特許第6353853号(P6353853)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6353853
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】レベリングバルブ
(51)【国際特許分類】
   B61F 5/10 20060101AFI20180625BHJP
   F16F 9/04 20060101ALI20180625BHJP
   F16F 9/26 20060101ALI20180625BHJP
   F16F 9/32 20060101ALI20180625BHJP
   F16F 9/34 20060101ALI20180625BHJP
   F16F 9/49 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   B61F5/10 D
   F16F9/04
   F16F9/26
   F16F9/32 V
   F16F9/34
   F16F9/49
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-550239(P2015-550239)
(86)(22)【出願日】2013年11月26日
(86)【国際出願番号】JP2013081804
(87)【国際公開番号】WO2015079501
(87)【国際公開日】20150604
【審査請求日】2016年10月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(74)【代理人】
【識別番号】100137604
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 淳
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 努
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 祐介
【審査官】 諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−173439(JP,A)
【文献】 特開平11−159632(JP,A)
【文献】 特開昭61−105374(JP,A)
【文献】 特開2013−173438(JP,A)
【文献】 特開2008−056195(JP,A)
【文献】 特開平07−139643(JP,A)
【文献】 特開昭49−062866(JP,A)
【文献】 特開昭49−062865(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0121526(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0213397(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61F 5/02− 5/48
F16F 9/00− 9/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の車体と台車との間に設けられる空気ばねの高さを調整するレベリングバルブであって、
前記台車に対する前記車体の相対変位に応じて回動するレバーと、
前記レバーの回動に伴って変形する緩衝ばねの復元力によって回動する作動アームと、
前記作動アームの回動によってエア圧に抗して開弁し、前記空気ばねに連通する空気ばね通路に圧縮空気源又は排気通路を接続する接続弁と、
を備え、
前記接続弁は、
前記作動アームの回動に伴って前記作動アームに押圧されて開弁方向に移動する第1弁体と、
前記第1弁体が離着座する第1弁座を有する第2弁体と、
前記第1弁体及び前記第2弁体が内部に配置され、前記第2弁体が離着座する環状の第2弁座を有するスリーブと、
前記スリーブ内に配置され、前記第1弁体を前記第1弁座に向けて付勢する付勢部材と、
前記第1弁体に設けられ、前記付勢部材の付勢力を受ける付勢受け部と、
前記第2弁体に設けられ、前記第1弁体が開弁してから所定距離移動すると前記第1弁体に係合して前記第2弁体を前記第1弁体とともに開弁方向に移動させる係合部と、
を有し、
前記第1弁体は、前記第2弁体により摺動自在に保持され、
前記付勢受け部は、前記スリーブにより摺動自在に保持され、
前記第2弁体の受圧面積は前記第1弁体の受圧面積より大きい、
レベリングバルブ。
【請求項2】
請求項1に記載のレベリングバルブであって、
前記第2弁座は、開弁方向に前記スリーブから隆起して形成され、前記スリーブの内周と前記第2弁体の外周に流路を有する、
レベリングバルブ。
【請求項3】
請求項1に記載のレベリングバルブであって、
前記第2弁体は、前記第1弁座と前記係合部との間に形成され前記第2弁体を径方向に貫通する貫通孔をさらに有する、
レベリングバルブ。
【請求項4】
請求項1に記載のレベリングバルブであって、
前記接続弁は、前記作動アームが中立位置から一方向へ所定角度以上回動することによって開弁して前記空気ばね通路に前記圧縮空気源を接続する給気弁と、前記作動アームが中立位置から他方向へ所定角度以上回動することによって開弁して前記空気ばね通路に前記排気通路を接続する排気弁と、から構成される、
レベリングバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レベリングバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
JP2013−173438Aには、鉄道車両に用いられる空気ばねの高さを調整するレベリングバルブが開示されている。レベリングバルブは、台車に対する車体の相対変位に応じて回動するレバーの回動方向に応じて、空気ばねをコンプレッサ又は排気通路に選択的に接続して車体を一定の高さに維持する。
【0003】
レベリングバルブは、空気ばねとコンプレッサとの連通を切り換える給気弁と、空気ばねと排気通路との連通を切り換える排気弁と、レバーの回動が緩衝ばねを介して伝達される作動アームと、を備える。
【0004】
給気弁及び排気弁はそれぞれ、円筒状のスリーブと、スリーブ内に摺動可能に配置される弁体と、を有する。給気弁の弁体はコンプレッサのエア圧によって閉弁方向に付勢され、排気弁の弁体は空気ばねのエア圧によって閉弁方向に付勢される。作動アームは、レバーの回動に伴って変形する緩衝ばねの復元力によって回動し、給気弁又は排気弁の弁体を押圧することで給気弁又は排気弁を開放させる。
【発明の概要】
【0005】
上記従来のレベリングバルブでは、給気弁及び排気弁の流量を増加させるため流路面積を拡大させると弁体の受圧面積が大きくなるので、弁体をエア圧に抗して開弁方向に付勢する作動アームの押圧力も大きくする必要がある。作動アームは、レバーの回動に伴って変形する緩衝ばねの復元力によって回動するので、緩衝ばねも大型化する必要がある。よって、緩衝ばねを収容するバルブケースが大型化してレベリングバルブの寸法が大きくなる。
【0006】
この発明の目的は、緩衝ばねを大型化することなく流路面積を拡大させることが可能なレベリングバルブを提供することである。
【0007】
本発明のある態様によれば、鉄道車両の車体と台車との間に設けられる空気ばねの高さを調整するレベリングバルブであって、台車に対する車体の相対変位に応じて回動するレバーと、レバーの回動に伴って変形する緩衝ばねの復元力によって回動する作動アームと、作動アームの回動によってエア圧に抗して開弁し、空気ばねに連通する空気ばね通路に圧縮空気源又は排気通路を接続する接続弁と、を備え、接続弁は、作動アームの回動に伴って作動アームに押圧されて開弁方向に移動する第1弁体と、第1弁体が離着座する第1弁座を有する第2弁体と、第1弁体及び第2弁体が内部に配置され、第2弁体が離着座する環状の第2弁座を有するスリーブと、スリーブ内に配置され、第1弁体を第1弁座に向けて付勢する付勢部材と、第1弁体に設けられ、付勢部材の付勢力を受ける付勢受け部と、第2弁体に設けられ、第1弁体が開弁してから所定距離移動すると第1弁体に係合して第2弁体を第1弁体とともに開弁方向に移動させる係合部と、を有し、第1弁体は、第2弁体により摺動自在に保持され、付勢受け部は、スリーブにより摺動自在に保持され、第2弁体の受圧面積は第1弁体の受圧面積より大きいレベリングバルブが提供される
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施形態に係るレベリングバルブの取付図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係るレベリングバルブの断面図である。
図3図3は、排気弁の拡大図である。
図4A図4Aは、図3の4A−4A断面を示す断面図である。
図4B図4Bは、図3の4B−4B断面を示す断面図である。
図5図5は、排気弁の第1弁体が開弁した状態を示す断面図である。
図6図6は、排気弁の第2弁体が開弁した状態を示す断面図である。
図7図7は、第2弁体の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1は、本実施形態におけるレベリングバルブ100の取付図である。
【0011】
レベリングバルブ100は、鉄道車両の車体1と台車2との間に設けられる空気ばね3の高さを調整して、車体1を一定の高さに維持する機能を有する。
【0012】
レベリングバルブ100は車体1と台車2との間に亘って装着される。具体的には、レベリングバルブ100は、車体1に取り付けられ、レバー4と連結棒5とを介して台車2に連結される。車体1の荷重変化により空気ばね3が伸縮して車体1の高さが変化すると、この変化が連結棒5及びレバー4を介してレベリングバルブ100に伝えられる。
【0013】
車体荷重が増加して空気ばね3が撓んだ場合には、レバー4が中立位置から上方に押し上げられ(図1中矢印A方向への回動)、それに伴ってレベリングバルブ100の給気弁31(図2参照)が開弁し、空気ばね3に連通する空気ばね通路6と圧縮空気源としてのコンプレッサ7とが連通する。これにより、コンプレッサ7からの圧縮空気が空気ばね3へ供給される。空気ばね3が一定の高さに復元すると、レバー4が中立位置に戻ってレベリングバルブ100の給気弁31が閉弁し、圧縮空気の供給が遮断される。
【0014】
一方、車体荷重が減少して空気ばね3が伸びた場合には、レバー4が中立位置から下方に引き下げられ(図1中矢印B方向への回動)、それに伴ってレベリングバルブ100の排気弁32(図2参照)が開弁し、空気ばね通路6と排気通路8とが連通する。排気通路8は大気に連通しているため、空気ばね3の圧縮空気は大気へ排出される。空気ばね3が一定の高さに復元すると、レバー4が中立位置に戻ってレベリングバルブ100の排気弁32が閉弁し、圧縮空気の排出が遮断される。
【0015】
このように、レベリングバルブ100は、台車2に対する車体1の相対変位に応じて回動するレバー4の回動方向に応じて空気ばね3をコンプレッサ7又は排気通路8に選択的に連通させることによって、車体1と台車2との間に生じた相対変位を自動的に調節して車体1を一定の高さに維持する。
【0016】
図2は、本実施形態におけるレベリングバルブ100の断面図である。図3は、排気弁32の拡大図である。図4Aは、図3の4A−4A断面を示す断面図である。図4Bは、図3の4B−4B断面を示す断面図である。
【0017】
レベリングバルブ100は、中央部に配置される緩衝ばね部20と、上部に配置される接続弁としての給気弁31及び排気弁32と、下部に配置されるオイルダンパ25と、を備える。
【0018】
緩衝ばね部20は、レバー4が連結された軸21に固定されるスイングアーム(図示せず)と、軸21に対して回動自由な作動アーム22と、軸21に同心に初期荷重が与えられた状態で組み込まれスイングアームと作動アーム22とに同時に接触して配置された緩衝ばね23と、を備える。レバー4の回動は、スイングアーム及び緩衝ばね23を介して作動アーム22に伝達される。つまり、作動アーム22はレバー4の回動に伴って変形する緩衝ばね23の復元力によって回動する。
【0019】
オイルダンパ25は、作動アーム22の基端側に連結され作動アーム22の回動に伴って移動するピストン(図示省略)を備える。ピストンは、バルブケース11内に形成された油室12中に浸漬して配置され、作動アーム22が中立位置から回動する際には作動アーム22の回動動作に抵抗を付与する一方、作動アーム22が中立位置に戻る際には作動アーム22に抵抗をほとんど付与しない。
【0020】
以下では、給気弁31及び排気弁32について説明する。給気弁31及び排気弁32の構成は同じであるため、以下では主に排気弁32について説明する。なお、給気弁31及び排気弁32における同一の構成には同一の符号を付す。
【0021】
給気弁31及び排気弁32は、作動アーム22の先端側を中心として対称に配置され、バルブケース11内に納められる。バルブケース11には、一端がバルブケース11の外面に開口すると共に他端が油室12に開口する一対のバルブ収納孔11aが形成される。給気弁31及び排気弁32のそれぞれはバルブ収納孔11aに収納される。
【0022】
排気弁32は、バルブ収納孔11a内に締結される略円筒状のスリーブ33と、スリーブ33内に摺動自在に配置され作動アーム22の回動に伴って移動する第1弁体34と、スリーブ33内に摺動自在に配置されるとともに第1弁体34の外周に環状に設けられ第1弁体34が離着座する第1弁座35aを有する第2弁体35と、を備える。
【0023】
スリーブ33の外周面の一部には雄ねじ部33aが形成され、この雄ねじ部33aをバルブ収納孔11aの内周に形成された雌ねじ部11bに螺合させることによって、スリーブ33はバルブ収納孔11a内に締結される。また、スリーブ33の外周には、径方向に延びる鍔部33bが形成され、この鍔部33bがバルブケース11の外周面にワッシャ13を介して当接することによって、スリーブ33はバルブ収納孔11a内に位置決めされる。
【0024】
スリーブ33の軸心には、油室12側から順に、第1穴33c、第1穴33cと比較して大径の第2穴33d、第2穴33dと比較して大径の第3穴33eと、第3穴33eと比較して大径の第4穴33fと、が直列に連通して形成される。
【0025】
第2穴33dと第3穴33eとの境界段部には第2弁体35が着座又は離間する第2弁座33gが形成される。第2弁座33gは、開弁方向(図3中右方向)にスリーブ33から隆起して形成され、スリーブ33の第2弁座33g以外の部分と第2弁体35との間に隙間が形成される。
【0026】
第1弁体34は、スリーブ33の第1穴33cに沿って摺動する摺動部34aと、摺動部34aと比較して大径に形成され第1弁座35aを開閉する弁体部34bと、を有する。摺動部34aと弁体部34bとの境界段部には、第1弁座35aに着座して圧縮空気の流れを遮断する一方、第1弁座35aから離間して圧縮空気の流れを許容するシート部34cが第1弁体34の径方向に平らに形成される。弁体部34bには、摺動部34aとは反対側に弁体部34bより外径が小さい第1縮径部34dと、第1縮径部34dより外径が小さい第2縮径部34eと、がこの順に形成される。
【0027】
第2弁体35は、第1弁体34の摺動部34aの外周に環状に設けられる弁体部35bと、弁体部35bに連結されるとともに開弁方向に延設され第1弁体34の弁体部35bの外周に設けられる環状の延設部35cと、を有する。
【0028】
弁体部35bは、図4Aに示すように、内周が第1弁体34の摺動部34aの外周に摺接し、外周が延設部35cの内周に螺合する(図3)。弁体部35bの内周には、第1弁体34の摺動部34aに沿って切欠き状の接続通路35dが形成される。接続通路35dは、弁体部35bの周方向の3箇所に設けられ、弁体部35bの開弁方向端部から閉弁方向端部までに亘って形成される(図3)。
【0029】
弁体部35bの開弁方向端部には、第1弁体34の弁体部34bが離着座する第1弁座35aが形成される。弁体部35bの閉弁方向端部には、スリーブ33から隆起して形成される第2弁座33gに着座して圧縮空気の流れを遮断する一方、第2弁座33gから離間して圧縮空気の流れを許容するシート部35eが第2弁体35の径方向に平らに形成される。
【0030】
延設部35cは、内周が第1弁体34の弁体部34bと所定の間隙を有し、外周が第3穴33eと所定の間隙を有するように形成される。延設部35cの先端には、内径が縮径して形成される係合部35fが設けられる。延設部35c及び係合部35fは、第2弁体の一部を構成する。
【0031】
係合部35fは、内径が第1弁体34の弁体部34bの外径より小さく第1縮径部34dの外径より大きい。さらに、係合部35fと第1弁体34の弁体部34bとは、第1弁体34が第1弁座35aに着座している場合に軸方向(図3中左右方向)に所定距離だけ離間している。これにより、第1弁体34が開弁してから所定距離だけ開弁方向に移動すると、第1弁体34と第2弁体35とが係合し、一体的に開弁方向に移動する。
【0032】
延設部35cにはさらに、延設部35cを径方向に貫通する貫通孔35gが形成される。接続通路としての貫通孔35gは、第1弁体34が開弁後に延設部35cの内周側と外周側とを連通して空気の流れる通路を画成する。
【0033】
スリーブ33の第4穴33fには、軸心に貫通路(図示せず)を有する閉塞部材41が圧入される。閉塞部材41は、第3穴33eと第4穴33fとの境界段部に密接してスリーブ33内の気室を閉塞する。給気弁31の閉塞部材41の貫通路にはコンプレッサ7に連通する連通路9が接続され、排気弁32の閉塞部材41の貫通路には空気ばね通路6が接続される。なお、閉塞部材41に貫通路が設けられない場合は、コンプレッサ7に接続される連通路9が給気弁31の高圧ポート47に接続され、空気ばね通路6が排気弁32の高圧ポート47に接続されてもよい。
【0034】
閉塞部材41と第1弁体34の弁体部34bとの間には、第1弁体34を閉弁方向に付勢するコイルばね42が圧縮状態で設けられる。コイルばね42は、第1弁体34の弁体部34bに形成される第2縮径部34eの外周に嵌合して固定されるバネ受け部材43を介して第1弁体34を付勢する。
【0035】
バネ受け部材43は、図4Bに示すように、内周が第1弁体34の第2縮径部34eに密着し、外周が周方向の3箇所において第3穴33eの内壁に摺接する。バネ受け部材43の外周であって第3穴33eとの摺接部以外の部分は、第3穴33eの内壁との間に隙間を有し、第1弁体34の摺動に応じて空気が通過する。
【0036】
このように、バネ受け部材43は第1弁体34に圧入して固定され第3穴33eの内壁に摺接し、第2弁体35は第1弁体34の摺動部34aの外周に摺接するので、第1弁体34及び第2弁体35は軸方向に摺動可能であるとともに、径方向への移動は規制される。
【0037】
第1弁体34の摺動部34aは、一部が油室12中に突出し、シート部34cが第1弁座35aに着座した状態では、先端部が作動アーム22と所定の隙間を有して対峙する。作動アーム22が中立位置から所定角度以上回動した場合には、作動アーム22が摺動部34aの先端部に当接する。第1弁体34は、作動アーム22の回動に伴ってコイルばね42の付勢力に抗して移動してシート部34cが第1弁座35aから離間することによって開弁する。第2弁体35は、第1弁体34が開弁してから開弁方向に所定距離移動することで係合部35fを介して第1弁体34と係合し、第1弁体34とともに移動してシート部35eが第2弁座33gから離間することによって開弁する。
【0038】
このように、レベリングバルブ100は、空気ばね3に対する圧縮空気の給排が禁止される不感帯を設けるために、作動アーム22が中立位置から回動しても給気弁31及び排気弁32が直ぐには開弁されないように、作動アーム22と給気弁31及び排気弁32との間に所定の隙間を有している。これにより、作動アーム22の所定角度未満の回動に対して、空気ばね3に対する圧縮空気の給排を禁止することができるため、給気弁31及び排気弁32のハンチングを防止することができる。給気弁31及び排気弁32の不感帯は、ワッシャ13の厚さ又は個数を調整することによって設定される。
【0039】
スリーブ33内には、排気通路8と常時連通している第1気室44と、第1弁体34及び第2弁体35によって第1気室44と仕切られ、空気ばね通路6を通じて空気ばね3と常時連通している第2気室45と、が設けられる。なお、給気弁31の第2気室45は、連通路9を通じてコンプレッサ7に常時連通している。
【0040】
第2弁体35は、第1弁体34の摺動部34aの外周に設けられるので、第2弁体35の受圧面積は、第1弁体34の受圧面積より大きい。したがって、第1弁体34及び第2弁体35がともに閉弁している場合には、第2弁体35が第1気室44と第2気室45との差圧によって閉弁方向に受ける力は、第1弁体34が第1気室44と第2気室45との差圧によって閉弁方向に受ける力より大きい。
【0041】
スリーブ33には、第1気室44に連通する低圧ポート46と、第2気室45に連通する高圧ポート47とが、スリーブ33の内外周面を貫通して形成される。低圧ポート46は、バルブケース11に形成された第1環状通路48に常時連通している。高圧ポート47は、バルブケース11に形成された第2環状通路49に常時連通している。
【0042】
給気弁31の第1環状通路48と排気弁32の第2環状通路49とは、バルブケース11に形成された連絡通路10を通じて連通している。つまり、給気弁31の低圧ポート46と排気弁32の高圧ポート47とは、連絡通路10を通じて連通している。その連絡通路10の途中には、給気弁31の低圧ポート46から排気弁32の高圧ポート47への圧縮空気の流れのみを許容する逆止弁(図示せず)が設けられる。また、排気弁32の低圧ポート46は、第1環状通路48を通じて排気通路8に連通している。
【0043】
次に、レベリングバルブ100の動作について説明する。
【0044】
車体荷重が減少して空気ばね3が伸びた場合には、台車2に対する車体1の相対変位に応じてレバー4が中立位置から下方に押し下げられ(図1)、それに伴って緩衝ばね23が変形する。この緩衝ばね23の復元力が作動アーム22に伝達され、作動アーム22は中立位置から図3中矢印B方向に回動する。
【0045】
作動アーム22が所定角度以上回動した場合には、作動アーム22が排気弁32の第1弁体34を押圧する。このとき、第1弁体34は、第1気室44と第2気室45との差圧にこの差圧を受ける受圧面積を乗じて演算される力とコイルばね42の付勢力とに抗して移動して開弁する。なお、この場合に開弁するのは第1弁体34のみであるので、上記受圧面積は、第1弁体34のみの受圧面積であり第2弁体35の受圧面積は含まない。
【0046】
図5に示すように、第1弁体34が開弁すると、排気弁32の第1気室44と第2気室45とが第2弁体35の接続通路35d及び延設部35cの貫通孔35gを介して連通する。さらに、第1弁体34が開弁してから所定距離だけ開弁方向に移動すると、係合部35fが第1弁体34に係合する。
【0047】
このとき、第1気室44と第2気室45とは連通しているので、第1気室44と第2気室45との差圧は低下する。さらに、第2弁体35の閉弁方向端部側にはスリーブ33との間に隙間が形成されているので、第2弁体35には第1気室44と第2気室45との差圧による力がほとんど作用しない。
【0048】
図6に示すように、第1弁体34がさらに開弁方向に移動すると、第2弁体35が第1弁体34とともに開弁方向に移動する。これにより、第1気室44と第2気室45とは、第2弁体35とスリーブ33との間を介して連通する。
【0049】
このとき、第1弁体34は係合部35fを介して第2弁体35を移動させるが、上述のように第2弁体35には第1気室44と第2気室45との差圧による力がほとんど作用していないので、第2弁体35を開弁させるために作動アーム22に必要な押圧力が増大することはほとんどない。すなわち、第1弁体34及び第2弁体35がともに閉弁している場合に第2弁体35が第1気室44と第2気室45との差圧によって閉弁方向に受けていた力は、第1弁体34の開弁に伴ってキャンセルされる。
【0050】
これにより、空気ばね3の圧縮空気は、排気弁32の第2気室45、第1気室44、低圧ポート46及び排気通路8を通じて大気へ排出される。なお、排気弁32の高圧ポート47は給気弁31の低圧ポート46と連絡通路10を通じて連通しているが、連絡通路10に設けられる逆止弁によって、空気ばね3の圧縮空気が給気弁31側へと流入することはない。
【0051】
一方、車体荷重が増加して空気ばね3が撓んだ場合には、台車2に対する車体1の相対変位に応じてレバー4が中立位置から上方に押し上げられ(図1)、それに伴って緩衝ばね23が変形する。この緩衝ばね23の復元力が作動アーム22に伝達され、作動アーム22は中立位置から図3中矢印A方向に回動する。
【0052】
作動アーム22が所定角度以上回動した場合には、作動アーム22が給気弁31の第1弁体34を押圧する。このとき、第1弁体34は、第1気室44と第2気室45との差圧にこの差圧を受ける受圧面積を乗じて演算される力とコイルばね42の付勢力とに抗して移動して開弁する。なお、この場合に開弁するのは第1弁体34のみであるので、上記受圧面積は、第1弁体34のみの受圧面積であり第2弁体35の受圧面積は含まない。
【0053】
第1弁体34が開弁すると、給気弁31の第1気室44と第2気室45とが第2弁体35の接続通路35d及び延設部35cの貫通孔35gを介して連通する。さらに、第1弁体34が開弁してから所定距離だけ開弁方向に移動すると、係合部35fが第1弁体34に係合する。
【0054】
このとき、第1気室44と第2気室45とは連通しているので、第1気室44と第2気室45との差圧は低下する。さらに、第2弁体35の閉弁方向端部側にはスリーブ33との間に隙間が形成されているので、第2弁体35には第1気室44と第2気室45との差圧による力がほとんど作用しない。
【0055】
第1弁体34がさらに開弁方向に移動すると、第2弁体35が第1弁体34とともに開弁方向に移動する。これにより、第1気室44と第2気室45とは、第2弁体35とスリーブ33との間を介して連通する。
【0056】
このとき、第1弁体34は係合部35fを介して第2弁体35を移動させるが、上述のように第2弁体35には第1気室44と第2気室45との差圧による力がほとんど作用していないので、第2弁体35を開弁させるために作動アーム22に必要な押圧力が増大することはほとんどない。すなわち、第1弁体34及び第2弁体35がともに閉弁している場合に第2弁体35が第1気室44と第2気室45との差圧によって閉弁方向に受けていた力は、第1弁体34の開弁に伴ってキャンセルされる。
【0057】
これにより、空気ばね3の圧縮空気は、給気弁31の第2気室45、第1気室44、低圧ポート46から連絡通路10の逆止弁を押し開いて、排気弁32の高圧ポート47、第2気室45を通じて空気ばね3へ供給される。
【0058】
給気弁31を通じてコンプレッサ7の圧縮空気が空気ばね3へ供給されて空気ばね3が一定の高さに復元すると、レバー4が中立位置に戻り作動アーム22も中立位置に戻る。これにより、コイルばね42の付勢力によって給気弁31の第1弁体34が第1弁座35aに着座するとともに第2弁体35が第2弁座33gに着座して給気弁31が閉弁し、圧縮空気の供給が遮断される。
【0059】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0060】
作動アーム22の回動に伴って第1弁体34が開弁すると、貫通孔35g及び接続通路35dを介して空気が流れるので、第1気室44と第2気室45との差圧が低下し、第2弁体35は係合部35fを介して第1弁体34とともに開弁する。これにより、作動アーム22は第1弁体34を開弁方向に押圧する力を作用させるだけで第1弁体34より受圧面積の大きい第2弁体35も開弁させることができる。よって、作動アーム22に回動力を付与する緩衝ばね23を大型化することなく大きな流路面積を確保することができる。
【0061】
さらに、第2弁座33gは開弁方向にスリーブ33から隆起して形成され、スリーブ内周と第2弁体35の外周との間に流路を有する。これにより、エア圧を当該流路により第2弁体35の閉弁方向端部側とスリーブ33に形成される第2弁座33gとの隙間に導くことができる。このエア圧によって、第2弁体35は常に開弁方向に付勢されるので、作動アーム22の回動に伴って第1弁体34が開弁した後、第1弁体34が係合部35fを介して第2弁体35とともに開弁方向に移動する際に、作動アーム22に必要な押圧力が増大することを抑制することができる。よって、より確実に第2弁体35を開弁させることができるので、緩衝ばね23を大型化することなく大きな流路面積を確保することができる。
【0062】
さらに、延設部35cには貫通孔35gが形成されるので、第1弁体34が開弁した際に第1気室44と第2気室45とを連通する通路の流路面積を大きくすることができ、第1気室44と第2気室45との差圧を迅速に低下させることができる。また、第1弁体34が開弁後に所定距離移動して係合部35fに係合しても、第1気室44と第2気室45との連通状態を保持することができるので、より確実に第2弁体35を開弁させることができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0064】
例えば、上記実施形態では、図4Aに示すように接続通路35dの断面を半円形状に形成したが、図7に示すように接続通路55dを楕円形状に形成してもよい。接続通路55dの断面積を大きくすることで、第1弁体34が開弁した際に第1気室44と第2気室45との差圧をより迅速に低下させることができる。
【0065】
さらに、上記実施形態では、給気弁31及び排気弁32がそれぞれ第1弁体34及び第2弁体35を有する場合を例示したが、給気弁31及び排気弁32のいずれか一方のみが第1弁体34及び第2弁体35を有し、他方は単一の弁体のみを有する構成としてもよい。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7