特許第6353782号(P6353782)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6353782
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】倍力機構付きシリンダ装置
(51)【国際特許分類】
   F15B 15/14 20060101AFI20180625BHJP
   F15B 15/26 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   F15B15/14 375
   F15B15/14 345Z
   F15B15/26
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-263058(P2014-263058)
(22)【出願日】2014年12月25日
(65)【公開番号】特開2016-121788(P2016-121788A)
(43)【公開日】2016年7月7日
【審査請求日】2017年8月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】391003989
【氏名又は名称】株式会社コスメック
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】児嶋 良太
【審査官】 山本 崇昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−044436(JP,A)
【文献】 特開2012−111025(JP,A)
【文献】 特開2014−070722(JP,A)
【文献】 特表2010−538228(JP,A)
【文献】 英国特許出願公告第1077025(GB,A)
【文献】 欧州特許出願公開第1473466(EP,A1)
【文献】 特表2010−502463(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 15/00−15/28
B23Q 3/00−3/154
B23Q 3/16−3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(1)の筒孔(6)の一部として構成されたシリンダ孔(9)に軸心方向へ保密移動可能に挿入された環状ピストン(10)であって、前記軸心方向へ延びる貫通孔(11)を有する環状ピストン(10)と、
前記貫通孔(11)に前記軸心方向へ保密移動可能に挿入された出力ロッド(21)を有する出力部材(20)と、
前記環状ピストン(10)を前記軸心方向の一端側へ押す力を当該一端側への力に倍力変換して前記出力部材(20)に伝達する倍力機構(40)であって、前記筒孔(6)と前記環状ピストン(10)との間に周方向へ所定の間隔をあけて配置された複数の係合ボール(50)を有する倍力機構(40)と、を備え、
前記係合ボール(50)は、前記出力部材(20)に対して前記環状ピストン(10)が前記一端側へ相対移動するのを規制する状態と前記一端側への相対移動を許容して倍力駆動する状態とに切り換え可能に構成され、
さらに、前記ハウジング(1)の前記筒孔(6)の一部として構成されると共に前記シリンダ孔(9)から前記一端側へ連続されたガイド面(41)であって、前記の倍力駆動が開始される前の低負荷ストローク時に前記係合ボール(50)を半径方向の外方から受け止めるガイド面(41)を備える、
ことを特徴とする倍力機構付きシリンダ装置。
【請求項2】
請求項1の倍力機構付きシリンダ装置において、
前記ハウジング(1)の前記筒孔(6)内にロック室(30)とリリース室(31)とを前記環状ピストン(10)及び前記出力ロッド(21)によって区画形成し、前記ロック室(30)に圧力流体を給排可能に構成すると共に、前記リリース室(31)に圧力流体を給排可能に構成した、
ことを特徴とする倍力機構付きシリンダ装置。
【請求項3】
請求項1の倍力機構付きシリンダ装置において、
前記出力部材(20)を他端側へ移動させるリリース駆動時に、前記出力部材(20)を前記他端側へ押す補助ピストン(65)をさらに備える、
ことを特徴とする倍力機構付きシリンダ装置。
【請求項4】
請求項3の倍力機構付きシリンダ装置において、
前記ハウジング(1)に、前記筒孔(6)から前記一端側へ順に連通される小径孔(62)と大径孔(61)とが形成され、
その小径孔(62)に前記補助ピストン(65)の小径部分(65b)が移動可能で保密状に挿入されると共に、前記大径孔(61)に前記補助ピストン(65)の大径部分(65a)が移動可能で保密状に挿入され、
前記の大径部分(65a)の前記一端側に形成された補助リリース室(67)が、前記ハウジング(1)の前記筒孔(6)内に形成されたリリース室(31)に連通される、
ことを特徴とする倍力機構付きシリンダ装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかの倍力機構付きシリンダ装置において、
前記倍力機構(40)は、前記軸心方向の前記一端側へ向かうにつれて軸心から遠ざかるように前記筒孔(6)に形成されたカム面(42a)と、前記一端側へ向かうにつれて前記軸心に近づくように前記環状ピストン(10)の外周部に形成された倍力面(45)と、前記出力部材(20)の入力リング(22)に形成された入力面(47)と、をさらに備え、
前記倍力機構(40)の前記の倍力駆動時には、前記カム面(42a)と前記倍力面(45)と前記入力面(47)とに前記係合ボール(50)が係合される、
ことを特徴とする倍力機構付きシリンダ装置。
【請求項6】
請求項5の倍力機構付きシリンダ装置において、
前記倍力機構(40)の倍力駆動の開始時に前記係合ボール(50)を半径方向の外方へ押し出すための押部(44)であって、その倍力駆動が開始される前の低負荷ストローク時に前記係合ボール(50)を前記入力面(47)に向けて押す押部(44)を、前記環状ピストン(10)に設けた、
ことを特徴とする倍力機構付きシリンダ装置。
【請求項7】
請求項5の倍力機構付きシリンダ装置において、
前記低負荷ストローク時には、前記環状ピストン(10)と前記係合ボール(50)と前記出力部材(20)の前記入力リング(22)とが一体になって前記一端側へ移動可能に構成した、
ことを特徴とする倍力機構付きシリンダ装置。
【請求項8】
請求項5の倍力機構付きシリンダ装置において、
前記カム面(42a)は、前記筒孔(6)の周方向へ連続して形成される、
ことを特徴とする倍力機構付きシリンダ装置。
【請求項9】
請求項5の倍力機構付きシリンダ装置において、
前記倍力面(45)は、前記環状ピストン(10)の外周部に形成された第1溝(43)の底部に形成され、
前記入力面(47)は、前記出力部材(20)の前記入力リング(22)に形成された第2溝(46)の底部に形成され、
前記第1溝(43)または前記第2溝(46)に前記係合ボール(50)が収容される、
ことを特徴とする倍力機構付きシリンダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、倍力機構付きシリンダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の倍力機構付きシリンダ装置には、従来では、特許文献1(日本国・特開2013―044436号公報)に記載されたものがある。その従来技術は、次のように構成されている。
ハウジングに倍力用の環状ピストンが挿入され、その環状ピストンの貫通孔に出力ロッドが挿入される。環状ピストンの貫通孔と出力ロッドの外周部との間に、倍力機構の係合ボールが周方向に所定間隔をあけて配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013―044436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の従来技術は、次の点で改良する余地が残されていた。
環状ピストンの貫通孔と出力ロッドの外周部との間に複数の係合ボールが配置されるので、その係合ボールの配置数が環状ピストンの貫通孔の内周寸法によって制限される。その係合ボールに想定外の過負荷が作用した場合には、係合ボール1個あたりに作用する負荷が大きくなり、係合ボールや環状ピストンの貫通孔や出力ロッドの外周部が摩耗したり破損したりするおそれがある。その結果、倍力機構付きシリンダ装置の耐久性が低下する。
本発明の目的は、倍力機構付きシリンダ装置の耐久性を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明は、例えば、図1から図4に示すように、倍力機構付きシリンダ装置を次のように構成した。
ハウジング1の筒孔6の一部として構成されるシリンダ孔9に、環状ピストン10が軸心方向へ保密移動可能に挿入される。その環状ピストン10の貫通孔11に、出力部材20の出力ロッド21を前記軸心方向へ保密移動可能に挿入する。前記環状ピストン10を前記軸心方向の一端側へ押す力が倍力機構40によって当該一端側への力に倍力変換され前記出力部材20に伝達される。その倍力機構40は、前記筒孔6と前記環状ピストン10との間に周方向へ所定の間隔をあけて配置された複数の係合ボール50を有する。前記係合ボール50は、前記出力部材20に対して前記環状ピストン10が前記一端側へ相対移動するのを規制する状態と前記一端側への相対移動を許容して倍力駆動する状態とに切り換え可能に構成される。さらに、前記ハウジング1の前記筒孔6の一部として構成されたガイド面41が、前記シリンダ孔9から前記一端側へ連続される。そのガイド面41は、前記の倍力駆動が開始される前の低負荷ストローク時に前記係合ボール50を半径方向の外方から受け止める。
【0006】
本発明は、次の作用効果を奏する。
ハウジングの筒孔と環状ピストンとの間に複数の係合ボールが周方向に所定間隔をあけて配置される。これにより、従来技術のように、環状ピストンの貫通孔と出力ロッドとの間に複数の係合ボールが配置される場合に比べて、係合ボールの配置数量を増やすことができ、その増加数に応じて係合ボール1個あたりに作用される負荷を低減できる。このため、係合ボールやハウジングの筒孔や環状ピストンが摩耗したり破損したりするのを防止できる。その結果、倍力機構付きシリンダ装置の耐久性が向上する。
さらに、ガイド面およびシリンダ孔をハウジングの筒孔の一部として構成し、ガイド面がシリンダ孔から連続されることにより、ガイド面とシリンダ孔とを兼用できるので、軸心方向における筒孔の長さ寸法を小さくできる。その結果、倍力機構付きシリンダ装置を小型化できる。
【0007】
本発明は、下記(1)から(6)の構成を加えることが好ましい。
(1) 例えば、図1から図4に示すように、前記ハウジング1の前記筒孔6内にロック室30とリリース室31とを前記環状ピストン10及び前記出力ロッド21によって区画形成する。前記ロック室30に圧力流体を給排可能に構成すると共に、前記リリース室31に圧力流体を給排可能に構成する。
この場合、ロック駆動時には、ロック室に供給された圧力流体が、環状ピストンを前記一端側へ強力に進出させることにより、上記シリンダ装置を確実に倍力駆動させることができる。
【0008】
(2) 前記出力部材20を他端側へ移動させるリリース駆動時に、前記出力部材20を前記他端側へ押す補助ピストン65を備えることが好ましい。さらには、前記ハウジング1に、前記筒孔6から前記一端側へ順に連通される小径孔62と大径孔61とが形成される。その小径孔62に前記補助ピストン65の小径部分65bが移動可能で保密状に挿入されると共に、前記大径孔61に前記補助ピストン65の大径部分65aが移動可能で保密状に挿入される。前記の大径部分65aの前記一端側に形成された補助リリース室67が、前記ハウジング1の前記筒孔6内に形成されたリリース室31に連通されるように構成される。
この場合、補助ピストンが出力部材を強力にリリース駆動できる。
【0009】
(3) 前記倍力機構40は、前記軸心方向の前記一端側へ向かうにつれて軸心から遠ざかるように前記筒孔6に形成されたカム面42aを有する。前記環状ピストン10の外周部に、前記一端側へ向かうにつれて軸心に近づくように倍力面45が形成される。前記出力部材20の入力リング22に入力面47が形成される。そして、前記倍力機構40の倍力駆動時には、前記カム面42aと前記倍力面45と前記入力面47とに前記係合ボール50が係合されることが好ましい。さらには、前記倍力機構40の倍力駆動の開始時に、前記環状ピストン10に設けられた押部44が前記係合ボール50を半径方向の外方へ押し出す。その倍力駆動が開始される前の低負荷ストローク時に、押部44が前記係合ボール50を前記入力面47へ向けて押す。
この場合、簡素な構成の倍力機構によって、係合ボールやカム面や倍力面や押部が摩耗したり破損したりするのを防止できる。その結果、倍力機構付きシリンダ装置の耐久性が向上する。
【0010】
(4) 前記低負荷ストローク時には、前記環状ピストン10と前記係合ボール50と前記出力部材20の前記入力リング22とが一体になって前記一端側へ移動可能に構成した。
この場合、低負荷ストローク時には、前記環状ピストンと前記係合ボールと前記出力部材の前記入力リングとが前記一端側へ速やかに移動される。
【0011】
(5) 前記カム面42aは、前記筒孔6の周方向へ連続して形成される。この場合、カム面を容易に加工できる。
【0012】
(6) 前記倍力面45は、前記環状ピストン10の外周部に形成された第1溝43の底部に形成される。前記入力面47は、前記出力部材20の前記入力リング22に形成された第2溝46の底部に形成される。前記第1溝43または前記第2溝46に前記係合ボール50が収容される。
この場合、環状ピストンまたは入力リングから係合ボールが脱落することを防げるので、上記シリンダ装置を確実に倍力駆動させることができる。その結果、上記シリンダ装置を長期間にわたって良好に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、リリース状態の倍力機構付きシリンダ装置を示す立面視の断面図である。
図2図2は、切り換え途中状態の上記シリンダ装置を示す立面視の断面図である。
図3図3は、ロック状態の上記シリンダ装置を示す立面視の断面図である。
図4図4は、上記シリンダ装置の出力部材に作用された抵抗力によって当該出力部材がロック位置に置き残され、環状ピストンだけが下降された状態を示す立面視の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1から図4は、本発明の一実施形態を示している。この実施形態では、鋳型にはめ込まれる中子(図示せず)の保持および引き抜きに用いられる倍力機構付きシリンダ装置を例示する。まず、リリース状態を示す図1によって倍力機構付きシリンダ装置の構造を説明する。
ハウジング1は、上側(一端側)から下側(他端側)に順に設けられた上端壁1aと第1筒部1cと第2筒部1dと下端壁1bとを有する。第2筒部1dの内周孔によって、ハウジング1の筒孔6が構成される。
【0015】
上記の筒孔6の下部によってシリンダ孔9が構成され、そのシリンダ孔9に環状ピストン10が上下方向へ移動可能で保密状に挿入される。その環状ピストン10は、シリンダ孔9に挿入される大径部分12と、その大径部分12から上方へ突設される小径部分13とを有する。
【0016】
上記の環状ピストン10の貫通孔11に、出力部材20の出力ロッド21を上下移動可能で保密状に挿入する。その環状ピストン10と出力ロッド21との間に、直進ガイド手段21gが設けられる。その直進ガイド手段21gは、出力ロッド21に対して環状ピストン10を上下方向に真っ直ぐに案内すると共に、出力ロッド21に対して環状ピストン10が軸心回りに回転するのを防止する。その出力ロッド21は、ハウジング1の上端壁1aの貫通孔に保密状に挿入されると共に、その上端壁1aよりも上方へ突出される。その出力ロッド21の途中高さ部に環状の入力リング22が径方向の外方へ突設される。その出力ロッド21の下端部に、その下端部よりも大径の係止部材23が設けられ、その係止部材23の上部に係止部25が形成される。なお、上記の出力部材20は、上記の出力ロッド21と入力リング22と係止部材23とによって構成される。
【0017】
上記環状ピストン10と出力部材20とが、ハウジング1の内部空間を、下側のロック室30と上側のリリース室31とに区画形成する。ロック室30に連通されるロックポート35が下端壁1bに形成される。上記リリース室31は、入力リング22の下側に形成された第1リリース室31aと、入力リング22の上側に形成された第2リリース室31bと、その第1リリース室31aおよび第2リリース室31bを連通する連通路31dとを有する。その連通路31dは、筒孔6と入力リング22の外周部との隙間に形成される。上記第2リリース室31bに連通されるリリースポート36がハウジング1の第1筒部1cおよび第2筒部1dにまたがって形成される。
【0018】
上記筒孔6に、前記ガイド面41と前記シリンダ孔9とが上下に連ねてストレートに形成される。そのガイド面41と上記シリンダ孔9とは、内径寸法が同じ値であり、いずれも筒孔6の一部として構成される。そのガイド面41の一部は、シリンダ孔9の一部でもある。
【0019】
上記ハウジング1の内部空間に倍力機構40が配置される。その倍力機構40は次のように構成される。
前記ガイド面41の上側で筒孔6に、上方に向かうにつれて軸心から遠ざかるようにカム面42aが形成される。そのカム面42aは、筒孔6に周方向へ連続するように形成されたテーパ面または曲面によって構成される。そのカム面42aは、カム面42a以外の第2筒部1dと一体に形成される。なお、筒孔6は、下方から上方へ順に形成されるシリンダ孔9とガイド面41とカム面42aと大径部とを有する。
上記環状ピストン10の小径部分13の外周部に、複数の溝(第1溝)43が、周方向に所定間隔をあけて形成されると共に上方に向かうにつれて軸心に近づくように形成される。各溝43の底部に、押部44と倍力面45とが下方へ順に形成される。また、本実施形態において、軸心に対する上記押部44の傾斜角度が倍力面45の傾斜角度よりも大きくなるように設定されている。
上記溝43に対応するように上記出力部材20の入力リング22の下部に、複数の溝(第2溝)46が周方向に所定間隔をあけて形成され、各溝46の底部に入力面47が形成される。
上記の溝43または溝46に、係合ボール50が収容される。これにより、環状ピストン10から係合ボール50が脱落することを防ぐ。その結果、上記のクランプ装置を長期にわたって良好に使用できる。
【0020】
上記ハウジング1の上端壁1aに大径孔61が形成され、ハウジング1の第1筒部1cに小径孔62が形成される。
その大径孔61および小径孔62に、上下方向へ移動可能に補助ピストン65が挿入される。その補助ピストン65は、大径孔61に保密状に挿入される大径部分65aと、大径部分65aから下方へ突設されると共に小径孔62に保密状に挿入される小径部分65bとを有する。その補助ピストン65の貫通孔に出力部材20の出力ロッド21が挿入される。
上記大径部分65aよりも上方の大径孔61内に補助リリース室としての第3リリース室67が形成される。なお、大径部分65aと小径部分65bとの間に区画形成された室には外気と連通する呼吸孔66が連通される。補助ピストン65の貫通孔と出力ロッド21の外周部との間、および補助ピストン65の下端部に、第3リリース室67と第2リリース室31bとを連通させる連通路68が形成される。
【0021】
上記のシリンダ装置は、図1から図4に示すように、次のように作動する。
図1のリリース状態では、ロック室30の圧油(圧力流体)が排出されると共にリリース室31に圧油が供給されている。これにより、リリース室31の圧油が、環状ピストン10を下降させ、その環状ピストン10を介して出力ロッド21を下降させ、補助ピストン65を下降させている。また、筒孔6のガイド面41によって係合ボール50が半径方向の外方から受け止められている。
【0022】
上記シリンダ装置をロック駆動するときには、図1のリリース状態において、リリース室31の圧油を排出すると共にロック室30に圧油を供給する。すると、ロック室30の圧力が環状ピストン10及び出力ロッド21を上方へ移動させていき、その環状ピストン10の押部44が筒孔6のガイド面41に沿って係合ボール50を上昇させる。その係合ボール50が入力リング22を介して出力ロッド21を上昇させる。このように、上記シリンダ装置の低負荷ストロークが行われる。そして、図2に示す低負荷ストロークの終期では、入力リング22の上面が補助ピストン65の下面に当接し、出力ロッド21が入力リング22を介して補助ピストン65を上昇させていく。
【0023】
上記出力ロッド21が所定ストロークだけ上昇すると、環状ピストン10の押部44が係合ボール50をカム面42a側(半径方向の外方)へ押出す。その後、環状ピストン10の倍力面45がカム面42aと係合ボール50と入力リング22の入力面47とを介して出力ロッド21を上昇させ、上記シリンダ装置の倍力駆動が開始される。
【0024】
引き続いて、環状ピストン10および出力ロッド21が上昇していくと、補助ピストン65の上端が上端壁1aに受け止められ、上記シリンダ装置は図3に示すロック状態となる。これにより、出力ロッド21の上端部に固定された中子(図示せず)が鋳型内で保持される。
【0025】
上記図3のロック状態において、中子を介して出力ロッド21に外力が下方へ作用されることにより、そのロック状態の出力ロッド21が下降力を受けたときに、ロック室30の油圧力および楔式の倍力機構40の構成部材である係合ボール50とカム面42aと倍力面45との間に生じる摩擦力によって出力ロッド21が下方へ押し戻されるのを防止できる。
【0026】
図3のロック状態から図1のリリース状態に切り換えるときに、鋳型内で冷えて凝固した金属と中子とが固着して出力ロッド21に抵抗力が作用されている場合には、図3の状態において、ロック室30から圧油を排出すると共に、リリース室31に圧油を供給する。すると、環状ピストン10が係止部材23に当接するまで下降するが、出力ロッド21は、上記抵抗力を受けて下降しない(図4を参照)。引き続いて、環状ピストン10が係止部材23を介して出力ロッド21を下降させると共に、補助ピストン65が入力リング22を介して出力ロッド21を強力に下降させる。これにより、出力ロッド21の上端部に固定された中子が、凝固した金属から引き抜かれる。その後、図1に示すように、環状ピストン10がハウジング1の下端壁1bに受け止められる。
【0027】
これに対して、出力ロッド21に上記抵抗力が作用されていない場合には、図3のロック状態において、ロック室30から圧油を排出すると共に、リリース室31に圧油を供給する。すると、リリース室31の圧油が環状ピストン10を下降させていく。これにより、係合ボール50がカム面42aに沿って半径方向の内方へ移動することが許容され、リリース室31の圧油が補助ピストン65を下降させる。引き続いて、図2に示すように、環状ピストン10の下部が、出力ロッド21の係止部25に当接して出力ロッド21を下降させていくと共に、その出力ロッド21の入力リング22が係合ボール50を筒孔6のガイド面41に沿って下方へ移動させていく。その後、図1に示すように、環状ピストン10がハウジング1の下端壁1bに受け止められる。
【0028】
上記の実施形態は次の長所を奏する。
筒孔6のカム面42aと環状ピストン10の倍力面45との間に係合ボール50が周方向に所定間隔をあけて配置される。これにより、従来技術のように、環状ピストンの貫通孔と出力ロッドの外周部との間に係合ボールが配置される場合に比べて、係合ボール50の配置数量を増やすことができ、その増加数に応じて係合ボール50(1個あたり)に作用される負荷を低減できる。これにより、係合ボール50やカム面42aや倍力面45が摩耗したり破損したりするのを防止できる。その結果、上記シリンダ装置の耐久性が向上する。
【0029】
図1(リリース状態)から図2(切り換え途中状態)に示すように、環状ピストン10の押部44が筒孔6のガイド面41に沿って係合ボール50を上昇させる。
これにより、倍力面45がガイド面41に沿って係合ボール50を上昇させる場合に比べ、ガイド面41へ係合ボール50が押し付けられる力を抑制できるので、ガイド面41や係合ボール50が摩耗したり破損したりするのを防止できる。その結果、上記シリンダ装置の耐久性が向上する。
【0030】
係合ボール50は、環状ピストン10に形成された溝43または入力リング22に形成された溝46に収容され、カム面42aは、筒孔6の周方向へ連続して形成される。
これにより、溝43または溝46に対する、カム面42aの周方向の位置(位相)を合わせる必要がない。よって、環状ピストン10または入力リング22に対する筒孔6の回転を規制する直進ガイド手段を環状ピストン10と筒孔6との間に、または入力リング22と筒孔6との間に設ける必要がないので、上記シリンダ装置を小型化できる。
【0031】
上記の実施形態は次のように変更可能である。
圧力流体は、例示した圧油に代えて、他の液体または圧縮空気等の気体であってもよい。
前記ハウジング1は、例示の上端壁1aと第1筒部1cと第2筒部1dと下端壁1bとによって構成されるのに代えて、一体に形成するようにしてもよい。
前記環状ピストン10は、前記ロック室30および前記リリース室31に給排される圧力流体によって往復駆動される構成に代えて、前記ロック室30に装着したロックバネによってロック駆動されると共に前記リリース室31に給排される圧力流体によってリリース駆動される構成であってもよい。
前記筒孔6に、前記ガイド面41と前記シリンダ孔9とが上下に連ねてストレートに形成される構成としたが、前記ガイド面41と前記シリンダ孔9とが実質的に同一(略同一)である構成としてもよい。実質的に同一である構成には、たとえば、前記ガイド面41が緩やかな傾斜面を介して前記シリンダ孔9に連続する構成を含めてもよい。
前記カム面42aは、筒孔6に周方向へ連続するように形成されたテーパ面または曲面によって構成されることに代えて、筒孔6に周方向に所定間隔をあけて形成された複数の溝の底部に形成されてもよい。
前記カム面42aは、カム面42a以外の第2筒部1dと一体に形成されることに代えて、別体に形成されてもよい。この場合、係合ボール50から大きい力を受けるカム面42aの強度を、カム面42a以外の第2筒部1dよりも高くしてもよく、カム面42aを特殊鋼などの材料で構成してもよい。
出力部材20の出力ロッド21が、ハウジング1の下端壁1bに形成された貫通孔(図示せず)に上下移動可能で保密状に挿入され、その下端壁1bよりも下方へ突設されてもよい。
図4に示す固着等状態には、上記の中子の固着時だけでなく、製品出荷時、出力ロッド21の抵抗が大きい時、または油圧の不具合が生じた時などにもなり得る。
上記シリンダ装置は、例示した上下姿勢に配置することに代えて、上下逆の姿勢や水平姿勢や斜め姿勢に配置してもよい。
その他に、当業者が想定できる範囲で種々の変更を行えることは勿論である。
【符号の説明】
【0032】
1:ハウジング,6:筒孔,9:シリンダ孔,10:環状ピストン,11:貫通孔,20:出力部材,21:出力ロッド,22:入力リング,30:ロック室,31:リリース室,40:倍力機構,41:ガイド面,42a:カム面,43:溝(第1溝),44:押部,45:倍力面,46:溝(第2溝),47:入力面,50:係合ボール,61:大径孔,62:小径孔,65:補助ピストン,67:第3リリース室(補助リリース室).
図1
図2
図3
図4