特許第6353796号(P6353796)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6353796
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】出力装置および出力システム
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/04 20060101AFI20180625BHJP
【FI】
   B25J15/04 A
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-38069(P2015-38069)
(22)【出願日】2015年2月27日
(65)【公開番号】特開2016-159377(P2016-159377A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】391003989
【氏名又は名称】株式会社コスメック
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】春名 陽介
【審査官】 臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−169383(JP,A)
【文献】 特開2000−108092(JP,A)
【文献】 特開2000−317541(JP,A)
【文献】 特開2004−106104(JP,A)
【文献】 特開2010−105111(JP,A)
【文献】 特開2011−255482(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/04
B26F 1/04
B23Q 3/00− 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(1)内に軸心方向へ移動可能に挿入される操作ロッド(22)であって、その操作ロッド(22)の端部に加えられる前記軸心方向への外力で、前記軸心方向へ移動する操作ロッド(22)と、
前記ハウジング(1)と前記操作ロッド(22)との間に設けられる倍力機構(5)であって、前記操作ロッド(22)の前記軸心方向への移動を助勢する倍力機構(5)と、
前記操作ロッド(22)によって前記軸心方向または前記軸心方向と交差する方向へ移動させられる出力ロッド(21)と、
を備え、
前記倍力機構(5)は、
係合部材(51)と、
前記操作ロッド(22)の外周に形成された、前記係合部材(51)が嵌り込む係合凹部(52)であって、前記係合部材(51)が係合するカム面(52a)を有する係合凹部(52)と、
前記操作ロッド(22)の半径方向への前記係合部材(51)の移動を許容するが前記操作ロッド(22)の軸心方向への前記係合部材(51)の移動を制限する係合部材支持部(53)と、
バネ(55)により付勢されることで前記係合部材(51)を押圧する押圧部材(54)であって、前記係合部材(51)が係合する倍力面(54a)を有する押圧部材(54)と、
を有することを特徴とする、出力装置。
【請求項2】
請求項1の出力装置において、
前記出力ロッド(21)の基端側部分に設けた案内部材(35)と、
前記案内部材(35)に直接または間接的に係合されるように前記操作ロッド(22)に設けたカム溝(38)であって、前記操作ロッド(22)の軸心方向の両端のうちのいずれか一端へ向かうにつれて当該軸心から離れる駆動溝部分(40)を有するカム溝(38)と、
を備えることを特徴とする、出力装置。
【請求項3】
請求項1または2の出力装置と、
前記操作ロッド(22)を前記軸心方向へ移動させるためのガイド面(90b、91a)を有するストッカ(100)と、を備え、
前記ストッカ(100)は、
前記出力装置でクランプされるクランプ対象物(70)が載置される載置台部(86,87)と、
テーパ形状の前記ガイド面(90b、91a)が内面に設けられたガイド溝(90,91)であって、前記操作ロッド(22)の端部の案内部となるガイド溝(90,91)と、
を有しており、
前記ハウジング(1)から突出する前記操作ロッド(22)の端部を前記ガイド溝(90,91)に通すことでテーパ形状の前記ガイド面(90b、91a)に当接させて前記操作ロッド(22)を前記軸心方向へ移動させることを特徴とする、出力システム。
【請求項4】
請求項3の出力システムにおいて、
前記操作ロッド(22)の一方の端部であるロック操作部(23a)と、他方の端部であるリリース操作部(24a)との大きさが異なり、
前記ガイド溝(90,91)は、前記ロック操作部(23a)に対応するロックガイド溝(90)と、前記リリース操作部(24a)に対応するリリースガイド溝(91)とで構成されることを特徴とする、出力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットアームの先端に取り付けて使用するのに好適な出力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
1台のロボットで様々な作業を実施できるようにロボットアームの先端には出力装置が取り付けられ、各種の工具が取り付けられたアダプタがこの出力装置に締結される。ロボットアームの先端に取り付けて使用するという用途ではないが、締結装置という広義の解釈で機能が共通する装置として、従来では、下記の特許文献1に記載されたものがある。その従来技術は、次のように構成されている。
【0003】
特許文献1に記載の締結装置は、出力ロッド(締結離脱受動クサビ)と直交するように操作ロッド(駆動スピンドル)を配置し、操作ロッドの端部に設けた六角穴に六角レンチを挿入して回動させることで操作ロッドをその軸心方向に移動させ、これにより、2つのクサビ(締結駆動クサビと離脱駆動クサビ)を介して出力ロッドが移動するように構成されたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−105111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の従来技術は、操作ロッドをその軸心方向に移動させるために、六角レンチなどの工具を用いて大きな力を操作ロッドに作用させなければならないという問題がある。
本発明の目的は、上記の問題点を改善するための出力装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、例えば、図1から図2Bに示すように、出力装置を次のように構成した。
【0007】
ハウジング1内に軸心方向へ移動可能に挿入される操作ロッド22は、当該操作ロッド22の端部に加えられる前記軸心方向への外力で、軸心方向へ移動する。操作ロッド22の軸心方向への移動を助勢する倍力機構5がハウジング1と操作ロッド22との間に設けられる。操作ロッド22の軸心方向または当該軸心方向と交差する方向へ操作ロッド22によって出力ロッド21は移動させられる。倍力機構5は係合部材51を有し、この係合部材51は、操作ロッド22の外周に形成された係合凹部52に嵌り込む。この係合凹部52は、係合部材51が係合するカム面52aを有する。操作ロッド22の半径方向への係合部材51の移動を許容するが操作ロッド22の軸心方向への係合部材51の移動を制限する係合部材支持部53が設けられている。また、バネ55により付勢されることで係合部材51を押圧する押圧部材54が設けられており、この押圧部材54は係合部材51が係合する倍力面54aを有する。
【0008】
本発明の出力装置は、次の作用効果を奏する。
本発明の出力装置では、操作ロッドの移動を前記した倍力機構により助勢する。そのため、小さな力で操作ロッドを移動させることができるので、大きな力で操作ロッドを移動させる工具・電動機などの駆動手段を用いる必要はない。
【0009】
本発明の出力装置は、次の構成をさらに備えることが好ましい。
出力ロッド21の基端側部分に案内部材35が設けられる。その案内部材35に直接または間接的に係合されるように操作ロッド22にカム溝38が設けられる。そのカム溝38の駆動溝部分40は、操作ロッド22の軸心方向の両端のうちのいずれか一端へ向かうにつれて当該軸心から離れるように構成される。
【0010】
この構成によると、従来装置(特許文献1に記載の締結装置)と比べて、操作ロッドと出力ロッドとの間の力の伝達機構の構成が簡素になるので、製作コストが安くなるうえコンパクトに造れるという作用効果を奏する。
【0011】
また、第2の発明に係る出力システムは、前記した出力装置と、その操作ロッド22を軸心方向へ移動させるためのガイド面90b、91aを有するストッカ100とを備える出力システムであって、例えば、図3Aから図5に示すように、次のように構成されたものである。
ストッカ100は、出力装置でクランプされるクランプ対象物70が載置される載置台部86,87と、操作ロッド22の端部の案内部となるガイド溝90,91とを有している。ガイド溝90,91にはテーパ形状の前記ガイド面90b、91aが内面に設けられている。ハウジング1から突出する操作ロッド22の端部をガイド溝90,91に通すことでテーパ形状の前記ガイド面90b、91aに当接させて操作ロッド22が軸心方向へ移動するようにストッカ100は構成されている。
【0012】
この構成によると、簡易な操作で出力装置の操作ロッドをその軸心方向へ移動させることができる。
【0013】
また、本発明の出力システムにおいては、出力装置の操作ロッド22の一方の端部であるロック操作部23aと、他方の端部であるリリース操作部24aとの大きさが異なり、且つ、ストッカ100のガイド溝90,91は、前記ロック操作部23aに対応するロックガイド溝90と、前記リリース操作部24aに対応するリリースガイド溝91とで構成されることが好ましい。この構成によると誤操作を防止できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、小さな力で操作ロッドを移動させて出力ロッドを動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1Aは、本発明の第1実施形態の出力装置を適用したロボットハンドチェンジャーのリリース状態の立面視の断面図である。図1Bは、図1A中の1B−1B線の断面図に相当する図である。図1Cは、図1A中の1C−1C線の断面図に相当する図である。
図2図2Aは、上記ロボットハンドチェンジャーのロック状態を示し、図1Aに類似する図である。図2Bは、図1Bに類似する図である。
図3図3Aおよび図3Bは、それぞれ、クランプ対象物(ツールアダプタ)が載置された本発明の一実施形態に係るストッカに、図1に示す出力装置を挿入した状態を示す平面図および正面図である。
図4図4Aは、図3A中の4A−4A線の断面図に相当する図であり、図4Bは、図3A中の4B−4B線の断面図に相当する図である。いずれの図においても出力装置およびクランプ対象物(ツールアダプタ)の図示を省略している。
図5図5は、図3に示すリリース状態から出力装置をスライド移動させていった途中状態を示す平面図である。
図6図6は、本発明の第2実施形態の出力装置を適用したロボットハンドチェンジャーを示し、図1Aに類似する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1Aから図2Bは、本発明の第1実施形態の出力装置を適用したロボットハンドチェンジャーを例示している。まず、図1Aから図1Cに基づいて上記ロボットハンドチェンジャーの構造を説明する。
【0017】
なお、以下の説明で用いる「上部」、「上方」、「上下方向」、「水平方向」といった方向を示す文言は、図1に示す向きに出力装置がある場合のものであって、出力装置およびこれを構成する各部品の向きは、以下の説明で用いる方向を示す文言で限定されるものではない。ロボットアームの先端は様々な方向に向けられるものであるので、ロボットアームの先端に取り付けられた出力装置も様々な方向を向くからである。
【0018】
(出力装置)
上記出力装置のハウジング1は、本体部分としてのハウジング本体2と、そのハウジング本体2の上部から上方へ一体に突出された筒状のプラグ部分3とを備える。上記のハウジング本体2内に出力装置の構成部材が配置され、上記プラグ部分3に後述のクランプ機構4の構成部材が設けられる。ハウジング1(出力装置)は、図示を省略するロボットアームの先端に取り付けられる。
【0019】
上記のハウジング本体2に第1ガイド孔11が上下方向に形成される。また、そのハウジング本体2に第2ガイド孔12が水平方向へ形成され、その第2ガイド孔12が第1ガイド孔11に交差されている。
【0020】
上記第1ガイド孔11と上記プラグ部分3の筒孔3aに、出力ロッド21が上下方向(軸心方向)へ移動可能に挿入される。また、上記第2ガイド孔12に駆動用の操作ロッド22が水平方向(軸心方向)へ移動可能に挿入される。この操作ロッド22は、同軸配置されるロック側操作ロッド23とリリース側操作ロッド24とで構成される。ロック側操作ロッド23の端部であるロック操作部23aは、リリース側操作ロッド24の端部であるリリース操作部24aよりも小さい。ロック側操作ロッド23は、第2ガイド孔12に挿入されるとともにハウジング本体2の側方端に固定されたガイド筒25にも挿入される。また、ロック側操作ロッド23の中途部には円板形状の鍔部23bが設けられる。リリース側操作ロッド24は、第2ガイド孔12に挿入されるとともにハウジング本体2の上記側方端とは反対側の側方端に固定されたガイド筒26にも挿入される。なお、ガイド筒25,26はハウジング1を構成する一部品である。
【0021】
出力ロッド21の下半部分(基端側部分)には、水平方向かつ上下方向へ延びる収容溝31が形成される。その収容溝31には、ロック側操作ロッド23に設けた挿入部32が嵌入される。
【0022】
また、収容溝31の両側壁31a,31aには、案内部材としてのピン部材35の長手方向の両端部が、ラジアルベアリング36を介して回転可能に支持される。上記ピン部材35に対応させて、ロック側操作ロッド23の前記挿入部32にカム溝38が形成される。そのカム溝38は、水平溝部分39と、右下向きに傾斜された駆動溝部分40とを有し、この駆動溝部分40は、ロック側操作ロッド23の軸心方向に対する傾斜角度が相互に異なる第1駆動溝部分40aと第2駆動溝部分40bとで構成される。第2駆動溝部分40bの傾斜角度(例えば、30°)は、第1駆動溝部分40aの傾斜角度(例えば、45°)よりも小さい。上記カム溝38がピン部材35の長手方向の中央部に外嵌め(係合)されている。さらに、前記プラグ部分3の途中高さ部に設けたバネ受43と出力ロッド21の途中高さ部との間にロックバネ44が装着される。
【0023】
ハウジング本体2内の右側方部分には、ロック側操作ロッド23の軸心方向への移動を助勢する倍力機構5が設けられる。この倍力機構5は、次のように構成される。
【0024】
ロック側操作ロッド23の外周には、係合部材としての係合ボール51が嵌り込む複数の係合凹部52が、周方向へ所定の間隔をあけて形成される。その係合凹部52のうちのハウジング本体2中心側に形成されたカム面52aは、ロック側操作ロッド23の端部へ向かうにつれて軸心に近づくように形成される。また、前記ガイド筒25の半径方向内側の筒壁25aには、ロック側操作ロッド23の半径方向への係合ボール51の移動を許容するが、ロック側操作ロッド23の軸心方向への係合ボール51の移動を制限する係合部材支持部としての支持孔53が、前記係合凹部52に対応させて複数形成される。
【0025】
さらに、前記ガイド筒25の窪み27部分には、係合ボール51を押圧する筒状の押圧部材54が配置される。押圧部材54の内周に形成された倍力面54aは、ロック側操作ロッド23の端部へ向かうにつれて軸心に近づくように形成されており、その水平方向(軸心方向)に対する傾斜角度は、前記カム面52aの水平方向(軸心方向)に対する傾斜角度よりも小さい。押圧部材54とガイド筒25の窪み27部分の底面との間にはハウジング本体2の中央側へ押圧部材54を付勢するバネ55が入れられている。また、ロック側操作ロッド23の外周の、係合凹部52よりも少しハウジング本体2中心側に近い部分には、環状の係止溝56が設けられている。
【0026】
前記クランプ機構4は、次のように構成されている。
前記プラグ部分3の周壁の上部に、横向きの貫通孔61が周方向へ所定の間隔をあけて形成され、各貫通孔61に係合ボール62が挿入される。出力ロッド21の上部には、下向きに狭くなるテーパ外周面63と退避溝64とが上下に形成される。プラグ部分3の周壁の下半部にコレット65が外嵌めされる。そのコレット65は、上下方向へ形成されたスリット66を有し、半径方向へ縮小可能で自己の弾性復元力によって半径方向へ拡大可能に構成されている。上記コレット65が進出バネ67によって上方へ付勢される。なお、上記の進出バネ67は、周方向へ所定の間隔をあけて複数配置されている。
【0027】
(クランプ対象物(ツールアダプタ))
また、出力装置でクランプされるクランプ対象物としてのツールアダプタ70の下面に挿入穴71が開口される。その挿入穴71の内周面に係止孔72とテーパ位置決め孔73とが上下に形成される。このツールアダプタ70には、図示を省略する各種の工具が取り付けられる。
【0028】
(ストッカ)
図3Aから図5は、本発明の出力システムを構成するストッカ100の一実施形態を示している。図3Aから図4Bに基づいてストッカ100の構造を説明する。
【0029】
テーブルの上に固定される一対の脚部81,81の裏面に支持壁82がボルト83aで立設固定される。この支持壁82には、水平方向に延びるように一対の受け部材84,85がボルト83bで固定される。これら受け部材84,85の支持壁82への固定はリブ84a,85aで補強されている。
【0030】
一方の受け部材84下部の受け部材85との対向面には水平方向に延びる溝形状の載置台部86が形成される。同様に、他方の受け部材85下部の受け部材84との対向面にも水平方向に延びる溝形状の載置台部87が形成される。前記ツールアダプタ70は、これら載置台部86,87の開放端から挿入されて載置台部86,87の上に置かれる。なお、図3Bに示すツールアダプタ70の上下方向の向きは、図1Aに示すツールアダプタ70の向きと上下反対である。
なお、ツールアダプタ70は、水平方向に延びる溝形状に形成される載置台部86と載置台部87に跨って載置されることに代えて、平面状に形成された載置台部上に載置されてもよい。
【0031】
また、受け部材84上部の受け部材85との対向面には水平方向に延びる溝形状のガイド溝88が形成され、同様に、受け部材85上部の受け部材84との対向面にも水平方向に延びる溝形状のガイド溝89が形成される。上記ガイド溝88内には水平方向に延びるロックガイド溝90がさらに設けられ、その端部は上下方向に延びる溝90aとされている。ロックガイド溝90の溝90aとは反対側の端部には、前記ロック側操作ロッド23の端部(ロック操作部23a)が当接するテーパ形状のテーパ面90bが形成される。また、上記ガイド溝89内には水平方向に延びるリリースガイド溝91がさらに設けられ、その一部には前記リリース側操作ロッド24の端部(リリース操作部24a)が当接するテーパ形状のテーパ面91aが形成される。ロックガイド溝90の幅は、前記リリース側操作ロッド24の端部は通過不可で前記ロック側操作ロッド23の端部が通過可能な寸法とされ、リリースガイド溝91の幅は、前記リリース側操作ロッド24の端部が通過可能な寸法とされる、すなわち、ロックガイド溝90とリリースガイド溝91とは大きさが異なる。
【0032】
(ロック・リリース操作)
前記ストッカ100を用いたツールアダプタ70のロック・リリース操作について説明する。なお、図1A図2Aに示す出力装置およびツールアダプタ70の上下方向の向きは、図3Aから図5に示す出力装置およびツールアダプタ70の向きと上下反対であることを先に言及しておく。
【0033】
まず、図1Aのリリース状態では、ロック側操作ロッド23の端部がガイド筒25から突出され(右方へ後退され)、これにより、出力ロッド21がロックバネ44に抗して上昇され(図3Bでは下降されている)、係合ボール62が退避溝64へ向けて半径方向の内方へ移動可能になっている(図1Aでは、上記係合ボール62が既に移動された状態を示している)。倍力機構5を構成する係合ボール51は、押圧部材54に押されて、ロック側操作ロッド23の外周に形成された係止溝56に嵌り込んでいる。
【0034】
図1Aのリリース状態から図2Aのロック状態へ切り換えるときには、ロボットアームを動かして、まず、図3A図3Bに示すように、ストッカ100の上方からその受け部材84に形成された溝90aに、出力装置のロック側操作ロッド23の端部(ロック操作部23a)を挿入しつつ、ストッカ100の載置台部86,87の上に載置されたツールアダプタ70の挿入穴71に出力装置のプラグ部分3を挿入していき、前記コレット65のテーパ形状の外周面をツールアダプタ70のテーパ位置決め孔73に嵌合させる。
【0035】
次いで、図5に示すように、ストッカ100のガイド溝88,89に沿って支持壁82から離れる方向に出力装置をスライドさせていく。出力装置のロック側操作ロッド23の端部がロックガイド溝90のテーパ面(ガイド面)90b部分に到達すると、その端部はやがてテーパ面90bに当接し、さらにスライドさせていくとテーパ面90bからの反力で係合ボール51が係止溝56から外れ、ロック側操作ロッド23はガイド筒25の中に押し込まれていく。ロック側操作ロッド23が所定ストロークだけ押し込まれると、バネ55で付勢されている押圧部材54の拡径先端部分で係合ボール51は係合凹部52のカム面52aに押し出され、倍力駆動(増力駆動)が開始される。押圧部材54の倍力面54aが係合ボール51とカム面52aを介してロック側操作ロッド23を強力にガイド筒25の中に押し込んでいく。
【0036】
これにより、ロック側操作ロッド23の駆動溝部分40がピン部材35を介して出力ロッド21を上昇させる(図1Aでは下降)。すると、その上昇力とロックバネ44との合力により、出力ロッド21のテーパ外周面63が係合ボール62と係止孔72とを介してツールアダプタ70を引き上げる(図1Aでは引き下げ)。これにより、ツールアダプタ70のテーパ位置決め孔73が、コレット65を縮径させて当該コレット65の内周面をプラグ部分3の外周面に密着させるとともに、コレット65を進出バネ67に抗して上昇させ、ツールアダプタ70の上面がハウジング本体2の下面に押圧される。
【0037】
駆動溝部分40のうちの第2駆動溝部分40bの前記傾斜角度は、第1駆動溝部分40aの前記傾斜角度よりも小さいので、ピン部材35が第2駆動溝部分40bの位置に達したら、第1駆動溝部分40aを通過しているときよりも大きな力で出力ロッド21が係合ボール62を押圧する。また、ピン部材35が第2駆動溝部分40bに位置するのと、係合ボール51が倍力面54aに位置するのとが合わせられているため、前記の倍力機構5によって倍力駆動されたロック側操作ロッド23が、ピン部材35と第2駆動溝部分40bとを介して出力ロッド21を係合ボール62に強力に押圧させる。
なお、上記ロック状態において、バネ55の付勢力が倍力機構5の楔作用を介してロック状態を機械的に保持するので、そのロック状態が確実に維持される。
【0038】
図2Aのロック状態から図1Aのリリース状態へ切り換えるときには、ツールアダプタ70をロックした出力装置を、リリース状態からロック状態へ切り換える場合とは逆に、ストッカ100の受け部材84,85の開放端からストッカ100内へ前記ガイド溝88,89に沿って入れていく。出力装置のリリース側操作ロッド24の端部がリリースガイド溝91のテーパ面91a部分に到達すると、その端部はやがてテーパ面(ガイド面)91aに当接し、さらにスライドさせていくとテーパ面91aからの反力で係合ボール51が係合凹部52から外れ、ロック側操作ロッド23と一体的に移動するリリース側操作ロッド24はガイド筒26の中に押し込まれていく。ガイド筒26の中にリリース側操作ロッド24が完全に押し込まれると、図1Aに示すリリース状態となる。その後、出力装置を上方へ移動させることでストッカ100から出力装置をぬく。
【0039】
なお、上記反力によるリリース側操作ロッド24のガイド筒26内への押し込み力は、出力装置のスライド方向に対する前記テーパ面91aの傾斜角度を大きくしたり小さくしたりすることで変化する。テーパ面91aの傾斜角度を小さくすれば、出力装置をスライドさせる方向に付与する力が小さくても、十分な上記押し込み力を得ることができる。
【0040】
(作用・効果)
上記構成の出力装置では、操作ロッド22の軸心方向への移動を倍力機構5により助勢する。そのため、小さな力で操作ロッド22を移動させることができるので、工具・電動機などの大きな力を発生させる駆動手段を用いることなく、出力装置とツールアダプタ70とのロック操作を行うことができる。なお、弾性力の大きい前記バネ55を用いれば、倍力駆動が始まると外力がなくても操作ロッド22は移動する。「操作ロッド22の軸心方向への移動を倍力機構5により助勢する」とは、反力などの外力と倍力機構による倍力とを操作ロッド22に対して同時に作用させる場合だけでなく、反力などの外力を操作ロッド22に付与することで操作ロッド22が少し移動をした後は倍力機構による倍力のみで操作ロッド22を移動させる場合も含む。
【0041】
また、駆動溝部分40のうちの第2駆動溝部分40bの傾斜角度が、第1駆動溝部分40aの傾斜角度よりも小さくされているので、ピン部材35が第2駆動溝部分40bの位置に達したら、第1駆動溝部分40aを通過しているときよりも大きな力で出力ロッド21が係合ボール62を押圧する。
【0042】
さらには、ロック操作の際の、ピン部材35が第2駆動溝部分40bに位置するのと、係合ボール51が倍力面54aに位置するのとが合わせられている。このため、前記の倍力機構5によって倍力駆動された操作ロッド23が、ピン部材35と第2駆動溝部分40bとを介して出力ロッド21を係合ボール62に強力に押圧させる。
なお、上記ロック状態において、バネ55の付勢力が倍力機構5の楔作用を介してロック状態を機械的に保持するので、そのロック状態が確実に維持される。
【0043】
また、操作ロッド22を構成するロック側操作ロッド23は、ハウジング本体2に形成された第2ガイド孔12に加えてガイド筒25の筒壁25aの内周面でも支持されるので、ガイド特性に優れる。同様に、リリース側操作ロッド24は、ハウジング本体2に形成された第2ガイド孔12に加えてガイド筒26の内周面でも支持されるので、ガイド特性に優れる。ロック側操作ロッド23の中途部に設けられた前記鍔部23bは、第2ガイド孔12によるガイド特性をより向上させる。
【0044】
(第2実施形態)
図6は、本発明の第2実施形態の出力装置を適用したロボットハンドチェンジャーを示している。この実施形態においては、上記の第1実施形態の構成部材と同じ部材(または類似する部材)には原則として同一の参照数字を付けて説明する。
【0045】
図6の第2実施形態は、上記の第1実施形態とは次の点で異なる。
第1実施形態の前記の図1Aでは、ガイド筒25の半径方向内側の筒壁25aに前記係合部材支持部としての支持孔53が設けられていたが、第2実施形態の図6では、ガイド筒28の軸心方向における係合ボール51と対向する面に前記係合部材支持部としての凸部28aが形成されており、当該ガイド筒28は、前記第1実施形態の前記筒壁25や支持孔53を有さない。
【0046】
また、第2実施形態では、係合ボール51とロック側操作ロッド23の挿入部32との間に押圧部材54が配置され、押圧部材54を付勢するバネ55は、押圧部材54を出力装置の外方へ付勢するようにハウジング本体2の中に配置されている。
【0047】
(変形例)
上記の各実施形態は、次のように変更可能である。
出力装置の状態をロック状態またはリリース状態に切り換えるのに、すなわち、操作ロッド22を軸心方向へ移動させるのに、ストッカ100を用いる代わりに操作ロッド22の端部を適当な任意の物体の物体面に当てたり(当接させたり)、流体圧シリンダや電動機等のアクチュエータを利用したり、手で押したり引っ張ったりすることで操作ロッド22を軸心方向へ移動させてもよい。
【0048】
前記した操作ロッド22は、ロック側操作ロッド23とリリース側操作ロッド24とに分かれているが、ロック側操作ロッド23とリリース側操作ロッド24とが一体であってもよい。この場合、一体に形成された操作ロッド22の両端部のうちのいずれか一方の端部のみに鍔形状や孔形状などの引っ掛け部を設け、この引っ掛け部に物体を引っ掛けて操作ロッド22を押し引きすることで、ロック操作、リリース操作を行ってもよい。
【0049】
前記した倍力機構5はロック操作部23a側に設けられているが、ロック操作部23a側に設けることに代えてリリース操作部24a側のハウジング本体2内に倍力機構を設けてもよい。また、倍力機構5を構成するバネ55が係合ボール51を付勢する方向を、操作ロッド22の軸心方向にすることに代えて、この軸心方向に直交する方向など交差する方向にしてもよい。
【0050】
出力ロッド21の軸心方向と操作ロッド22の軸心方向とは、直交させることに代えて、その直交状態よりも所定の角度で傾けた状態で交差させてもよい。さらには、出力ロッド21のクランプ機構4とは反対側の端部に前記した倍力機構5のような機構を設けるとともにその端を第1ガイド孔11から突出させることで、出力ロッド21の端部を操作ロッドにしてもよい。すなわち、出力ロッドと操作ロッドとを一体的にしてもよい。この場合、出力ロッドの軸心方向と操作ロッドの軸心方向とは同方向となる。
【0051】
出力ロッド21および第1ガイド孔11を下方(図1Aにおける方向)に延ばし、延ばした端部にも前記したクランプ機構4を設けてもよい。すなわち、2つのクランプ機構を操作ロッド22を間に挟むようにして対向配置してもよい。
【0052】
前記したピン部材35は、収容溝31の両側壁31a,31aに回転可能に支持されることに代えて、上記の両側壁31a,31aに固定されてもよい。さらには、この場合、ピン部材35の長手方向中央部にラジアルベアリングを外挿して、この長手方向中央部が当該ラジアルベアリングを介して前記カム溝38に嵌合(係合)されてもよい。また、前記案内部材として、例示したピン部材35に代えて、ボールやキー等を用いてもよい。ラジアルベアリング36は、ローラ等に変更可能である。
【0053】
出力ロッド11に収容溝31を形成するとともに操作ロッド22(ロック側操作ロッド23)に挿入部32を設けることに代えて、出力ロッド11に挿入部を設けるとともに操作ロッド22(ロック側操作ロッド23)に収容溝を形成してもよい。
【0054】
カム溝38の前記した水平溝部分39は左向きに開口されているが、水平溝部分39の左部(端部)が閉じられていてもよい。
【0055】
出力ロッド11は、下方(図1Aにおける方向)へロック駆動されることに代えて、上方(図1Aにおける方向)へロック駆動されるように構成されてもよい。この場合、カム溝38の駆動溝部分40の傾斜方向を変更すればよい。また、駆動溝部分40の傾斜角度は端から端まで一定であってもよい。
【0056】
前記したクランプ機構4は、係合ボール62を用いた機構であるが、クランプ機構として、特開2014−030892号公報に記載のようなクランプ機構を用いてもよい。
【0057】
ロボットハンドチェンジャーに出力装置を適用することに代えて、様々な種類のクランプに出力装置を適用してもよい。
その他に、当業者が想定できる範囲で種々の変更を行えることは勿論である。
【符号の説明】
【0058】
1:ハウジング、5:倍力機構、21:出力ロッド、22:操作ロッド、23a:ロック操作部、24a:リリース操作部、35:案内部材(ピン部材)、38:カム溝、40:駆動溝部分、51:係合部材(係合ボール)、52:係合凹部、52a:カム面、53:係合部材支持部(支持孔)、54:押圧部材、54a:倍力面、55:バネ、70:ツールアダプタ(クランプ対象物)、86,87:載置台部、90,91:ガイド溝、90b,91a:ガイド面(テーパ面)、100:ストッカ
図1
図2
図3
図4
図5
図6