特許第6353687号(P6353687)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6353687ボーリングロッド継ぎ足し方法およびボーリング装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6353687
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】ボーリングロッド継ぎ足し方法およびボーリング装置
(51)【国際特許分類】
   E21B 19/18 20060101AFI20180625BHJP
【FI】
   E21B19/18
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-81909(P2014-81909)
(22)【出願日】2014年4月11日
(65)【公開番号】特開2015-203194(P2015-203194A)
(43)【公開日】2015年11月16日
【審査請求日】2017年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊本 創
(72)【発明者】
【氏名】金子 哲也
(72)【発明者】
【氏名】山本 肇
【審査官】 荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−097174(JP,A)
【文献】 特開平07−216862(JP,A)
【文献】 特開平11−141264(JP,A)
【文献】 米国特許第06223837(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力容器内に延長用ロッドを配設する準備工程と、
前記圧力容器の内部を加圧する加圧工程と、
前記圧力容器内において、ボーリングロッドの基端部に前記延長用ロッドを継ぎ足す継ぎ足し工程と、を備えるボーリングロッド継ぎ足し方法であって、
前記ボーリングロッドは、その基端部が前記圧力容器内に配設された状態で、ボーリング孔に挿入されており、
前記加圧工程では、前記圧力容器内を水で満たすとともに、前記ボーリング孔内の水圧と同等の水圧になるように前記圧力容器内を加圧し、
前記継ぎ足し工程では、加圧された前記圧力容器内において、前記ボーリングロッドの基端部をウォータースイベルまたは前記ウォータースイベルに連結された連結用ロッドから分離する作業と、
前記ボーリングロッドの基端部に前記延長用ロッドを連結する作業と、
前記延長用ロッドを介して前記ボーリングロッドの基端部に前記ウォータースイベルまたは前記連結用ロッドを再度連結する作業と、
前記圧力容器内の水を排水する作業と、を行うことを特徴とする、ボーリングロッド継ぎ足し方法。
【請求項2】
ボーリング孔を削孔するボーリングロッドと、
前記ボーリング孔の孔口に設置されたプリペンダーと、
前記ボーリングロッドに連結されたポンプと、
前記プリペンダーと前記ポンプとの間に配設された圧力容器と、
前記圧力容器に収容された前記ボーリングロッドに継ぎ足される延長用ロッドと、を備えるボーリング装置であって、
前記ボーリングロッドは、前記プリペンダーに挿通されており、
前記ボーリングロッドの基端部は、前記圧力容器内に挿入されていることを特徴とするボーリング装置。
【請求項3】
前記圧力容器の内部に、前記ボーリングロッドを支持するための架台と、前記延長用ロッドを保持する治具を備えていることを特徴とする、請求項2に記載のボーリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボーリングロッド継ぎ足し方法およびボーリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル工事において、切羽前方の地質や地下水状況を把握することを目的として、トンネル切羽や切羽近傍に形成された拡幅部等から、切羽前方に向けて調査ボーリングを行う場合がある。
【0003】
このような調査ボーリングを行う場合には、延長用のロッド部材(延長用ロッド)をボーリングロッドに継ぎ足すことで、所定延長(所定深さ)のボーリング孔を形成する(例えば、特許文献1参照)。
そのため、延長用ロッドを継ぎ足す際には、図3に示すように、ボーリングロッド101の端部を開放あるいは、ボーリングロッド101の一部を切り離す必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−9603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ボーリング工事において、ボーリング孔の孔壁が崩壊すると、掘削ツール等が抑留されて、施工が困難になるおそれがある。
特に、トンネル工事における調査ボーリングや水抜きボーリング等、横方向に行うボーリング(水平ボーリング)では、ボーリングロッド101を継ぎ足す際(延長する際)に、一時的にボーリング孔102内の圧力が開放されるため、ボーリング孔102内に地下水Wが急激に流れ込み、孔壁崩壊のリスクが高くなる。
【0006】
このような観点から、本発明は、ボーリング孔内の圧力を維持した状態で、ボーリングロッドの延長を可能としたボーリングロッド継ぎ足し方法およびボーリング装置を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明のボーリングロッド継ぎ足し方法は、圧力容器内に延長用ロッドを配設する準備工程と、前記圧力容器の内部を加圧する加圧工程と、前記圧力容器内において、ボーリングロッドの基端部に前記延長用ロッドを継ぎ足す継ぎ足し工程とを備えており、前記ボーリングロッドは、その基端部が前記圧力容器内に配設された状態でボーリング孔に挿入されており、前記加圧工程では、前記圧力容器内を水で満たすとともに前記ボーリング孔内の水圧と同等の水圧になるように前記圧力容器内を加圧し、前記継ぎ足し工程では、加圧された前記圧力容器内において、前記ボーリングロッドの基端部をウォータースイベルまたは前記ウォータースイベルに連結された連結用ロッドから分離する作業と、前記ボーリングロッドの基端部に前記延長用ロッドを連結する作業と、前記延長用ロッドを介して前記ボーリングロッドの基端部に前記ウォータースイベルまたは前記連結用ロッドを再度連結する作業と、前記圧力容器内の水を排水する作業とを行うことを特徴としている。
【0008】
かかるボーリングロッド継ぎ足し方法によれば、ボーリング孔内の圧力を維持した状態でロッド部材を継ぎ足すため、ボーリングロッドとポンプとを切り離した際にボーリング孔内に地下水が急激に流れ込むことを防止できる。そのため、孔壁崩壊のリスクを低減させることができる。
【0009】
また、本発明のボーリング装置は、ボーリング孔を削孔するボーリングロッドと、前記ボーリング孔の孔口に設置されたプリペンダーと、前記ボーリングロッドに連結されたポンプと、前記プリペンダーと前記ポンプとの間に配設された圧力容器と、前記圧力容器に収容された前記ボーリングロッドに継ぎ足される延長用ロッドとを備えていて、前記ボーリングロッドは前記プリペンダーに挿通されており、前記ボーリングロッドの基端部は前記圧力容器内に挿入されており、前記圧力容器は前記ボーリングロッドに継ぎ足される延長用ロッドを収容可能である。
【0010】
前記ボーリング装置は、前記圧力容器の内部に、前記ボーリングロッドを支持するための架台と、延長用ロッドを保持する治具を備えているのが望ましい。
【0011】
かかるボーリング装置によれば、圧力容器内においてボーリングロッドの継ぎ足し作業を行うことができる。圧力容器内の圧力をボーリング孔内の圧力と同等にした状態でボーリングロッドの継ぎ足し作業を行えば、ボーリング孔内に地下水が急激に流れ込むことを防止することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のボーリングロッド継ぎ足し方法およびボーリング装置によれば、ボーリング孔内の圧力を維持した状態で、ボーリングロッドを延長することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(a)〜(d)は、本実施形態のボーリングロッド継ぎ足し方法の各工程を模式的に示す縦断図である。
図2】本実施形態の圧力容器を模式的に示す横断図である。
図3】従来のボーリングロッド継ぎ足し方法を模式的に示す縦断図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態では、トンネル工事において切羽前方に向けて調査ボーリングを行う場合について説明する。
調査ボーリングに使用するボーリング装置1は、図1の(a)に示すように、ボーリングロッド2と、プリペンダー3と、ポンプ4と、圧力容器5とを有している。
【0015】
ボーリングロッド2は、図示しないボーリングマシンの動力により、中心軸を中心に回転することで、地盤Gを切削してボーリング孔6を形成する。
【0016】
ボーリングロッド2は、中空の筒状部材により構成されている。ボーリングロッド2の先端には、先端ビット21が固定されている。
ボーリングロッド2は、複数のロッド部材を連結することにより形成されている。ボーリングロッド2を延長する場合には、既設のボーリングロッド2の基端部に延長用のロッド部材(延長用ロッド22)を継ぎ足す(図1の(d)参照)。
【0017】
ボーリングロッド2の基端部には、連結用ロッド2aを介してポンプ4が連結されている。
ボーリングロッド2は、ポンプ4から送水された高圧水を、先端ビット21に送水する。
【0018】
ボーリングロッド2は、プリペンダー3を通って、ボーリング孔6に挿入されている。
また、ボーリングロッド2の基端部は、圧力容器5内に挿入されており、圧力容器5内で連結用ロッド2aと接続されている。
【0019】
プリペンダー3は、ボーリング孔6の孔口に設置された止水手段である。
プリペンダー3は、ボーリング孔6の孔口において、ボーリング孔6とボーリングロッド2との隙間を遮蔽している。
【0020】
本実施形態のプリペンダー3は、本体部31と、取付部32と、シール部33とを備えている。なお、プリペンダー3の構成は限定されない。
【0021】
本体部31は、ボーリングロッド2の外径よりも大きな内径を有した管状部材からなる。
本体部31の一端はボーリング孔6に挿入されており、他端はボーリング孔6から突出している。本体部31を構成する材料は限定されるものではないが、例えば、鋼管を使用すればよい。
【0022】
本体部31には、排水口(図示せず)が形成されている。排水口には排水管9が接続されている。
排水管9は、バルブ8により開閉可能に構成されている。
【0023】
ボーリング孔6の削孔時は、排水管9をバルブ8により開閉してボーリング孔6からの排水量を制御することで、ボーリング孔6の孔壁の崩壊を防止するとともに、ボーリング孔6内が必要以上に高圧になることを防止する。
【0024】
取付部32は、本体部31の外面およびボーリング孔6の内壁面に密着し、本体部31とボーリング孔6との隙間を遮蔽している。なお、取付部32を構成する材料は、ボーリング孔6内の地下水圧に対して十分な耐力を備えていれば限定されないが、本実施形態ではセメント系の部材を使用している。
【0025】
シール部33は、リング状の部材であって、本体部31の内部に配設されている。
シール部33は、ボーリングロッド2の外面に密着しているとともに、ボーリングロッド2を回転可能に支持している。シール部33を構成する材料は、ボーリング孔6内の地下水圧に対して十分な耐力を備えていれば限定されない。
【0026】
ポンプ4は、ウォータースイベル7を介して連結用ロッド2aの基端部に連結されていて、連結用ロッド2aおよびボーリングロッド2を介してボーリング孔6の先端に高圧水を送水する。
ポンプ4とウォータースイベル7との間には、バルブ8が介設されている。
【0027】
圧力容器5は、プリペンダー3とポンプ4(ウォータースイベル7)との間に配設された、密閉可能な箱型部材である。
圧力容器5は、延長用ロッド22を収容可能な形状を有している。
【0028】
本実施形態では、圧力容器5が箱型に形成されているが、圧力容器5の形状は限定されない。また、圧力容器5を構成する材料は、ボーリング孔6内の水圧(地盤Gの地下水圧)に耐え得る強度を有していれば、限定されるものではない。
【0029】
図1の(a)および図2に示すように、圧力容器5の内部には、ボーリングロッド2を支持するための架台51と、延長用ロッド22を保持するための治具52が配設されている。治具52は、架台51の上方において延長用ロッド22を保持することが可能となるように構成されている。
【0030】
圧力容器5の切羽側の壁面部にはボーリングロッド2を挿通するための挿通孔が形成されており、圧力容器5のポンプ側の壁面部には連結用ロッド2aを挿通するための挿通孔が形成されている。
ボーリングロッド2の基端部は、連結用ロッド2aを介してウォータースイベル7に接続されている。
【0031】
圧力容器5の挿通孔には、ボーリングロッド2または連結用ロッド2aとの隙間を密閉するためのシール材(図示せず)が設置されていて、圧力容器5の密閉が可能に構成されている。なお、シール材を構成する材料は、圧力容器5の密閉を可能とし、かつ、ボーリングロッド2の回転を妨げないものであれば限定されない。
【0032】
ボーリング孔6の削孔は、ポンプ4から送水された高圧水を先端ビット21から噴射するとともに、ボーリングロッド2を回転させることにより行う。
ボーリング孔6は、ボーリングロッド2を延長させながら、所定の深さまで削孔する。
【0033】
ボーリングロッド2の延長は、ボーリングロッド2の基端部に延長用ロッド22を継ぎ足すことにより行う。
ボーリングロッド継ぎ足し方法は、準備工程と、加圧工程と、継ぎ足し工程とを備えている。
【0034】
準備工程は、図1の(a)に示すように、圧力容器5内に延長用ロッド22を配設する工程である。
延長用ロッド22は、治具52に設置する。
【0035】
準備工程は、ボーリング孔6の削孔と並行して行ってもよいし、ボーリング孔6の削孔を中断して行ってもよい。
なお、ボーリング孔6の削孔を中断する際には、ポンプ4の停止に伴い、ポンプ4とウォータースイベル7との間に配設されたバルブ8を遮蔽する。バルブ8を遮蔽することで、ボーリングロッド2の先端側から基端側に向かう水の流れを停止し、ボーリングロッド2内への地下水(土砂)の流入を防止する。
【0036】
加圧工程は、圧力容器5の内部を加圧する工程である。
まず、図1の(b)に示すように、圧力容器5に水Wを注水する。
【0037】
次に、圧力容器5を密閉して、ポンプにより圧力容器5内の水Wを加圧する。
圧力容器5内の加圧は、ボーリング孔6内(地盤G内)の水圧と同程度になるまで行う。
【0038】
圧力容器5内の加圧には、ボーリング孔6の削孔に使用する高圧水を送水するためのポンプ4を使用してもよいし、別途設けられたポンプを使用してもよい。
【0039】
継ぎ足し工程は、加圧された圧力容器5内において、ボーリングロッド2の基端部に延長用ロッド22を継ぎ足す工程である。継ぎ足し工程を行う際は、ボーリング孔6の削孔を中断する。
【0040】
継ぎ足し工程では、まず、図1の(c)に示すように、圧力容器5内において、ボーリングロッド2と連結用ロッド2aとを分割する(切り離す)。
【0041】
次に、図1の(d)に示すように、ボーリングロッド2と連結用ロッド2aとの間に延長用ロッド22を配設し、ボーリングロッド2および連結用ロッド2aと延長用ロッド22を連結する。
連結用ロッド2aは、治具52から取り外して架台51上に落下させることで、ボーリングロッド2と連結用ロッド2aとの間に配設する。
【0042】
なお、延長用ロッド22の連結箇所は限定されない。例えば、ボーリングロッド2の一部を圧力容器5内で分割して、その間に延長用ロッド22を連結してもよい。また、ボーリングロッド2とウォータ―スイベル7とが直接連結されていて、当該連結箇所が圧力容器5内に配設されている場合には、ボーリングロッド2をウォータースイベル7から切り離して、ボーリングロッド2とウォータースイベル7の間に延長用ロッド22を介設してもよい。
【0043】
延長用ロッド22を連結したら、圧力容器5内の水Wを排水して、圧力容器5内の圧力を大気圧に開放する。
圧力容器5内の圧力を解放したら、ボーリング孔6の削孔を再開する。
【0044】
以上、本実施形態のボーリング装置およびボーリングロッドの継ぎ足し方法によれば、密閉された圧力容器5内において延長用ロッド22の継ぎ足し作業を行うため、ボーリング孔6内の圧力を維持することができる。
【0045】
すなわち、ボーリングロッド2をポンプ4と切り離した際(ボーリングロッド2を分割した際)に、ボーリング孔6内に地下水が急激に流れ込むことを防止し、ひいては、ボーリング孔6の孔壁が崩壊することを防止できる。
【0046】
また、ボーリングロッド2の基端部における湧水を防止することができ、作業を容易に行うことができる。
また、ボーリングロッド2(先端ビット21)内に土砂が流れ込むことにより、先端ビット21等が詰まることを防止することができる。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、水を利用して圧力容器内を加圧する場合について説明したが、圧力容器内の加圧方法は限定されない。例えば、圧力容器内において気体を加圧してもよい。
【0048】
延長用ロッドを保持する治具は、延長用ロッドをボーリングロッドに接続する際に、延長用ロッドを所定の位置に移動させるためのアームを備えたものであってもよい。
また、圧力容器には、延長用ロッドを治具から架台へ誘導するための部材が設置されていてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 ボーリング装置
2 ボーリングロッド
21 先端ビット
22 延長用ロッド
3 プリペンダー
4 ポンプ
5 圧力容器
51 架台
52 治具
6 ボーリング孔
7 ウォータースイベル
8 バルブ
9 排水管
G 地盤
W 水
図1
図2
図3