特許第6353719号(P6353719)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6353719
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】旋盤のワーク装脱装置
(51)【国際特許分類】
   B23B 15/00 20060101AFI20180625BHJP
【FI】
   B23B15/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-134675(P2014-134675)
(22)【出願日】2014年6月30日
(65)【公開番号】特開2016-10846(P2016-10846A)
(43)【公開日】2016年1月21日
【審査請求日】2017年6月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000212566
【氏名又は名称】中村留精密工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078673
【弁理士】
【氏名又は名称】西 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】上河原 敦
(72)【発明者】
【氏名】橋 弘矩
【審査官】 津田 健嗣
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭56−072603(JP,U)
【文献】 実開昭50−106779(JP,U)
【文献】 実開昭61−112846(JP,U)
【文献】 実開平05−049236(JP,U)
【文献】 特開平09−155677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 15/00
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋盤に装着して受台上のワークを旋盤の主軸に装脱するワーク装脱装置であって、前記主軸の軸線方向のガイド及び移動装置と、当該軸線と直交する昇降方向のガイド及び移動装置と、当該軸線方向及び昇降方向と直交する前後方向のガイド及び移動装置とを備え、これらの各方向における各移動装置の両移動端への移動により、前記受台は、当該受台上のワークを前記主軸に装着する位置と前記軸線の下方かつオペレータに近い側の位置との間を移動する、旋盤のワーク装脱装置において、
旋盤に固定される基台であってその固定時に旋盤の主軸台の端面及びベッド上面とそれぞれ略平行な基台縦板及び基台横板でL形に形成された前記基台と、この基台の上記L形の内側となる空間の前記基台縦板側に配置されて前記基台に対して前記前後方向に移動する前後移動台と、前記空間の反基台縦板側に配置されて前記前後移動台に対して前記主軸の軸線方向に移動する左右移動台と、当該左右移動台の上方に位置する昇降横板及び当該昇降横板から下方に伸びる昇降縦板とで逆L形に形成された昇降台とを備え、前記昇降方向のガイドが前記昇降縦板に装着されていることを特徴とする、旋盤のワーク装脱装置。
【請求項2】
前記基台が、前記基台横板の反基台縦板側の端部が旋盤のベッドに支持された状態で、前記基台縦板が前記主軸台の端面に固定されて、旋盤のベッドと主軸軸線との間に装着されている、請求項1記載のワーク装脱装置。
【請求項3】
前記受台の前記基台に対する前記昇降方向及び前後方向の位置を微調整する調整部材を備えている、請求項1又は2記載のワーク装脱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、オペレータが旋盤の主軸にワーク(被加工物)を装填する際に使用する装置に関するもので、旋盤の手前側(オペレータ側)に手動又は自動で供給されたワークを旋盤の主軸に装脱する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ワークストッカやワークコンベヤ(以下、「ワーク台」と総称する。)上のワークを自動で旋盤の主軸に装填するローダが設けられていない旋盤では、オペレータが手作業でワークを旋盤の主軸に装填しなければならない。この装填作業は、ワークを旋盤の主軸の高さまで持ち上げて主軸とテールストックや主軸チャックでワークを把持するという作業で行われる。この人手によるワークの装填作業を補助するために、ワークを主軸の高さまで持ち上げ、次に主軸の軸線方向(Z軸方向)に移動する受台を備えたワーク装脱装置が用いられている。
【0003】
この種のワーク装脱装置は、旋盤の主軸台に固定される基台と、ワークの軸線をZ軸方向にして支持する受台と、基台に対して受台を昇降する昇降ガイド及び昇降シリンダと、基台に対して受台をZ軸方向に移動するZ軸ガイド及びZ軸シリンダとを備えている。
【0004】
この種のワーク装脱装置を用いて手動でワークの装脱を行うときは、オペレータは素材ワークを受台上に置き、受台の上昇と主軸チャック側に向かうZ軸方向の移動とにより、受台上のワークの基端を主軸チャックに挿入する。チャックが閉じてワークが把持されたら、受台を下降した後、ワークの加工動作を開始する。ワークの加工が終了したら、受台を上昇し、チャックを開いた後、受台を主軸チャックから離れるZ軸方向に移動した後、下降して停止する。オペレータは、旋盤の主軸軸線の下方で停止した受台から加工済ワークを取り上げてワーク台に載せる。ワーク台は、オペレータの作業負担を軽減するために、旋盤の主軸軸線より手前側(オペレータ側)かつ主軸軸線より下方の位置に設けられる場合が多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した構造の従来のワーク装脱装置では、手動でワークの装脱を行う場合、オペレータは、主軸軸線の手前下方にあるワーク台と主軸軸線の下方にあるワーク装脱装置の受台との間でワークを持ち上げた状態で搬送しなければならない。すなわち、手でワークを持った状態で、腕を前方に伸ばしてワークを装脱装置の受台上に載せ、又は受台上から機械の手前側へと手で持ち上げた状態でワークを搬送しなければならない。
【0006】
ワークが軽量であれば、この作業はあまり困難ではない。しかし、ワークの重量が大きいときは、この作業に腕力を必要とし、また、腰にかかる負担も大きいので、オペレータの作業負担が増大する。また、従来のワーク装脱装置は、主軸台の端面に固定して装着する構造であったため、受台に重いワークを載せたときの支持剛性が十分でないという問題もあった。
【0007】
この発明は、ワークが比較的重い(例えば10kg程度)場合でも旋盤の主軸チャックへの手動によるワークの装脱が可能で、かつ比較的重いワークでも支持剛性が不足するという問題を生ずることなく、旋盤の主軸チャックへのワークの装脱を安定して行うことができるワーク装脱装置を得ることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、Z軸方向(以下、「左右」とも言う。)に移動、昇降及び前後方向に移動する受台5を備えたワーク装脱装置を提供する。ここで、Z軸方向は、旋盤の主軸の軸線方向、前後方向は、Z軸方向と直交する水平方向で、オペレータ側が手前側である。
【0009】
旋盤は、加工中におけるワークの高い支持剛性を得るために、主軸軸線をできるだけベッドに近づけるように設計されており、従ってワーク装脱装置の設置スペースが狭い。狭いスペースに設置可能で、かつ受台を左右移動、昇降及び前後移動可能にするために、この発明のワーク装脱装置は、旋盤に固定される基台1を旋盤の主軸台の端面及びベッド上面とそれぞれ略平行な縦横の板11、12を一体に備えたL形構造とし、このL形の内側となる空間に前後移動台2と左右移動台3とを、前後移動台2を基台の主軸台側に位置する基台縦板11に近い側にして隣接させて配置し、左右移動台3の上方に逆L形の昇降台4を設けて、この逆L形の上下方向に伸びる部材41に昇降ガイド47を配置している。
【0010】
更にこの発明では、基台1の縦板11を主軸台6に固定し、基台の横板12の反主軸台側の部分に基台をベッド上面で支持する支持部13を設けることにより、旋盤上でのワーク装脱装置の支持剛性を高くして、比較的重いワークを安定に旋盤の主軸に装脱することを可能にしている。
【発明の効果】
【0011】
この発明により、オペレータが手動でワークを旋盤の主軸チャックに装脱する際の作業負担が大幅に軽減されると言う効果がある。すなわち、オペレータは、旋盤の手前側に配置されたワークストッカやワークコンベヤと旋盤の手前側に移動してきたワーク受台との間でワークの移送を行ってやればよく、比較的重いワークであっても、オペレータの体幹に近い位置でワークを搬送することができ、搬送中におけるオペレータの腕や腰への負担が大幅に軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】旋盤に設置した状態で反オペレータ側から見た斜視図
図2】昇降台と受台を反オペレータ側から見た斜視図
図3】左右移動台を反オペレータ側から見た斜視図
図4】前後移動台を反オペレータ側から見た斜視図
図5】基台を反オペレータ側から見た斜視図
図6】装置のオペレータ側から見た正面図
図7】前後調整板の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図示実施例を参照して、この発明のワーク装脱装置の実施形態を説明する。この発明のワーク装脱装置は、旋盤に固定される基台1と、基台に対して前後移動する前後移動台2と、前後移動台2上で左右移動する左右移動台3と、左右移動台3上で上下動する昇降台4と、昇降台4に固定的に装着される受台5とを備えている。
【0014】
基台1は、図5に示すように、旋盤の主軸台6の端面7に固定される基台縦板11と、旋盤のベッド面と略平行な基台横板12とで前方(オペレータ側)から見てL形の構造をしており、基台横板12の反縦板側にベッド上面で支持される支持部13を備えている。図の例では、基台横板12の上面に前後ガイドのガイド溝28と、前後動シリンダ26とが固定して取り付けられている。
【0015】
前方から見てL形の基台1の内側の、すなわち基台縦板11の高さと基台横板12の左右幅の空間の、主軸台側に前後移動台2が配置されている。前後移動台2は、図4に示すように、基台横板12と平行な前後動横板22と、当該横板の手前側に立設された前後動縦板21と、前後動シリンダ26のロッドを受けるロッド受23とで形成されている。前後動縦板21と前後動横板22とは、旋盤の反主軸側から見てL形に配置され、ロッド受23は、前後動縦板21から反主軸台側に伸びている。前後ガイドのガイドレール27は、前後動横板22の下面に固定され、左右ガイドのガイドレール37及び左右動シリンダ36が前後動縦板21に取り付けられている。前後動シリンダ26のロッドは、ロッド受23に連結されている。
【0016】
前方から見てL形の基台1の内側の反主軸台側には、左右移動台3が配置されている。左右移動台3は、図3に示すように、左右動縦板31と、左右動横板32と、前面板33とを一体に備えている。左右動縦板31及び左右動横板32は、基台縦板11及び基台横板12と平行で、前方から見て逆L形に配置され、前面板33は、前後動縦板21と平行で、その上縁から主軸台側に伸びる角材34を介して左右動横板32の前縁に固定されている。左右ガイドのガイド溝38は、左右動横板32の下面に取り付けられ、左右動シリンダ36のロッドは、角材34から下方に伸びるロッド受39に連結されている。
【0017】
前面板33の背面(オペレータから見て裏側)には、昇降ガイドのガイド溝48が固定されている。昇降シリンダ46は、図示しないボルトで左右動縦板31に添設された逆L形の上下調整板35に装着されている。上下調整板35は、左右動縦板31に対して上下方向に微調整可能で、上下調整板35の左右動縦板31に対する固定位置の調整によって、昇降シリンダ46が進出端に達したときの受台5の高さが調整できるようになっている。
【0018】
昇降台4及びワーク受台5は、図2に示されている。昇降台4は、昇降横板42と昇降縦板41とで反主軸台側から見て逆L形で、昇降横板42は基台横板12と平行であり、昇降縦板41は左右移動台の前面板33と平行である。昇降シリンダ46のロッドは、昇降横板42の下面に連結され、昇降ガイドのガイドレール47は、昇降縦板41の前面に装着されている。
【0019】
受台5は、座板52と当該座板に互いに平行に立設された受板53(53a、53b)を備えている。座板52は、図7に示す前後調整板55を介して、昇降横板42の上面に固定されている。前後調整板55は、前後方向の長孔56を備えており、この長孔を通して受台5を昇降横板42にボルトで固定することにより、前後動シリンダ26が後退端に達したときの受台5の前後方向の位置を微調整することができる。
【0020】
受台5は、ワークwの2箇所の円筒面w1、w2を受板53a、53bに設けたV形の切欠などで水平に受ける構造である。図の受板53は、オペレータ側に伸びる排出腕54(54a、54b)を備えている。排出腕54の上縁はオペレータ側が低くなる方向に傾斜しており、その先端にストッパ57(57a、57b)が設けられている。一方、上下調整板35には、逆L形の突き出し板58が固定されており、この突き出し板58のオペレータ側が低くなる方向に傾斜した上面59が、2枚の受板53a、53bの間に伸びている。加工済ワークを受け取った受台5が下降すると、突き出し板の上面59がワークを押し上げて排出腕54上に押し出し、加工済ワークがストッパ57に当接する位置まで、排出腕54上を転がるようになっている。
【0021】
受台5の上記構造により、加工済ワークの取り出しは受板のストッパ57の位置で行うことができ、また素材ワークは、排出腕54の前端にワークを置いて奥へと押し転がして搭載すれば良いので、オペレータは、ワークwをより手前側で受台5に受け渡しできる。また、排出腕54をストッパ57を備えない構造とし、排出腕54の前端下方に排出コンベヤを配置すれば、加工済ワークの自動排出が可能になる。なお、昇降シリンダ46としてエンドロック型のシリンダを使用するか、ヘッドエンド側に圧縮コイルバネを挿入して、圧力をかけないときは後退端の少し上でピストンが停止しているようにすれば、受板53に素材ワークを搭載するときに突き出し板58が邪魔になるのを防止できる。
【0022】
上記構造のワーク装脱装置は、基台の支持部13をベッド上面で支持し、基台縦板11をボルト14で旋盤の主軸台の端面7に締着することによって旋盤に装着される。受台5は、昇降シリンダ46を装着した上下調整板35と、受台5に固定された前後調整板55との微調整により、前後動シリンダ26が後退端に位置し、昇降シリンダ46が進出端に位置したときに、ワークwの中心軸がちょうど旋盤の主軸軸線上に来るようにして昇降台4上に固定される。
【0023】
この状態で左右動シリンダ36を伸長し、昇降シリンダ46を下降し、前後動シリンダ26を伸長すれば、ワーク受台5が旋盤の主軸軸線の下方手前側(オペレータ側)に来るから、この状態でオペレータは、受台5からの加工済ワークの取り出しと受台5上への素材ワークの搭載とを行う。
【0024】
受台5に素材ワークが搭載されたら、前後動シリンダ26の縮退と、昇降シリンダ46の伸長と、左右動シリンダ36の縮退とにより、ワークwの把持端が主軸チャック8へと挿入される。この状態で主軸チャック8を閉じてワークを把持し、昇降シリンダ46の縮退により、受台5を退避させる。
【0025】
この受台の退避状態でワークの加工が行われ、ワークの加工が終了したら、昇降シリンダ46を伸長して主軸チャック8を開く。そして、左右動シリンダ36の伸長により、ワークの把持端を主軸チャック8から抜き取り、昇降シリンダ46の縮退と前後動シリンダ26の伸長とにより、受台5及び受台に受け渡された加工済ワークが主軸軸線より下方の高さでオペレータ側へと移動する。この状態でオペレータは、加工済ワークを取り上げてワーク台に載せ、次の素材ワークを受台5に載せる。
【0026】
このように、受台5への素材ワークの搭載及び受台からの加工済ワークの取り出しを、旋盤の主軸の位置より手前側の位置で行うことができ、オペレータは、ワークを支えた腕を伸ばすことなく体幹の近くでワークの受け渡しを行うことができるので、オペレータの腕や腰にかかる負担が軽減される。従って、比較的重いワークであっても、オペレータの作業負担を増大させることなく、旋盤へのワークの装脱が可能になる。
【0027】
そして、ワーク装脱装置の反主軸台側がベッドで支持されるので、基台1を旋盤の主軸台6の端面7に固定することで、ワーク装脱装置が比較的高い剛性で旋盤上に支持され、かつ、旋盤とワーク装着装置との主軸軸線方向の位置関係が正確に設定される。また、前後移動台2と左右移動台3とを、L形の基台のL字の内側に、前後移動台を主軸側にして配置することにより、ベッド上面と主軸軸線との間の狭いスペースに設置可能なコンパクトなワーク装脱装置を得ることができる。
【符号の説明】
【0028】
1 基台
2 前後移動台
3 左右移動台
4 昇降台
5 受台
6 旋盤の主軸台
7 主軸台の端面
8 主軸チャック
11 基台縦板
12 基台横板
13 支持部
26 前後動シリンダ
27 前後ガイドレール
28 前後ガイド溝
35 上下調整板
36 左右動シリンダ
37 左右ガイドレール
38 左右ガイド溝
46 昇降シリンダ
47 昇降ガイドレール
48 昇降ガイド溝
55 前後調整板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7