特許第6353800号(P6353800)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6353800
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】クリップ
(51)【国際特許分類】
   F16B 19/10 20060101AFI20180625BHJP
   F16B 21/04 20060101ALI20180625BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   F16B19/10 B
   F16B21/04 H
   F16J15/10 U
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-51555(P2015-51555)
(22)【出願日】2015年3月16日
(65)【公開番号】特開2016-169842(P2016-169842A)
(43)【公開日】2016年9月23日
【審査請求日】2017年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(74)【代理人】
【識別番号】100088708
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】黒川 拓哉
【審査官】 村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−144765(JP,A)
【文献】 特開2011−089538(JP,A)
【文献】 特開平08−177824(JP,A)
【文献】 特表2009−535584(JP,A)
【文献】 特開2004−278731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 19/00−21/20
F16J 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方部材を他方部材に対し着脱可能に取り付けたり拘束する場合等に用いられて、前記両部材に設けられた貫通孔のうち、一方部材の貫通孔を塞ぐように配置される頭部と、前記貫通孔に挿入されて他方部材の裏側に係合する脚部とを備えたクリップにおいて、
前記クリップは、前記頭部及びその頭部周囲に突出した吸盤部並びに軸方向の挿入孔を有した第一部材と、前記第一部材の頭部との間で水密構造を持って重合される頭部及びその頭部から垂設されて前記挿入孔に挿入される前記脚部を有した第二部材とを少なくとも備え
前記第一部材は、前記頭部及び前記吸盤部が二面割りの上下型を用いて射出成形された樹脂成形体であり、
前記吸盤部は前記頭部の下側周囲から傘ないしは皿状に突出されて、内面側が前記一方部材の表面に当接するシール面となると共に、前記シール面は前記上下型のパーティングラインが入らないよう形成されている、ことを特徴とするクリップ。
【請求項2】
前記水密構造は、前記第一部材の頭部と第二部材の頭部との間に配置されたパッキンを有していることを特徴とする請求項1に記載のクリップ。
【請求項3】
前記水密構造は、前記第一部材及び第二部材の何れか一方に設けられて他方の対向面に当接する環状の弾性壁部を有していることを特徴とする請求項1に記載のクリップ。
【請求項4】
前記脚部は、前記貫通孔として非円形な孔に対し差し込み可能な向きと差し込み不能な向きとを持つ形状であり、前記貫通孔に差し込まれた状態で回動操作されることにより、前記貫通孔の孔縁ないしは孔壁に圧接される複数の側壁を有していることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のクリップ。
【請求項5】
前記側壁は、横溝により上側壁と分離されると共に、厚さ方向に形成されて前記横溝を隔てて前記上側壁端面と対向する傾斜部を有し、前記脚部が前記貫通孔に差し込まれた状態で回動操作されることにより、前記傾斜部の最上部分と前記上側壁端面との間に前記貫通孔の孔縁側を挟持することを特徴とする請求項4に記載のクリップ。
【請求項6】
前記脚部は、前記貫通孔への挿入時に縮径変位し、通過後に弾性復帰して前記貫通孔縁に係合可能となる仮止め用爪部を有していることを特徴とする請求項4又は5に記載のクリップ。
【請求項7】
前記第一部材は裏面に設けられて基端側の幅広部分及び先端側の幅細部分を有した複数の片部を有し、前記幅細部分が前記回動操作後の本固定時に前記貫通孔の対応部に接触可能であることを特徴とする請求項4から6の何れかに記載のクリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に一方部材に他方部材を着脱可能に取り付ける場合等に好適なクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
クリップには、一方部材を他方部材に対し着脱可能に取り付けたり拘束する場合等に用いられて、両部材に設けられた貫通孔のうち、一方部材の貫通孔を塞ぐように配置される頭部と、貫通孔に挿入されて他方部材側に係合する脚部とを備えているものがある。その一例として、図10は特許文献1に開示のクリップを示し、同(a)はクリップ単品の斜視図、(b)はクリップを成形型と共に示す断面図である。このクリップ10は、樹脂成形体であり、アンカー12と、連結部14及び皿部16とを備えている。アンカー12は本発明の脚部に対応し、連結部14及び皿部16は本発明の頭部に対応している。皿部16は、本発明の吸盤部に対応し、部材表面に押付けられるシール面18Aを有している。この構造では、シール面18Aを持つ皿部16、つまり皿状の吸盤部を形成する場合、成形型として、通常の型割では吸盤部のシール面に型割線つまり金型の型合わせ部の跡、スライド型の抜き取り跡に生じる放射方向の段差やキズが発生して止水ないしは水密性を阻害する虞があるが、それを成形型の工夫により解消したものである。
【0003】
すなわち、この構造特徴は、アンカー12及び皿部16は同(b)のごとく該アンカーの軸心に沿って型開きされる上型42及び複数の下型43と、アンカー12の内部を成形する複数のスライド型44とからなる金型により成形される点、皿部のシール面18Aは単一の金型における周方向へ連続した型面によって成形される点にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許4621808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した構造は、吸盤部のシール面が単一の金型における周方向への連続した型面によって成形可能にして型割線のない良好な水密性を維持可能にしたものである。しかし、このような対策では、型構造及びその駆動制御が複雑となり、成形速度を上げようとしても制約され易く、それに伴って製造上のコストアップや型構造が複雑なためメンテナンス等も煩雑となる。
【0006】
本発明の目的は、以上のような課題を解消して、成形金型として簡易な型構造を採用可能にしながら、特に水密性に優れたクリップを得られるようにすることにあす。る。他の目的は以下の内容説明のなかで明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため請求項1の発明は、図1図7を参照して特定すると、一方部材(7)を他方部材(8)に対し着脱可能に取り付けたり拘束する場合等に用いられて、前記両部材に設けられた貫通孔(7a,8b)のうち、一方部材の貫通孔を塞ぐように配置される頭部と、前記貫通孔に挿入されて他方部材の裏側に係合する脚部とを備えたクリップにおいて、前記クリップ(4)は、前記頭部(10)及びその頭部周囲に突出した吸盤部(15)並びに軸方向の挿入孔(13)を有した第一部材(1)と、 前記第一部材の頭部との間で水密構造を持って重合される頭部(20)及びその頭部から垂設されて前記挿入孔に挿入される前記脚部(24)を有した第二部材(2)とを少なくとも備え、前記第一部材(1)は前記頭部(10)及び前記吸盤部(15)が二面割りの上下型(9A,9B)を用いて射出成形された樹脂成形体であり、前記吸盤部(15)は前記頭部の下側周囲から傘ないしは皿状に突出されて、内面側が前記一方部材(7)の表面に当接するシール面(15a)となると共に、前記シール面(15a)は前記上下型のパーティングラインが入らないよう形成されていることを特徴としている。
【0008】
以上の本発明において、『一方部材』と『他方部材』とは、一方部材を他方部材に拘束したり取り付けたり連結したり係止するような関係であればよく、また、一方部材と他方部材は単一でも複数で構成されてもよい。具体例として、一方部材は、例えば、他方部材に取り付けられるシールプレート等の部材である。他方部材は、例えば、車両のボデーやパネル等の部材である。
【0009】
以上の本発明は、請求項2〜6で特定したように具体化されることがより好ましい。
(ア)前記水密構造は、前記第一部材の頭部(10)と第二部材の頭部(20)との間に配置されたパッキン(3)を有している構成である(請求項2)。
(イ)前記水密構造は、図9に例示されるごとく前記第一部材及び第二部材の何れか一方に設けられて他方の対向面に当接する環状の弾性壁部(6)を有している構成である(請求項3)。
(ウ)前記脚部(24)は、前記貫通孔として非円形な孔に対し差し込み可能な向きと差し込み不能な向きとを持つ形状であり、前記貫通孔に差し込まれた状態で回動操作されることにより、前記貫通孔の孔縁ないしは孔壁に圧接される複数の側壁(26)を有している構成である(請求項4)。
【0010】
(エ)前記側壁(26)は、横溝(28)により上側壁と分離されると共に、厚さ方向に形成されて前記横溝を隔てて前記上側壁端面と対向する傾斜部(26b)を有し、前記脚部(24)が前記貫通孔に差し込まれた状態で回動操作されることにより、前記傾斜部(26b)の最上部分と前記上側壁端面との間に前記貫通孔(8a)の孔縁側(孔周囲と同じ)を挟持する構成である(請求項5)。
(オ)前記脚部(24)は、前記貫通孔への挿入時に縮径変位し、通過後に弾性復帰して前記貫通孔縁に係合可能となる仮止め用爪部(29)を有している構成である(請求項6)。
(カ)前記第一部材(1)は裏面に設けられて基端側の幅広部分(17)及び先端側の幅細部分(18)を有した複数の片部(16)を有し、前記幅細部分(18)が前記回動操作後の本固定時に前記貫通孔の対応部に接触可能な構成である(請求項7)。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明では、吸盤部付きの頭部と、部材取付用の脚部とを第一,第二というように少なくとも2部材に分けて形成することで樹脂成形用の金型構成として成形困難となる成形部を含めて金型が製造容易となる。この点は、特に、上記した吸盤部つまり吸盤部のシール面について金型構成としてパーティングラインを入れることなく二面割りで対処し、それにより良好な水密性を保つことを可能にする。
【0012】
請求項2の発明では、水密構造として第一部材の頭部と第二部材の頭部との間に配置されたパッキンにより、脚部側からの水密性を確保し、加えてパッキンの潰れにより吸盤部の圧接度合い、脚部の係合度合いを適切に設定しつつ、板厚寸法などのばらつきを吸収容易となる。
【0013】
請求項3の発明では、水密構造として両部材の一方側に設けられて他方側の対向面に当接する弾性壁部によって、脚部側からの水密性を確保し、加えて弾性壁部の弾性変位により吸盤部の圧接度合い、脚部の係合度合いを適切に設定しつつ、板厚寸法などのばらつきを吸収容易となる。
【0014】
請求項4の発明では、クリップが形態に例示されるごとく他方部材の貫通孔として非円形な孔に対し差し込み可能な向きと差し込み不能な向きとを持つ形状であり、貫通孔に挿入された状態で回動操作することで抜け止めされるターンファスナタイプである。このタイプは、特にクリップ締結後の高抜去力や抜去時の脚部の変位を抑えることができる。よって、このクリップは、クリップ締結状態で、高負荷が掛かった場合、クリップの脚部の変位により自動車におけるエアバッグを作動させるための圧力センサ等の検出精度が影響され易いときに好適なものとなる。
【0015】
請求項5の発明では、クリップがターンファスナタイプにおいて、第二部材が脚部を各部材の貫通孔に差し込んだ状態で回動操作されると、各側壁の傾斜部が貫通孔内面に圧接しながら貫通孔を通過して、他方部材側貫通孔の孔縁側を上側壁端面と傾斜部の最上部分との間に挟持する。この構成では、例えば、傾斜部がねじ作用として機能し回動操作時の回動抵抗を減じたり、貫通孔の孔縁を上側壁端面と傾斜部の最上部分の間に挟持ないしは係合完了したことをクリック感で分かるようにする、等の利点がある。
【0016】
請求項6の発明では、クリップがターンファスナタイプにおいて、回動操作して本固定する前でも、爪部により他方部材の貫通孔に仮止めされて不用意に抜けなくなるため使い勝手に優れている。
【0017】
請求項7の発明では、クリップがターンファスナタイプにおいて、回動操作して本固定する時に他方部材の貫通孔つまり非円形な孔に対し片部の先端側幅細部分が隙間を埋めるよう接し、それによりがたつき等をなくして安定した固定状態が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】形態のクリップを示し、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は下面図である。
図2】上記クリップを用いて一方部材を他方部材に取り付ける操作において、クリップが各貫通孔に挿入されて仮止めされた状態で示し、(a)は上面図、(b)は(a)のA−A線断面図、(c)は下面図である。
図3】上記クリップを用いて一方部材を他方部材に取り付けた本固定状態で示し、(a)は上面図、(b)は(a)のB−B線半断面図、(c)は下面図である。
図4】上記一方部材の厚さMが前記形態のときより厚い場合を図3(b)と同じ本固定状態で示す半断面図である。
図5】上記クリップを構成しているグロメット単品を示し、(a)は上面図、(b)は(a)のC−C線半断面図、(c)は下面図である。
図6】上記グロメットの樹脂成形方法を説明するための模式図であり、(a)は成型金型の吸盤部形成部の空洞を示す図、(b)は前記空洞に樹脂を充填した状態を示す図、(c)は金型から取り出したグロメットを下側より見た斜視図である。
図7】上記ピン単品で示し、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は下面図である。
図8】(a)と(b)は図7(b)のD−D線断面図とE−E線断面図、(c)は図7(c)のF−F線拡大断面図である。
図9図2図3のパッキンを弾性壁部に変更した一例を示す図4(b)に対応した半断面図である。
図10】特許文献1の構造を示し、(a)は文献1の図1、(b)は文献1の図6である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の形態及び変形例を図面を参照して説明する。この説明では、クリップの構造を詳述した後、組立と主な作動を明らかにし、最後に図9の変形例について言及する。
【0020】
(構造)本実施形態のクリップ4は、シールプレート等の部材である一方部材7をボデーやパネル等の他方部材8に着脱可能に取り付ける場合に用いられるもので、一方部材7及び他方部材8に設けられた貫通孔7a,8aのうち、一方部材7に設けられた貫通孔7aを塞ぐように配置される頭部10と、貫通孔7a,8aに挿入されて他方部材8の裏側に係合する脚部24とを備えている。すなわち、このクリップ4は、頭部10及びその頭部10の周囲に突出した吸盤部15並びに脚部用挿入孔13を有した第一部材であるグロメット1と、グロメットの頭部10との間で水密構造を持って重合される頭部20、及びその頭部20から垂設された前記脚部24を有した第二部材であるピン2と、頭部10と頭部20の間に配置されたパッキン3とを備えている。
【0021】
なお、他方部材8には、図2及び図3の各(c)に示されるごとく矩形の貫通孔8aが設けられている。この貫通孔8aは、対角線が対向辺同士の間の距離に対し長くなっている。この貫通孔8aは、少なくとも非円形な孔であればよく、脚部24がその非円形の孔に差し込み可能な向きと差し込み不能な向きを持つ形状に設定される。これに対し、一方部材7には、貫通孔8aに対し同軸線上に配置される貫通孔7aが設けられている。この貫通孔7aは、貫通孔8aより少し大きな孔形状に形成されることが好ましい。
【0022】
ここで、グロメット1は、図5及び図6に示されるごとく射出形成された樹脂成形体である。頭部10は、概略ドーナツ状をなし、上側に形成された円形の窪み部11と、窪み部11の内周にあって周囲を等分する箇所に設けられた複数(この例では4つ)の係合用凸部12と、窪み部11の中心にあって軸方向に貫通された挿入孔13とを有している。挿入孔13は、全体が概略十字形であり、矩形の本孔部分の4箇所の角部を切欠した角孔部分13aを有している。
【0023】
頭部10の下面には、挿入孔13の周囲を等分する箇所から下向きに突設された複数(この例では4つ)の片部16を有している。すなわち、各片部16は、挿入孔13の孔縁にあって隣接する角孔部分13a同士の間に設けられており、基端側で幅の広い幅広部分17及び先端側で幅の狭い幅細部分18からなる。幅広部分17の内面には、対のリブ17aが幅細部分18の手前に設けられている。
【0024】
吸盤部15は、頭部10の下側周囲から傘ないしは皿状に突出されており、内面側が一方部材7の表面に当接するシール面15aとなっている。このシール面15aは、後述するごとくパーティングラインが入らないよう形成されて滑らかで水密性に優れている。符号15bは吸盤部15の基部側の内面部分である。
【0025】
以上のグロメット1は、図6に例示したごとく金型構造として、頭部10及び吸盤部15の部分が二面割りの上型9A及び下型9Bにより成形される。換言すると、この金型構造では、少なくとも吸盤部15のシール面15aが単一の下型9Bにおける周方向へ連続した型面により成形される。上下型9Aと9Bは、パーティングラインPLが吸盤部15のシール面15aを避けた箇所に設定されている。
【0026】
同(a)において、符号90は頭部10の内側平坦部を形成する空洞部、符号91は頭部10の外側平坦部及び凸部12を形成する空洞部、92は吸盤部15を形成する空洞部である。この空洞部92は、上型の部分9cと下型の部分9dとの間に区画形成されている。空洞部93は片部16を形成する空洞部である。同(b)は、それら空洞部90〜93に不図示の射出成形機より溶融された樹脂を充填した状態を示している。
【0027】
同(c)は射出成形されたグロメットを離型した模式図である。以上の金型9で成形される吸盤部15は、シール面15aが単一の下型部分9dにて形成されるため滑らかであり良好な水密性能が得られる。符号14は樹脂注入箇所であるゲート位置を示している。このゲート位置14も、少なくともシール面15aを避けた箇所に設定される。なお、図1図5ではそのゲート位置14が省略されている。
【0028】
一方、ピン2は、金型構成として、複数の上下型及びスライド型により射出形成された樹脂成形体である。この形態では、グロメット1にシール面5aを設定したためピン2の方はシール面がなく金型として自由度が拡大されている。ピン2のうち、頭部20は、上記頭部10の窪み部11に嵌る大きさの円盤形状であり、周囲に設けられて凸部12と係合可能な複数の凹部21と、上面に設けられた摘み部22とを有している。
【0029】
凹部21は凸部12と同じ数だけ設けられている。摘み部22は、頭部20の上面直径方向に延び頭部両側に突出しており、手で掴んでピン2つまり、グロメット1に連結されたピン2を回動操作可能にする。また、摘み部22には、左右中間付近に空洞23が水平方向に貫通形成されている。この空洞23は、欠肉により軽量化を図ると共に、例えば、ドライバー等の工具を差し込んでピン2をグロメット1から強制的に引き離す場合に利用される。
【0030】
脚部24は、頭部20の下面中心付近に突設されて、水平断面がグロメットの挿入孔13に対応した略十字形からなり、概略4つの側壁26にて構成されている。各側壁26は、上側に設けられた横溝28により上側壁25と分離されている。各側壁26は上側壁25よりも少し厚く形成されている。また、各側壁26は、下端側が下に行くほど軸線上に近づくテーパー26aに形成され、上端側が横溝28を隔てて上側壁25の下端面と対向する傾斜部26bに形成されている。
【0031】
テーパー部26aは、脚部24をグロメットの挿入孔13に挿入して連結したり、貫通孔7a,8aに挿入して一方部材7を他方部材8に取り付ける場合に挿入容易にする。傾斜部26bは、一方側(厚さ方向の一方側)が横溝28より所定距離だけ下方に位置した最下部分と、他方側(厚さ方向の他方側)が横溝28に連通された最上部分との間を所定の勾配に形成したものである。
【0032】
上側壁25同士の間、及び側壁26同士の間は、断面が略直角の角空間27となっている。角空間27は4箇所に形成されている。各角空間27には、隣接する横溝28同士を繋ぐようにして設けられた小さな鍔部28aと、対向した2つの鍔部28aの周面より下方へ突出された仮止め用爪部29とが設けられている。
【0033】
各鍔部28aは、概略形状が脚部24の軸線上を中心として各横溝28の底面を結ぶ円弧状となっている。爪部29は、鍔部28aに連結した基部29aと、基部29aの先端に設けられて上端面を掛け止めとして形成された爪29bとからなる。以上の爪部29は、脚部24が貫通孔8aへの挿入時に縮径変位し、通過後に弾性復帰して貫通孔8aの孔縁に係合することで、クリップ4を本固定する前つまり回動操作するまで仮止めするためのものである。
【0034】
(組立)以上のピン2は、グロメット1に対しパッキン3と共に組み付けられて一体ものとなる。この組立操作では、まず、グロメット側頭部の窪み部11にパッキン3が配置される。パッキン3は、ラバーや軟質樹脂などで形成されたもので、図2(b)から推察されるごとく窪み部11に配置される円板形状で、中心部に脚部24を余裕を持って挿通可能な孔部を有している。
【0035】
次に、ピン2がグロメット1に連結される。この操作では、脚部24を構成している十字形の各側壁25(25,26)をグロメット側挿入孔13の各角孔部分13aに合わせた状態で、ピン2がグロメット1側に押圧される。すると、ピン2は、脚部24が挿入孔13に挿通される途中で爪部29が挿入孔13のうち、角孔部分13aと角孔部分13aを連結している孔部分に当たる。更にピン2が強く押されると、爪部29を構成している爪29bが基部29aを支点として縮径変位し、挿入孔13を通過する。爪部29は、爪29bが挿入孔13を完全に通過すると、弾性復帰して元の状態となる。
【0036】
これと同時に、ピン2は、頭部20が頭部10の窪み部11に凸部12と凹部21の係合を伴って係合することにより、グロメット1に対し単独での回動が規制される。また、ピン2は、各鍔部28aが対応する片部16の内面に当たり、かつ、片部16の弾性拡径を伴って幅広部分のリブ17aを通過して幅細部分18と係合する。ピン2は、グロメット1に対し鍔部28aと幅細部分18の係合により引き抜きが規制される。この結果、ピン2とグロメット1は連結されて一体のクリップ4となる。
【0037】
(作動)以上のクリップ4は、例えば、図2から図4に示されるごとく一方部材7を他方部材8に着脱可能に取り付けるような場合に用いられる。以下、その場合の主な作動特徴について述べる。なお、この例では、貫通孔8aは矩形の孔であり、貫通孔7aの孔形は特に制約されない。
【0038】
(ア)取付操作では、一方部材7が他方部材8に対し互いの貫通孔7a,8aを重なるよう位置決めされる。一方部材7を位置決めした状態から、クリップ4は、ピン側脚部24を貫通孔7a,8aに差し込んだ状態で押圧操作される。その際、脚部の各側壁26が貫通孔8aの矩形角部に位置するよう位置だしされる。押圧操作されると、一対の爪部29は、上記したと同様、貫通孔8aの矩形孔のうち、対向した辺部分に当たるが、クリップ4(ピン2)が強く押されると、爪部29を構成している爪29bが基部29aを支点として縮径変位し、貫通孔8aを通過する。
【0039】
爪部29は、爪29bが貫通孔8aを完全に通過すると、弾性復帰して元の状態となり、クリップ4を一方部材7に仮止めして不用意な外れを防ぐ。図2はその仮止め状態を示している。この仮止め状態では、各側壁26が同(c)のごとく貫通孔8aの矩形孔のうち、対応する角部に揺動可能に配置され、各片部16の幅細部分18が貫通孔7aから一方部材7の上面に突出されている。
【0040】
(イ)クリップ3は、以上の仮止め状態から、摘み部22を利用して図2(a)の実線位置から一点鎖線の位置まで回動(この例ではθ=45度だけ回動)操作されると、一方部材7が他方部材8に取り付けられて図3の本固定状態となる。この構造では、回動操作により、各側壁26が同(c)のごとく貫通孔8aの矩形孔のうち、角部から対向辺まで回動される。同時に、各片部16は、幅細部分18が貫通孔8aの孔内に入りながら矩形角部まで移動される。同時に、各傾斜部26bは、貫通孔8aの内面に圧接しながら貫通孔を通過し、貫通孔8aの孔縁ないしは孔周囲を上側壁25の下端面と傾斜部26bの最上部分との間に挟持する。勿論、傾斜部26bの最上部分は他方部材8の裏面側に係合している。
【0041】
以上の本固定状態では、各片部16の先端側幅細部分18が貫通孔8aの矩形角部の隙間を埋めるためがたつき等をなくして安定した固定状態が得られる。また、傾斜部26bがねじ作用として機能し回動操作時の回動抵抗を減じたり、貫通孔8の孔縁を上側壁25の下端面と傾斜部26bの最上部分の間に挟持ないしは係合完了したことをクリック感で分かるようにする。本固定状態では、吸盤部15つまり吸盤部のシール面15aが金型構成としてパーティングラインを入れることなく二面割りで対処したため良好な水密性が保たれる。加えて、水密構造としては、グロメット1の頭部10とピン2の頭部20との間に配置されたパッキン3により、脚部24側からの水密性が確実に確保される。また、パッキン3の潰れにより吸盤部の圧接度合い、脚部の係合度合いを適切に設定しつつ、板厚寸法などのばらつきを吸収容易となる。なお、クリップ4は、図2の位置まで回動された後、爪部29の弾性変位を伴って強制的に引き抜かれる。
【0042】
(ウ)図4はパッキン3の板厚寸法のばらつき吸収作用を示している。すなわち、この例は、一方部材7Aの厚さMが上記の一方部材7に比べ少し厚くなっている。以上のクリップ4は、このような場合にもパッキン3の潰れ度合いによりシール面15aのシール性を損なわず、かつ、脚部24の挟持ないしは係合強度を損なうことなく板厚寸法のばらつきを吸収できる点でも優れている。
【0043】
(変形例1)以上のクリップ4は図9に示したように変形可能である。すなわち、この変形例は、同図(a)に示されるごとく上記パッキン3を用いた水密構造に代えて、グロメット側頭部10の窪み部11の内底面に突設された弾性壁部6と、ピン側頭部20の下面に設けられて弾性壁部6を受け止める溝部5とからなる水密構造としたものである。弾性壁部6は、挿入孔13を中心とした環状に突出されている。溝部5は、頭部20を中心とした環状の溝であり、弾性壁部6の先端を係止する。
【0044】
以上の変形例1においても、弾性壁部6の遮水作用により、貫通孔8a及び脚部24側からの水密性を確保でき、同時に、弾性壁部6の弾性変位により吸盤部15の圧接度合い、脚部24の係合度合いを適切に設定しつつ、例えば部材7の板厚寸法などのばらつきを吸収容易となる。なお、弾性壁部6は、窪み部11ではなく、ピン側頭部20の方に設けるようにしてもよい。その場合は、以上の溝部を窪み部11に設けることが好ましい。但し、水密構造としては、溝部を省略して、弾性壁部を相手側の対応面に当接するようにしても差し支えない。
【0045】
(変形例2)以上のクリップ4は、実施形態及び変形例1においては第一部材であるピン2の脚部24が貫通孔8aとして非円形な孔に対し差し込み可能な向きと差し込み不能な向きとを持つ形状で、貫通孔8aに挿入された状態で回動操作することで抜け止めされるターンファスナタイプについて説明したが、そのタイプに限られず図10に示されるような回動しないファスナタイプにも適用可能である。すなわち、請求項1から3の脚部24としては、頭部20から垂設されている構成、第二部材であるグロメット1の挿入孔13に挿入される構成、他方部材の貫通孔8aに挿入されて他方部材の裏側に係合する構成を満たせばよいものである。従って、ピンの脚部24は、図10のアンカー12のような構成を採用し、貫通孔8aに対し縮径変形しつつ通過し、通過と同時に元の形状に拡径するような構成に変更することができる。
【0046】
以上のように、本発明のクリップは、各請求項で特定される構成を備えておればよく、細部はこの形態及び各変形例を参考にして更に変更したり展開可能なものである。その一例として、脚部の仮止め用爪部を省略してピンを簡易化したり、係合片部を構成している幅広部分と幅細部分を同じ幅の片形状にして簡略化することである。
【符号の説明】
【0047】
1・・・・グロメット(第一部材)
2・・・・ピン(第二部材)
3・・・・パッキン(水密構造)
4・・・・クリップ
5・・・・対向面の受け面(水密構造)
6・・・・弾性壁部(水密構造)
7・・・・一方部材(7aは貫通孔)
8・・・・他方部材(8aは貫通孔)
9・・・・グロメット用金型
10・・・頭部(11は窪み部、12は凸部)
13・・・挿入孔(13aは角孔部分)
15・・・吸盤部(15aはシール面)
16・・・片部(17は幅広部分、18は幅細部分)
20・・・頭部(21は凹部)
22・・・摘み部
24・・・脚部
25・・・上側壁
26・・・側壁(26bは傾斜部)
27・・・角空間
28・・・横溝(28aは鍔部)
29・・・仮止め用爪部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10