特許第6353657号(P6353657)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6353657
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】車両前部の空気取り入れ構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 11/04 20060101AFI20180625BHJP
【FI】
   B60K11/04 J
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-5643(P2014-5643)
(22)【出願日】2014年1月16日
(65)【公開番号】特開2015-134512(P2015-134512A)
(43)【公開日】2015年7月27日
【審査請求日】2016年10月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】角田 隆
【審査官】 結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−143507(JP,A)
【文献】 特開2012−246790(JP,A)
【文献】 特開2002−285916(JP,A)
【文献】 特開平4−163230(JP,A)
【文献】 特開2010−111277(JP,A)
【文献】 実開平1−123531(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前部から取り入れた空気をエンジンルームに導入する空気取り入れ構造であって、
シャッタの開閉により空気取り入れ量を調整可能な取入れ調整経路と、常時開放状態の常時開放経路と、を備えた空気取り入れ構造において、
前記常時開放経路は、車両前部における前記取入れ調整経路の下側に配置されるとともに、取り入れ空気の流入方向が前記エンジンルーム内のエンジン周辺機器に向かう構造としており、
前記取入れ調整経路には、エンジンとの熱交換を行う熱交換器が設けられており、
前記常時開放経路には、前記熱交換器が設けられておらず、
前記取入れ調整経路の後端の出口部の正面にエンジンが位置し、
エンジンの下方に前記エンジン周辺機器である排気系触媒が位置し、
前記常時開放経路の管路のほぼ同じ高さ位置の車両前後方向後方に前記排気系触媒が位置し、
前記常時開放経路の管路よりも上方の高さ位置の車両前後方向後方にエンジンが位置することを特徴とする車両前部の空気取り入れ構造。
【請求項2】
前記常時開放経路の管路が前記排気系触媒近傍まで延在していることを特徴とする請求項1に記載の車両前部の空気取り入れ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前部の空気取り入れ構造に関し、特に、シャッタ装置を有する車両前部の空気取り入れ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
シャッタ装置は車両前部に設けられており、車両前部から導入された空気を導くダクト内に設けられたシャッタを開閉位置へ作動させてこのダクトを介して車両内部に導入される空気量を調整する。シャッタ装置の後方にはラジエータが配置されており、シャッタを開放位置に移動させることで導入された空気によって冷却されたラジエータを介してエンジンが冷却され、さらにはラジエータを通過してさらに車両後方(エンジンルーム後方)に送られた空気によりエンジン及びエンジン周辺に配置された排気系触媒等が冷却される。逆に、暖機運転の場合はエンジンを冷却しない方が好ましいため、シャッタを閉鎖位置に移動させる調節が行われる。
【0003】
一方、高速走行時においてシャッタを開放位置のままとして車両前部から空気をダクト内に導入し続けると、導入される空気量の増大に伴って走行抵抗が大きくなり、燃費効率の低下が懸念されるため、エンジンの冷却が十分である場合にはシャッタを閉鎖位置とし、走行抵抗を低下させる調節が行われる。
【0004】
このようにして、シャッタの開閉調節によって空力性能向上やエンジン過冷却の防止を図り、あわせて燃費の向上を可能とするものである。
【0005】
特許文献1の図1には、シャッタ装置を有する、上述するような車両前部の空気取り入れ構造の一例が示されている。具体的には、エンジンルームの前面のフロントグリルから導入されてラジエータを通過してエンジンに向かう空気の量が、ラジエータの上流に設けられたシャッタの開閉により調整される。
【0006】
しかし、特許文献1に示されるような車両前部の空気取り入れ構造によれば、シャッタ装置がフロントグリルから後方へと延在するダクトの高さ方向領域全てに亘って設けられているので、シャッタが閉鎖位置のままシャッタ装置が故障した際や寒冷地を走行中にシャッタが氷雪により固着して動作不能となった際に、エンジンが冷却されずにオーバーヒートし、車両故障が生じるおそれがある。
【0007】
このような故障を回避するため、車両前部に複数の開口部を有する車両にあっては何れか一方の開口部に通じるダクトにのみシャッタ装置を設けることで、シャッタ開閉機構の故障等に備えていた。或いは、車両前部に一つの開口部のみを有する車両にあっては、開口部の一部にシャッタ装置を設けない常時開口領域を設けることで、シャッタの開閉機構の故障等に備えていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−105220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、これらの技術では、常に開口部の一部が開放された状態にある。したがって、その開口部から取り入れられた空気がエンジンを常に冷却するため、シャッタを閉鎖位置にした場合であっても暖機運転を促進する効果が低下してしまう。
【0010】
したがって、かかる点に鑑みてなされた本願発明の目的は、シャッタの動作不能による車両故障のリスクを回避しつつ、走行抵抗を最大限に抑止することができる車両前部の空気取り入れ構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、車両前部から取り入れた空気をエンジンルームに導入する空気取り入れ構造であって、シャッタの開閉により空気取り入れ量を調整可能な取入れ調整経路と、常時開放状態の常時開放経路と、を備えた空気取り入れ構造において、前記常時開放経路は、車両前部における前記取入れ調整経路の下側に配置されるとともに、取り入れ空気の流入方向が前記エンジンルーム内のエンジン周辺機器に向かう構造としており、前記取入れ調整経路には、エンジンとの熱交換を行う熱交換器が設けられており、前記常時開放経路には、前記熱交換器が設けられておらず、前記取入れ調整経路の後端の出口部の正面にエンジンが位置し、エンジンの下方に前記エンジン周辺機器である排気系触媒が位置し、前記常時開放経路の管路のほぼ同じ高さ位置の車両前後方向後方に前記排気系触媒が位置し、前記常時開放経路の管路よりも上方の高さ位置の車両前後方向後方にエンジンが位置することを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、シャッタが正常に作動する状態においてシャッタが閉鎖位置にある場合には、常時開放経路を通過してエンジン周辺機器を冷却して拡散してきた空気のみがエンジンに向かうので、従来よりも効率的に暖機運転を行うことが可能となり、エンジンの過冷却をより有効に防止することができる。
【0013】
一方で、シャッタが閉鎖状態で動作不能となった場合には上記エンジン周辺機器を経由してきた空気によって最低限のエンジンの冷却がなされ、オーバーヒート等の車両故障のリスクを回避することができる。
【0014】
また、エンジン周辺機器には常に冷却を要する部品が配置される場合もあり、この場合、シャッタの開閉状態いかんにかかわらず常時開放経路から流入する空気によって常にエンジン周辺機器が冷却されるので、常に冷却を要するエンジン周辺機器の効果的な冷却を図ることができる。さらに、通常、エンジン周辺機器のうち、常時冷却を要する機器はエンジン下方に配置されていることが多く、この構成によれば、取入れ調整経路及び常時開放経路の構成をよりコンパクトな構成とすることが容易となる。そのうえ、この構成によれば、常時開放経路を通過する空気はエンジンと熱交換を行う熱交換器を通過せず、その熱交換器を冷却しない。よって、暖機運転を行うべくシャッタを閉状態とした際に単にエンジン周辺機器を冷却して拡散してきた空気のみがエンジンに向かうのみならず、車両前部から取り入れた空気がエンジンと熱交換を行う熱交換器を冷却してその冷却された熱交換器によってエンジンが冷却されることもないので、シャッタを閉状態とした場合のエンジンの暖機運転をより効果的なものとすることができる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両前部の空気取り入れ構造において、前記常時開放経路の管路が前記排気系触媒近傍まで延在していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、車両前部から取り入れた空気の経路とシャッタの配置との組み合わせにより、シャッタの閉鎖位置での動作不能に起因する車両の故障等のリスクを低下させることができるだけでなく、シャッタが正常に駆動される状態において冷却対象となるエンジン及びエンジン周辺機器に対してより的確な冷却を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施の形態における車両前部の空気取り入れ構造を説明する車両の前部斜視図である。
図2図1のII−II線断面図である。
図3】シャッタ装置の制御系を示すブロック図である。
図4】本実施の形態におけるシャッタが(a)開放位置にある場合及び(b)閉鎖位置にある場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本実施の形態について図に基づいて詳細に説明する。車両のエンジンルームの前面に設けられた開口部から導入される空気量を調整するシャッタ装置を有する車両前部の空気取り入れ装置の実施の形態を、図1〜4を参照して説明する。
【0022】
図1は本実施の形態における車両前部の空気取り入れ構造を説明する車両の前部斜視図であり、図2図1のII−II線断面図であり、図3はシャッタ装置の制御系を示すブロック図であり、図4は本実施の形態におけるシャッタが(a)開放位置にある場合及び(b)閉鎖位置にある場合を示す図である。
【0023】
図中の矢印Fは車両の前方方向を示し、図中の矢印Wは車両の幅方向を示す。
【0024】
図1に示すように、車両2のエンジンルーム3の前面には二つの開口部20、22が設けられており、これらの開口部20、22には、図2に示すように、エンジンルーム3内に導入された空気を導くダクト部30が接続されている。ダクト部30における車両の前後方向途中位置には、ダクト部30内における空気の通過を可能とする開放位置と、空気の通過を遮断又は抑制する閉鎖位置とに移動するシャッタ50を有するシャッタ装置40が設けられている。車両前部の空気取り入れ構造10は、開口部20及び開口部22、ダクト部30並びにシャッタ装置40により主に構成されている。
【0025】
開口部20は、図1及び図2に示すように、車両2のエンジンルーム3の前面上方となるヘッドランプ4間に設けられたフロントグリル20であり、開口部22は、フロントグリル20の下部位置にあるバンパ5に穿設されたバンパグリル22である。
【0026】
フロントグリル20とシャッタ装置40の上部42との間には、筒状の上部ダクト部32が設けられており、バンパグリル22とシャッタ装置の下部44との間には、筒状の下部ダクト部34が設けられている。
【0027】
シャッタ装置40は、略矩形の枠状体41を有し、枠状体41の高さ方向中央位置に車幅方向に延在するフレーム43によってシャッタ装置40はシャッタ装置40の上部42と下部44とに仕切られている。
【0028】
シャッタ装置40の上部42には、図示のように5枚のルーバ52aが、枠状体41の側部に車幅方向に延在する回動可能な軸体によって軸支されており、ルーバ52aは、回動動作によりシャッタ装置40の上部42を閉鎖し、又は図2に示すように開放する上部シャッタ52を構成する。すなわち、シャッタ装置40の上部42は、上部シャッタ52により開閉可能な開閉可能開口領域42aである。
【0029】
シャッタ装置40の下部44には、図示のように上方から3枚のルーバ54aが、枠状体41の側部に車幅方向に延在する回動可能な軸体によって軸支されており、ルーバ54aはシャッタ装置40の下部44の空気の通過を抑制し、又は図2に示すように開放する下部シャッタ54を構成する。
【0030】
このように、上部シャッタ52(ルーバ52a)と下部シャッタ54(ルーバ54a)とからなるシャッタ50を閉鎖位置(図4(b)参照乞う)と開放位置(図2及び図4(a)参照乞う)の二位置に回動させることにより、走行中のフロントグリル20及びバンパグリル22からエンジンルーム3内に導入される空気量が調整される。
【0031】
ルーバ54aのうちで最下部に位置するルーバ54aの下方には、シャッタ装置40の下部44を仕切る仕切り板46が設けられており、仕切り板46によりシャッタ装置40の下部44は、下部シャッタ54により開閉可能な開閉可能開口領域44aと、仕切り板46と枠状体41の下部によって区画された常時開口領域44bとに仕切られている。
【0032】
シャッタ装置40から後方に、上端が枠状体41の上部に接続され、下端が仕切り板46に接続される筒状の後方ダクト部36がさらに延在し、後方ダクト部36の後端部には、縮径しつつエンジン6に指向する出口部38を有するシュラウド37が取り付けられている。ここで、出口部38の後方正面にはエンジン6が配置され、エンジン6の周辺部であるエンジン6の下方には、エンジン6から排出された排気を触媒して浄化する、排気系触媒7が配置されている。排気系触媒は、早急な活性化の為にエンジン始動後の急速な暖機が必要なことから、排気マニホールド直下に配置されることが多い。反面、暖気後は触媒の劣化に至る過熱状態となってしまう懸念がある。
【0033】
尚、エンジン6の周辺部であるエンジン6の下方には、車両によっては図示しないターボチャージャーが設けられることがある。このように、エンジンの下方には、走行時において常に高温となる過熱性のエンジン周辺機器(排気系触媒7、ターボチャージャー等)が設けられることが多い。さらに、エンジン6の周辺部であるエンジン6の下方且つ後方には、その性質上熱に弱いECU(Engine Control Unit)(同じく、図示を省略する)が設けられることもある。これらのエンジン周辺機器は常時冷却されることが望ましい機器である。
【0034】
シュラウド37には、所定の条件下でフロントグリル20及びバンパグリル22から空気を後方ダクト部36に、さらにはエンジン6近傍にまで引き込むための空気流を生み出すファン39が取り付けられている。また、シャッタ装置40と出口部38の間には、熱交換器35が設けられており、熱交換器35は、図示しない熱媒体流通経路によってエンジン6に繋がっており、この熱媒体流通経路を介してエンジン6と熱交換器35間での熱交換が行われる。熱交換器35は、後方ダクト部36の上部壁及び下部壁に支持部材36aによって固定されている。
【0035】
一方で、シャッタ装置40から後方に、上端が仕切り板46に接続された後方ダクト部36の底部36bにより上部壁が構成され、下端が枠状体41の下部に接続されて後方に延在する下部壁33とによって構成された車幅方向に幅広な扁平筒状体である管路31が、熱交換器35と同等の車両前後方向位置まで延在している。尚、熱交換器35は、図2に示すように後方ダクト部36に配置されており、管路31には設けられていない。
【0036】
したがって、ダクト部30は、上部ダクト部32及び下部ダクト部34からシャッタ50を経て出口部38に向かう、シャッタ50の開閉により空気取り入れ量を調整可能な取入れ調整経路100(図2において破線の矢印で示す)と、ダクト部30の途中位置であるシャッタ装置40が設けられた位置から取入れ調整経路100と分岐し、シャッタ50を介さない常時開放経路200(図2において破線の矢印200で示す)とを有する。常時開放経路200は、図2に示すように、取入れ調整経路100の下側に配置されている。
【0037】
取入れ調整経路100は、図2に示すように、開閉可能開口領域42a、44aから常時開放経路200と分岐しており、逆に常時開放経路200は、同図に示すように、常時開口領域44bから取入れ調整経路100と分岐している。管路31のほぼ同じ高さ位置の車両前後方向後方には、排気系触媒7が位置する。
【0038】
次に、シャッタ装置40におけるシャッタ50の開閉制御について説明する。シャッタ装置40は、図3のブロック図に示されるシャッタ開閉制御装置60を備える。シャッタ装置40は、ルーバ52a及びルーバ54a(シャッタ50)と、ルーバ52a及びルーバ54aの各軸を回動させる無端ベルト56(図4参照乞う)として構成される駆動力伝達機構62と、駆動軸58(図4参照乞う)を駆動する駆動モータ64と、車速を検知する車速センサ66、外気温センサ68、エンジンの冷却水の温度を検出する冷却水温センサ70、及び駆動モータ64を制御する制御部72を有する。
【0039】
制御部72は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を備えたコンピュータである。制御部72は、ROMに記憶させたプログラムをRAM上に展開して対応する処理をCPUに実行させる。
【0040】
制御部72には、車速センサ66、外気温センサ68、冷却水温センサ70からの検出信号が入力され、制御部72はROM等に記録されていたプログラムに基づき、これらの検出に応じてルーバ52a及びルーバ54aを開放位置とする開作動条件が成立しているか、閉鎖位置とすべき閉作動条件が成立しているかを判定する。
【0041】
例えば、車速センサ66により検出される車速が大きく、冷却水温センサ70により検出される冷却速度が低い場合には走行安定性を向上させるために閉作動を行い、冷却水温センサ70により検出される冷却水温が高い場合には効率的に冷却するために閉作動を行う制御を行う。
【0042】
制御部72が開作動(又は閉作動)を行うべきと判断すると、図4に示すように、制御部72の開動作指示に基づき駆動モータ64が駆動軸58を回動させ、これによって無端ベルト56(駆動力伝達機構62)を介してルーバ52a及びルーバ54aが同時に回動し、図4に示すように、ルーバ52a及びルーバ54aはシャッタ装置40の上部42及び下部44の開閉可能領域44aを開状態にする開放位置(図4(a)参照乞う)又は閉状態にする閉鎖位置(図4(b)参照乞う)に移動する。
【0043】
すなわち、上部ダクト部32に接続された(すなわち、上部ダクト部32の後端に設けられた)上部シャッタ52と下部ダクト部34に接続された(すなわち、下部ダクト部34の後端に設けられた)下部シャッタ54とが一体的に作動するので、シャッタ装置40が一体部品化され、コストを低減させることが可能となっている。
【0044】
尚、上記開放位置と閉鎖位置間のルーバ52a及びルーバ54aの移動は、制御部72のROM等に予め記録された、開放位置と閉鎖位置間のルーバ52a及びルーバ54aの回動量に対応する駆動モータ64の回転角度となる回転数に基づいて行われる。
【0045】
従って、本実施の形態に係る車両前部の空気取り入れ構造10によれば、シャッタ50が正常に作動する状態においてシャッタ50が閉鎖位置にある場合には、常時開放経路200を通過して排気系触媒7等のエンジン周辺機器を冷却して拡散してきた空気のみがエンジン6に向かうので、従来よりも効率的に暖機運転を行うことが可能となり、エンジン6の過冷却をより有効に防止することができる。
【0046】
一方で、シャッタ50が閉鎖状態で動作不能となった場合には上記エンジン周辺機器を経由してきた空気によって最低限のエンジン6の冷却がなされ、オーバーヒート等の車両故障のリスクを回避することができる。
【0047】
また、エンジン周辺機器には、過熱性の機器(排気系触媒7やターボチャージャー等)だけでなく、熱に弱い機器(ECU等)が存在する場合もある。この場合に、シャッタ50の開閉状態いかんにかかわらず常時開放経路200から流入する空気によってこれらのエンジン周辺機器が常に、且つ優先的に冷却されるので、常に冷却を要するエンジン周辺機器の効果的な冷却を図ることができる。
【0048】
また、取入れ調整経路100の下側に常時開放経路200が配置されており、エンジン6の下方に過熱性のエンジン周辺機器である排気系触媒7が位置しているので、取り入れ調整経路100及び常時開放経路200をよりコンパクトな管路構成で実現することができる。
【0049】
さらに、常時開放経路200を通過する空気はエンジン6と熱交換を行う熱交換器35を通過せず、その熱交換器35を冷却しない。よって、暖機運転を行うべくシャッタ50を閉状態とした際に単にエンジン周辺機器を冷却して拡散してきた空気のみがエンジン6に向かうのみならず、車両前部から導入された空気がエンジン6と熱交換を行う熱交換器35を冷却してその冷却された熱交換器35によってエンジン6が冷却されることもないので、シャッタ50を閉状態とした場合のエンジン6の暖機運転をより効果的なものとすることができる。
【0050】
そのうえ、上部ダクト部32及び下部ダクト部34にそれぞれ設けられた上部シャッタ52及び下部シャッタ54を一体的に作動させることができ、シャッタ50を作動させるための装置構成を一体部品化し、コストを低減させることが可能となる。
【0051】
上記実施の形態においては、管路31が熱交換器35の下部位置に相当する車両前後方向位置まで延在する構成としているが、図2の仮想線で示すように、管路31をエンジン6の下方位置である排気系触媒7近傍まで延在させる構成としても良い。
【0052】
この構成によれば、常時開放経路200によってフロントグリル20及びバンパグリル22からダクト部30内に取り入れられた空気がこの延在した管路によってエンジン6の下方位置にある排気系触媒7近傍位置まで導かれるので、エンジン6の下方に位置する過熱性のエンジン周辺機器である排気系触媒7をより効果的に冷却し続けることが可能となる。
【0053】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上記実施の形態においては、車両2のエンジンルーム3の前面に位置する開口部をフロントグリル20とバンパグリル22の二つとし、これらの開口部からそれぞれシャッタ装置40に接続される上部ダクト部32及び下部ダクト部34を設ける構成としたが、この構成に限られるものではない。すなわち、車両2のエンジンルーム3の前面に位置する開口部をフロントグリルのみとし、このフロントグリルの上端及び下端からシャッタ装置40の上端及び下端までを接続するただ一つの筒状のダクトを設ける構成としてもよい。
【0054】
この構成によれば、シャッタを介する取入れ調整経路100とシャッタを介さない常時開放経路200を備える車両空気取り入れ構造において、常時開放経路200がエンジンルーム内の過熱性のエンジン周辺機器に向かう構成を有することによる上記発明の利点を享受しつつ、車両前部の空気取り入れ構造の構成の単純化を図ることができる。
【0055】
さらに、上記実施の形態においては、上部シャッタ52及び下部シャッタ54は、無端ベルト56として構成された駆動力伝達機構62により一体的に作動されるが、無端ベルトに限らず上部シャッタ52及び下部シャッタ54の一体的な作動を可能とするリンク機構等を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0056】
2 車両
3 エンジンルーム
6 エンジン
10 車両前部の空気取り入れ構造
20 フロントグリル
22 バンパグリル
30 ダクト部
31 管路
32 上部ダクト部
34 下部ダクト部
35 熱交換器
38 出口部
40 シャッタ装置
42a、44a 開閉可能開口領域
44b 常時開口領域
50 シャッタ
52 上部シャッタ
54 下部シャッタ
100 取入れ調整経路
200 常時開放経路
図1
図2
図3
図4