【実施例】
【0031】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。まず実施例における各種物性の測定法を下記する。
[ポリカーボネート系樹脂の密度の測定]
ポリカーボネート系樹脂の密度はISO1183−1:2004、もしくは、ASTM D−792に規定した方法で測定する。
【0032】
[MFRの測定]
メルトフローレイト(MFR)は、東洋精機製作所社製「セミオートメルトインデクサー2A」を用いて測定し、JIS K7210:1999「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」B法に記載のb)ピストンが所定の距離を移動する時間を測定する方法に準拠して測定される。具体的には、測定条件は、試料3〜8g、予熱270秒、ロードホールド30秒、試験温度300℃、試験荷重11.77N、ピストン移動距離(インターバル)25mmとする。試料の試験回数は3回とし、その平均をメルトフローレイト(g/10分)の値とする。なお、測定試料は、真空乾燥機にて120℃で、100kPaの減圧下、5時間の条件で乾燥をしたものを測定で用いる。
【0033】
[平均粒子径の測定]
平均粒子径とはD50で表現される値である。
具体的には、ロータップ型篩振とう機(飯田製作所社製)を用いて、篩目開き26.5mm、22.4mm、19.0mm、16.0mm、13.2mm、11.20mm、9.50mm、8.80mm、6.70mm、5.66mm、4.76mm、4.00mm、3.35mm、2.80mm、2.36mm、2.00mm、1.70mm、1.40mm、1.18mm、1.00mm、0.85mm、0.71mm、0.60mm、0.50mm、0.425mm、0.355mm、0.300mm、0.250mm、0.212mm及び0.180mmのJIS標準篩(JIS Z8801:2006)で試料約25gを10分間分級し、篩網上の試料重量を測定する。得られた結果から累積重量分布曲線を作成し、累積重量が50%となる粒子径(メディアン径)を平均粒子径とする。
【0034】
[発泡粒子の平均気泡径の測定]
1次発泡によって得られた発泡粒子を抜き取る。この発泡粒子を任意の方向に切断し、切り出した断面を走査型電子顕微鏡(日立製作所社製「S−3400N」)にて10〜200倍に拡大して撮影する。撮影した画像をA4用紙上に印刷し、任意の気泡を10個選択し、平均値を算出する。この数値を平均気泡径とする。
[発泡成形体の平均気泡径の測定]
縦400mm×横300mm×厚さ30mmの成形体中央部から縦50mm×横50mm×厚さ30mmを切り出し、切り出した成形体片の厚み方向、断面を走査型電子顕微鏡(日立製作所社製「S−3400N」)にて10〜200倍に拡大して撮影する。撮影した画像をA4用紙上に印刷し、任意の気泡を10個選択し、平均値を算出する。この数値を平均気泡径とする。
【0035】
[発泡粒子の見かけ密度の測定]
発泡粒子約1000cm
3を、メスシリンダー内に1000cm
3の目盛りまで充填する。なお、メスシリンダーを水平方向から目視し、発泡粒子が1つでも1000cm
3の目盛りに達していれば、その時点で発泡粒子のメスシリンダー内への充填を終了する。次に、メスシリンダー内に充填した発泡粒子の重量を小数点以下2位の有効数字で秤量し、その質量をWgとする。そして、下記式により発泡粒子の嵩密度は求められる。
見かけ密度(kg/m
3)=(W×1000)/1000×(0.01)
3
嵩倍数は嵩密度の逆数にポリカーボネート系樹脂の密度(kg/m
3)を積算した値である。
【0036】
[発泡成形体の密度の測定]
発泡成形体(成形後、40℃で20時間以上乾燥させたもの)から切り出した試験片(例75×300×30mm)の質量(a)と体積(b)をそれぞれ有効数字3桁以上になるように測定し、式(a)/(b)により発泡成形体の密度(kg/m
3)を求める。
倍数は密度の逆数にポリカーボネート系樹脂の密度(kg/m
3)を積算した値である。
【0037】
[成形サイクルの評価]
成形時の加熱終了時点から、発泡成形体の単位面積当たりの発泡圧力が0kgf/cm
2になるまでの真空冷却時間を以下の基準で評価する。
○:長時間(41秒以上)
△:中程度(21秒〜40秒)
×:短時間(20秒以下)
なお、発泡成形体の単位面積当たりの発泡圧力が加熱直後に0kgf/cm
2になるまでの時間が長いことは、発泡粒子の発泡力が高く、その結果、発泡粒子同士の融着性が高くなることを意味する。
【0038】
[強度の評価]
発砲成形体に30cmの高さから1kgの鉄球を落下させた後、発泡成形体の状態を以下の基準で評価する。
○:成形体表面は凹むが破断しない。
△:成形体表面や内部にヒビは入るが破断しない。
×:成形体は破断する。
【0039】
[外観の評価]
外観は、次のように評価する。即ち、発泡成形体から任意に50mm×50mmの表皮付試験片を切り出し、試験片表面(表皮面)の粒子間の個数を計測する。ここで、粒子間とは発泡粒子が3個以上で接している接点のことをいう。次に、粒子間のピンホール(くぼみ)の個数を計測する。粒子間の個数とピンホールの個数から、以下の式により発泡成形体のノビを算出する。ここでのピンホール(くぼみ)は、発泡成形体製造時に金型に接していた表面から2mm以上凹んでいる、もしくは、2mm以上のくぼみの幅(但し、金型に接していた表面側の幅)が存在する部分の事を示す。
発泡成形体のノビ=(1−粒子間ピンホール個数/全粒子間個数)×5
算出されたノビ値を以下の基準で評価する。
外観○:4個以上(表面が滑らか。発泡粒同士が接着しており、発泡粒形状が確認し難い。)
外観×:4個未満(表面に凹凸が生じている。発泡粒の形状が確認できる。ポーラス状である。粒子の形状がそのまま残っている。)
【0040】
[成形性の評価]
成形性は、2次発泡性により以下の基準で評価する。2次発泡性は、以下の式より算出する。なお、2次発泡粒子の発泡倍率は、内圧付与工程を済ました1次発泡粒子を、0.34MPaで30秒間、水蒸気で加熱することにより示される2次発泡粒子の発泡倍率を意味する。
2次発泡倍率(倍)=(2次発泡粒子の発泡倍率)/(1次発泡粒子の発泡倍率)
○:2倍以上。
△:1.5倍〜2倍。
×:1.5倍以下。
【0041】
<実施例1>
(含浸工程)
ポリカーボネート系樹脂として、レキサン153(SABIC社製、密度1.2×10
3kg/m
3、MFR4g/10分、平均粒子径3mm)100重量部(1000g)を密閉可能な10Lの圧力容器に投入し、炭酸ガスを用いて圧力容器内をゲージ圧4MPaまで昇圧させ、20℃で24時間保持して発泡性粒子を得た。
(発泡工程)
含浸終了後、圧力容器内の炭酸ガスをゆっくりと除圧し内部の発泡性粒子を取出した。直ちに結合防止剤としての0.3重量部(3g)の炭酸カルシウムと発泡性粒子100重量部(1000g)とを混合した。その後、撹拌機付きの高圧発泡機に発泡性粒子を投入し、撹拌しながら0.34MPaの水蒸気を120秒用いて発泡させることで、嵩倍数23倍(見かけ密度52kg/m
3)の発泡粒子(平均粒子径6mm:1次発泡粒子)を得た。
【0042】
(第2の含浸工程:内圧付与工程)
得られた発泡粒子の表面を0.01N−塩酸を用いて洗浄し乾燥させた後、10Lの圧力容器に投入し、密閉した。窒素ガスを用いて密閉した圧力容器内を0〜20℃でゲージ圧1MPaまで昇圧させ24時間放置して内圧付与することで発泡粒子(2次発泡粒子)を得た。
【0043】
(成形工程)
内圧付与を実施した圧力容器内の窒素ガスをゆっくり除圧し、発泡粒子を取出し、直ちに高圧成形機を用いて発泡成形を実施した。縦400mm×横300mm×厚さ30mmの内寸の成形用金型内に発泡粒子を充填し、0.30〜0.35MPaの水蒸気を60秒導入して加熱し、1秒間の放冷後、10秒間水冷を行い、金型内で真空冷却することで倍数16倍(密度75kg/m
3)の発泡成形体を得た。
【0044】
<実施例2>
ポリカーボネート系樹脂として、SABIC社製のレキサン101R(密度1.2×10
3kg/m
3、MFR9g/10分、平均粒子径3mm)を使用したこと以外は実施例1と同様にして嵩倍数14倍(見かけ密度86kg/m
3)の1次発泡粒子(平均粒子径5mm)及び倍数13倍(密度92kg/m
3)の発泡成形体を得た。
<実施例3>
ポリカーボネート系樹脂として、SABIC社製のレキサン121R(密度1.2×10
3kg/m
3、MFR15g/10分、平均粒子径3mm)を使用したこと以外は実施例1と同様にして嵩倍数16倍(見かけ密度75kg/m
3)の1次発泡粒子(平均粒子径5mm)及び倍数14倍(密度86kg/m
3)の発泡成形体を得た。
【0045】
<実施例4>
ポリカーボネート系樹脂として、SABIC社製のレキサン131(密度1.2×10
3kg/m
3、MFR3g/10分、平均粒子径3mm)を使用したこと以外は実施例1と同様にして嵩倍数14倍(見かけ密度86kg/m
3)の1次発泡粒子(平均粒子径5mm)及び倍数13倍(密度92kg/m
3)の発泡成形体を得た。
<実施例5>
ポリカーボネート系樹脂として、バイエル社製のマクロロンWB1439(密度1.2×10
3kg/m
3、MFR3g/10分、平均粒子径3mm)を使用したこと以外は実施例1と同様にして嵩倍数21倍(見かけ密度57kg/m
3)の1次発泡粒子(平均粒子径6mm)及び倍数20倍(密度60kg/m
3)の発泡成形体を得た。
【0046】
<比較例1>
ポリカーボネート系樹脂として、帝人社製のパンライトX0730(密度1.2×10
3kg/m
3、MFR3g/10分、平均粒子径3mm)を使用したこと以外は実施例1と同様にして嵩倍数30倍(見かけ密度40kg/m
3)の1次発泡粒子(平均粒子径6.5mm)及び倍数24倍(密度50kg/m
3)の発泡成形体を得た。
<比較例2>
ポリカーボネート系樹脂として、帝人社製のパンライトL−1250Y(密度1.2×10
3kg/m
3、MFR8g/10分、平均粒子径3mm)を使用したこと以外は実施例1と同様にして嵩倍数25倍(見かけ密度48kg/m
3)の1次発泡粒子(平均粒子径6mm)及び倍数21倍(密度57kg/m
3)の発泡成形体を得た。
【0047】
<比較例3>
ポリカーボネート系樹脂として、帝人社製のパンライトL−1225L(密度1.2×10
3kg/m
3、MFR19g/10分、平均粒子径3mm)を使用したこと以外は実施例1と同様にして嵩倍数12倍(見かけ密度100kg/m
3)の1次発泡粒子(平均粒子径5mm)及び倍数10倍(密度120kg/m
3)の発泡成形体を得た。
<比較例4>
ポリカーボネート系樹脂として、三菱エンジアニンリングプラスチックス社製のノバレックスM7027U(密度1.2×10
3kg/m
3、MFR5g/10分、平均粒子径3mm)を使用したこと以外は実施例1と同様にして嵩倍数27倍(見かけ密度44kg/m
3)の1次発泡粒子(平均粒子径6.5mm)及び倍数25倍(密度48kg/m
3)の発泡成形体を得た。
【0048】
<比較例5>
ポリカーボネート系樹脂として、三菱エンジアニンリングプラスチックス社製のユーピロンS−1000N(密度1.2×10
3kg/m
3、MFR8g/10分、平均粒子径3mm)を使用したこと以外は実施例1と同様にして嵩倍数24倍(見かけ密度50kg/m
3)の1次発泡粒子(平均粒子径6mm)及び倍数19倍(密度63g/m
3)の発泡成形体を得た。
<比較例6>
ポリカーボネート系樹脂として、三菱エンジアニンリングプラスチックス社製のユーピロンS−2000N(密度1.2×10
3kg/m
3、MFR10g/10分、平均粒子径3mm)を使用したこと以外は実施例1と同様にして嵩倍数20倍(見かけ密度60kg/m
3)の1次発泡粒子(平均粒子径5.5mm)及び倍数18倍(密度67kg/m
3)の発泡成形体を得た。
【0049】
<比較例7>
ポリカーボネート系樹脂として、三菱エンジアニンリングプラスチックス社製のユーピロンS−3000N(密度1.2×10
3kg/m
3、MFR15g/10分、平均粒子径3mm)を使用したこと以外は実施例1と同様にして嵩倍数15倍(見かけ密度80kg/m
3)の1次発泡粒子(平均粒子径5mm)及び倍数14倍(密度86kg/m
3)の発泡成形体を得た。
【0050】
実施例及び比較例の平均気泡径C、ポリカーボネート系樹脂の密度ρ、1次発泡粒子の見かけ密度D、発泡成形体の密度D、気泡密度X、成形サイクルの評価、強度の評価、外観の評価及び成形性の評価を表1及び2に示す。
【0051】
また、実施例及び比較例の発泡粒子の切断面の全体写真及び拡大写真を
図1(a)〜
図12(b)に、実施例1の発泡成形体の切断面の拡大写真を
図13に示す。
図1(a):実施例1、
図2(a):実施例2、
図3(a):実施例3、
図4(a):実施例4、
図5(a):実施例5、
図6(a):比較例1、
図7(a):比較例2、
図8(a):比較例3、
図9(a):実施例4、
図10(a):比較例5、
図11(a):比較例6、
図12(a):比較例7は10倍の写真である。
図1(b):実施例1は80倍、
図2(b):実施例2は100倍、
図3(b):実施例3、
図4(b):実施例4、
図5(b):実施例5は150倍、
図13は200倍の写真である。
図6(b):比較例1は60倍、
図7(b):比較例2、
図8(b):比較例3、
図10(b):比較例5、
図11(b):比較例6、
図12(b):比較例7、
図9(a):比較例4は40倍の写真である。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
上記表1及び2から、気泡密度Xを特定の範囲とすることで、外観及び融着性が良好な発泡成形体が得られることが分かる。