特許第6353803号(P6353803)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 積水化成品工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6353803-ポリスチレン系樹脂発泡成形体 図000003
  • 特許6353803-ポリスチレン系樹脂発泡成形体 図000004
  • 特許6353803-ポリスチレン系樹脂発泡成形体 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6353803
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】ポリスチレン系樹脂発泡成形体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/228 20060101AFI20180625BHJP
   C08F 2/16 20060101ALI20180625BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   C08J9/228CET
   C08F2/16
   B29C44/00 G
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-62575(P2015-62575)
(22)【出願日】2015年3月25日
(65)【公開番号】特開2015-199922(P2015-199922A)
(43)【公開日】2015年11月12日
【審査請求日】2017年3月9日
(31)【優先権主張番号】特願2014-72165(P2014-72165)
(32)【優先日】2014年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(72)【発明者】
【氏名】新籾 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】大野 翔太
【審査官】 横島 隆裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−060500(JP,A)
【文献】 特開2002−317548(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/007731(WO,A1)
【文献】 特開平11−291374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00−9/42
B29C 44/00−44/60
C08F 2/00−2/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに融着した複数の発泡粒子からなるポリスチレン系樹脂発泡成形体であり、前記発泡粒子間の融着面付近と発泡粒子の中心部とで異なるアスペクト比の気泡から構成され、
前記融着面付近の気泡が融着面から粒子の半径方向の20%までの領域に位置する気泡であり、かつ2.0以上、10.0以下のアスペクト比を有し、
前記粒子中心部の気泡が、前記融着面から粒子方向の半径の20%までの領域を除く領域に位置する気泡であり、かつ1.0以上、2.0未満のアスペクト比を有し、
前記ポリスチレン系樹脂発泡成形体が、構成成分として、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、ビス(ビニルフェニル)メタン、ビス(ビニルフェニル)エタン、ビス(ビニルフェニル)プロパン、ビス(ビニルフェニル)ブタン、ジビニルナフタレン、ジビニルアントラセン及びジビニルビフェニルから選択される他の単量体由来成分を含むことを特徴とするポリスチレン系樹脂発泡成形体。
【請求項2】
前記融着面付近の気泡が50μm以上、100μm未満の平均気泡径を有し、前記粒子中心部の気泡が100μm以上、200μm以下の平均気泡径を有する請求項1に記載のポリスチレン系樹脂発泡成形体。
【請求項3】
前記発泡粒子がスチレン−アクリル酸エステル共重合体を含み、かつ発泡成形体のGPC測定で得られるZ+1平均分子量が200万以上、1000万以下である請求項1又は2に記載のポリスチレン系樹脂発泡成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリスチレン系樹脂発泡成形体に関する。更に詳しくは、高発泡化しても十分な機械的強度を有するポリスチレン系樹脂発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発泡成形体は軽量かつ、断熱性や機械的強度に優れることから魚箱や食品容器等の輸送用梱包材、緩衝材等に使用されている。その中でも発泡性粒子を原料として製造される型内発泡成形体は所望の形状を得やすい等の利点から多く使用されている。
発泡成形体を製造するための原料である発泡性粒子として、発泡性スチレン樹脂粒子が汎用されており、例えば次のようにして発泡成形体が得られている。即ち、発泡性スチレン樹脂粒子のような発泡性粒子を蒸気で加熱して予備発泡させて予備発泡粒子を得る。得られた予備発泡粒子を金型のキャビティ内に充填する。次いで、充填された予備発泡粒子を蒸気で二次発泡させつつ、予備発泡粒子同士の熱融着により一体化させることで発泡成形体を得ることができる(例えば、特開2011−26508号公報:特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−26508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記公報に記載された技術でも十分な機械的強度を有する発泡成形体を得ることができる。しかしより機械的強度を有する発泡成形体の提供が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ポリスチレン系樹脂発泡成形体は、予備発泡粒子を型内成形して製造するため、融着した発泡粒子間の強度が小さいことに起因して、機械的強度が低下することがあった。この低下は高発泡化したポリスチレン系樹脂発泡成形体ではより大きくなっていた。本発明の発明者等は、融着した発泡粒子を構成する気泡の形状を融着面付近と中心部とで変えることでポリスチレン系樹脂発泡成形体の機械的強度を向上できることを見出し、本発明に至った。
【0006】
かくして本発明によれば、互いに融着した複数の発泡粒子からなるポリスチレン系樹脂発泡成形体であり、前記発泡粒子間の融着面付近と発泡粒子の中心部とで異なるアスペクト比の気泡から構成され、
前記融着面付近の気泡が融着面から粒子の半径方向の20%までの領域に位置する気泡であり、かつ2.0以上、10.0以下のアスペクト比を有し、
前記粒子中心部の気泡が、前記融着面から粒子方向の半径の20%までの領域を除く領域に位置する気泡であり、かつ1.0以上、2.0未満のアスペクト比を有し、
前記ポリスチレン系樹脂発泡成形体が、構成成分として、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、ビス(ビニルフェニル)メタン、ビス(ビニルフェニル)エタン、ビス(ビニルフェニル)プロパン、ビス(ビニルフェニル)ブタン、ジビニルナフタレン、ジビニルアントラセン及びジビニルビフェニルから選択される他の単量体由来成分を含むことを特徴とするポリスチレン系樹脂発泡成形体が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、優れた機械的強度(特に、優れた曲げ弾性率)を有するポリスチレン系樹脂発泡成形体を提供できる。本発明によれば、箱形状での機械的強度が大幅に向上できることから、内容物の充填量を多くできることや、高発泡化による発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の使用量の削減、及び箱重量の軽量化による輸送コストの削減に寄与できる。
【0008】
以下のいずれかの場合、より優れた機械的強度を有するポリスチレン系樹脂発泡成形体を提供できる。
(1)融着面付近の気泡が、50μm以上、100μm未満の平均気泡径を有し、粒子中心部の気泡が、100μm以上、200μm以下の平均気泡径を有する。
(2)発泡粒子がスチレン−アクリル酸エステル共重合体を含み、かつZ+1平均分子量が200万以上、1000万以下である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明を説明するためのポリスチレン系樹脂発泡成形体を構成する融着した発泡粒子の模式図である。
図2】実施例1のポリスチレン系樹脂発泡成形体の断面の写真である。
図3】比較例1のポリスチレン系樹脂発泡成形体の断面の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のポリスチレン系樹脂発泡成形体は、互いに融着した複数の発泡粒子からなる。更に、発泡粒子は、図1に示すように、発泡粒子が互いに融着することにより形成される面(融着面)付近と中心部とで異なるアスペクト比の気泡から構成されている。図1中、1は融着した発泡粒子、2は融着面付近の気泡、3は中心部の気泡、4は融着面を意味する。ここで、融着面付近の気泡は、融着面から粒子の半径方向の20%までの領域(以下、融着面領域と称する)に位置する気泡である。一方、粒子中心部の気泡は、融着面から粒子の半径方向の20%までの領域を除く領域(以下、中心領域と称する)に位置する気泡である。両領域の気泡のアスペクト比は、以下のように異なっている。
【0011】
アスペクト比
融着面領域の気泡が2.0以上、10.0以下のアスペクト比を有し、中心領域の気泡が1.0以上、2.0未満のアスペクト比を有している。アスペクト比は、各気泡の最大径と最小径の比(最大値/最小値)を意味する。
融着面領域の気泡のアスペクト比が2.0未満の場合、成形体強度が低下することがある。10.0より大きい場合、発泡粒子間の接着強度が低下し、成形体強度が低くなることがある。好ましいアスペクト比は2.0〜8.0であり、より好ましいアスペクト比は2.5〜7.0である。
【0012】
中心領域の気泡のアスペクト比が2.0以上の場合、成形性が低下することがある。好ましいアスペクト比は1.0〜1.8であり、より好ましいアスペクト比は1.0〜1.5である。
融着面領域の気泡のアスペクト比は、中心領域の気泡のアスペクト比の1.1倍以上であることが好ましい。1.1倍以上であることで、機械的強度の向上と高倍化を両立することができる。より好ましくは1.1〜10.0倍であり、更に好ましくは1.1〜8.0倍である。
【0013】
平均気泡径
ポリスチレン系樹脂発泡成形体は、融着面領域と中心領域が次の平均気泡径の気泡から構成されていることが好ましい。即ち、融着面領域の気泡が50μm以上、100μm未満の平均気泡径を有し、中心領域の気泡が100μm以上、200μm以下の平均気泡径を有することが好ましい。なお、この場合の平均気泡径としてはASTM D2842−69の試験方法に準拠して測定した平均弦長から算出される値を言う。
融着面領域の平均気泡径が50μm未満の場合、成形性が低下することがある。100μm以上の場合、強度低下が起こることがある。好ましい平均気泡径は50〜90μmであり、より好ましい平均気泡径は50〜80μmである。
【0014】
中心領域の平均気泡径が100μm未満の場合、成形性が低下することがある。200μmより大きい場合、成形体強度が低下することがある。好ましい平均気泡径は100〜150μmであり、より好ましい平均気泡径は100〜130μmである。
【0015】
構成樹脂
ポリスチレン系樹脂発泡成形体は、スチレン系単量体に由来する成分から構成される。スチレン系単量体由来の成分としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、t−ブチルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン、クロロスチレン等のスチレン系単量体の単独重合体、もしくは、これらの共重合体が挙げられる。
【0016】
ポリスチレン系樹脂は、スチレン系単量体由来成分と他の単量体由来成分との共重合体であってもよい。他の単量体由来成分としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジエチルマレエート等のアルキルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレート等のアルキルフマレート、無水マレイン酸、N−フェニルマレイミド、(メタ)アクリル酸、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、ビス(ビニルフェニル)メタン、ビス(ビニルフェニル)エタン、ビス(ビニルフェニル)プロパン、ビス(ビニルフェニル)ブタン、ジビニルナフタレン、ジビニルアントラセン、ジビニルビフェニル、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物ジ(メタ)アクリレート等の多官能単量体が挙げられる。なお、単量体の使用量と、その単量体の由来する樹脂の含有量とは、ほぼ一致している。
【0017】
本発明ではスチレン−アクリル酸エステル共重合体を含むことができる。この共重合体を使用することでポリスチレン系樹脂発泡成形体の成形性をより向上することができる。この共重合体はスチレン系単量体由来成分を90〜99.5質量%と、アクリル酸エステル由来成分を0.5〜10質量%含むことが好ましい。スチレン系単量体由来成分の含有量が90質量%未満の場合、高発泡の発泡成形性を得難くなることがある。99.5質量%より多い場合、強度が低下することがある。アクリル酸エステル由来成分の含有量は、0.5〜8.0質量%であることがより好ましく、0.5〜6.0質量%であることが更に好ましい。
【0018】
更に、基材樹脂には他の樹脂が混合されていてもよい。他の樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン非共役ジエン三次元共重合体等のジエン系のゴム状重合体を添加したゴム変性耐衝撃性ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル、ABS樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリメタクリル酸メチル等、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。これら他の樹脂が占める割合は、基材樹脂全量に対して、10質量%以下であることが好ましい。
【0019】
Z+1平均分子量(Mz+1)
Mz+1は、Mn、Mw及びMzより高分子量の成分がリッチに存在していることを強調し得る平均分子量である。
本発明における発泡体において、200万以上、1000万以下のMz+1を有していることが好ましい。Mz+1が200万未満の場合、成形体強度が不十分となることがある。1000万より大きい場合、成形性が低下することがある。好ましいMz+1は200万〜800万であり、より好ましいMz+1は200万〜500万である。
【0020】
その他の添加剤
ポリスチレン系樹脂発泡成形体には、必要に応じて、樹脂以外に他の添加剤が含まれていてもよい。他の添加剤としては、可塑剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、展着剤、気泡調整剤、充填剤、着色剤、耐候剤、老化防止剤、滑剤、防曇剤、香料等が挙げられる。
可塑剤としては、シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル等のアジピン酸エステル、グリセリンジアセトモノラウレート等のグリセリン脂肪酸エステル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソブチル等のフタル酸エステル、流動パラフィン、ホワイトオイル等の高沸点化合物が挙げられる。
【0021】
難燃剤としては、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、トリスジブロモプロピルホスフェート、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)等が挙げられる。
難燃助剤としては、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルヘキサン、ジクミルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイドの有機過酸化物が挙げられる。
【0022】
帯電防止剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ステアリン酸モノグリセリド、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
展着剤としては、ポリブテン、ポリエチレングリコール、グリセリン、シリコンオイル等が挙げられる。
気泡調整剤としては、タルク、マイカ、シリカ、珪藻土、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カリウム、硫酸バリウム、ガラスビーズ、ポリテトラフルオロエチレン、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の金属石鹸、エチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド等のビスアミド化合物、ステアリン酸アミド、12−ヒドロキシステアリン酸アミド等のアミド化合物、ステアリン酸トリグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド等の高級脂肪酸グリセライド等が挙げられる。
滑剤としてはステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の金属石鹸、エチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド等のビスアミド化合物、ステアリン酸アミド、12−ヒドロキシステアリン酸アミド等のアミド化合物、ステアリン酸トリグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド等の高級脂肪酸グリセライド、ポリエチレンワックス、流動パラフィン、ホワイトオイル等が挙げられる。
【0023】
ポリスチレン系樹脂発泡成形体の製造方法
ポリスチレン系樹脂発泡成形体の製造方法は特に限定されない。例えば、スチレン系樹脂からなる種粒子に、スチレン系単量体と、任意に他の単量体とを含む単量体混合物を吸収させ重合させることで、樹脂粒子を得、樹脂粒子に発泡剤を含浸させて発泡性粒子を得、発泡性粒子を発泡させて予備発泡粒子を得、予備発泡粒子を型内成形することで得ることができる。
【0024】
種粒子
種粒子は、公知の方法で製造されたものを用いることができ、例えば、(i)スチレン系樹脂を押出機で溶融混練し、ストランド状に押し出し、ストランドをカットすることにより種粒子を得る押出方法、(ii)水性媒体、スチレン系単量体及び重合開始剤をオートクレーブ内に供給し、オートクレーブ内において加熱、攪拌しながらスチレン系単量体を懸濁重合させて種粒子を製造する懸濁重合法、(iii)水性媒体及びスチレン系樹脂粒子をオートクレーブ内に供給し、スチレン系樹脂粒子を水性媒体中に分散させた後、オートクレーブ内を加熱、攪拌しながらスチレン系単量体を連続的にあるいは断続的に供給して、スチレン系樹脂粒子にスチレン系単量体を吸収させつつ重合開始剤の存在下にて重合させて種粒子を製造するシード重合法等が挙げられる。
また、種粒子は一部、又は全部に樹脂回収品を用いることができる。回収品を使用する場合は、押出方法による種粒子の製造が向いている。
【0025】
種粒子の平均粒子径は、樹脂粒子の平均粒子径に応じて適宜調整できる。例えば平均粒子径が1mmの樹脂粒子を得ようとする場合には、平均粒子径が0.7mm〜0.9mm程度の種粒子を用いることが好ましい。更に、種粒子の重量平均分子量は特に限定されないが10万〜70万が好ましく、更に好ましくは15万〜50万である。
【0026】
含浸工程
種粒子を水性媒体中に分散させてなる分散液中に、単量体混合物を供給することで、各単量体を種粒子に吸収させる。水性媒体としては、水、水と水溶性溶媒(例えば、アルコール)との混合媒体が挙げられる。
【0027】
使用する各単量体には、重合開始剤を含ませてもよい。重合開始剤としては、従来から単量体の重合に用いられているものであれば、特に限定されない。例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ラウリルパーオキサイド、t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−t−ブチルパーオキシブタン、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。これら開始剤の内、残存単量体を低減させるために、10時間の半減期を得るための分解温度が80〜120℃にある異なった二種以上の重合開始剤を併用することが好ましい。なお、重合開始剤は単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0028】
水性媒体中には、単量体の小滴及び種粒子の分散を安定させるために懸濁安定剤が含まれていてもよい。懸濁安定剤としては、従来から単量体の懸濁重合に用いられているものであれば、特に限定されない。例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、ハイドロキシアパタイト等の難溶性無機化合物等が挙げられる。そして、前記懸濁安定剤として難溶性無機化合物を用いる場合には、アニオン界面活性剤を併用するのが好ましく、このようなアニオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸石鹸、N−アシルアミノ酸又はその塩、アルキルエーテルカルボン酸塩等のカルボン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルスルホ酢酸塩、α−オレフィンスルフォン酸塩等のスルフォン酸塩;高級アルコール硫酸エステル塩、第二級高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩等の硫酸エステル塩;アルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩等のリン酸エステル塩等が挙げられる。
【0029】
重合工程
重合工程は、使用する単量体種、重合開始剤種、重合雰囲気等により異なるが、通常、70〜130℃の加熱を、3〜10時間維持することにより行われる。例えば、100万以上、400万以下のZ+1平均分子量を示す発泡粒子の融着体からなるポリスチレン系樹脂発泡成形体を得る場合、重合工程は、80〜130℃の加熱により行われてもよい。また、400万より大きく、1000万以下のZ+1平均分子量を示す発泡粒子の融着体からなるポリスチレン系樹脂発泡成形体を得る場合、重合工程は、80〜90℃の加熱により行われてもよい。重合工程は、単量体を含浸させつつ行ってもよい。
重合工程は、使用する単量体全量を1段階で重合させてもよく、2段階以上に分けて重合させてもよい(種粒子の製造時の重合を含む)。
本発明のように200万以上、1000万未満のZ+1平均分子量を示す発泡粒子の融着体からなるポリスチレン系樹脂発泡成形体を得る場合、2段以上に分けることが好ましい。
【0030】
2段階以上で行われる場合、次のように重合工程を調整することが好ましい。
まずスチレン系樹脂の種粒子に、スチレン系単量体と必要に応じて単官能アクリル酸エステル等を含む第1単量体混合物を吸収させて種粒子内で重合させる(第1工程)。
次に、第1工程を経て得られた粒子に、スチレン系単量体を吸収させつつ重合させる(第2工程)。更に、第2工程を経て得られた粒子に、スチレン系単量体と多官能性単量体とを含む第2単量体混合物を吸収させつつ重合を行う(第3工程)。
【0031】
発泡性粒子
発泡性粒子は、上記スチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させた粒子である。
発泡剤としては、特に限定されず、公知のものをいずれも使用できる。特に、沸点がスチレン系樹脂の軟化点以下であり、常圧でガス状又は液状の有機化合物が適している。例えばプロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、シクロペンタジエン、n−ヘキサン、石油エーテル等の炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル等の低沸点のエーテル化合物、トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン等のハロゲン含有炭化水素、炭酸ガス、窒素、アンモニア等の無機ガス等が挙げられる。これらの発泡剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。この内炭化水素を使用するのが、オゾン層の破壊を防止する観点、及び空気と速く置換し、ポリスチレン系樹脂発泡成形体の経時変化を抑制する観点で好ましい。炭化水素の内、沸点が−45〜40℃の炭化水素がより好ましく、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン等が更に好ましい。
【0032】
更に発泡剤の含有量は、2〜12質量%の範囲であることが好ましい。2質量%より少ないと、発泡性粒子から所望の密度のポリスチレン系樹脂発泡成形体を得られないことがある。加えて、型内発泡成形時の二次発泡力を高める効果が小さくなるために、ポリスチレン系樹脂発泡成形体の外観が良好とならないことがある。12質量%より多いと、ポリスチレン系樹脂発泡成形体の製造工程における冷却工程に要する時間が長くなって生産性が低下することがある。より好ましい発泡剤の含有量は、3〜10質量%である。
【0033】
発泡性粒子は、上記スチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させることにより得ることができる。含浸は、重合(例えば、第3工程)と同時に湿式で行ってもよく、重合後に湿式又は乾式で行ってもよい。湿式で行う場合は、上記重合工程で例示した、懸濁安定剤及び界面活性剤の存在下で行ってもよい。
発泡剤の含浸温度は、60〜120℃が好ましい。60℃より低いと、樹脂粒子に発泡剤を含浸させるのに要する時間が長くなって生産効率が低下することがある。また、120℃より高いと、樹脂粒子同士が融着して結合粒が発生することがある。より好ましい含浸温度は、70〜110℃である。
発泡助剤を、発泡剤と併用してもよい。発泡助剤としては、アジピン酸イソブチル、トルエン、シクロヘキサン、エチルベンゼン等が挙げられる。Z+1平均分子量(Mz+1)が400万〜700万であればスチレン系樹脂粒子100質量部に対して0.5〜1.5質量部、700万〜1000万であれば1.5〜2.0質量部のシクロヘキサンを添加することが好ましい。それぞれ添加しない場合や添加量が少ない場合、発泡性粒子から所望の密度のポリスチレン系樹脂発泡成形体が得られないことや、型内発泡成形時の二次発泡力が低下し発泡成形体の外観を損なうことがある。
【0034】
予備発泡粒子
予備発泡粒子は、水蒸気等を用いて所望の嵩密度に発泡性粒子を発泡させることで得られる。予備発泡粒子の嵩密度は、0.01〜0.04g/cm3の範囲であることが好ましい。予備発泡粒子の嵩密度が0.01g/cm3より小さい場合、次に得られるポリスチレン系樹脂発泡成形体に収縮が発生して外観性が低下することがある。加えてポリスチレン系樹脂発泡成形体の断熱性能及び機械的強度が低下することがある。一方、嵩密度が0.04g/cm3より大きい場合、ポリスチレン系樹脂発泡成形体の軽量性が低下することがある。
なお、発泡前に、発泡性粒子の表面に、ステアリン酸亜鉛のような粉末状金属石鹸類を塗布しておくことが好ましい。塗布しておくことで、発泡性粒子の発泡工程において予備発泡粒子同士の結合を減少できる。
【0035】
発泡成形体
ポリスチレン系樹脂発泡成形体は、例えば、食品、工業製品等の容器、魚、農産物等の梱包材、床断熱用の断熱材、盛土材、畳の芯材、FJリング等の緩衝材に使用できる。ポリスチレン系樹脂発泡成形体は、これら使用用途に応じた形状をとり得る。ポリスチレン系樹脂発泡成形体の密度は、0.01〜0.04g/cm3の範囲であることが好ましい。ポリスチレン系樹脂発泡成形体の密度が0.01g/cm3より小さい場合、ポリスチレン系樹脂発泡成形体に収縮が発生して外観性が低下することがある。加えてポリスチレン系樹脂発泡成形体の断熱性能及び機械的強度が低下することがある。一方、密度が0.04g/cm3より大きい場合、ポリスチレン系樹脂発泡成形体の軽量性が低下することがある。
【0036】
ポリスチレン系樹脂発泡成形体は例えば以下の方法により得ることができる。予備発泡粒子を多数の小孔を有する閉鎖金型内に充填し、熱媒体(例えば、加圧水蒸気等)で加熱発泡させ、予備発泡粒子間の空隙を埋めると共に、予備発泡粒子を相互に融着させることにより一体化させることで、ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造できる。その際、ポリスチレン系樹脂発泡成形体の密度は、例えば、金型内への予備発泡粒子の充填量を調整する等して調製できる。
【0037】
加熱発泡は、例えば、110〜150℃の熱媒体で、5〜50秒加熱することにより行うことができる。この条件であれば、粒子相互の良好な融着性を確保できる。より好ましくは、加熱発泡は、成形蒸気圧(ゲージ圧)0.06〜0.08MPa、90〜120℃の熱媒体(例えば、水蒸気)で、10〜50秒加熱することにより行うことができる。
【0038】
予備発泡粒子は、ポリスチレン系樹脂発泡成形体の成形前に、例えば常圧で、熟成させてもよい。予備発泡粒子の熟成温度は、20〜60℃が好ましい。熟成温度が低いと、予備発泡粒子の熟成時間が長くなることがある。一方、高いと、予備発泡粒子中の発泡剤が散逸して成形性が低下することがある。
【実施例】
【0039】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】
<平均分子量>
Z+1平均分子量(Mz+1)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定したポリスチレン(PS)換算平均分子量を意味する。具体的には、試料3mgをテトラヒドロフラン(THF)10mLにて72時間静置して溶解させ(完全溶解)、得られた溶液を倉敷紡績社製の非水系0.45μmのクロマトディスク(13N)で濾過して測定する。予め測定し作成しておいた標準ポリスチレンの検量線から試料の平均分子量を求める。またクロマトグラフの条件は下記の通りとする。
(測定条件)
使用装置:高速GPC装置:東ソー社製 HLC−8320GPC EcoSECシステム(RI検出器内蔵)
ガードカラム:東ソー社製 TSKguardcolumn SuperHZ−H(4.6mmID×2cmL)×1本
カラム:東ソー社製 TSKgel SuperHZM−H(4.6mmI.D×15cmL)×2本
カラム温度:40℃
システム温度:40℃
移動相:テトラヒドロフラン
移動相流量:試料側 0.175mL/分、リファレンス側 0.175mL/分
検出器:RI検出器
試料濃度:0.3g/L
注入量:50μL
測定時間:0−25分
ランタイム:25分
サンプリングピッチ:200msec
(検量線の作成)
検量線用標準ポリスチレン試料としては、東ソー社製 商品名「TSK standard POLYSTYRENE」の重量平均分子量が、5,480,000、3,840,000、355,000、102,000、37,900、9,100、2,630、500のものと、昭和電工社製商品名「Shodex STANDARD」の重量平均分子量が1,030,000である標準ポリスチレン試料を用いる。
【0041】
検量線の作成方法は以下の通りである。上記検量線用標準ポリスチレン試料をグループA(重量平均分子量が1,030,000のもの)、グループB(重量平均分子量が3,840,000、102,000、9,100、500)及びグループC(重量平均分子量が5,480,000、355,000、37,900、2,630)にグループ分けする。グループAを5mg秤量した後にテトラヒドロフラン20mLに溶解し、グループBも各々5mg〜10mg秤量した後にテトラヒドロフラン50mLに溶解し、グループCも各々1mg〜5mg秤量した後にテトラヒドロフラン40mLに溶解した。標準ポリスチレン検量線は作成したA,B及びC溶液を50μLを注入して測定後に得られた保持時間から較正曲線(三次式)をHLC−8320GPC専用データ解析プログラムGPCワークステーション(EcoSEC−WS)にて作成することにより得られ、その検量線を用いて測定した。
【0042】
<アスペクト比>
気泡アスペクト比についてはASTM D2842−69の試験方法に準拠して測定する。嵩密度0.0166g/cm3に発泡成形された成形体の任意の部分を、剃刀刃を用いて成形体断面を得る。この切断面を走査型電子顕微鏡(日本電気社製JSM−6360LV)を用いて、100倍に拡大した画像を作成する。次に、切断面の画像上にある発泡粒子界面から発泡粒子半径方向の20%の範囲における任意の気泡を20個選び、各気泡の最大径(L1)と最小径(L2)を測定する。アスペクト比は下記の式にて算出する。
アスペクト比=L1/L2
一方、切断面の画像上にある、発泡粒子界面から発泡粒子半径方向の20%の範囲以外の部分で上記と同様の作業を行い、発泡粒子中心部のアスペクト比を算出する。
【0043】
<平均気泡径>
平均気泡径についてはASTM D2842−69の試験方法に準拠して測定する。嵩密度0.0166g/cm3に発泡成形された成形体の任意の部分を、剃刀刃を用いて成形体断面を得る。この切断面を走査型電子顕微鏡(日本電気社製JSM−6360LV)を用いて、100倍に拡大した画像を作成する。
次に、切断面の画像上にある発泡粒子界面から発泡粒子半径方向の20%の範囲における任意の位置で60mmの直線を描く。直線上にある気泡の個数を数え、次式によりこの気泡の平均弦長(t)を算出する。
平均弦長t(μm)=60/(気泡数×画像の拡大倍数)
次の式により、この気泡の平均気泡径(D)を算出する。
平均気泡径D(μm)=t/0.616
以上の作業をN数10で行い、平均値を平均気泡径とする。
一方、切断面の画像上にある、発泡粒子界面から発泡粒子半径方向の20%の範囲以外の部分で同様に作業を行い、平均気泡径を算出する。
【0044】
<予備発泡粒子の嵩密度>
予備発泡粒子の嵩倍数は、JIS K6911:1995年「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に準拠して測定する。具体的には、まず、予備発泡粒子を測定試料としてWg採取し、この測定試料をメスシリンダー内に自然落下させる。メスシリンダー内に落下させた測定試料の体積Vcm3をJIS K6911に準拠した見掛け密度測定器を用いて測定する。Wg及びVcm3を下記式に代入することで、予備発泡粒子の嵩密度を算出する。
予備発泡粒子嵩密度(g/cm3)=測定試料の質量(W)/測定試料の体積(V)
【0045】
<ポリスチレン系樹脂発泡成形体の密度>
ポリスチレン系樹脂発泡成形体(成形後、40℃で20時間以上乾燥させたもの)から切り出した試験片(例75×300×30mm)の質量(a)と体積(b)をそれぞれ有効数字3桁以上になるように測定し、式(a)/(b)によりポリスチレン系樹脂発泡成形体の密度(g/cm3)を求める。
【0046】
<曲げ弾性率>
発泡体の平均最大曲げ強度をJIS K7221−2「硬質発泡プラスチック曲げ試験」に記載の方法に準拠して測定する。具体的には、密度16.7kg/m3の発泡体から縦75mm×横300mm×厚さ30mmの直方体形状の試験片を切り出す。しかる後、この試験片を曲げ強度測定器(オリエンテック社製商品名「UCT−10T」)を用いて、試験速度10mm/分、支点間距離200mm、加圧くさび10R及び支持台10Rの条件下にて測定する。試験片を5個用意し、試験片ごとに試験片が破壊する最大荷重を測定するとともに、曲げ弾性率を算出する。
曲げ試験条件荷重(fs%)開始点=0.0、終了点=20.0、ピッチ=0.2(fs%)
【0047】
<総合評価>
成形性評価は前記条件で成形体を得て、目視判断を行い収縮がなく、成形体表面の予備発泡粒子間の隙間が少ないものを○、収縮又は、予備発泡粒子間の隙間が多いものを×とした。一方、曲げ弾性率が13.0MPa以上を○、13.0MPa未満を×として評価を行った。
【0048】
(実施例1)
内容量100リットルの攪拌機付き重合容器に、水40000質量部、懸濁安定剤としてピロリン酸マグネシウム100質量部及びアニオン界面活性剤としてドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム5.0質量部を供給し攪拌しながらスチレン40000質量部並びに重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド128質量部及びt−ブチルパーオキシベンゾエート28.0質量部を添加した上で90℃に昇温して重合した。そして、この温度で6時間保持し、更に、125℃に昇温してから2時間後に冷却してスチレン系樹脂粒子(a)を得た。前記スチレン系樹脂粒子(a)を篩分けし、種粒子として粒子径0.5〜0.71mmのスチレン系樹脂粒子(平均粒子径0.63mm、重量平均分子量25万;b)を得た。
【0049】
次に、内容積25Lの撹拌機付き重合容器に、種粒子(b)を2350g、ピロリン酸マグネシウム30g及びドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム10gを供給して撹拌しつつ72℃に加熱して分散液を作製した。
続いて、ベンゾイルパーオキサイド32.9gとt−ブチルパーオキシベンゾエート6.1gとを、スチレン850gとアクリル酸ブチル150gとの単量体混合物に溶解させた溶液を全て前記分散液中に撹拌しつつ供給した。そして分散液中に前記溶液を供給し終えてから60分間72℃に維持しながら重合反応を行った(第1工程)。
その後この分散液を90℃まで60分かけて昇温しながら、スチレン2660gを一定速度で重合容器に投入し、種粒子に吸収させながら重合反応を行った(第2工程)。
【0050】
次いで、分散液を90℃で保持しながらスチレン4000g、ジビニルベンゼン0.5gを混合したものを一定速度で、90分かけて重合容器に投入し、種粒子に吸収させながら重合反応を行った(第3工程)。更に分散液を120℃まで昇温しかつ、60分保持することで未反応の単量体を反応させた。
次に分散液を100℃に保持し、続いて、重合容器内にシクロヘキサン80g、アジピン酸ジイソブチル70g、ノルマルブタン700gを圧入して3時間に亘って保持することにより、樹脂粒子中にノルマルブタンを含浸させた。この後、重合容器内を25℃に冷却して発泡性粒子を得た。
【0051】
発泡性粒子の表面に帯電防止剤としてポリエチレングリコールを塗布した。この後、更に、発泡性粒子の表面にステアリン酸亜鉛及びヒドロキシステアリン酸トリグリセリドを塗布した。塗布後、発泡性粒子を13℃の恒温室にて5日間放置した。そして、発泡性粒子を加熱して嵩密度0.0166g/cm3に予備発泡させて予備発泡粒子を得た。予備発泡粒子を20℃で24時間熟成させた。次に、予備発泡粒子を金型内に充填して0.08MPaの蒸気圧で加熱発泡させて、縦400mm×横300mm×厚さ30mmのポリスチレン系樹脂発泡成形体を得た。ポリスチレン系樹脂発泡成形体を50℃の乾燥室で6時間乾燥した後、密度を測定したところ、0.0166g/cm3(16.6kg/m3)であった。ポリスチレン系樹脂発泡成形体は収縮もなく外観も優れており、曲げ弾性率を測定した。ポリスチレン系樹脂発泡成形体のカット面の写真を図2に示す。
【0052】
(実施例2)
ジビニルベンゼンを0.3g使用したこと以外は実施例1と同様にポリスチレン系樹脂発泡成形体を得た。得られた発泡成形体は収縮もなく外観も優れていた。
(実施例3)
ジビニルベンゼンを1.2g使用したこと以外は実施例1と同様にポリスチレン系樹脂発泡成形体を得た。得られた発泡成形体は、収縮もなく外観も優れていた。
【0053】
(実施例4)
第2工程にて、分散液を84℃まで60分かけて昇温しながら、スチレン2660gを投入した。第3工程にて、分散液を84℃で保持しながらスチレン4000g、ジビニルベンゼン2.4gを混合したものを一定速度で、90分かけて重合容器に投入し、種粒子に吸収させながら重合反応を行い、シクロヘキサン使用量を110gに変更したこと以外は実施例1と同様にポリスチレン系樹脂発泡成形体を得た。得られた発泡成形体は、収縮もなく外観も優れていた。
【0054】
(実施例5)
ベンゾイルパーオキサイド45.9gとt−ブチルパーオキシベンゾエート6.1gとを、スチレン750gとアクリル酸ブチル250gとに溶解させたこと以外は実施例1と同様にポリスチレン系樹脂発泡成形体を得た。得られた発泡成形体は、収縮もなく外観も優れていた。
【0055】
(実施例6)
ベンゾイルパーオキサイド45.9gとt−ブチルパーオキシベンゾエート6.1gとを、スチレン550gとアクリル酸ブチル450gとに溶解させたこと以外は実施例3と同様にポリスチレン系樹脂発泡成形体を得た。得られた発泡成形体は、収縮もなく外観も優れていた。
【0056】
(比較例1)
ベンゾイルパーオキサイド45.9gとt−ブチルパーオキシベンゾエート6.1gとを、スチレン1000gのみに溶解し、かつジビニルベンゼンを使用しなかったこと以外は実施例1と同様にポリスチレン系樹脂発泡成形体を得た。この発泡成形体のカット面の写真を図2に示す。
【0057】
(比較例2)
ジビニルベンゼンを使用しなかったこと以外は実施例1と同様にポリスチレン系樹脂発泡成形体を得た。
【0058】
(比較例3)
第2工程にて、分散液を80℃まで60分かけて昇温しながら、スチレン2660gを投入した。第3工程にて、分散液を80℃で保持しながらスチレン4000g、ジビニルベンゼン3.0gを混合したものを一定速度で、90分かけて重合容器に投入し、種粒子に吸収させながら重合反応を行い、シクロヘキサン使用量を110gに変更したこと以外は実施例1と同様にして、Mz+1 1200万程度を狙って実施したが、評価できるポリスチレン系樹脂発泡成形体は得られなかった。
【0059】
得られたポリスチレン系樹脂発泡成形体の各種物性を表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
上記表1から、特定のアスペクト比を満たすポリスチレン系樹脂発泡成形体は、曲げ弾性率に優れたポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造できることが分かる。
【符号の説明】
【0062】
1:融着した発泡粒子、2:融着面付近の気泡、3:中心部の気泡、4:融着面
図1
図2
図3