(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6353792
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】3次元オブジェクト印刷における材料の液滴の体積をコントロールするためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/209 20170101AFI20180625BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20180625BHJP
【FI】
B29C64/209
B33Y10/00
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-5156(P2015-5156)
(22)【出願日】2015年1月14日
(65)【公開番号】特開2015-140016(P2015-140016A)
(43)【公開日】2015年8月3日
【審査請求日】2018年1月10日
(31)【優先権主張番号】14/167,729
(32)【優先日】2014年1月29日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・アール・コンロウ
(72)【発明者】
【氏名】ハワード・エイ・ミーゼス
(72)【発明者】
【氏名】ポール・エイ・ホージア
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・ジェイ・フォーキンス
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ジェイ・クレックナー
【審査官】
田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】
特表2011−526367(JP,A)
【文献】
特開2006−105975(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0072801(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/209
B33Y 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリンタであって、
平面支持部材と、
前記平面支持部材に向けて材料の液滴を吐出するように位置決めされたプリントヘッドであって、前記平面支持部材と前記プリントヘッドとの一つが前記平面支持部材と前記プリントヘッドとの他の一つに対して移動するように構成されているプリントヘッドと、
光源と複数の受光器とを有する鏡面反射センサアレイであって、前記光源が前記平面支持部材に対して所定角度で発光するように構成されており、かつ、各受光器が前記平面支持部材上で吐出された材料から反射された光に対応する電気信号を生成するように構成されている鏡面反射センサアレイと、
前記平面支持部材と、前記プリントヘッドと、前記鏡面反射センサアレイとにオペラティブに連結されているコントローラであって、
前記プリントヘッドを動作させて前記平面支持部材上に少なくとも二つのオブジェクトを形成し;
前記平面支持部材と前記プリントヘッドとの一つを動作させて前記平面支持部材と前記プリントヘッドとの他の一つに対して移動させることにて、前記少なくとも二つのオブジェクトが、前記平面支持部材を横切る前記プリントヘッドの幅を実質的にカバーするクロスプロセス方向の長さと、プロセス方向における前記平面支持部材の一部に沿って延在するプロセス方向の長さと、を有することを可能にし;
前記鏡面反射センサアレイを動作させて、前記平面支持部材に向かって光を方向付け、前記鏡面反射センサアレイと前記平面支持部材との一つが前記鏡面反射センサアレイと前記平面支持部材との他の一つに対して移動する際、前記受光器によって生成された前記電気信号を受信し;
前記受光器から受信した前記電気信号に対応する画像データを解析して前記二つのオブジェクトのエッジにおいて反射した光を受光した前記受光器に応答して識別された陰影距離における差と前記二つのオブジェクトの高さの差との比率を識別し;
前記プリントヘッドのインクジェットによって吐出された材料液滴の質量が所定の材料液滴の質量に対して変化したことを表す前記解析された画像データに応答して前記プリントヘッドの演算パラメータを調整する、
コントローラと、
を含むプリンタ。
【請求項2】
前記光源および前記鏡面反射センサアレイ内の前記複数の受光器が前記クロスプロセス方向の前記プリントヘッドの幅に対応する距離に沿って前記クロスプロセス方向へ延びている請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記光源が少なくとも2色の光を発光するように更に構成され、
前記コントローラが前記光源によって発光される2色の光の一つを選択するように更に構成されている請求項1に記載のプリンタ。
【請求項4】
前記複数の受光器が複数の積分期間にわたって電気クロック信号を生成するように構成され、
前記コントローラが前記受光器によって前記電気信号が生成される前記積分期間の一つを選択するように更に構成されている請求項1に記載のプリンタ。
【請求項5】
前記コントローラが、前記プリントヘッドを動作させて一つのオブジェクトの少なくとも一部を第1の所定高さで形成し、第2のオブジェクトを第2の所定高さで形成するように更に構成されており、前記第1の所定高さが前記第2の所定高さよりも大である請求項1に記載のプリンタ。
【請求項6】
前記コントローラが前記プリントヘッドを動作させて前記第2の所定の高さの10倍超である前記第1の所定の高さで前記一つのオブジェクトの前記少なくとも一部を形成するように更に構成されている請求項5に記載のプリンタ。
【請求項7】
前記コントローラが、前記プリントヘッドを動作させて前記一つのオブジェクトの一部を前記第1の所定の高さで形成し、前記一つのオブジェクトの別の部分を第3の所定の高さで形成するように更に構成されており、前記第3の所定の高さは、第1の所定の高さより低く、前記第2の所定の高さより高い、請求項5に記載のプリンタ。
【請求項8】
前記受光器の数が、前記クロスプロセス方向に延びる線において前記プリントヘッドが吐出できるインチ(2.54cm)当たりの液滴数より多い、請求項1に記載のプリンタ。
【請求項9】
前記コントローラが、前記鏡面反射センサアレイを前記クロスプロセス方向へ移動させて前記クロスプロセス方向の前記画像データの解像度上昇を可能にするように更に構成されている請求項1に記載のプリンタ。
【請求項10】
前記コントローラが、前記鏡面反射センサアレイを前記プロセス方向へ移動させて前記プロセス方向の前記画像データの解像度上昇を可能にするように更に構成されている請求項1に記載のプリンタ。
【請求項11】
前記鏡面反射センサアレイが前記プロセス方向に対して回転することにて前記鏡面反射センサアレイのサンプリング解像度が前記クロスプロセス方向に上昇することを可能にする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項12】
前記コントローラが、前記吐出された材料の2つの領域における厚さの差を特定するように更に構成され、前記厚さの差は、前記吐出された材料の吸収係数と、前記鏡面反射センサアレイによって検知された前記光に対応する前記電気信号と、前記光源に対する前記鏡面反射センサアレイの位置とを基準として特定される、請求項1に記載のプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示されている装置は3次元オブジェクトを生成するプリンタに係り、より詳細には、このようなプリンタにおいて3Dオブジェクトを生成するために使用される材料の液滴の質量の正確な検出に関する。
【背景技術】
【0002】
ディジタル付加製造としても知られているディジタル3D製造はディジタルモデルから本質的に任意の形状の3次元ソリッドオブジェクトを作成するプロセスである。3D印刷は、材料の連続層が様々な形状で基体上に形成される付加的プロセスである。3D印刷は、主に、切断または穿孔などのサブトラクティブ方式によってワークピースからの材料の除去に大きく依存する従来のオブジェクト形成技術とは区別される。
【0003】
3Dオブジェクトを生成する一部のプリンタは、一以上のプリントヘッドが材料の層を形成するインク液滴を吐出しオブジェクトを形成する平らなステージングエリアを使用する。典型的には、プリントヘッドは、実質的にはステージより小さく、プリントヘッドまたはステージのいずれかが、同一平面内で互いに直交するプロセス方向とクロスプロセス方向へ何度も移動し、オブジェクトの各層を形成する。更に、ステージおよびプリントヘッドの一方は、プリントヘッドとビルドされているオブジェクトとの間で適切な距離を維持するために、プロセス方向および/またはクロスプロセス方向の平面に対して垂直方向に移動する必要がある。
【0004】
プリントヘッド(複数)がクロスプロセス方向において生成されるオブジェクトと少なくとも同じ幅であると仮定すると、プリントヘッドにおけるインクヘットの間隔がその方向においてオブジェクトを形成するのに十分な間隔である場合、クロスプロセス方向の液滴配置のコントロールが必要とされない。インクジェットの解像度がクロスプロセス方向のオブジェクトの形成に必要とされる解像度より低い場合、または、プリントヘッドがプリントによって生成されているオブジェクトより狭い場合、クロスプロセス方向におけるプリントヘッドの複数通過とプリントヘッドの並進がオブジェクトを作製するために必要とされる。プロセス方向における液滴配置の解像度はステージまたはプリントヘッドのいずれかに対する並進速度を規制することによってコントロールすることができる。一般的に、垂直方向の分離または高さはいくつかの所定の範囲においてプリントヘッドによって吐出された材料液滴の質量または体積を維持することによってコントロールされる。液滴の質量または体積は、通常、いくつかのタイプの初期製造設定またはプリントジョブ実行前の範囲に較正される。或いは、平面化技術は、層が所望される高さを越えないことを確実とするためにプリントされた層から過剰な材料を除去するために使用することができる。平面化装置の追加は、プリンタに掛かる費用を上乗せし、オブジェクトを作製する時間も長くなる。液滴の質量/体積の較正は、温度、ビルド材料のバッチ内のビルド材料の一貫性、ビルド材料の一つのバッチから別のバッチまでのビルド材料の一貫性、冷却速度、プリント体積密度の影響、および他の演算パラメータを含むいくつかの要因によって変動し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、3Dオブジェクトを生成するプリンタで正確な液滴配置の確保が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
より正確な材料液滴の配置を有する3Dオブジェクトを作製するプリンタは、平面支持部材と、支持部材に向けて材料液滴を吐出するように位置決めされたプリントヘッドであって、平面支持部材とプリントヘッドとの少なくとも一つが平面支持部材とプリントヘッドとの他の一つに対して移動するプリントヘッドと、光源と複数の受光器とを有する鏡面反射センサアレイであって、光源が平面支持部材に所定の角度で発光し、各受光器が平面支持部材上で材料から反射した光に対応する電気信号を生成するように構成されている鏡面反射センサアレイと、平面支持部材とプリントヘッドと鏡面反射センサアレイとにオペラティブに連結されたコントローラと、を含む。コントローラは、プリントヘッドを動作させて平面支持部材上に少なくとも二つのオブジェクトを形成し;平面支持部材とプリントヘッドとの一つを動作させて平面支持部材とプリントヘッドとの他の一つに対して移動させることにて、少なくとも二つのオブジェクトが、平面支持部材を横切るプリントヘッドの幅を実質的にカバーするクロスプロセス方向の長さとプロセス方向における平面支持部材の一部に沿って延在するプロセス方向の長さを有することを可能にし;鏡面反射センサアレイを動作させて光を平面支持部材に向けて方向付け、かつ、鏡面反射センサアレイと平面支持部材との一つが鏡面反射センサアレイと平面支持部材との他の一つに対して移動する際、受光器によって生成された電気信号を受信し;受光器から受信した電気信号に対応する画像データを解析して受光器の一つから受光した反射光の勾配と二つのオブジェクトの一つの高さとの一つを識別し;プリントヘッドのインクジェットによって吐出された材料液滴の質量が所定の材料液滴の質量に対して変化したことを表す解析された画像データに応答してプリントヘッドの演算パラメータを調整する。
【0007】
より正確な材料液滴の配置を確保するためにプリンタを動作させる方法であって、この方法は、プリントヘッドを動作させて平面支持部材上の少なくとも二つのオブジェクトを形成するステップであって、少なくとも二つのオブジェクトが、平面支持部材を横切るプリントヘッドの幅を実質的にカバーするクロスプロセス方向の長さとプロセス方向における平面支持部材の一部に沿って延在するプロセス方向の長さとを有しており、平面支持部材とプリントヘッドとの一つが平面支持部材とプリントヘッドとの他の一つに対して移動するように構成されているステップと;平面支持部材とプリントヘッドとの一つを動作させて、少なくとも二つのオブジェクトを形成する際、平面支持部材とプリントヘッドとの他の一つに対して移動させるステップと;鏡面反射センサアレイを動作させて光を平面支持部材に向けて方向付け、かつ、鏡面反射センサアレイと平面支持部材と一つが鏡面反射センサアレイと平面支持部材との他の一つに対して移動する際に鏡面反射センサアレイによって受光した反射光に対応する電気信号を生成するステップと;鏡面反射センサアレイから受信した電気信号に対応する画像データを解析して鏡面反射センサアレイから受光した反射光の勾配と二つのオブジェクトの一つの高さとの一つを識別するステップと;プリントヘッドのインクジェットによって吐出された材料液滴の質量が所定の材料液滴の質量に対して変化したことを表す解析された画像データに応答してプリントヘッドの演算パラメータを調整するステップと、を含む。
【0008】
3Dオブジェクトを生成するプリンタの以上記載した態様および他の特徴は、添付図面を参照した以下の記載において説明される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、3Dオブジェクトを生成するプリンタのコンポーネントを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1のプリンタのプリントヘッドによって吐出されたビルド材料の液滴の質量/体積を識別するために使用することができる二つのテストオブジェクトを示す図である。
【
図3】
図3は、ビルド材料の液滴の質量/体積を識別するために使用されるテストオブジェクトのエッジを検出するために使用される画像センサモジュールを示す端面図である。
【
図4】
図4は、第2の実施形態による
図1のプリンタのビルド材料液滴の質量/体積を識別するために複数のテストオブジェクトをスキャンする
図3のセンサモジュールを示す図である。
【
図5】
図5は、テストオブジェクトの高さを識別するために
図3のセンサモジュールを使用する
図1のプリンタを動作させるためのプロセスを示す流れ図である。
【
図6】
図6は、別の構成のテストオブジェクトを示す図である。
【
図7】
図7は、複数の光センサをクロスプロセス方向に対して回転させることによってクロスプロセス解像度がどのように上昇するかを例示した図である。
【
図8】
図8は、吐出された材料による光吸収および光反射と、インクジェットによって吐出された材料の質量を識別するためのBeer(ベール)の法則の使用と、を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書に開示されている装置の環境ならびに装置の詳細の一般的な理解のために図面を参照する。図中、同様の要素には同様の参照番号を付す。
【0011】
図1は3Dオブジェクトまたは部品10を生成するプリンタ100のコンポーネントの構成を示している。プリンタ100は、支持材料リザーバ14、ビルド材料リザーバ18、インクジェットプリントヘッド対22、26、ビルド基板30、平面支持部材34、柱状支持部材38、アクチュエータ42、およびコントローラ46を含む。導管50はプリントヘッド22を支持材料リザーバ14に接続し、導管54はプリントヘッド26をビルド材料リザーバ18に接続している。インクジェットプリントヘッドは共に、コントローラにオペラティブに連結されたメモリ内の3D画像データに応じてコントローラ46によって動作されて各それぞれのプリントヘッドに供給される支持材料およびビルド材料を吐出する。ビルド材料は作製されている部品10の構造体を形成すると共に、支持材料によって形成された支持構造体58は、部品が組み立てられる際に材料が固化している間にビルド材料がその形状を維持するのを可能にする。部品が完成した後、支持構造体58は洗浄、送風、または溶解によって除去される。
【0012】
コントローラ46は、少なくとも一つ、おそらくは、より多くのアクチュエータにもオペラティブに連結され、平面支持部材34とプリントヘッド22、26との互いに対する相互移動をコントロールする。即ち、一以上のアクチュエータは、プリントヘッドを支持する構造体にオペラティブに連結されることにてプリントヘッドを平面支持部材の表面に対してプロセス方向およびクロスプロセス方向へ移動させる。或いは、一以上のアクチュエータは、平面支持部材34または柱状支持部材38のいずれかにオペラティブに連結されることにて部品が作製されている表面をプロセス方向およびクロスプロセス方向へ移動させる。本明細書で使用されているように、用語「プロセス方向」は平面支持部材34の表面の一つの軸線に沿った移動を指し、「クロスプロセス方向」は平面支持部材34の表面のプロセス方向の軸線に直交する平面支持部材表面の軸線に沿った移動を指す。
図1において、これらの方向にはそれぞれ、頭文字「P」と「C‐P」が付されている。プリントヘッド22、26および平面支持部材34もまた、平面支持部材34に直交する方向へ移動する。この方向を本明細書では「垂直方向」と称し、柱状支持部材38に平行であり、
図1においては、頭文字「V」で表される。垂直方向移動は、柱状支持部材38にオペラティブに連結された一以上のアクチュエータ、プリントヘッド22、26にオペラティブに連結された一以上のアクチュエータ、または柱状支持部材38とプリントヘッド22、26の両方にオペラティブに連結された一以上のアクチュエータによって左右される。様々な構成におけるこれらのアクチュエータはコントローラ46にオペラティブに連結され、コントローラ46は、アクチュエータを動作させることにて柱状支持部材38、プリントヘッド22、26、または柱状支持部材38とプリントヘッド22、26の両方を垂直方向へ移動させる。
【0013】
上述したように、ビルド材料の液滴の質量/体積は、通常、プリンタの初期設定における較正方法によって設定される。この較正された液滴の質量/体積は、温度変化、ビルド材料のバッチ内の一貫性、ビルド材料の一つのバッチからビルド材料の別のバッチへの一貫性のばらつき、冷却速度、印刷体積密度の影響、および他の演算パラメータによって変動する可能性がある。所定の範囲を外れた液滴を抽出して液滴の質量/体積の変化を検出するために、平面支持部材上に少なくとも二つのテスト構造体またはオブジェクトを作製し、次に、これらの二つのオブジェクトと平面支持部材へ向けて方向付けられた光の鏡面反射から画像データを生成するシステムおよび方法が開発されている。
【0014】
ビルド材料液滴の質量/体積を評価するために使用される二つオブジェクトの例を
図2に示す。オブジェクト104と108の両方は矩形の固体物である。オブジェクト108の所定の高さはオブジェクト104の所定の高さより大である。一実施形態において、オブジェクト108とオブジェクト104の高さの割合は10:1である。この実施形態において、オブジェクト108は高さ1.0mmであり、オブジェクト104は高さ0.1mmである。これらのオブジェクトはビルド表面30上の所定の位置に形成され、所定の幅を有しており、この幅は同じであってよい。両オブジェクトは、ビルド材料のプリントヘッド26の面幅と少なくとも同じ長さの距離分、ビルド表面を横断して延びる。この長さは、ビルド材料プリントヘッド内の全てのインクジェットがオブジェクトを作製するために使用され、これによって、判定されるのを可能にする。
【0015】
イメージセンサ300は、ビルド材料プリントヘッド内のインクジェットに対する液滴の質量/体積を識別するために分析することができる画像データを生成する。
図3に示した端面図において、画像センサモジュール300は、光源320と光検出器アレイ328を含む。アレイ328は線形アレイ内にプリント基板に実装された複数の半導体チップを含む。アレイ内の第1のチップのみが端部から可視であるので一チップのみを
図3に示す。自己集束レンズ324はアレイ328の一端から他端まで延在している。知られているように、レンズ324はチップの少なくとも一つへ向けて反射光を集束させる複数のロッドから構成されている。一部のチップは、チップがレンズ324内の一つより多くのロッドから受光するレンズ324内のロッドに対して位置決めすることができる。やはりアレイ328の一端から他端まで延在する光源320は、平面支持部材34上のビルド基板30とビルド基板上の二つのオブジェクト104、108へ向けて光を傾斜して方向付ける。アレイ328、レンズ324、および光源320は、筐体310内に位置決めされ、画像センサ300を形成する。平面支持部材とセンサモジュール300が互いに対して相互移動する際、メンバーセンサ300は、ビルド基板30と該ビルド基板上のテストオブジェクト104、108から反射しかつレンズ324によってアレイ328へ方向付けられる鏡面反射光に対応する画像データを生成する、鏡面反射センサとして動作する。光検出器アレイ324内の各チップは、平面支持部材34上のビルド基板20と光源320とに対して固定角度で位置決めされる。具体的には、光検出器アレイ内のチップはビルド基板30または該ビルド基板上の二つのオブジェクトの一つから反射される鏡面反射光を受光するように位置決めされる。本明細書中に使用されている「鏡面」は滑らかな平面から反射される光を指し、よって、入射角が反射角に等しく、入射方向、垂直方向、反射方向が同一平面上にある。
【0016】
筐体310の底部エッジは距離Dだけビルド基板から離間されている。一実施形態において、Dは約2〜約5mmである。
図3に示したように、モジュール300または平面支持部材34のいずれかがセンサ300を経由してビルド基板30を通過しまたはセンサ300がビルド基板30を通過するように移動することができる。光源320からの光がビルド基板30に射突すると、この光は自己集束レンズ324へ反射する。自己集束レンズ324は、鏡面反射光を集光し、ビルド基板30から自己集束レンズ324を介して受光した光の量に対応する電気信号を生成するアレイ328内の少なくとも一つのチップへ、集束させる。光が二つのオブジェクトの一方の前縁に到達すると、センサ330は、光がオブジェクトによって遮断され、かつ、光検出器によって生成される電気信号が受光されるどの光にも対応しないため、反射光を受光しなくなる。センサ300は、光源からの光がオブジェクトの頂面に射突してからセンサが受光されている反射光を表す電気信号を生成し始めるまで、遮断されたままである。センサ300がオブジェクトの裏エッジを通過すると、光は、光源320が傾斜しているので、オブジェクトの裏エッジを通り過ぎた位置でビルド基板30に射突し、光検出器アレイのセンサ300内へ連続的に反射する。光がビルド基板30に射突する位置は構造体の高さに比例している。光検出器は、次のオブジェクトの前縁がセンサ300を遮蔽するまで、受光されている反射光を表す電気信号を連続的に生成する。これにより、第1のオブジェクトによる光検出器アレイの遮蔽位置から第2のオブジェクトによる光検出器アレイの遮蔽位置までの距離は、第1のオブジェクトと第2のオブジェクトの高さの各々に対応している。同じ高さのオブジェクトによる光検出器アレイの遮蔽と非遮蔽とを
図4に示した。
【0017】
センサ300の基本的な幾何学的形状および二つのテストオブジェクトの高さを用いて、各光検出器において受光された光の勾配およびオフセットを識別することができる。オフセットは、
図4のテストオブジェクトの左縁とイルミネーションが基板に当たる最右点との間のプロセス方向の距離である。言い換えれば、オフセットはプロセス方向におけるテストオブジェクトの陰影の長さである。勾配は基板に垂直なベクトルに対するイルミネーションの角度である。勾配は高さ/体積比の尺度である。勾配または体積の精度は、ビルド基板30およびセンサ300のプロセス方向の相対移動を遅延させることによって高めることができることにて、より多くの光検出器の単位長さ当たり受信読み出し数が可能になり、光検出器により測定されたイルミネーションを使用することにより、サブスキャンライン解像度の取得が可能になる。理想的な鏡面反射センサは、光のビームがテスト対象の頂部エッジに射突すると、急きょ、暗から明へ進行する。等速スキャン時の光検出器の積分効果と共に集光された光の有限角度分布により、イルミネーションの段階的変化は少なくとも1または2本のスキャンライン上で検出される。最大照度と最小照度の間にある閾値としての特定照度レベルの選択はより高い精度を得るために使用することができる。或いは、対象物の前縁と後縁の両方の検出は精度を高めることができ、および/または、光線が材料を通過することを必要とする異なる対象エッジを識別するという利点を提供することができる。透過率がゼロに近似しており、オブジェクト表面からの拡散反射率がビルド基板30の表面からの鏡面反射率に近似している場合、光線を遮断するオブジェクトのエッジは、必要に応じて、より明確化した遷移を提供することができる。更に、プロセス方向における対象物の数を多くして、複数の測定値の平均値を求めることによってエッジ検出や勾配測定の精度を高めることができる。
【0018】
3Dオブジェクトを生成するプリンタを動作させる方法を
図5に示す。この方法の記載において、プロセスが一部のタスクまたはファンクションを実行しているステートメントは、データを操作するかまたはプリンタ内の一以上のコンポーネントを動作させてタスクやファンクションを実行させるために、コントローラまたはプロセッサにオペラティブに連結されたメモリ内に記憶されたプログラミングされた命令を実行する、コントローラまたは汎用プロセッサを指す。上述のコントローラ46はこのようなコントローラまたはプロセッサであってよい。或いは、コントローラ46は、各々が本明細書に記載されている一以上のタスクまたはファンクションを形成するように構成されている複数のプロセッサおよび対応するサーキトリやコンポーネントによってインプリメントすることができる。
【0019】
プロセス500は、プリントヘッドの動作から開始して、平面支持部材上に少なくとも二つのオブジェクトを形成する(ブロック504)。オブジェクトを形成する間、コントローラは、平面支持部材とプリントヘッドとの一つを平面支持部材とプリントヘッドとの他の一つに対して移動させるためにアクチュエータを動作させる。この移動は、少なくとも二つのオブジェクトが、平面支持部材を横切るプリントヘッドの幅を実質的にカバーするクロスプロセス方向の長さで形成され、プロセス方向における平面支持部材の一部に沿って延在するプロセス方向の長さで形成されることを可能にするように、実行される。上述のように、プリントヘッドはまた、異なる高さを有するテストオブジェクトを形成するように動作することができる。プロセス500は、平面支持部材に向けて光を方向付け、鏡面反射センサアレイと平面支持部材との一つが鏡面反射センサアレイと平面支持部材との他の一つに対して移動する際に受光器によって生成される電気信号を受信するためにモジュール300における鏡面反射センサアレイを動作させる(ブロック508)。プロセスはまた、鏡面反射センサアレイと平面支持部材とを互いに対して異なる速度で移動させることにて、プロセス方向の画像データの解像度を選択するために鏡面反射センサアレイと平面支持部材とをコントロールする。プロセスは、受光器の一つによって受光された反射光と二つのオブジェクトの間の相対的な高さのオフセットを識別するために受光器から受信した電気信号に対応する画像データを解析する(ブロック512)。この解析において、陰影によって被覆された距離の勾配とターゲットオブジェクトの厚さまたは高さとの関係は、異なる高さの二つのオブジェクトによって形成される陰影の二つの距離を比較することによって、および、dx/dyの比率を求めることによって、得ることができる。dx/dyの比率において、dxは陰影の距離の変化であり、dyは二つのオブジェクトの高さの変化である。陰影の距離は、各オブジェクトの縁における、明から暗へ、次に、暗から明への遷移を検出する光センサによって識別される。オブジェクトの予想される高さは、対象オブジェクトを組み立てるために使用されるデータから求められる。これらのデータが識別されると、プロセスは、プリントヘッドのインクジェットによって吐出された材料液滴の質量が所定の材料液滴の質量に対して変化したことを表す解析された画像データに応答して、プリントヘッドの演算パラメータを調整する(ブロック516)。
【0020】
このプロセスにおけるいくつかの変形として、以下に記載された理由から異なるカラーの光を発するために光源を動作させるプロセスを含む。更に、複数の積分期間を定義づける電気クロック信号が光検出器によって生成される実施形態において、このプロセスを実行するコントローラは、光検出器アレイ328によって電気クロック信号が生成される積分期間の一つを選択するように更に構成されている。積分期間の変化は、アレイ328が光を受光し、次に、対応する電気信号を生成するために掛かる時間の量を左右する。よって、この動作はプロセス方向における画像データの解像度に影響を与える。
【0021】
テストオブジェクトの構成はオブジェクトの高さの識別を容易にするか、または、画像データ解析を改良するために変えることができる。例えば、
図6に示したテストオブジェクト600における方形波の上面は、短いクロスプロセス領域を隔離し、3D印刷密度の影響をテストし、個別のインクジェット性能からの光円錐角の分布のデコンボリューションを補助するために使用することができる。
【0022】
クロスプロセス測定精度は上記のプロセスをいくらか変更することによって改良することができる。一つには、ビルド材料のプリントヘッドにおけるインクジェットのインチ当たり解像度の液滴よりクロスプロセス方向においてより多くの光検出器を有するモジュールセンサは、クロスプロセスの位置精度を向上させることができる。クロスプロセスの精度を向上させる別の方法は、モジュールセンサの所与のクロスプロセスの解像度に対するクロスプロセス方向のサンプリング解像度を上げるために、プロセス方向に対してある角度でセンサを回転させることである。例えば、
図7において、
図3に示したように構成されたセンサ300の対は、クロスプロセス方向CPに対して45°傾斜して回転することが示されている。回転前の光検出器アレイの解像度が600dpi(1インチ当たりドット)であった場合、回転した位置のクロスプロセス方向における解像度は、600/sin(45°)=600/0.707=848dpiである。アレイが回転すればするほど、クロスプロセス方向の解像度がますます高くなり、全クロス方向をカバーするためにアレイ内により多数のチップを有する必要性がますます高くなる。複数の短いセンサを回転させかつキャプチャされた画像を
図7に示されるプロセス方向の線Pでステッチすることによって、制約されたエリア内で、大きな回転角度を実現することができる。この手法の実際的な制約は、センサ同士の間のステッチ、アレイを位置決めするために必要とされるプロセス方向の空間の量、およびアレイ内で必要とされるセンサの数によって、発生する。
【0023】
クロスプロセスの精度は、光検出器における光のクロスプロセス円錐角度分布に応じて、光検出器からの信号をデコンボリューションすることによって改良することができる。更に、クロスプロセスの精度は、光検出器アレイ328内のチップ間の距離を下回る距離にわたってセンサモジュールをクロスプロセス方向へ並進させることによって改良され、より高い解像度のサブサンプリングを可能にする。これらの手法は、クロスプロセス測定の精度を改良するために、組み合わせてもよいし、または、繰り返し実行してもよい。更に、局所的な短いオブジェクトを通過する反射透過率の均一性は、焦点における円錐角効果が小さいので、光検出器の焦点においてより高精度の読み取りを提供する。光源からの光のカラーの吸収および使用に対するベールの法則は、基板上のビルド材料の厚さを識別するために別の機構として使用することもできる。ベールの法則は、T=T
0*e
−αzで表され、式中、T
0は入射光、Tは厚さzの吸収層を通過する透過光、αは光吸収係数である。ビルド材料の下層基板が完全に反射性である場合、層の表面から再び発せられる光はビルド材料を通る二つの経路を作る。その場合、基板の反射によってセンサへ反射する光は、厚さz
1の材料を横切る光はT
1=T
0e
−2αz1で表し、厚さz
2の材料を横切る光をT
2=T
0e
−2αz2で表す。αz
1とαz
2が1よりはるかに小さい場合、比率は、T
2/T
1=e(
−2α(z2−z1))=1−2α(z
2−z
1)およびdz=z
2−z
1となる。
図8はこの解を概略的に示す図である。
図8の実施例において、T
1=.90,T
2=.89、そこで、
【数1】
または、αz
1=0.1。また、
【数2】
または、αΔz=0.11。これらの二つの量の比率をとると、αΔz/αz
1=Δz/z
1=0.11/0.1=1.1となり、インクジェットが10%を越えた質量を有する液滴を吐出することを意味する。よって、コントローラは、この方法を使用して吐出された材料の二つのエリア間の厚さの差を識別するように構成されている。厚さの差は、吐出された材料の光吸収係数、鏡面反射センサアレイにより感知された光に対応する電気信号、および光源に対する鏡面反射センサアレイの位置に応じて、コントローラによって識別される。
【0024】
全方向における精度は、いくつかのテストオブジェクトまたはいくつかの光検出器の平均をとることによって高めることができる。各光検出器において各オブジェクトの高さが正確に求められると、プリンタの演算パラメータに逆補正を適用することができる。例えば、オブジェクトのエッジの所定の場所の高さが高すぎる場合、インクジェットに対する液滴の質量/体積を削減してインクジェットが吐出する材料の量を削減する。これらの調整は発射信号波形形状を変化させるなどの公知の方法を含む。液滴の質量/体積の削減量は、検出されたエッジにおいて識別された高さに至ったインクジェットによって吐出された液滴の質量の関数である。所定の高さの構造体に至った単位面積あたりの液滴の数を知ることで、液滴の質量/体積に対する高さの感度を求めることができ、インクジェットによって吐出される液滴の質量/体積を削減するための調整が行われる。識別されたオフセットは、高さ測定が誤配置されたビルド材料液滴に対して補正されるのを可能にする。全方向における測定の精度は、いくつかのオブジェクトまたは光検出器に対して識別される高さやエッジの位置の平均をとることによって高めることができる。また、反復される測定や補正は、測定精度のために有用である。インチ当たりの液滴数、液滴拡散などを含む様々な要因に依存して、いくつかのインクジェットに対する平均値を求めることができる。
【0025】
液滴の質量/体積の識別のための上記のシステムや方法のインプリメンテーションにおいて数多くの実用的な考えが浮かぶ。これらの考えは、平面支持部材の特定のゾーンにテストオブジェクトを配置すべきか、または、設定段階において平面支持部材の表面を使用すべきかどうかを含む。更に、異なる種類の鏡面反射表面が使用することができ、これらの表面は、光検出器において光を受光するために可能となった円錐角および光源から発せられる光の波長に影響を与える。また、異なる支持基板は、透過率コントラストに影響を与え、一部の基板は支持基板上でのオブジェクトスキャンを可能にする場合もあるが、他は不可能である。
【0026】
以上に開示した特徴およびファンクションまたはその代替物およびこれらとは別の特徴およびファンクションまたはその代替物の変形が、望ましくは、多くの他の異なるシステム、用途、または方法に組み合わせてよいことが理解されよう。以下の特許請求の範囲によって包含されることを前提として、現在では予見または予期されないが今後開発が予想される様々な代替、変更、変形または改良が可能なことは当業者にとって明らかである。