スケールを担持している。グリップ87は方向測定部分97を有している。対向輪郭部83および係合部分81が係合輪郭部52および保持輪郭部19と係合していれば、方向測定部分97は係合部分96に設けたスケールのゼロ位置と重なり合う。これは、クランプ力に打ち勝つことで位置調整部分96を保持機構82に対し変位させることによって行う。ニードル48の位置を調整する際、保持部分86も位置調整部分96も操作者によって固持される。係合部分81を係合輪郭部52に対し回転させる角度は、方向測定部分97を介してスケールから読み取ることができる。
【0041】
図6には気化器36がアイドリング位置88で示されている。この位置では操作要素62はアイドリングストッパー73に接している。アイドリングストッパー73は有利には位置調整要素(たとえばねじ)に形成されている。これによってアイドリング位置において気化器ローラ37の回転位置を調整でき、よって回転軸線76の長手方向における位置も調整できる。ガス付与のため、操作要素62にはボーデンケーブル受容部67が設けられ、この中にボーデンケーブル(図示せず)のボーデンケーブルロープを挿入することができる。ボーデンケーブルのカバーは保持部57に固定される。ボーデンケーブルを引張ると、操作要素62が、よって気化器ローラ37も回転方向72に移動する。ばね61(図4)によって気化器ローラ37はアイドリング位置88の方向に予め付勢されている。ボーデンケーブルは有利にはスロットルコントロールレバー7(図1)によって操作される。保持部57に隣接してカバー41にフルスロットルストッパー75が形成され、該フルスロットルストッパーで操作要素62がフルスロットル位置89で係止される。
【0042】
スタート位置を設定するため、操作ボタン58をケーシング2の外面から見て反時計方向に回転させ、次に図6の矢印方向94に押してガイド59のなかに押し込む。図6は、操作ボタン58が突起66を有していることも示しているが、この突起66は矢印94に平行に、すなわち操作ボタン58をガイド66の中に押し込む方向に延在している。ガイド59はスリット65を有し、このスリット65に、操作ボタン58を押すために設けられている該操作ボタン58の回転位置で突起66が係合することができる。図6が示すように、操作ボタン58は非操作位置で矢印94の方向に押すことができない。なぜなら、突起66は図示した回転位置でガイド59の端面に係止されているからである。まず、操作ボタン58を90゜よりもいくぶん小さな角度だけ反時計方向に回転させて、突起66がスリット65に重なるようにしなければならない。その後、操作ボタン58を矢印94の方向に回転させることができる。操作ボタン58の回転運動も、矢印94の方向でのガイド59内への運動もばね60の力に抗して行われる。
【0043】
ガイド59に押し込んだ位置で、操作ボタン58のフック68は操作要素62のフック63と掛止される。これによりスタート位置が設定される。操作ボタン58には、気化器ローラ37をスタート位置で持ち上げてスタート用の燃料供給量を増大させる輪郭部を設けてよい。気化器ローラ37をそのアイドリング位置88に対してわずかにフルスロットル位置89の方向へ、すなわち回転方向72へ変位させると、アイドリング位置88に比べて吸い込み空気量も増大する。スタート位置を解除するには、操作者がガスを付与し、これによって操作要素62が回転方向72に回転してフック63がフック68に対し係脱する。フック63と68の代わりに、スタート位置を調整するための、特にスタート位置でロックするための他の要素を設けてもよい。
【0044】
図6はケーシング開口部18を破線で示している。図6が示すように、ケーシング開口部18と周壁54との間には幅狭のスリット78が形成されているにすぎない。スリット78は、エアフィルタカバー16とは逆の側の領域で円環状の構成を有し、エアフィルタカバー16の側で直線状のエアフィルタカバー16と円形状の周壁54とによって画成され、その結果この領域でのスリット78の幅は一定でない。スリット78は最大幅fを有し、最大幅fは本実施形態ではエアフィルタカバー16に対して測ったものである。最大幅fはほぼ7mm以下、特にほぼ4mm以下である。本実施形態では、最大幅fはほぼ3mm以下である。スリット78の幅e,fはそれぞれ周壁54および回転軸線76に対し垂直に半径方向外側へ向けて測ったものである。スリット78が幅狭であることにより、操作要素62を、周壁54の外面91に配置されている要素、すなわちフック63および同様に外面91に配置されている補強突張り64に固定することは不可能である。それ故、気化器ローラ37を固定するために、周壁54の端面55に保持輪郭部19が設けられている。
【0045】
図7および図8は保持輪郭部19の構造的構成を詳細に示している。図7および図8が示すように、保持輪郭部19は第1の側面部69を有し、該第1の側面部69は本実施形態では回転軸線76に対し平行に延在している。第1の側面部69は、側面図において回転軸線76と有利には最大でほぼ10゜、特に最大でほぼ5゜の角度を成している。第1の側面部69は回転方向72とは逆の方向に方向づけられている。従って第1の側面部69は、歯56の、気化器ローラ37が回転するときに回転方向72において下流側の側面である。保持輪郭部19は、さらに、回転方向72とは逆の側にある第2の側面部70を有している。回転方向72での回転の場合、第2の側面部70は、歯56の上流側の側面である。特に図8が示しているように、第2の側面部70は傾斜して形成されている。第2の側面部70は、断面図において、回転軸線76と角度αを成す。角度αは有利にはほぼ20゜ないしほぼ70゜であり、特にほぼ30゜ないしほぼ60゜である。しかし他の角度αも有利である。有利には、第1の側面部69は第2の側面部70よりも回転軸線76に対しより小さく傾斜している。
【0046】
さらに図7および図8が示すように、歯56は、凹部53側に、工具80の挿通を容易にする挿入傾斜部71を有している。周壁54は図7に示した外径cを有している。外径cは、保持輪郭部19において周壁54が回転軸線76に対し傾斜して延在している場合に測ったものである。外径cはほぼ20mmよりも小さく、有利にはほぼ15mmよりも小さく、特にほぼ12mmよりも小さい。本実施形態では、外径cは11mmよりも小さい。保持輪郭部19は、回転軸線76に対し、1平面内で回転軸線76に対し垂直に測った間隔gを有している。間隔gは、本実施形態では、外周が円形であるために一定であり、ほぼ10mmよりも小さく、特にほぼ8mmよりも小さい。有利には、間隔gはほぼ6mmよりも小さい。回転軸線76に対する保持輪郭部19の間隔が一定でなければ、間隔gは回転軸線76に対する保持輪郭部19の最大間隔である。
【0047】
保持機構(図5)の対向輪郭部83は、シャンク93の長手方向95に対し平行に延在している第3の側面部84を有している。長手方向95は、対向輪郭部83が保持輪郭部19に係合した時に回転軸線76に対し合同に配向される。第3の側面部84は、保持輪郭部83が保持輪郭部19に係合して時に第1の側面部69に当接する。対向輪郭部83は第4の側面部85を有し、該第4の側面部85は、第2の側面部70に対応して傾斜しており、対向輪郭部83が保持輪郭部19に係合した時に第2の側面部70に当接する。
【0048】
図8は配置の寸法をも詳細に示している。係合輪郭部52は、周囲壁54の内径bよりもわずかに小さな径aを有している。内径bは有利にはほぼ10mmよりも小さく、特にほぼ7mmよりも小さい。径aは保持輪郭部52の最大径である。系aは有利にはほぼ8mmよりも小さく、特にほぼ6mmよりも小さい。特に有利には、径aはほぼ5mmよりも小さい。周壁54と係合輪郭部52との間に形成されている間隔dは、有利には最大で係合輪郭部52の径aのほぼ半分の大きさである。間隔dは有利には最大でほぼ2.5mmであり、特に最大でほぼ1.5mmである。本実施形態では、間隔dはほぼ1mmである。幅fは有利には係合輪郭部52の径aよりも小さい。図7に示した周壁54の外径cは、有利には同様に比較的小さく、その結果小さなケーシング開口部18が必要であるにすぎない。保持輪郭部19に設けた周壁54の外径cは、有利には最大で係合輪郭部52の径aの2.5倍の大きさである。図8はケーシング開口部18の配置も示している。ケーシング開口部18のエッジと、エアフィルタカバー16とは逆の側に設けた周壁54との間に形成されているスリット78は、有利には係合輪郭部52の径aよりも小さい幅eを有している。なお幅eは、回転軸線76に対し垂直な1平面内で測ったものである。有利には、幅eは係合輪郭部52の径aのほぼ半分である。幅eは有利にはほぼ4mmよりも小さく、特にほぼ3mmよりも小さい。係合輪郭部19の損傷を回避し、係合輪郭部19を汚染から保護するため、係合輪郭部19をケーシング開口部18下方の面内に配置してよい。このときの間隔eは、ケーシング開口部18を回転軸線76に対し平行に周壁54の端面55の面へ投影した時に測定する。
【0049】
燃料供給量を調整するには、内燃エンジン20を有利には作動させ、工具8を係合輪郭部52と保持輪郭部19とに当てる。保持部分86を用いて気化器ローラ37をそのアイドリング位置88へ回転させる。このアイドリング位置で係合輪郭部52を、グリップ87を保持部分86に対し回転させることにより変位させて、所望のアイドリング位置が達成されるようにする。この調整を気化器ローラ37の1つの位置または複数の位置で行ってもよい。気化器ローラ37を他の回転位置で固定するには、係合輪郭部19および対向輪郭部83の他の構成が合目的である。第1の側面部69が回転軸線76に対し平行に配向されているため、本実施形態で示した構成が特にアイドリング位置88の調整に適している。
【符号の説明】
【0050】
1 刈払い機(作業機)
19 保持輪郭部
36 気化器
37 気化器ローラ
48 ニードル
49 位置調整要素
52 係合輪郭部
53 凹部
54 周壁
76 気化器ローラの回転軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8