【実施例】
【0020】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。まず実施例における各種物性の測定法を下記する。
[反応熱分解GC/MS法による測定]
発泡粒子又は発泡成形体から試料0.05〜0.3mgを採取し、熱分解温度445℃のパイロホイル中で秤量する。試料に水酸化テトラメチルアンモニウム5水和物(TMAH、反応試薬)を20重量%含むメタノール溶液5μLを滴下した後、乾燥させてから試料をパイロホイルで包みこむことで熱分解用試料を作製する。
熱分解用試料を、測定装置としてのキューリーポイントパイロライザーJHP−5型(日本分析工業社製)及びガスクロマトグラフ質量分析計JMS−AX505H(日本電子社製:GC(HP−5890II)による下記測定条件にて熱分解測定に付すことでGC/MSチャート(トータルイオンクロマトグラム=TIC)を得る。GC/MSチャートの横軸はリテンションタイム(単位:分)、縦軸は強度(アバンダンス)を示す。
カラム:ZB−5(0.25μm×0.25mmφ×30m:phenomenex社製)
測定条件:パイロホイル(445℃で5秒間加熱)、オーブン温度(280℃)、ニードル温度(250℃)、カラム温度(50℃(3分)→10℃/分→280℃→40℃/分→320℃(3分))
測定時間(30min)、キャリアーガス(He)、He流量(34mL/分)、注入口温度(300℃)、SEP温度(280℃)、RSV温度(80℃)、IONIZAION CUR(100μA)
CD VOLTAGE(−10kV)
得られたGC/MSチャートから、最大強度ピークのリテンションタイムを基準として、5分以内の範囲のリテンションタイムであり、電子衝撃イオン化(EI)法によるフラグメントイオン分子量で一番強度の大きい分子量が290〜320であるピークを確認する。
フラグメントイオン分子量の確認はマススペクトルにて行い、最大強度ピークのリテンションタイムを基準として5分以内の範囲のピークに関して、マススペクトルを出現させてフラグメントイオン分子量を確認する。また、最大強度ピークはビスフェノールAメチル化成分であることをフラグメントイオンより確認する。
また、得られたマススペクトルを備え付けられているライブラリを用いてサーチ検索をかけることで構造を同定することが可能となる。例えば、NIST(質量スペクトルデータベース)等のライブラリが挙げられる。
得られたGC/MSチャートから、最大強度ピーク及び分子量290〜320に由来するピークそれぞれのピーク面積(TICピーク面積)を求める。得られたピーク面積から下記式を用いてピーク面積比を算出する。
ピーク面積比=(分子量290〜320に由来するピーク面積)/(ビスフェノールAメチル化物由来成分のピーク面積)
【0021】
[MFRの測定]
メルトフローレイト(MFR)は、東洋精機製作所社製「セミオートメルトインデクサー2A」を用いて測定し、JIS K7210:1999「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」B法に記載のb)ピストンが所定の距離を移動する時間を測定する方法に準拠して測定される。具体的には、測定条件は、試料3〜8g、予熱270秒、ロードホールド30秒、試験温度300℃、試験荷重11.77N、ピストン移動距離(インターバル)25mmとする。試料の試験回数は3回とし、その平均をメルトフローレイト(g/10分)の値とする。なお、測定試料は、真空乾燥機にて120℃で、100kPaの減圧下、5時間の条件で乾燥をしたものを測定で用いる。
【0022】
[平均粒子径の測定]
平均粒子径とはD50で表現される値である。
具体的には、ロータップ型篩振とう機(飯田製作所社製)を用いて、篩目開き26.5mm、22.4mm、19.0mm、16.0mm、13.2mm、11.20mm、9.50mm、8.80mm、6.70mm、5.66mm、4.76mm、4.00mm、3.35mm、2.80mm、2.36mm、2.00mm、1.70mm、1.40mm、1.18mm、1.00mm、0.85mm、0.71mm、0.60mm、0.50mm、0.425mm、0.355mm、0.300mm、0.250mm、0.212mm及び0.180mmのJIS標準篩(JIS Z8801:2006)で試料約25gを10分間分級し、篩網上の試料重量を測定する。得られた結果から累積重量分布曲線を作成し、累積重量が50%となる粒子径(メディアン径)を平均粒子径とする。
【0023】
[発泡成形体の密度の測定]
発泡成形体(成形後、40℃で20時間以上乾燥させたもの)から切り出した試験片(例30×50×25mm)の質量(a)と体積(b)をそれぞれ有効数字3桁以上になるように測定し、式(a)/(b)により発泡成形体の密度(g/cm
3)を求める。
倍数は密度の逆数にポリカーボネート系樹脂の密度(g/cm
3)を積算した値である。
[発泡性の評価]
発泡粒子の嵩倍数が20倍以上に到達できる場合、○とする。
[発泡粒子の嵩密度の測定]
発泡粒子約500cm
3を、メスシリンダー内に500cm
3の目盛りまで充填する。なお、メスシリンダーを水平方向から目視し、発泡粒子が1つでも500cm
3の目盛りに達していれば、その時点で発泡粒子のメスシリンダー内への充填を終了する。次に、メスシリンダー内に充填した発泡粒子の重量を小数点以下2位の有効数字で秤量し、その質量をWgとする。そして、下記式により発泡粒子の嵩密度は求められる。
嵩密度(g/cm
3)=W/500
嵩倍数は嵩密度の逆数にポリカーボネート系樹脂の密度(g/cm
3)を積算した値である。
ポリカーボネート系樹脂の密度はISO1183:2004)に規定した方法で測定できる。
【0024】
<実施例1>
(含浸工程)
ポリカーボネート系樹脂としてノバレックスM7027U(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、MFR5g/10分、平均粒子径3mm)100重量部(1000g)を密閉可能な10Lの圧力容器に投入し、炭酸ガスを用いて圧力容器内をゲージ圧4MPaまで昇圧させ、室温(約20℃)の環境下で24時間保持して発泡性粒子を得た。
(発泡性確認工程)
含浸終了後、圧力容器内の炭酸ガスをゆっくりと除圧し内部の発泡性粒子を取出した。直ちに結合防止剤としての0.3重量部(3g)の炭酸カルシウムと発泡性粒子100重量部(1000g)とを混合した。その後、高圧の蒸気を導入及び排出できる発泡機に発泡性粒子を投入し0.30MPaの水蒸気を用いて120秒間加熱して発泡させた。得られた発泡粒子の嵩倍数は30倍(嵩密度0.04g/cm
3)であった。得られた発泡粒子を反応熱分解GC/MSを用いて測定して得たGC/MSチャートを
図1(a)に示す。
図1(a)中、Aは290〜320の分子量に由来するピークであり、BはビスフェノールA由来成分を示す最大ピークである。GC/MSチャートに由来するMSスペクトルを
図1(b)〜(d)に示す。
図1(b)は290〜320の分子量に由来するピークに対応し、
図1(c)はビスフェノールA由来成分を示す最大ピークに対応する。
図1(d)は
図1(c)をライブラリを用いて検索をかけた結果を表している。
【0025】
(成形工程)
上記発泡性粒子を、縦40mm×横80mm×厚さ25mm、容積80cm
3の金型に4.8g投入し、0.30〜0.35MPaの水蒸気を120秒導入して加熱し、冷却することで倍数20倍(密度0.06/cm
3)の自立する発泡成形体を得た。得られた発泡成形体を30℃の乾燥室で8時間程度乾燥させた。発泡成形体を反応熱分解GC/MSを用いて測定した結果は、
図1(a)〜(d)とほぼ同じであった。
【0026】
<比較例1>
ポリカーボネート系樹脂をWB1439(バイエル社製、密度1.2g/cm
3、MFR3g/10分)に変更すること以外は実施例1と同様にして発泡粒子(嵩倍数16倍:嵩密度0.075g/cm
3)を得た。
なお、発泡粒子を反応熱分解GC/MSを用いて測定した結果を
図2(a)〜(c)に示す。発泡成形体を反応熱分解GC/MSを用いて測定した結果は、
図2(a)〜(c)とほぼ同じであった。
実施例1と同様に成形を実施したが、自立する成形体は得られなかった。
<比較例2>
ポリカーボネート系樹脂パンライトX0730(帝人社製、密度1.2g/cm
3、MFR 3.5g/10分)に変更すること以外は実施例1と同様にして発泡粒子(嵩倍数16倍:嵩密度0.075g/cm
3)を得た。
なお、発泡粒子を反応熱分解GC/MSを用いて測定した結果を
図3(a)〜(c)に示す。発泡成形体を反応熱分解GC/MSを用いて測定した結果は、
図3(a)〜(c)とほぼ同じであった。
実施例1と同様に成形を実施したが、自立する成形体は得られなかった。
<比較例3>
ポリカーボネート系樹脂をパンライトL−1250Y(帝人社製、密度1.2g/cm
3、MFR7g/10分)に変更すること以外は実施例1と同様にして発泡粒子(嵩倍数15倍:嵩密度0.08g/cm
3)を得た。
なお、発泡粒子を反応熱分解GC/MSを用いて測定した結果を
図4(a)〜(c)に示す。発泡成形体を反応熱分解GC/MSを用いて測定した結果は、
図4(a)〜(c)とほぼ同じであった。
実施例1と同様に成形を実施したが、自立する成形体は得られなかった。
【0027】
【表1】
【0028】
上記表1から、ビスフェノールA最大ピークのリテンションタイムを基準として、5分以内の範囲のリテンションタイムで確認される290〜320の分子量に由来するピークを示す発泡成形体は、成形性及び発泡性(外観)が良好であることが分かる。