(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明の種々の例示の実施形態に従った、利得及び位相補償ネットワーク100の図である。ダウンコンバートされ、フィルタリングされたアナログ信号I(R)105及びQ(R)108が、それぞれ、ADC110及び112で受信される。ADC110及び112は、アナログ信号I(R)105及びQ(R)108を、それぞれ、デジタルサンプリングされたデータストリームI(RD)115及びQ(RD)117に変換する。
【0026】
補償ネットワーク100は、それぞれ、ADC110及び112に通信可能に結合されるIアームマルチプライヤ118及びQアームマルチプライヤ119を含む。Iアームマルチプライヤ118、Qアームマルチプライヤ119、又はその両方は、IアームデータストリームI(RD)115及び/又はQアームデータストリームQ(RD)117からの受信データサンプルの1つ又はそれ以上のセットを因数分解する。Iアームデータサンプルは、因数分解される場合、マルチプライヤ入力120に出現する利得補償係数βで因数分解される。Qアームデータサンプルは、因数分解される場合、クリッピングロジックモジュール入力122において出現する利得補償係数l/βで因数分解される。その結果、Iデータ及びQデータサンプルI(GC)124及びQ(GC)126の利得補償されたセットが生成される。
【0027】
補償ネットワーク100は更に、マルチプライヤ118に通信可能に結合されるIアームクリッピングロジックモジュール130、及びマルチプライヤ119に通信可能に結合されるQアームクリッピングロジックモジュール133を含む。クリッピングロジックモジュール130及び133は、IデータサンプルI(GC)124の利得補償されたセット、QデータサンプルQ(GC)126の利得補償されたセット、又はその両方に対しクリッピング演算を実行する。本開示の文脈における「クリッピング演算」は、特定のクリッピングレベルより大きい大きさのデータ値を因数分解することを意味する。幾つかの実施形態において、影響を受けるデータ値が因数分解されて特定のクリッピングレベルまで下げられ得る。しかしながら、本開示は種々のADC技術及びその他のレシーバ非線形性によって導入される種々のクリッピング不平衡に適用可能であり得るような、その他のクリッパ因数分解スキームも考慮する。クリッピングレベル情報は、それぞれ、クリッピングロジックモジュール130及び133の入力134及び135に出現する。利得及びクリッピング補償されたIデータサンプルI(GCC)及びQデータサンプルQ(GCC)が、その結果、それぞれ、クリッピングロジックモジュール130及び133の出力144及び148に出現する。
【0028】
補償ネットワーク100は更に、マルチプライヤ118及び119に、及びクリッピングロジックモジュール130及び133に通信可能に結合される利得補償モジュール140を含む。利得補償モジュール140は、利得補償関数に対応する反復の第1のセットの各々の開始時に、サンプルI(GCC)及びQ(GCC)をバッファリングする。利得補償モジュール140は、後で詳述するように、推定利得補償係数βを決定するために、バッファリングされたデータサンプルを処理する。因数β又はl/βは、Iアームにおいてマルチプライヤ118によって、Qアームにおいてマルチプライヤ119によって、又はその両方によって、実行される利得補償関数に関連付けられる。第1の反復の開始時には、βのための値はまだ利用可能ではないことになる。そのため、利得補償モジュール140は、βの第1の推定を生成するためにI(GCC)及びQ(GCC)データの補償されていないセットを処理し得る。
【0029】
また、利得補償モジュール140は、クリッピングロジックモジュール130及び133に送信するためクリッピング閾値を設定するために、β及び既知のADC特性を用いる。クリッピング閾値は、周波数変換及びADC変換に続いて、及び後で詳述するように、クリッピングロジックモジュール130及び133によって実行されるクリッピング補償関数に関連付けられる。
【0030】
補償ネットワーク100は更に、クリッピングロジックモジュール出力144及び148に通信可能に結合される位相補償モジュール150を含む。また、位相補償モジュール150は、補償ネットワーク100の出力170及び172に通信可能に結合される。後者の出力から、位相補償モジュールは反復の第2のセットの各々の開始時に、利得、クリッピング、及び位相補償されたI及びQデータサンプルのセットをバッファリングする。なお、上述のように、反復の第1のセットは収束された利得及びクリッピング補償係数を求めることに関連付けられる。
【0031】
位相補償モジュール150は、推定された位相補償角度Φを、後で詳述するように、補償されたデータサンプルを用いて計算する。位相補償モジュール150は、位相不平衡補償因数を直接推定し得、又は、Qアーム上で更なる補償演算を実行するための因数として用いられる、Φの三角関数を計算し得る。具体的には、位相補償モジュール150は、マルチプライヤ152への制御線154上に、因数sin(Φ)を提供する。因数I(GCC)
*sin(Φ)は、元の、クリッピングを有するI/Qミスマッチの結果として、Qから減算されたIの成分を表す。後者の因数は、補償のこの部分を実行するために、加算ジャンクション160においてQ(GCC)にサムバック(sum back)され、その結果、ノード162における中間結果Q(GCC)+I(GCC)
*sin(Φ)となる。最後に、この中間結果は、マルチプライヤ164において、l/cos(Φ)で因数分解される。後者の因数は、位相補償モジュール150からの入力166に出現する。これらの演算は、Iアーム及びQアームデータ分布関数に更に適合するようにQアームデータを補償する。
【0032】
図2は、種々の例示のシーケンスに従った、トレーニングされたRF直交レシーバにおいて、利得及び位相補償を実行する方法200を表すフローチャートである。本開示の目的のために、「トレーニングされたRF直交レシーバ」とは、補償係数を決定するために、サンプリングされたデータに、利得、クリッピング、及び/又は位相補償演算の1つ又はそれ以上の反復が実行されること、及び、その結果の補償係数が、上述したネットワーク100等の補償ネットワークに現在適用されていることを意味する。
【0033】
方法200は、ブロック205及び210で、ダウンコンバートされたIアーム信号のデジタル化されたサンプル、及びダウンコンバートされたQアーム信号のデジタル化されたサンプル(例えば、
図1の、それぞれ、ダウンコンバートされた信号I(R)、Q(R)のデジタル化されたサンプルI(RD)、Q(RD))を受け取ることで開始する。
【0034】
方法200は、ブロック215で、前に計算された変異(variance)(Q)値が、対応する前に計算された変異(I)値より大きいか否かを判定することを含む。大きい場合、方法200は、ブロック218で、I(GC)を求めるために、I(RD)をユニティゲインファクタで因数分解することを含む。また、方法200は、ブロック220で、利得補償値Q(GC)を求めるために、Q(RD)を利得補償係数l/βで因数分解することを含む。変異(Q)が変異(I)より大きい場合、方法200は更に、ある一定の、しかし全部ではない利得補償されたIデータ値I(GC)を因数分解することによって、クリッピング補償を実行することを含む。l/β
*(ADC_full-scale_value)より大きい全ての|I(GC)|に対して、方法200は、ブロック225で、I(GCC)を求めるために、I(GC)をl/β
*(ADC_full-scale_value)まで減らすことを含む。なお、このケースでは、Q(GC)データは既にクリッピング閾値又はそれ以下まで利得補償されているため、クリッピング補償は、Q(GC)データからクリッピングするものは何も見出さないことに留意されたい。このように、後者のケースでは、Q(GCC)はQ(GC)に等しい。
【0035】
前に計算された変異(Q)/変異(I)の比が1より小さい場合、方法200は、ブロック228で、Q(GC)を求めるために、Q(RD)をユニティゲインファクタで因数分解することを含む。また、方法200は、ブロック230で、利得補償値I(GC)を求めるために、I(RD)を利得補償係数βで因数分解することを含む。前に計算された変異(Q)/変異(I)の比が1より小さい場合にクリッピング平衡化を実行するために、β
*(ADC_full-scale_value)より大きい全ての|Q(GC)|に対して、方法200は、ブロック235で、Q(GCC)を求めるために、Q(GC)をβ
*(ADC_full-scale_value)まで減らすことを含む。なお、このケースでは、I(GC)データが既にクリッピング閾値又はそれ以下まで利得補償されているため、クリッピング補償はI(GC)データからクリッピングするものは何も見出さないことに留意されたい。このように、後者のケースでは、I(GCC)の値はI(GC)の対応する値に等しい。
【0036】
方法200は、続いて、ブロック240で、利得及びクリッピング補償されたI(GCC)値が位相補償ネットワーク(例えば、
図1の、出力170における、位相補償ネットワーク)を変化のない状態においてパススルーし得ることを注目する。即ち、再び
図1を参照すると、I(GCC)がI(GC)に等しい。
【0037】
方法200は、ブロック245で、位相補正成分I(GCC)
*sin(Φ)を求めるために、I(GCC)をsin(Φ)で因数分解することを含む。方法200は更に、ブロック250で、中間のQ値Q(GCC)+I(GCC)
*sin(Φ)を求めるために、I(GCC)
*sin(Φ)をQ(GCC)に加算することを含む。なお、非理想的なLOを用いてダウンコンバートされるプロセスの間、Q(t)が負のI(t)成分を取得していることに留意されたい。ここで、方法200は、Qデータストリームの中からI(GCC)
*sin(Φ)ファクタを代数的に加算する。方法200はまた、ブロック255で、位相補償されたQ値Q(C)を求めるために、[Q(GCC)+I(GCC)
*sin(Φ)]をl/cos(Φ)で因数分解することを含む。
【0038】
図3は、種々の例示の実施形態に従った、利得及び位相補償ネットワークにおける利得補償モジュール140のブロック図である。利得補償モジュール140は、処理のためにI及びQデータサンプルの利得及びクリッピング補償されたセットを受け入れるために、I及びQサンプルバッファ310及び312を含む。利得補償モジュール140は更に、I及びQサンプルバッファ310及び312に通信可能に結合されるサンプルバッファロジックモジュール315を含む。サンプルバッファロジックモジュール315は、利得補償の反復の開始時に、I及びQデータサンプルの利得及びクリッピング補償されたセットをI及びQサンプルバッファ310及び312にゲーティングする。
【0039】
利得補償モジュール140は更に、I及びQサンプルバッファ310及び312に通信可能に結合される平均トータル電力モジュール320を含む。平均トータル電力モジュール320は、後で詳述するように、I及びQデータサンプルに、数学的演算の第1のセットを実行する。数学的演算の第1のセットは、その結果、Iアームにおける平均トータル電力である値I(AVG_TOTAL)、及びQアームにおける平均トータル電力である値Q(AVG_TOTAL)を生成する。
【0040】
利得補償モジュール140は更に、I及びQサンプルバッファ310及び312に通信可能に結合される平均DC電力モジュール324を含む。平均DC電力モジュール324は、後で詳述するように、I及びQデータサンプルに数学的演算の第2のセットを実行する。数学的演算の第2のセットは、その結果、Iアームにおける平均DC電力である値I(AVG_DC)、及びQアームにおける平均DC電力である値Q(AVG_DC)を生成する。
【0041】
また、利得補償モジュール140は、平均トータル電力モジュール320に及び平均DC電力モジュール324に通信可能に結合される変異電力モジュール328を含む。変異電力モジュール328は、Iアームにおける平均AC信号電力の変異(I)を求めるために、I(AVG_TOTAL)からI(AVG_DC)を減算する。また、変異電力モジュール328は、Qアームにおける平均AC信号電力の変異(Q)を求めるために、Q(AVG_TOTAL)からQ(AVG_DC)を減算する。また、利得補償モジュール140は、変異電力モジュール328に通信可能に結合される、I、Q変異電力比較器330を含む。I、Q変異電力比較器330は、Iアーム又はQアームのいずれが利得支配的であるかを判定する。利得ドミナンスは、利得因数分解又はクリッピング平衡化がIアーム又はQアームのいずれに適用されるかを判定する。
【0042】
利得補償モジュール140は更に、変異電力モジュール328に通信可能に結合される、前の利得補償推定バッファ340を含む。前の利得補償推定バッファ340は、前の反復の間に計算された累積利得補償推定β(PREV)をストアする。利得補償モジュール140は更に、変異電力モジュール328に及び前の利得補償推定バッファ340に通信可能に結合される、利得補償推定モジュール342を含む。利得補償推定モジュール342は、カレント利得補償推定β(CURRENT)を求めるために、変異(Q)対変異(I)の比の二乗根を計算する。また、利得補償推定モジュール342は、累積利得補償推定β(CUMULATIVE)を求めるために、β(CURRENT)をβ(PREV)に加算する。β(CUMULATIVE)又はその逆数は、
図1のマルチプライヤ118及び119によって因数分解係数として用いられるために、出力350において提供されるが、後述する追加基準を条件とする。また、β(CUMULATIVE)は、次の反復に使用するため新規のβ(PREV)として、前の利得補償推定バッファ340にストアされる。
【0043】
利得補償モジュール140は更に、変異電力モジュール328に通信可能に結合されるクリッピング閾値推定モジュール344を含む。クリッピング閾値推定モジュール344は、β(CUMULATIVE)とADC_full-scale_valueとの積に比例するクリッピングロジック閾値を計算する。ADC_full-scale_valueは、クリッピング閾値推定モジュール344に通信可能に結合されるバッファ346にストアされる。その結果のクリッピングロジック閾値は、利得補償収束の間の各反復で、I及びQアームにおけるクリッピングレベルを平衡化するために、出力354上の
図1のクリッピングロジックモジュール130及び133に送られる。
【0044】
利得補償モジュール140は更に、サンプルバッファロジックモジュール315に及び利得補償推定モジュール342に通信可能に結合される、反復制御モジュール360を含む。反復制御モジュール360は、補償されたデータサンプリング、利得補償推定、及びクリッピング閾値推定、の連続的反復を制御する。バッファ362が、反復制御モジュール360に通信可能に結合され、利得補償係数β(CUMULATIVE)の所望のレベルの収束を達成するために設計基準によって指定されるようにPの反復の数をストアする。
【0045】
図4は、種々の例示の実施形態に従った利得及び位相補償ネットワークにおけるクリッピングロジックモジュール400のブロック図である。クリッピングロジックモジュール400は、クリッピングレベルを計算するためのクリッピングレベルロジック405を含む。クリッピングレベルロジック405は、累積利得補償推定β(CUMULATIVE)を入力415で、及び、最大ADC信号範囲を表す値420を入力422で受け取る。両方の値は、利得補償モジュール140から受け取られる。クリッピングレベルは、β(CUMULATIVE)で因数分解された適用可能なADCによって表され得る最大デジタル値の絶対値として計算される。例えば、|(2
∧6)/2|=32の最大値が可能な6ビットのADCを考えてみる。β(CUMULATIVE)が0.75に等しいとすると、クリッピングレベルロジック405は、この例では、クリッピングレベルを32×0.75=24として計算する。
【0046】
また、クリッピングロジックモジュール400は、クリッピングレベルロジック405に通信可能に結合される比較器425を含む。比較器425は、利得補償されたサンプル値I(GC)又はQ(GC)を受け取り、そのサンプル値をクリッピングレベルと比較する。更にクリッピングロジックモジュール400は、比較器425に結合されるクリッパ430を含む。クリッパ430は、利得補償されたサンプル値がクリッピングレベルを超える場合、利得補償されたサンプル値の大きさを因数分解して、クリッピングレベルまで下げる。利得及びクリッピングレベル補償された出力値I(GCC)又はQ(GCC)が、クリッピングロジックモジュール400の出力440に出現する。
【0047】
図5は、種々の例示の実施形態に従った、利得及び位相補償ネットワークにおける位相補償モジュール150のブロック図である。位相補償モジュール150は、クリッピング−補正されたデータ上で動作する。即ち、Iアーム及びQアーム信号の分布は、ネットワーク100の位相補償部分で受け取られるように互いに対して正規化される。その結果、位相補償が更に正確になる。
【0048】
位相補償モジュール150は、補償されたデータサンプリング及び電力計算モジュール505を含む。補償されたデータサンプリング及び電力計算モジュール505は、I及びQサンプルバッファ510及び512、サンプルバッファロジックモジュール515、トータル電力及びDC電力モジュール520及び524、及び変異電力モジュール528を含む。これら含まれるモジュールは、Iアームにおける平均AC信号電力の変異(I)、及びQアームにおける平均AC信号電力の変異(Q)を求めるために、利得補償モジュール140を参照して上述したように動作する。しかしながら、モジュール510、512、515、520、524は、
図1の、利得、クリッピング、及び位相補償ネットワーク100のI(C)及びQ(C)出力170及び172からのデータサンプルで動作することに留意されたい。
【0049】
また、位相補償モジュール150は、補償されたデータサンプリング及び電力計算モジュール505に通信可能に結合される、標準偏差モジュール530を含む。標準偏差モジュール530は、変異(I)の二乗根としてIσ(Ι)の標準偏差、及び変異(Q)の二乗根としてQσ(Q)の標準偏差を計算する。
【0050】
更に位相補償モジュール150は、補償されたデータサンプリング及び電力計算モジュール505に通信可能に結合される、IドットQ予測モジュール540を含む。IドットQ予測モジュール540は、IデータサンプルとQデータサンプルのドット積の数学的予測E[I·Q]を計算する。
【0051】
また、位相補償モジュール150は、補償されたデータサンプリング及び電力計算モジュール505に通信可能に結合される、I及びQ予測モジュール544及び548を含む。I及びQ予測モジュール544及び548は、それぞれ、I及びQデータサンプルの数学的予測E[I]及びE[Q]を計算する。
【0052】
また、位相補償モジュール150は、IドットQ予測モジュール540に及び標準偏差モジュール530に通信可能に結合される、バイアスされた位相推定モジュール550を含む。バイアスされた位相推定モジュール550は、アークサイン{E[I·Q]/σ(Ι)
*σ(Q)}に等しい、DCバイアスされた位相角補償推定Φ(CURRENT_ΒΙΑSΕD)を計算する。
【0053】
DC位相推定モジュール552が、I予測モジュール544、Q予測モジュール548、及び標準偏差モジュール530に通信可能に結合される。DC位相推定モジュール552は、DCバイアスされた位相角補償推定Φ(CURRENT_ΒΙΑSΕD)のDC成分Φ(DC)を計算する。DC成分Φ(DC)は、予測E[I]と、σ(Ι)
*σ(Q)によって除算された予測E[Q]とのドット積のアークサインに等しい。
【0054】
また、位相補償モジュール150は、バイアスされた位相推定モジュール550に及びDC位相推定モジュール552に通信可能に結合される、位相角決定モジュール555を含む。位相角決定モジュール555は、カレントのバイアスされていない位相補正角Φ(CURRENT_UNΒΙΑSΕD)を求めるために、Φ(CURRENT_ΒΙΑSΕD)からΦ(DC)を減算する。また、位相角決定モジュール555は、Φ(CUMULATIVE)を求めるために、Φ(CURRENT_UNΒΙΑSΕD)を、前の反復から生じた累積位相推定Φ(PREV)に加算する。Φ(CUMULATIVE)は出力556上の位相補償ネットワークに対して使用可能にされる。前の位相角推定モジュール558が、反復間の前に計算された累積位相推定Φ(ΡREV)をストアする。
【0055】
位相補償モジュール150は更に、補償されたデータサンプリング及び電力計算モジュールに及び位相角決定モジュール555に通信可能に結合される、反復制御モジュール560を含む。反復制御モジュール560は、補償されたデータサンプリングと位相角補償推定の、連続的反復を制御する。バッファ562が、所望の反復数Rをストアする。しかしながら、幾つかの実施形態は、上述のように、単一の反復において位相補償角を決定してもよい。
【0056】
図6は、種々の例示のシーケンスに従って、RF直交レシーバにおいて利得及び位相補償を実行する方法600を示す詳細なフローチャートである。方法600は、レシーバIアーム、Qアーム、又はその両方において利得補償関数に関連付けられる推定利得補償係数を決定するために、反復の第1のセットを実行することを含む。方法600は更に、Iアーム、Qアーム、又はその両方においてクリッピング補償関数に関連付けられるクリッピング閾値を決定することを含む。
【0057】
各反復は、Iデータサンプル及びQデータサンプルの、利得及びクリッピング補償されたセットで動作する。これらのサンプルは、周波数変換及びADC変換に続いて、レシーバ(例えば、
図1の出力144及び148)に関連付けられる利得及びクリッピング補償ネットワークのI及びQデータ出力でキャプチャされる。これらのサンプルは、各反復の開始時のサンプリング期間中の処理のためにバッファリングされる。
【0058】
方法600は更に、利得補償関数を用いて、受け取ったIデータサンプル及び受け取ったQデータサンプルのセットを因数分解することを含む。その結果、Iデータ及びQデータサンプルのカレントの利得補償されたセットが得られる。方法600は更に、クリッピング補償関数を用いて、Iデータサンプル及びQデータサンプルのカレントの利得補償されたセットでクリッピング演算を実行することを含む。その結果、Iデータサンプル及びQデータサンプルのカレントの利得及びクリッピング補償されたセットが得られる。後者のサンプルは、反復の第1のセットの次の1つに対する入力データとして用いられる。当業者であれば、方法600のこの部分が、キャプチャされ処理された第1のセットに続く、サンプルデータセットに対して再帰的であることに留意するであろう。
【0059】
反復の第1のセットの完了に続いて、方法600は、直交レシーバチャネルのQアームにおける位相補償関数に関連付けられる、位相補正角Φ及び係数を決定することで続く。位相補正角Φは、Iデータサンプルの利得及びクリッピング補償された1つ又はそれ以上のセット、及び、利得、クリッピング、及び位相補償されたQデータサンプルの1つ又はそれ以上のセットから決定される。方法600は更に、1つ又はそれ以上の利得及びクリッピング補償されたQデータサンプルを因数分解するために、Qアームにおいて位相補償関数を用いることを含む。その結果、ADCクリッピングの存在下で、利得及び位相ミスマッチに対し、補償されたQデータサンプルの対応する数が得られる。
【0060】
図6Aを参照すると、方法600は、利得及び位相補償トレーニングシーケンスを開始するブロック605で始まる。方法600はブロック608に続き、そこで、利得補償ネットワーク出力(例えば、
図1の出力144及び148)で受け取ったIアームデータI(GCC)のN個のサンプル、及びQアームデータQ(GCC)のN個のサンプルをバッファリングする。方法600は、ブロック610で、各Iサンプル及び各Qサンプルを個別に数学的に二乗することを含む。方法600は更に、ブロック612で、サンプリング期間中のIアームにおける平均トータル信号電力の値I(AVG_TOTAL)を求めるために、二乗されたIサンプルを共に加算すること、及びNで除算することを含む。方法600は更に、ブロック614で、サンプリング期間中のQアームにおける平均トータル信号電力の値Q(AVG_TOTAL)を計算するために、二乗されたQサンプルを共に加算すること、及びNで除算することを含む。
【0061】
方法600は、続いて、ブロック616で、サンプリング期間中のIアームにおけるDC信号成分の平均電力の値I(AVG_DC)を求めるために、全ての二乗されていないIサンプルを共に加算し、Nで除算し、二乗する。方法600は更に、ブロック618で、サンプリング期間中のQアームにおけるDC信号成分の平均電力の値Q(AVG_DC)を求めるために、全ての二乗されていないQサンプルを共に加算すること、Nで除算すること、及び二乗することを含む。
【0062】
方法600は、ブロック620で、Iアームにおける平均AC信号電力を表す変異(I)を求めるために、I(AVG_TOTAL)からI(AVG_DC)を減算することを含む。方法600は更に、ブロック622で、Qアームにおける平均AC信号を表す変異(Q)を求めるために、Q(AVG_TOTAL)からQ(AVG_DC)を減算することを含む。
【0063】
方法600はブロック624に進み、そこで、変異の比を求めるために変異(Q)を変異(I)で除算し、利得補償係数βのカレント推定β(CURRENT)を求めるために変異の比の二乗根を見出す。
【0064】
方法600は更に、ブロック626で、新規の累積利得補償推定β(CUMULATIVE)を求めるために、前に計算された利得補償推定の、前の累積トータルβ(PRIOR)をβ(CURRENT)に加算することを含む。
【0065】
方法600は、続いて、ブロック630で、前に計算された変異(Q)が変異(I)より大きいか否かを判定する。大きくなければ、方法600は、ブロック632で、Iアーム利得補償をβ(CUMULATIVE)に調整することを含む。このケースでは、方法600は更に、クリッピングロジック閾値を設定することを含む。クリッピング閾値は、ブロック634で、β(CUMULATIVE)と、I及びQ信号を変換するために用いられるADCに関連付けられるフルスケール値との積に等しく設定される。
【0066】
前に計算された変異(Q)が変異(I)より大きい場合、方法600は、ブロック636で、Qアーム利得補償をl/β(CUMULATIVE)に調整することを含む。このケースでは、方法600は更に、ブロック638で、クリッピングロジック閾値を、l/β(CUMULATIVE)とADCフルスケール値との積に等しく設定することを含む。
【0067】
方法600は、続いて、ブロック640で、所定の数Pの利得補償反復が発生したか否かを判定する。P個の反復が発生していない場合、方法600は、ブロック642で利得反復カウンタに1を増分すること、及びブロック644で別の反復を開始することを含む。方法600は、ブロック608で、利得補償ネットワーク出力からのIアームデータI(GCC)のN個のサンプル及びQアームデータQ(GCC)のN個のサンプルの、新規のセットをバッファリングすること、及びβ(CUMULATIVE)及びクリッピングロジック係数のための更新された値を決定することを繰り返す。
【0068】
所定の数Pの利得補償反復が発生している場合、方法600は、続いて、ブロック650で、位相補正シーケンスを開始する。位相補正シーケンスは、ブロック652で、利得、クリッピング、及び位相補償されたIアームデータのM個のサンプルと、利得、クリッピング、及び位相補償されたQアームデータのM個のサンプル(例えば、
図1の位相補償ネットワーク出力1(C)及びQ(C)で受け取るもの)とをバッファリングすることで始まる。
【0069】
方法600は、続いて、ブロック654で、各Iサンプル及び各Qサンプルを数学的に二乗する。方法600は更に、ブロック656で、Iアームデータにおける平均トータルIアーム信号電力の値I(AVG_TOT)を求めるために、全てのIデータサンプルの二乗された結果を加算すること、及びMで除算することを含む。方法600は更に、ブロック658で、Qアームデータにおける平均トータルQアーム信号電力の値Q(AVG_TOTAL)を求めるために、全てのQデータサンプルの二乗された結果を加算し、Mで除算することを含む。
【0070】
方法600は更に、ブロック660で、IアームにおけるDC信号成分の平均電力の値I(AVG_DC)を求めるために、全てのIサンプルを共に加算すること、その結果の合計をMで除算すること、及びその商を二乗することを含む。同様に、方法600は、ブロック662で、QアームにおけるDC信号成分の平均電力の値Q(AVG_DC)を求めるために、全てのQサンプルを共に加算すること、その結果の合計をMで除算すること、及びその商を二乗することを含む。
【0071】
方法600は、続いて、ブロック664で、Iアームにおける平均AC信号電力に対応する変異(I)を求めるために、トータルI信号電力I(AVG_TOTAL)から平均IアームDC信号成分I(AVG_DC)を減算する。同様に、方法600は、ブロック668で、Qアームにおける平均AC信号電力に対応する変異(Q)を求めるために、トータルQ信号電力Q(AVG_TOTAL)から平均QアームDC信号成分Q(AVG_DC)を減算することを含む。
【0072】
方法600は更に、ブロック670で、Iの標準偏差σ(Ι)を求めるために、変異(I)の二乗根を決定することを含む。同様に、方法600は、ブロック672で、Qの標準偏差σ(Q)を求めるために、変異(Q)の二乗根を決定することを含む。
【0073】
方法600は、ブロック676で、I及びQのドット積の予測E[I・Q]を求めるために、各I、Qサンプル対を乗算すること、その結果の積を総和すること、及びMで除算することを含む。方法600は更に、ブロック678で、カレントのDCバイアスされた位相誤差推定Φ(CURRENT_BIASED)の三角関数のサインを求めるために、E[I・Q]を、σ(Ι)とσ(Q)との積で除算することを含む。
【0074】
方法600は更に、ブロック680で、Iの予測E[I]を求めるために、全てのIサンプル値を総和すること、及びその結果をMで除算することを含む。また、ブロック681で、Qの予測E[Q]を求めるために、Qサンプルは総和され、Mで除算される。
【0075】
方法600は、続いて、ブロック682で、Φ(CURRENT_BIASED)のDCバイアス成分Φ(DC)のサインを求めるために、E[I]をE[Q]で乗算すること、及びその結果をσ(Ι)とσ(Q)との積で除算することを含む。
【0076】
方法600は、ブロック684で、カレントのバイアスされていない位相補正推定Φ(CURRENT_UNBIASED)を求めるために、Φ(DC)をΦ(CURRENT_BIASED)から減算することを含む。
【0077】
更に、方法600は、ブロック686で、新規の累積位相補正推定Φ(CUMULATIVE)を求めるために、Φ(CURRENT_UNBIASED)を前の位相推定Φ(ΡREV)に加算することを含む。
【0078】
方法600は更に、ブロック688で、Qアームを[l/COS(Φ(CUMULATIVE))]
*[Q(GCC+I(GCC)
*SIN(Φ(CUMULATIVE))]で因数分解するように位相補償ネットワークを構成することを含む。
【0079】
方法600は、続いて、ブロック690で、位相反復指数Rを最大反復指数R(MAX)と比較する。最大数の反復が発生していない場合、方法600は、ブロック692で指数Rを増分すること、及びブロック694で追加的な位相角補正反復を開始することを含む。なお、単一反復の位相角補正推定及び関連する係数を実装するために、幾つかの例示のシーケンスにおいて、R(MAX)が1に設定され得ることに留意されたい。
【0080】
R=R(MAX)である場合、方法600は、ブロック696で、タイムアウト期間の満了、又は他の選択されたトリガパラメータによってトリガされるように、別の利得/位相補正トレーニングシーケンス機会を待つことを含む。
【0081】
本明細書中に記載されるモジュール及び構成要素は、ハードウェア回路要素、光学構成要素、シングル又はマルチプロセッサ回路、メモリ回路、及び/又はプロセッサが実行することができるコンピュータ命令がその中又はその上にエンコードされているコンピュータ可読媒体を含み得、また、ファームウェアを中にストアする不揮発性メモリを含む含み得るが、非機能的な記述データは含まない。また、これらのモジュール及び構成要素には、装置100、140、150、及び400、及び方法200及び600のアーキテクトによって望まれるような、及び種々の実施形態の特定の実装に適切な、それらの組み合わせが含まれる。
【0082】
本明細書中に記載される装置及び方法は、利得、クリッピング、及び位相トレーニング係数を決定すること、及びそれらをRF直交レシーバに適用すること以外の用途にも有用であり得る。記載した方法及び装置に関して他の用途が存在し得る。装置100、140、150、及び400、及び方法200及び600の例は、種々のシーケンスのフロー及び種々の実施形態の構造の一般的な理解を提供することを意図したものである。これらの例は、これらのシーケンス及び構造を用い得る装置及びシステムの全ての要素及び特徴の完全な説明を提供することを意図するものではない。
【0083】
種々の実施形態は、照明制御システム、コンピュータ、通信及び信号処理回路要素、シングルプロセッサ又はマルチプロセッサモジュール、シングル又はマルチプルエンべデッドプロセッサ、マルチコアプロセッサ、データスイッチ、及びマルチレイヤー、マルチチップモジュール等の特定用途向けモジュール等に用いられる電子回路要素に組み込まれ得る。また、そのような装置及びシステムは、テレビ、セルラー電話、パーソナルコンピュータ(例えば、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータ、ハンドヘルドコンピュータ、タブレットコンピュータ等)、ワークステーション、ラジオ、ビデオプレーヤー、オーディオプレーヤー(例えば、MP3(動画専門家集団、オーディオレイヤ3)プレーヤー)、車両、医療機器(例えば、心臓モニタ、血圧モニタ等)、セットトップボックス等の、種々の電子システム内のサブコンポーネントとして含まれ得る。
【0084】
本明細書中に記載される装置及び方法は、低分解能のI及びQ ADCにおける差動クリッピングによって悪化したI/Qミスマッチの存在下で直交RFレシーバの、利得、クリッピング、及び位相補償を実行する。その結果、改善されたイメージリジェクション性能が得られ得る。
【0085】
当業者であれば、請求項の範囲内で、記載された実施形態に変更が行なわれ得ること、及び他の多く実施形態が可能であることを理解するであろう。