特許第6353820号(P6353820)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6353820-使い捨てカイロ及びその製造方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6353820
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】使い捨てカイロ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 7/03 20060101AFI20180625BHJP
【FI】
   A61F7/08 334B
   A61F7/08 334X
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-192994(P2015-192994)
(22)【出願日】2015年9月30日
(65)【公開番号】特開2017-64029(P2017-64029A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2017年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000550
【氏名又は名称】オカモト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100118898
【弁理士】
【氏名又は名称】小橋 立昌
(72)【発明者】
【氏名】内山 仁志
【審査官】 立花 啓
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−111440(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 7/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化反応によって発熱する粉粒状の発熱体と、前記発熱体が収容されてその少なくとも一方側に通気面を有する袋体とからなる使い捨てカイロであって、
前記袋体の前記通気面は、繊維の間に連通孔を有する繊維層と、前記繊維層に対して熱可塑性樹脂が挟まれるように熱圧着されるとともに連続状の気泡及び気泡壁を有する発泡層と、を備え、
前記繊維層及び前記発泡層は、熱溶融した前記熱可塑性樹脂の前記連通孔及び前記気泡への侵入により前記繊維及び前記気泡壁に沿って形成されている積層部と、前記連通孔及び前記気泡に沿って形成される微細孔と、を有することを特徴とする使い捨てカイロ。
【請求項2】
前記繊維層の内側に、所定サイズの通気孔を有する通気層と、前記通気層を前記繊維と部分的に接着する網状の接着剤と、を備えることを特徴とする請求項1記載の使い捨てカイロ。
【請求項3】
前記繊維層として目付量が20〜40g/m2の不織布を用い、前記熱可塑性樹脂として目付量が15〜30g/m2のポリエチレンを用いることを特徴とする請求項1又は2記載の使い捨てカイロ。
【請求項4】
酸化反応によって発熱する粉粒状の発熱体と、前記発熱体が収容されてその少なくとも一方側に通気面を有する袋体とからなる使い捨てカイロの製造方法であって、
繊維の間に連通孔を有する繊維層に対し、熱可塑性樹脂を溶融して押し出す押出ラミネート工程と、
前記繊維層に対し、連続状の気泡及び気泡壁を有する発泡層を前記熱可塑性樹脂が挟まれるように熱圧着して接着させる熱ラミネート工程と、を含み、
前記熱ラミネート工程は、前記熱可塑性樹脂を前記熱可塑性樹脂の融点よりも高く且つ前記繊維層及び前記発泡層の融点よりも低い温度で溶融して圧着させることにより、溶融した前記熱可塑性樹脂が前記連通孔及び前記気泡に侵入して、前記繊維層及び前記気泡壁に沿って前記熱可塑性樹脂が積層され、前記連通孔及び前記気泡に沿って微細孔を形成することを特徴とする使い捨てカイロの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気性のある袋体に収納された発熱体を、この袋体内で酸化反応させることにより発熱させる使い捨てカイロ、及び、その物を生産する製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の使い捨てカイロとして、袋体の内皮が通気孔を有するポリエチレンやポリプロピレン等の樹脂フィルムで構成され、外皮の全体が連続気泡を有する軟質ポリウレタン発泡体シートで構成され、これら内皮及び外皮を引き揃えて合わせるか、又は、内皮及び外皮をラミネートして一体化した後に、その外周端縁をヒートシールすることで、鉄粉や活性炭や水等を成分とする発熱性組成物が内蔵される袋状に形成した保温袋がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平03−009694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし乍ら、このような従来の使い捨てカイロでは、内皮となるポリエチレンやポリプロピレン等の樹脂フィルムに、小さな口径の通気孔を空けることが困難である。これにより、発熱性組成物(発熱体)において特に粒径の小さい活性炭が通気孔を通って漏れ出し易く、欠陥品となってしまうという問題があった。
詳しく説明すると、現状でポリエチレンやポリプロピレン等の樹脂フィルムに、粒径の小さい活性炭よりも小さな口径の針孔を、袋体の表面全体に亘って均一に開けるには限度がある。通気孔の口径を必要以上に小さくすると、自己融着などで一部の通気孔が詰まるなど、部分的に通気量のバラツキが生じたり、全体的に通気量が不足したりする。
これら通気量のバラツキや全体的な通気量の不足により、発熱体を十分に酸化反応できず、発熱体の最高温度が低下してしまうという問題があった。
さらに、発熱体の酸化反応に伴って発生する水蒸気の量が、通気孔を通って抜け出る水蒸気の量よりも多くなった場合には、袋体が全体的に膨張してしまうという問題もあった。
ところで、例えば冬季の屋外活動(アウトドア)やウインタースポーツの観戦時などの特に低温時に使用する使い捨てカイロとして、使用開始してからすぐに温かくなる、立ち上がり速度が従来製品よりも速くで且つ最高温度が従来製品よりも高い、即暖性(速暖性)に優れた使い捨てカイロの要望がある。
しかし、特許文献1に記載のものでは、袋体の通気面全体に、粒径の小さい活性炭よりも口径が小さい通気孔を均一に形成不能なため、即暖性(速暖性)に優れた使い捨てカイロが作製できなかった。
また、特許文献1に記載のものにおいて、ポリエチレンやポリプロピレン等の樹脂フィルムで構成される内皮と、軟質ポリウレタン発泡体シートで構成される外皮を引き揃えて合わせた後に、その外周端縁がヒートシールされる袋体を用いた場合には、内皮及び外皮が剥離して接合強度に劣り、袋体が破れ易いという問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を達成するために、本発明による使い捨てカイロ及びその製造方法は、以下の独立請求項に係る構成を少なくとも具備するものである。
[請求項1] 酸化反応によって発熱する粉粒状の発熱体と、前記発熱体が収容されてその少なくとも一方側に通気面を有する袋体とからなる使い捨てカイロであって、
前記袋体の前記通気面は、繊維の間に連通孔を有する繊維層と、前記繊維層に対して熱可塑性樹脂が挟まれるように熱圧着されるとともに連続状の気泡及び気泡壁を有する発泡層と、を備え、
前記繊維層及び前記発泡層は、熱溶融した前記熱可塑性樹脂の前記連通孔及び前記気泡への侵入により前記繊維及び前記気泡壁に沿って形成されている積層部と、前記連通孔及び前記気泡に沿って形成される微細孔と、を有することを特徴とする使い捨てカイロ。
[請求項4] 酸化反応によって発熱する粉粒状の発熱体と、前記発熱体が収容されてその少なくとも一方側に通気面を有する袋体とからなる使い捨てカイロの製造方法であって、
繊維の間に連通孔を有する繊維層に対し、熱可塑性樹脂を溶融して押し出す押出ラミネート工程と、
前記繊維層に対し、連続状の気泡及び気泡壁を有する発泡層を前記熱可塑性樹脂が挟まれるように熱圧着して接着させる熱ラミネート工程と、を含み、
前記熱ラミネート工程は、前記熱可塑性樹脂を前記熱可塑性樹脂の融点よりも高く且つ前記繊維層及び前記発泡層の融点よりも低い温度で溶融して圧着させることにより、溶融した前記熱可塑性樹脂が前記連通孔及び前記気泡に侵入して、前記繊維層及び前記気泡壁に沿って前記熱可塑性樹脂が積層され、前記連通孔及び前記気泡に沿って微細孔を形成することを特徴とする使い捨てカイロの製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の実施形態に係る使い捨てカイロを示す説明図であり、袋体の通気面を部分拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態に係る使い捨てカイロAは、図1に示すように、発熱材1が袋体2に収納され、袋体2において少なくとも一方側に形成される通気面20を通過した空気により、発熱材1が酸化反応して発熱するものである。
発熱体1としては、鉄粉、活性炭1a、バーミキュライトを入れたものが一般的であり、通常触媒として塩及び水なども入れられている。
発熱体1の中で粒径が最も小さいものは、活性炭1aである。発熱体1として用いられる活性炭1aの粒径の平均値は、約11μm程度あり、そのほとんどの粒径が0.10mm以下、詳しくは0.05mm以下である。
【0008】
袋体2は、通気性が有る通気性シートや通気性が無い非通気性シートなどを重ね合わせ、その外周が接着されることで、その内部に発熱体1の封入空間を形成している。
通気性シートや非通気性シートは、一般的に略矩形状に裁断され、その外周を額縁状にヒートシールで溶着するが、その他の形状に裁断したり、ヒートシール以外の接着手段で接着したり変更することも可能である。
袋体2の具体例としては、「両面通気型」と「片面通気型」がある。「両面通気型」は、重ね合わされた二枚の通気性シートの外周を接着することで、両方側に通気面20が形成される。「片面通気型」は、重ね合わされた通気性シート及び非通気性シートの外周を接着することで、一方側に通気面20が形成され、他方側には非通気面(図示しない)が形成される。
ところで、袋体2を用途から分類すると、肌着やその他の衣類などに貼り付けて使用する「貼るタイプ」と、「貼らないタイプ」がある。
「貼るタイプ」の袋体2としては、「片面通気型」の前記非通気面を、粘着剤が塗布されるなど、貼り付け面として利用することが一般的である。また、その他には、「両面通気型」や「片面通気型」の通気面20を、その一部に粘着剤が塗布されるなど、貼り付け部として利用することも可能である。
「貼らないタイプ」の袋体2としては、主に「両面通気型」が用いられる。この場合には、その外側を外袋で密封包装して使用する。
また、その他には、通気性シートが内側で非通気性シートが外側になるように折り曲げて二つ折りにし、その三辺がヒートシールなどで着脱自在に接着されたものを用いることも可能である。この場合には、接着箇所を剥離することで、通気面20が露出可能となるため、外袋が不要な外装レスとなる。
【0009】
そして、袋体2が「両面通気型」である場合は、そのいずれか一方側又は両方側には、図1に示されるように、後述する構造の通気面20を構成する通気性シート2Sが用いられる。
袋体2が「片面通気型」である場合は、その一方側には、図1に示されるように、後述する構造の通気面20を構成する通気性シート2Sが用いられる。
なお、袋体2が「両面通気型」である場合には、その他方側に後述する構造の通気面20を構成しない別構造の通気性シート(図示しない)を用いることも可能である。
【0010】
袋体2において通気面20を構成する通気性シート2Sは、図1に示されるように、繊維21aの間に連通孔21bを有する繊維層21と、連続した気泡22aを有する発泡層22と、を主要な構成要素として備えている。
繊維層21及び発泡層22は、熱可塑性樹脂23が熱可塑性樹脂23の融点よりも高く且つ繊維層21及び発泡層22の融点よりも低い温度で溶融し圧着され、繊維層21の連通孔21b及び発泡層22の気泡22aに沿って形成される微細孔23aを有している。
さらに、繊維層21の内側には、所定サイズの通気孔24aを有する通気層24と、通気層24を繊維層21の繊維21aと部分的に接着する網状の接着剤25と、を備えることが好ましい。
すなわち、通気面20は、袋体2の外側に発泡層22を配置し、袋体2の内側で発熱体1と接する面に通気層24を配置し、これら発泡層22及び通気層24の中間に繊維層21を配置することが好ましい。
【0011】
繊維層21は、後述する熱可塑性樹脂23よりも耐熱性を有するポリエチレンテレフタレート(PET)などポリエステル系樹脂、ナイロンなどのポリアミド系樹脂、レーヨンなどセルロース系樹脂からなる不織布などで構成される。
繊維層21の具体例としては、加工安定性とコスト性から判断すると、その目付量が20〜40g/m2、詳しくは約30±3g/m2のPET製不織布を用いることが好ましい。
【0012】
発泡層22は、後述する熱可塑性樹脂23よりも耐熱性を有する発泡ポリウレタン(PU)などからなる発泡樹脂で構成される。
発泡層22の具体例としては、加工安定性とコスト性から判断すると、その厚みが0.7〜3.0mm、詳しくは約1.0±0.3mmにスライスした発泡PUを用いることが好ましい。
なお、発泡PUの厚みが3.0mmを超えると、過度な断熱性を有してヒートシール加工に支障があるとともに、コスト高となって好ましくない。
【0013】
熱可塑性樹脂23としては、ポリエチレン(PE)などのオレフィン系樹脂が用いられ、加熱溶融することにより、繊維層21の繊維21aや発泡層22の気泡壁22bに沿って所定厚みの膜状に積層される。
熱可塑性樹脂23の具体例としては、その目付量が15〜30g/m2、詳しくは22.0±5.5g/m2のPEを用いることが好ましい。
なお、PEの目付量が15.0/m2未満であると、繊維層21の繊維21aに積層した際の厚みが肉薄になり、繊維21aの間に形成される連通孔21bの孔サイズが、活性炭1aの粒径よりも大きくなるために好ましくない。
また、PEの目付量が30g/m2を超えると、繊維層21の繊維21aに積層した際の厚みが肉厚になり、繊維21aの間に形成した連通孔21bの孔サイズが、小さくなり過ぎて通気度を低下させるために好ましくない。
図1に示される例の場合には、発泡層22の厚み方向において繊維層21側に配置される気泡壁22bのみに、加熱溶融した熱可塑性樹脂23を積層している。その他の例として図示しないが、加熱溶融した熱可塑性樹脂23が積層される領域を変えて、発泡層22の厚み方向全体の気泡壁22bに、加熱溶融した熱可塑性樹脂23を積層するように変更することも可能である。
【0014】
通気面20の最内面となる通気層24は、柔軟性に優れた低融点樹脂、例えば低密度ポリエチレン(LDPE)、詳しくは直鎖状(線状)低密度ポリエチレン(LLDPE)などからなるフィルムで構成することが好ましい。
この場合には、袋体2の製造過程のおいて通気面20となる通気性シート2S同士を接着する時に、通気層24同士が重なり合って接するために低温のヒートシールを可能にし、袋体2の製造を容易にすることができる。
通気層24には、そのフィルム全体に亘って所定サイズの通気孔24aが複数それぞれ所定間隔毎に開設されている。
通気孔24aは、通気層24となるフィルムに対し、加熱された針を突き刺すことで開穿され、針のサイズを変えることで、連通孔21bの孔サイズが調整可能となる。
通気層24の具体例としては、加工安定性とコスト性から判断すると、その厚みが20〜50μm、詳しくは約30μmのLLDPEフィルム又はLDPEフィルムを用いることが好ましい。
通気孔24aの孔サイズは、0.05〜0.15mm、詳しくは約0.10mmに設定することが好ましい。
【0015】
通気面20の中間に配置された繊維層21に対する通気層24の接着剤25としては、ホットメルトなどを用いて、繊維層21となる不織布などの通気性を阻害しないように貼り合わせる。
接着剤25の具体例としては、熱で溶かして接着し、常温で固体に戻ることを利用したホットメルト、詳しくは、接着剤25としてオレフィン系ホットメルトやゴム系ホットメルトなどを用いることが好ましい。この場合には、繊維層21となる不織布などに対して接着剤25を網状に吹き付けるか、又はグラビアロールなどで接着剤25を網状に塗布し、この状態で通気層24のフィルムを素早く圧着させることで、繊維層21に通気層24が貼り合わされる。
ここで、「網状」とは、蜘蛛の巣状、蜂の巣状、格子状、複数直線の平行形状などのような、通気層24の通気孔24aを塞ぐことがないように接着剤25を配置することである。
なお、通気孔24aの孔サイズが0.15mmを超えると、袋体2の製造過程のおいて通気面20となる通気性シート2S同士をヒートシールする時に、接着剤25となるホットメルトが通気孔24aを通って染み出し易くなる。そのため、トラブルを引き起こして歩留りの低下となるために好ましくない。
【0016】
一方、袋体2が「両面通気型」であり、その他方側に用いることが可能な、前述した構造の通気面20を構成しない別構造の前記通気性シートとしては、その少なくとも内側層又は全体を、柔軟性に優れたLDPEやLLDPEなどの低融点樹脂からなる孔が開いたフィルムで構成することが好ましい。
また、袋体2が「片面通気型」であって、その他方側に用いられる前記非通気面を構成する非通気性シートとしては、その少なくとも内側層又は全体を、柔軟性に優れたLDPEやLLDPEなどの低融点樹脂からなる孔が無いフィルムで構成することが好ましい。
このような場合には、袋体2の製造過程のおいて、前述した構造の通気面20を構成する通気性シート2Sに対し、前述した構造の通気面20を構成しない別構造の前記通気性シートや、前記非通気面を構成する前記非通気性シートを重ね合わせて接着する時に、低融点樹脂同士が重なり合って接するために低温のヒートシールを可能にし、袋体2の製造を容易にすることができる。
【0017】
次に、本発明の実施形態に係る使い捨てカイロAを生産するための製造方法について説明する。
前述した構造の通気面20を構成する通気性シート2Sの製造方法は、繊維21aの間に連通孔21bを有する繊維層21に対し、熱可塑性樹脂23を溶融してシート状やフィルム状に押し出す押出ラミネート工程と、押出ラミネートにより熱可塑性樹脂23が積層された繊維層21に対し、連続した気泡22aを有する発泡層22を熱可塑性樹脂23が挟まれるように熱圧着して接着させる熱ラミネート工程と、を主要な工程として含んでいる。
前記熱ラミネート工程は、繊維層21となる不織布などに対し、発泡層22を熱可塑性樹脂23が挟まれるように熱圧着して接着させる押出ラミネートを行うことにより、繊維層21の連通孔21b及び発泡層22の気泡22aに沿って微細孔23aが形成される。
さらに、前記熱ラミネート工程の後には、押出ラミネートされた繊維層21に対し、所定サイズの通気孔24aを有する通気層24を網状の接着剤25で部分的に接着させる接合工程を含むことが好ましい。
前記接合工程は、押出ラミネートされた繊維層21となる不織布などに対し、接着剤25となるホットメルトなどの接着剤25を網状に塗布する第一の接合工程と、接着剤25が網状に塗布された繊維層21に対し、通気層24を圧着させて貼り合わる第二の接合工程と、を順次行うことが好ましい。
前記押出ラミネート工程、前記熱ラミネート工程、前記接合工程は、これらの工程を実行するための装置が、製造ライン(図示しない)の流れ方向へ順番に設けられ、それぞれを繰り返し作動させることにより、袋体2の通気面20が複数それぞれ連続して製造されるように構成することが好ましい。
【0018】
さらに、前記接合工程の後には、通気性シート2Sなどの間に所定量の発熱体1を充填する充填工程と、通気性シート2Sなどの外周をヒートシールなどで接着して発熱体1が封止される封止工程と、を加えることが好ましい。
前記充填工程は、袋体2が「両面通気型」の場合、前述した構造の通気面20を構成する二枚の通気性シート2Sの間か、又は前述した構造の通気面20を構成する通気性シート2Sと、前述した構造の通気面20を構成しない別構造の前記通気性シートの間に、所定量の発熱体1を充填している。また、袋体2が「片面通気型」の場合には、前述した構造の通気面20を構成する通気性シート2Sと、前記非通気面を構成する前記非通気性シートの間に、所定量の発熱体1を充填している。
前記封止工程は、袋体2が「両面通気型」の場合、前述した構造の通気面20を構成する二枚の通気性シート2Sの外周か、又は前述した構造の通気面20を構成する通気性シート2Sと、前述した構造の通気面20を構成しない別構造の前記通気性シートの外周を、ヒートシールなどで接着している。また、袋体2が「片面通気型」の場合には、前述した構造の通気面20を構成する通気性シート2Sと、前記非通気面を構成する前記非通気性シートの外周を、ヒートシールなどで接着している。
また、前記充填工程及び前記封止工程は、これらの工程を実行するための装置が、前述した製造ラインにおいて前記接合工程を実行するための装置よりも下流側に設けられ、それぞれを繰り返し作動させることにより、多数の使い捨てカイロAが連続して製造されるように構成することが好ましい。
【0019】
このような本発明の実施形態に係る使い捨てカイロA及びその製造方法によると、袋体2の通気面20として、繊維21aの間に連通孔21bを有する繊維層21と、連続した気泡22aを有する発泡層22が、熱可塑性樹脂23を熱可塑性樹脂23の融点よりも高く且つ繊維層21及び発泡層22の融点よりも低い温度で溶融して、互いに圧着される。
これにより、繊維層21の繊維21aの表面に熱可塑性樹脂23が膜状に積層されて、連通孔21bの孔サイズが小さくなるものの、通気性は保たれて、発熱体1(活性炭1a)の粒径よりも小さな微細孔23aが作成可能となる。
これと同時に、溶融した熱可塑性樹脂23が、繊維層21の連通孔21b及び発泡層22の気泡22aにそれぞれ侵入して膜状に積層されるため、繊維層21と発泡層22が高い接着強度で一体化される。
したがって、発熱体1において特に粒径の小さい活性炭1aが袋体2の通気面20から漏れ出ることを防止しながら、繊維層21と発泡層22の剥離強度を高めることができる。
その結果、通気孔が開いたポリエチレンやポリプロピレン等の樹脂フィルムとポリウレタン発泡体シートとで構成される袋体を用いる従来のものに比べ、袋体2の通気面20から活性炭1aなどの発熱体1が漏れ出すことがなくなって、製品の歩留まりを向上させることができる。
さらに、繊維層21及び発泡層22の接着強度が向上するため、袋体2の通気面20が破れ難くなって耐久性に優れる。
【0020】
また、非通気部材3の長さが袋体2の長さ寸法Lと同じとなるように形成され、接着部3aを袋体2の全長に亘って貼り合わせてなることが好ましい。
この場合には、発熱体1が収納された複数の袋体2の切断分離と、複数の袋体2の通気面2aの一部にそれぞれ貼り合わされた非通気部材3の切断分離と、を同時に行うことが可能になる。
したがって、袋体2の製造過程に非通気部材3の貼り付けを組み込んで両者の切断分離を一緒に行うことができる。
その結果、袋体2の製造過程に非通気部材3の貼り付けを組み込んでも、袋体2のみの製造に比べて製品一つ当たりに必要な加工時間が長くならず生産性に優れ、大量生産によりコストの低減化が図れる。
【0021】
そして、このような本発明の実施形態に係る使い捨てカイロAの製造方法によると、封入工程及び接着工程よりも後の裁断工程で、発熱体1を収納した複数の袋体2の切断分離と、複数の袋体2の通気面2aの一部に貼り合わせた非通気部材3の切断分離と、が同時に行われる。
特に、繊維層21の内側に、所定サイズの通気孔24aを有する通気層24と、通気層24を繊維21aと部分的に接着する網状の接着剤25と、を備えることが好ましい。
この場合には、繊維層21の連通孔21b及び発泡層22の連続した気泡22aを通過する全体的な空気量が、通気層24の通気孔24aのサイズで調整可能となる。
したがって、袋体2の通気面20における通気度を任意にコントロールすることができる。
その結果、使用開始してからすぐに温かくなる、立ち上がり速度が従来製品よりも速くで且つ最高温度が従来製品よりも高い、即暖性(速暖性)に優れた使い捨てカイロAを作製できる。
【0022】
さらに、繊維層21として目付量が20〜40g/m2の不織布を用い、熱可塑性樹脂23として目付量が15〜30g/m2のポリエチレンを用いることが好ましい。
この場合には、繊維層21の繊維21aに積層した熱可塑性樹脂(ポリエチレン)23の厚みが適正となる。これにより、繊維21aの間に形成した連通孔21bの孔サイズが、活性炭1aの粒径よりも小さくしながら、発熱体1の酸化反応に必要な通気度が十分に確保可能となる。
したがって、発熱体1において特に粒径の小さい活性炭1aが袋体2の通気面20から漏れ出ることを確実に防止すると同時に、発熱体1を確実に酸化反応させて十分な発熱を得ることができる。
その結果、製品の歩留まりを更に向上させることができる。
また、目付量が20〜40g/m2の不織布を用いたため、その他の目付量の不織布を用いたものに比べて、加工安定性とコスト性に優れる。
【0023】
さらに、袋体2において前述した構造の通気面20を構成する通気性シート2Sの最内面として、LDPEやLLDPEなどの低融点樹脂からなる通気層24を設けている。
それにより、「両面通気型」の袋体2の製造過程において通気性シート2S同士をヒートシールする時には、低融点樹脂同士が重なり合って接するため、これら両者が十分に溶融して、このヒートシール部分から発熱体1(活性炭1a)の漏れ出しやエアリーク無しで溶着できる。
「両面通気型」の袋体2の製造過程において通気性シート2Sと、前述した構造の通気面20を構成しない別構造の前記通気性シートをヒートシールする時にも、低融点樹脂同士が重なり合って接するように構成すれば、これら両者が十分に溶融して、このヒートシール部分から発熱体1(活性炭1a)の漏れ出しやエアリーク無しで溶着できる。
また、「片面通気型」の袋体2の製造過程において通気性シート2Sと、前記非通気面を構成する前記非通気性シートをヒートシールする時にも、低融点樹脂同士が重なり合って接するように構成すれば、これら両者が十分に溶融して、このヒートシール部分から発熱体1(活性炭1a)の漏れ出しやエアリーク無しで溶着できる。
【実施例】
【0024】
本発明の実施形態に係る使い捨てカイロAの温度特性を調べるため、前述した構造の通気面20を構成する通気性シート2Sが用いられた実施例と、前述した構造の通気面20を構成する通気性シート2Sが用いられない比較例を用意し、同条件でそれぞれ発熱させる実験を行った。
詳しく説明すると、実施例としては、前述した構造の通気面20を構成する二枚の通気性シート2Sが用いられた、「両面通気型」の「貼らないタイプ」で略矩形の袋体2に発熱体1が13.5g収容されたものを用意した。
比較例としては、実施例と対応するサイズの現行品(商品名「貼らない快温くんM」)、「片面通気型」の「貼らないタイプ」で略矩形の袋体に発熱体1が12.1g収容されたものを用意した。
試験方法は、JIS S4100Kに準拠して、最高温度、平均温度、持続時間、立ち上がり時間を測定した。
【0025】
・実施例の試験結果
実施例の平均最高温度:80.7℃
実施例の平均温度:70.3℃
実施例の平均持続時間:2.3時間
実施例の平均立ち上がり時間:50℃まで8.2秒
・比較例の試験結果
比較例の平均最高温度:63.4℃
比較例の平均温度:56.2℃
比較例の平均持続時間:11.0時間
比較例の平均立ち上がり時間:50℃まで17秒
・実施例及び比較例の試験結果から実施例は、立ち上がり速度が比較例よりも速く(50℃到達速度が約2倍)で且つ最高温度が比較例よりも高い(約1.3倍)、使用開始してからすぐに温かくなる即暖性(速暖性)に優れることを確認できた。
さらに、実施例では、発熱体1中の特に粒径の小さい活性炭1aが袋体2の通気面20から漏れ出ないこと、通気面20の外側に配置される発泡層(発泡ポリウレタン)22が使用者の肌に接触しても、柔らかで違和感がなく且つ耐熱性に優れることを確認できた。
【0026】
なお、前示の実施例及び比較例では、袋体の外形状が略矩形である場合のみを試験したが、これに限定されず、袋体の外形状を矩形以外の形状に変更してもよい。この場合も外形状が略矩形の袋体と同様な試験結果が得られる。
さらに、前示の実施例及び比較例では、「貼らないタイプ」のみを試験したが、これに限定されず、「貼るタイプ」の形状に変更してもよい。この場合も「貼らないタイプ」と同様な試験結果が得られる。
【符号の説明】
【0027】
A 使い捨てカイロ 1 発熱体
2 袋体 20 通気面
21 繊維層 21a 繊維
21b 連通孔 22 発泡層
22a 気泡 23 熱可塑性樹脂
23a 微細孔 24 通気層
24a 通気孔 25 接着剤
図1