【実施例】
【0152】
以下の実施例は、本発明の方法および組成物を作製および使用する方法の完全な開示および説明を当業者に提供するために記載されるものであり、本発明者らがその発明と見なすものの範囲を限定することを意図するものではない。用いられる数(例えば、量、温度など)に関して正確性を確保するための努力が為されたが、いくらかの実験誤差および偏差もあるべきである。別途指摘しない限り、部は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏であり、圧力は大気圧または大気圧近くである。
【0153】
〔実施例1〕
ヒトIL−4Rに対するヒト抗体の作成
ヒト抗hIL−4R抗体を、米国特許第7,608,693号に記載のように作成した。表1は、選択された抗IL−4R抗体およびその対応する抗体名の、重鎖および軽鎖可変領域アミノ酸配列対、ならびにCDRアミノ酸配列に関する配列識別子を記載する。
【0154】
【表1】
【0155】
【表2】
【0156】
以下の実施例で用いられる例示的IL−4Rアンタゴニストは、表1でH1H098−bと表示されたヒト抗IL−4R抗体である(本明細書では「mAb1」とも呼ばれる)。
【0157】
〔実施例2〕
健康な対象における静脈内および皮下投与された抗IL−4R抗体(mAb1)の単回漸増用量臨床試験
A.試験設計
この試験は、健康な対象における静脈内(IV)および皮下(SC)投与されたmAb1の、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、連続、単回漸増用量試験であった。この試験の主な目的は、健康な対象における静脈内および皮下投与されたmAb1の安全性および忍容性を評価することであった。
【0158】
スクリーニングを、−21日目から−3日目まで行った。1日目(ベースライン)に、対象を無作為化して、2時間にわたって注入されるIVまたはSC試験薬物(mAb1またはプラセボ)を受けさせた。対象は、安全性評価および血液採取のために4、8、11、15、22、29、43、57および85日目(試験最終日)に臨床検査に戻った。
【0159】
合計48人の対象が試験に参加した。4つの連続漸増用量コホート(1.0、3.0、8.0および12.0mg/kg)をIV投与のために計画し、2つの連続漸増用量コホート(150および300mg)をSC投与のために計画した。それぞれの用量コホートは、8人の対象(コホート拡張がなかった場合)からなっていた:6人はmAb1を受けるように無作為化し、2人はプラセボを受けるように無作為化した。安全性を最適化するために、IVコホート1(1.0mg/kg)中の最初の3人の対象に少なくとも24時間空けて投与し、残りの5人の対象には5〜7日後に投与した。その後のIVコホートにおいて、8人の対象のうちの3人に1日目に投与し、残りの5人の対象には5〜7日後に投与した。SC用量コホート1(150mg)中の8人全ての対象に同じ日に投与し、その後のSCコホート(300mg)中の8人全ての対象に同じ日に投与した。SCコホートを、IVコホートが完了した後に投与した。
【0160】
試験のための組入れ基準は以下の通りであった:(1)18〜65歳の男性または女性;(2)50kgを超え、120kgを超えない体重;(3)出産可能な女性については、スクリーニング来院(来院1)時に血清妊娠試験陰性および−1日目の尿妊娠試験陰性;(4)試験期間の任意の24時間に2回を超える標準的なアルコール飲料の消費を控える意欲。標準的なアルコール飲料とは、12オンスのビール、5オンスのワイン、1.5オンスの強い酒と同等であると考えられた;(5)それぞれの試験来院前の24時間にアルコールの消費を控える意欲;(6)男性および出産可能な女性については、試験の全期間に十分な避妊を行い、妊娠しないようにする(またはそのパートナーが妊娠しないようにする)意欲。十分な避妊の手段としては、子宮内デバイス(IUD);卵管結紮術;精管切除術;コンドームまたはペッサリーと、避妊用スポンジ、気泡またはゼリーが挙げられる;ならびに(7)全てのクリニック来院に戻り、全試験関連手順を完了する意欲、約束、および能力。
【0161】
試験のための除外基準は以下の通りであった:(1)スクリーニング(来院1)前の4週間以内の新しい定期的運動の開始または以前の定期的運動に対する大きな変更。対象は、試験期間にわたって類似するレベルの運動を維持し、試験期間にわたって通常ではない激しい運動を控えることに意欲的でなければならない;(2)妊娠中または授乳中の女性;(3)心疾患、腎疾患、神経疾患、内分泌疾患、代謝疾患もしくはリンパ系疾患のような重大な合併症または重大な疾患の病歴、またはこの試験への対象の参加に有害に影響した任意の他の疾患もしくは状態;(4)スクリーニング来院中に観察された任意の臨床的に有意な異常;(5)スクリーニング(来院1)の60日以内の任意の理由による入院;(6)ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、B型肝炎もしくはC型肝炎の既知の病歴、および/またはスクリーニング来院時にB型肝炎表面抗原陽性、C型肝炎抗体陽性もしくはHIV血清陽性;(7)スクリーニング来院前の1年以内の薬物またはアルコール乱用の病歴または薬物スクリーニング陽性;(8)ドキシサイクリンまたは同様の化合物に対する過敏症の病歴;(9)スクリーニング来院前の被験薬物の30日以内または少なくとも半減期の5倍以内(いずれか長い方)の別の被験薬物または療法を評価する任意の臨床研究試験への参加;(10)任意の治療剤または被験生物剤への曝露;(11)試験責任医師の意見において、対象を危険に晒す;試験への参加を妨げるか、または試験結果の解釈を妨げる任意の医学的または精神的状態;(12)QuantiFERON結核(TB)試験陽性の対象;(13)寄生虫感染の病歴または寄生虫流行地域への最近(以前の6カ月以内)の旅行;(14)以前の5年以内のアルコールまたは物質の乱用の病歴;(15)スクリーニング(来院1)時またはベースライン(来院2)時の尿中薬物スクリーニング結果陽性;ならびに/または(16)スクリーニングの12週間以内もしくは試験中の生/弱毒化ワクチン接種。
【0162】
B.被験処置
mAb1医薬品を、IVまたはSC投与のために20mlのガラスバイアル中に凍結乾燥粉末として供給した。IVで送達する場合、mAb1医薬品を、7.8mlの注射用滅菌水を用いて単回使用バイアル中で再構成させ、50mg/mLのmAb1を含有する溶液を得た。薬剤師または被指名人は必要な量の再構成されたmAb1(対象の用量および体重に依存する)またはプラセボを引き出し、IV送達のために0.9%生理食塩水を含む輸液バッグ中にそれを注入した。輸注を2時間にわたって与えた。
【0163】
SCで送達する場合、mAb1医薬品を、2.3mlの注射用滅菌水を用いて再構成させ、150mg/mLのmAb1を含有する溶液を得た。薬剤師または被指名人は、注射液を腹部に投与した;異なる吸収およびバイオアベイラビリティの可能性のため、四肢への投与は許容されなかった。同じ日に複数の注射液の投与が必要であった場合、それぞれの注射液を異なる注射部位で送達した。
【0164】
試験したmAb1の用量レベルは、IV投与については1.0、3.0、8.0、および12.0mg/kgであり、SC投与については150および300mgであった。
【0165】
プラセボ一致mAb1を、mAb1と同じ製剤中で製造したが、抗体は添加しなかった。
【0166】
C.結果および結論
mAb1は、好ましい安全性プロファイルで一般によく忍容された。全体的な有害事象(AE)プロファイルは、健康な集団に特徴的なものであった。mAb1で処置された55%未満の対象(19/36)が、プラセボで処置された59%未満の対象(7/12)と比較して1つまたはそれ以上の処置中に発生した有害事象(TEAE)を経験した。最も頻繁に報告されたTEAEは、血中クレアチンホスホキナーゼ(CPK)の上昇、血圧上昇、鼻咽頭炎、および歯痛であった。多くの対象が、軽度または中等度の強度のTEAEを経験した;重篤であると考えられるTEAEが報告された対象は3人のみであった。1人だけの重篤なTEAE(血中CPK上昇)が処置と関連すると庁舎者によって考えられた。試験中に1つの重大な有害事象(SAE)が報告されたが、これは試験責任医師によって試験薬物とは関連しないと考えられた。AEのために試験を中止した対象はなく、死亡も報告されなかった。試験中に他の臨床的に意義のある臨床検査結果(血液化学検査、血液検査、または尿検査)は報告されなかった。いかなる検査パラメータにおいても平均/中央ベースラインの傾向は認められなかった。試験を通して、体温または脈拍におけるベースラインからの平均または中央変化における有意な傾向はなかった。身体診察結果、ECGまたはバイタルサインに関して臨床的に意義のある異常性は認められなかった。
【0167】
この試験は、対象集団が高い割合の黒人/アフリカ系アメリカ人対象からなる点で有意であった(表2)。
【0168】
【表3】
【0169】
対象は健康なボランティアであったが、グループとしてのアフリカ系アメリカ人はアトピー性疾患により罹りやすい可能性があり(Cagganaら、1999;Genet.Med.1:267〜271頁)、従ってこの集団は探索的バイオマーカー分析に基づく機構の証明の評価にとって適切であると考えられる。
【0170】
薬物動態(PK)分析に関しては、非線形動力学が観察された。除去の標的媒介性経路は、機能的mAb1の濃度が約30mg/Lより上である場合、8および12mg/kgのIV用量で飽和すると考えられた。9人の対象において抗薬物抗体の低力価が観察された。機能的mAb1の濃度の突然の、および持続的な低下は観察されなかったが、これはADAがPKに対して大きな影響を有さなかったことを示している。
【0171】
〔実施例3〕
健康な患者における抗IL−4R抗体(mAb1)の皮下投与後の抗IL−4R抗体(mAb1)の2つの異なる医薬品の臨床試験
A.試験設計
この試験は、異なる細胞系および製造方法から作成された2つの異なる抗IL−4R mAb(mAb1)医薬品の皮下投与の安全性および薬物動態プロファイルを評価するための単施設、単回用量、二重盲検、無作為化、プラセボ対照のない試験であった。医薬品を150mg/mLの2mL用量で提供し、300mg(2mL)を、2つの平行群中の30人の健康な成人(1群あたり15人の対象)に皮下投与した。対象は、19〜45歳の年齢の22人の男性(73.3%)および8人の女性(26.7%)の30人であり、54.8〜94,3kgの範囲の体重であった。
【0172】
mAb1の血清濃度を用いて、以下のPKパラメータを決定した:最大血清濃度(C
max)、時間0から定量下限より上の最終濃度に対応するリアルタイム(t
last)までの[血清濃度対時間]曲線下面積(AUC
last)、および外挿された時間ゼロから無限までの血清濃度対時間曲線下面積(AUC)。また、最大濃度に達するまでの時間(t
max)および終末相半減期(t
1/2z)も測定した。
【0173】
B.評価および方法のための基準
投与後最大2カ月間の処置中に発生した有害事象(TEAE)を含む有害事象、臨床検査評価(生化学検査、血液検査、尿検査)、バイタルサイン、自動読取り式心電図(ECG)、抗mAb1抗体(陰性または力価)、および局所忍容性評価(視覚的アナログスケール[VAS;100mmの目盛が付いていない線]、紅斑[注射部位での直径mm]、および浮腫[注射部位での直径mm]を用いる注射部位疼痛を含む)を測定することにより、安全性を評価した。
【0174】
注目すべき有害事象(AESI)は、プロトコールに記載される特異的モニタリング、文書化、および管理を必要とする科学的および医学的関心があるAE(重篤または非重篤)であった。以下のAEを、AESIと定義した:過敏症/アナフィラキシー:即時の処置を要するアナフィラキシー反応もしくは急性アレルギー反応、24時間より長く続く重度の注射部位反応、重度の感染、任意の寄生虫感染、2ULN以上のアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の増加、QTc≧500ms、妊娠、または過剰投与。
【0175】
血液学的および生化学的評価のために、投与前の−1日目および2日目(すなわち、投与後24時間)および57日目に、肝機能に限る生化学的評価については8、15、22、29、36、43および50日目に血液試料を採取した。
【0176】
血清中の抗mAb1抗体の決定のための血液試料を、1日目ならびに15、29および57日目に採取した。
【0177】
局所忍容性評価を投与前の1日目に、ならびに投与後2分、2時間、6時間および12時間で、ならびにmAb1投与後2日目(すなわち、投与後24時間)、3、4および8日目に実施した。
【0178】
薬物動態学的および薬理遺伝学的サンプリングのために、投与前の1日目および投与後12時間で、ならびにmAb1投与後2、3、4、8、11、15、22、29、36、43、50、および57日目に、血液試料を採取した。機能的mAb1の血清濃度を、78ng/mLの定量下限(LLOQ)を有する検証された酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いて決定した。
【0179】
任意選択の薬理遺伝学的分析のために、試料をベースライン時(投与前1日目)に採取した。
【0180】
血清機能的mAb1の薬物動態パラメータを、記述統計学(平均、幾何平均、中央値、標準偏差(SD)、変動係数[CV]、最小値、および最大値)を用いる処置群によりまとめた。対数変換したC
max、AUC
last、およびAUCについては、試験/参照処置比を、固定効果として性別および処置を用いる、ならびに共変量として体重を用いる線形固定効果モデルを用いて評価した。処置比に関する推定値および90%信頼区間(CI)を、C
max、AUC
lastおよびAUCについて提供した。
【0181】
安全性の評価は、個々の値および記述統計学の再検討に基づくものであった。全てのAEを、Medical Dictionary for Regulatory Activities(MedDRA)バージョン15.0を用いて符号化し、処置中に発生した有害事象(TEAE)の頻度を、器官別大分類(primary system organ class)、基本語、および処置群によって分類および一覧化した(計数およびパーセント)。臨床検査データ、バイタルサイン、およびECG値に関する臨床的に意義のある異常(PCSA;2009年9月14日付けのバージョン2.0による定義)ならびに臨床検査データに関する正常範囲外の値をフラグし、処置群によりまとめた。
【0182】
抗mAb1抗体の結果を、陰性として、または処置群、対象および来院による確認アッセイにおいて陽性である場合、力価値と共に列挙した。データを、処置群による陰性または陽性の抗薬物抗体(ADA)応答を示す対象数(計数およびパーセント)としてまとめた。
【0183】
疼痛VAS、紅斑直径、および浮腫直径の記述統計学(平均、SD、最小値、中央値、および最大値)を、それぞれのスケジュール化された時点について処置群によって提供した。これらの測定値のそれぞれを、時間平均して(試験薬物投与から8日目の評価までが含まれる)、およびピーク値として(投与後評価を用いる)処置群によってさらにまとめた。
【0184】
C.薬物動態の結果
【表4】
【0185】
【表5】
【0186】
推定値は、性別、体重、および処置に関する固定された項目を含む線形固定効果モデルに基づくものである。
【0187】
D.安全性の結果
医薬品A(試験医薬品)上にある15人の対象のうちの12人(80.0%)と医薬品B(参照医薬品)上にある15人の対象のうちの8人が、TEAEを有していた。明らかな処置不均衡がいくつかの器官別大分類のみにおいて出現し、別の原因が同定されることが多かったため、IMPと関連しない事象に起因するものと考えられた。4つのSAEが試験中に2人の対象において報告された。
【0188】
医薬品1処置群の23歳男性対象は、投与の4日後に始まった視力障害、発汗、発熱、および頭痛の症状を伴う「II型単純ヘルペスウイルス感染」、次いで、腫れた舌(投与の6日後)ならびに咳、胸部鬱血、および両方のふくらはぎの筋肉痙攣(投与の7日後)を経験した。この事象の経過の間に、対象は数回救急処置室に行き、Solumedrol(登録商標)(3回IV用量)、プレドニゾン(9日間)、Rocephin(登録商標)(1回IV用量)、Zithromax(登録商標)(5日間)を含む複数の処置を受けた。対象が投与の3カ月前にトングバーベルピアス(tongue barbell piercing)を設置していたことは注目に値する。全ての症状は投与の19日後に消散した。投与の10日後に実施した初期単純ヘルペスウイルス(HSV)II IgG力価は陰性であったが、投与の7週間後に再評価した時には陽性に転換していた。このSAEは、試験責任医師および会社によりIMPと関連すると判断された。投与の4週間を超えた後で、対象は、左側の「ベル麻痺」と診断され、試験責任医師によって、HSV II感染の結果であると考えられた。この事象を、プレドニゾン(6日間)およびアシクロビル(10日間)処置した。このSAEは、HSV II感染の急性状態における複数かつ反復的なステロイド投与のため、試験責任医師によってIMPと関連しないと見なされ、別の説明が考えられた。会社は、IMPとの因果関係を排除することはできないと考えた。両事象は試験の終わりには回復していた。この対象は、試験中のいかなる時点においてもADAを生じなかった。
【0189】
医薬品A処置群の22歳男性対象は、「横紋筋融解症」(最大392ULNのクレアチンホスホキナーゼ)と一緒に「ALT上昇」(最大11.4ULNのALT)を経験し、これらは両方とも投与の7週間後に日常的な臨床検査によって発見された。これらの事象に次いで、肉体的な課題(水泳、腕立て伏せ、懸垂、腹筋運動および他の持久型運動からなる;対象はライフガードである)および彼の三頭筋に対する損傷を経験した(NSAE)。対象は水分補給のために病院に収容された。肝機能試験の増加の肝臓側の原因は除外され、ALTの上昇(ならびに最大50.5ULNへのアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ[AST]の上昇)は横紋筋融解症と関連すると判断された。クレアチニンおよび糸球体機能は、事象の経過中に正常範囲内にあった。両事象は3週間以内に消散した。これらの2つのSAEは、試験責任医師によってIMPと関連しないと見なされた。この対象はまた、29日目(力価値=120)に検出された陽性の力価で、および58日目(力価値=30)にEOSVでADAを生じた。
【0190】
ALT増加とは別に、試験中に他のAESIは観察されなかった。
【0191】
4人の対象は、試験中に感染を経験した。上記の単純ヘルペス感染とは別に、軽度の上気道感染、咽頭炎、および副鼻腔炎の事例(それぞれ1事例)が、それぞれ、投与の54、7および1日後に観察された。これらの3つの後者の事象は、C1P2で処置された対象において観察された。
【0192】
注射部位反応の15の事例が12人の対象において生じた:紅斑(8人の患者に8事例、各群で4事例)、疼痛(3事例、C2P1で2人およびC1P2で1人)、結節(2事例、各群で1事例)、血腫(C1P2で1事例)、および掻痒感(C2P1で1事例)。全て軽度であり、注射の24時間以内に消散した。
【0193】
他のTEAEは、C2P1で処置した2人の対象における掻痒感(注射部位ではない)の2事例および頭痛の3事例(C2P1で処置した1人の対象およびC1P2で処置した2人の対象)を除いて、各処置群において1人を超える対象において観察されなかった。
【0194】
既に記載された検査所見の異常とは別に、PCSAの規定の閾値を超える他の検査値の増加があった。
【0195】
抗mAb1抗体は、試験を完了した27人の対象のうちの6人(22.22%)において陽性であった(試験を完了しなかった対象はADAを検出されなかった)。陽性のADA力価を有する6人の対象のうち、4人がC2P1で処置され、2人がC1P2で処置された。ADAの発生とTEAEとの間に関係は観察されなかった。
【0196】
E.特異的局所忍容性評価
疼痛VASについて、平均ピーク値は、C2P1およびC1P2処置群において、それぞれ4.4および4.2mm(100mmスケールで)であり、両群における中央値は2.0mmであった。各群の15人の対象のうちの5人は、「疼痛なし」(ピーク値0mm)であった。最も高い測定値は、C2P1およびC1P2処置群において、それぞれ17および18mmであり、一般に投与の2分後に観察された(投与後2分〜12時間の範囲)。
【0197】
測定された紅斑直径の平均ピーク値は、C2P1およびC1P2処置群において、それぞれ12.5および10.9mmであった。各群の15人の対象のうちの9人は、任意の時点で紅斑を有さなかった。観察された最大値は、両群において40mmであり、最大値(3mm)が投与の48時間後に観察された1人の対象を除いて、全て投与の2分後に観察された。
【0198】
測定された浮腫直径の平均ピーク値は、C2P1およびC1P2処置群において、それぞれ1.1および0mmであった。それぞれ、C2P1およびC1P2処置群の15人の対象のうちの13人および15人の対象のうちの15人が、任意の時点で浮腫を有さなかった。最大値は、C2P1処置群の2人の対象において15および1mmであり、投与の2時間後に観察された。
【0199】
F.結論
健康な対象への300mgのmAb1の単回皮下投与後、血清機能的mAb1曝露は、2つの試験医薬品において類似していた。90%CIを有する幾何平均処置比(DP1/DP2)は、C
maxについては1.10(0.89〜1.35)、AUC
lastについては0.90(0.71〜1.16)、およびAUCについては1.05(0.86〜1.29)であった。
【0200】
mAb1は一般に良好に忍容された。DP1を投与された1人の対象は、「II型単純ヘルペスウイルス感染」、次いで、「ベル麻痺」の重篤な有害事象を経験した。
【0201】
臨床的に重要な局所忍容性の問題および処置群間の局所忍容性パラメータ(すなわち、疼痛、紅斑、および浮腫)における明らかな相違はなかった。
【0202】
最も一般的なTEAEは、注射部位での紅斑(30人の対象のうちの8人)であり、両処置群において同じ発生率で観察された(各群の15人の対象のうちの4人[26.7%])。
【0203】
結論として、健康な対象へのmAb1の単回300mg SC投与の後、2つの異なる医薬品のPKプロファイル、安全性、および局部忍容性において同定された臨床的に重要な相違はなかった。
【0204】
〔実施例4〕
健康な日本人成人男性対象における漸増単回皮下用量の抗IL−4R抗体の安全性、忍容性および薬物動態に関する臨床試験
A.試験設計
この試験は、健康な日本人成人男性対象における漸増単回皮下用量の抗IL−4R抗体(mAb1)の無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験であった。主な目的は、健康な日本人男性対象における漸増単回皮下用量後のmAb1の安全性および忍容性を評価することであった。第2の目的は、健康な日本人男性対象における漸増単回皮下用量のmAb1の薬物動態、免疫原性および探索的薬力学を評価することであった。
【0205】
mAb1を、細胞系2から誘導し、バイアル中に75mg/mLまたは150mg/mL濃度の液体製剤で供給した。mAb1の75、150、300、および600mgの単回漸増用量を1日目に皮下投与した(75mgおよび150mgについては1回注射;300mgについては2回注射;ならびに600mgについては4回注射)。観察期間は、それぞれの対象につき、およそ11週間(投与前の2〜21日間のスクリーニング期間、クリニックでの5日間[1回の処置日を含む−1日目〜4日目]、および投与後最大57日間の外来フォローアップ来院を含む)であった。
【0206】
B.評価のための基準
安全性:有害事象(AE)、身体診察、臨床検査評価(血液検査、生化学検査、尿検査)、バイタルサイン(臥位および立位血圧ならびに心拍数、体温)、12誘導心電図(ECG)、ならびに抗mAb1抗体。
【0207】
薬物動態:以下のmAb1血清機能的薬物動態パラメータを、ノンコンパートメント分析を用いて算出した−最大観測血清濃度(C
max)、最大血清濃度到達時間(t
max)、用量正規化C
max(C
max/用量)、時間ゼロから定量下限より上の最終濃度に対応するリアルタイムt
lastまでの血清濃度対時間曲線下面積(AUC
last)、用量正規化AUC
last(AUC
last/用量)、外挿された時間ゼロから無限までの血清濃度対時間曲線下面積(AUC)、安定状態での分布の見かけの容量(V
ss/F)、見かけの全身クリアランス(CL/F)、平均滞留時間(MRT)、および終末相半
減期(t
1/2z)。
【0208】
薬力学(PD):総IgEおよびTARCに対するmAb1の薬力学的効果。
【0209】
PK評価のための血液試料を、投与前(1日目)ならびにmAb1投与後1、2、4、8、11、15、18、22、25、29、36、43、50、および57日目(15〜25日目については±1日;29〜57日目については±2日)に採取した。mAb1の血清濃度を、78ng/mL(0.078mg/mL)の定量下限(LLOQ)を有する検証されたELISAを用いて決定した。PD評価のための血液試料を、投与前の−1日目および1日目、次いで、mAb1投与後8、15、22、29、43および57日目(15〜25日目については±1日;29〜57日目については±2日)に採取した。総IgEおよびTARCに関する血清スクリーニングを、検証された方法を用いて決定した。
【0210】
C.統計学的方法
安全性の評価は、個々の値および記述統計学の再検討に基づくものであった。全ての有害事象を、MedDRAバージョン15.1を用いて符号化し、処置中に発生した有害事象(TEAE)の頻度を、器官別大分類、基本語、および処置群によって分類および一覧化した(計数およびパーセンテージ)。臨床検査データ、バイタルサイン、およびECGデータに関する臨床的に意義のある異常ならびに臨床検査データに関する正常範囲外の値をフラグし、処置群によりまとめた。さらに、バイタルサイン、ECG、および限定された検査パラメータについての生データおよびベースラインからの変化を、記述統計学においてまとめた。
【0211】
血清機能的mAb1の薬物動態パラメータを、記述統計学(平均、幾何平均、平均の標準誤差[SEM]、中央値、標準偏差[SD]、および変動係数[CV]、最小値および最大値)を用いて各用量群についてまとめた。用量比例を、C
max、AUC
last、およびAUCのパワーモデルを用いて評価した。t
1/2zに対する用量効果を、線形固定効果モデルを用いて評価した。t
max値の分布を、ヒストグラムプロットにより表した。mAb1 PDバイオマーカー(総IgEおよびTARC:CCL17)を、記述統計学を用いて各用量群についてまとめた。
【0212】
D.安全性の結果
最大600mgの単回皮下用量のmAb1投与は、65.1kgの中央体重を有する健康な日本人成人男性対象において良好に忍容された。試験中に重篤なTEAEまたは早期中止は報告されなかった。投与後の57日間の観察期間に、以下のような32人の試験対象間で合計3つのTEAEが報告された:プラセボ群における8人の対象のうちの1人(インフルエンザ)、150mg群の6人の対象のうちの1人(インフルエンザ)および600mg群の6人の対象のうちの1人(起立性低血圧)。
【0213】
最大2.0mLの容量x4部位(600mg)で注射部位に局部皮膚反応または不快感はなかった。
【0214】
抗mAb1抗体(ADA)は、低力価レベルを有する32人の対象のうちの5人(75mgの1人、150mg群の2人、300mg群の1人、および600mg群の1人)において陽性であった。ADAは、全ての対象においてベースライン時およびプラセボ群で検出不可能であった。ADA陽性対象はいかなるTEAEも経験しなかった。
【0215】
血液および生化学検査値における非常に少ないPCSAが、用量−発生関係なしにmAb1処置群において同定された。特に、肝酵素の変化は観察されなかった。バイタルサインまたはECGについては少しのPCSAがあったが、用量関係はなかった。対象はQTcBの延長(>450ms)を経験せず、60msを超えるベースラインからの変化は試験中に観察されなかった。
【0216】
E.薬物動態の結果
単回皮下用量後の平均(SD)血清機能的mAb1濃度−時間プロファイルを、
図1に示す。血清機能的mAb1に関する薬物動態パラメータを、表5中にmAb1で処置した全対象についてまとめる。
【0217】
【表6】
【0218】
mAb1の中央t
maxは、全ての用量で7日であった。平均終末相半減期(t
1/2z)は、用量依存的(p<0.01)であり、75mgでの2.77日から600mgでの8.77日の範囲であった。75mgから600mgへの用量の8倍の増加は、幾何平均C
max、AUC
lastおよびAUCの、それぞれ13.1倍、30.4倍および24.2倍の増加をもたらした。
【0219】
F.薬力学の結果
血清IgEおよびTARC値は処置群内で高度に変動性であった。血清IgEに関して(ベースラインからの変化率)、75mgおよび150mgの皮下用量の単回投与時に経時的に薬物関連効果は観察されなかった。300mgおよび600mgでは、処置後に血清IgEを減少させる傾向があった。処置効果はTARCに関して観察された。75mg〜600mgの皮下用量の単回投与は、プラセボと比較した血清TARCレベルの減少と関連していた。より持続的な減少は用量の増加と関連していた。
【0220】
G.結論
最大600mgの単回皮下用量のmAb1は、健康な日本人男性対象において良好に忍容された。試験中に重篤なTEAEまたは早期中止は報告されなかった。32人の試験対象間で合計3つのTEAEが報告された。最大2.0mLの容量x4部位(600mg)で注射部位の局部皮膚反応または不快感はなかった。全体として、報告されたTEAEおよび検査値、バイタルサインおよびECG評価は、用量関連効果を示唆しなかった。
【0221】
健康な日本人成人男性への単回用量後、mAb1は7日の中央tmaxで吸収され、75mgでの2.77日から600mgでの8.77日の範囲の用量依存的平均終末相半減期(t
1/2z)で除去された。平均血清機能的mAb1曝露は用量比例様式よりも大きく増加し、75mgから600mgへの用量の8倍の増加は、幾何平均C
max、AUC
lastおよびAUCの、それぞれ13.1倍、30.4倍および24.2倍の増加をもたらした。
【0222】
薬力学的効果が観察された。TARCの血清レベルは、mAb1を用いる処置後に減少した。より持続的な減少は用量の増加と関連していた。低力価のADAが32人の対象のうちの5人において検出された。ADAは全ての対象においてベースライン時およびプラセボ群で検出不可能であった。ADA陽性対象はいかなるTEAEも経験しなかった。
【0223】
〔実施例5〕
健康なボランティアに皮下投与されたmAb1の安全性および忍容性に対する注入速度の効果を評価するための臨床試験
A.概要および試験設計
この試験は、mAb1を投与するための大容量注入デバイスの開発を支援するために行われた。この試験は、2つの異なる皮下(SC)送達デバイスの対応する属性を近似する2つの異なる注入速度を比較評価するものであった:速い注入は自己注射器であり、遅い注入はマイクロインフューザである。試験の主な目的は、正常な健康なボランティアに2つの異なる速度でSC投与された単回300mg/2mL用量のmAb1の相対的安全性および忍容性を評価することであった。試験の第2の目的は、NHVの2つの別々のコホートにおいて2つの異なる速度でSC投与された単回300mg/2mL用量のmAb1の薬物動態(PK)パラメータを比較すること;およびNHVにおいて2つの異なる速度でSC投与された単回300mg/2mL用量のmAb1の相対的免疫原性を評価することであった。
【0224】
これは、2つの異なる注入速度でSC投与されたmAb1の安全性、忍容性、PKおよび免疫原性に関する非盲検、無作為化、平行群、単一用量試験であった。試験は、試験処置に対象を割当てる際の任意の潜在的な偏りを回避し、転帰に影響し得るベースライン変数に関して処置群間の系統的差異を最小化するために無作為化された。試験は非盲検であったので、注入方法および持続期間を有効に盲検化することはできなかった。36人の対象(処置群あたり18人の対象)を米国において動員し、1つの施設で無作為化した。この試験のサンプルサイズは経験的に選択された。主要評価項目に基づく正式なサンプルサイズまたは検出力の計算は用いられなかった。しかしながら、0.05の有意性レベルで2側検定で疼痛VASにおいて一般的な標準偏差が20.8であると仮定して、1群あたり18人の対象の登録は2群値の疼痛VASにおける20の差異を検出する80%の検出力を提供すると見積もられた。
【0225】
対象は−14日目〜−2日目にスクリーニングを受けた。−1日目に、対象は注射手順に関して訓練し、慣れるためにクリニックに収容され、第1群(速い注入)または第2群(遅い注入)のいずれかに無作為化された:
・第1群(速い注射):対象は30秒にわたって投与される手動でのSC注射により試験薬物を受けた。
・第2群(遅い注射):対象は10分で2mLを送達するようにプログラムされたシリンジポンプに接続されたSC輸液セットにより試験薬物を受けた。
【0226】
−1日目に、全ての対象は、SC輸液セットを皮膚に簡単に装着するモック注射を受けた。このプロセスは、27Gの6mm針を挿入して約10〜15秒間留置した後、除去することを含んでいた。対象は、以下のようなモック注射手順のそれぞれ対応する工程に関連するその疼痛/不快感を評価した:
・針を挿入し、針を除去してすぐに(10秒以内)、対象は手順のそれぞれ対応する工程に関連するその疼痛/不快感を評価した。
・包括評価(GA):針を除去して1分後、対象は全手順の間に経験した疼痛/不快感を思い出し、評価することによってGAを提供するよう求められた。
・相対評価(CA):針の除去のおよそ1分後(GAの直後)、視覚的アナログスケール(VAS)に加えて、対象は、その包括的な疼痛/不快感を、蜂刺されまたはインフルエンザの予防接種のような、よくある経験と関連させることによってCAを提供した。
【0227】
1日目に、全ての対象は、2mL容量中の300mgのmAb1を受け、
図2のダイアグラムに記載のVAS評価を完了した。
【0228】
紅斑、浮腫、硬化、圧痛、および痒みのような注射部位反応(ISR)の発生率、程度、および重症度に関する情報を、全ての対象(第1群および第2群)についてモニタリングした。紅斑、浮腫、および硬化の程度(最大直径mm)ならびに紅斑および浮腫の重症度を、注射の完了後1、2、4および8時間ならびに試験の終わりまでのフォローアップ来院時または評価された全てのパラメータに基づいて2回の連続する評価において注射部位が正常化されたと考えられるまで評価した。また、対象は、VASを用いて存在するあらゆる掻痒感(痒み)および圧痛(触診時の疼痛)を評価するよう求められた。
【0229】
対象は2日目にクリニックから退院した。対象は、4、8、11、15、22、29、36、43、50、57および64日目(試験最終日)に外来フォローアップ来院のためにクリニックに戻った。8、11および15日目のクリニック来院は、+/−1日の枠内で行われた。22日目から64日目までの来院は、+/−2日の枠内で行われた。それぞれの対象に関する全観察期間は、1日目の投与後9週間であった。
【0230】
B.分析変数および統計方法
以下の人口統計およびベースライン特性変数をまとめた:スクリーニング時の年齢(歳)、性別、民族、人種、ベースライン体重(kg)、身長(m)、おおびBMI(kg/m2)、疼痛/不快感VAS。主要な変数は、安全性および忍容性に関する以下の測定値を含む:(i)64日目(試験最終日)までの処置中に発生した有害事象(TEAE)の発生率および重症度;64日目までのISRの発生率、程度、重症度および持続期間;(ii)注射手順と関連する全体的な疼痛/不快感(GA);(iii)針の挿入時、試験薬物を注射する間および針を除去する時の個々の疼痛/不快感の構成要素;ならびに(iv)経時的な残留疼痛/不快感:試験投与後5分、10分、15分、30分、1、2、4および8時間、ならびにその後の試験来院時で存在する疼痛/不快感。
【0231】
紅斑、浮腫、硬化、圧痛、および痒みのようなISRの発生率、程度、および重症度の情報を、全ての対象についてモニタリングした(第1群および第2群)。紅斑、浮腫および硬化の程度(最大直径mm)を評価した。さらに、紅斑および浮腫の重症度を、注射の完了後1、2、4、および8時間で、ならびに試験の終わりまでのフォローアップ来院時に、または評価した全てのパラメータに基づいて2回の連続する評価において注射部位が正常化したと考えられるまで、標準的な0〜4の皮膚忍容性スケール(Draize)を用いて定性的に評価した。
【0232】
以下のスケールを用いて、紅斑および浮腫の重症度を等級付けた:
紅斑:
0=紅斑なし
1=非常にわずかな紅斑(かろうじて認知できる)
2=明確に定義された紅斑
3=中等度から重度の紅斑
4=重度の紅斑(ビートのような発赤)からわずかな痂皮形成(深い傷害)
浮腫:
0=浮腫なし
1=非常にわずかな浮腫(かろうじて認知できる)
2=わずかな浮腫(明確に定義された端部)
3=中等度の浮腫(1mmを超える隆起)
4=重度の浮腫(1mmを超え、曝露領域を超える隆起)。
【0233】
VASは、患者が試験薬物注射と関連するその疼痛/不快感を評価するために用いられる連続評価スケール(0〜100mm)である。VASを、左側の「疼痛/不快感なし」と右側の「考えられる最悪の疼痛/不快感」により固定した。同じスケールを用いて、注射部位の痒みおよび圧痛を定量し、ISRの一部として評価した。
【0234】
mAb1の安全性および忍容性を、身体診察、バイタルサイン、心電図(ECG)、および臨床検査評価により評価した。対象は、インフォームドコンセントにサインした時から64日目の試験来院の最終日までに経験した全ての有害事象(AE)をモニタリングし、報告するよう求められた。有害事象、重度の有害事象、および処置中に発生した有害事象は、本明細書の他の場所で定義されている。
【0235】
ベースライン時に開始して試験毎に(1日目、投与前および投与後[注射の終わり、ならびに投与後1、2、4、8および12時間])PK分析のために血液試料を採取した。1日目(投与前)、ならびに29日目および64日目(試験最終日)に抗mAb1抗体レベルの分析のために、血液試料を採取した。
【0236】
連続的変数について、記述統計学は以下のものを含んでいた:計算に反映される患者数(n)、平均、中央値、標準偏差、最小値、および最大値。分類または順序データについては、頻度およびパーセンテージをそれぞれのカテゴリーについて表示した。
【0237】
C.結果
注射時の疼痛および残留疼痛:両注射様式−速いおよび遅い−は良好に忍容され、比較的低レベルの注射時の疼痛と関連していた。両様式について、疼痛は注射の開始後およそ15〜30秒でピークに達した。平均ピーク疼痛レベルは、0〜100mmのVAS上で15mmより下であった。包括評価(注射の1分後に思い出した全体的疼痛)、ならびに経時的な残留疼痛を含む、平均疼痛スコアは、速い注射と遅い注射の間で同等であった;観察された差異は臨床的に関連しなかった(すなわち、0〜100のVASスケールでΔ<10)。遅い注射を受けたより多くの対象が、速い注射を受けた対象と比較して、皆無かそれに近い疼痛を報告した(VAS<5mm)。全体として、注射疼痛プロファイルは、遅い注射の方がわずかにより好ましいと考えられたが、2つの注射様式を明確に区別するものではなかった。
【0238】
注射部位反応:ISRの全体の発生率は、2つの試験群間で類似していた(速い注射の89%と、遅い注射の94%)。しかしながら、客観的ISR知見(紅斑および/または硬化)の発生率は、特に、注射部位の紅斑に関して(それぞれ、61%と11%)、速い注射群(44%)と比較して遅い注射群(83%)においてより高かった。主観的ISRは、注射部位での圧痛および掻痒感を含み、その発生率は、特に注射部位の圧痛に関して(それぞれ、72%と39%)、遅い注射(56%)と比較して速い注射(72%)についていくらかより高かった。ISRの開始は、注射後1時間から数日であった。ISR消散までの時間も、開始後1時間から数日で報告された。全体として、ISRプロファイルは、速い注射群の方がいくらかより好ましいと考えられたが、2つの注射様式間の明確な区別を提供するものではなかった。
【0239】
有害事象:処置中に発生した有害事象の数および発生率は、速い注射群(11人の対象中で報告された19のTEAE)と比較して、遅い注射群(15人の対象中で報告された35のTEAE)においてより高かった。多くのTEAEは、臨床的関連性の試験責任医師による評価に基づいて有害事象として報告されたISRであった。中止をもたらしたTEAEはなかった。試験薬物または注射様式と関連しない1つの事例と関連する3つの重度のTEAEがあった。全体として、有害事象プロファイルは、多くは有害事象として報告されたISRのため、速い注射群の方がわずかにより好ましいと考えられた。
【0240】
D.結論
試験は、プロトコールに記載された第1および第2の目的を達成した。mAb1は、速いか、または遅い注射のいずれかにより投与された場合、安全であり、良好に忍容された。試験の結果は、2つの注射様式の間の明確な区別を提供しなかった。
【0241】
〔実施例6〕
中等度から重度のアトピー性皮膚炎を有する患者における皮下投与された抗IL−4R抗体(mAb1)の連続漸増反復用量臨床試験
A.試験設計
この試験は、中等度から重度の外因性アトピー性皮膚炎(AD)を有する患者において皮下投与されたmAb1の第1b相、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、連続漸増、反復用量試験であった。30人の患者を、試験において無作為化した(プラセボに6人、75mg、150mgおよび300mg群にそれぞれ8人)。28人の患者は全ての処置を受けた。処置期間は、持続期間で4週間であった;患者を、処置期間が終わった後8週間にわたってフォローした。患者を4:1の比に無作為化して、それぞれの3つの漸増用量コホート(75、150または300mgのmAb1)においてmAb1またはプラセボを受けさせた。試験の第1の目的は、第2の目的としてのPKと共に、安全性および忍容性を評価することであった。探索目的は、効能およびバイオマーカー評価項目を含んでいた。探索的効能変数は、(i)4週目まで、およびそれぞれの試験来院で0または1のIGAスコアを達成した患者の割合;(ii)ベースラインからそれぞれの来院までのBSA、EASIおよび5−D掻痒感スケールの変化および変化率;ならびに(iii)NRSスケールのベースラインからの週毎の変化を含んでいた。
【0242】
B.効能変数
効能変数IGA、BSA、EASI、SCORAD、5−D掻痒感スケール、および掻痒感NRS評価は、本明細書に他の場所に記載されている(例えば、実施例7を参照されたい)。
【0243】
IGA、BSA、EASIおよびSCORADスコアを、クリニック来院毎に評価した。患者は、以下の来院時には5−D掻痒感評価を受けた:スクリーニング、1日目/ベースライン(投与前)、ならびに15、29、43、57、71および85日目(試験最終日)または早期終結。患者は、最後の試験来院まで1日2回、その掻痒感NRSスコアを記録するためにIVRSを用いた。
【0244】
効能変数に関するベースラインは、無作為化の日付またはそれより前の最後の非欠測値と定義される。彼/彼女の無作為化の日付またはそれより前に値を有さない患者については、1回目の用量注射の日付またはそれより前の最後の非欠測値をベースラインとして用いる。
【0245】
C.統計学的方法
安全性および探索的効能変数の概要を、用量群および全体により作成した。安全性および忍容性の概要を、安全性分析セット(SAF)に基づいて行った。安全性分析は、報告された有害事象(AE)、臨床検査評価、バイタルサイン、および12誘導心電図に基づくものであった。
【0246】
全ての分類変数を、名目上のp値および報告された信頼区間を用いるFisherの直接確率検定を用いて分析した。
【0247】
全ての連続変数を、共分散分析(ANCOVA)により分析した。別途特定しない限り、連続尺度のベースラインからの変化の評価および信頼区間の構築は、主要因としての処置および共変量としてのベースライン値を含むANCOVAモデルに基づくものであった。2つの処置群間のベースラインからの調整された平均変化の差異の点推定値および95%CIを提供した。この試験の小さいサンプルサイズのため、探索的効能変数の試験からのp値は、記述目的で提供された。欠測値を、最終観察繰越(LOCF)により帰属させた。
【0248】
D.患者の素因
プラセボ群の患者は最も若く、全患者が非ヒスパニック系ではない処置群と比較して、プラセボ群の患者の33%がヒスパニック系またはラテン系であった。表6は、患者集団の人口特性をまとめたものである。
【0249】
【表7】
【0250】
表7は、患者集団のベースライン疾患特性をまとめたものである。
【0251】
【表8】
【0252】
試験参加者の平均ベースラインIGA、EASI、BSA、および掻痒感NRSは、それぞれ、およそ3.8、28.2、48.5、および6.4であった。
【0253】
E.結果
中等度から重度のADを有する患者へのmAb1の皮下投与は、この試験において安全であり、良好に忍容された。単一の重篤な有害事象を、運動に関連するCPK増加と診断された150mg群の患者について記録した。死亡は報告されなかった。25人の処置された患者または83%が、少なくとも1つの処置中に発生した有害事象(TEAE)を報告した。処置群に由来する最も頻繁なTEAEは、感染および侵入(n=7[29%]対プラセボの1[17%])であり、mAb1を投与した患者においては頭痛であった(n=3[13%]対プラセボの1[17%])。
【0254】
試験から得られたベースラインおよび探索的効能の結果を、
図3〜14にまとめた。mAb1の投与は、いずれのADの探索的評価項目の統計的に有意な改善も誘導しなかった。これは、小さいサンプルサイズおよびプラセボ患者が活性処置群よりも重症度が低く、若かったという事実に起因する可能性がある。
【0255】
〔実施例7〕
中等度から重度のアトピー性皮膚炎を有する患者における皮下投与された抗IL−4R抗体(mAb1)の臨床試験
A.試験設計
この試験は、中等度から重度のアトピー性皮膚炎を有する成人患者における、本明細書では「mAb1」と呼ばれる抗IL−4R mAbの皮下投与の安全性および薬物動態プロファイルを評価するための、12週間の、二重盲検、無作為化、プラセボ対照、連続漸増、反復用量試験であった。中等度から重度のADを有する患者は、12以上の湿疹面積および重症度指数(EASI)ならびに最小10%の体表面積病変を有していた。処置期間は、持続期間で4週間であり、患者は処置期間が終わった後8週間フォローされる。患者を、ベースライン前の少なくとも1週間、局所薬剤(例えば、ピメクロリムス、タクロリムス、および局所コルチコステロイド)から離脱させた。経口コルチコステロイドおよび免疫抑制剤(例えば、シクロスポリン、ミコフェノール酸−モフェチル、IFNγ)も、ベースラインの前の4週間以上禁止した。
【0256】
患者を3:1の比で無作為化して、2つの漸増用量コホート(150mgまたは300mg)のそれぞれにおいてmAb1またはプラセボを受けさせた。この試験は、スクリーニング期間(−14日目から−3日目まで)、処置期間(1日目から29日目まで)(局所ステロイドは許可されなかった)、およびフォローアップ期間(29日目から85日目まで)(局所ステロイドが許可された)からなっていた。処置期間の間に、患者は、安全性、検査値評価のために少なくとも週に1回、および臨床効果評価のために1、4、8、15、22、25および29日目(4週目)にクリニックで診察された。患者は、1、8、15および22日目に試験薬剤の用量を受けた。患者を、試験薬剤の各用量の後2時間にわたって試験部位でモニタリングした。処置期間の試験来院の終わりは、29日目(4週目)であった。フォローアップ期間の間に、患者は36、43、50、57、64、71および85日目(試験来院最終日)にフォローアップ評価のためにクリニックで診察された。
【0257】
B.効能変数
この試験で測定された探索的効能変数は、(1)4週目およびそれぞれの試験来院までに0または1の試験責任医師包括評価(IGA)スコアを達成した患者の割合;(2)ベースラインから各来院までのアトピー性皮膚炎の体表面積病変(BSA)、湿疹面積および重症度指数(EASI)、SCORAD、および5−D掻痒感スケールの変化および変化率;(3)掻痒感数値評価スケール(NRS)のベースラインからの週の変化;(4)4週目までの循環好酸球、TARC、エオタキシン−3、および総IgEのベースラインからの変化;(5)12週目までの循環好酸球、TARC、エオタキシン−3、および総IgEのベースラインからの変化;ならびに(6)4週目までの応答と関連する好酸球、TARC、エオタキシン−3、Phadiatop(商標)結果、および総IgEのベースラインからの変化を含んでいた。
【0258】
効能変数のベースラインは、無作為化の日付での、またはその前の最後の非欠測値と定義される。彼/彼女の無作為化の日付で、またはその前に値を有さない患者については、最初の用量注射の日付での、またはその前の最後の非欠測値を、ベースラインとして用いる。
【0259】
試験責任医師包括評価(IGA):IGAは、0(消失)から5(非常に重篤)までの範囲の6点スケールでADの重症度および処置に対する臨床応答を決定するための臨床試験において用いられる評価スケールである。IGAスコアを、クリニック来院毎に評価した。
【0260】
アトピー性皮膚炎の体表面積病変(BSA):ADにより影響されたBSAを、身体のそれぞれの主要部分(頭部、胴体、上肢、および下肢)について評価し、それぞれの身体部分に由来するパーセンテージの合計として報告した。患者を、以下の来院時にBSAについて評価した:スクリーニング、1日目/ベースライン(投与前)、ならびに15、29、36、43、57、71、および85日目(試験最終日)または早期終結。
【0261】
湿疹面積および重症度指数(EASI):EASIは、ADの重症度および程度を評価するための臨床実務および臨床試験において用いられる検証された尺度である(Hanifinら、2001、Exp.Dermetol.10:11〜18頁)。EASIスコア計算は、個々の徴候の医師による評価[紅斑(E)、硬化/丘疹形成(I)、擦りむき(X)、および苔蘚化(L)]に基づき、ここで、それぞれの徴候は、0=なし、1=軽度、2=中等度、または3=重度とスコア化され、また、面積スコア[罹患した(BSA)%に基づく]に基づき、ここで、0=0%BSA、1=1〜9%BSA、2=10〜29%BSA、3=30〜49%BSA、4=50〜69%BSA、5=70〜89%BSA、6=90〜100%BSAである。
【0262】
身体の主要部分のそれぞれ(頭部、上肢、胴体および下肢)について、EASIスコア=(E+I+X+L)x面積スコアである。総EASIスコアは、重量10%=頭部、20%=上肢、30%=胴体、40%=下肢を用いる部分EASIの加重合計である。可能なEASIスコアの最小値は0であり、可能なEASIスコアの最大値は72であり、ここで、より高いスコアは、アトピー性皮膚炎の重症度が高いことを示す。EASI50の達成(EASIスコアの50%以上の改善)は、評価項目として用いるための臨床的に意義のあるレベルの改善であると皮膚科学試験責任医師によって考えられる。
【0263】
患者は、以下の来院時にEASIスコア評価を受けた:スクリーニング、1日目/ベースライン(投与前)、ならびに15、29、36、43、57、71および85日目(試験最終日)または早期終結。
【0264】
SCORAD:SCORADは、ADの程度および重症度の評価を標準化するために開発された臨床研究および臨床実務において用いられる検証されたツールである(Dermatology 1993、186:23〜31頁)。ADの程度は、それぞれの規定の体面積のパーセンテージとして評価され、全面積の合計として報告され、最大スコアは100%である(全体SCORAD計算において「A」と割当てられる)。ADの6つの特異的症状(紅斑、浮腫/丘疹形成、擦りむき、苔蘚化、滲出/かさぶたおよび乾燥)の重症度を、以下のスケールを用いて評価する:なし(0)、軽度(1)、中等度(2)、または重度(3)(最大18の合計点について、全体SCORAD計算において「B」と割当てられる)。痒みおよび睡眠不足の主観的評価を、患者がそれぞれの症状について記録するか、または視覚的アナログスケール(VAS)上で比較し、ここで、0は痒み(または睡眠不足)なしであり、10は想像できる最悪の痒み(または睡眠不足)であり、可能なスコアの最大値は20である。このパラメータは、全体SCORAD計算において「C」と割当てられる。SCORADスコアは、A/5+7B/2+Cと計算される。最大SCORADスコアは、103である。
【0265】
患者は、以下の来院時にSCORAD評価を受けた:スクリーニング、1日目/ベースライン(投与前)、ならびに15、29、36、43、57、71および85日目(試験最終日)または早期終結。
【0266】
5−D掻痒感スケール:5−D掻痒感スケールは、5次元のバックグラウンドの痒み:程度、持続期間、方向、身体障害、および分布を評価するための臨床試験において用いられる5つの質問のツールである(Elmanら、2010、Brit.J.Dermatol.162:587〜593頁)。患者は、先行する2週間にわたってその症状を「存在する」または1〜5のスケールで評価し、5が程度、持続期間、方向および身体障害における各質問について最も影響されている。単一項目ドメインスコア(持続期間、程度および方向)は、応答選択の下に示される値に等しい(1〜5の範囲)。
【0267】
身体障害ドメインは、日常活動に対する痒みの影響を評価する4つの項目を含む:睡眠、娯楽/社会活動、家事/用事および仕事/学校。身体障害ドメインに関するスコアは、4項目のいずれかに関して最も高いスコアを取ることにより達成される。
【0268】
分布ドメインについては、罹患した身体部分の数を集計(潜在的な合計0〜16)し、その合計を5つのスコアリング瓶に選別する:0〜2の合計=1のスコア、3〜5の合計=2のスコア、6〜10の合計=3のスコア、11〜13の合計=4のスコア、および14〜16の合計=5のスコア。
【0269】
5つのドメインのそれぞれのスコアを別々に達成した後、一緒に合計して、総5−Dスコアを得る。5−Dスコアは、潜在的には5(掻痒感なし)〜25(最も重篤な掻痒感)の範囲であってよい。
【0270】
患者は、以下の来院時に5−D掻痒感評価を受けた:スクリーニング、1日目/ベースライン(投与前)、ならびに15、29、36、43、57、71および85日目(試験最終日)または早期終結。
【0271】
掻痒感数値評価スケール(NRS):掻痒感NRSは、以前の12時間におけるADの結果としての患者の最悪の痒みを評価するために用いられた単一質問形式の評価ツールである。患者は、スクリーニング来院の夕方から1日2回、IVRSに電話し、以下の質問「0〜10のスケールで、0は「痒みなし」であり、10は「想像できる最悪の痒み」である場合、あなたは以前の12時間に経験した痒みの最悪の程度をどのように評価するか?」と尋ねられる。患者は、IVRSを使用する際に、スクリーニング来院時のその掻痒感NRSスコアを記録するように指示され、それぞれの以降のクリニック来院時にコンプライアンスについて問い合わせる。患者は、最後の試験来院まで1日2回、評価スケールを完了させる。
【0272】
ベースラインNRSは、スクリーニング来院の直後とベースライン来院の直前の間の報告されたNRSの平均と定義される。ベースライン後のNRSについては、週平均のNRSは、その週内の報告された毎日のNRSの平均として計算される(日割平均)。
【0273】
C.安全性評価
有害事象および重篤な有害事象をモニタリングすることにより、試験を通して安全性を評価した。
【0274】
有害事象(AE)は、医薬品を投与された対象または臨床調査対象におけるあらゆる望ましくない医学的出来事である。AEは、従って、医薬品の使用と時間的に関連のある、あらゆる好ましくない、意図しない徴候(例えば、検査所見異常)、症状、または疾患であってよく、医薬(被験)品との因果関係の有無は問わない。AEはまた、試験薬物の使用と時間的に関連する元々存在する状態の任意の悪化(すなわち、頻度および/または強度の任意の臨床的に意義のある変化);試験責任医師によって臨床的に意義があると考えられる検査所見異常;ならびに任意の望ましくない医学的出来事も含む。
【0275】
重篤な有害事象(SAE)は、任意の用量で死亡をもたらす;命を脅かす;入院患者の入院もしくは存在する入院の延長を必要とする;持続的もしくは有意な身体障害/無能をもたらす;先天異常/出生異常である;または重要な医学的事象である、あらゆる望ましくない医学的出来事である。
【0276】
さらに、検査値安全性変数、バイタルサイン変数、12誘導心電図(ECG)変数、および身体診察変数を、試験を通して測定した。
【0277】
臨床検査データは、血液検査、血液化学検査および尿検査からなる。血液検査のための血液試料を、試験来院毎に採取した;血清化学検査のための血液試料および尿検査のための尿試料を、スクリーニング時、1日目/ベースライン(投与前)、8日目、15日目、29日目、36日目、57日目、85日目(試験最終日)または対象が試験を中止した場合、早期終結時に全体的な患者の健康を測定するために採取した。
【0278】
バイタルサインパラメータとしては、呼吸数(bpm)、脈拍数(bpm)、収縮期および拡張期血圧(mmHg)ならびに体温(℃)が挙げられる。バイタルサインを、スクリーニング時および1日目/ベースライン(投与前、投与日)、ならびに4、8、15、22、25、29、36および85日目(試験最終日)または早期終結時に収集した。バイタルサインを、1、8、15、および22日目の試験薬物投与後、注射後1および2時間で取った。
【0279】
12誘導ECGパラメータとしては、心室HR、PR間隔、QRS間隔、補正されたQT間隔(QTcF=QT/[RR
0.33]およびQTcB=QT/[RR
0.5])ECG状態:正常、臨床的に意義のない異常または臨床的に意義のある異常が挙げられる。標準的な12誘導ECGを、スクリーニング時、29日目、および85日目(試験最終日)または早期終結時に実施した。
【0280】
徹底的、完全な身体診察を、スクリーニング時、29日目、および85日目(試験最終日)または早期終結時に実施した。
【0281】
D.データ分析
1.探索的効能変数の分析
全分類変数を、名目上のp値および報告された信頼区間を用いるFisherの直接確率検定を用いて分析した。全連続変数を、共分散分析(ANCOVA)により分析した。別途特定しない限り、連続尺度のベースラインからの変化の評価および信頼区間の構築は、主要因としての処置および共変量としてのベースライン値を含むANCOVAモデルに基づくものであった。2つの処置群間のベースラインからの調整された平均変化の差異の点推定値および95%CIを提供した。欠測値を、最終観察繰越(LOCF)法により帰属させた。モデル仮定が保証されなかった事象においては、共変量の順位に基づく分析を用いた。相関分析を、Spearmanの相関係数を用いて実施した。
【0282】
2.安全性データの分析
安全性分析は、報告されたAE、臨床検査評価、バイタルサイン、および12誘導ECGに基づく。検査値変数、バイタルサインおよびECGにおける潜在的に臨床的に意義のある値(PCSV)の閾値は、SAPで定義される。任意の事象または異常を検出するための時間間隔は、試験医薬の注入と試験の終わりの間である。この間隔の外側で収集されたデータは、記述統計学の計算ならびに検査値の評価、バイタルサインおよびECGに関する異常の同定から除外される。
【0283】
E.結果
上記のように、患者を、4週間にわたって週に1回、150mgもしくは300mgの皮下mAb1、またはプラセボで処置した。300mg処置群における診断時のより高い年齢を除いて、人口特性および臨床特性は、一般に処置間で類似していた(表8)。試験集団は主に男性(62.2%)、白人(94.6%)であり、平均年齢は43.6(15.4)歳である。37人の患者のうち、31人(83.8%)が処置を完了し、25人(67.6%)が全試験を完了した。離脱の最多の理由は、効能の欠如であった(4人のプラセボ患者および各処置群の1人)。投与されたmAb1に関する有害事象に起因する離脱はなかった。
【0284】
試験から得られたベースラインおよび探索的効能の結果を、表9〜14にまとめる。
【0285】
【表9】
【0286】
【表10】
【0287】
【表11】
【0288】
【表12】
【0289】
【表13】
【0290】
【表14】
【0291】
【表15】
【0292】
【表16】
【0293】
【表17】
【0294】
【表18】
【0295】
【表19】
【0296】
【表20】
【0297】
F.結論
中等度から重度のアトピー性皮膚炎を有する成人患者への抗IL−4R抗体(mAb1)の皮下投与は、150または300mgの4週間用量後に一般に安全であり、良好に忍容され、有害事象(AE)率はプラセボと類似し、用量限定毒性または重篤なAEはなかった。mAb1に関する最も一般的なAEは、鼻咽頭炎および頭痛であった。mAb1は掻痒感を迅速に(8日目までに)減少させ、用量依存的様式で皮膚疾患を改善させた。150および300mgでのmAb1の投与は、ベースラインと比較して、平均ならびに絶対変化および変化率の両方において、早ければ8日目から85日目までにIGA、EASI、BSA、SCORADおよびNRS掻痒感の有意な改善をもたらした(表9〜14を参照されたい)。29日目の300mg群において、EASI50応答を達成した患者の割合は、71.4%であったのに対して、プラセボについては18.8%(p=0.0025)であり、NRS掻痒感スコアは45.4%減少したのに対して、プラセボについては18.6%であった(p=0.0016)。その効果は、EASI50については85日目まで、NRS掻痒感については75日目まで持続した。300mg処置群については、プラセボからの差異は、処置期間の終了後、追加の6週間にわたって有意であった。mAbは、29日目での他の臨床転帰、IGA(p=0.0002)、EASI(p<0.0001)、BSA(p=0.0037)および5D掻痒感(p<0.0001)の平均変化率を有意に改善させた。これらの改善は一般に、8日目までに観察され、処置の終了後も持続した。処置の終了後にリバウンド現象は観察されなかった。
【0298】
従って、本実施例に示された結果は、mAb1がアトピー性皮膚炎の処置にとって安全であり、有効であることを示している。
【0299】
〔実施例8〕
抗IL−4R抗体を用いる中等度から重度のアトピー性皮膚炎を有する患者の処置:プールされた第1b相試験の分析
中等度から重度のADを有する患者においてAD効能パラメータを測定し、2つの別々の臨床試験からの分析のためにプールした。「試験A」は、アトピー性皮膚炎を有する患者における投与された抗IL−4R抗体(mAb1)の安全性および忍容性を評価するための12週間の二重盲検、無作為化、プラセボ対照、連続漸増用量試験であった。処置期間は4週間であり、患者は処置期間の終了後に8週間フォローされた。患者を4:1の比で無作為化して、3つの漸増用量コホート(75mg、150mgまたは300mg)のそれぞれにおいてmAb1またはプラセボを受けさせた。この試験は、スクリーニング期間(−14日目〜−3日目)、処置期間(1日目から29日目まで)、およびフォローアップ期間(29日目から85日目まで)からなっていた。処置期間の間に、患者を、1、4、8、15、22、25および29日目(4週目)に安全性、検査値および臨床効果の評価のために週に1回、クリニックで診察した。患者は、1、8、15および22日目にmAb1またはプラセボの用量を受けた。処置期間の終了日は、29日目(4週目)であった。患者を、1日目の注射(mAb1またはプラセボ)後6時間、ならびに8、15および22日目の注射後3時間にわたって試験部位でモニタリングした。フォローアップ期間の間に、患者を、36、43、50、57、64、71および85日目(試験来院の終わり)でフォローアップ評価のためにクリニックで診察した。
【0300】
「試験B」は、中等度から重度のADを有する患者における、12週間の、二重盲検、無作為化、プラセボ対照、連続漸増、反復用量試験であった。AD対象に、試験の1、8、15および22日目(4つの週用量)に、150mgもしくは300mgのmAb1、またはプラセボを投与した(本明細書の実施例3を参照されたい)。両試験の全ての投与は、皮下であった。
【0301】
組入れ基準は、(1)18歳以上の男性または女性であること;(2)3年にわたる慢性アトピー性皮膚炎を有すること;(3)12以上のEASIを有すること;(4)3以上のIGA;(5)15%以上のAD病変のBSA(米国内)または10%以上のAD病変のBSA(米国外);(6)局所コルチコステロイド(TCS)またはカルシニューリン阻害剤の安定なレジメンに対する不十分な応答の病歴であった。
【0302】
除外基準は、(1)3.5x10
3/μl未満のWBC;(2)125x10
3/μlの血小板;(3)1.75x10
3/μl未満の好中球;(4)ULNの1.5倍を超えるAST/ALT;(5)B型肝炎またはC型肝炎陽性;および(6)ベースラインの1週間以内のTCSまたはカルシニューリン阻害剤を用いる処置。
【0303】
試験の主要評価項目は、ベースラインから12週目までの処置中に発生した有害事象(TEAE)の発生をモニタリングすることであった。効能変数のための探索的評価項目は、(i)4週目までの0または1のIGAの達成率(%);(ii)ベースラインからのBSAおよびEASIの改善率(%);ならびに(iii)NRSスケールのベースラインからの変化であった。
【0304】
効能変数IGA、BSA、EASI、SCORAD、5−D掻痒感スケール、および掻痒感NRS評価は、本明細書の他の場所に記載されている(例えば、実施例4を参照されたい)。
【0305】
IGA、BSA、EASIおよびSCORADスコアを、クリニック来院毎に評価した。患者は、以下の来院時に5−D掻痒感評価を受けた:スクリーニング、1日目/ベースライン(投与前)、ならびに15、29、36、43、57、71および85日目(試験最終日)または早期終結。患者は、IVRSを用いて、その掻痒感NRSスコアを最後の試験来院まで1日2回記録した。
【0306】
効能変数に関するベースラインは、無作為化の日付での、またはそれより前の最後の非欠測値と定義される。彼/彼女の無作為化の日付またはそれより前に値を有さない患者については、1回目の用量注射の日付またはそれより前の最後の非欠測値をベースラインとして用いる。
【0307】
患者集団のベースライン人口を、以下の表15に提供する。
【表21】
【0308】
平均ベースライン疾患特性を、表16に与える。
【表22】
【0309】
プールされた試験から得られた探索的効能結果を、表17および
図15〜22にまとめ
る。
【0310】
【表23】
【0311】
【表24】
【0312】
【表25】
【0313】
【表26】
【0314】
【表27】
【0315】
【表28】
【0316】
【表29】
【0317】
【表30】
【0318】
【表31】
【0319】
【表32】
【0320】
【表33】
【0321】
【表34】
【0322】
【表35】
【0323】
【表36】
【0324】
mAb1は、中等度から重度のADを有する成人において良好に忍容され、有効であった。mAb1の投与によりAD疾患活動性および重症度を有意に改善した。4週間で、150mgおよび300mgのmAb1は、BSA%(p<0.05)(
図15)、IGA(p<0.001)(
図16)、EASI(p<0.001)(
図17)、および掻痒感NRS(p<0.01、300mg)(
図18)のベースラインからの変化について、プラセボに対して有意な改善を達成した。多くの患者は、150mg(54.5%)および300mg(71.4%)のmAb1対プラセボ(18.8%;両方についてp<0.05)を用いた場合、EASIスコアが50%以上低下した(
図19および20)。多くの患者は、4週目で、プラセボと比較してmAb1を用いた場合にEASI−25、EASI−50およびEASI−75を達成した(
図21)。
【0325】
300mgのmAb1について、BSA%(p<0.02)、IGA(p<0.05)およびEASI(p<0.0001)の有意な改善が2週間以内に認められた。BSA、IGAおよびEASIの改善(p<0.05対プラセボ)は、8週間維持された。4週目でIGA0または1を有する患者の割合は、プラセボより高かったが、統計的に有意ではなかった(
図22)。
【0326】
mAb1投与に関する最も一般的な処置中に発生した有害事象(AE)は、鼻咽頭炎(19.6%対プラセボの12.5%)および頭痛(11.8%対プラセボの6.3%)であった。
【0327】
〔実施例9〕
中等度から重度のアトピー性皮膚炎を有する成人患者における皮下投与された抗IL−4R抗体(mAb1)の平行群、用量範囲臨床試験
A.試験設計
この試験は、中等度から重度のADを有する成人におけるmAb1の週用量の用量応答プロファイルを評価するための、32週間の無作為化、二重盲検、プラセボ対照、平行群試験であった。試験の主な目的は、中等度から重度のADを有する成人患者における、プラセボと比較した複数のmAb1用量レジメンの効能を評価することであった。第2の目的は、(1)中等度から重度のADを有する成人患者における、プラセボと比較した複数のmAb1用量レジメンの安全性を評価すること;(2)中等度から重度のADを有する成人患者における、複数のmAb1用量レジメンの薬物動態(PK)を評価すること;および(3)中等度から重度のADを有する成人患者における、プラセボと比較した複数のmAb1用量レジメンにわたる潜在的な免疫応答を評価することであった。
【0328】
標的集団は、局所医薬を用いて十分に制御することができなかったか、またはさもなければ局所的処置が勧められない(例えば、副作用または安全性のリスク)、中等度から重度のADを有する成人を含んでいた。およそ240〜288人の患者を登録した。適格患者を1:1:1:1:1:1の比で無作為化して、6つの週処置レジメン(5つの活性薬剤、1つのプラセボ)のうちの1つを受けさせた。無作為化は、疾患の重症度(中等度対重度のAD)および地域(日本対その他の世界)により層別化した。行われた投薬スケジールを、表26に与える。
【0329】
【表37】
【0330】
全ての患者は、1日目に2回の注射(負荷用量)を受けた後、毎週の注射を受けた。2週間毎(q2w)および4週間毎(q4w)の用量レジメンについて、次の用量の試験薬物を、それぞれ2週目および4週目に投与した。q2wおよびq4w用量レジメンに割当てられた患者は、mAb1が投与されなかった場合、毎週、容量を一致させたプラセボを受けた。インフォームドコンセントを提供した後、患者をスクリーニング来院時に試験適格性について評価した。適格性基準を満たした患者は、1日目/ベースライン評価、無作為化を受けた後、1日目から15週目まで試験薬物の毎週の注射を受けた。この時間に、患者は毎週のクリニック来院に戻り、数週間は電話での接触のみを要した。患者(および/または医療提供者)は、2、3、4、5、および6回目の来院時に試験薬物を注射する訓練を受け、電話での接触のみを要するより後の試験来院時には試験薬物を自己注射した。患者を、最初の5回の毎週の注射のそれぞれの後、最小で1時間にわたって試験部位で密接にモニタリングした。安全性、検査値、および臨床効果の評価を、特定のクリニック来院時に実施した。処置期間来院の終わりは、主要評価項目を評価した場合、16週目であり、試験薬物の最後の投与の1週間後であった。フォローアップ来院は18週目から32週目まで、2週間毎に行った。試験来院の終わりは32週目であった。必要に応じて、試験責任医師の裁量で、ADのための救命処置(医薬および/または光線療法)を試験患者に提供した。救命処置を必要とした患者は、試験薬物をすぐに中止したが、試験評価のスケジュールに従うことを継続するよう求められた。任意の救命処置を投与する直前に、効能測定値を取得した(試験責任医師包括評価[IGA]、湿疹面積および重症度指数[EASI]など)。DNA分析のための1つの試料およびRNA分析のための複数の試料を、任意選択のゲノムサブ試験に参加することに同意する患者から採取した。
【0331】
試験処置:mAb1皮下投与:1日目から15週目まで、毎週(qw)300mg、300mg q2w、300mg q4w、200mg q2w、または100mg q4w、または1日目から15週目まで、週に1回のプラセボの皮下投与。基本的な商標の局所軟化剤を、−7日目から8日目まで1日2回適用した。
【0332】
試験の評価項目:試験の主要評価項目は、ベースラインから16週目までのEASIスコアの変化率であった。副次的評価項目は、(1)16週目にIGA0(消失)または1(ほぼ消失)を達成する患者の割合;(2)16週目に2以上のIGAスコアの低下を達成する患者の割合;(3)ベースラインから16週目までのEASIスコアの絶対変化;(4)16週目にEASI−50、EASI−75およびEASI−90(EASIスコアのベースラインからの50、75および90%の低下)を達成する患者の割合;(6)16週目にSCORAD−50、SCORAD−75およびSCORAD−90(SCORADスコアのベースラインからの50、75および90%の低下)を達成する患者の割合;(7)掻痒感スコア(NRSおよび4点分類スケール)のベースラインからの絶対変化および変化率;(8)POEMスコアのベースラインからの絶対変化および変化率;(9)GISS構成要素(紅斑、浸潤/集団、擦りむき、および苔蘚化)のベースラインからの変化;(10)GISS累積スコアのベースラインからの変化;(11)ベースラインから32週目までの処置中に発生した有害事象(TEAE)の発生;ならびに(12)複数のmAb1用量レジメンの薬物動態プロファイルを含んでいた。
【0333】
他の探索的評価項目は、(1)疾患重症度スコア(例えば、IGA、EASI、SCORAD)の分布およびベースラインから16週目までの様々な時点での変化;(2)ベースラインから16週目までの様々な時点での掻痒感NRS、掻痒感分類スケール、SCORAD(掻痒感VASおよび睡眠障害VAS)、疾患状態の患者包括評価、処置効果の患者包括評価、DLQI、POEM、EQ−5D、痒みQOL、およびHADSの変化;(3)ベースラインから16週目までの様々な時点での、BSA%、SCORADスコア、EASIおよび掻痒感NRSの絶対変化および変化率;(4)ベースラインから16週目までの様々な時点で2以上のIGAスコアの低下を達成する患者の割合;(5)ベースラインから16週目までの様々な時点で3以上のIGAスコアの低下を達成する患者の割合;(6)16週目から32週目までの効能パラメータの変化;(7)mAb1 ADAの発生およびプロファイル(経時的力価);(8)ADAの形成および持続性に対するmAb1血漿濃度の効果;(9)mAb1血漿濃度に対するADAの効果;(14)臨床転帰(安全性および効能)に対するADAの効果;(10)臨床転帰に対するPKパラメータ(CmaxおよびAUC)の効果;ならびに(11)薬物曝露および臨床転帰に対する体重の効果を含んでいた。
【0334】
試験設計の原理:この試験の目的は、確認的第3相試験においてさらに調査される最適な用量レジメンを見出すことであった。この第2b相試験の設計は、中等度から重度のADを有する患者において12週間連続で毎週(qw)投与された300mg用量のmAb1の安全性および効能を調査した、以前のmAb1試験からの結果により情報提供されたものであった。第2b相用量レジメンの選択はまた、以前の臨床試験からの薬物動態(PK)と薬力学(PD)パラメータ(PK/PDモデル)との、観察され、シミュレートされた相関によっても支持された。用量範囲の高いアンカー(anchor)として300mg qw(すなわち、第2a相で試験された用量レジメン)を用いる場合の目標は、最大もしくはほぼ最大の効能を示す最も低い用量レジメンを同定すること、および/またはmAb1により生じる安全性プロファイルに応じて、最良の利益/危険比を示す用量レジメンを見出すことであった。従って、潜在的に治療レベルを超える用量レジメン(すなわち、高いアンカー)と、明らかに最適ではない効能(すなわち、低いアンカー)との間のスペクトルを合理的に包含するように、5つのmAb1用量レジメンを選択した。このプロトコールはまた、対照とのそれぞれの活性用量レジメンの比較を可能にするプラセボ群も含んでいた。
【0335】
負荷用量の使用:多くの患者は、その後の来院で投与された2倍の名目上の用量からなる、負荷用量を1日目に受けた。これにより、定常状態に到達するmAb1の全身濃度および標的化された全身濃度が、臨床利益が得られるまでの時間をより速く、潜在的に減少させることができる。機能的mAb1の全身濃度が調査された全用量レジメンについて安定化することができるように、試験処置を16週間投与した。薬物動態モデリングにより、「4週間毎」(q4w)の用量レジメンが初期負荷用量後にトラフ濃度の減少をもたらし得ることが示唆された。結果として、これらのレジメンの免疫能力を、より短い処置経過内で完全に発現させることができない。試験薬物の最後の用量後、全ての患者をさらに16週間フォローし、mAb1のクリアランスが試験来院が終わる前に実質的に完了することを確保した(定量下限以下の血漿濃度)。
【0336】
用量選択のための原理:この試験で投与された最も高いmAb1用量レジメンは、300mg qwであった。短い(4週間)処置経過として与えた場合、この用量レジメンは安全であり、それをより低い用量レジメン(150mg qwおよび75mg qw)と一緒に調査した初期第1b相臨床試験において最も有効であると考えられた。薬物動態モデリングにより、300mg qwが長い実行においては治療レベルを超える可能性があることが示唆された:mAb1血漿濃度は4週目までに定常状態に到達せず、標的、すなわち、IL−4受容体の膜結合アルファサブユニットを飽和するのに必要とされるものよりかなり上のレベルで安定化するよう計画された。しかしながら、血漿濃度が調査した全ての用量レジメンについて定常状態に到達することができるように、より長い試験処置(12週間以上)の文脈において、300mg qwを、より低い用量レジメンと比較することによってこれを確認する必要があった。300mg qwを初期の試験(例えば、第2a相概念実証)において12週間投与したが、この用量レジメンを第2b相において繰り返して、第2a相の結果を確認し、同じ試験内でのより低い用量レジメンとの直接比較が可能になった。従って、300mg qwは、本試験における用量範囲の高いアンカーであった。
【0337】
用量レジメン範囲の低いアンカーは、q4wで投与された100mgであった。PK/PDモデリングに基づいて、定常状態での得られるmAb1血漿濃度は、一貫して標的媒介性クリアランスより下(すなわち、mAb1除去が主にIL−4受容体へのその結合により達成されるような十分に低いレベルで)であると期待されたが、これはこの用量レジメンと関連する臨床応答が不完全であったことを示唆している。他の3つの用量レジメンを、高いアンカーと低いアンカーとの間で選択した。これらの用量レジメンおよびその選択のための主な原理の概要を、以下に提供する:
・300mg qw:高いアンカー。第2a相で試験されたものと同じ用量レジメン。
・2週間毎(q2w)に300mg:PK/PDデータおよびモデルに基づく高い成功確率。複数の投薬間隔にわたって治療薬物レベルを維持するのに十分であり得る。
・300mg q4w:PKモデリングにより、mAb1血漿レベルが負荷用量の投与後急速に60mg/Lより上に上昇し、速い作用開始と関連することが示された。q4w投与は、長時間にわたって治療効果を維持するのに十分であり得る。300mg用量は利用可能な最も高いものであるため、このレジメンはq4w投与の効能を証明する最良の機会を有していた。
・200mg q2w:最大治療効果に達することなく、いくつかの効能が期待された。用量応答評価およびさらなるPK/PDモデリングにとって有用である。q2wレジメンの全スペクトルを評価するのに役立つ。
・100mg q4w:低いアンカー。おそらく最適ではない有効用量。
・プラセボ:任意の見かけの薬物効果のための信頼できる参照を提供した。
【0338】
組入れ基準および除外基準:患者は、試験への含有にとって適格であるための以下の基準を満たさなければならなかった:(1)18歳以上の男性または女性;(2)スクリーニング来院前に少なくとも3年間存在した、慢性AD(AADコンセンサス基準[Eichenfeld 2004]による);(3)スクリーニングおよびベースライン来院時に16以上のEASIスコア;(4)スクリーニングおよびベースライン来院時に3以上のIGAスコア(0〜4のIGAスケールで);(5)スクリーニングおよびベースライン来院時に10%以上のAD病変の体表面積(BSA);(6)局所医薬を用いる外来処置に対する不十分な応答の最近の履歴(スクリーニング来院前の3カ月以内)が文書化された患者、または局所処置がさもなければ勧められない患者(例えば、重要な副作用もしくは安全性のリスクのため)
*;(7)患者はベースライン来院前の少なくとも7日間にわたって1日2回、安定用量の添加剤を含まない基本的商標の皮膚軟化剤を適用していなければならない;(8)全てのクリニック来院および試験関連手順を満たす意思およびそれをできること;(9)試験関連質問票を理解し、完了することができること;ならびに(10)インフォームドコンセントに署名すること。
*注意:このプロトコールの目的のために、不十分な応答とは、少なくとも28日間または製剤処方情報により推奨される最大期間(例えば、超強力な局所コルチコステロイドについては、14日間)のいずれか短い方にわたって毎日適用される中程度から高い効力の局所コルチコステロイド(±必要に応じて、局所カルシニューリン阻害剤)を用いる処置にも拘らず、寛解または低い疾患活動状態(例えば、IGA0=消失から2=軽度まで)を達成し、維持することができないことを表した。重要な副作用または安全性の危険は、試験責任医師または患者の主治医により評価された場合、潜在的な処置利益を上回るもの(例えば、過敏性反応、有意な皮膚萎縮、全身効果など、またはその切迫)である。
【0339】
以下の基準のいずれかを満たした患者は、この試験に参加するのに不適格であった:(1)mAb1を用いる以前の処置;(2)ベースライン来院前の、8週間以内または5半減期以内(既知の場合)のいずれか長い方の被験薬物を用いる処置;(3)ベースライン来院前の4週間以内の以下の処置、または試験処置の最初の4週間のそのような処置を必要とし得る任意の状態:全身コルチコステロイド、免疫抑制薬/免疫調節薬(例えば、シクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチル、IFN−γ、アザチオプリンもしくはメトトレキサート)、またはADのための光線療法;(4)ベースライン来院前の1週間以内の局所コルチコステロイド、タクロリムス、および/またはピメクロリムスを用いる処置;(5)以下のようなバイオ医薬品を用いる処置:限定されるものではないが、ベースライン来院前の6カ月以内、もしくはリンパ球およびCD19+リンパ球計数が正常に戻るまでのいずれか長い方のリツキシマブなどの任意の細胞枯渇剤、任意の適応症についてベースライン来院前の16週間以内、もしくは皮膚科学的適応症については5年以内の、インフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブ、セルトリズマブペゴール、アバタセプト、エタネルセプト、アナキンラ、または5半減期(既知の場合)もしくは16週間以内のいずれか長い方の他のバイオ医薬品;(6)ベースライン来院前の1週間以内の、医学的デバイスとして分類される処方保湿剤(例えば、Atopiclair(登録商標)、MimyX(登録商標)、Epicerum(登録商標)、Cerave(登録商標)など)を用いるADの処置;(7)ベースライン来院前の4週間以内の日焼け室/日焼けサロンの規則的使用(週に2回を超える来院);(8)試験処置中の任意の禁止医薬および手順(限定されるものではないが、局所タクロリムスおよびピメクロリムス;コルチコステロイド;Atopiclair(登録商標)、MimyX(登録商標)、Epicerum(登録商標)、Cerave(登録商標)などの医学的デバイスとして分類される処方保湿剤;アレルゲン免疫療法;免疫抑制/免疫調節物質を用いるADのための全身処置;生(弱毒化)ワクチンまたは被験薬物(mAb1以外のもの)を用いる処置;主な選択的手術)の使用の計画または予測;(9)ベースライン来院前の12週間以内の生(弱毒化)ワクチンを用いる処置;(10)スクリーニング来院前の4週間以内の抗生物質、抗ウイルス剤、抗寄生虫剤、抗原虫剤、もしくは抗真菌剤を用いる処置を要する慢性もしくは急性感染、またはスクリーニング来院前の1週間以内の表在性皮膚感染;(11)試験責任医師により判定された場合、感染の消散にも拘らず、侵襲性日和見感染(例えば、ヒストプラスマ症、リステリア症、コクシジオイデス症、ニューモシスティス症、アスペルギルス症)の病歴などの既知の免疫抑制、もしくは免疫抑制の疑い、またはさもなければ、異常な頻度の感染再発、もしくは免疫不全状態を示唆する長期感染;(12)スクリーニング来院時でのヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染またはHIV血清陽性の既知の病歴;(13)スクリーニング来院時のB型肝炎表面抗原(HBsAg)、B型肝炎コア抗体(HBcAb)、またはC型肝炎抗体陽性または不確定;(14)スクリーニング来院時の正常上限値を3倍以上(>3xULN)のトランスアミナーゼ(ALTおよび/またはAST)の上昇;(15)処置された膣トリコモナス症以外の、ベースライン来院前の12カ月以内の臨床内部寄生虫症の病歴;(16)試験評価を妨害し得る皮膚合併症の存在;(17)完全に処置された頸部のin situがん腫、完全に切除された皮膚の非転移性扁平上皮がん腫または基底細胞がん腫を除く、ベースライン来院前の5年以内の悪性腫瘍の病歴;(18)非悪性リンパ増殖性障害の病歴;(19)その後の医学的評価(例えば、糞便検査、血液試験など)が寄生虫感染/侵入の可能性を除外しない限り、環境が寄生虫曝露と一致する内部寄生虫症の流行領域(例えば、滞在の延長、田舎またはスラム地域、流水の欠如、調理されていない、あまり調理されていない、またはさもなければ潜在的に汚染された食品の消費、キャリアまたはベクターとの密接な接触など)での滞在またはそこへの最近の旅行(ベースライン来院前の12カ月以内)などの、寄生虫感染の高い危険性;(20)スクリーニング来院前の2年以内のアルコールまたは薬物乱用の病歴;(21)試験責任医師の判断において、試験への患者の参加に有害に影響する重度の併発疾患。例としては、限定されるものではないが、平均余命が短い患者、糖尿病が制御されていない患者(HbA1c≧9%)、心血管状態(例えば、New York Heart Associationの分類によるステージIIIまたはIVの心不全)、重度の腎臓状態(例えば、透析患者)、肝臓−胆管状態(例えば、Child−PuigクラスBまたはC)、神経状態(例えば、脱髄疾患)、活動性の主な自己免疫疾患(例えば、狼瘡、炎症性腸疾患、関節リウマチなど)、他の重度の内分泌、胃腸、代謝、肺、またはリンパ系疾患を有する患者が挙げられる。この基準の下で除外される患者の特定の理由を、試験文書(チャートノート、症例報告書[CRF]など)に書き留める;(22)試験責任医師の意見において、新しい、および/または不十分に理解された疾患が、この臨床試験への彼/彼女の参加の結果として試験患者に対して不合理な危険をもたらし得る、患者の参加を信頼性の低いものにし得る、または試験評価を妨害し得ることを示唆する、スクリーニング時の関連する検査値異常などの任意の他の医学的または心理学的状態。この基準の下で除外される患者の特定の理由を、試験文書(チャートノート、CRFなど)に書き留める;(23)患者がこの試験に参加している間の大きな手術の計画;(24)患者が調査チームの一員または彼/彼女の近親者である;(25)妊娠中または授乳中の女性;ならびに(26)生殖能力があり、性的に活発である場合、十分な避妊を用いる意欲がないこと。十分な避妊は、試験期間を通して、および試験薬物の最後の投与後16週間にわたって、有効かつ許容される避妊方法を一貫して実施することに対する同意と定義される。
【0340】
B.安全性
有害事象および重篤な有害事象をモニタリングすることによって、試験を通して安全性を評価した。
【0341】
有害事象(AE)は、医薬品を投与された対象または臨床調査対象における任意の望ましくない医学的出来事である。AEは、従って、医薬品の使用と時間的に関連のある、あらゆる好ましくない、意図しない徴候(例えば、検査所見異常)、症状、または疾患であってよく、医薬(調査的)品との因果関係の有無は問わない。AEはまた、試験薬物の使用と時間的に関連する元々存在する状態の任意の悪化(すなわち、頻度および/または強度の任意の臨床的に意義のある変化);試験責任医師によって臨床的に意義があると考えられる検査所見異常;ならびに任意の望ましくない医学的出来事も含む。
【0342】
重篤な有害事象(SAE)は、任意の用量で死亡をもたらす;命を脅かす;入院患者の入院もしくは存在する入院の延長を必要とする;持続的もしくは有意な身体障害/無能をもたらす;先天異常/出生異常である;または重要な医学的事象である、あらゆる望ましくない医学的出来事である。
【0343】
さらに、検査値安全性変数、バイタルサイン変数、12誘導心電図(ECG)変数、および身体診察変数を、試験を通して測定した。
【0344】
臨床検査データは、血液検査、血液化学検査および尿検査からなる。血液検査のための血液試料を、試験来院毎に採取した;血清化学検査のための血液試料および尿検査のための尿試料を、スクリーニング時、1日目/ベースライン(投与前)、15日目、29日目、43日目、57日目、71日目、85日目、99日目、113日目、141日目、169日目、および197日目(試験最終日)または対象が試験を中止した場合、早期終結時に全体的な患者の健康を測定するために採取した。
【0345】
バイタルサインパラメータとしては、呼吸数(bpm)、脈拍数(bpm)、収縮期および拡張期血圧(mmHg)ならびに体温(℃)が挙げられる。バイタルサインを、スクリーニング時および1日目/ベースライン(投与前、投与日)、ならびに4、8、15、22、25、29、43、64、71、85、99、113、127、141、155、169、183、197および211日目(試験最終日)または早期終結時に収集した。バイタルサインを、1、8、15、および22日目の試験薬物投与後、注射後1および2時間で取った。
【0346】
12誘導ECGパラメータとしては、心室HR、PR間隔、QRS間隔、補正されたQT間隔(QTcF=QT/[RR
0.33]およびQTcB=QT/[RR
0.5])ECG状態:正常、臨床的に意義のない異常または臨床的に意義のある異常が挙げられる。標準的な12誘導ECGを、スクリーニング時、29日目、および113日目(処置最終日)または早期終結時に実施した。
【0347】
徹底的、完全な身体診察を、スクリーニング時、29日目、および113日目(処置最終日)または早期終結時に実施した。
【0348】
C.効能変数
効能変数IGA、BSA、EASI、SCORAD、5−D掻痒感スケール、および掻痒感NRS評価は、本明細書の他の場所に記載されている(例えば、実施例7を参照されたい)。
【0349】
IGA、BSA、EASIおよびSCORADスコアを、クリニック来院毎に評価した。患者は、以下の来院時に5−D掻痒感評価を受けた:スクリーニング、1日目/ベースライン(投与前)、113日目(処置最終日)、および211日目(試験最終日)または早期終結。患者はIVRSを用いて、その掻痒感NRSスコアを最後の試験来院まで1日2回記録した。
【0350】
さらに、包括個人徴候スコア(GISS)、掻痒感分類スケール、患者向け湿疹尺度(POEM)、皮膚科学的生活の質指数(DLQI)、痒みQOL、EQ−50、HADS、ならびに疾患状態および処置効果の患者包括評価などの他の変数も評価した。
【0351】
効能変数に関するベースラインは、無作為化の日付またはそれより前の最後の非欠測値と定義された。彼/彼女の無作為化の日付またはそれより前に値を有さない患者については、1回目の用量注射の日付またはそれより前の最後の非欠測値をベースラインとして用いた。
【0352】
〔実施例10〕
中等度から重度のアトピー性皮膚炎を有する成人患者における皮下投与された抗IL−4R抗体(mAb1)の反復用量臨床試験
A.試験設計
この試験は、中等度から重度のアトピー性皮膚炎を有する患者において皮下投与された、本明細書では「mAb1」と呼ばれる、抗IL−4R mAbの28週間の無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験であった。処置期間は、患者については12週間の期間、次いで、処置が終わった後さらに16週間であった。
【0353】
109人の患者が含まれ、試験のために1:1の比で無作為化した(プラセボの54人および300mgの抗体の55人)。43人の患者(プラセボの30人および300mg群の13人)が試験から離脱した。無作為化を、IgEレベルによって層別化して(スクリーニング来院時にIgE<150kU/L対≧150kU/L)、外因型または内因型のADを有する患者においてmAb1の効能を試験した。適格性基準を満たした患者は、1日目/ベースライン評価、無作為化を受けた後、300mgのmAb1またはプラセボSCを受けた。それぞれの週用量の試験薬物を、1回の2mL注射として与えたか、または2回の1mL注射に分割した。患者は毎週のクリニック来院に戻り、8、15、22、29、36、43、50、57、64、71および78日目に試験薬物の注射を受けた。患者を、試験薬物の各用量後に最小で2時間にわたって試験部位で密接にモニタリングした。処置期間の終わりは85日目であった。フォローアップ来院は92、99、106、113、120、127、134、141、148、155、162、169、176、183、190日目、ならびに197日目の試験来院の終わりに行った。
【0354】
組入れ基準は以下の通りであった:(1)18歳以上の男性または女性;(2)スクリーニング来院前に少なくとも3年間存在していた、HannifinおよびRajkaのEichenfield改訂基準により診断された、慢性AD;(3)スクリーニングおよびベースライン来院時に16以上のEASIスコア;(4)スクリーニングおよびベースライン来院時に3以上のIGAスコア;(5)スクリーニングおよびベースライン来院時に10%以上のAD病変のBSA;(6)スクリーニング来院より前の最後の3カ月以内のADのための処置としての局所コルチコステロイドまたはカルシニューリン阻害剤を用いる安定(1カ月以上)なレジメンに対する不十分な応答の履歴;(7)患者はベースライン来院前の少なくとも7日間にわたって1日2回、安定用量の添加剤を含まない基本的商標の皮膚軟化剤を適用していなければならない;(8)全てのクリニック来院に戻り、全ての試験関連手順を完了させる意思、約束、および能力ならびにインフォームドコンセント(ICF)に署名する意思と能力。
【0355】
除外基準は以下の通りであった:(1)mAb1を用いる以前の処置;(2)スクリーニング来院時の以下の検査値異常のいずれかの存在:3.5x10
3/μL未満の白血球数;125x10
3/μL未満の血小板数;1.75x10
3/μL未満の好中球数;ULNの1.5倍を超えるアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)/アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT);およびULNの2倍を超えるCPK;(3)スクリーニング来院時のB型肝炎表面抗原、B型肝炎コア抗体、またはC型肝炎抗体陽性または不確定結果;(4)スクリーニング(来院1)前の4週間以内の新しい定期的運動の開始または以前の定期的運動に対する大きな変更。対象は、試験期間にわたって同様の運動レベルを維持し、試験期間にわたる通常ではない激しい運動を控える意思を有さなければならなかった;(5)ベースライン来院前の、8週間以内または既知の場合、5半減期以内のいずれか長い方の被験薬物を用いる処置;(6)ベースライン来院より前の12週間以内の生(弱毒化)ワクチンを用いる処置;(7)ベースライン来院前の6カ月以内のアレルゲン免疫療法を用いる処置;(8)ベースライン来院前の4週間以内のロイコトリエン阻害剤を用いる処置;(9)ベースライン来院前の4週間以内の全身コルチコステロイドを用いる処置;(10)ベースライン来院前の1週間以内の局所コルチコステロイド、タクロリムス、および/またはピメクロリムスを用いる処置;(11)ベースライン来院前の4週間以内の、免疫抑制/免疫調節物質、例えば、シクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチル、IFN−γ、光線療法(狭帯域uvB、uvB、uvA1、プソラレン+uvA)、アザチオプリン、メトトレキサート、またはバイオ医薬品を用いるADのための全身処置;(12)ベースライン来院前の4週間以内の任意の週での3回以上の漂白浴;(13)ベースライン来院前の1週間以内の、医学的デバイス(例えば、Atopiclair(登録商標)、MimyX(登録商標)、Epicerum(登録商標)、Cerave(登録商標)など)を用いるADの処置;(14)スクリーニング来院前の4週間以内の経口もしくはIVの抗生物質、抗ウイルス剤、抗寄生虫剤、抗原虫剤、もしくは抗真菌剤を用いる処置を要する慢性もしくは急性感染、またはスクリーニング来院前の1週間以内の表在性皮膚感染;(15)HIV感染の既知の病歴;(16)ドキシサイクリンまたは関連化合物に対する過敏性反応の病歴;(17)膣トリコモナス症以外の臨床寄生虫感染の病歴;(18)完全に処置された頸部のin situがん腫、および皮膚の非転移性扁平上皮がん腫または基底細胞がん腫の病歴を有する患者を除く、ベースライン来院前の5年以内の悪性腫瘍の病歴;(19)試験への患者の参加の長さの間の手術の計画;(20)スクリーニング来院前の4週間以内の日焼け室/日焼けサロンの使用;(21)精神、心臓、腎臓、神経、内分泌、代謝もしくはリンパ系疾患などの有意な併発疾患もしくは有意な疾患の病歴、またはこの試験への対象の参加に有害に影響した任意の他の疾患もしくは状態;(22)妊娠中または授乳中の女性;ならびに/または(23)十分な避妊を用いる意欲。十分な避妊は、試験期間を通して、および試験薬物の最後の投与後16週間にわたって、有効かつ許容される避妊方法を一貫して実施することに対する同意と定義される。女性については、十分な避妊方法は、ホルモン避妊薬、子宮内デバイス(IUD)、または二重障壁避妊(すなわち、コンドーム+ペッサリー、コンドームまたはペッサリー+殺精子剤ゲルまたは気泡)と定義される。男性については、十分な避妊方法は、二重障壁避妊(すなわち、コンドーム+ペッサリー、コンドームまたはペッサリー+殺精子剤ゲルまたは気泡)と定義される。女性については、更年期は生理がない24カ月と定義される;問題がある場合、25U/mL以上の卵胞刺激ホルモンを記録しなければならない。子宮摘出術、両側卵巣摘出術、または両側卵管結紮術を、必要に応じて記録しなければならない。
【0356】
B.効能変数
主要評価項目は、ベースラインから12週目までのEASIスコアの変化率であった。この試験で測定された副次的評価項目は、(1)12週目で0または1の試験責任医師包括評価(IGA)スコアを達成した患者の割合;(2)ベースラインから12週目までにEASIスコアの50%以上の全体的改善(EASI50とも呼ばれる)を達成した患者の割合;(3)ベースラインから12週目までのEASIスコアの変化;(4)IGAスコア、アトピー性皮膚炎の体表面積病変(BSA)、湿疹面積および重症度指数(EASI)、SCORAD、掻痒感NRSおよび5−D掻痒感スケールの、ベースラインから12週目までの変化および変化率;(5)ベースラインから28週目までのTEAEの発生;(6)応答と関連する好酸球、TARC、Phadiatop(商標)結果、および総IgEのベースラインからの変化;(7)ベースラインから12週目までのQoLIADの変化;(8)ベースラインから12週目までに2以上のIGAスコアの低下を達成する患者の割合;(9)ベースラインから12週目までに3以上のIGAスコアの低下を達成する患者の割合;ならびに(10)循環好酸球、TARCおよび総IgEのPD応答を含んでいた。
【0357】
効能変数に関するベースラインは、無作為化の日付またはそれより前の最後の非欠測値と定義される。彼/彼女の無作為化の日付またはそれより前に値を有さない患者については、1回目の用量注射の日付またはそれより前の最後の非欠測値をベースラインとして用いる。
【0358】
調査手順
効能変数IGA、BSA、EASI、SCORAD、5−D掻痒感スケール、および掻痒感NRS評価は、本明細書の他の場所に記載されている(例えば、実施例7を参照されたい)。
【0359】
IGA、BSA、EASIおよびSCORADスコアを、クリニック来院毎に評価した。患者は、以下の来院時に5−D掻痒感評価を受けた:スクリーニング、1日目/ベースライン(投与前)、ならびに15、29、43、57、71、85、99、113、127、141、155、169、183および197日目(試験最終日)または早期終結。患者はIVRSを用いて、その掻痒感NRSスコアを最後の試験来院まで1日2回記録した。
【0360】
アトピー性皮膚炎に関する生活の質指数(QoLIAD):QoLIADは、QoLに対するAD疾患症状および処置の影響を評価するための臨床実務および臨床試験において用いられる25項目の検証された質問票である。その形式は0〜25のスコアリングシステムを用いる25項目の単純なyes/noの応答である;スコアが高いほど、QoLが良くないことを示す。質問票を、スクリーニング時および1日目/ベースライン(投与前)、ならびに29、57、85、99、113、127、141、155、169、183および197日目(試験最終日)または早期終結時に施した。
【0361】
C.被験処置
mAb1医薬品は、SC投与のために5mlのガラスバイアル中で凍結乾燥粉末として供給された。SC送達した場合、mAb1医薬品を2.5mlの注射用滅菌水で再構成させて、150mg/mLのmAb1を含有する溶液を得た。試験したmAb1の用量レベルは、SC投与について300mgであった。mAb1またはプラセボを、1日目/ベースラインならびに8、15、22、29、36、43、50、57、64、71および78日目にクリニックで1回(2mL)または2回(1mL)SC注射として投与した。各週用量の試験薬物を1回の2mL注射として与えるのが好ましかったが、各週用量を2つの1mL注射に分割することができる。皮下注射部位を、以下の部位:腕の後ろ、腹部(臍または腰部を除く)、および大腿上方の間で交代させた。四肢への投与は、異なる吸収およびバイオアベイラビリティの可能性のため許容されなかった。同日に複数の注射の投与が必要であった場合、それぞれの注射を異なる注射部位で送達した(例えば、一方の注射は腹部の右下四半部に投与し、他方の注射は腹部の左下四半部に投与する)。皮下注射部位を交代させて、同じ部位に2週連続で注射しないようにした。
【0362】
プラセボ一致mAb1を、mAb1と同じ製剤中で製造したが、抗体は添加しなかった。
【0363】
患者を、試験薬物の各用量後、最小で2時間、試験部位でモニタリングした。
【0364】
さらに、患者は、ベースライン来院前の少なくとも7日間および試験参加を通して1日2回、添加剤を含まない、基本的な商標の皮膚軟化剤の安定用量を適用することが必要であった。患者は、IVRSまたはIWRSを用いて試験中のバックグラウンド処置のコンプライアンスを報告した。このシステムは、患者に、皮膚軟化剤使用に関する以下の質問:「あなたは皮膚の罹患領域に試験医師によって認可された保湿剤を使用しましたか?」に答えるよう促すものであった。
【0365】
D.安全性評価
有害事象および重篤な有害事象をモニタリングすることにより、試験を通して安全性を評価した。
【0366】
有害事象(AE)は、医薬品を投与された対象または臨床調査対象における任意の望ましくない医学的出来事である。AEは、従って、医薬品の使用と時間的に関連のある、あらゆる好ましくない、意図しない徴候(例えば、検査所見異常)、症状、または疾患であってよく、医薬(被験)品との因果関係の有無は問わない。AEはまた、試験薬物の使用と時間的に関連する元々存在する状態の任意の悪化(すなわち、頻度および/または強度の任意の臨床的に意義のある変化);試験責任医師によって臨床的に意義があると考えられる検査所見異常;ならびに任意の望ましくない医学的出来事も含む。
【0367】
重篤な有害事象(SAE)は、任意の用量で死亡をもたらす;命を脅かす;入院患者の入院もしくは存在する入院の延長を必要とする;持続的もしくは有意な身体障害/無能をもたらす;先天異常/出生異常である;または重要な医学的事象である、あらゆる望ましくない医学的出来事である。
【0368】
さらに、検査値安全性変数、バイタルサイン変数、12誘導心電図(ECG)変数、および身体診察変数を、試験を通して測定した。
【0369】
臨床検査データは、血液検査、血液化学検査および尿検査からなる。血液検査のための血液試料を、試験来院毎に採取した;血清化学検査のための血液試料および尿検査のための尿試料を、スクリーニング時、1日目/ベースライン(投与前)、15日目、29日目、43日目、57日目、71日目、85日目、99日目、113日目、141日目、169日目、および197日目(試験最終日)または対象が試験を中止した場合、早期終結時に全体的な患者の健康を測定するために採取した。
【0370】
バイタルサインパラメータとしては、呼吸数(bpm)、脈拍数(bpm)、収縮期および拡張期血圧(mmHg)ならびに体温(℃)が挙げられる。バイタルサインを、スクリーニング時および1日目/ベースライン(投与前、投与日)、ならびに8、15、22、29、36、43、50、57、64、71、78、85、99、113、141、169、および197日目(試験最終日)または早期終結時に収集した。バイタルサインを、1、8、15、22、29、36、43、50、57、64、71および78日目の試験薬物投与後、注射後1および2時間で取った。
【0371】
12誘導ECGパラメータとしては、心室HR、PR間隔、QRS間隔、補正されたQT間隔(QTcF=QT/[RR
0.33]およびQTcB=QT/[RR
0.5])ECG状態:正常、臨床的に意義のない異常または臨床的に意義のある異常が挙げられる。標準的な12誘導ECGを、スクリーニング時、141日目、および197日目(試験最終日)または早期終結時に実施した。
【0372】
研究試料(血清/RNA/血漿)を、スクリーニング時および1日目/ベースライン(投与前)、ならびに8、15、22、29、57、85、および197日目(試験最終日)または早期終結時、ならびにスケジュールにない来院時に採取した。
【0373】
徹底的、完全な身体診察を、スクリーニング時、85日目、および197日目(試験最終日)または早期終結時に実施した。
【0374】
E.データ分析
1.探索的効能変数の分析
全分類変数を、名目上のp値および報告された信頼区間を用いるFisherの直接確率検定を用いて分析した。全ての連続変数を、ベースラインIgE層(スクリーニング来院時に<150kU/L対≧150kU/L)を用いる共分散分析(ANCOVA)により分析した。別途特定されない限り、連続尺度のベースラインからの変化の評価および信頼区間の構築は、主要因としての処置および共変量としてのベースライン値を含むANCOVAモデルに基づくものであった。2つの処置群間のベースラインからの調整された平均変化の差異の点推定値および95%CIを提供した。欠測値を、最終観察繰越(LOCF)法により帰属させる。モデル仮定が保証されない事象においては、共変量の順位に基づく分析を用いる。
【0375】
2.安全性データの分析
安全性分析は、報告されたAE、臨床検査評価、バイタルサイン、および12誘導ECGに基づく。検査変数、バイタルサインおよびECGにおける潜在的に臨床的に意義のある値(PCSV)の閾値は、SAPで定義される。任意の事象または異常を検出するための時間間隔は、試験医薬の注入と試験の終わりの間である。この間隔の外側で収集されたデータは、記述統計学の計算ならびに検査値の評価、バイタルサインおよびECGに関する異常の同定から除外される。
【0376】
F.安全性:結果
mAb1は一般に好ましい安全性プロファイルで良好に忍容された。全体的な有害事象(AE)プロファイルは、健康な集団に特徴的なものであった。死亡は報告されなかった。SAEを示した患者は8人であり、そのうちの1人はmAb1群(顔面骨骨折)にあり、7人はプラセボ群(狭心症、蜂巣炎、ヘルペス性湿疹、皮膚細菌感染、腎不全、喘息による危機、肺障害およびアトピー性皮膚炎)にあった。試験薬物の中止をもたらすTEAEを示した患者は8人であり、そのうちの1人はmAb1群にあり、7人はプラセボ群にあった。少なくとも1つのTEAEを示した患者は87人(mAb1群のn=43人[78.2%]とプラセボ群の44人[81.5%])であった。最も頻繁なTEAEは、mAb1を投与された対象における鼻咽頭炎感染であった(n=22人[40%]とプラセボの10人[18.5%])。処置群における他のTEAEは、眼の感染、神経系障害、および一般的な障害ならびに投与部位状態を含んでいた。その他の臨床的に意義のある臨床検査結果(血液化学検査、血液検査、または尿検査)は試験中に報告されなかった。あらゆる検査パラメータの平均/中央ベースラインにおける傾向は認められなかった。試験を通して体温または脈拍のベースラインからの平均または中央変化に有意な傾向はなかった。身体診察結果、ECGまたはバイタルサインに関する臨床的に意義のある異常は認められなかった。
【0377】
中等度から重度のADを有する成人患者へのmAb1の皮下投与は、一般に安全であり、良好に忍容された。
【0378】
G.効能:結果
試験から得られたベースラインおよび探索的効能結果を、
図23〜33および表27〜35にまとめる。上記のように、患者を12週間にわたって週1回、300mgの皮下mAb1、またはプラセボで処置した。
【0379】
【表38】
【0380】
【表39】
【0381】
【表40】
【0382】
【表41】
【0383】
【表42】
【0384】
【表43】
【0385】
【表44】
【0386】
【表45】
【0387】
【表46】
【0388】
【表47】
【0389】
H.結論
中等度から重度のアトピー性皮膚炎を有する成人患者への抗IL−4R抗体(mAb1)の皮下投与は、12週間の300mgの投与後に一般に安全であり、良好に忍容された。300mgでのmAb1の投与は、ベースラインと比較した場合、平均ならびに絶対変化および変化率の両方において85日目までにIGA、EASI、BSA、SCORADおよびNRS掻痒感の有意な改善をもたらした(表27〜33を参照されたい)。300mg群について85日目で0または1のIGAスコアを達成する患者の割合は40.0%であったが、プラセボに関する同じ数は7.4%であった(表34)。85日目で、EASIスコアの50%の低下率(「EASI−50」)を達成した患者の割合は、300mg群については85.5%であったが、85日目でのプラセボ処置された患者のEASI−50は35.2%であった(表35)。mAb1のベースラインから12週目までのEASIスコアの変化率は、プラセボ群とは統計的有意差があった(−74.0%と−23.0%、p値<0.0001)。処置群は、全ての副次的効能評価項目においてプラセボ群と統計的に有意に異なっていた。以下は、それぞれ、IGA応答者(0または1)(<0.0001)、EASI応答者(<0.0001)、ベースラインからのEASI絶対変化(<0.0001)、ベースラインからのIGAの絶対変化(<0.0001)、ベースラインからのIGAの変化率(<0.0001)、BSAの絶対変化(<0.0001)、SCORADの絶対変化(<0.0001)、掻痒感NRSの絶対変化(<0.0001)、およびベースラインから12週目までの5−D掻痒感スケールの絶対変化(<0.0001)のp値であった。
【0390】
〔実施例11〕
中等度から重度のADを有する患者に局所コルチコステロイドと同時に投与されたmAb1の安全性を評価するための臨床試験
A.試験設計
この試験は、中等度から重度のADを有する患者においてADを処置するために局所コルチコステロイド(TCS)と同時に投与されたmAb1の反復皮下用量の安全性を評価し、効能を調査するための無作為化、二重盲検、平行群、プラセボ対照試験であった。患者を2:1で無作為化して、皮下注射により4週間連続で週に1回(1、8、15および22日目)、300mgのmAb1またはプラセボを受けさせた。全ての患者は、アセポン酸メチルプレドニゾロン0.1%、フロ酸モメタゾン0.1%、または吉草酸ベタメタゾン0.1%のような強力なTCS製品(ヒドロコルチゾンの50〜100倍強力である)を用いる最大28日間の同時的な非盲検の毎日の処置を受けた。より低い効力のTCSまたは局所カルシニューリン阻害剤(TCI)のような他の局所医薬を用いて、顔面部、屈曲部および生殖器部に位置するAD病変を処置した。
【0391】
スクリーニング来院から開始して、患者は、ベースライン来院前の少なくとも7日間、1日2回、添加剤を含まない基本的商標の皮膚軟化剤を適用し始め、試験を通してその使用を継続した(TCS適用の領域において処置日に1日1回)。環境制御手段および非薬学的処置モダリティ、例えば、アレルゲン回避および漂白浴を、試験責任医師の裁量で許容した。
【0392】
スクリーニングは、−21日目〜−1日目に行った。患者は、合計4回の週用量について、1日目にその最初の薬物注射(300mg mAb1、またはプラセボ)を受け、8、15および22日目(+/−1日)にさらなる薬物注射のためにクリニックに戻った。1日目に開始して、患者は1日1回、夕方に上記の局所医薬を適用し、制御が最大28日間達成されるまで全てのAD罹患領域(すなわち、活動性AD病変を有する領域)への適用を継続した。制御が達成された後、活動性の病変を有さないADになりやすい領域(すなわち、病変が消失した領域)へのTCS適用は、28日目の試験日まで毎週2日に限定した。28日後、全ての残留AD病変の局所処置を必要に応じて継続した。試験を通して、患者は、1日2回(局所医薬を用いて処置された領域に局所処置日に1日1回)、添加剤を含まない基本的商標の皮膚軟化剤を適用し続けた。患者は、29、36、50、64および78日目(試験最終日)にクリニック来院に戻った。
【0393】
組入れ基準は、(1)18歳以上の男性または女性;(2)スクリーニング前に少なくとも2年間存在していた、HannifinおよびRajkaのEichenfield改訂基準により診断された、慢性AD;(3)強力なTCSを用いる処置が指示される1つまたはそれ以上の活動性ADに関する、スクリーニングおよびベースライン来院時の3以上のIGAスコアおよび20を超えるSCORADにより評価されたAD活動性;(4)スクリーニングおよびベースライン来院時のADに罹患した少なくとも10%のBSA;(5)患者は、ベースライン来院前の少なくとも7日間にわたって1日2回、添加剤を含まない基本的商標の皮膚軟化剤を適用しなければならない;(6)クリニック来院および試験関連手順を順守する意思および能力;ならびに(7)インフォームドコンセントを読み、理解する能力があり、署名する意思を有することであった。
【0394】
除外基準は、(1)mAb1を用いる以前の処置;(2)コルチコステロイドに対する、または試験中に用いられるTCS製品に含有される任意の他の成分に対する過敏症;(3)顔面部、屈曲部および生殖器部に主に位置するAD病変(累積病変部の50%以上);(4)試験評価を妨げ得る皮膚併存疾患の存在;(5)ベースライン来院前の4週間以内の以下の処置または試験中にそのような処置を必要とし得る任意の状態:全身コルチコステロイド、免疫抑制薬または免疫調節薬、例えば、シクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチル、IFN−ガンマ、アザチオプリンまたはメトトレキサート;(6)以下のようなバイオ医薬品を用いる処置:(a)ベースライン来院前の6カ月以内の、またはリンパ球およびCD19+リンパ球計数が正常に戻るまでのいずれか長い方の、限定されるものではないが、リツキシマブなどの任意の細胞枯渇剤、(b)ベースライン来院前の8週間以内のインフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブ、セルトリズマブペゴール、アバタセプト、エタネルセプト、アナキンラ、ならびに(c)5半減期(既知の場合)または8週間以内のいずれか長い方のその他のバイオ医薬品;(7)ベースライン前の4週間以内の皮膚疾患のための任意の光線療法(狭帯域UVB、UVB、UVA1、プソラレン+UVA);(8)ベースライン来院前の4週間以内の日焼け室/日焼けサロンの規則的使用(週に2回を超える来院);(9)ベースライン来院より前の12週間以内の生弱毒化ワクチンを用いる処置;(10)ベースライン来院前の、8週間以内または5半減期以内のいずれか長い方の被験薬物を用いる処置;(11)スクリーニング来院前の4週間以内の経口もしくはIVの抗生物質、抗ウイルス剤、抗寄生虫剤、抗原虫剤、もしくは抗真菌剤を用いる処置を要する慢性もしくは急性感染、またはスクリーニング来院前の1週間以内の表在性皮膚感染;(12)消散にも拘らず、ヒストプラスマ症、リステリア症、コクシジオイデス症、カンジダ症、ニューモシスティス・ジロベシ(pneumocystis jiroveci)、アスペルギルス症のような侵襲性日和見感染、JCウイルス(進行性多巣性白質脳症)の病歴;(13)HIV感染の既知の病歴;(14)スクリーニング来院時のB型肝炎表面抗原、B型肝炎コア抗体、またはC型肝炎抗体陽性または不確定;(15)スクリーニング来院時の以下の検査値異常のいずれかの存在:正常上限値(ULN)の2倍を超えるクレアチンホスホキナーゼ;ULNの2倍を超えるアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)および/またはアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT);1.75x10
3/μL未満の好中球数;100x10
3/μl未満の血小板計数;(16)無作為化の前の2週間以内の新しい定期的運動の開始もしくは以前の定期的運動に対する大きな変更、または試験への参加の長さを通して肉体的活動の現在のレベルを維持する(増加させない)ことに対する不同意;(17)ドキシサイクリンまたは他のテトラサイクリンに対する過敏性反応の病歴;(18)処置された膣トリコモナス症以外の、ベースライン来院の12カ月以内の臨床内部寄生虫感染の病歴;(19)完全に処置された頸部のin situがん腫、完全に切除された皮膚の非転移性扁平上皮がん腫または基底細胞がん腫以外の、ベースライン来院前の5年以内の悪性腫瘍の病歴;(20)非悪性リンパ増殖性障害の病歴;(21)妊娠中または授乳中の女性;(22)避妊手段を実施する意思のない出産可能性のある男性または女性;(23)スクリーニング来院の2年以内のアルコールまたは薬物乱用の病歴;(24)アフリカの発展途上国またはアジアの熱帯/亜熱帯地域のような、寄生虫感染の流行地域への最近の旅行(無作為化の12カ月以内);(25)試験への患者の参加に有害に影響する有意な併存疾患、例えば、ステージIIIまたはIVの心不全、重度の腎疾患、神経疾患、内分泌疾患、GI疾患、肝臓−胆管疾患、代謝疾患、肺疾患またはリンパ系疾患の以前の、または現在の病歴;ならびに(26)試験患者に不合理な危険をもたらし得る、または患者の参加を信頼できないものにし得る、または試験評価を妨げ得る任意の他の状態であった。
【0395】
試験の主要評価項目は、有害事象の発生および重症度であった。副次的評価項目は、事実上探索的なものであり、(1)EASI50指数−ベースラインから29日目まで、および他のベースライン後の観察時点でEASIの50%以上の低下が達成されるかどうかのバイナリー応答変数;(2)29日目、および他のベースライン後の観察時点での1以下のIGAスコア(消失またはほぼ消失)の達成;(3)IGA≦1およびEASI50までの時間;(4)ベースラインから29日目まで、および他のベースライン観察時点までのIGA、EASIおよびSCORADスコアの変化;ならびに(5)観察期間の終了まで再発がないままである、4週目で1以下のIGAを有する患者の割合を含んでいた。
【0396】
B.効能変数
効能変数IGA、BSA、EASI、SCORAD、および掻痒感NRS評価は、本明細書の他の場所に記載されている(例えば、実施例7を参照されたい)。IGA、BSA、EASI、掻痒感NRSおよびSCORADスコアを、クリニック来院ごとに評価した。
【0397】
C.手順および評価
1日目から78日目までの有害事象(本明細書に他の場所に記載)(AE)の発生を評価することにより、ならびに詳細な病歴、完全な身体診察、バイタルサイン、心電図(ECG)、および臨床検査試験により、安全性を評価した。盲検安全性データを、継続的に再検討した。適用可能な場合、スクリーニングから78日目(試験最終日)または早期終結まで、同時医薬および手順を収集した。それぞれのクリニック来院時に安全性、検査値、および効能の評価を実施した。ベースライン(1日目)に開始する処置の前の試験来院毎に機能的mAb1の全身トラフ濃度の決定のために血液試料を採取した。所定の時点で抗mAb1抗体レベルの分析のために血液試料を採取した。研究試料および探索的バイオマーカー分析のための試料も採取した。mAb1の効能を、EASI、IGA、SCORAD、掻痒感数値評価スケール(NRS)、およびAD病変の体表面積(BSA)%により評価した。所定の時点で薬物動態(PK)分析、および抗mAb1抗体レベルの分析のために血液試料を採取した。研究試料および探索的バイオマーカー分析のための試料も採取した。
【0398】
D.統計学的方法
このセクションに記載される全ての統計分析は事実上探索的なものであったため、I型誤差に関する多重度調整はなかった。各検定は5%有意差レベルであった。分類変数(それぞれのベースライン後の来院時のEASI−50およびIGA応答者、その後の再発がない29日目でのIGA応答者)を、mAb1群とプラセボ群との間の比較から算出された名目上のp値を有するFisherの直接確率検定を用いて分析した。比率の点推定値および信頼区間を提示した。経時的な比率のグラフを提供した。全ての連続変数(ベースラインからそれぞれのベースライン後の来院までのIGA、EASIおよびSCORAD、NRSの変化または変化率)を、共分散分析(ANOCOVA)により分析した。別途特定されない限り、連続尺度のベースラインからの変化の評価および信頼区間の構築は、主要因としての処置および共変量としてのベースライン値を含むANCOVAモデルに基づくものであった。2つの処置群間のベースラインからの調整された平均変化の差異の点推定値および95%CIを提供した。mAb1群とプラセボ群との比較に由来する名目上のp値を提供する。モデル仮定が保証されなかった事象においては、共変量の順位に基づく分析を用いた。経時的なベースラインからの平均変化のグラフを提供した。事象発生時間変数(EASI50までの時間およびIGA応答までの時間)を、対数順位検定を用いて分析して、mAb1群とプラセボ群とを比較した。2つの処置群にわたるKaplan−Meier生存曲線を提供した。以下の分析手法をこの試験のために実施した:(a)打ち切りLOCF:効能データを、禁止医薬を用いた後または患者が試験を中止した後の欠測値に設定した。次いで、全ての欠測値を単純LOCFにより帰属させた。(b)単純観察事例(OC)手法:観察された事例のみを分析した。
【0399】
E.安全性
全体として、mAb1はこの試験において安全であり、良好に忍容された。死亡は報告されなかった。プラセボ群の患者について単一の重篤な有害事象(SAE)が記録され、この患者は意識喪失を経験し、結果として試験から離脱した。他の患者は処置中止をもたらす有害事象を経験しなかった。試験に登録した31の患者のうちの合計19人が、少なくとも1つの処置中に発生した有害事象(TEAE)を報告し、プラセボ群の7人の患者(70%)およびmAb1群の12人の患者(57%)であった。器官別大分類(SOC)により、mAb1処置群について報告された最も頻繁なTEAEは、感染および侵入であり、12人の患者(57%)とプラセボ群の3人の患者(30%)であった。最も頻繁な感染は、鼻咽頭炎であり、mAb1群の5人の患者(24%)とプラセボ群の2人の患者(20%)であった。重篤な感染も日和見感染もなかった。1人を超える患者において報告された他のTEAEは、頭痛(mAb1群の3人の患者(14%)とプラセボ群の1人の患者(10%))、眠気(mAb1群の2人の患者(9.5%)とプラセボ群の0%)、口腔咽頭痛(mAb1群の3人の患者(14%)とプラセボ群の1人の患者(10%))、および咳(mAb1群の2人の患者(9.5%)とプラセボ群の0%)のような非特異的症状を含んでいた。多くのAEは軽度から中等度であり、一般に2週間以内に消散した。単一の重篤なAEがmAb1群において報告された:細菌性気管支炎であり、63日目(22日目の試験薬物の最後の投与)に始まり、試験処置と関連しないと考えられた。皮膚レベルで望ましくない薬物−薬物(mAb1−TCS)相互作用を示唆するmAb1群における有害事象はなかった。安全性臨床検査、バイタルサイン、およびECGに関する処置中の潜在的な臨床的に意義のある値(PCSV)の分析により、PCSVの比は一般的には2つの試験群間で平衡しており、体系的分布または異なる傾向はないことを示し、これはPCSVの出現が偶発的なものであり、試験処置とは関連しないことを示唆している。
【0400】
F.結果
この試験では、mAb1を、中等度から重度のADを有する患者にTCSと同時に投与した。ADにおけるケアの現在の基準と一致して、制御されたTCSレジメンが、本明細書の他の場所に記載のように、最初の4週間に必要であった(すなわち、試験処置と同時に)。表36は、試験に参加する患者によって用いられたTCS医薬を列挙するものである。患者は、病変の消失まで、毎日、1日1回、全ての活動性病変にTCSを適用した後、1週間あたり2日間、1日1回、病変になりやすい領域(病変が消失した)に適用した。強力なTCS(クラスIII)を病変の少なくとも50%に適用する必要があった。顔面部、皮膚の折畳み部分、または生殖器部分(強力なTCSが通常指示されない)に位置する病変については、より低効力のTCS(クラスIまたはII)が許容された。各週に用いたTCSの量を、それらを患者に調剤した時点で、および彼らが次の試験来院でクリニックに戻る際に、TCS容器を計量することによって測定した。表37および表38は、1日目から29日目までのTCS使用をまとめたものである。
【0401】
【表48】
【0402】
【表49】
【0403】
【表50】
【0404】
人口統計および疾患特性は、多くの部分について2つの処置群間で均一であった(表39および表40)。平均ベースラインAD疾患重症度スコア(IGA、EASI、SCORAD、BSA、および掻痒感NRS)を、同様に合理的に平衡化させた。
【0405】
【表51】
【0406】
【表52】
【0407】
試験から得られた探索的効能結果を、
図34〜47および表41〜44にまとめる。比較的小さいサンプルサイズおよび限られた処置期間にも拘らず、分析により、EASI−50応答者率、ならびにEASI、SCORAD、IGA、および掻痒感NRSのベースラインからの変化および変化率などの、重要な探索的効能評価項目におけるmAb1とプラセボの統計的に有意な、および臨床的に関連する効果が示され、いくつかの改善は試験処置の中止後も数週間持続した。EASI−50については、mAb1+TCS群の患者の100%が29日目に応答者基準を満たしたのに対し、プラセボ+TCS群では50%であった(P値0.0015)。IGA0〜1応答者率のような他の評価項目は、プラセボより優れた数値を示したが、統計的有意性には達しなかった(47.6%対プラセボの30.0%)。注目すべきことに、mAb1で処置した患者は、平均でおよそ50%少ないTCSを用いたが、プラセボ(TCSのみ)比較群と比較してmAb1処置効果を低く見積もった可能性がある。
【0408】
【表53】
【0409】
【表54】
【0410】
【表55】
【0411】
【表56】
【0412】
TCSと同時に処置された中等度から重度のADを有する成人患者へのmAb1の皮下投与は、一般に安全であり、良好に忍容された。TCSと同時に投与されたmAb1を用いる処置は、TCS処置のみと比較して有意に優れた転帰と関連していた。EASI−50を達成する患者の割合は、mAb1を単剤療法として用いた最近の試験において見られたものよりも数値的に多かった(今までのところ最良のEASI−50は75%であった)が、これはmAb1とTCSが付加的または相乗的に作用することを示唆していた。しかしながら、それは部分的には小さいサンプルサイズおよび試験間の患者集団のわずかな相違に起因するものでもあり得る。
【0413】
この試験により、TCS処置を受ける中等度から重度のADを有する患者におけるmAb1により提供されるさらなる効能が示された。これらの結果は、組合せ療法が、単剤療法として用いられるいずれかの処置と比較して、中等度から重度のADを有する患者に対してさらなる臨床利益を提供することができることを示唆していた。この結果はまた、ADを有する患者のより安全な長期的管理をもたらすことができる、mAb1のTCS節約効果の可能性を示唆していた。
【0414】
〔実施例12〕
バイオマーカー分析
バイオマーカー分析を、mAb1の臨床試験に参加した対象から取得した試料に対して行った。特に、IgEならびに胸腺および活性化ケモカイン(TARC)レベルを、ベースライン時に、および試験処置の開始後の様々な時点で患者由来試料中で測定した。Phadiatop(商標)試験を行って、抗原特異的IgEを検出した。さらに、分子プロファイリングを、mAb1の臨床試験に参加した患者の皮膚病変に対して実行した。
【0415】
A.健康な対象へのmAb1の投与
最初の臨床試験において、対象に、単回静脈内(IV)(1.0、3.0、8.0および12.0mg/kg)または皮下(SC)(150および300mg)用量のmAb、またはプラセボを投与した(本明細書の実施例2を参照されたい)。バイオマーカー分析のための試料を、抗体およびプラセボで処置された対象から、1日目(ベースライン)、8日目、29日目、および85日目(または早期終結時)に採取した。IgEおよびTARCのレベルを、各試料中で測定した。0.10未満のp値を、小さいサンプルサイズを許容するため統計的に有意であると考えた。混合効果反復測定モデルを、平均分析のために使用し、非パラメータ検定を中央値分析のために使用した。患者試料由来のIgEおよびTARCレベルの中央変化率を、それぞれ、表45および表46にまとめる。
【0416】
【表57】
【0417】
【表58】
【0418】
IgEのベースラインレベルは、処置群あたりの平均および中央ベースラインIgEの比較において示されたように高度に可変性であった(
図48A)。用いられたIgEアッセイの検査値参考範囲は0〜114kU/Lであり、40人の対象のうちの15人がベースライン時に114kU/Lを超える総IgEレベルを有していた。表43および
図48Bに示されるように、IgEレベルは一般にmAb1用量および曝露時間に比例して減少した。投与後85日目までに、SC投与されたmAb1を受ける対象は、16.5%(150mg)および17.2%(300mg)のIgEレベルの中央減少率を示した。IV投与されたmAb1を受ける患者においても有意なIgE減少が観察され、8mg/kgおよび12mg/kg群において、それぞれ10.7%および25.6%のIgEの減少が観察された。対照的に、IgEレベルは、プラセボ処置対象においては時間と共に増加した。
【0419】
ベースライン時の中央血清TARCレベルは一般に、処置群間で同等であり(
図49A)、文献に報告されたものより高かった。平均ベースラインTARCは616pg/mLであり、その範囲は134〜1327pg/Lであった。健康な対象におけるTARCレベルは、106〜431ng/Lの範囲で報告されていた(Hijnenら、2004、J.Allergy Clin.Immunol.113:334〜340)。TARCの有意な減少が、両皮下用量を用いるプラセボと比較して、mAb1処置対象から採取した試料中で観察された(150mgについてはp=0.044および300mgについてはp=0.047)(
図49Bおよび表44)。例えば、単回SC用量の300mgのmAb1は、8日目でTARCレベルのほぼ35%の中央減少率を引き起こしたが(p=0.052)、プラセボ処置患者においてはTARCレベルは7.7%増加した。TARCレベルの有意な減少は、SCおよびIV投与群の両方において29日目から試験最終日(85日目)までmAb1処置患者において持続した。mAb1で処置した全対象についてデータをプールした場合、TARCのベースラインからの変化率に関するmAb1とプラセボとの全体的な差異は有意であった(p=0.004)(
図50)。有意差は8日目(p=0.012)および29日目(p=0.022)でも観察された。
【0420】
B.アトピー性皮膚炎を有する対象へのmAb1の投与
バイオマーカーレベルを、アトピー性皮膚炎(AD)を有する対象を含む2つの別々の臨床試験に由来する試料においても測定した。「試験A」において、AD対象に、試験の1、8、15および22日目(すなわち、4回の週用量)に、mAb1(75、150もしくは300mg)またはプラセボのいずれかを投与した。「試験B」においては、AD対象に、試験の1、8、15および22日目(すなわち、4回の週用量)に、150mgもしくは300mgのmAb1、またはプラセボを投与した(本明細書の実施例7を参照されたい)。両試験に関する全ての投与は、皮下(SC)であった。バイオマーカー分析のために試料を、1日目(ベースライン)、4、8、15、22、25、29、36、43、50、57、64、71および85日目(または早期終結時)に、両試験に由来する抗体およびプラセボ処置対象から採取した。IgE、TARC、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)、および抗原特異的IgE(Phadiatop)のレベルを、各試料中で測定した。
【0421】
血清TARCを、検証されたアッセイ(Human CCL17/TARC Quantikine ELISAキット、R&D Systems;Quest Diagnosticsにより行われた検証およびアッセイ)を用いて測定した。総血清IgEレベルを、ImmunoCAP(登録商標)Total IgEテスト(Thermo Scientific FDA認可テスト;Quest Diagnosticsにより行われた)を用いて決定した。乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)を、Roche Modularテスト(FDA認可;Covance Central Laboratoriesにより行われた)を用いて測定した。Phadiatop(登録商標)(Thermo Scientific FDA認可テスト)アッセイは、Viracor−IBTにより行われた。2サンプル中央テストを用いて、mAb1に関するベースラインからのバイオマーカー変化を、プラセボと比較した。
【0422】
試験「B」に登録された全てのAD患者の血清TARC、総IgEおよびLDHの平均ベースラインレベルは、報告された正常上限値(ULN)よりも高かった(表47および
図51)。
【0423】
【表59】
【0424】
平均ベースライン好酸球レベルは、参照範囲の上限であった(表47)。試験した利用できるデータを有する2人の患者を除く全ての患者が、Phadiatop試験で陽性であった。これらの患者は両者とも、正常な総血清IgEレベルを有していた。Phadiatopの結果は、1人の患者について利用不可能であった。
【0425】
ベースラインTARCおよびIgEの広いスペクトルが、登録された中等度から重度のAD集団において観察された。27/36の患者は1000pg/mLを超える血清TARCレベルを有していた(健康なボランティアについて報告された平均レベルの約2倍)(
図51A)。32/36人の患者は150kU/L以上のIgEレベルを有していた(外因性と内因性ADとを区別するために引用されたカットオフ)(
図51B)。17/37人は、234U/Lを超えるLDHレベルを有していた(
図51C)。100U/Lを下回るLDHレベルを有する患者はいなかった。
【0426】
局所線形回帰を用いて、両用量群においてプラセボと比較した、総血清IgEに対する全体的なmAb1処置効果(ベースラインからの変化率)を、観察した(p<0.0001)(
図52)。総血清IgEレベルはmAb1処置について減少したが、プラセボ処置群においては試験最終日で全体的な増加が観察された。
【0427】
試験AとBの両方(組み合わせたデータ)に由来する各群のベースラインからのIgEレベルの中央変化率を、表48にまとめる。
【0428】
【表60】
【0429】
表48および
図52に示されるように、IgEの統計的に有意な減少が、プラセボと比較してmAb1処置対象に由来する試料中で観察された。85日目でのIgEの中央変化率は、プラセボ群の41.7%の増加と比較して、300mgのmAb1で処置した患者において−23.9%であった(p<0.0001)。プラセボと比較した150mg群におけるベースラインからの中央変化率は、29〜85日目の全ての時点で有意であった(p<0.03)。プラセボと比較した300mg群におけるベースラインからの中央変化率は、15〜85日目の全ての時点で有意であった(p<0.04)。
【0430】
局所線形回帰を用いて、LDHについて全体的な処置効果を観察した。300mg処置群においてLDHの統計的に有意な減少があった(p=0.0051)(
図53)。任意の単一の時点では中央変化率は統計的に有意ではなかったが、時間的傾向が観察された(p=0.008)。
【0431】
mAb1処置は、AD患者において血清TARCレベルを迅速に抑制した(
図54)。両試験(組合せたデータ)に由来する各群に関するベースラインからのTARCレベルの中央変化率を、表49にまとめる。
【0432】
【表61】
【0433】
プラセボと比較して300mgのmAb1で処置した患者において、血清TARCの統計的に有意な減少が観察された(p<0.0001;局所線形回帰分析)。最後の用量(試験の21日目に投与された)のおよそ1カ月後に、300mg mAb1で処置された患者において50日目まで統計的に有意な抑制が維持された。150mg群は同等の規模の抑制を達成したが、レベルは300mg群においてより素早く増加することが観察された。150mg群(p<0.03)において36および43日目で、ならびに300mg群(p<0.04)については22、25、29、36、および50日目で、統計的に有意な抑制(プラセボと比較したベースラインからのTARCの中央変化率)が観察された。
【0434】
TARCレベルの患者内変動性が、プラセボ処置患者において試験の経過にわたって観察された。プラセボ処置群における高い脱落率のため、試験の終わりで利用可能であったのは、4人のその群の患者からのデータだけであった。
【0435】
結論として、Th2浸潤および/またはAD疾患活動性と関連するTARC、IgEおよびLDHバイオマーカーは、AD患者におけるmAb1処置によって全て抑制された。mAb1は、プラセボと比較して、AD患者における血清TARCレベルを迅速に低下させた。抑制の持続期間は用量と関連すると考えられ、データはその効果が薬物を中止した後も持続し得ることを示唆していた。総血清IgEレベルはmAb1処置された患者において有意に減少した。IgEは300mg群において処置期の後に減少し続けた(中央変化率)が、これは最大のIgE抑制がまだ達成されていないことを示唆している。ベースラインからのLDHレベルの一貫した低下は、mAb1で処置された患者において観察された。LDHとIL−4およびIL−13との直接的な関係は不明であるが、疾患重症度とのその関連は、LDHがAD患者における皮膚損傷の程度の尺度であり得ることを示唆していた。TARCおよびIgEの抑制は、mAb1がTh2炎症の強力な阻害剤であることを示していた。
【0436】
バイオマーカーおよびAD関連パラメータ間の相関
試験「B」(実施例7を参照されたい)において、重度のADを有する患者に、4週間にわたって150もしくは300mgのmAb1またはプラセボ(PBO)を投与した。1日2回の掻痒感数値評価スケール(NRS;0〜10の範囲)を用いて掻痒感を測定して、平均週NRSスコアおよび2週間毎の5−D掻痒感スケール評価を作成した。5−Dスケールは、複数の次元の痒み:程度、持続期間、方向、身体障害、および分布を評価するために用いられる5つの質問のツールである。平均ベースラインNRSおよび5−Dスコアは、それぞれ、5.5および19であった。平均週NRSスコアは、300mg群において2週目で31.9%(p<0.02)に、および7週目で55.2%(p=0.01)、迅速に低下した(ベースラインからの平均変化率)のに対して、PBO群においてはそれぞれ+1.3%および−17.3%であった。5−Dスコアの迅速な低下は、300mgのmAb1で処置した患者においても観察された(15日目で−28.2%の平均変化率、p=0.0009;29日目で−37.1%、p=0.0007;43日目で−42.5%、p=0.012;PBP群においては、それぞれ+3.6%、+8.1%および−9.4%)。IL4/IL13活性のマーカーであるCCL17の血清レベルも、処置の際に迅速に低下した。CCL17と掻痒感は両方とも、処置が終わった後も数週間にわたって抑制された。表50は、掻痒感(5DおよびNRS)と、皮膚炎(EASI)およびCCL17の転帰との相関を示す。
【0437】
【表62】
【0438】
全体として、全ての処置群について、5Dスコアはこの試験においてCCL17(ベースライン時でr=0.46、p=0.004;29日目でr=0.55、p=0.002)およびEASIスコア(ベースライン時でr=0.41、p=0.011;29日目で0.62、p<0.0001)と有意に相関した。5Dの変化率は、15および29日目に全体の処置群についてEASI(15日目でr=0.65、p<0.0001;および29日目でr=0.61、p<0.0001)ならびにCCL17(15日目でr=0.
46、p=0.0089;および29日目でr=0.48、p=0.0105)のベースラインからの変化率と有意に相関した。また、処置群を、掻痒感5DとEASIおよびCCL17との相関について個別に評価した。15日目で、150mg群のみが、EASIの変化率と5Dの変化率との強く有意な相関を示した(r=0.81、p=0.0005)。同様に、29日目では、有意な相関は150mg群についてのみであった(r=0.57、p=0.0036)。15日目および29日目の両方において、CCL17の変化率と5Dスコアの変化率との間に有意な全体的相関があったが、個々の処置群はいずれも、それぞれの日でそのような相関を示さなかった。
【0439】
NRSを用いて評価された掻痒感の重症度は、EASIとの中程度から強い相関を示したが、これは有意であった。しかしながら、NRS値はベースライン時でのみCCL17値と相関し、ベースラインからの変化率については有意な相関はなかった。mAb1で処置された成人AD患者において観察された掻痒感の迅速かつ持続的な改善は、IL−4/IL−13シグナリングがAD掻痒感にとって重要な機構であることを示唆している。掻痒感とCCL17レベルとの相関は、重度のADにおけるIL−4/IL−13により媒介される炎症、AD疾患活動性および掻痒感の間の関係を強調するものである。
【0440】
C.中等度から重度のアトピー性皮膚炎を有する対象へのmAB1の反復投与
中等度から重度のアトピー性皮膚炎(AD)を有する対象を含む臨床試験に由来する試料中で、IgEおよびTARCレベルを測定した。AD対象に、試験の1、8、15、22、29、36、43、50、57、64、71および78日目に(すなわち、12回の週用量)、300mgのmAb1またはプラセボを投与した(本明細書の実施例10を参照されたい)。両試験に関する全ての投与は、皮下(SC)であった。バイオマーカー分析のための血清試料を、1日目(ベースライン)、8、15、22、25、29、36、43、50、57、64、71、85、99、113、127、141、155、169、183および197日目(試験最終日)または早期終結時に両試験に由来する抗体およびプラセボで処置された対象から採取した。IgE、TARCおよび抗原特異的IgE(Phadiatop(商標)試験)のレベルを、各試料において測定した。
【0441】
TARCは、ADの疾患重症度と強く関係し、疾患の発症に関与し得ることが示されているIL−4/IL−13により誘導されるケモカインである。ベースラインTARCレベルを、処置応答に関する潜在的な予測値について評価した。処置後の試料を、TARCに対するmAb1の薬力学的効果について評価した。
【0442】
ADを有する患者は、IgEが上昇することが多い。総IgEレベルはAD重症度と相関し、疾患の発症に関与し得ることがわかっている。ベースラインIgEレベルを、処置応答に関する潜在的な予測値について評価した。処置後の試料を、総IgEに対するmAb1の薬力学的効果について評価した。
【0443】
Phadiatop(商標)試験は、一般的な吸入抗原に対する抗原特異的IgEを検出するために用いられるin vitro診断スクリーニングツールである。Phadiatop(商標)試験のベースライン結果を、処置応答に関する潜在的な予測値について評価した。処置後の試料を、Phadiatop(商標)抗原パネルに対するmAb1の薬力学的効果について評価した。
【0444】
初期の臨床試験から得られた結果と一致して(上記のセクションAおよびBを参照されたい)、TARCおよびIgEレベルは低下し、16週間の処置後フォローアップ期間までベースラインより下に抑制されたままであった(
図55〜56)。
【0445】
4週間のmAb1と比較して、16週間のフォローアップ中の12週間の300mgのmAb1処置について、より大規模のIgE抑制が観察された(−57%の中央値)。TARC抑制の規模は、12週間(−83%の中央値)および週間(−76%の中央値)のmAb1処置後の処置終了時に同等であった。
【0446】
D.中等度から重度のアトピー性皮膚炎を有する患者におけるmAb1と局所コルチコステロイドの同時投与
中等度から重度のADを有する成人患者における局所コルチコステロイド(TCS)と組み合わせたmAb1の安全性および効能を評価する試験において、TARCおよびIgEの調節を試験した。2つの処置群を比較した(4週間にわたる毎週の投与):(300mgのmAb1+TCS)対(プラセボ+TCS)。TCSを1日目から28日目まで投与した(患者は病変が消失した場合、TCS処置を停止させた)(本明細書の実施例11を参照されたい)。患者を、スクリーニング時、ベースライン時(1日目)、5週目まで毎週、次いで、11週目まで隔週で評価した。TARCレベルは両処置群において低下し、プラセボ(PBO)+TCSと比較してmAb1+TCS群においてより強く抑制される傾向があった。差異は22、29および50日目で統計的に有意であった。IgEレベルも両処置群において低下した。群間でIgE抑制に統計的有意差はなかった。
【0447】
【表63】
【0448】
TARCは、R&D SystemsのヒトTARC Quantikine ELISAキットを用いて測定した。表51は、処置群別のベースラインTARCレベルをまとめたものである。両処置群に関する平均および中央ベースラインTARCレベルは、106〜431pg/mLの正常範囲(Weihrauchら、2005;Cancer Res.65:13頁)、ならびに上記のセクションAに記載の観察されたベースラインレベルより上であった。
【0449】
【表64】
【0450】
TARCレベルは、両処置群においてベースラインから低下し、かくして、TCS単独でもAD患者における血清TARCレベルを低下させることができる。ベースラインからのTARCの中央変化率(%)の規模は、プラセボ+TCS群と比較してmAb1+TCS群において一貫して大きかったが、その差異は22、29および50日目でのみ統計的に有意であった(共分散分析から見積もられた最小二乗平均差)(表52)。
【0451】
平均および中央ベースラインIgEレベルを、表53にまとめる。
【0452】
【表65】
【0453】
IgEレベルは両処置群において低下した。29日目の後、IgEの中央変化率の規模はmAb1+TCS群においてより大きくなる傾向があり、試験中の任意の時点で統計的有意差はなかった(共分散分析から見積もられたLS平均差;表54)。
【0454】
【表66】
【0455】
およそ50%の患者が、プラセボ+TCS上で29日目までに少なくともEASI50を達成し、この群におけるTARCおよびIgEの抑制は観察された臨床的改善と一致していた。mAb1+TCSにある全ての患者が、29日目までに少なくともEASI50を達成した(実施例11を参照されたい)。プラセボ+TCSと比較してmAb1+TCSにおいて、TARCおよびIgEのより強い抑制に関する傾向が観察された。しかしながら、統計的有意差は、22、29および50日目でのTARC抑制においてのみ観察された。
【0456】
本発明は、本明細書に記載の特定の実施形態によってその範囲を限定されるものではない。実際、本明細書に記載のものに加えて本発明の様々な改変が上記説明および添付の図面から当業者には明らかとなる。そのような改変は、添付の特許請求の範囲内にあることが意図される。