(54)【発明の名称】2−((4−アミノ−3−(3−フルオロ−5−ヒドロキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−D]ピリミジン−1−イル)メチル)−3−(2−トリフルオロ−メチル)ベンジル)キナゾリン−4(3H)−オン誘導体及びホスホイノシチド3−キナーゼ阻害剤としてのそれらの使用
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
9.7、12.2、14.1及び14.3(±0.2度、2−シータ値)から選ばれる1、2、3又は4個のピークを含有するXRPDパターンを有する、請求項2に従う式(I)の化合物。
コルチコステロイド、ベータアゴニスト、キサンチン、ムスカリンアンタゴニスト及びp38 MAPキナーゼ阻害剤から選ばれる第2の又はさらなる活性成分をさらに含んでなる請求項4に従う製薬学的組成物。
コルチコステロイド、ベータアゴニスト、キサンチン、ムスカリンアンタゴニスト及びp38 MAPキナーゼ阻害剤から選ばれる1種もしくはそれより多いさらなる活性成分との組み合わせでの使用のための、請求項1〜3のいずれか1つに従う式(I)の化合物を含んでなる薬剤。
COPD(慢性気管支炎及び気腫を含む)、ぜんそく、小児ぜんそく、のう胞性線維症、サルコイドーシス、突発性肺線維症、アレルギー性鼻炎、鼻炎、副鼻腔炎及びウイルスにより引き起こされるそれらの1つの悪化、呼吸器ウイルス感染(その合併症を含む)、アレルギー性結膜炎、結膜炎、アレルギー性皮膚炎、接触性皮膚炎、乾癬、潰瘍性大腸炎、慢性関節リウマチ又は変形性関節症に続発性の炎症関節、慢性関節リウマチ、膵炎、悪液質、成長阻害ならびに非小細胞性肺ガン、乳ガン、胃ガン、結腸直腸ガン及び悪性黒色種を含む腫瘍の転移から選ばれる状態の処置又は予防における使用のための、請求項1〜3のいずれか1つに従う式(I)の化合物、又は請求項4もしくは請求項5に従う製薬学的組成物、又は請求項6に従う製薬学的製品。
COPD(慢性気管支炎及び気腫を含む)、ぜんそく、小児ぜんそく、のう胞性線維症、サルコイドーシス、突発性肺線維症、アレルギー性鼻炎、鼻炎、副鼻腔炎及びウイルスにより引き起こされるそれらの1つの悪化、呼吸器ウイルス感染(その合併症を含む)、アレルギー性結膜炎、結膜炎、アレルギー性皮膚炎、接触性皮膚炎、乾癬、潰瘍性大腸炎、慢性関節リウマチ又は変形性関節症に続発性の炎症関節、慢性関節リウマチ、膵炎、悪液質、成長阻害ならびに非小細胞性肺ガン、乳ガン、胃ガン、結腸直腸ガン及び悪性黒色種を含む腫瘍の転移から選ばれる状態の処置又は予防用の薬剤の製造のための、請求項1〜3のいずれか1つに従う式(I)の化合物、又は請求項4もしくは請求項5に従う製薬学的調剤、又は請求項6に従う製薬学的製品の使用。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図の簡単な記述
【
図1a】マウス気道におけるポリ−I:C−誘導好中球蓄積への化合物(I)又は化合物Aを用いる処置の効果を示す棒グラフである。
【
図1b】マウス気道におけるポリ−I:C−誘導好中球蓄積への化合物(I)対化合物Aの阻害力価の比較を示す。
【
図2a】ネズミBALFにおけるタバコ煙−誘導マクロファージ蓄積への化合物(I)又は化合物Aを用いる処置の効果を示す棒グラフである。
【
図2b】ネズミBALFにおけるタバコ煙−誘導好中球蓄積への化合物(I)又は化合物Aを用いる処置の効果を示す棒グラフである。
【
図3】1型結晶多形の試料から取得したX−線粉末回折(XRPD)パターンである(実施例2を参照されたい)。
【
図4】1型結晶多形の試料の熱−重量分析(TGA)(上のプロット)及び示差走査熱量分析(DSC)(下のプロット)を示す(実施例2を参照されたい)。
【
図5】2型結晶多形の試料から取得したXRPDパターンである(実施例4を参照されたい)。
【
図6】2型結晶多形の試料のTGA分析を示す(実施例4を参照されたい)。
【
図7】2型結晶多形の試料のDSC分析を示す(実施例4を参照されたい)。
【
図8】2型結晶多形の試料に関するDVS等温線プロットである(実施例4を参照されたい)。
【
図9】2型結晶多形の試料に関する質量におけるDVS変化のプロットである(実施例4を参照されたい)。
【
図10】2型結晶多形の試料についてのDVS分析の前(下のプロット)及び後(上のプロット)に得たXRPDパターンを示す(実施例4を参照されたい)。
【
図11】保存前(下のプロット)ならびに25℃/96%RH(中間のプロット)及び40℃/75%RH(上のプロット)における1週間の保存の後に得た2型結晶多形の試料のXRPDパターンを示す(実施例4を参照されたい)。
【
図12】3型結晶多形の試料から取得したXRPDパターンである(実施例8を参照されたい)。
【
図13】3型結晶多形の試料のTGA(上のプロット)及びDSC(下のプロット)分析を示す(実施例8を参照されたい)。
【
図14】3型結晶多形の試料についてのGVS分析である(実施例8を参照されたい)。
【
図15】3型結晶多形の試料についてのDVS分析の前(下のプロット)及び後(上のプロット)に得たXRPDパターンを示す(実施例8を参照されたい)。
【
図16】保存前(下のプロット)ならびに25℃/96%RH(中間のプロット)及び40℃/75%RH(上のプロット)における1週間の保存の後に得た3型結晶多形の試料のXRPDパターンを示す(実施例8を参照されたい)。
【
図17】7型(最上のプロット)、6型、5型、4型、3型、2型及び1型(最下のプロット)の試料から取得したXRPDパターンの重ね図(overlay)を示す(実施例9〜12を参照されたい)。
【0024】
発明の詳細な記述
本明細書で用いられる阻害剤という用語は、試験管内酵素アッセイにおいて標的タンパク質、例えばPI3Kδ酵素の生物学的活性を減じる(例えば少なくとも10%、20%、30%、40%、50%もしくはそれより多く)か、あるいは除去する化合物を指すことが意図されている。
【0025】
本明細書で用いられるデルタ/ガンマ(δ/γ)阻害剤という用語は、化合物が必ずしも同じ程度までではないが、両酵素イソ型における阻害活性をいくらかの程度まで阻害する事実を指すことが意図されている。
【0026】
本開示の化合物は、細胞に基づくスクリーニング系において活性であり、それにより、それが細胞への透過のための適した性質を有し、且つ細胞内薬理学的効果を及ぼすことができることを示している(実験部分における表6及び表7を参照されたい)。
【0027】
本開示の化合物は、薬剤として治療的に適した且つ望ましい製薬学的性質、例えば妥当な化学的安定性及び光安定性を含む物理−化学的特徴、適した溶解性の側面ならびに有力な活性を有する。
【0028】
1つの態様において、本発明の化合物の製薬学的に許容され得る塩を提供する。
【0029】
1つの態様において、本発明の化合物の製薬学的に許容され得る酸付加塩を提供する。
【0030】
本明細書上記で言及した製薬学的に許容され得る酸付加塩は、式(I)の化合物が形成することができる治療的に活性な無毒性の酸付加塩を含むものとする。式(I)の化合物の遊離の塩基の形態をそのような適した酸の例で処理することにより、これらの製薬学的に許容され得る酸付加塩を簡単に得ることができる。適した酸の例には、例えば塩酸、臭化水素酸及び硫酸及びリン酸などのような無機酸;あるいは例えば酢酸、プロパン酸、ヒドロキシ酢酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、パラ−トルエンスルホン酸、シクラミン酸、サリチル酸、パラ−アミノサリチル酸、パモ酸などのような有機酸が含まれる。適した酸のさらなる例はベンゼンスルホン酸である。
【0031】
式(I)の化合物の塩の例にはすべての製薬学的に許容され得る塩、例えば制限ではなく、HCl及びHBr塩のような無機酸の酸付加塩ならびにメタンスルホン酸塩のような有機酸の付加塩が含まれる。さらなる例には硫酸塩及びリン酸塩が含まれる。
【0032】
別の態様において、式(I)の化合物を適した塩基と反応させることにより形成される本発明の化合物の製薬学的に許容され得る塩を提供する。適した塩基の例には、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、L−アルギニン、コリン及びL−リシンが含まれる。
【0033】
1つの態様において、遊離の塩基としての2−((4−アミノ−3−(3−フルオロ−5−ヒドロキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)メチル)−5−(3−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)プロピ−1−イン−1−イル)−3−(2−(トリフルオロメチル)ベンジル)キナゾリン−4(3H)−オンを提供する。
【0034】
本発明は、本明細書に開示される化合物の溶媒和物にも拡大される。溶媒和物の例には水和物が含まれる。
【0035】
本開示の化合物は、特定される原子が天然に存在するかもしくは天然に存在しない同位体であるものを含む。1つの態様において、同位体は安定な同位体である。かくして本開示の化合物は、例えば水素原子の代わりに1個もしくはそれより多いジューテリウム原子を含有するものなどを含む。
【0036】
本開示は、本明細書に定義される化合物のすべての多形形態(polymorphic
forms)にも拡大される。
【0037】
式(I)の化合物は、LG
1がハロ、特にブロモのような脱離基を示す式(II):
【0038】
【化2】
【0039】
の化合物又はその保護誘導体を式(III):
【0040】
【化3】
【0041】
の化合物と、適した触媒及び有機塩基の存在下に、且つ極性非プロトン性溶媒中で、不活性雰囲気下で反応させることを含んでなる方法により簡便に製造され得る。適した触媒には、ヨウ化銅の存在下におけるビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリドのようなパラジウム触媒が含まれる。この転換に適した極性非プロトン性溶媒はDMFであり、適した不活性雰囲気は窒素である。
【0042】
式(II)の化合物が保護誘導体である合成方法の場合、式(I)の化合物は当該技術分野において周知であり且つ実施されている適した脱保護段階により現れる。例えば式(I)の化合物中に存在するフェノールがシリル基、例えばtert−ブチルジメチルシリル基で保護されている場合、DMFのような極性非プロトン性溶媒の存在下でテトラブチルアンモニウムフルオリドのような試薬を用いる処理により脱保護段階を行うことができる。低い温度(reduced temperature)で、例えば0℃において反応を行うことができる。
【0043】
式(II)の化合物は、LG
1が式(II)の化合物に関して上記で定義した脱離基であり、LG
2もハロ、例えばハロゲン原子及び適切には塩素のような脱離基である式(IV):
【0044】
【化4】
【0045】
の化合物又はその保護誘導体を、式(V):
【0046】
【化5】
【0047】
の化合物又はその保護誘導体と、塩基の存在下且つ極性非プロトン性溶媒中で反応させることにより製造され得る。
【0048】
この転換のために適した塩基には、炭酸カリウムが含まれ、適した極性非プロトン性溶媒はDMFである。
【0049】
合成方法には、カップリング段階の間に式(VII)の化合物のフェノール性ヒドロキシルを保護するのが有利であるとみなされるものが含まれ、適した保護誘導体にはtertブチルジメチルシリルエーテル及びtert−ブチルエーテルが含まれる。
【0050】
あるいはまた、LG
1が式(II)の化合物に関して上記で定義した通りであり、LG
3がハロ、特にヨードのような脱離基を示す式(VI):
【0051】
【化6】
【0052】
の化合物又はその保護誘導体を、式(VII):
【0053】
【化7】
【0054】
の化合物又はその保護誘導体と、適した貴金属触媒、無機塩基及び極性プロトン性溶媒の存在下に、不活性雰囲気下で反応させ、適宜続いて脱保護をすることにより、式(II)の化合物を製造することができる。
【0055】
適した触媒は、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)である。
【0056】
適した無機塩基は炭酸ナトリウムであり、適した極性プロトン性溶媒はエタノールである。
【0057】
高められた温度で、例えば85℃で長時間、例えば3日間反応を行ってから室温に冷ますことができる。
【0058】
上記の反応順の1つ又はそれより多くの間に化学的に敏感な基を覆い隠し、1つ又はそれより多くのプロセスが有効であることを確実にするために、保護基は有利であり得る。かくして望ましいかもしくは必要なら、中間化合物を通常の保護基の使用により保護することができる。保護基及びそれらの除去のための手段は、John Wiley & Sons Incにより出版されたTheodora W.Green and Peter G.M.Wutsによる“Protective Groups in Organic Synthesis”;4
th Rev Ed.,2006,ISBN−10:0471697540に記載されている。
【0059】
新規な中間体は、本発明の側面として特許請求される。
【0060】
有利には、本発明の化合物(I)はアトロプ異性を示さない。
【0061】
本開示の実施例2に従って製造される化合物(I)は、1型結晶多形として製造される。1型結晶多形は、実質的に
図3に示されるようなXRPDパターンにより特徴付けられる。
【0062】
1型結晶多形の試料の熱的挙動は複雑であることが見出された。実施例2で議論され且つ
図4中に示されるDSC分析(下のプロット)において示される通り、1型結晶多形の試料は、加熱されると複数の事象を経て、結局は異なる結晶多形−本明細書で2型結晶多形と言及される−に転換した(transformed)。
【0063】
2型結晶多形は無水であることが見出され、約190℃(ピーク極大)において分解を伴って融解した。1型結晶多形について行われたスラリ化実験は、ほとんどの溶媒の場合に2型結晶多形の生成を生じたが、ジクロロメタン中で1型結晶多形をスラリ化することにより、無水結晶多形−本明細書で3型結晶多形と言及される−が得られた。3型結晶多形は無水であることが見出され、約186℃(ピーク極大;実施例8を参照されたい)において分解を伴って融解した。THF、1,4−ジオキサン、10%水/アセトニトリル又は10%水/アセトンを用いる1型結晶多形又は非晶質形態における化合物(I)のスラリ化から、化合物(I)の複数の擬多形(4、5、6及び7擬多形)も得られた(実施例9〜12を参照されたい)。
【0064】
化合物(I)の7種の多形及び擬多形形態の中で、2型及び3型結晶多形は最も有望な固体状態の性質を有し、2型結晶多形はより高い融点を有する故に最も好ましかった。
【0065】
種々の温度において種々の溶媒中で、2型及び3型結晶多形の50/50混合物を用い、競争的スラリ実験を行った(実施例13を参照されたい)。すべての実験は2型結晶多形を与え、これが熱力学的により安定な形態であることを確証した。化合物の保存及び化合物を含有する製薬学的生成物の製造の間、あるいは製造後のそのような生成物の寿命の間、多形形態の相互−転換の危険を最小にするのが望ましいということから、2型結晶多形は化合物(I)の3型結晶多形及び他の多形形態を超える利点を有する。
【0066】
適切には、2型結晶多形は1−プロパノール中の溶液から化合物(I)を結晶化させることにより製造される。播種を用いて又は用いずに1−プロパノールを用いる代表的な方
法を、実施例3に記載する。
【0067】
メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、アセトン、酢酸エチル、アセトニトリル、トルエン、酢酸イソプロピル、TBME、2−ブタノン、DMSO、ジエチルエーテル、MIBK、ヘプタン、ニトロメタン、10%水/エタノール、10%水/アセトニトリル又は10%水/2−プロパノール中で1型結晶多形をスラリ化することによって2型結晶多形を製造することもできる。
【0068】
あるいはまた、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、アセトン、酢酸エチル、アセトニトリル、トルエン、酢酸イソプロピル、TBME、2−ブタノン、DMSO、ジエチルエーテル、MIBK、ニトロメタン、10%水/エタノール又は10%水/2−プロパノール中で非晶質形態における化合物(I)をスラリ化することにより、2型結晶多形を製造することができる。
【0069】
発明者等の実験は、ジクロロメタン中での非晶質形態における化合物(I)のスラリ化は3型結晶多形の生成に導くことを示した。従って、2型結晶多形の生成を意図する結晶化条件において、ジクロロメタンの使用は避けられねばならない。
【0070】
発明者等の実験は、THF中での非晶質形態における化合物(I)又は1型結晶多形のスラリ化は、4型擬多形の生成に導くことを示した。従って、2型結晶多形の生成を意図する結晶化条件において、THFの使用は避けられねばならない。
【0071】
発明者等の実験は、1,4−ジオキサン中での非晶質形態における化合物(I)又は1型結晶多形のスラリ化は、5型擬多形の生成に導くことを示した。従って、2型結晶多形の生成を意図する結晶化条件において、1,4−ジオキサンの使用は避けられねばならない。
【0072】
発明者等の実験は、10%水/アセトニトリル中での非晶質形態における化合物(I)のスラリ化は、6型擬多形の生成に導くことを示した。従って、非晶質形態における化合物(I)からの2型結晶多形の生成を意図する結晶化条件において、10%水/アセトニトリルの使用は避けられねばならない。
【0073】
発明者等の実験は、10%水/アセトン中での非晶質形態における化合物(I)のスラリ化は、7型擬多形の生成に導くことを示した。従って、非晶質形態における化合物(I)からの2型結晶多形の生成を意図する結晶化条件において、10%水/アセトンの使用は避けられねばならない。
【0074】
2型結晶多形は、実質的に
図5に示される通りのXRPDパターンにより特徴付けられる。このパターンは、位置8.2、9.0、9.2、9.7、12.2、14.1、14.3、15.0、16.4、18.0、18.5、19.0、19.6、21.8、22.3、22.5、24.3、24.5、24.8、25.1及び25.8(±0.2度、2−シータ値)において主ピークを有する。これらの中の少なくとも3個(例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20又は21個全部)が、得られるXRPDパターン中で観察可能であることが典型的である。9.7、12.2、14.1及び14.3におけるピークは2型結晶多形に関して特に特徴的であり、従ってこれらのピークの中の少なくとも1個(例えば1、2、3もしくは4個全部)がXRPDパターン中で観察可能であるこが典型的である。
【0075】
3型結晶多形は、実質的に
図12に示される通りのXRPDパターンにより特徴付けられる。
【0076】
4型擬多形は、実質的に
図17に示される通りのXRPDパターンにより特徴付けられる。
【0077】
5型擬多形は、実質的に
図17に示される通りのXRPDパターンにより特徴付けられる。
【0078】
6型擬多形は、実質的に
図17に示される通りのXRPDパターンにより特徴付けられる。
【0079】
7型擬多形は、実質的に
図17に示される通りのXRPDパターンにより特徴付けられる。
【0080】
1つの側面において、化合物は、例えばCOPD及び/又はぜんそくの処置において有用である。
【0081】
今日までに開発されたPI3K化合物は、典型的には経口的投与用が意図されてきた。典型的には、この戦略は十分な作用の持続時間を達成するために化合物の薬物動態学的側面を最適化することを含む。この方法で、投薬の間の十分に高い薬剤濃度が確立され且つ保持され、継続的な臨床的利益を与える。この方法の避けられない且つしばしば望ましくない結果は、標的とされない体組織、特に肝臓及び消化管が薬理学的に活性な濃度の薬剤におそらく暴露されることである。
【0082】
代わりの戦略は、薬剤を炎症器官に直接投薬する処置管理を設計することである(例えば局所的治療)。この方法はすべての慢性炎症状態の処置のために適切というわけではないが、それは肺疾患(ぜんそく、COPD、のう胞性線維症)、皮膚損傷(skin lesions)(アトピー性皮膚炎及び乾癬)、鼻の疾患(アレルギー性鼻炎)、眼の疾患(アレルギー性結膜炎)及び胃腸障害(潰瘍性大腸炎)の処置において広く利用されてきた。
【0083】
局所的治療において、薬剤が持続した作用期間を有し、主に標的器官中に保持されてそれにより全身毒性の危険を最小にすることを保証することにより、所望の有効性を達成できることがある。あるいはまた、活性薬剤の「溜め(reservoir)」を形成し、それは次いで所望の効果を持続させるために利用可能である、適した調剤を用いることができる。第1の方法は、抗コリン薬チオトロピウムブロミド(tiotropium bromide)(Spiriva HandiHaler(登録商標))の使用において例示され、それはCOPDのための処置として肺に局所的に投与される。この化合物はその標的受容体に関して例外的に高い親和性を有し、非常に遅いオフ速度(off rate)(解離速度)及び結果としての持続した作用期間を生ずる。
【0084】
本開示の1つの側面に従って、例えば肺に局所的に投与されるPI3キナーゼ阻害剤としての式(I)の化合物又はそれを含有する製薬学的調剤の使用を提供する。
【0085】
かくして1つの態様において、本開示の化合物は、患者への治療的利益を最大にし、一方で望ましくない全身的影響に関する可能性を最小にするために、肺への局所的投与による使用用が意図されている。従って式(I)の化合物はそれが体循環系に達したら迅速に代謝されること及び代謝回転の生成物は親分子より活性が低いことが有利である。
【0086】
式(I)の化合物の初回通過代謝(first pass metabolism)の主な生成物であるらしいものは対応するアルコール、化合物(Ia)であり、それはこの
化学型の構造に関する共通の特徴である代謝プロセスであるO−脱メチル化から生ずる。この代謝生成物であり得るものは、α及びβサブタイプの両方において、PI3K阻害剤として式(I)の化合物より有意に活性が低い(実験部分における表6を参照されたい)。
【0087】
【化8】
【0088】
かくして1つの側面において、そのすべての立体異性体、互変異性体及び同位体的誘導体を含む式(Ia)の化合物又は製薬学的に許容され得るその塩を提供する。
【0089】
本開示の1つの側面において、本発明の化合物は局所的送達、例えば特にCOPDの処置のための肺への局所的送達に特に適している。
【0090】
かくして1つの側面において、吸入による、すなわち肺への局所的投与によるCOPD及び/又はぜんそく、特にCOPD又は重症のぜんそくの処置のための本発明の化合物の使用を提供する。有利には、肺への投与は、患者にとって副作用を最小にしながら実現されるべき化合物の有益な効果を可能にする。
【0091】
1つの態様において、化合物はコルチコステロイドを用いる処置に患者を感作するのに適している。
【0092】
さらに本発明は、場合により1種もしくはそれより多い製薬学的に許容され得る希釈剤又は担体と組み合わせて本開示に従う化合物を含んでなる製薬学的組成物を提供する。
【0093】
希釈剤及び担体には、非経口的、経口的、局所的、粘膜的及び直腸的投与に適したものが含まれ得、投与の経路に依存して異なり得る。
【0094】
1つの態様において、例えば特に液体溶液又は懸濁液の形態における非経口的、皮下、筋肉内、静脈内、関節内又は関節周囲投与のための;特に錠剤又はカプセルの形態における経口的投与のための;特に粉末、鼻滴又はエアロゾルの形態における局所的、例えば肺もしくは鼻内投与ならびに経皮的投与のための;例えば頬、舌下又は膣粘膜への粘膜的投与のためならびに例えば座薬の形態における直腸的投与のための組成物を調製することができる。別の態様において、液体溶液(liquid solution)又は懸濁液の形態における経口的投与のため;液体溶液、液体懸濁物(liquid suspensions)、溶液又は懸濁物を含んでなる鼻滴あるいは加圧もしくは非−加圧エアロゾルの形態における局所的投与のための組成物を調製することができる。
【0095】
組成物は単位投薬量形態物において簡便に投与され得、例えばRemington’s
Pharmaceutical Sciences,17th ed.,Mack Publishing Company,Easton,PA.,(1985)に記載されている通りに、製薬技術分野において周知の方法のいずれかにより調製され得る。多単位投与形態物(multiple unit dosage form)においても組成物を簡便に投与することができる。
【0096】
非経口的投与のための調剤は、賦形剤として無菌の水又は食塩水、アルキレングリコール、例えばプロピレングリコール、ポリアルキレングリコール、例えばポリエチレングリコール、植物起源の油、水素化ナフタレンなどを含有することができる。
【0097】
経鼻投与のための調剤は固体であることができ、賦形剤、例えばラクトース又はデキストランを含有することができるか、あるいは鼻滴又は計量スプレーの形態における使用のために水性もしくは油性溶液であることができる。経鼻投与のための調剤は水性懸濁液の形態にあることもできる。口腔投与のために、典型的な賦形剤には糖類、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、アルファデンプンなどが含まれる。
【0098】
経口的投与に適した組成物は、1種もしくはそれより多い生理学的に適合性の担体及び/又は賦形剤を含むことができ、固体又は液体形態にあることができる。結合剤、例えばシロップ、アラビアゴム、ゼラチン、ソルビトール、トラガカント又はポリビニルピロリドン;充填剤、例えばラクトース、スクロース、コーンスターチ、リン酸カルシウム、ソリビトール又はグリシン;滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール又はシリカ;ならびに界面活性剤、例えばラウリル硫酸ナトリウムを用いて錠剤及びカプセルを調製することができる。液体組成物は懸濁化剤、例えばソルビトールシロップ、メチルセルロース、糖シロップ、ゼラチン、カルボキシメチル−セルロース又は食用脂肪;乳化剤、例えばレシチン又はアラビアゴム;植物油、例えばアーモンド油、ココナツ油、タラの肝油又はピーナツ油;防腐剤、例えばブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)及びブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)のような通常の添加剤を含有することができる。液体組成物を例えばゼラチン中にカプセル封入して、単位投薬量形態物を与えることができる。
【0099】
固体の経口的投薬形態物には錠剤、ツーピースハードシェルカプセル(two−piece hard shell capsules)及び軟質弾性ゼラチン(SEG)カプセルが含まれる。そのようなツーピース硬質シェルカプセルを、例えばゼラチン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)から作ることができる。
【0100】
ドライシェル調剤(dry shell formulation)は、典型的には約40%〜60%濃度のゼラチン、約20%〜30%濃度の可塑剤(例えばグリセリン、ソルビトール又はプロピレングリコール)及び約30%〜40%濃度の水を含む。防腐剤、染料、不透明剤及び風味剤のような他の材料も存在することができる。液体充填材料は、溶解された、可溶化された又は分散された(蜜蝋、水素化ひまし油又はポリエチレングリコール4000のような懸濁化剤を用いて)固体薬剤あるいはビヒクルもしくはビヒクルの組み合わせ、例えば鉱油、植物油、トリグリセリド、グリコール、ポリオール及び界面活性剤中の液体薬剤を含む。
【0101】
適切には、式(I)の化合物を局所的に肺に投与する。従って、1つの態様において、場合により1種もしくはそれより多い局所的に許容され得る希釈剤又は担体と組み合わせて本開示の化合物を含んでなる製薬学的組成物を提供する。
【0102】
エアロゾル調剤の使用により肺への局所的投与を達成することができる。エアロゾル調剤は、典型的には適したエアロゾルプロペラント、例えばクロロフルオロカーボン(CF
C)又はヒドロフルオロカーボン(HFC)中に懸濁又は溶解された活性成分を含む。適したCFCプロペラントにはトリクロロモノフルオロメタン(プロペラント11)、ジクロロテトラフルオロメタン(プロペラント114)及びジクロロジフルオロメタン(プロペラント12)が含まれる。適したHFCプロペラントにはテトラフルオロエタン(HFC−134a)及びヘプタフルオロプロパン(HFC−227)が含まれる。プロペラントは、典型的には40重量%〜99.5重量%、例えば40重量%〜90重量%の合計吸入組成物を含む。調剤は、補助−溶媒(例えばエタノール)及び界面活性剤(例えばレシチン、ソルビタントリオレートなど)を含む賦形剤を含むことができる。他の可能な賦形剤にはポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、グリセリンなどが含まれる。エアロゾル調剤はキャニスター中に包装され、計量バルブ(例えばBespak,Valois又は3Mにより、あるいはまたAptar、Coster又はVariにより供給されるような)を用いて適した投薬量が送達される。
【0103】
水溶液又は懸濁液のような非−加圧調剤の使用により肺への局所的投与を達成することもできる。これらをネブライザー、例えば手で持つことができ携帯用であることができるかあるいは家庭もしくは病院使用用(すなわち非携帯用)であることができるものを用いて投与することができる。調剤は水、緩衝剤、張度調整剤、pH調整剤、界面活性剤及び補助溶媒のような賦形剤を含むことができる。懸濁液(suspension liquid)及びエアロゾル調剤(加圧されていても加圧されていなくても)は、典型的には例えば0.5〜10μm、例えば約1〜5μmのD
50を有する微粉砕された形態で本発明の化合物を含有するであろう。D
10、D
50及びD
90値を用いて粒度分布を示すことができる。粒度分布のD
50メジアン値は、分布を半分で分けるミクロンにおける粒度として定義される。レーザー回折から誘導される測定は体積分布としてより正確に記述され、結局この方法を用いて得られるD
50値はDv
50(体積分布に関するメジアン)としてより意味深長に言及される。本明細書で用いられる場合、Dv値はレーザー回折を用いて測定される粒度分布を指す。類似して、レーザー回折の関係で用いられるD
10及びD
90値はDv
10及びDv
90値を意味すると理解され、それぞれ分布の10%がD
10値より低い値にあり、分布の90%がD
90値より低い値にある粒度を指す。
【0104】
乾燥−粉末調剤の使用により肺への局所的投与を達成することもできる。乾燥粉末調剤は、典型的には1〜10μmの質量平均直径(MMAD)又は0.5〜10μm、例えば約1〜5μmのD
50を有する微粉砕された形態で本開示の化合物を含有するであろう。超微粉砕法(micronization process)又は類似のサイズリダクションプロセス(size reduction process)により、微粉砕された形態(finely divided form)における本発明の化合物の粉末を調製することができる。Hosokawa Alpineにより製造されるもののようなジェットミルを用いて、超微粉砕を行うことができる。得られる粒度分布を、レーザー回折(例えばMalvern Mastersizer 2000S測定器を用いる)を用いて測定することができる。調剤は、典型的には通常比較的大きい粒度、例えば50μmかもしくはそれより大きい、例えば100μmかもしくはそれより大きい質量平均直径(MMAD)又は40〜150μmのD
50の局所的に許容され得る希釈剤、例えばラクトース、グルコース又はマンニトール(好ましくはラクトース)を含有するであろう。本明細書で用いられる場合、「ラクトース」という用語は、α−ラクトース一水和物、β−ラクトース一水和物、無水α−ラクトース、無水β−ラクトース及び非晶質ラクトースを含むラクトース−含有成分を指す。超微粉砕、篩別、磨砕、圧縮、凝集又は噴霧乾燥により、ラクトース成分を加工することができる。種々の形態におけるラクトースの商業的に入手可能な形態、例えばLactohale(登録商標)(吸入等級ラクトース;DFE Pharma)、InhaLac(登録商標)70(乾燥粉末吸入器用の篩別ラクトース;Meggle)、Pharmatose(登録商標)(DFE Pharma)及びRespitose(登録商標)(篩別吸入等級ラクトース;DFE Pharma)製品も包含さ
れる。1つの態様において、ラクトース成分はα−ラクトース一水和物、無水α−ラクトース及び非晶質ラクトースより成る群から選ばれる。好ましくは、ラクトースはα−ラクトース一水和物である。
【0105】
乾燥粉末調剤は、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム又はステアリン酸マグネシウムのような他の賦形剤を含有することもできる。
【0106】
乾燥粉末調剤は、典型的には乾燥粉末吸入器(DPI)装置を用いて送達される。乾燥粉末送達系の例にはSPINHALER(登録商標)、DISKHALER(登録商標)、TURBOHALER(登録商標)、DISKUS(登録商標)、SKYEHALER(登録商標)、ACCUHALER(登録商標)及びCLICKHALER(登録商標)が含まれる。乾燥粉末送達系のさらなる例にはECLIPSE、NEXT、ROTAHALER、HANDIHALER、AEROLISER、CYCLOHALER、BREEZHALER/NEOHALER、MONODOSE、FLOWCAPS、TWINCAPS、X−CAPS、TURBOSPIN、ELPENHALER、MIATHALER、TWISTHALER、NOVOLIZER、PRESSAIR、ELLIPTA、ORIEL乾燥粉末吸入器、MICRODOSE、PULVINAL、EASYHALER、ULTRAHALER、TAIFUN、PULMOJET、OMNIHALER、GYROHALER、TAPER、CONIX、XCELOVAIR及びPROHALERが含まれる。
【0107】
1つの態様において、本発明の化合物を、例えばDISKUSのような装置中に充填された適した等級のラクトースを含んでなる超微粉砕された乾燥粉末調剤として提供する。適切には、そのような装置は多回投与装置(multidose device)であり、例えばDISKUSのような多−単位投与装置における使用用のブリスター中に充填する。
【0108】
1つの態様において、本発明の化合物を、DISKUSのような多−投薬量装置において用いるためのブリスター中に充填された、適した等級のラクトース及びステアリン酸マグネシウムを含んでなる超微粉砕された乾燥粉末調剤として提供する。適切には、そのような装置は多回投与装置である。
【0109】
別の態様において、本発明の化合物を、例えばAEROLIZERのような単投薬量装置における使用のための硬質シェルカプセル中に充填された、適した等級のラクトースを含んでなる超微粉砕された乾燥粉末調剤として提供する。
【0110】
別の態様において、本発明の化合物を、AEROLIZERのような単投薬量装置における使用のための硬質シェルカプセル中に充填された、適した等級のラクトース及びステアリン酸マグネシウムを含んでなる超微粉砕された乾燥粉末調剤として提供する。
【0111】
乾燥粉末吸入器における使用に適した代表的な化合物(I)の組成物を、実施例15中に挙げる。
【0112】
本開示に従う化合物は、治療的活性を有することが意図されている。さらなる側面において、本発明は、薬剤としての使用のための本開示の化合物を提供する。
【0113】
本開示に従う化合物は、COPD(慢性気管支炎及び気腫を含む)、ぜんそく、小児ぜんそく、のう胞性線維症、サルコイドーシス、突発性肺線維症、アレルギー性鼻炎、鼻炎、副鼻腔炎及びウイルスにより引き起こされるそれらの1つの悪化、呼吸器ウイルス感染を含む呼吸器障害、特にぜんそく、慢性気管支炎及びCOPDの処置においても有用であ
り得る。
【0114】
呼吸器ウイルスにはインフルエンザ、呼吸器発疹ウイルス、ヒトパラインフルエンザウイルス、SARSコロナウイルス及びアデノウイルスが含まれる。呼吸器ウイルスのさらなる例はライノウイルスである。
【0115】
以前に患者の状態がコルチコステロイドに無反応性になってしまった場合、本開示の化合物は、それを用いる処置に患者の状態を再−感作することもできる。
【0116】
本発明の1つの態様において、単独療法としての使用に適した投薬量に等しい投薬量の本発明の化合物が用いられるが、コルチコステロイドと組み合わされて投与される。
【0117】
1つの態様において、以前に患者がコルチコステロイドに無反応性になってしまった場合、単独の薬剤としては治療的量以下であろう投薬量の式(I)の化合物が、コルチコステロイドと組み合わされて用いられ、それにより後者への患者の反応性を復活させる。
【0118】
1つの態様において、以前に患者がコルチコステロイドに無反応性になってしまった場合、式(I)の化合物の不在下で投与されると治療的量以下であろう投薬量のコルチコステロイドと組み合わされてある量の式(I)の化合物が用いられ、それによりコルチコステロイドへの患者の反応性を復活させる。
【0119】
さらに、本開示の化合物は抗−ウイルス活性を示すことができ、例えばぜんそく及び/又はCOPDのような炎症状態のウイルス性の悪化の処置において有用であることが証明され得る。
【0120】
本開示の化合物は、インフルエンザウイルス、ライノウイルス及び/又は呼吸器発疹ウイルスと関連する疾患又は疾患の合併症の予防、処置又は改善においても有用であり得る。
【0121】
1つの態様において、ウイルス感染又はウイルス感染により引き起こされる炎症性合併症の処置又は予防における使用のための式(I)の化合物を提供する。
【0122】
本開示に従う式(I)の化合物は、アレルギー性結膜炎、結膜炎、アレルギー性皮膚炎、接触性皮膚炎、乾癬、潰瘍性大腸炎、慢性関節リウマチ又は変形性関節症に続発性の炎症関節を含む局所的(topical)又は局所的(local)治療により処置され得るある種の状態の処置において有用であることも予測される。
【0123】
1つの態様において、式(I)の化合物は、適した経路により投与される時、C型肝炎及び/又はHIVの処置において有用であると考えられる。投与の適した経路には経口的投与、静脈内注射又は輸液が含まれ得る。
【0124】
1つの態様において、C型肝炎の処置のための式(I)の化合物は、肝臓への血液プレエントリー(blood pre−entry)に送達される。
【0125】
本開示の化合物は、慢性関節リウマチ、膵炎、悪液質、成長阻害ならびに非小細胞性肺ガン、乳ガン、胃ガン、結腸直腸ガン及び悪性黒色種を含む腫瘍の転移を含むある種の他の状態の処置において有用であることも予測される。
【0126】
1つの態様において、現在開示されている化合物及びそれを含んでなる製薬学的調剤は、ガン、特に肺ガンの処置又は予防において、特に肺への局所的投与により有用である。
【0127】
かくしてさらなる側面において、本発明は上記の状態の1つもしくはそれより多くの処置における使用のための本明細書に記載される化合物を提供する。
【0128】
さらなる側面において、本発明は上記の状態の1つもしくはそれより多くの処置用の薬剤の製造のための本明細書に記載される化合物の使用を提供する。
【0129】
さらなる側面において、本発明は本開示の化合物又はその製薬学的組成物の有効量を患者に投与することを含む、上記の状態の処置方法を提供する。
【0130】
本明細書に記載される化合物を、上記で同定した疾患の1つもしくはそれより多くの処置のための薬剤の製造において用いることもできる。
【0131】
「処置」という用語は、予防ならびに治療的処置を包含することが意図されている。
【0132】
本開示の化合物を1種もしくはそれより多い他の活性成分、例えば上記の状態の処置に適した活性成分と組み合わせて投与することもできる。例えば呼吸器障害の処置のための可能な組み合わせには、コルチコステロイド(例えばブデソニド(budesonide)、ベクロメタゾンジプロピオネート(beclomethasone dipropionate)、フルチカゾンプロピオネート(fluticasone propionate)、モメタゾンフロエート(mometasone furoate)、フルチカゾンフロエート)、ベータアゴニスト(例えばテルブタリン(terbutaline)、サルブタモル(salbutamol)、サルメテロル(salmeterol)、フォルモテロル(formoterol)、インダカテロル(indacaterol))、キサンチン(例えばテオフィリン(theophylline))、ムスカリンアンタゴニスト(muscarinic antagonist)(例えばイプラトロピウム(ipratropium))及び/又はp38 MAPキナーゼ阻害剤との組み合わせが含まれる。適したコルチコステロイドのさらなる例は、シクレソニド(ciclesonide)又はフルニソリド(flunisolide)である。適切には、ベータアゴニストはベータ2アゴニストである。ベータ2アゴニストのさらなる例はレプロテロル(reproterol)、ビランテロル(vilanterol)、オロダテロル(olodaterol)、レプロテロル(reproterol)及びフェノテロル(fenoterol)である。ムスカリンアンタゴニストのさらなる例にはチオトロピウム(tiotropium)、ウメクリジニウム(umeclidinium)、グリコピロニウム(glycopyrronium)、アクリジニウム(aclidinium)及びダラトロピウム(daratropium)、例えばブロミド塩としてのこれらのいずれかが含まれる。呼吸器障害の処置のためのさらなる可能な組み合わせは、本開示の化合物とホスホジエステラーゼ阻害剤である。
【0133】
1つの態様において、本開示の化合物を抗ウイルス剤、例えばアシクロビル(acyclovir)、オセルタミビル(oseltamivir)、ザナマビル(zanamavir)(Relenza(登録商標))又はインターフェロンと組み合わせて投与する。
【0134】
1つの態様において、活性成分の組み合わせを共−調製する(co−formulated)。
【0135】
1つの態様において、本開示の化合物を吸入用の調剤として、例えばCOPD又は肺ガンの予防を含む肺ガンの維持療法における使用のために、コルチコステロイドと共−調製する。
【0136】
1つの態様において、活性成分の組み合わせを単純に共−投与する(co−administered)。
【0137】
1つの態様において:
(A)本開示の化合物;ならびに
(B)例えばコルチコステロイド、ベータアゴニスト、キサンチン、ムスカリンアンタゴニスト、ホスホジエステラーゼ阻害剤及びp38 MAPキナーゼ阻害剤から選ばれる(例えばコルチコステロイド、ベータアゴニスト、キサンチン、ムスカリンアンタゴニスト及びp38 MAPキナーゼ阻害剤から選ばれる)さらなる活性成分
を含んでなり、ここで成分(A)及び(B)のそれぞれは製薬学的に許容され得る希釈剤又は担体との混合物において調製される組み合わせ生成物を提供する。組み合わせは、場合により追加の関連する賦形剤を含むことができる。適切には、ベータアゴニストはベータ2アゴニストである。
【0138】
1つの態様において、例えばコルチコステロイド、ベータアゴニスト、キサンチン、ムスカリンアンタゴニスト及びp38 MAPキナーゼ阻害剤から選ばれる1種もしくはそれより多いさらなる活性成分と組み合わされて投与されるべき薬剤としての使用するための請求項1に従う式(I)の化合物を提供する。適切には、ベータアゴニストはベータ2アゴニストである。
【0139】
1つの態様において、本開示の化合物を吸入により投与し、コルチコステロイドを経口的にあるいは組み合わせて又は個別に吸入により投与する。
【0140】
1つの態様において、本開示の化合物を吸入により投与し、ベータ2アゴニストを経口的にあるいは組み合わせて又は個別に吸入により投与する。
【発明を実施するための形態】
【0141】
実験部分
本明細書で用いられる略語を下記に定義する(表1)。定義されない略語は、それらの一般的に受け入れられている意味を表わすことが意図されている。
【0142】
表1:略語
Aq 水性
Ac アセチル
ACD 酸性クエン酸ブドウ糖(acid citrate dex
trose)
ATP アデノシン−5’−三リン酸
BALF 気管支肺胞洗浄液
br ブロード
BSA ウシ血清アルブミン
COPD 慢性閉塞性肺疾患
CXCL1 CXCモチーフケモカインリガンド1
CXCL8 CXCモチーフケモカインリガンド8
d 二重項
DCM ジクロロメタン
DMA ジメチルアセトアミド
DMAP 4−ジメチルアミノピリジン
DMSO ジメチルスルホキシド
EDC.HCl 1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジ
イミド塩酸塩
ELIZA 酵素結合イムノソルベントアッセイ
(ES
+) エレクトロスプレーイオン化、正モード
Et エチル
EtOAc 酢酸エチル
EtOH エタノール
FACS 蛍光−活性化細胞選別(fluorescence−act
ivatd cell sorting)
FCS 胎児ウシ血清
FITC フルオレセインイソチオシアナート
FP フルチカゾンプロピオネート
HPLC−MS 高性能液体クロマトグラフィー質量分析
hr 時間
HRP ホースラディッシュペルオキシダーゼ
IFNγ インターフェロンガンマ
i−n 鼻内
i−t 気管内
IL−4 インターロイキン4
IL−5 インターロイキン5
IL−13 インターロイキン13
IL−17 インターロイキン17
LPS リポ多糖
IPA イソプロパノール(プロパン−2−オール)
M モル
(M+H)
+ プロトン化分子イオン
MCP−1 単球化学誘引性タンパク質
MDA マロンジアルデヒド
Me メチル
MeOH メタノール
MHz メガヘルツ
min 分
MIBK メチルイソブチルケトン
MOMA−2 抗−単球及びマクロファージ抗体
MTT 3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−
ジフェニルテトラゾリウムブロミド
m/z 質量対電荷比
NH
4OAc 酢酸アンモニウム
nm ナノメーター
NMP N−メチルピロリドン
NMR 核磁気共鳴(分光分析)
OVA オボアルブミン
PBMC 末梢血単核細胞
PBS リン酸塩緩衝食塩水
Pd
2(dba)
3 トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)
PdCl
2(PPh
3)
2 ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロ
リド
Ph フェニル
PIP2 ホスファチジルイノシトール4,5−ビホスフェート
PIP3 ホスファチジルイノシトール3,4,5−トリホスフェートPMA ホルボールミリステートアセテート
po 経口的投与による
PPh
3 トリフェニルホスフィン
q 四重項
quin 五重項
R
t 保持時間
RH 相対湿度
RT 室温
RP HPLC 逆相高性能液体クロマトグラフィー
s 一重項
SDS ドデシル硫酸ナトリウム
SEM 平均の標準誤差
t 三重項
TBME メチルtert−ブチルエーテル
THF テトラヒドロフラン
TMB 3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン
TNFα 腫瘍壊死因子アルファ
TR−FRET 時間分解蛍光共鳴エネルギー移動
【0143】
一般的な方法
すべての出発材料及び溶媒は、商業的供給源から得たか、あるいは文献引用に従って製造された。他にことわらなければ、すべての反応は撹拌された。有機溶液は慣例的に無水硫酸マグネシウム上で乾燥された。
【0144】
カラムクロマトグラフィーは、予備−充填シリカ(230〜400メッシュ,40〜63μm)カートリッジ上で、示される量を用いて行われた。
【0145】
分析法
分析的LCMS
Waters Xselect CSH C
18 3.5μmカラム(4.6x50mm)を用いて、2.5〜4.5mL分
-1の流量を用い、0.1%v/vのギ酸を含有するH
2O−MeCN勾配を用いて4分かけて溶離させ、分析的LCMSを行った。勾配の情報:0−3.00分,95%H
2O−5%MeCNから5%H
2O−95%MeCNに勾配;3.00−3.01分,5%H
2O−95%MeCNにおいて保持,流量を4.5mL分
-1に上昇させた;3.01−3.50分,5%H
2O−95%MeCNにおいて保持;3.50−3.60分,95%H
2O−5%MeCNに戻した,流量を3.50mL分
-1に低下させた;3.60−3.90分,95%H
2O−5%MeCNにおいて保持;3.90−4.00分,95%H
2O−5%MeCNにおいて保持,流量を2.5mL分
-1に低下させた。試料含有画分を、254nmにおけるそれらのUV吸光度により検出した。溶離ピークの質量スペクトルを、正及び負の混合イオンエレクトスプレーモードで運転されるAgilent 6120四重極型質量分析計を用いて測定した。
【0146】
1H NMR分光分析
Bruker Avance III分光計上で400MHzにおいて、参照標準として残留非ジューテリウム化溶媒を用いて
1H NMRスペクトルを取得し、他に特定しなければDMSO−d
6中で実験に供した(run)。
【0147】
X−線粉末回折−方法1(Brucker AXS C2 GADDS回折計を用いる)
Cu Kα線(40kV,40mA)、自動化XYZステージ、自動−試料配置のためのレーザービデオ顕微鏡及びHiStar 2−次元面積検出器を用いて、回折パターンを集めた。X−線オプチックスは、0.3mmのピンホールコリメーターと連結された1
つのGoebel多層鏡から成った。ビーム発散、すなわち試料上のX−線ビームの有効寸法は約4mmであった。20cmの試料−検出器距離と共にθ−θ連続走査モードを用い、それは3.2
o−29.7
oの有効2θ範囲を与えた。典型的には、試料をX−線ビームに120秒間暴露した。データ収集のために用いられるソフトウェアはXP/2004
4.1.43用のGADDSであり、Diffrac Plus EVA v13.0.0.2又はv15.0.0.0を用いてデータを分析し、提示した。周囲条件下で実験に供される試料を、受け取ったまま磨砕なしで粉末として用い、平板試験片として調製した。約1〜2mgの試料をガラススライド上に軽く圧して平らな表面を得た。非−周囲条件下で実験に供される試料を、熱−伝導性化合物と一緒にシリコンウェハー上に載せた。次いで試料を20℃/分において適した温度まで加熱し、続いて1分間等温で保持してから、データ収集を開始した。
【0148】
X−線粉末回折−方法2(Brucker AXS D8アドバンス回折計を用いる)
Cu Kα線(40kV,40mA)、θ−2θゴニオメーターならびにV4の発散及び受光スリット、GeモノクロメーターならびにLynxeye検出器を用いて、回折パターンを集めた。データ収集のために用いるソフトウェアはDiffrac Plus XRD Commander v2.6.1であり、Diffrac Plus EVA
v13.0.0.2又はv15.0.0.0を用いてデータを分析し、提示した。受取ったままの粉末を用い、平板試験片として周囲条件下で試料を実験に供した。研磨されたゼロ−バックグラウンド(510)シリコンウェハー中へのキャビティーカット中に、試料を穏やかに充填した。分析の間、試料をそれ自身の平面において回転させた。データ収集の詳細は:角度範囲:2−42
o2θ;ステップサイズ:0.05
o2θ;収集時間:0.5秒/ステップである。
【0149】
X−線粉末回折−方法3(PANalytical (Philips) X’PertPRO MPD回折計を用いる)
測定器にはCu LFF X−線管が備えられた。化合物をゼロバックグラウンド試料ホルダー上に広げた。用いられる測定器パラメーターは以下の通りである:発生器(generator)ボルト数:45kV;発生器アンペア数:40mA;形状(geometry):Bragg−Brentano;ステージ:スピナーステージ。測定条件は以下の通りであった:走査モード:連続;走査範囲:3−50
o2θ;ステップサイズ:0.02
o/ステップ;カウンティング時間:30秒/ステップ;スピナー回転時間:1秒;放射線の型:CuKα。入射ビーム路パラメーターは以下の通りであった:プログラム.発散スリット:15mm;ソーラースリット:0.04rad;ビームマスク:15mm;散乱防止スリット(anti scatter slit):1
o;ビームナイフ:+。回折ビーム路パラメーターは以下の通りであった:長い散乱防止シールド(long
anti scatter shield):+;ソーラースリット:0.04rad;Niフィルター:+;検出器:X’Celerator。
【0150】
示差走査熱量測定−方法1(Mettler DSC 823e測定器を用いる)
Mettler DSC 823Eには34位置オートサンプラーが備えられている。保証された(certified)インジウムを用い、測定器をエネルギー及び温度に関してキャリブレーションした。典型的には、ピンホールがあけられた(pin−holed)アルミニウムの皿中の0.5〜3mgの各試料を10℃/分で25℃から300℃まで加熱した。試料上に50ml/分における窒素パージを保持した。測定器制御及びデータ分析ソフトウェアはSTARe v9.20であった。
【0151】
示差走査熱量測定−方法2(RCS冷却装置が備えられたTA−Instruments
Q1000 MTDSCを用いる)
TA−Instruments試料皿を適したカバーで閉じ、RCS冷却装置が備えら
れたTA−Instruments Q1000 MTDSC上でDSC曲線を記録した。以下のパラメーターを用いた:初期温度:25℃;加熱速度:10℃/分;最終温度:250℃。
【0152】
熱−重量分析−方法1(Mettler TGA/SDTA 851e測定器を用いる)
34位置オートサンプラーが備えられたMettler TGA/SDTA 851e上でTGAデータを集めた。保証されたインジウムを用いて測定器を温度キャリブレーションした。典型的には、あらかじめ秤量されたアルミニウムるつぼ上に5〜30mgの各試料を装入し、それを10℃/分で周囲温度から350℃まで加熱した。試料上に50ml/分の窒素パージを保持した。測定器制御及びデータ分析ソフトウェアはSTARe v9.20であった。
【0153】
熱−重量分析(TGA)−方法2(TA−Instruments Q500 TGA熱重量分析計を用いる)
TA−Instruments Q500 TGA熱重量分析計上でTGAデータを集めた。化合物をアルミニウム試料皿中に移してから、以下のパラメーターを用いて分析した:初期温度:室温;加熱速度:20℃/分;分解能係数:4;最終的な状態:350℃又は<80[(w/w)%]。
【0154】
重量的蒸気収着(gravimetric vapor sorption)(GVS)
DVS Intricsic Controlソフトウェア v1.0.1.2(又はv1.0.1.3)により制御されるSMS DVS Intrinsic水分収着分析計を用い、収着等温線を得た。測定器制御により試料温度を25℃に保持した。200ml/分の合計流量を用いて乾燥及び湿潤窒素の流れを混合することにより、湿度を制御した。試料の近くに置かれるキャリブレーションされたRotronicプローブ(1.0−100%RHの動的範囲(dynamic range))により、相対湿度を測定した。%RHの関数としての試料の重量変化(質量緩和(mass relaxation))を微量天秤(精度±0.005mg)により常に監視した。典型的には、5〜20mgの試料を、周囲条件下で風袋が測定されたメッシュステンレススチールバスケット中に入れた。40%RH及び25℃(典型的な室内条件)において試料を装入し、取り出した。下記に概述する通りに、水分収着等温線を行った(2回の完全なサイクルを与える4回の走査)。25℃において10%RH間隔で0−90%RH範囲に及んで標準等温線を行った。Microsoft ExcelにおいてDVS Analysis Suite
v6.2(又は6.1もしくは6.0)を用い、データ分析を行った。
【0156】
等温線の完了後、試料を回収し、XRPDにより再−分析した。
【0157】
動的蒸気収着(DVS)
約20mgの化合物をSMS動的蒸気収着中に移し、25℃において以下のパラメーターを用いて大気湿度に関して重量変化を記録した:乾燥:乾燥窒素下で60分間;平衡:60分間;RH(%)測定点:サイクル1:5,10,20,30,40,50,60,70,80,90,95,90,80,70,60,50,40,30,20,10,5;サイクル2:10,20,30,40,50,60,70,80,90,95,90,80,70,60,50,40,30,20,10,5,0。
【実施例1】
【0158】
化合物(I)及び化合物(Ia)の製造
中間体A:2−((4−アミノ−3−ヨード−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)メチル)−5−ブロモ−3−(2−(トリフルオロメチル)ベンジル)キナゾリン−4(3H)−オン
【0159】
【化9】
【0160】
−1℃においてトルエン(1.2L)中の2−ブロモ−6−(2−クロロアセトアミド)安息香酸[King−Underwood et al.,国際公開第2011/048111号パンフレット](50.0g,171ミリモル)、(2−(トリフルオロメチ
ル)フェニル)メタナミン(29.4mL,205ミリモル)及びトリエチルアミン(34mL,430ミリモル)の撹拌混合物に、トルエン(100mL)中の三塩化リンの溶液(37mL,430ミリモル)を1時間かけて滴下し、その時間の間、内部温度を5℃より低く保持した。反応混合物を2.5時間加熱還流し、得られる懸濁液を次いでまだ熱い間に濾過した。濾液を保留し、集めた固体を新しいトルエン(100mL)中に懸濁させ、激しく撹拌しながら90℃に加熱した。濾過により固体を取り出し、粗生成物を含有する有機抽出物を合わせた。
【0161】
同じ規模で同一の条件下で反応を繰り返すことにより、この材料の第2のバッチを製造した。両反応からの合わされた濾液を真空中で蒸発させ、IPAを用いて残留物を磨砕した(2x400mL)。そのようにして得られる粗材料を真空中で乾燥し、5−ブロモ−2−(クロロメチル)−3−(2−(トリフルオロメチル)ベンジル)キナゾリン−4(3H)−オンをオフ−ホワイト色の固体として与えた(100g,HPLCにより純度90%,61%);R
t 2.70分;m/z 431/433(M+H)
+(ES
+)。
【0162】
DMF(600mL)中の上記の通りに得られるキナゾリノン(100g,純度90%,210ミリモル)及び3−ヨード−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミン(50.4g,193ミリモル)の溶液に、室温において炭酸カリウム(80.0g,580ミリモル)を加え、18時間後、反応混合物を水(1.2L)中に注いだ。得られる沈殿を濾過により集め、水(500mL)、EtOAc(600mL)及び最後にEt
2O(400mL)で連続的に洗浄した。得られるケークを真空中で乾燥し、表題化合物、中間体Aをオフホワイト色の固体として与えた(115g,89%);R
t 2.28分;m/z 656/658(M+H)
+(ES
+)。
【0163】
中間体B:2−((4−アミノ−3−(3−フルオロ−5−ヒドロキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)メチル)−5−ブロモ−3−(2−(トリフルオロメチル)ベンジル)キナゾリン−4(3H)−オン
【0164】
【化10】
【0165】
1−ブタノール(900mL)中の中間体A(54.4g,83.0ミリモル)、(3−フルオロ−5−ヒドロキシフェニル)ボロン酸(15.5g,99.0ミリモル)及びK
3PO
4(19.1g,83.0ミリモル)の溶液に、室温において20分間、窒素を散布した。混合物をPPh
3(3.26g,12.4ミリモル)で、及びPd
2(dba)
3(1.90g,2.07ミリモル)で処理し、さらに10分間窒素を散布し、次いで窒素流下で90℃に加熱した。40時間後、混合物を70℃に冷まし、水(250mL)を滴下した。混合物を50℃に3時間冷まし、次いで室温に3日間冷まし、その時間の間にベージュ色の沈殿が生成した。固体を濾過により集め、1−ブタノール(2x100mL)及び水(2x100mL)で洗浄し、次いで真空中で40℃において乾燥し、表題化合物、中間体Bをオフホワイト色の固体として与えた(35.2g,65%);R
t 2.2
5分;m/z 640/642(M+H)
+(ES
+)。
【0166】
化合物(I):2−((4−アミノ−3−(3−フルオロ−5−ヒドロキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)メチル)−5−(3−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)プロピ−1−イン−1−イル)−3−(2−(トリフルオロメチル)ベンジル)キナゾリン−4(3H)−オン
【0167】
【化11】
【0168】
Et
2NH及びDMFの混合物(4:1 v/v,820mL)中の中間体B(35.2g,55.0ミリモル)、3−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)プロピ−1−イン[King−Underwood et al.,国際公開第2011/048111号パンフレット](17.4g,110ミリモル)、PdCl
2(PPh
3)
2(3.86g,5.50ミリモル)及びヨウ化銅(I)(1.05g,5.50ミリモル)の懸濁液に室温において10分間、窒素を散布した。混合物を65℃に1.5時間加熱し、次いで室温に冷ました。揮発性物質を真空中で蒸発させ、残留物をEtOAc(600mL)と飽和NH
4OAc水溶液(650mL)に分配した。水層を分離し、EtOAc(300mL)で抽出し、合わせた有機層を真空中で蒸発させ、暗褐色の粘性の油を与えた。メタノール(200mL)を加え、混合物を室温で16時間撹拌した。黄色の沈殿が生成し、それを濾過により集め、MeOH(100mL)で洗浄した。得られる固体を2つの別のバッチにおいてフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製した(SiO
2,330g,DCM中のMeOH,0−6%,勾配溶離)。精製された材料をDCM/MeOHの混合物(10:1 v/v)中に一緒に取り上げ、均一な溶液を与え、それを次いで蒸発させ、真空中で乾燥し、表題化合物、化合物(I)をオフホワイト色の固体として与えた(20.1g,51%);Rt 2.15分,m/z 718(M+H)
+(ES
+);
1H NMR δ:3.19(3H,s),3.35−3.38(2H,重なり m),3.44−3.49(4H,重なりm),3.60−3.63(2H,重なりm),4.37(2H,s),5.49(2H,s),5.76(2H,s),6.42(1H,d),6.65(1H,m),6.73(1H,m),6.79(1H,m),7.15(1H,t),7.28(1H,t),7.52(1H,d),7.65−7.69(2H,重なりm),7.82(1H,m),8.12(1H,s),10.15(1H,s)
【0169】
化合物(Ia):2−((4−アミノ−3−(3−フルオロ−5−ヒドロキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)メチル)−5−(3−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)プロピ−1−イン−1−イル)−3−(2−(トリフルオロメチル)ベンジル)キナゾリン−4(3H)−オン
【0170】
【化12】
【0171】
Et
2NH及びDMFの混合物(4:1 v/v,7.5mL)中の中間体B(190mg,0.297ミリモル)、2−(2−(プロピ−2−イン−1−イルオキシ)エトキシ)エタノール[King−Underwood et al.,国際公開第2011/048111号パンフレット](257mg,0.890ミリモル)、PdCl
2(PPh
3)
2(208mg,0.297ミリモル)及びヨウ化銅(I)(57mg,0.30ミリモル)の懸濁液を、N
2を用いて脱ガスし、次いで60℃に16時間加熱した。反応混合物を室温に冷まし、真空中でシリカゲル上に蒸発させ、フラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し(SiO
2,12g,DCM中のMeOH,0−5%,勾配溶離)、表題化合物、化合物(Ia)を淡褐色の固体として与えた(30mg,14%);Rt 1.88分,m/z 704(M+H)
+(ES
+);
1H NMR δ:3.36−3.50(6H,重なり m),3.61−3.63(2H,重なり m),4.37(2H,s),4.58(1H,m),5.48(2H,s),5.76(2H,s),6.41(1H,d),6.64(1H,m),6.72(1H,d),6.78(1H,s),7.14(1H,t),7.27(1H,t),7.52(1H,d),7.65−7.71(2H,重なり m),7.82(1H,t),8.13(1H,s),10.19(1H,br s)。
【0172】
構造的に類似の化合物の分析に基づき(国際公開第2011/048111号パンフレットを参照されたい)、化合物(I)がアトロプ異性を示すことは、非常にありそうもないと考えられる。アトロプ異性から生ずる薬剤開発に関する追加の複雑性及び結果は、ステレオジェン中心の存在のような分子異性の他の源から生ずるものと類似である。この性質はそのような分子をキラル及び分割されなければラセミ混合物の両方とし;それらの成分は異なる薬理学的及び毒物学的側面を有し得る。この特徴はそのような分子に関する下流の開発コストを有意に増加させそうであり、従って化合物(I)にアトロプ異性がないことは、非常に望ましく且つ有利な性質である。
【実施例2】
【0173】
1型結晶多形としての化合物(I)の製造
1型結晶多形としての化合物(I)を、以下のスキームにまとめる通りに製造され得る中間体Bから出発して製造した:
【0174】
【化13】
【0175】
中間体の製造を下記に示す。
1−ブロモ−3−(tert−ブトキシ)−5−フルオロベンゼン
【0176】
【化14】
【0177】
氷冷されたDMA(2.0L)に、ナトリウムtert−ブトキシド(284g,3.89モル)を分けて加え、続いて1−ブロモ−3,5−ジフルオロベンゼン(298mL,2.59モル)を滴下した。滴下が完了したら、混合物を室温に温め、72時間撹拌した。水(200mL)を加え、得られるゴム状沈殿を濾過した。上澄み液を真空中で濃縮し、残留物を真空蒸留により精製した。得られる油をジエチルエーテル(1.0L)中に溶解し、水で洗浄し(6x250mL)、乾燥し(MgSO
4)、真空中で濃縮して表題化合物を無色の油として与えた(220g,881ミリモル,34.0%):沸点84〜86℃(8ミリバール);
1H NMR(400 MHz,CDCl
3) δ:1.35(9H,s),6.64(1H,dt),6.92−6.96(2H,重なりm).
【0178】
(3−(tert−ブトキシ)−5−フルオロフェニル)ボロン酸;2
【0179】
【化15】
【0180】
THF(1.0L)中の1−ブロモ−3−(tert−ブトキシ)−5−フルオロベンゼン(75.0g,304ミリモル)の溶液に、n−ブチルリチウム(ヘキサン中の2.5M,150mL,337ミリモル)を−78℃で滴下した。得られる混合物をこの温度で45分間撹拌し、次いでホウ酸トリイソプロピル(105mL,455ミリモル)を滴下した。混合物をその温度で1.5時間撹拌し、次いで1.5時間かけて−5℃に温めた。混合物をジエチルエーテル(1.0L)及び1M HCl水溶液(450mL)で希釈し、層を分離した。水層をさらなるジエチルエーテル(2x250mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を乾燥し(MgSO
4)、濾過し、次いで真空中で蒸発させて淡黄色の油を与えた。油をイソ−ヘキサン(300mL)中に再溶解し、再び濃縮して、オフホワイト色の粘着性の固体を与えた。イソ−ヘキサン(150mL)を用いて固体を磨砕し、濾過し、白色の粉末を与えた。材料を2M NaOH(600mL)とジエチルエーテル(600mL)に分配した。有意な量の材料が不溶性であり、これを濾過し、ジエチルエーテルを用いて洗浄した(LCMSにより、清浄な生成物と確証した)。塩基性の水層を氷浴中で冷却し、濃HCl(〜130mL)を用いてpH1に酸性化した。水層をDCM(3x300mL)で抽出し、合わせた有機物を乾燥し(Na
2SO
4)、濾過し、真空中で濃縮して、ベージュ色の粉末を与えた。イソ−ヘキサン(100mL)を用いてこれを磨砕し、さらなる清浄な生成物を与えた。2つのバッチを合わせ、表題化合物2をオフホワイト色の粉末として与えた(17.2g,73.0ミリモル,24.1%);R
t:1.87分。
【0181】
2−(3−(tert−ブトキシ)−5−フルオロフェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン;3
【0182】
【化16】
【0183】
パラジウム(II)ジクロリド−1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(6.81g,9.31ミリモル)、酢酸カリウム(54.8g,558ミリモル)及び4,4,4’,4’,5,5,5’,5’−オクタメチル−2,2’−ビ(1,3,2−ジオキサボロラン)(52.0g,205ミリモル)の混合物を窒素でフラッシングし、これにDMSO(528mL)中の1−ブロモ−3−(tert−ブトキシ)−5−フルオロベンゼン(46.0g,186ミリモル)の溶液を加えた。得られる混合物を3分間音波処理し、5分間脱ガスし、80℃で23時間加熱した。反応混合物をジエチルエーテル(500mL)と水(500mL)に分配した。水層をさらなるジエチルエーテルで抽出した(3x400mL)。合わせた有機抽出物をブライン(300mL)で洗浄し、乾燥し(MgSO
4)、濾過し、真空中で濃縮して暗褐色の残留物を与えた。この残留物を
イソ−ヘキサン/EtOAcの混合物中に溶解し、シリカの短プラグを介して濾過し、真空中で蒸発させ、明褐色の固体を与えた。固体残留物をシリカ上に予備−吸着させ、それをカラムクロマトグラフィーにより精製し(SiO
2,イソ−ヘキサン中の0−4%EtOAcを用いて溶離,勾配溶離)、表題化合物3を白色の固体として与えた(27.0g,87.0ミリモル,46.8%):
1H NMR(400 MHz,CDCl
3) δ:1.31(12H,s),1.34(9H,s),6.78(1H,m),7.17−7.20(2H,重なりm).
【0184】
2−((4−アミノ−3−(3−(tert−ブトキシ)−5−フルオロフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)メチル)−5−ブロモ−3−(2−(トリフルオロメチル)ベンジル)キナゾリン−4(3H)−オン;1(ボロン酸,3から)
【0185】
【化17】
【0186】
EtOAc/水の混合物(9:1,2x500mL)中の中間体A(2x10.0g,14.9ミリモル)、(3−(tert−ブトキシ)−5−フルオフェニル)ボロン酸3(2x3.17g,14.9ミリモル)、炭酸ナトリウムデカハイドレート(2x6.75g,23.6ミリモル)及びパラジウムテトラキストリフェニルホスフィン(2x0.52g,0.45ミリモル)の混合物を、窒素を用いて脱ガスし、10分間音波処理し、次いで65℃において窒素下で18時間撹拌した。反応混合物を合わせ、溶媒を真空中で除去し、残留物をDCM中の10%MeOH溶液(500mL)中に溶解し、飽和酢酸アンモニウム溶液(400mL)で洗浄した。水層をさらなるDCM中の10%MeOH溶液で抽出した(2x400mL)。合わせた有機抽出物を真空中で蒸発させ、残留物をシリカゲル上に予備−吸着させ、フラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し(DCM中の0−40%EtOAcを用いて溶離,勾配溶離)、表題化合物1を淡黄色の固体として与えた(8.4g,9.89ミリモル,32.4%):R
t 2.70分,
1H NMR(400 MHz,DMSO−d
6) δ:1.37(9H,s),5.50(2H,s),5.78(2H,s),6.49(1H,d),6.91(1H,t),6.95(1H,dt),7.04(1H,m),7.15(1H,t),7.28(1H,t),7.54(1H,d),7.68−7.72(2H,重なりm),7.83(1H,dd),8.15(1H,s)。材料は、純度が約80%であった。
【0187】
2−((4−アミノ−3−(3−(tert−ブトキシ)−5−フルオロフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)メチル)−5−ブロモ−3−(2−(トリフルオロメチル)ベンジル)キナゾリン−4(3H)−オン;1(ボロン酸エステル,2から)
【0188】
【化18】
【0189】
EtOAc/水の混合物(9:1,500mL)中の中間体A(10.0g,14.9ミリモル;実施例1に記載した通りに製造される)、2−(3−(tert−ブトキシ)−5−フルオフェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン2(6.59g,22.40ミリモル)(3.17g,14.9ミリモル)、炭酸ナトリウムデカハイドレート(26.75g,23.6ミリモル)及びパラジウムテトラキストリフェニルホスフィン(0.52g,0.45ミリモル)の混合物を、窒素を用いて脱ガスし、10分間音波処理し、次いで65℃において窒素下で40時間撹拌した。溶媒を真空中で除去し、残留物をDCM中の10%MeOH溶液(250mL)中に溶解し、飽和酢酸アンモニウム溶液(200mL)で洗浄した。水層をさらなるDCM中の10%MeOH溶液で抽出した(2x200mL)。合わせた有機抽出物を真空中で蒸発させ、残留物をシリカゲル上に予備−吸着させ、フラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し(DCM中の0−40%EtOAcを用いて溶離,勾配溶離)、表題化合物を淡黄色の固体として与えた(4.5g,6.14ミリモル,41.1%):R
t 2.70分,
【0190】
2−((4−アミノ−3−(3−フルオロ−5−ヒドロキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)メチル)−5−ブロモ−3−(2−(トリフルオロメチル)ベンジル)キナゾリン−4(3H)−オン
【0191】
【化19】
【0192】
DCM(150mL)中の2−((4−アミノ−3−(3−(tert−ブトキシ)−5−フルオロフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)メチル)−5−ブロモ−3−(2−(トリフルオロメチル)ベンジル)キナゾリン−4(3H)
−オン1(13.0g,18.6ミリモル)の溶液に、トリフルオロ酢酸(21.6mL,280ミリモル)を加え、得られる溶液を2時間撹拌した。真空中で溶媒を除去した。残留物をDCM(200mL)及びNaHCO
3の飽和溶液(200mL)中に取り上げた。水層をさらにDCM中の10%MeOHで抽出し(2x100mL)、合わせた有機抽出物を真空中で蒸発させた。残留物をシリカゲル上に予備−吸着させ、フラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、DCM中の0−3%MeOHを用いて溶離させ、表題化合物1bを白色の固体として与えた(7.60g,11.8ミリモル,63.0%):m/z 640(M+H)
+(ES
+);
1H NMR(400 MHz,DMSO−d
6) δ:5.47(2H,s),5.78(2H,s),6.43(1H,d),6.65(1H,dt),6.75(1H,m),6.79(1H,t),7.14(1H,t),7.28(1H,t),7.53(1H,d),7.69−7.73(2H,重なりm),7.85(1H,m),8.13(1H,s),10.18(1H,d).
【0193】
1型結晶多形としての化合物(I):2−((4−アミノ−3−(3−フルオロ−5−ヒドロキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル)メチル)−5−(3−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)プロピ−1−イン−1−イル)−3−(2−(トリフルオロメチル)ベンジル)キナゾリン−4(3H)−オン
【0194】
【化20】
【0195】
ジエチルアミン(330mL)中の3−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)プロピ−1−イン(4.69g,29.7ミリモル)、ヨウ化銅(I)(226mg,1.19ミリモル)、中間体B(7.6g,11.9ミリモル)及びビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(833mg,1.19ミリモル)の混合物を、窒素を用いて十分に脱ガスし、60℃で3時間撹拌した。追加の3−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)プロピ−1−イン(400mg)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(167mg,0.24ミリモル)及びヨウ化銅(I)(0.45g,0.24ミリモル)をジエチルアミン(30.0mL)中で加え、60℃で3時間撹拌した。3−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)プロピ−1−イン7(400mg)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(167mg,0.24ミリモル)及びヨウ化銅(I)(0.45g,0.24ミリモル)のさらなるアリコートを加え、反応混合物を60℃でさらに7時間撹拌した。溶媒を真空中で除去し、残留物をDCM中の10%MeOH溶液(200mL)中に溶解し、酢酸アンモニウム水溶液(10重量%,300mL)で洗浄した。水層をさらにDCM中の10%MeOH溶液で抽出した(2x200mL)。合わせた有機層を真空中で蒸発させた。残留物をMeOH(30.0mL)中で終夜スラリ化し、濾過した。固体残留物をシリカ上
に予備吸着させ、カラムクロマトグラフィーにより精製し(SiO
2,DCM中の0−5%MeOHを用いて溶離,勾配溶離)、化合物(I)を淡褐色の固体として1型結晶多形の形態で与えた(4.73g,6.52ミリモル,55.0%):m/z 718(M+H)
+(ES
+);
1H NMR(400 MHz,DMSO−d
6) δ:3.20(3H,s),3.35−3.39(2H,重なり m),3.43−3.50(4H,重なり
m),3.60−3.64(2H,重なりm),4.38(2H,s),5.49(2H,s),5.77(2H,s),6.42(1H,d),6.65(1H,dt),6.74(1H,dq),6.79(1H,t),7.15(1H,t),7.28(1H,t),7.52(1H,d),7.65−7.72(2H,重なりm),7.83(1H,m),8.13(1H,s),10.19(1H,s)。
【0196】
一般的な方法中のXRPD方法2を用い、この材料の試料のXRPD分析を行った。材料は、得られるXRPDパターン(
図3)におい示される通り結晶性であったが、いくらかの非晶質材料を含有した。
【0197】
1型結晶多形の試料についてのDSC分析(一派的な方法中のDSC方法1を用いる)を
図4に示しており(下のプロット)、そこで試料は加熱されると複数の事象を経ることがわかる。102℃のピーク極大を有する幅広の吸熱に141℃のピーク極大を有する発熱が続き、それに174℃のピーク極大を有するより鋭い吸熱が続く。加熱の間に新しい結晶多形が生成するのが観察された−後に2型結晶多形であることが見出された。1型結晶多形の試料についてのTGA分析(一般的な方法のTGA方法1を用いる)(
図4;上のプロット)は、周囲温度から75℃までに、おそらく遊離の溶媒及び/又は吸湿水の蒸発の故に、0.34%の重量損失を示した。
【実施例3】
【0198】
2型結晶多形としての化合物(I)の製造
方法1
以下の通りに、1−プロパノール中の溶液から結晶化させることにより2型結晶多形を製造することができる。100mlの反応器に1.98gの化合物(I)及び49.5mlの1−プロパノール(25L/kg)を装入した。混合物を撹拌し、95℃に温めた(溶液は92℃において観察された)。溶液を95℃で30分間保持してから、10時間かけて23℃に冷まし、72℃において自然の結晶化が起こった。不均一な混合物を4時間撹拌し、次いで沈殿を濾過し、1−プロパノール(2mL)で洗浄した。生成物を真空中で45℃において18時間乾燥し、1.71gの2型結晶多形を86.4%の収率で与えた。
【0199】
方法2
以下の通りに、1個又は複数個の2型結晶多形の結晶を播種することにより、1−プロパノール中の溶液からの2型結晶多形の結晶化を助長することもできる。1−プロパノール(25.00L/kg,275.0mL)を化合物(I)(11.00g)に加えた。混合物を25℃において350rpmで撹拌した。不均一な混合物を次いで97℃に40分間かけて温め(還流温度)、97℃に5分間保ち、次いで5分かけて96℃に冷まし、次いで96℃に1時間保った。均一なわずかにオレンジ色の溶液を15分間かけて85℃に冷ました。次いで撹拌速度を250rpmに減じ、溶液に2型結晶多形を播種した(化合物(I)出発材料のkg当たり0.01kgの種結晶,0.11g)。混合物を85℃で10分間撹拌し、次いで2.3の非線形係数を有するキュービッククーリング(cubic cooling)を用い、8時間かけて22℃に冷ました。不均一な混合物を22℃で10時間撹拌してから沈殿を濾過した。生成物を1−プロパノール(1.00L/kg,8.84g,11.00mL)で洗浄し、次いで45℃において乾燥し(週末;72時間)、2型結晶多形を与えた(9.5g,86.4%)。
【0200】
方法3
メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、アセトン、酢酸エチル、アセトニトリル、トルエン、酢酸イソプロピル、TBME、2−ブタノン、DMSO、ジエチルエーテル、MIBK、ヘプタン、ニトロメタン、10%水/エタノール、10%水/アセトニトリル又は10%水/2−プロパノール中で1型結晶多形をスラリ化することによって2型結晶多形を製造することができる。
【0201】
方法4
メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、アセトン、酢酸エチル、アセトニトリル、トルエン、酢酸イソプロピル、TBME、2−ブタノン、DMSO、ジエチルエーテル、MIBK、ニトロメタン、10%水/エタノール又は10%水/2−プロパノール中で非晶質形態における化合物(I)をスラリ化することにより、2型結晶多形を製造することができる。
【0202】
方法5
2型結晶多形の大規模化製造は以下の通りである:200mgの1型結晶多形を20mlのシンチレーションバイアル中に量り込んだ。50体積のメタノールを加え、500rpmで一定に撹拌しながら20℃〜50℃で24時間試料をスラリ化した(各温度において4時間)。得られる材料を真空下で濾過し、真空炉中で40℃において終夜乾燥した。
【実施例4】
【0203】
2型結晶多形としての化合物(I)の特性化
2型結晶多形の試料のXRPD分析を、一般的な方法中のXRPD方法3を用いて行った。得られるXRPDパターンを
図5に示す。
【0204】
2型結晶多形の試料のTGA分析を、一般的な方法中のTGA方法2を用いて行った。得られるデータを
図6に示しており、それから2型結晶多形が155℃から200℃までで±0.5%の重量損失を示したことが明らかである。
【0205】
2型結晶多形の試料についてのDSC分析を、一般的な方法中のDSC方法2を用いて行った。得られるデータを
図7に示しており、それから、2型結晶多形が190.1℃(ピーク極大)において分解を伴う融解を示したことが明らかである。
【0206】
2型結晶多形の試料のDVS等温線プロットを
図8に示し、質量におけるDVS変化のプロットを
図9に示す。2型結晶多形は、0%RHから95%RHまでで徐々に±0.4%水を吸収し、水の吸収は可逆的であることが観察され、2型が吸湿性でないことを示している。
【0207】
DVS分析の後(
図10を参照されたい)のXRPD(一般的な方法中のXRPD方法3を用いる)ならびに25℃/96%RH及び40℃/75%RHにおける1週間の保存の後のXRPD(
図11を参照されたい,一般的な方法中のXRPS方法1を用いる)により変化が気付かれなかったので、2型結晶多形の試料の静的安定性研究は、試料が固体形態に関して水分に安定であることを示した。
【実施例5】
【0208】
2型結晶多形としての超微粉砕された化合物(I)の安定性
5cmのJetmill超微粉砕装置を用いて超微粉砕された2型結晶多形を製造し、以下の粒度分布を生じた:D
10=1.14μm;D
50=1.94μm及びD
90=3.39μm(粒度分布はレーザー回折(Malvern Mastersizer測定器)を用
いて決定された)。
【0209】
超微粉砕された材料を、ゼロ時において、ならびに種々の条件の保存の後にTGA、XRPD及びDSCにより分析した。試料を以下の条件下で保存した:(i)室温/<5%RHにおいて7週間;(ii)室温/56%RHにおいて7週間;(iii)室温/75%RHにおいて7週間;(iv)50℃において7週間;及び(v)40℃/75%RHにおいて7週間。
【0210】
表3に示されるデータは、種々の条件下で有意な変化が観察されなかったので、試料が結晶学的に及び熱力学的に安定であったことを示す。
【0211】
【表2】
【実施例6】
【0212】
非晶質形態における化合物(I)の製造
1型結晶多形(実施例2の方法を用いて得られる)を120℃に加熱することにより、非晶質形態における化合物(I)を製造した。
【実施例7】
【0213】
3型結晶多形としての化合物(I)の製造
方法1
非晶質形態における化合物(I)をジクロロメタン中でスラリ化することにより、3型結晶多形を製造することができる。
【0214】
方法2
3型結晶多形の大規模化製造は、以下の通りである:200mgの1型結晶多形を、5体積のジクロロメタンを含有する4mlのバイアルに加えた。試料を30秒間渦動させた。次いでさらに5体積のDCMを加え、試料をさらに30秒間渦動させた。試料を真空下で濾過し、真空炉中で25℃において週末の経過に及んで乾燥した。
【実施例8】
【0215】
3型結晶多形としての化合物(I)の特性化
3型結晶多形の試料のXRPD分析を、一般的な方法中のXRPD方法2を用いて行っ
た。XRPDパターンを
図12に示す。
【0216】
3型結晶多形の試料について得られたTGA及びDSCデータ(一般的な方法のTGA方法1及びDSC方法1を用いる)を
図13に示す。3型結晶多形は約186℃(ピーク極大;DSC−下のプロット)において分解を伴って融解する。
【0217】
3型結晶多形の試料について得られたGVS等温線を
図14に示しており、そこで0−90%RHにおいて0.99%の質量変化が観察された。
【0218】
GVS分析の後(
図15を参照されたい)のXRPD(一般的な方法中のXRPD方法2を用いる)ならびに25℃/96%RH及び40℃/75%RHにおける1週間の保存の後のXRPD(
図16を参照されたい,一般的な方法中のXRPS方法1を用いる)により変化が気付かれなかったので、3型結晶多形の試料の静的安定性研究は、試料が固体形態に関して水分に安定であることを示した。
【実施例9】
【0219】
4型擬多形としての化合物(I)の製造
1型結晶多形の形態における化合物(I)(20mg)又は非晶質形態における化合物(I)(20mg)をHPLCバイアル中に量り込んだ。次いで室温において1分間振盪させながらTHFを徐々に加えた。次いで試料を50℃において15分間振盪させ(500rpm)てから、THFの次の添加を行った。80体積のTHFを加えて溶液を得るまで、このプロセスを続けた。溶液を0.1℃/分において50℃から5℃まで冷却し、5℃において終夜保持した。次いで固体を得るために溶液を放置して蒸発させた。固体を真空下で濾過し、2時間空気乾燥(真空下)してから一般的な方法中のXRPD方法1を用いるXRPDにより分析した。出発材料として非晶質形態における化合物(I)を用いて得られる固体の試料のXRPDパターンを
図17に示しており、それは4型擬多形に相当する。出発材料として1型結晶多形を用いて得られる固体の試料を真空炉中で25℃において>48時間乾燥してから、再度XRPDにより分析した。この長い乾燥期間の後、4型結晶多形は非晶質における化合物(I)に転換したことが観察された。従って、4型擬多形は準安定な溶媒和物である。
【実施例10】
【0220】
5型擬多形としての化合物(I)の製造
1型結晶多形の形態における化合物(I)(20mg)又は非晶質形態における化合物(I)(20mg)をHPLCバイアル中に量り込んだ。次いで室温において1分間振盪させながら1,4−ジオキサンを徐々に加えた。次いで試料を50℃において15分間振盪させ(500rpm)てから、1,4−ジオキサンの次の添加を行った。80体積の1,4−ジオキサンを加えて溶液を得るまで、このプロセスを続けた。溶液を0.1℃/分において50℃から5℃まで冷却し、5℃において終夜保持した。次いで固体を得るために溶液を放置して蒸発させた。固体を真空下で濾過し、2時間空気乾燥(真空下)してから一般的な方法中のXRPD方法1を用いるXRPDにより分析した。出発材料として非晶質形態における化合物(I)を用いて得られる固体の試料のXRPDパターンを
図17に示しており、それは5型擬多形に相当する。出発材料として1型結晶多形を用いて得られる固体の試料を真空炉中で25℃において>48時間乾燥してから、再度XRPDにより分析した。この長い乾燥期間の後、5型擬多形は形態が変わらなかった。さらなる特性化を行って、
1H NMR、TGA及びDSCデータ(示されていない)を形成し、それは5型擬多形が溶媒損失の後に非晶質における化合物(I)に逆戻りしたことを示した。従って、4型擬多形は準安定な溶媒和物である。
【実施例11】
【0221】
6型擬多形としての化合物(I)の製造
非晶質形態における化合物(I)(20mg)をHPLCバイアル中に量り込んだ。次いで室温において1分間振盪させながら10%水/アセトニトリルを徐々に加えた。次いで試料を50℃において15分間振盪させ(500rpm)てから、10%水/アセトニトリルの次の添加を行った。80体積の10%水/アセトニトリルを加えてしまうまで、このプロセスを続けた。得られるスラリを500rpmで振盪させながら2日間、25℃〜50℃(各温度において4時間)において放置して熟成させた。次いで固体を真空下で濾過し、2時間空気乾燥し、一般的な方法中のXRPD方法1を用いるXRPDにより分析した。この材料の試料のXRPDパターンを
図17に示し、それは6型擬多形に相当する。XRPD分析に続き、材料を真空炉中で40℃において終夜乾燥した。この長い乾燥期間の後、6型擬多形は溶媒を失い、2型結晶多形に転換したことが観察された。従って、6型擬多形は準安定な溶媒和物である。
【実施例12】
【0222】
7型擬多形としての化合物(I)の製造
非晶質形態における化合物(I)(20mg)をHPLCバイアル中に量り込んだ。次いで室温において1分間振盪させながら10%水/アセトンを徐々に加えた。次いで試料を50℃において15分間振盪させ(500rpm)てから、10%水/アセトンの次の添加を行った。80体積の10%水/アセトンを加えてしまうまで、このプロセスを続けた。得られるスラリを500rpmで振盪させながら2日間、25℃〜50℃(各温度において4時間)において放置して熟成させた。次いで固体を真空下で濾過し、2時間空気乾燥し、一般的な方法中のXRPD方法1を用いるXRPDにより分析した。この材料の試料のXRPDパターンを
図17に示し、それは7型擬多形に相当する。XRPD分析に続き、材料を真空炉中で40℃において終夜乾燥した。この長い乾燥期間の後、7型擬多形は溶媒を失い、2型結晶多形に転換したことが観察された。従って、7型擬多形は準安定な溶媒和物である。
【実施例13】
【0223】
2型及び3型結晶多形の熱力学的安定性及びそれらの相互転換
2型及び3型結晶多形の50:50混合物につき、競争的スラリ実験を行った。50体積の溶媒を加え、試料を設定温度において3日間撹拌した(300rpm)。次いですべての試料を真空下で濾過し、30分間空気乾燥してから、XRPD分析を行った。
【0224】
スラリ実験の結果を下記の表4にまとめる:
【0225】
【表3】
【0226】
すべての競争的スラリ実験は2型を生じ、これがより安定な熱力学的形態であることを示している。
【実施例14】
【0227】
試験管内及び生体内スクリーニング法及び結果
試験管内スクリーニング
生物学的試験:実験法
酵素阻害アッセイ
PI3K酵素は、ATP及びMg
2+イオンの存在下でホスファチジルイノシトール4,5−二リン酸(PIP2)のホスファチジルイノシトール3,4,5−三リン酸(PIP3)へのリン酸化を触媒する。時間分解蛍光共鳴エネルギー移動(TR−FRET)(HTRF(登録商標)PI3K酵素アッセイ,Millipore)により、ユーロピウム標識抗−GSTモノクローナル抗体、GST−タグ付き(GST−tagged)プレクストリン相同(PH)ドメイン、ビオチニル化PIP3及びストレプタビジン−アロフィ
コシアニン(APC)から成るエネルギー移動複合体からのビオチン−PIP3の排除(displacement)によりPIP3生成物を検出することができる。複合体中のユーロピウムの330nmにおける励起は、APCへのエネルギー移動及び665nmにおける蛍光発光を生じるが、ユーロピウム自身は620nmにおけるその特徴的波長で発光する。PI3K活性により生成するPIP3生成物はビオチン−PIP3を複合体から排除し、エネルギー移動の損失(loss)を生ずる(シグナルの低下)。
【0228】
試験されるべき化合物を、PIP2基質及び組換えPI3K酵素(α、β又はδイソ型,Milliporeから、あるいはγイソ型[p110γ+p101構築物],United States Biological,Swampscott,MAからのいずれか)の混合物に所望の最終的な濃度で加え、混合物を室温で2時間インキュベーションした。このインキュベーション期間に続き、酵素/化合物/PIP2基質混合物にATP(10μM)を加え、得られる混合物を室温でさらに30分間インキュベーションした。次いでビオチニル化PIP3を含有する停止溶液ならびにGSTタグ付きGRP1プレクストリン相同(PH)ドメイン及びフルオロフォアを含有する検出混合物を加え、混合物を室温で15〜18時間インキュベーションしてから、蛍光マイクロプレートリーダー(Synergy 4,Bio Tek UK,Bedfordshire,UK)において検出した。
【0229】
式:APCシグナル(665nmにおける発光)/ユーロピウムシグナル(620nmにおける発光)x10
4に従って結果を計算した。各反応のパーセンテージ阻害を、DMSO処理された対照に対して計算し、次いで濃度−反応曲線から50%阻害濃度(IC
50値)を計算した。
【0230】
PI3Kδ 細胞に基づくアッセイ
刺激に反応してのPI3Kδ活性化を評価する手段として、PI3Kδシグナリングの下流生成物であるタンパク質Aktのリン酸化状態を決定した。
【0231】
ヒト白血病性単球リンパ腫細胞系から得たU937細胞を、PMA(100ng/mL)と一緒に48〜72時間インキュベーションすることにより、マクロファージ型細胞に分化させた。次いで細胞を試験化合物又はビヒクルと一緒に2時間予備−インキュベーションし、次いでH
2O
2(10mM,5〜7分)への暴露により短時間刺激し、培地を4%ホルムアルデヒド溶液で置き換えることにより反応を停止させた。クエンチング緩衝液(0.1%のTriton X−100を含むPBS中の0.1%アジ化ナトリウム,1%H
2O
2)と一緒に20分間インキュベーションすることにより、内在性ペルオキシド活性及びホルムアルデヒドを不活性化した。細胞を緩衝液(0.1%のTriton X−100を含有するPBS)で洗浄し、遮断溶液(PBS中の1%BSA)と一緒に1時間インキュベーションし、次いで緩衝液で再−洗浄し、抗−pAkt抗体又は抗−pan−Akt抗体(両方ともCell Signaling Technologyから)と一緒に終夜インキュベーションした。緩衝液(0.1%のTriton X−100を含有するPBS)を用いる洗浄の後、細胞をHRP−共役二次抗体(Dako)と一緒にインキュベーションし、得られるシグナルを、TMB基質(R&D Systems,Inc.により供給される基質試薬パック)を用いて比色定量法により(OD:655nmを参照波長とする450nm)決定した。
【0232】
H
2SO
4溶液(100μL)の添加によりこの反応を停止させた。次いで細胞を緩衝液(0.1%のTriton X−100を含有するPBS)で洗浄し、5%クリスタルバイオレット溶液(100μL)を30分間適用した。緩衝液(0.1%のTriton X−100を含有するPBS)を用いる洗浄の後、各ウェルに1%SDS(100μL)を加え、プレートを1時間軽く振盪させてから、595nmにおける吸光度を測定した(
Varioskan(登録商標) Flash,Thermo−Fisher Scientific)。OD
450-655読み取り値をOD
595読み取り値で割ることにより、測定されたOD
450-655読み取り値を細胞数に関して修正した。pAktシグナル対全Aktシグナルの比を用い、PI3Kδ活性化の程度を定量した。0%阻害としてのH
2O
2のみの対照に対して100%阻害と設定される10μg/mLの標準対照(LY294002)に対して、各ウェルに関するパーセント阻害を計算した。試験化合物の連続希釈により作成される濃度−反応曲線から、IC
50値を計算した。
【0233】
PI3Kγ 細胞に基づくアッセイ
刺激に反応してのPI3Kγの活性化を評価する手段として、MCP−1を用いる刺激に続き、PI3Kγシグナリングの下流生成物であるタンパク質Aktのリン酸化状態を決定した。
【0234】
U937細胞を、PMA(100ng/mL)と一緒に48〜72時間インキュベーションすることにより、マクロファージ型細胞に分化させた。次いで細胞を試験化合物又はビヒクルと一緒に2時間予備−インキュベーションし、次いでMCP−1(10nM,1分)を用いて短時間刺激し、培地を4%ホルムアルデヒド溶液で置き換えることにより反応を停止させた。クエンチング緩衝液(0.1%のTriton X−100を含むPBS中の0.1%アジ化ナトリウム,1%H
2O
2)と一緒に20分間インキュベーションすることにより、内在性ペルオキシド活性及びホルムアルデヒドを不活性化した。細胞を緩衝液(0.1%のTriton X−100を含有するPBS)で洗浄し、遮断溶液(PBS中の1%BSA)と一緒に1時間インキュベーションし、次いで緩衝液で再−洗浄し、抗−pAkt抗体又は抗−pan−Akt抗体(両方ともCell Signaling Technologyから)と一緒に終夜インキュベーションした。緩衝液(0.1%のTriton X−100を含有するPBS)を用いる洗浄の後、細胞をHRP−共役二次抗体(Dako)と一緒にインキュベーションし、得られるシグナルを、TMB基質(R&D Systems,Inc.により供給される基質試薬パック)を用いて比色定量法により(OD:655nmを参照波長とする450nm)決定した。
【0235】
1N H
2SO
4溶液(100μL)の添加によりこの反応を停止させた。次いで細胞を緩衝液(0.1%のTriton X−100を含有するPBS)で洗浄し、5%クリスタルバイオレット溶液(100μL)を30分間適用した。緩衝液(0.1%のTriton X−100を含有するPBS)を用いる洗浄の後、各ウェルに1%SDS(100μL)を加え、プレートを1時間軽く振盪させてから、595nmにおける吸光度を測定した(Varioskan(登録商標) Flash,Thermo−Fisher Scientific)。OD
450-655読み取り値をOD
595読み取り値で割ることにより、測定されたOD
450-655読み取り値を細胞数に関して修正した。pAktシグナル対全Aktシグナルの比を用い、PI3Kγ活性化の程度を定量した。0%阻害としてのMCP−1のみの対照に対して100%阻害と設定される10μg/mLの標準対照(LY294002)に対して、各ウェルに関するパーセント阻害を計算した。試験化合物の連続希釈により作成される濃度−反応曲線から、XL−Fit(idbs,Guildford,UK)を用いてIC
50値を計算した。
【0236】
スーパーオキシドアニオン生産アッセイ
PI3Kδ依存性細胞機能を評価する手段として、IFNγ−感作U937細胞におけるスーパーオキシドアニオン生産を化学発光アッセイにより評価した。U937細胞(ATCC,Manassas,VAから購入した)を、37℃において10%FCSを含むRPMI 1640(Invitrogen,Ltd.,Paisley,UK)中に保持した。細胞を40mLの10%FCS RPMI 1640中にmL当たり10
7個の細胞の密度で懸濁させ、100μg/mLのIFNγ溶液の20μL(最終的な濃度:5
0ng/mL)で処理し、37℃,5%CO
2において4日間インキュベーションした。
【0237】
IFNγ−感作U937細胞を96−ウェルプレート中にウェル当たり0.2x10
6個の細胞において播種し、飢餓培地(starvation media)(0.5%FCS RPMI1640−フェノールレッドなし)中で試験化合物と一緒に2時間予備−インキュベーションした。サッカロミセス・セレビシアエ(Saccharomyses
cerevisiae)(Sigma−Aldrichから)からのザイモサン A(10mg)を1mLの150mM NaCl中に再懸濁させ、100℃で15分間煮沸した。煮沸の後、ザイモサン粒子を1mLのPBSで2回洗浄し、0.5mLのBioParticles
TM オプソニン化試薬(Life technologies)と一緒に37℃において60分間インキュベーションした。すべて(ザイモサンは別として)Superoxide Anion Assay Kit(# CS1000,Sigma−Aldrich Ltd,Poole,UK)中で提供されるザイモサン粒子溶液(10μL)、アッセイ緩衝液(85μL)、ルミノール(2.5μL)及びエンハンサー溶液(2.5μL)の混合物で細胞を処理した。放出されるスーパーオキシドアニオンを示す化学発光を、発光測定(luminometric measurement)(Varioskan(登録商標) Flash,Thermo−Fisher Scientific)により15分毎に60分まで測定した。
【0238】
インキュベーションから60分後におけるデータを分析に用いた。各ウェルに関するパーセンテージ阻害を、0%阻害としての対照に対して100%阻害と設定される標準PI3Kδ阻害剤である10μg/mLのIC87114に対して計算した。試験化合物の連続希釈により作成される濃度−反応曲線から、XL−Fit(idbs,Guildford,UK)を用いて相対的なEC
50値を計算した。
【0239】
PBMCsにおけるcytostim−誘導サイトカイン生産
PI3Kδ−依存性細胞機能を評価する手段として、PBMCsにおけるcytostim−誘導IL−4、IL−5、IL−13及びIFNγ生産をLuminex複合アッセイ(multiplex assay)により評価した。すべての健康なボランティアをQuintilies Limited(London,UK)が募集し、血液試料をRespivert Ltdに送達した。この研究は地方倫理委員会により承認され、すべての被験者は書面のインフォームドコンセントを与えた。
【0240】
PBMC懸濁液(200μL;mL当たり2x10
6個の細胞)を96−ウェルプレートに加えた。細胞を純DMSO中の試験化合物又はビヒクルとしてのDMSO(2μL)で処理し、室温で1時間インキュベーションした。Cytostim(Miltentyi Biotec,Surrey,UK)を1:50の比率において導入し、細胞を20時間インキュベーションした(37℃;5%CO
2)。プレートを500xgにおいて5分間回転させ、上澄み液を集めた。高感度サイトカイン磁気ビーズキット(#HSCYTMAG−60SK,Milllipore,Watford,UK)を用い、4つの被検体(IL−4、IL−5、IL−13及びIFNγ)をLuminexにより以下の通りに分析した:磁気抗体ビーズは多重化され(multiplexed)、96−ウェルプレート中で標準、培地のみ又は試料(50μL)と一緒に、4℃において振盪させながら終夜インキュベーションした。磁気プレート洗浄機を用い、キット中で与えられるMillipore洗浄緩衝液で2回洗浄した後、ビーズを検出抗体(50μL)と一緒に室温で振盪させながら1時間インキュベーションした。キット中で与えられるストレプタビジン−フィコエリスリン溶液を、室温で振盪させながら30分間加えた。洗浄の後、ビーズをシース液(sheath fluid)(150μL)中に再−懸濁させ、直後に分析した。Luminex系を50個のビーズをカウントするように設定し、上澄み液中の各被検体の量を標準曲線に対して計算した。濃度−阻害曲線から、XL−Fit(IDBS
,Guildford,UK)を用いてIC
50値を決定した。
【0241】
MCP1への走化性
PI3Kγ依存性細胞機能の評価の手段として、48ウェル−走化性チャンバー(chemotaxis chamber)を用い、MCP−1へのTHP1細胞走化性を評価した。ヒト白血病性単球リンパ腫細胞系からのTHP1細胞(ATCC,Manassas,VAから購入した)を、10%FCSを含むRPMI 1640(Invitrogen,Ltd.,Paisley,UK)中に37℃において保持した。細胞を0.5%BSA/RPMI1640中に再−懸濁させ(mL当たり2x10
6個の細胞)、37℃,5%CO
2において10分間インキュベーションした。次いで細胞懸濁液のアリコート(500μL)を純DMSO中の化合物又はビヒクルとしてのDMSO(2.5μL)で1時間処理した(37℃,5%CO
2)。
【0242】
MCP1(50nM)を0.5%BSA/RPMI1640中で調製した。MCP1溶液(50μL)を48−ウェル走化性チャンバー(AP48,NeuroProbe Inc.,Gaithersburg,MD)の下部プレート中の各ウェルに加えた。ポリカーボネート膜(8μm)を下部チャンバー上に載せ、次いで上部プレートを下部チャンバー及びフィルター膜の上に載せた。細胞懸濁液のアリコート(50μL)を化合物又はビヒクルで処理してから、上部チャンバー中に注意深く加え、0.5%BSA RPMI1640(50μL)を上部に適用した。次いでチャンバーを2時間放置した(37℃,5%CO
2)。次いで膜を注意深く除去し、下部チャンバーからの試料(25μL)を新しい96ウェルプレートに移した。
【0243】
10%FCSフェノールレッド−非含有RPMI1640中のMTTの溶液(50μL)を各ウェルに加え、プレートを2時間インキュベーションした(37℃,5%CO
2)。純DMSO(100μL)を各ウェルに加えてMTTから生成するホルマザンを抽出し、プレートを1時間軽く振盪させてから595nmにおける吸光度を測定した(Varioskan(登録商標) Flash,Thermo−Fisher Scientific)。値を選択的なPI3Kγ阻害剤であるAS604850(10μg/mL)による阻害と比較し、相対的なパーセント阻害を計算した。XL−Fit(idbs,Guildford,UK)を用い、濃度−阻害曲線から相対的なEC
50値を計算した。
【0244】
COPD患者から得た好中球からのCXCL8放出
COPD患者から得た好中球からのCXCL8放出への処理の効果をELISAアッセイにより評価した。すべての患者をQuintiles Limited(London,UK)が募集し、血液試料をRespivert Ltdに送達した。この研究は地方倫理委員会により承認され、すべての被験者は書面のインフォームドコンセントを与えた。全血(30mL)をACD(5mL;250mlの無菌の再蒸留水中に7.36gのクエン酸、14.71gのクエン酸ナトリウム、9.91gのデキストロースを含んでなる)及び6%のデキトスラン(15mL;0.9%NaCl中で希釈)と穏やかに混合し、赤血球を除去した。管を室温で45分間インキュベーションし、次いで上澄み液(白血球が豊富な画分)を集め、赤血球を残した。
【0245】
この画分を、低い制動を用いて(with low braking)遠心した(1200rpmにおいて10分間,4℃)。上澄み液を吸引し、ペレットを氷−冷された無菌の再蒸留H
2O(10mL)中に再−懸濁させ、30秒後に0.6M KCl(4mL)を加えた。細胞懸濁液を無菌のPBSで希釈し(50mLの最終的な体積まで)、次いで1500rpmで5分間遠心した。上澄み液を吸引し、ペレットをPBS(2.5mL)中に再−懸濁させ、同じドナーからの2つの管を1つにプールした。
【0246】
この細胞懸濁液を、Pasteurピペットを用いて5mLのFicoll−paque
TM premium(GE Healthcare Bio Science AB,Uppsala,Sweden)の上に注意深く層にして重ね(layered)、次いで遠心した(低い制動を用いて1500rpmにおいて30分間)。管の底における単離された好中球を、5%FCSを含有するRPMI−1640培地(Gibco,Paisley,UK)中に再−懸濁させ、96ウェルプレートにおいてウェル当たり4x10
5個の細胞の密度で播種した。細胞を30分間インキュベーションしてから(37℃,5%CO
2)、処理を開始した。
【0247】
好中球を試験化合物又はDMSOビヒクルと一緒に1時間予備−インキュベーションし、次いでTNFα(10mg/mL)を用いて刺激した。細胞非含有上澄み液をTNFα刺激から3時間後に集め、DuoSet ELISA development kit(R&D systems,Abingdon,UK)を用いるELISAによりCXCL8を測定した。報告されるIC
50値は、XL−Fit(IDBS,Guildford,UK)を用いて濃度−阻害曲線から決定された。
【0248】
MTTアッセイ
PMA−分化U937細胞を、5%FCS中で4時間又は10%FCS中で24時間、試験化合物(10μg/mL)又はビヒクルと一緒に予備−インキュベーションした。上澄み液を新しい培地(200μL)で置き換え、MTT倍液(10μL,5mg/mL)を各ウェルに加えた。1時間のインキュベーションの後、培地を除去し、200μLのDMSOを各ウェルに加え、プレートを1時間軽く振盪させてから、550nmにおける吸光度を読み取った。各ウェルに関し、細胞生存率へのパーセント損失をビヒクル(0.5% DMSO)−処理に対して計算した。
【0249】
生体内スクリーニング:薬物動態学及び抗−炎症活性
マウスにおけるLPS−誘導気道好中球蓄積
非−絶食BALB/cマウス(6〜8週令)にビヒクル又は試験化合物を、LPS処置の開始に関してT=−2時間、−8時間又は−12時間の時点に、気管−内投与(投薬量体積20μL)により投薬した。0.5mg/mLの溶液においてLPSを調製し、De
Vibliss超音波ネブライザー 2000を用いてエアロゾル化した(30分間の暴露の間に7mL)。LPS挑戦から8時間後に、気管にカニューレ挿入し、気管カテーテルを介してPBS(1mL)を肺中に注入し、次いで引き出す(withdrawing)ことにより、気管支肺胞洗浄液(BALF)を抽出した。この方法を繰り返し、約2mLの洗浄液の収量を与えた。血球計数板を用い、BALF試料中の合計細胞数を測定した。1200rpmにおいて室温で2分間遠心することにより、BALF試料のサイトスピンスメア(cytospin smears)を調製し、DiffQuik染色系(Dade Behring)を用いて分別細胞カウント(differential cell count)に関して染色した。油浸顕鏡(oil immersion microscopy)を用いて細胞をカウントした。データをBALFのmL当たりの細胞の好中球数として表わす(平均±S.E.M)。
【0250】
ラットにおけるLPS−誘導気道好中球蓄積
非−絶食ラットにビヒクル又は試験化合物を、LPS処置の開始に関してT=−2時間、−8時間又は−12時間の時点に、気管−内投与(投薬量体積20μL)により投薬した。LPS溶液(0.3mg/mL)を、De Vibliss超音波ネブライザー 2000を用いてエアロゾル化した(30分間の間に7mL)。LPS挑戦から8時間後に、気管にカニューレ挿入し、気管カテーテルを介してPBS(1mL)を肺中に注入し、次いで引き出すことにより、気管支肺胞洗浄液(BALF)を抽出した。この方法を繰り返し、約2mLの洗浄液を与えた。
【0251】
Countess自動細胞カウンター(Invitrogen)を用いてBALF試料中の合計細胞数を測定した。1200rpmにおいて室温で2分間遠心することにより、BALF試料のサイトスピンスメアを調製し、DiffQuik染色系(Dade Behring)を用いて分別細胞カウントに関して染色した。油浸顕鏡を用いて細胞をカウントした。データをBALFのmL当たりの細胞の好中球数として表わす(平均±S.E.M)。
【0252】
マウスにおけるオボアルブミン−誘導気道好酸球及び好中球蓄積
0日及び7日に、OVA(10μg/マウス 腹腔内)を用いてBALB/cマウス(6〜8週令)を免疫化した。肺において局所的炎症反応を引き出すために、13日から15日の間、オボアルブミンの噴霧溶液(10mg/mL,30分の暴露,De Vilibiss Ultraneb 2000)を用いてマウスに繰り返し挑戦した。17日に、各動物は最後のOVA挑戦の2時間前に、気管−内を介してビヒクル又は試験化合物のいずれかの投与を受けた。8時間後に動物を麻酔してから、気管切開を受けさせた。肺中にPBS(1mL)を注入し、それを次いで吸引することにより、BALを得た。この方法を繰り返し、約2mLの洗浄液を与えた。血球計数板を用い、BALF試料中の合計細胞数を測定した。200rpmにおいて室温で5分間遠心することにより、BALF試料のサイトスピンスメアを調製し、DiffQuik染色系(Dade Behring)を用いて分別細胞カウントに関して染色した。油浸顕鏡を用いて細胞をカウントした。データを鼻洗浄液のmL当たりの細胞の分別数(differential number)として表わす(平均±S.E.M)。
【0253】
マウスにおけるポリ−I:C−誘導細胞蓄積
特定の病原体を含まないA/Jマウス(雄,5週令)に、3日間麻酔下で(3% イソフルラン)毎日2回、ポリ(I:C)−LMW(1mg/mL,40μL)(InvivoGen,San Diego,CA,USA)を鼻内に投薬した。各ポリ−I:C処置から2時間前に、試験物質を鼻内に投薬した(10%DMSO/等張食塩水ビヒクル中の50μL)。最後のポリ−I:C挑戦から24時間後、動物を麻酔し、気管にカニューレ挿入し、肺中に等張食塩水(100mL/kg)を注入し、次いでそこから吸引することにより、気管支肺胞洗浄液(BAL)を得た。位相差顕微鏡下で血球計数板を用い、BALF試料中の合計細胞数を測定した。
【0254】
抗−マウスMOMA2−FITC(マクロファージ)又は抗−マウス7/4−FITC(好中球)を用い、FACS分析により肺胞マクロファージ及び好中球の割合を決定した。細胞をPBS中に懸濁させ、抗−MOMA2−FITC(2μg/mL,カタログ番号SM065F,Acris Antibodies GmbH,Herford,Germany)又は抗−7/4−FITC(2μg/mL,カタログ番号CL050F,Acris Antibodies GmbH,Herford,Germany)と一緒に30℃で30分間インキュベーションし、次いでヨウ化プロピジウム(2μg/mL)を用いて対比染色し、壊死細胞の排除を可能にした。細胞をPBSで洗浄し、FACS管に移した。試料をフローサイトメーター(ALTRA II;Beckman Coulter Japan,Tokyo,Japan)中に置き、log x−軸を有する単一−パラメーターFL2[PMT2](FITC)ヒストグラムをプロットし、FITCの相対的な強度を示した。各細胞型の割合を計算するためのKaluza分析ソフトウェア(ver 1.2)を用いる続く分析のために、データファイルを保存した。
【0255】
タバコ煙モデル
小動物のためのタバコ煙吸入実験系(Tobacco Smoke Inhalation Experiment System)(Model SIS−CS;Sibat
a Scientific Technology,Tokyo,Japan)を用い、30分間/日において11日間、A/Jマウス(雄,5週令)をタバコ煙に暴露した(4%タバコ煙,圧縮空気で希釈)。最後のタバコ煙暴露の後、1日1回3日間、試験物質を投与した(50%DMSO/等張食塩水中の溶液の35μLを含んでなる鼻−内投薬)。
【0256】
最後の投薬量の投与から12時間後、動物を麻酔し、気管にカニューレ挿入し、PBS(100mL/kg)を肺中に注入し、次いでそこから吸引することにより、気管支肺胞洗浄(BAL)を行った。位相差顕微鏡下で血球計数板を用い、BALF試料中の合計細胞数を測定した。抗−マウスMOMA2−FITC(マクロファージ)又は抗−マウス7/4(好中球)を用い、FACS分析により洗浄液マクロファージ及び好中球の割合を決定した。
【0257】
細胞をPBS中に懸濁させ、抗−MOMA2−FITC(2μg/mL,カタログ番号SM065F,Acris Antibodies GmbH,Herford,Germany)又は抗−7/4−FITC(2μg/mL,カタログ番号CL050F,Acris Antibodies GmbH,Herford,Germany)と一緒に30℃で30分間インキュベーションし、ヨウ化プロピジウム(2μg/mL)を用いて対比染色もし、壊死細胞の排除を可能にした。細胞をPBSで洗浄し、FACS管に移した。試料をフローサイトメーター(ALTRA II;Beckman Coulter
Japan,Tokyo,Japan)中に置き、log x−軸を有する単一−パラメーターFL2[PMT2](FITC)ヒストグラムをプロットし、FITCの相対的な強度を示した。
【0258】
各細胞型の割合を計算するためのKaluza分析ソフトウェア(ver 1.2)を用いる続く分析のために、データファイルを保存した。Quentikine(登録商標)マウスKC、MCP1、TNFα、IL−17又はオステオポンチンELISAキット(R&D systems,Inc.,Minneapolis,MN,USA)を用い、BALF中のCXCL1(KC)、MCP1、TNFα、IL−17又はオステオポンチンのレベルを決定した。OxiSelect(登録商標) TBARS Assayキット(MDA Quantitation;Cell Biolabs Inc,San
Diego,CA,USA)を用いてマロンジアルデヒドの存在を測定した。
【0259】
試験管内及び生体内スクリーニングの結果のまとめ
上記の方法を用いて決定される式(I)の化合物の試験管内の側面を下記に示す(表5、6及び7)。本発明の化合物は、酵素アッセイにおいてPI3Kδ及びγイソ型の両方の有力な阻害を示し、PI3Kαに対して阻害活性を示さず、PI3Kβに対して低い阻害活性しか示さない(表5)。
【0260】
これらの効果は、過酸化水素又はMCP−1を用いる細胞の刺激により誘導されるAktリン酸化の有力な阻害に言い直される。式(I)の化合物と一緒のインキュベーションから生ずる細胞生存率への効果は検出されなかった(表6)。さらに、本明細書に開示される式(I)の化合物を用いる細胞の処理は、U937細胞からのROSならびにcytostim−挑戦PBMCsからのサイトカインの生産を阻害することが見出された(表7)。
【0261】
式(I)の化合物の代謝生成物の可能性のあるもの、すなわち対応するアルコール、化合物(Ia)は、式(I)の化合物より有意に低い活性のPI3Kδ及びγイソ型の両方の阻害剤であることは注目に値する(表6)。結局、式(Ia)の化合物は式(I)の化合物より有意に低い活性のU937細胞からのROS生産及びcytostim−挑戦PBMCsからのサイトカイン生産の阻害剤である(表7)。
【0262】
【表4】
【0263】
【表5】
【0264】
【表6】
【0265】
マウス及びラットにおけるLPS−誘導気道好中球増加症への化合物(I)を用いる処置の効果を、それぞれ表8及び9に報告する。処置は両方の種においてLPS−誘導好中球増加症の用量−依存性阻害を生ずることが見出された。さらに、細胞蓄積への処置の阻害効果は、長い作用の持続時間を示すことが見出された。
【0266】
【表7】
【0267】
【表8】
【0268】
マウスにおけるアレルゲン挑戦−誘導気道好酸球増加症及び好中球増加症への化合物(I)を用いる処置の効果を表10に報告する。本明細書に開示される化合物を用いるマウスの処置は、アレルゲン挑戦に続く気管支肺胞洗浄液中の好酸球及び好中球の両方の蓄積の用量−依存性阻害を生ずることが見出された。
【0269】
【表9】
【0270】
ポリ−I:Cへのマウスの暴露に続くBALF中におけるマクロファージ及び好中球蓄積への化合物(I)又は化合物Aを用いる処置の効果も研究した。この直接の比較において、化合物(I)又は化合物Aのいずれかを用いる処置は、BALF中へのポリ−I:C−誘導マクロファージ及び好中球蓄積の用量−依存性阻害を生ずることが見出された(表11)。化合物(I)が化合物Aより有意により大きい効力を示すことは注目に値し、このデータを好中球に関してグラフで示す(
図1)。
【0271】
【表10】
【0272】
【表11】
【0273】
タバコ煙への暴露の後のBALF中におけるマクロファージ及び好中球蓄積への化合物(I)を用いる処置の効果を決定した(表12)。この研究のために用いられるタバコ煙モデルはコルチコステロイド無反応性系であると報告され[To,Y.et al.著,Am.J.Respir.Crit.Care Med.,2010,182:897−904;Medicherla,S.et al.著,J.Pharmacol.Exp.Ther.2008,324:921−9]、データは、デキサメタゾン(0.3−10mg/kg,経口的投与による)が不活性であったことを明らかにしている。BALF好中球への、及び活性化肺胞マクロファージ数への化合物(I)を用いる処置の効果は、単独療法として投与される時にそれが抗−炎症活性を有することを示している。さらに、単独療法として有意な効果がない投薬量において化合物(I)をフルチカゾンプロピオネートと共−投与すると、抗−炎症活性の顕著な強化が検出された。同時の研究において、タバコ煙に暴露されたマウスの化合物Aを用いる処置の効果を評価した。これらのデータと化合物(I)に関して上記で示したデータとの比較は、化合物(I)が、化合物Aが有力であるよりもっと有力なネズミBALF中におけるタバコ煙誘導細胞蓄積の阻害剤であることを示している(
図2)。
【0274】
タバコ煙暴露は、気管支肺胞洗浄液中の炎症マーカーCXCL1、MCP1、TNFα、IL17、オステオポンチン及びマロンジアルデヒドの濃度も上昇させる。化合物(I)を用いる処置は、用量−依存的なやり方でバイオマーカーのそれぞれの濃度を低下させる。さらに、組み合わせにおいて化合物(I)及びフルチカゾンプロピオネートの両方を用いる処置は、化合物(I)のみを用いる処置で達成されるより大きいバイオマーカー濃度における低下を示した(表13)。
【0275】
【表12】
【0276】
要するに、本発明の化合物はPI3Kδ及びγイソ型の両方の有力な阻害剤である。試験管内の側面は、生体内における広い抗−炎症性表現型に言い換えられる。この設定において、気道におけるポリI:C−誘導細胞蓄積に対する本明細書に開示される化合物の阻害効果は顕著である。PI3Kδの選択的な阻害剤と異なり、本明細書に開示される化合物(I)を単独で用いる処置がタバコ煙誘導気道炎症の顕著な阻害を生ずること、ならびにコルチコステロイドのみを用いる処置が効果なしの条件下で、それがコルチコステロイド、フルチカゾンプロピオネートと共−投与されると、これらの効果がより低い投薬量で起こることも、特に衝撃的である。
【実施例15】
【0277】
化合物(I)を含んでなる製薬学的調剤
化合物(I)の組成物を以下の通りに乾燥粉末吸入器用に調製することができる:
化合物(I)をエアジェットミルのような適した方法により超微粉砕して、約2μmのD50値を与え、次いでステアリン酸マグネシウムを用いて、又は用いずにブレンドにおいて調製する。ブレンドを、乾燥粉末吸入器を介する吸入用の単位投薬量容器(例えばカプセル、ブリスター)中に充填する。例としての投薬量当たり25mgの充填重量を有し、投薬量当たり1〜1000マイクログラム(mcg)の範囲の投薬量濃度を有する、0〜1%のステアリン酸マグネシウムを含有する調剤の例を示す。投薬量当たり種々の濃度、ステアリン酸マグネシウムの種々の量及び種々の充填重量を用いることもできる。
【0278】
【表13】
【0279】
【表14】
【0280】
【表15】
【0281】
明細書及び続く特許請求の範囲を通じて、文脈がそうでないことを要求しなければ、「含む(comprise)」という用語ならびに変形、例えば「含む(comprises)」及び「含んでなる」は、述べられる整数、段階、整数の群又は段階の群の包含(inclusion)を意味し、他の整数、段階、整数の群又は段階の群の排除を意味しないことが理解されるであろう。
【0282】
本明細書で引用されるすべての特許及び特許出願は、引用することによりそれらの記載事項全体が本明細書の内容となる。