特許第6353808号(P6353808)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6353808
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】油圧制御装置
(51)【国際特許分類】
   F01L 1/356 20060101AFI20180625BHJP
【FI】
   F01L1/356 E
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-80461(P2015-80461)
(22)【出願日】2015年4月9日
(65)【公開番号】特開2016-200057(P2016-200057A)
(43)【公開日】2016年12月1日
【審査請求日】2017年9月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080045
【弁理士】
【氏名又は名称】石黒 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100124752
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 真司
(72)【発明者】
【氏名】大江 修平
(72)【発明者】
【氏名】藤吉 俊希
(72)【発明者】
【氏名】横山 友
(72)【発明者】
【氏名】藤村 治仁
【審査官】 楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−254637(JP,A)
【文献】 特開平08−028219(JP,A)
【文献】 特開2011−132933(JP,A)
【文献】 特開2009−041413(JP,A)
【文献】 特開2014−190295(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 1/356
F16K 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプール(10)の往復動により、このスプール(10)を摺動保持するスリーブ(9)の具備する複数のポート(14、16、18、22)を前記スプール(10)により閉じたり開いたりすることで前記複数のポート(14、16、18、22)間の連通遮断を切り替え、ベーン式のバルブタイミング調整装置の進角室(7)または遅角室(8)に作動油を供給したり、前記進角室(7)または前記遅角室(8)から作動油を排出したりする電磁弁(3)と、
この電磁弁(3)の通電量を制御することで前記スプール(10)の往復動を制御し、前記進角室(7)と前記遅角室(8)の油圧差を制御する制御手段(4)とを備える油圧制御装置(1)において、
前記制御手段(4)は、前記複数のポート(14、16、18、22)のいずれかを前記スプール(10)により閉じる際に、前記スプール(10)と前記ポート(16)との間に形成される開口隙間が所定値以下の場合に前記スプール(10)の移動速度を増加させることを特徴とする油圧制御装置(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の油圧制御装置(1)において、
前記電磁弁(3)には、フィルタ(20)を通過した作動油が供給され、
前記所定値は、前記フィルタ(20)の目開きの大きさとなっていることを特徴とする油圧制御装置(1)。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の油圧制御装置(1)において、
前記スプール(10)は、前記電磁弁(3)への通電量に応じてスリーブ(9)内での位置が決定され、
前記制御手段(4)は、前記電磁弁(3)の通電量を、前記開口隙間が前記所定値以上の位置に対する通電量と、前記ポート(18)が前記スプール(10)により閉じられる位置に対する通電量との間でステップ状に変化させることを特徴とする油圧制御装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧制御装置、特に、ベーン式のバルブタイミング調整装置の進角室と遅角室の油圧差を制御する油圧制御装置に係る。
【背景技術】
【0002】
従来から、以下の電磁弁と制御手段とを備えた油圧制御装置が周知となっている。
電磁弁は、スプールの往復動により、このスプールを摺動保持するスリーブの具備する複数のポートをスプールにより閉じたり開いたりすることで複数のポート間の連通遮断を切り替え、ベーン式のバルブタイミング調整装置の進角室または遅角室に作動油を供給したり、進角室または遅角室から作動油を排出したりする。
制御手段は、電磁弁の通電量を制御することでスプールの往復動を制御し、進角室と遅角室の油圧差を制御する。
【0003】
ところで、作動油には金属粉等の異物が混入していることがあり、ポートを閉じる際にこの異物がポートとスプールの隙間に嵌り込み、異物を噛みこんでしまいスプールの動作を妨げるという問題があった(図9参照。)。
そこで、所定期間、異物の噛みこみの有無にかかわらず、大きな駆動量でスプールを駆動させることで強制的に異物を排除する差圧調整装置の構成が公知となっている(特許文献1参照。)。
【0004】
しかし、特許文献1の差圧調整装置は異物のスプールへの噛みこみが発生したことが前提、すなわち、スプールへの異物噛みこみ発生後の対処法であり、スプールへの異物の噛みこみ自体の発生を抑制する構成とはなっていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-41413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、電磁弁のスプールへの異物の噛みこみの発生を抑制する油圧制御装置を提供することにある。
【0007】
本願発明によれば、油圧制御装置は、以下に述べる電磁弁と制御手段とを備える。
電磁弁は、スプールの往復動により、このスプールを摺動保持するスリーブの具備する複数のポートをスプールにより閉じたり開いたりすることで複数のポート間の連通遮断を切り替え、ベーン式のバルブタイミング調整装置の進角室または遅角室に作動油を供給したり、進角室または遅角室から作動油を排出したりする。
制御手段は、この電磁弁の通電量を制御することでスプールの往復動を制御し、進角室と遅角室の油圧差を制御する。
そして、制御手段は、複数のポートのいずれかをスプールにより閉じる際に、スプールとポートとの間に形成される開口隙間が所定値以下の場合にスプールの移動速度を増加させる。
【0008】
これにより、スプールとポートとの間に形成される開口隙間が所定値を下回る領域をスプールが迅速に通過し、ポートを閉じることができる。
このため、スプールとポートとの間に形成される開口隙間が所定値を下回る領域内にスプールが存する時間が短くなり、異物の噛みこみの可能性を抑制できる。
この結果、油圧制御装置において電磁弁のスプールへの異物の噛みこみの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】油圧制御装置の説明図である(実施例)。
図2】電磁弁の動作説明図である(実施例)。
図3】スプール位置と開口隙間、および、通電量の説明図である(実施例)。
図4】位相、通電量、および、スプールの時間変化の説明図である(実施例)。
図5】制御フロー図である(実施例)。
図6】通電量のステップ状変化の説明図である(実施例)。
図7】制御フロー図である(変形例)。
図8】制御フロー図である(変形例)。
図9】異物のスプールへの噛みこみ説明図である(従来例)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明を実施するための形態を実施例に基づいて説明する。
【実施例】
【0011】
実施例では、油圧制御装置1を用いたベーン式のバルブタイミング調整装置の一例を示す。
バルブタイミング調整装置は、図1に示すように、内燃機関のクランク軸(図示しない。)に対するカム軸(図示しない。)の位相を進角側または遅角側に変化させる油圧駆動部2と、この油圧駆動部2に対する作動油の供給および排出を制御する電磁弁3と、電磁弁3を制御する制御手段であるECU4を備える。
電磁弁3は、ECU4によって所定の位相制御実行条件が成立するときにカム軸の実位相を内燃機関の運転状態に応じた目標位相に一致させるように通電量がフィードバック制御されている。
【0012】
油圧駆動部2は、クランク軸より駆動力が伝達されて回転するハウジング5と、カム軸に連結されてハウジング5の内部に収容されるロータ6とで構成される。
ハウジング5は、クランク軸から駆動力が伝達されることで、クランク軸と連動して図1に矢印で示す時計方向に回転する。このハウジング5には、径方向の内側に突出する複数の仕切部5aが略等間隔に設けられ、周方向に隣合う仕切部5aと仕切部5aとの間に扇状の収容室が形成されている。
【0013】
ロータ6は、カム軸に固定されるボス部6aと、このボス部6aの径方向外側に突出する複数のベーン6bとを有し、このベーン6bがハウジング5の収容室に配置されて、収容室を進角室7と遅角室8とに二分している。
【0014】
電磁弁3は、内周に筒状の滑り面の形成されるスリーブ9と、このスリーブ9の内部に収容されるスプール10と、スプール10を一方側(図1の左方向)に付勢するリターンスプリング11と、このリターンスプリング11の付勢力に抗してスプール10を軸方向に駆動する電磁アクチュエータ(図示しない。)より構成される。
電磁アクチュエータは、例えば、内蔵するコイルに通電されて電磁石を形成し、その電磁石の吸引力を利用してスプール10を他方側(図1の右方向)に駆動するソレノイドである。
【0015】
スリーブ9には、供給油路12を通じて油圧ポンプ13より作動油が供給される供給ポート14と、進角油路15を通じて進角室7に接続される進角ポート16と、遅角油路17を通じて遅角室8に接続される遅角ポート18が形成されている。
なお、油圧ポンプ13は、例えば、クランク軸によって駆動されるメカポンプであり、内燃機関の運転中は、オイルパン19から汲み上げた作動油を継続して供給ポート14に供給する。
なお、供給油路12には、フィルタ20が設けられており、フィルタ20を通過した作動油が電磁弁3に供給される。
【0016】
スプール10はスリーブ9の内側で軸方向へ伸びるように中空筒状に形成されている。
ここで、スプール10の内部空間は、ドレイン通路21となっている。
スリーブ9の他方側は、軸方向に貫通するドレインポート22となっており、ドレイン通路21とドレインポート22とは連通しており、それぞれ同軸となるように配されている。
なお、スリーブ9に設けられた供給ポート14、進角ポート16、遅角ポート18、および、ドレインポート22は、それぞれを特段区別しない場合は単にポートと呼ぶことがある。
【0017】
スプール10の外壁には、一方側から順に進角ドレインポート23、進角溝24、遅角溝25、ドレイン溝26、および、遅角ドレインポート27を有している。
進角ドレインポート23および遅角ドレインポート27は径方向に貫通しており、ドレイン通路21と連通している。
進角ドレインポート23は、図2(c)に示すように、スプール10の軸方向位置に応じて進角ポート16とドレイン通路21とを連通させる。
遅角ドレインポート27は、図2(a)に示すように、スプール10の軸方向位置に応じて遅角ポート18とドレイン通路21とを連通させる。
【0018】
進角溝24、遅角溝25、および、ドレイン溝26は周方向に延びる環状溝である。進角溝24は、図2(a)に示すようにスプール10の軸方向位置に応じて供給ポート14と進角ポート16とを連通させる。
遅角溝25は、図2(c)に示すようにスプール10の軸方向位置に応じて供給ポート14と遅角ポート18とを連通させる。
ドレイン溝26は、図2(a)に示すようにスプール10の軸方向位置に応じて遅角ポート18と遅角ドレインポート27とを連通させる。
【0019】
なお、スプール10は図1に示すようにストッパ30に当接している時の軸方向位置が原位置である。スプール10の軸方向位置が原位置であるとき、供給ポート14は他のポートとの連通が遮断されている。
【0020】
図2(a)に示すように、スプール10が原位置から所定距離だけ他方側に移動したとき、供給ポート14は、進角溝24を介して進角ポート16に連通し、遅角ポート18はドレイン溝26を介して遅角ドレインポート27に連通する。
これにより、進角室7に作動油が供給されつつ遅角室8から作動油が排出される。
このため、進角室7と遅角室8との油圧差によってロータ6がハウジング5に対し進角側に相対回動する進角作動状態となる。
【0021】
図2(b)に示すように、スプール10が進角作動状態から所定距離だけ他方側に移動したとき、進角ポート16および遅角ポート18はスプール10によって閉じられ、供給ポート14、進角ポート16、および、遅角ポート18は他のポートとの連通が遮断される。
これにより、進角室7および遅角室8の作動油が保持され、ロータ6とハウジング5との相対回動が阻止され、回転位相の保持される保持作動状態となる。
【0022】
図2(c)に示すように、スプール10が保持作動状態から所定距離だけ他方側に移動したとき、供給ポート14は、遅角溝25を介して遅角ポート18に連通し、進角ポート16は進角ドレインポート23を介してドレイン通路21に連通する。
これにより、遅角室8に作動油が供給されつつ進角室5から作動油が排出される。
このため、進角室7と遅角室8との油圧差によってロータ4がハウジング3に対し遅角側に相対回動する遅角作動状態となる。
【0023】
よって、電磁弁3は、スプール10の往復動により、このスプール10を摺動保持するスリーブ9の具備する複数のポート14、16、18、22をスプール10により閉じたり開いたりすることで複数のポート14、16、18、22間の連通遮断を切り替え、ベーン式のバルブタイミング調整装置の進角室7または遅角室8に作動油を供給したり、進角室7または遅角室8から作動油を排出したりする。
そして、ECU4によって電磁弁3の通電量が制御されることでスプール10の往復動が制御され、進角室7と遅角室8の油圧差が制御され、進角作動状態、保持作動状態、遅角作動状態の何れかが実現される。
【0024】
本実施例における電磁弁3のスプール10の軸方向位置と、スプール10と各ポートとの間に形成される開口隙間との関係を図3(a)に、スプール10の軸方向位置と電磁弁3への通電量の関係を図3(b)に示す。
なお、スプール10と各ポートとの間に形成される開口隙間とはスプール10の外壁と各ポートの内壁とを外縁として形成される最小面積部を、この最小面積部を構成するスプール10の外壁部分の長さで除した値であり、機械的な設計によって決定される。
【0025】
図3(a)において、遅角ドレインと記されているラインは、遅角ポート18とスプール10との間に形成される開口隙間のスプール10の軸方向位置との関係を表している。この場合、図2(a)に示すように、遅角ポート18はドレイン溝26を介して遅角ドレインポート27に連通している状態となっている。
また、進角供給と記されているラインは、進角ポート16とスプール10との間に形成される開口隙間のスプール10の軸方向位置との関係を表している。この場合、図2(a)に示すように、進角ポート16は進角溝24を介して供給ポート14に連通している状態となっている。
【0026】
遅角供給と記されているラインは、遅角ポート18とスプール10との間に形成される開口隙間のスプール10の軸方向位置との関係を表している。この場合、図2(c)に示すように、遅角ポート18は、遅角溝25を介して供給ポート14に連通している状態となっている。
進角ドレインと記されているラインは、進角ポート16とスプール10との間に形成される開口隙間のスプール10の軸方向位置との関係を表している。この場合、図2(c)に示すように、進角ポート16は、進角ドレインポート23を介してドレイン通路21に連通している状態となっている。
なお、進角供給ラインと遅角供給ラインとの間のスプール10の軸方向位置においては、スプール10は、図2(b)において示されるような保持作動状態となっている。
【0027】
また、図3(b)に示すようにスプール10の軸方向位置と電磁弁3への通電量の関係は1対1の関係となっている。
すなわち、スプール10は電磁弁3への通電量に応じてスリーブ9内での位置が決定される。
また、図1に示すスプール10の原位置を原点とし、スプール10の他方側への軸方向位置を正としたとき、スプール10は通電量の増加に伴って単調に軸方向位置が増加する関係となっている。
なお、スプール10の軸方向位置と電磁弁3への通電量の関係は、予め実験用ベンチ等で取得されている。
【0028】
電磁弁3の動作の具体例について、図3(a)における遅角供給ラインを用いて説明する。
図3(a)における開口隙間が所定値以下の領域に対応するスプール10の軸方向位置の範囲は、図3(b)におけるSp1とSp2との間の範囲、電磁弁3の通電量の範囲は図3(b)におけるIf1とIf2との間の範囲となる。
なお、If2は、開口隙間が所定値の位置Sp2に対する通電量であり、If1は遅角ポート18がスプール10により閉じられる位置Sp1に対する通電量である。
ここで、所定値は、作動油の通過するフィルタ20の目開きの大きさとなっている。
【0029】
電磁弁3が、ECU4によってカム軸の実位相を内燃機関の運転状態に応じた目標位相に一致させるように制御が開始された場合を考える。
この場合、図4(b)に示すように電磁弁3への通電量が一旦上昇し漸減するように制御されることで、図4(c)に示すようにスプール位置も同様に変化し、通電量の上昇に伴い先ず遅角ポート18が開かれ、その後の通電量の漸減に伴い遅角ポート18が徐々に閉じられる。そして、実位相は、図4(a)に示すように目標位相に徐々に近づきながら最終的に目標位相へと到達する。
【0030】
ここで、電磁弁3への通電量が漸減し、通電量の値がIf2とIf1との間を通過する場合を考える。
この場合、図4(b)に示すように、ECU4によって、電磁弁3の通電量は、開口隙間が所定値の位置Sp2に対する通電量If2と、ポート18がスプール10により閉じられる位置Sp1に対する通電量If1との間でステップ状に変化するように制御されている。
【0031】
ここで、ECU4による電磁弁3への通電量の制御について、より具体的に述べる。
ECU4において電磁弁3への通電量指令値が決定され、この通電量指令値に基づいた通電量が電磁弁3に与えられている。
【0032】
ECU4による制御の具体例を図5のフロー図を用いて説明する。
先ず、S100では、バルブタイミング調整装置において、所定の位相制御実行条件が成立し位相制御を行っているか否かを判定する。
位相制御を行っている場合はS110へ移行する。
なお、位相制御を行っていない場合には、位相制御の必要性が生じるまで、S100の判定が繰り返される。
【0033】
S110では、カム軸の実位相を内燃機関の運転状態に応じた目標位相に一致させるように通電量指令値Ifが算出される。
そして、算出された通電量指令値IfがIf1とIf2の間の値であるか否かを判定する。
通電量指令値IfがIf1とIf2の間の値である場合、S120へ移行する。
また、通電量指令値IfがIf1とIf2の間の値でない場合、S150に移行し、電磁弁1への通電量指令値をIfのままとして、S160に移行して電磁弁3に通電し処理を終了する。
【0034】
S120では、通電量指令値IfがIsより大きいか否か判定される。
なお、Isは、図6に示すように、If1とIf2の間の所定の値となっている。
通電量指令値IfがIsより大きいとき、S130に移行し、電磁弁3への通電量指令値をIf2としてS160に移行して電磁弁3に通電して処理を終了する。
通電量指令値IfがIsより小さいとき、S140に移行し、電磁弁3への通電量指令値をIf1としてS160に移行して電磁弁3に通電して処理を終了する。
なお、図6は、電磁弁3への通電量の時間変化を表したものである。また、従来例による通電量の変化も点線で付記している。
【0035】
〔実施例の効果〕
実施例の油圧制御装置1は、以下に述べる電磁弁3とECU4とを備える。
電磁弁3は、スプール10の往復動により、このスプール10を摺動保持するスリーブ9の具備する複数のポート14、16、18、22をスプール10により閉じたり開いたりすることで複数のポート14、16、18、22間の連通遮断を切り替え、ベーン式のバルブタイミング調整装置の進角室7または遅角室8に作動油を供給したり、進角室7または遅角室8から作動油を排出したりする。
ECU4は、この電磁弁3の通電量を制御することでスプール10の往復動を制御し、進角室7と遅角室8の油圧差を制御する。
そして、ECU4は、複数のポート14、16、18、22のいずれかをスプール10により閉じる際に、スプール10とポート18との間に形成される開口隙間が所定値以下の場合にスプール10の移動の移動速度を増加させる。
【0036】
これにより、スプール10とポート18との間に形成される開口隙間が所定値を下回る領域をスプール10が迅速に通過し、ポート18を閉じることができる。
このため、スプール10とポート18との間に形成される開口隙間が所定値を下回る領域内にスプール10が存する時間が短くなり、異物の噛みこみの可能性を抑制できる。
この結果、油圧制御装置1において電磁弁3のスプール10への異物の噛みこみの発生を抑制することができる。
【0037】
また、実施例の油圧制御装置1において、電磁弁3には、フィルタ20を通過した作動油が供給され、所定値は、作動油の通過するフィルタの目開きの大きさとなっている。
これにより、フィルタ20を通過した異物を対象の大きさとすれば良くなる。
【0038】
また、実施例の油圧制御装置1において、スプール10は電磁弁3への通電量に応じてスリーブ9内での位置が決定され、ECU4は、電磁弁3の通電量を、開口隙間が所定値の位置Sp2に対する通電量If2と、ポート18がスプール10により閉じられる位置Sp1に対する通電量If1との間でステップ状に変化させる。
【0039】
これにより、スプール10の位置の時間変化率である移動速度を最速とすることができる。
このため、最短時間でポート18をスプール10で閉じることができ、スプール10への異物の噛みこみをより抑制することができる。
【0040】
[変形例]
本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形例を考えることができる。
実施例においては、図5に示すフロー図に従って通電量をステップ状に変化させることでスプール10の移動速度を増加させていたが、この態様に拘るものではない。
例えば、図7に示すフロー図に従って通電量を変化させてもよい。
【0041】
図7のフロー図では、先ず、S200において、バルブタイミング調整装置における所定の位相制御実行条件が成立し位相制御を行っているか否かを判定する。
位相制御を行っている場合はS210へ移行する。
なお、位相制御を行っていない場合には、位相制御の必要性が生じるまで、S200の判定が繰り返される
【0042】
S210では、カム軸の実位相を内燃機関の運転状態に応じた目標位相に一致させるように通電量指令値Ifが算出される。
そして、算出された通電量指令値IfがIf1とIf2の間の値か否かを判定する。
通電量指令値IfがIf1とIf2の間の値である場合、S220へ移行する。
また、通電量指令値IfがIf1とIf2の間の値でない場合、S250に移行し、電磁弁1への通電量指令値をIfのままとして、S260に移行して電磁弁3に通電し処理を終了する。
【0043】
S220では、必要なスプール速度を算出する。
ここで、必要なスプール速度は、スプール10とポート18との間に形成される開口隙間が所定値を下回る領域内にスプール10が存する時間が、開口隙間を流れる作動油の流速と作動油の異物濃度から確率的に求まる開口隙間の異物通過個数が所定値未満となるように求められる。
なお、この所定値を1個とすることがより好ましい。
【0044】
そして、必要なスプール速度が求まると、必要なスプール10の駆動力も求まり、そのために電磁弁3に通電する必要な通電量Imも求まる。
そして、S230に移行し通電量指令値をImとし、S260に移行して電磁弁3に通電し処理を終了する。
これにより、スプール10の移動速度を必要十分な値に調整することができる。
【0045】
さらに、図8に示すフロー図に従って通電量を変化させてもよい。
この場合、S340までは、図7のフロー図と同じであるが、S350にてスプール10の移動速度からスプール10の位置を把握している。
そして、S360に移行して、スプール10の位置が予め設定された制動位置に達したか否かを判定する。
スプール10の位置が制動位置に達した場合はS370へ移行する。
なお、スプール10の位置が制動位置に達していない場合には、スプール10の位置が制動位置に達するまで、S360の判定が繰り返される
【0046】
S370においては、必要なスプール10の制動力を求め、電磁弁3に通電する必要な通電量Ibを求める。
そして、S380に移行し通電量指令値をIbとし、S400に移行して電磁弁3に通電し処理を終了する。
これにより、スプール10の移動速度の上がり過ぎを抑制することができ、スプール10のスリーブ9への衝突等を抑制することができる。
【0047】
実施例においては、電磁弁3への通電量によりスプール10の軸方向位置が規定されていたが、スプール10の位置を直接的に変位センサ等で把握することにより、軸方向位置を把握してもよい。
これにより、スプール10の軸方向位置と電磁弁3への通電量の関係を、予め実験用ベンチ等で取得する必要がなくなる。
【0048】
また、実施例においては、ECU4は、電磁弁3の通電量を、開口隙間が所定値の位置に対する通電量と、ポート18がスプール10により閉じられる位置に対する通電量との間でステップ状に変化させていたが、開口隙間が所定値より大きな位置に対する通電量との間で通電量をステップ状に変化させてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 油圧制御装置 2 油圧駆動部 3 電磁弁 4 ECU(制御手段) 7 遅角室8 遅角室 9 スリーブ 10 スプール 14 供給ポート(ポート)
16 進角ポート(ポート) 18 遅角ポート(ポート)
22 ドレインポート(ポート)

図1
図2
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図9