(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
このようなジャッキ装置を作業用車両の車体側部に取り付け、作業時にジャッキ装置を伸長させて車体を持上支持するように構成することが従来知られている。例えば下記の特許文献1には、車体2の前後左右にジャッキ(ジャッキ装置)10を取り付けて構成される作業用車両の一例としての高所作業車1が開示されている。このような従来のジャッキ装置の一般的な構成について、
図7を参照しながら説明する。
図7に示すジャッキ装置500は、車体側部に取り付けられて下端に開口を有する中空箱状のアウターポスト510、アウターポスト510に対して上下に昇降自在に嵌入されたインナーポスト520、インナーポスト520の下端に接合された接地板530、および両ポスト510,520内に上下に伸縮自在に設けられたジャッキシリンダ540から構成されている。
【0003】
このジャッキ装置500を備える作業用車両を用いて作業を行う時、ジャッキシリンダ540を伸長動させて、アウターポスト510に対してインナーポスト520を下方に伸長させて接地板530を接地させて車両を持ち上げ支持する。これにより、車両に生じる転倒モーメントに抗して車両が安定支持され、作業を安全に行うことができる。一方、作業が終了すると、ジャッキシリンダ540を縮小動させてインナーポスト520を上方に縮小させ、アウターポスト510内にインナーポスト520を嵌入させて格納する。ここで、接地板530はアウターポスト510の下端開口部よりも大きな面積を有して構成されるものが一般的であり、通常、接地板530の上面がアウターポスト510の下端部に当接するまでジャッキシリンダ540が縮小動されて格納される。このとき、縮小作動が停止されるまでは、ジャッキシリンダ540の引張力によりアウターポスト510の下端に接地板530が押し付けられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ジャッキシリンダ540の縮小作動によりインナーポスト520を格納する際にアウターポスト510の下端に接地板530が当接するときに、ジャッキシリンダ540の作動速度に応じた速度で接地板が当接することとなり、当接時に衝撃が生じて衝撃音が発生したり、当接部が劣化(塗装の剥離など)したりするおそれがあるという問題がある。また、アウターポスト510の下端に接地板530が当接した後においてジャッキシリンダ540の縮小作動が停止されるまでは、ジャッキシリンダ540の縮小作動力が当接部に作用し、この作動力により当接部がより劣化しやすいという問題がある。
【0006】
ジャッキ装置500は、車両を持上支持するときに車両の荷重に耐え得る強度(剛性)が要求されることから、通常鋼材を用いて構成される。このため、ジャッキシリンダ540を縮小動させて格納するときに生じるアウターポスト510の下端と接地板530の当接はメタル接触となり、上記の衝撃音が大きなものとなりやすく、当接部の劣化がより厳しいものとなりやすいという問題がある。特に鋼材を使用するときには錆の防止などの目的から表面が塗装されるのが一般的であるが、上述のような衝撃的な当接や、ジャッキシ
リンダ540の作動力を受けた当接により、当接部の塗装が剥がれ、その部分に錆が発生しやすくなるという課題がある。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、格納時におけるアウターポストと接地板との衝撃を和らげ、衝撃音の発生を抑え、当接部の劣化(特に、当接部の塗装の剥離、錆の発生)を抑えることができる簡易な構成のジャッキ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係るジャッキ装置は、下端が開口して上下に延びる中空箱状のアウター部材(例えば、実施形態におけるアウターポスト20)と、前記アウター部材内に上下に移動自在に嵌入されたインナー部材(例えば、実施形態におけるインナーポスト30)と、前記インナー部材の下部に取り付けられた接地板とを備えて構成され、前記アウター部材に対して前記インナー部材を上方に移動させて前記アウター部材の下端に前記接地板の上面を当接させた状態で格納されるジャッキ装置であって、前記アウター部材の内部に、前記インナー部材を上下にスムーズにスライド移動させるためのスライダ部材(例えば、実施形態における上側スライダ23R,23L,23F,23B、下側スライダ24L,24B)が複数設けられており、複数の前記スライダ部材のうちの少なくとも一部(例えば、実施形態における下側スライダ24R,24F)が前記アウター部材の下端から下方に突出して設けられている。
【0009】
上述のジャッキ装置において、前記スライダ部材は、前記アウター部材および前記接地板よりも柔らかい材料から構成されていることが好ましい。
【0010】
上述のジャッキ装置において、前記アウター部材および前記接地板は、鋼材を用いて形成されており、前記スライダ部材は、樹脂材料を用いて形成されている構成が好ましい。
【0011】
上述のジャッキ装置において、前記アウター部材の下部内側に、外方に拡がって下方に開放された拡張空間(例えば、実施形態における右拡張空間22R、前拡張空間22F)が形成されており、前記少なくとも一部のスライダ部材は、前記拡張空間の上部を形成する上壁部(例えば、実施形態における右側壁部下面21R、前側壁部下面21F)に近接して前記アウター部材の下部内側に取り付けられている構成が好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るジャッキ装置は、アウター部材の下端に接地板の上面を当接させた状態で格納される構成を前提とし、インナー部材を上下にスムーズにスライド移動させるための複数のスライダ部材のうちの少なくとも一部が、アウター部材の下端から下方に突出して設けられている。このため、ジャッキ装置を格納させる際、スライダ部材により接地板が受け止められ、接地板がスライダ部材の下端に当接した状態で格納状態となる。スライダ部材は通常ジャッキ装置に用いられている部材であり、インナー部材を上下にスムーズにスライド移動させるために、一般的にアウター部材よりも柔らかい材料を用いて構成される。このスライダ部材を利用して接地板を受け止める構成であるので、接地板が当接するときの衝撃を吸収させて緩和させることができる。これにより、格納時における接地板の当接時での衝撃音を抑え、当接部の劣化(塗装の剥離など)を抑えることができる。なお、アウター部材の下端に接地板を受け止める柔らかい材料の部材を別途設けても同様な効果が得られるが、新たな別部材が必要である。これに対し、本発明に係るジャッキ装置の場合には一部のスライダ部材の下端を突出させるだけであり、このスライダ部材が、スライダとしての機能と、接地板を衝撃を和らげながら受け止める機能とを兼用しており、構成を簡単にできるという効果がある。
【0013】
スライダ部材を、アウター部材および接地板よりも柔らかい材料から構成すれば、アウター部材および接地板の強度、ひいてはジャッキ装置の強度を確保しつつ、格納時における接地板の衝撃を柔らかい材料のスライダ部材により受け止め、衝撃を効果的に吸収することができる。
【0014】
アウター部材および接地板が鋼材を用いて形成され、スライダ部材が樹脂材料を用いて形成される構成とした場合には、上記と同様にアウター部材および接地板の強度、ひいてはジャッキ装置の強度を確保しつつ、格納時における接地板の衝撃を樹脂材料製のスライダ部材により受け止め、衝撃を効果的に吸収することができる。
【0015】
さらに、アウター部材に下端から下方に突出して設けられたスライダ部材が、拡張空間の上部を形成する上壁部に近接して取り付けられている構成とすれば、格納時に接地板が押し付けられることによりスライダ部材に作用する力が、上壁部でも受け止められる。このため、スライダ部材の取付強度を高くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。本実施形態においては、本発明に係るジャッキ装置を作業用車両の一例としての高所作業車に搭載した例について説明する。
図1には、本発明に係るジャッキ装置10を搭載して構成される高所作業車1の斜視図を示しており、まず、この
図1を参照しながら高所作業車1の全体構成について説明する。なお、説明の便宜のため、各図に付記する矢印方向を前後、左右および上下方向と定義して以下の説明を行う。
【0018】
この高所作業車1は、運転キャブ2aと前後輪3a,3bを有して走行自在となったトラック車両をベースとして構成される。この車両の車体2上に旋回モータ(図示せず)により駆動されて水平旋回自在となった旋回台4が配設され、旋回台4には起伏シリンダ6により起伏自在となったブーム5が枢結されている。ブーム5は、旋回台4に枢結された基端ブーム5a内に先端ブーム5bを入れ子式に組み合わされて構成され、内蔵の伸縮シリンダ(図示せず)により伸縮自在となっている。先端ブーム5bの先端部には上下方向に揺動自在に垂直ポスト部材(図示せず)が取り付けられ、この垂直ポスト部材の上に首振り装置(図示せず)を介して作業台7が水平旋回(首振り作動)自在に取り付けられている。なお、先端ブーム5bと垂直ポスト部材との間にはレベリング装置(図示せず)が配設されており、このレベリング装置によりブーム5の起伏に拘わらず作業台7が常に水平に保持される。
【0019】
作業者は作業台7上に搭乗して高所作業等を行うのであるが、このときに作業者が操作して作業台7の移動操作を行うための操作装置(図示せず)が作業台7に設けられている。このため、作業台7に搭乗した作業者は、操作装置の操作レバーなどを操作して、旋回
台4の旋回作動、ブーム5の起伏および伸縮作動、作業台7の首振り作動等を行わせて作業台7を所望高所に移動させ、その所望高所にて高所作業を行うことができる。
【0020】
このようにして高所作業を行うときに、前後輪3a,3bのみによっては車体2を安定支持することが難しいため、車体2の前後左右の四カ所にジャッキ装置10が設けられている。具体的には、車体2に取り付けられたアウトリガボックス(図示せず)に、左右に伸縮可能にアウトリガビーム8が嵌入されており、このアウトリガビーム8の左右先端にジャッキ装置10が取り付けられている。このため、アウトリガボックスに対してアウトリガビーム8を左右に伸縮作動させることにより、ジャッキ装置10を左右外側へ向けて張り出したり、左右内側へ向けて格納させたりすることができる。なお、各ジャッキ装置10は同一の基本構成を有しているため、以下においては、車体2の前方左側に設けられたジャッキ装置10について、
図2〜
図6を参照しながら説明を行う。
【0021】
ジャッキ装置10は、
図2に示すように、アウトリガビーム8の先端に上下に延びて取り付けられたアウターポスト20と、アウターポスト20内に上下に移動自在に嵌入されたインナーポスト30と、アウターポスト20に対してインナーポスト30を上下動させるジャッキシリンダ40と、インナーポスト12の下方に位置して路面に接地される接地板50と、インナーポスト12の下端に接地板50を取り付ける継手機構60とを備えて構成される。なお、
図2においては、ジャッキ装置10の上部の内部構造を分かりやすく示すために、ジャッキ装置10の上部を開放させた状態を示している。
【0022】
アウターポスト20は、鋼材を用いて下方に開口した矩形断面の箱状に形成されたポスト本体部材21と、板状の鋼材を略直角に折り曲げて矩形枠状に形成され、ポスト本体部材21の下部外面に結合された補強部材22,22とを備えて構成される。各補強部材22は、ポスト本体部材21の下方開口部を側方から囲むとともに、ポスト本体部材21から下方に突出するように結合されており、ポスト本体部材21下部の強度(剛性)を向上させている。
【0023】
インナーポスト30は、鋼材を用いて上下に開口した矩形断面の箱状に形成され、アウターポスト20内に嵌入されて上下に移動自在となっている。
【0024】
ジャッキシリンダ40は、
図3に示すように、シリンダチューブ41内に上端にピストン(図示せず)を有したシリンダロッド42を嵌入させて構成され、シリンダチューブ41内に供給される油圧によりシリンダロッド42が伸縮作動される油圧シリンダにより構成される。ジャッキシリンダ40は両ポスト20,30に囲まれた空間内に配設され、シリンダチューブ41の上端部43が、上端枢結ピン43aを介してポスト本体部材21の上部に枢結されている(
図2参照)。一方、シリンダロッド42の下端部に、ピン挿通孔44aが形成されたロッドヘッド44を有しており、このロッドヘッド44を介して継手機構60に連結される(
図6参照、詳細は後述)。
【0025】
接地板50は、鋼材を用いて平板状に形成されており、アウターポスト20の下方開口部よりも大きな面積を有している。
【0026】
継手機構60は、
図4〜
図6に示すように、インナーポスト30の下端に取り付けられた左右一対のインナーポスト接続部材61,61と、上方が開放された箱状に形成されシリンダロッド42のロッドヘッド44に取り付けられる継手部材62と、接地板50の上面に取り付けられた前後一対の接地板接続部材63,63とを備えて構成される。
【0027】
インナーポスト接続部材61は、
図5に示すように、左右に貫通するピン挿通孔61aが形成されており、インナーポスト30の下端から下方に延びて位置するようにインナー
ポスト30の左右内面に取り付けられる。
【0028】
継手部材62は、上方に開放された収容空間62aと、左右に貫通するピン挿通孔62b,62bと、前後外面から前後に延びる前後軸部62c,62c(
図6参照)とを備えて構成される。この継手部材62は、収容空間62a内にロッドヘッド44を収容させてロッドヘッド44に取り付けられる。その取付状態において、インナーポスト接続部材61のピン挿通孔61a、継手部材62のピン挿通孔62bおよびロッドヘッド44のピン挿通孔44aに、下端枢結ピン64を左右に挿通させることにより、継手部材62は、下端枢結ピン64を中心として前後に揺動自在にロッドヘッド44(インナーポスト接続部材61)に支持される。
【0029】
接地板接続部材63は、前後に貫通する軸部挿通孔63aが形成されており、この軸部挿通孔63aに継手部材62の前後軸部62cが前後に挿通されている。このため、接地板接続部材63を介して接地板50が、前後軸部62cを中心として左右に揺動自在に継手部材62に支持される。この継手部材62は、上述したように下端枢結ピン64を中心として前後に揺動自在に支持されていることから分かるように、接地板50は継手機構60を介して、インナーポスト30(ロッドヘッド44)に前後および左右に揺動自在に支持されている。
【0030】
以上のように構成されるジャッキ装置10は、ジャッキシリンダ40を伸長作動させてアウターポスト20に対してインナーポスト30を下方に移動させ、ジャッキシリンダ40に継手機構60を介して接続された接地板50を接地させることにより、車体2を持上支持することができる。ここで、接地板50は、継手機構60を介してロッドヘッド44に前後および左右に揺動自在に支持されているので、路面に当接して路面と平行になるように前後および左右に揺動され、その状態で接地する。このため、接地板50における路面との接地面積を確保することができて、安定して車体2を持上支持することができる。
【0031】
そして、高所作業が終了して高所作業車1を走行移動させるときには、ジャッキシリンダ40を縮小作動させて、アウターポスト20に対してインナーポスト30(接地板50)を上方に移動させて格納させる。このようにしてインナーポスト30を格納させる際、接地板50の上面がアウターポスト20の下端に当接するまでジャッキシリンダ40が縮小作動されるとともに、ジャッキシリンダ40の縮小作動が停止されるまでは、ジャッキシリンダ40の引張力によりアウターポスト20の下端に接地板50が押し付けられた状態が継続する。特に、接地板50およびアウターポスト20は鋼材を用いて形成されているため、これらを直接当接(メタル接触)させると、大きな衝撃や衝撃音が発生したり、当接部の劣化が厳しいものになるとともに、錆防止のための塗装が剥がれて錆が発生しやすくなるという問題がある。そこで、本発明に係るジャッキ装置10においては、インナーポスト30をスムーズに上下動させるためのスライダを利用して、この問題を解決している。以下、このスライダについて詳細に説明する。
【0032】
図2および
図3に示すように、アウターポスト20には、アウトリガビーム8との接続部分よりも下側に上側スライダ23R,23L,23F,23Bが取り付けられるとともに、これら上側スライダの下方であって下方開口部近傍に下側スライダ24R,24L,24F,24Bが取り付けられている。
【0033】
上側スライダ23R,23L,23F,23Bは樹脂材料(例えば、MCナイロン(登録商標))を用いて矩形平板状に形成され、それぞれポスト本体部材21の右側壁部、左側壁部、前側壁部、後側壁部に取り付けられて、インナーポスト30の右側外面、左側外面、前側外面、後側外面に摺接する。
【0034】
下側スライダ24R,24L,24F,24Bは、ジャッキシリンダ40の引張力に耐え得る強度(剛性)を有した樹脂材料(例えば、MCナイロン(登録商標))を用いて矩形平板状に形成されている。
【0035】
下側スライダ24Rは、
図5に示すように、ポスト本体部材21の右側壁部下面21Rと、このポスト本体部材21の右側壁部から下方に突出する補強部材22の内面とによって囲まれた右拡張空間22Rに位置して取り付けられる。この右拡張空間22Rは、右方に拡がるとともに下方に開放された空間である。下側スライダ24Rは、右側壁部下面21Rに上下に近接した状態で補強部材22の内面に取り付けられて、インナーポスト30の右側外面(上側スライダ23Rが摺接する面)に摺接する。下側スライダ24Rは、このようにして右拡張空間22Rに位置して取り付けられた状態において、補強部材22に対して下方に突出する上下寸法を有している。一方、下側スライダ24Lは、上記の下側スライダ24Rと左右に対向するようにポスト本体部材21の左側壁部の下端内面に取り付けられて、インナーポスト30の左側外面(上側スライダ23Lが摺接する面)に摺接する。
【0036】
下側スライダ24Fは、
図6に示すように、ポスト本体部材21の前側壁部下面21Fと、このポスト本体部材21の前側壁部から下方に突出する補強部材22の内面とによって囲まれた前拡張空間22Fに位置して取り付けられる。この前拡張空間22Fは、前方に拡がるとともに下方に開放された空間である。下側スライダ24Fは、前側壁部下面21Fに上下に近接した状態で補強部材22の内面に取り付けられて、インナーポスト30の前側外面(上側スライダ23Fが摺接する面)に摺接する。下側スライダ24Fは、上記の下側スライダ24Rと同様に、前拡張空間22Fに位置して取り付けられた状態において、補強部材22に対して下方に突出する上下寸法を有している。一方、下側スライダ24Bは、上記の下側スライダ24Fと前後に対向するようにポスト本体部材21の後側壁部の下端内面に取り付けられて、インナーポスト30の後側外面(上側スライダ23Bが摺接する面)に摺接する。
【0037】
このように、上側スライダ23R,23L,23F,23Bおよび上側スライダ24R,24L,24F,24Bがインナーポスト30の外面に摺接するので、アウターポスト20に対してインナーポスト30をスムーズに上下に移動させることができる。そして、ジャッキ装置10を格納させる際は、ジャッキシリンダ40を縮小作動させてアウターポスト20の下端、すなわち、下側スライダ24R,24Fにより接地板50を受け止めて格納される。ここで、下側スライダ24R,24Fは樹脂材料により形成されているので、ジャッキシリンダ40の作動速度に応じた速度で接地板50が当接されても、当接による衝撃が下側スライダ24R,24Fによって吸収されて緩和されるので、格納時における衝撃や衝撃音の発生を抑えることができる。
【0038】
ジャッキ装置10を格納させる際、下側スライダ24R,24Fに接地板50が当接された後、ジャッキシリンダ40の縮小作動が停止されるまで、ジャッキシリンダ40の引張力により下側スライダ24R,24Fに接地板50が押し付けられた状態が継続する。一般にジャッキ装置10は錆防止等のために表面が塗装されるが、上述のように接地板50を受け止める下側スライダ24R,24Fが、接地板50(鋼材)よりも柔らかい樹脂材料により形成されているので、押し付けられた状態が継続しても接地板50における当接部分の塗装の剥離を抑えて、その当接部分に錆が発生することを抑えることができる。
【0039】
ジャッキ装置10を格納させる際に、ジャッキシリンダ40の縮小作動によって下側スライダ24R,24Fに対して下方から接地板50が押し付けられると、下側スライダ24R,24Fを介してポスト本体部材21の下面(右側壁部下面21Rおよび前側壁部下面21)に、ジャッキシリンダ40の縮小作動力が上向きに作用する。このときポスト本
体部材21に作用する力の向き(上向き)は、ポスト本体部材21の構造により特に強度(剛性)が確保された向きであるため、アウターポスト20(ポスト本体部材21)は、ジャッキシリンダ40の縮小作動力により接地板50が押し付けられるときに作用する力をしっかりと受け止めることができる。
【0040】
ところで、ジャッキ装置10においては、アウターポスト20の上部の隙間からアウターポスト20の内部に雨水等が入り込むことがある。しかし、
図5および
図6に示すように、格納状態において、アウターポスト10のうちで下側スライダ24R,24Fのみが接地板50の上面に当接し、その他の部分は接地板50と上下に離れているので、この上下に離れた部分から、内部に入り込んだ水を外部に排出させることができる。このため、アウターポスト20の内部(接地板50の上面)に雨水等が溜まることがなく、このような点からも接地板50上面における錆の発生を抑えることができる。
【0041】
また、アウターポスト20に対してインナーポスト30をスムーズに上下移動させるためには、アウターポスト20内面(スライダ)とインナーポスト30外面との間隔が適正範囲内に収まることが求められる。しかし、ジャッキ装置10を構成する各部材は、公差の範囲内で製造上生じる寸法のばらつきを有しているため、ジャッキ装置10それぞれについて上記間隔が所定範囲内に収まるように調整が必要となる。そこで、ジャッキ装置10においては、スライダとアウターポスト20内面との間に、間隔調整用のシムを挟持させ、その状態でスライダをアウターポスト20の内面に取り付ける調整方法を採用している(以下、この調整を「シム調整」と称する)。以下、このシム調整について説明する。
【0042】
まず、アウターポスト20とインナーポスト30との左右間隔をシム調整する方法について説明する。左右間隔の調整においては、左右に対向する上側スライダ23Rもしくは上側スライダ23L(下側スライダ24Rもしくは下側スライダ24L)をシム調整すれば良いが、ジャッキ装置10においては、格納時に接地板50を介してジャッキシリンダ40の縮小作動力が作用する下側スライダ24Rをシム調整の対象から外すため、上側スライダ23Lおよび下側スライダ24Lをシム調整する構成としている。シム調整の際は、シムを取り付けるため対象となるスライダの取り外しおよび再取り付けが必要となるが、下側スライダ24Rをシム調整の対象から外すことにより、シム調整時に補強部材22から下側スライダ24Rを取り外したり、再度取り付けたりする必要がない。このため、ジャッキシリンダ40の縮小作動力に耐え得る取付強度が求められる下側スライダ24Rを、補強部材22に強固に固定保持させることが容易となる。
【0043】
次に、アウターポスト20とインナーポスト30との前後間隔をシム調整する方法について説明する。前後間隔の調整においては、前後に対向する上側スライダ23Fもしくは上側スライダ23B(下側スライダ24Fもしくは下側スライダ24B)をシム調整すれば良いが、左右間隔の調整と同様に、格納時にジャッキシリンダ40の縮小作動力が作用する下側スライダ24Fをシム調整の対象から外すため、上側スライダ23Bおよび下側スライダ24Bをシム調整する構成としている。このため、ジャッキシリンダ40の縮小作動力に耐え得る取付強度が求められる下側スライダ24Fを、補強部材22に強固に固定保持させることが容易となる。
【0044】
また、スライダをシム調整する際、通常そのスライダの形状に応じたシムが用いられる。このため、上述のように、上側スライダ23B,23Lおよび下側スライダ24B,24Lをシム調整する場合に、これら上側スライダ23B,23Lおよび下側スライダ24B,24Lを共通部品とすることにより、シム調整に用いるシムを共通化して種類を減らことができるので、ジャッキ装置10の部品管理が容易になる。さらに、上側スライダ23R,23Fを、上側スライダ23B,23Lおよび下側スライダ24B,24Lと共通部品にすれば、スライダの種類を減らして部品管理が一層容易となる。
【0045】
上述の実施形態においては、樹脂材料を用いて形成されたスライダを例示して説明したが、スライダの材質は樹脂材料に限定されるものではなく、要は、アウターポスト20(鋼材)、インナーポスト30(鋼材)および接地板50(鋼材)よりも柔らかい材質であってインナーポスト30に摺接し、且つジャッキシリンダ40の引張力に耐え得る強度(剛性)を有する材質であれば良く、例えば真鍮や砲金を用いてスライダを形成することも可能である。
【0046】
上述の実施形態では、下側スライダ24R,24L,24F,24Bのうちで、下側スライダ24R,24Fを補強部材22から下方に突出させた構成を例示したが、この構成に代えて、下側スライダ24R,24L,24F,24Bの全てを補強部材22から下方に突出させた構成としても良い。
【0047】
上述の実施形態においては、本発明に係るジャッキ装置10を高所作業車1に適用した例について説明したが、ジャッキ装置10を必要とする他の作業用車両、例えばクレーン車等についても同様に本発明に係るジャッキ装置10を適用可能である。