(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のスタティックミキサーにおいて、粘性を持つ液体の混合に関しては、乱流に限らず、層流で流れる場合においても、管壁及び管壁近傍部と管中心部とで流動速度の差が大きいことにより、位置変換と分割作用とを繰り返すことで徐々に移送方向にも均一性が高まる。
【0007】
しかし、粉体や樹脂ペレット等の粉粒体においては、充満状態で管内を流れる際には、管壁部と管中心部とでは殆ど速度差が無く、管内全体を塊の様に流れる、プラグフロー、ピストンフローもしくはバルクフローと呼ばれる特殊な層流状態となることが知られている。
このため、従来のスタティックミキサーを粉粒体の混合に用いた場合には、移送方向での均一化効果は小さいと言わざるを得ない。
【0008】
すなわち、2種以上の粉体又は2種以上の樹脂ペレット等の粉粒体をストレージタンクに投入した後、ストレージタンクから押出機や反応層等へ送る際、その途中で、従来のスタティックミキサー内を充満状態で移送させても、混合の均一性が大きく向上することはなく、ストレージタンク内の混合状態を殆ど保持したまま移送させることしか出来なかった。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みなされたもので、その目的は、2種以上の粉粒体を充満状態で移送させる際、管内における移送方向に対する速度差を積極的に生じさせ、移送方向の粉粒体の混合状態を高め、よって、粉
粒体混合物を均一化することが可能なバーティカルスタティックミキサーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討を行なった結果、本発明に到達したものであり、上記本発明の目的は、
予備混合された2種以上の粉粒体
混合物を
移送する供給管の途中に配置して用いられ、該粉粒体混合物を、管状物体内を充満状態で移送させ混合するバーティカルスタティックミキサーであって、
該管状物体内に仕切りエレメントが具備されており、該仕切りエレメントで仕切られた各々の流路の横断面積比率が移送方向において連続的に変化して
おり、該各々の流路が、一方の流路においては小開口断面積の上流側開口部から大開口断面積の下流側開口部に流れる流路であり、他方の流路においては大開口断面積の上流側開口部から小開口断面積の下流側開口部に流れる流路であることを特徴とするバーティカルスタティックミキサーにより達成される。
【0011】
管状物体内に仕切りエレメントを挿入し、仕切りエレメントで仕切られた管状物体内の各々の流路
の横断面積比率を上流側と下流側間で連続的に変化させた場合においても、仕切りエレメントで仕切られた下流側出口における流体の速度は、各々の線速度としてほぼ同一の速さを持つ。このため、仕切りエレメント上流側入口の容積速度は、仕切りエレメントで分割された各々で異なる容積速度となり、管状物体内に入る粉粒体の移動速度が変わることにより、移送方向に対する混合状態を高めることが出来ることを見出したのである。
【0012】
また、本発明のバーティカルスタティックミキサーは、1枚の仕切りエレメントで仕切られた2つの流路を有し、その横断面
積比率において、下流側開口部の
横断面積比率が15:85〜40:60であるか、または上流側開口部の
横断面積比率が15:85〜40:60であることが好ましい。
【0013】
また、本発明のバーティカルスタティックミキサーは、仕切りエレメントの垂直方向の長さが、管状物体の内径の1.5〜5倍であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、2種以上の粉粒体を充満状態で移送させる際、管状物体内で当該粉粒体混合物を均一に混合することが可能な、非常に単純な構造のバーティカルスタティックミキサーを提供することが出来る。
本発明のバーティカルスタティックミキサーを用いることで、仕切りエレメントで仕切られた各々の流路において粉粒体混合物が通過する時間が異なるようになることから、移送方向での均一化が可能となり、仕切りエレメント下流側で合流した際には、仕切りエレメントで仕切られた管状物体へ入る前の混合状態よりも、より均一化が達成される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明のバーティカルスタティックミキサーの基本的な構造を有する一実施態様を示す説明図である。
1はバーティカルスタティックミキサー、2は管状物体、3は仕切りエレメント、4は上流側開口部A、5は上流
側開口部B、6は下流側開口部A、7は下流側開口部Bである。
また、管状物体2と仕切りエレメント3は、アクリル樹脂製の透明体である。
【0018】
図1において、バーティカルスタティックミキサー1は、管状物体2の内部に仕切りエレメント3を具備してなり、その上流側入口を仕切りエレメント3により上流
側開口部A4と上流
側開口部B5に仕切り、下流側出口を下流側開口部A6、下流側開口部B7に仕切る構造となっている。また、仕切りエレメント3で仕切られた夫々の流路の横断面積比率は、連続的に変化しているよう、仕切りエレメント3が設置されている。
【0019】
図1に示されるバーティカルスタティックミキサー1は、例えば、
図2に示すように、予備混合された2種以上の粉体や樹脂ペレット等の粉粒体を、ホッパー11から、粉粒体を加工する押出混練機12へ供給する供給管8、8’の途中に配置して用いられる。
【0020】
図3は、本発明のバーティカルスタティックミキサーの混合機構を模式的に示す説明図である。
供給管8内にて、樹脂ペレットA(白色)9と樹脂ペレットB(黒色)10とは層状に積層された状態13となっており、プラグフローの状態で流動し、バーティカルスタティックミキサー1に流入する。
上流
側開口部A4より流入した粉粒体混合物14は、下流側開口部A6へ、同様に、上流
側開口部B5より流入した粉粒体混合物14’は下流側開口部B7へ流れる。その後、粉粒体混合物15、15’は供給管8’で一体となり同一の流れを作る。供給管8’内において、粉粒体混合物16は再度プラグフローの状態で流動する。
【0021】
このとき、バーティカルスタティックミキサー1の下流側出口の粉粒体混合物の線速度は、管状物体2の各々の流路の横断面積に係わらず同一である。下流側出口の線速度が同一であるため、上流側入口へ流入する際の粉粒体混合物の容積速度は、下流側開口部A6に繋がる上流側開口部A4の方が速くなり、逆に下流側開口部B7に繋がる上流側開口部B5の方が遅くなる。
すなわち、小開口断面積の上流側開口部A4から大開口断面積の下流側開口部A6の方が、早い速度を持って粉粒体混合物が流れることとなり、上流側開口部A4から下流側開口部A6の流れに比し、上流側開口部B5から下流側開口部B7の流れが遅くなるためにバーティカルスタティックミキサー1内で流動に時間差が生じ、移送方向において均一な混合が達成されるのである。
また、バーティカルスタティックミキサー1上流付近Cは、上記作用により、粉粒体混合物が、積層された状態13に比し、より混合された状態となっている。
【0022】
本発明において、仕切りエレメント3で仕切られた夫々の流路の横断面積比率は、連続的に変化していることが肝要である。
そのため、仕切りエレメント3は、その表面が平坦な板状であることが好ましいが、急激な断面積の差や段階的な面積差により、部分的に流動が殆ど生じない、いわゆるデッド部分が生じない程度に、その表面に凹凸を有していてもよい。また、仕切りエレメントは捻りを有してもよい。
【0023】
また、仕切りエレメントで仕切られた流路において、下流側開口部の
横断面積比率が好ましくは15:85〜40:60、より好ましくは25:75〜35:65であると、粉粒体の混合の均一性がより高い状態となる。
【0024】
このとき、仕切りエレメントで仕切られる上流側開口部の
横断面積比率は、特段規定されるものではなく、仕切りエレメントで仕切られた管状物体内の各々の流路の
横断面積比率が上流側と下流側間で連続的に変化していることを達していれば良い。但し、粉
粒体混合物が滑らかにバーティカルスタティックミキサーへ流入されることを達するためには、仕切りエレメントで仕切られた小さい方の上流側開口部の
横断面積比率は10%以上であることが望ましい。
【0025】
また、本発明においては、反対に、仕切りエレメントで仕切られた流路において、上流側開口部の
横断面積比率を、好ましくは15:85〜40:60、より好ましくは25:75〜35:65としてもよい。上流側開口部をこのように設定しても、粉粒体の混合の均一性がより高い状態が得られる。
【0026】
このとき、仕切りエレメントで仕切られる下流側開口部の
横断面積比率は、特段規定されるものではなく、仕切りエレメントで仕切られた管状物体内の各々の流路の
横断面積比率が上流側と下流側間で連続的に変化していることを達していれば良い。但し、粉
粒体混合物が滑らかにバーティカルスタティックミキサーから外へ移送されることを達するためには、仕切りエレメントで仕切られた小さい方の下流側開口部の
横断面積比率は10%以上であることが望ましい。
【0027】
また、仕切りエレメントの上端部および下端部は、夫々移送方向に対して完全に直
交している必要はなく、例えば、
図4に示すように、移送方向に対し直角以外の角度を持つような仕切りエレメント3aを設けるようにしても良い。
この場合には、仕切りエレメント3a上端部と同じ面において、仕切りエレメント3aで仕切られたそれぞれの面積4a、5aの比率が、好ましくは15:85〜40:60、より好ましくは25:75〜35:65であればよい。
【0028】
更に本発明において、仕切りエレメントの移送方向の長さは、管状物体の内径の好ましくは1.5倍から5倍、より好ましくは2倍から3倍であると、より均一化された状態となり、好適である。
【0029】
また、仕切りエレメントは、管状物体内の移送方向において、その一部に設けるようにしてもよい。
また、本発明の目的を達成する範囲で、管状物体内に、複数の仕切りエレメントを並列して設けるようにしてもよい。
【0030】
また、供給管途中において、バーティカルスタティックミキサーは一ヶ所だけに設けるようにしてもよいし、複数個設けるようにしてもよい。更に、2ヶ所以上にバーティカルスタティックミキサーを設ける場合、仕切りエレメントを直交
する位置に配すると、位置変換による混合効果が加えられることになり、より均一な混合を達成することが出来る。
【0031】
更に、バーティカルスタティックミキサーを構成する管状物体の断面形状は、円形でも三角形、四角形(正方形、長方形、菱
形等)や五角形、六角形等の多角形でも何ら問題が無い。
更にバーティカルスタティックミキサーの入口断面積と出口断面積が異なっていても仕切りエレメントで分割された断面積が連続的に変化している構造であれば、何ら問題は無い。
すなわち、
図5に示すように、管状物体をレジューサー構造とした場合のバーティカルスタティックミキサー20を用いる場合、レジューサー21内部に仕切りエレメント3bを具備するようにしてもよく、その際のレジューサー21は、同芯の形状でも、偏芯の形状でもよく、また管径が減少方向でも増加方向でも良い。
【0032】
また、管状物体は、割り構造を採用して洗浄性を考慮した形態であっても何ら問題は無い。
【0033】
本発明は、上記各実施形態に限定されるものではなく、発明の本質を変更しない範囲で、各部材の材質は、例えば、金属や塩化ビニル等であってもよく、管状物体の形状等の組合せを適宜目的に応じて変更してもよい。
【0034】
更に、供給される2種以上の粉粒体が予備的に混合されていてもよく、また2種類以上の粉粒体の比率を順次変えて供してもよい。
【実施例】
【0035】
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。
なお、本発明は以下に述べる実施例に限定されるものではない。
【0036】
〔混合性評価装置と評価手順〕
図6に示すように、振動フィーダー17上に、実施例毎に長さを設定した、内径50mmのアクリル管2(厚み3mm)を用い、その中に、アクリル製の仕切りエレメント3(厚み3mm)を具備したものをバーティカルスタティックミキサー1として設置し、混合性評価装置とした。
供給管8から、樹脂ペレットA(白色)9および樹脂ペレットB(黒色)10を50gずつ交互に充満させた後、振動フィーダー17を振動させ、バーティカルスタティックミキサー1下部より樹脂ペレット混合物16を10gずつ連続して10回、受け容器18に切り出した。切り出したそれぞれの樹脂ペレット混合物16中の樹脂ペレットB(黒色)10の重量比率を測定し、その最大比率と最小比率の差を求めた。
【0037】
〔判断基準〕
最大比率と最小比率の差が、20%以内のものを「◎」、40%以内のものを「○」、60%以内のものを「△」、更に最大比率と最小比率の差が60%を超えるものに関しては「×」と判定した。
【0038】
〔実施例1〕
長さ150mmのアクリル管中に、上流側開口部
横断面積比率を30:70とし、下流側開口部
横断面積比率を70:30となるように仕切りエレメント(長さ150mm)を具備したバーティカルスタティックミキサーを用いて、混合性評価装置にて評価した。
バーティカルスタティックミキサーにて混合された後の混合ペレット中の樹脂ペレットB(黒色)の比率は、最大比率が55%、最小比率40%でその差15%であり、「◎」判定とした。
【0039】
〔比較例1〕
内径50mm、長さ200mmのアクリル管を用い、仕切り
エレメントを具備せず、その他は実施例1と同様にして評価した。
得られた混合ペレット中の樹脂ペレットB(黒色)の比率は、最大比率が100%、最小比率が0%でその差は100%であり、「×」判定とした。
【0040】
〔比較例2〕
内径50mm、長さ200mmのアクリル管中に、上流側開口部
横断面積比率を50:50とし、下流側開口部
横断面積比率も50:50となるように仕切りエレメント(長さ200mm)を具備したバーティカルスタティックミキサーを用いて、その他は実施例1と同様にして評価した。
得られた混合ペレット中の樹脂ペレットB(黒色)の比率は、最大比率が100%、最小比率が0%でその差は100%であり、「×」判定とした。
【0041】
〔実施例2〕
内径50mm、長さ200mmのアクリル管中に、上流側開口部
横断面積比率を30:70とし、下流側開口部
横断面積比率を70:30となるように仕切り
エレメント(長さ200mm)を具備したバーティカルスタティックミキサーを用いて、その他は実施例1と同様にして評価した。
得られた混合ペレット中の樹脂ペレットB(黒色)の比率は、最大比率が53%、最小比率が41%でその差12%であり、「◎」判定した。
【0042】
〔実施例3〜9〕
内径50mm、長さ200mmのアクリル管中に、上流側開口部
横断面積比率及び下流側開口部
横断面積比率を夫々表1に示した比率とした以外は、実施例1と同様にして評価した。
得られた混合ペレット中の樹脂ペレットB(黒色)の最大比率と最小比
率及び評価を、表1に併せて示す。
【0043】
〔実施例10、11〕
内径50mmのアクリル管中(長さ50mm又は300mm)に、上流側開口部
横断面積比率を30:70とし、下流側開口部
横断面積比率を70:30となるように仕切りエレメント(長さ50mm又は300mm)を具備したバーティカルスタティックミキサーを用いた以外は実施例1と同様にして評価した。
得られた混合ペレット中の樹脂ペレットB(黒色)の最大比率と最小比率の差は、実施例10は47%、実施例11は41%であり、「△」と判定した。
【0044】
〔実施例12〕
実施例1で用いたバーティカルスタティックミキサーを2個用い、上流側のバーティカルスタ
ティックミキサーの出口仕切りエレメントと下流側バーティカルスタティックミキサーの入口仕切りエレメントとが、直交する位置に連結管を用いて繋いだ以外は、実施例1と同様にして評価した。
得られた混合ペレット中の樹脂ペレットB(黒色)の最大比率と最小比率の差は、7%であり、「◎」判定とした。
【0045】
〔比較例3〕
内径50mm、200mmのアクリル管中に、上流側開口部
横断面積比率を50:50、下流側開口部
横断面積比率も50:50とし、上流下流間で180
度捻られる構造の仕切り
エレメント(200mm)を具備したスタティックミキサー2個を用い、上流側のスタティックミキサーの出口仕切り
エレメントと下流側のスタティックミキサーの入口仕切り
エレメントが、直交する位置に連結管を用いて繋いだ以外は、実施例1と同様にして評価した。
得られた混合ペレット中の樹脂ペレットB(黒色)の比率は、最大比率が98%、最小比率が0%でその差は98%であり、「×」判定とした。
以上の結果を、表1及び表2に併せて示す。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】