特許第6353867号(P6353867)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6353867
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】転倒防止装置
(51)【国際特許分類】
   A47B 97/00 20060101AFI20180625BHJP
【FI】
   A47B97/00 D
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-111573(P2016-111573)
(22)【出願日】2016年6月3日
(65)【公開番号】特開2017-217058(P2017-217058A)
(43)【公開日】2017年12月14日
【審査請求日】2016年11月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 拓仁
(72)【発明者】
【氏名】河野 雄祐
(72)【発明者】
【氏名】勝呂 雅士
(72)【発明者】
【氏名】安藤 智紀
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 将吾
【審査官】 西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−006330(JP,A)
【文献】 実開平05−045276(JP,U)
【文献】 実開昭62−141939(JP,U)
【文献】 特開2016−047197(JP,A)
【文献】 米国特許第04535977(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 97/00
F16F 9/06
F16F 9/38
F16F 9/56
F16F 15/02
F16F 15/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置面上に設置された物品の上面と天井との間に取り付けられる転倒防止装置であって、
作動液体及びガスを封入した有底筒状のシリンダと、
前記シリンダの一端から上方に向けて突出し、中心軸方向に往復移動自在に挿入されたロッドと、
中心軸方向に摺動自在に前記シリンダ内に収納され、且つ前記ロッドの基端部が連結されたピストンと、
前記ロッドの中心軸線上に伸びた筒状であり、前記ロッドの先端側に一端部が連結されて前記ロッドとともに前記ロッドの中心軸方向に往復移動するロッドカバーと、
を有したダンパを備えており、
前記ロッドカバーは、前記ピストンが前記作動液体内に浸漬された状態において、その他端部が、前記シリンダの一端よりも前記シリンダの他端寄りに位置しており、前記ピストンが前記ガス内に配置された状態において、その他端部が前記シリンダの一端よりも前記ロッドの先端寄りに位置していることを特徴とする転倒防止装置。
【請求項2】
前記シリンダの前記他端側の端部に連結され、前記物品の上面に当接するシリンダ側ベース部と、
前記シリンダ側ベース部又は前記シリンダと、前記ロッドカバーと、を前記ダンパが収縮した状態で連結する連結部材と、
を備えていることを特徴とする請求項1記載の転倒防止装置。
【請求項3】
前記シリンダ側ベース部は、前記ダンパを回動自在に軸支する回動軸を介して前記ダンパに連結されており、
前記シリンダ側ベース部は、前記回動軸周りの角度を示す目盛りを有し、
前記連結部材は、前記回動軸に回動自在に軸支されて前記シリンダ側ベース部に連結されており、
前記連結部材は、前記連結部材の回動に伴って回動して前記目盛りを指し示す指示部を有していることを特徴とする請求項2記載の転倒防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は転倒防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は従来の転倒防止装置を開示している。この転倒防止装置は、床面上に設置された家具の上面と天井との間に取り付けられる。転倒防止装置は、伸縮して減衰力を発生するダンパを備えている。転倒防止装置は、地震等の揺れによって家具が傾くと、ダンパが収縮して減衰力を発生させ、家具の転倒を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−6330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の転倒防止装置において、家具の上面と天井との間隔が大きい場合、ダンパの伸張量によっては、シリンダ内のピストンが、作動油よりも上方に封入された圧縮ガス内に配置された状態となってしまう。このような状態で取り付けられた転倒防止装置は、地震等の揺れによって家具が傾いた際、ダンパが収縮してピストンが作動油内に移動するまでダンパが減衰力を発生しない。このため、ダンパの減衰力が家具に有効に作用せずに家具が転倒するおそれがある。
このように、ダンパは、適正な減衰力を発揮する状態で使用する必要があるが、ダンパがそのような状態にあるか否かを外見から判別することは困難である場合が多い。
【0005】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、適切に取り付けられているか否かを容易に判別できる転倒防止装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の転倒防止装置は、設置面上に設置された物品の上面と天井との間に取り付けられる。転倒防止装置はダンパを備えている。ダンパは、シリンダ、ロッド、ピストン、及びロッドカバーを有している。シリンダは有底筒状に形成されており、作動流体及びガスを封入している。ロッドは、シリンダの一端から上方に向けて突出し、中心軸方向に往復移動自在に挿入されている。ピストンは、中心軸方向に摺動自在にシリンダ内に収納されている。また、ピストンは、ロッドの基端部が連結されている。ロッドカバーは、ロッドの中心軸線上に伸びた筒状であり、ロッドの先端側に一端部が連結されてロッドとともにロッドの中心軸方向に往復移動する。そして、ロッドカバーは、ピストンが作動液体内に浸漬された状態において、その他端部が、シリンダの一端よりもシリンダの他端寄りに位置しており、ピストンがガス内に配置された状態において、その他端部が、シリンダの一端よりもロッドの先端寄りに位置している。
【0007】
このような構成により、本発明の転倒防止装置は、ロッドカバーの他端部(ロッドの基端側に位置する端部)がどの位置にあるか、すなわち、シリンダの一端(ロッド側の一端)よりもシリンダの他端(ロッド側の一端の反対端)寄りに位置しているか否かを確認することで、ピストンが作動液体内に浸漬された状態であるか否か、すなわち、ダンパが適正な減衰力を発揮する状態にあるか否かを判別できる。
【0008】
したがって、本発明の転倒防止装置は、適切に取り付けられているか否かを容易に判別できる。
【0009】
本発明の転倒防止装置は、シリンダ側ベース部及び連結部材を備え得る。シリンダ側ベース部は、シリンダの他端部に連結され、物品の上面又は天井に当接する。連結部材は、シリンダ側ベース部又はシリンダと、ロッドカバーと、をダンパが収縮した状態で連結する。この場合、転倒防止装置をダンパが収縮した状態で容易に保持することができる。
【0010】
本発明の転倒防止装置において、シリンダ側ベース部は、ダンパを回動自在に軸支する回動軸を介してダンパに連結され得る。また、シリンダ側ベース部は、目盛りを有し得る。この目盛りは、回動軸周りの角度を示す。連結部材は、回動軸に回動自在に軸支されてシリンダ側ベース部に連結され得る。また、連結部材は、指示部を有し得る。この指示部は、連結部材の回動に伴って回動して目盛りを指し示す。この場合、ダンパの回動軸回りの傾斜角度を容易に認識できる。これにより、ダンパが適正な傾斜角度であるか否かを判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1の転倒防止装置を家具の上面と天井との間に取り付けた状態を模式的に示す側面図である。
図2】実施形態1の転倒防止装置の収縮された状態を模式的に示す側面図である。
図3】実施形態1の転倒防止装置の収縮された状態を模式的に示す正面図である。
図4】実施形態1の転倒防止装置のダンパ及びシリンダ側ベース部を示す部分断面図である。
図5】実施形態1の転倒防止装置を家具の上面に載置した状態を模式的に示す図である。
図6】実施形態1の転倒防止装置において、ダンパが適正な減衰力を発揮する状態の一例を模式的に示す図である。
図7】実施形態1の転倒防止装置において、ダンパが適正な減衰力を発揮しない状態の一例を模式的に示す図である。
図8】実施形態2の転倒防止装置の要部を模式的に示す断面図である。
図9】他の実施形態(その1)の転倒防止装置の要部を模式的に示す断面図である。
図10】他の実施形態(その2)の転倒防止装置の要部を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の転倒防止装置を具体化した実施形態1について、図面を参照しつつ説明する。
【0013】
<実施形態1>
実施形態1の転倒防止装置1は、図1に示すように、家具F(本発明に係る物品として例示する。)の上面と天井Cとの間に少なくとも1個以上が取り付けられる。転倒防止装置1は、地震等の揺れが生じて家具Fが傾いた際に、減衰力により家具Fの揺れを抑制して家具Fの転倒を防止する。家具Fは、設置面となる床面(図示せず)から鉛直方向に伸びた壁面Wに背面を対向させて床面上に設置されている。また、この家具Fは、直方体形状をなしており、正面(図1における右側面)に図示しない扉や引き出し等を有し、内部に衣類や装身具等を収納することができる。家具Fは、水平断面形状が左右方向(図1において奥行き方向)に長い長方形状である。この家具Fは、転倒防止装置が取り付けられていない場合、地震等の揺れによって、前方向(図1において右方向)に傾いて転倒するおそれがある。
【0014】
転倒防止装置1は、図1図3に示すように、ダンパ10を備えている。また、転倒防止装置1は、一対のベース部21,22、及び連結部材31を備えている。ダンパ10は、家具F側の端部と、天井C側の端部と、が互いに遠ざかる方向に付勢力を付与する。一対のベース部21,22はダンパ10の両端に夫々連結されている。一対のベース部21,22は、一方のベース部21が家具Fの上面に当接し、他方のベース部22が天井Cに当接する。連結部材31は、ダンパ10の伸張を規制して収縮した状態を保持する。
【0015】
ダンパ10は、シリンダ11、ロッド13、ピストン14、及びロッドカバー16を有している。また、ダンパ10は、ロッドガイド12、及び減衰部15を有している。シリンダ11は有底筒状に形成されている。シリンダ11には作動油L(本発明に係る作動液体として例示する。)及び圧縮ガスG(本発明に係るガスとして例示する。)が封入されている。ロッドガイド12は、シリンダ11の開口部を封鎖している。ロッド13は、シリンダ11の開口部側の一端から突出し、中心軸方向に往復移動自在に挿入されている。ロッド13は、その基端側がシリンダ11に挿入されている。また、ロッド13は、ロッドガイド12に摺動自在に挿通されている。ピストン14は、シリンダ11内に摺動自在に収納されている。ピストン14にはロッド13の基端部が接続されている。ピストン14は、シリンダ11の内部を、ロッド13の基端部が収納されているロッド側圧力室11Aと、反ロッド側圧力室11Bと、に仕切るように設けられている。
【0016】
減衰部15は、ロッド側圧力室11Aと反ロッド側圧力室11Bとの間を移動する流体の流れに抵抗を付与する。減衰部15は、オリフィス15Aと逆止弁15Bとを有している。オリフィス15A及び逆止弁15Bは、ロッド側圧力室11A及び反ロッド側圧力室11Bを連通する流路に夫々設けられている。逆止弁15Bは、ロッド側圧力室11Aから反ロッド側圧力室11Bへの流体の流れを許容し、その逆の流れを阻止する。オリフィス15A及び逆止弁15Bは、夫々ピストン14に配されている。
【0017】
ダンパ10は収縮動作時に発生する減衰力が伸長動作時に発生する減衰力よりも大きい圧効きダンパである。ダンパ10の収縮動作とは、シリンダ11からロッド13の突出長さ(ダンパ10の全長)が短くなっていく動作を意味する。また、ダンパ10の伸長動作とは、シリンダ11からロッド13の突出長さ(ダンパ10の全長)が長くなっていく動作を意味する。また、ダンパ10は、シリンダ11に封入した圧縮ガスGのガス圧により、ダンパ10が伸張する方向に力を作用させている。そして、この圧縮ガスGの作用により、ダンパ10は、家具F側の端部であるシリンダ11の下端部と天井C側の端部であるロッド13の上端部とが互いに遠ざかる方向に付勢力を付与する。
【0018】
減衰部15によるダンパ10の減衰力が発生するメカニズムは、以下の通りである。オリフィス15Aは、ダンパ10の伸張及び収縮の両動作に伴うロッド側圧力室11Aと反ロッド側圧力室11Bとの間の作動油Lの流れに抵抗を付与する。逆止弁15Bは、ロッド側圧力室11Aから反ロッド側圧力室11Bへの作動油Lの流れは許容するが、その逆の流れは阻止する。このため、ダンパ10は、伸長動作時、ロッド側圧力室11Aから反ロッド側圧力室11Bへの作動油Lの流路経路が、オリフィス15Aと逆止弁15Bの両方の経路となる。一方、収縮動作時には、反ロッド側圧力室11Bからロッド側圧力室11Aへの作動油Lの流路経路がオリフィス15Aのみとなる。このため、ダンパ10は伸長動作時に発生する減衰力が収縮動作時に発生する減衰力よりも小さくなる。
【0019】
ロッドカバー16は、ロッド13の中心軸線上に伸びた筒状に形成されている。ロッドカバー16は、その一端部がロッド13の先端側(図1〜3の上端側)に連結されている。詳細には、図2及び図3に示すように、ロッドカバー16は有底筒状に形成されており、その底部側端がロッド13の先端側を向き、且つ開口側端がロッド13の基端側を向いて配されている。ロッドカバー16は、その底部側の端部がロッド13の先端側に連結されている。筒状をなすロッドカバー16は、その内径がシリンダ11の外径よりも大きく設定されている。これにより、ロッドカバー16は、ダンパ10が収縮したときには、シリンダ11の外周面を覆うことができる。また、ロッドカバー16は、ロッド13の先端側に連結されていることにより、ロッド13とともにロッド13の中心軸方向に往復移動する。すなわち、ロッドカバー16は、ロッド13の中心軸方向の往復移動に伴ってロッド13と協動する。また、ロッドカバー16の開口側の端部には、後述する連結部材31のカバー側係合部が係合する被係合孔16Aが形成されている。
【0020】
一対のベース部21,22のうち、シリンダ側ベース部21は、ジョイント部18を介してシリンダ11の底部に連結されている。また、ロッド側ベース部22は、ジョイント部18を介して、ロッド13の先端部に連結されている。すなわち、ダンパ10は、シリンダ11側の端部にシリンダ側ベース部21がジョイント部18を介して連結されているとともに、ロッド13側の端部にロッド側ベース部22がジョイント部18を介して連結されている。シリンダ側ベース部21は、家具Fの上面に当接する。ロッド側ベース部22は、天井Cに当接する。ダンパ10は、ロッド13側の端部を天井C側に向けて、家具Fの上面と天井Cとの間に取り付けられる。シリンダ側ベース部21及びロッド側ベース部22は、ダンパ10に対して回動自在に夫々設けられている。シリンダ側ベース部21及びロッド側ベース部22は略同じ形態及び構造とされている。
【0021】
上述のように、ダンパ10の両端にはジョイント部18が夫々設けられている。各ジョイント部18は、図4に示すように、平板状の金具を折り曲げて形成されている。各ジョイント部18は、一方がシリンダ11の底部に接続され、他方がロッド13の先端部に接続されている。各ジョイント部18はダンパ10の軸線に直交する方向に貫通した貫通孔18Aが形成されている。
【0022】
また、シリンダ側ベース部21及びロッド側ベース部22は、ベース部本体23、ピン24、止め輪25、及びブッシュ26を夫々有している。上述のように、シリンダ側ベース部21及びロッド側ベース部22は略同じ形態及び構造とされているので、以下の説明ではシリンダ側ベース部21を例示して説明する。
【0023】
図4に示すように、ベース部本体23は、その内部が空洞とされている。ベース部本体23は挿通孔23Aを有している。回動軸部材であるピン24は、この挿通孔23Aに挿通される。回動軸部材であるピン24は、その軸部24Aがベース部本体23の挿通孔23Aの一方から挿入されて貫通し、挿通孔23Aの他方において軸部24Aの先端に止め輪25を嵌め込まれている。このピン24の中心軸が各ベース部21,22におけるダンパ10の回動軸になる。ピン24の基端部には、後述する連結部材31のベース側係合部が係合する。なお、ピン24の先端部と基端部とは略同径とされており、ベース側係合部はピン24のいずれの端部にも係合できる。
【0024】
また、ベース部本体23の側面には目盛り23Bが形成されている。目盛り23Bは、回動軸となるピン24が挿通される挿通孔23Aの中心軸回りの角度を示す目盛りである。目盛り23Bは、ベース部本体23の底面(図4では下面)に直交する方向に対する回動軸回りの角度15度及び25度を示す2つの目印として形成されており、転倒防止装置1を設置する際のダンパ10の傾斜角度の目安とされる。
【0025】
ブッシュ26は、図4に示すように、略円筒状である。ブッシュ26は弾性体である。ブッシュ26の長さは、ベース部本体23に取り付けられたときに、その両端面とベース部本体23との間に僅かに隙間が生じる長さとされている。ブッシュ26は中央部の外周面を一周した凹部26Aが形成されている。この凹部26Aの外径がダンパ10のジョイント部18に形成された貫通孔18Aの内径に略等しい。ブッシュ26は凹部26Aの両端から立ち上がった部分の外径がダンパ10のジョイント部18に形成された貫通孔18Aの内径よりも大きい。また、ブッシュ26は両端部の外周面26Bが外方向に縮径している。このため、ブッシュ26はダンパ10のジョイント部18に形成された貫通孔18Aに弾性変形させながら挿入される。そして、ブッシュ26は、貫通孔18Aに凹部26Aが嵌まり込んで、ダンパ10のジョイント部18に取り付けられる。
【0026】
ブッシュ26は中央部の内径がピン24の軸部24Aの外径よりも僅かに大きい。また、ブッシュ26は両端部の内周面26Cが外方向に拡径している。このため、このブッシュ26はピン24の軸部24A周りに回動自在である。また、このブッシュ26は、拡径した両端部の内周面26Cがピン24の軸部24Aの外周面に当接する範囲で、ピン24の軸部24Aに対して傾くことができる。つまり、ブッシュ26をジョイント部18に取り付けたダンパ10は、ピン24の軸部24A周りに回動自在であり、回動方向に交差する方向に揺動自在である。さらに、ブッシュ26が弾性変形することによって、ダンパ10は回動方向に交差する方向に、より大きく揺動することができる。
【0027】
ロッドカバー16は、ピストン14が作動油L内に浸漬された状態において、その開口部側の端部が、シリンダ11の開口部側の一端よりもシリンダ11の底部側の一端寄りに位置している。換言すると、ロッドカバー16は、ピストン14が作動油L内に浸漬された状態において、その開口部側の端部が、シリンダ11の開口部側の一端と底部側の一端の間に位置している。また、ロッドカバー16は、ピストン14が作動油L内に浸漬された状態において、その下端がシリンダ11の上端よりも下方に位置する、とも言える。そして、この状態において、ダンパ10は適正な減衰力を発揮する。また、この状態では、ロッド13は、シリンダ11から突出した部分の全てがロッドカバー16により覆われている。
【0028】
連結部材31は、シリンダ側ベース部21とロッドカバー16とを連結して、ダンパ10の伸張を規制する。図2及び図3に示すように、連結部材31は、板状の部材に折り曲げ等の加工を施して構成されている。連結部材31は、ベース側係合部31Aと、カバー側係合部31Bと、を有している。ベース側係合部31Aは、連結部材31の一端側に形成された孔である。ベース側係合部31Aは、シリンダ側ベース部21のピン24の基端部に係合する。カバー側係合部31Bは、連結部材31の他端側に形成されている。カバー側係合部31Bは、板状をなす連結部材31の一面から突起状に突出して形成されており、ロッドカバー16に形成された被係合孔16Aに係合する。連結部材31は、ベース側係合部31A及びカバー側係合部31Bがシリンダ側ベース部21及びロッドカバー16に夫々着脱自在に係合する。連結部材31は、ダンパ10を最も収縮させた状態に近い状態で、シリンダ側ベース部21及びロッドカバー16を連結する。連結部材31は、シリンダ側ベース部21とロッドカバー16とを連結した状態において、ピン24を回動軸とするシリンダ側ベース部21に対するダンパ10の回動に連動して回動する。
【0029】
また、図2及び図3に示すように、連結部材31は指示部31Cを有している。指示部31Cは、連結部材31のベース側係合部31A側の先端をくさび状に尖らせて形成されている。指示部31Cは、くさび状の先端によって、ベース部本体23の側面に形成された目盛り23Bを指し示す。なお、連結部材31は、ベース側係合部31Aが係合されるピン24の基端部が、ベース部本体23の側面の表面よりも内側の奥まった位置にあることから(図4参照)、ベース側係合部31Aと指示部31Cとの間の部位において、クランク状に折り曲げられて形成されている。
【0030】
このような構成を有する転倒防止装置1は、次に示すようにして家具Fの上面と天井Cとの間に取り付けられる。なお、取り付け前の初期状態の転倒防止装置1は、図2及び図3に示すように、連結部材31によりロッドカバー16及びシリンダ側ベース部21が連結され、ダンパ10が収縮状態で保持されている。また、この収縮状態において、連結部材31は、ダンパ10に伴って、回動軸であるピン24の中心軸回りに回動可能である。
【0031】
最初に、図5に示すように、転倒防止装置1を家具Fの上面に載置して、シリンダ側ベース部21を家具Fの上面に当接させる。また、この時、シリンダ側ベース部21のピン24の軸部24A(回動軸)が、家具Fが地震等の揺れによって傾く方向(図5において右方向)に対して直交するように載置する。すなわち、ダンパ10の回動軸と家具Fの傾きの回動中心の軸が平行となるように、シリンダ側ベース部21を家具Fの上面に載置する。
【0032】
そして、ダンパ10の上端を前方(家具Fの正面方向)に傾斜させて、その角度が鉛直方向に対して15度〜25度の範囲となるように調整する。本実施形態1の場合、ダンパ10の傾斜に伴って傾斜する連結部材31の指示部31Cが、目盛り23Bの示す角度範囲(15度〜25度の範囲)内を指し示すように、傾斜角度を調整すればよい。目盛り23Bの示す角度範囲は、家具Fの揺れを有効に抑制できるダンパ10の適正角度範囲とされている。そして、ロッド側ベース部22のピン24の軸部24A(回動軸)が、シリンダ側ベース部21のピン24の軸部24A(回動軸)と平行になるように、ロッド側ベース部22の向きを正す。これは、シリンダ11とロッド13とがダンパ10の中心軸回りに相対回転可能であり、シリンダ11に連結されたシリンダ側ベース部21と、ロッド13に連結されたロッド側ベース部22もまた、ダンパ10の中心軸回りに相対回転可能なためである。そして、この状態で、連結部材31を外すと、シリンダ11に封入した圧縮ガスGのガス圧によってダンパ10が伸長し、図1に示すように、ロッド側ベース部22が天井Cに当接する。なお、上述のように、連結部材31は着脱自在に設けられており、取り外した際には、ベース部本体23内の空洞を利用して設けられた図示しない収納部に収納できる。
【0033】
最後に、ロッドカバー16の開口部側端が、シリンダ11の開口部側端よりも底部側端寄りにあることを確認する。この状態であれば、転倒防止装置1は、適正な減衰力を発揮する状態にあると判別できる。例えば、図1の場合、ロッドカバー16は、ロッド13のシリンダ11から突出した部分全体を覆っているとともに、シリンダ11の上端側1/4程度を覆った状態である。また、図6の場合には、ロッドカバー16は、シリンダ11の上端を僅かに覆った状態ではあるものの、ロッド13のシリンダ11から突出した部分についてはその全体を覆っている。これら図1及び図6のような状態は、ロッドカバー16の開口部側端が、シリンダ11の開口部側端よりも底部側端寄りにある状態であり、ダンパ10が適正な減衰力を発揮できる状態にあると言える。これらのような状態であれば、ダンパ10は、ピストン14が作動油L内に浸漬しており、適正な減衰力を発揮可能である。したがって、転倒防止装置1は、ダンパ10が適正な減衰力を発揮する状態で取り付けられていると判別できる。
【0034】
一方、図7に示すように、ロッドカバー16の開口部側端がシリンダ11の開口部側端よりもシリンダ11の底部側端から離れている場合には、転倒防止装置1は、ダンパ10が適正な減衰力を発揮する状態になく、ダンパ10が適正な減衰力を発揮する状態で取り付けられていないと判別できる。すなわち、ピストン14が作動油L内に配置されておらず、その上方の圧縮ガスG内に配置された状態である。この場合、地震等による揺れが生じた際に、ダンパ10が収縮してピストン14が作動油L内に移動するまでの間、適切な減衰力を作用させることができず、家具Fが転倒してしまうおそれがあるので、転倒防止装置1の取り付けに関して再考すべきである。
【0035】
以上説明したように、転倒防止装置1は、設置面上に設置された家具Fの上面と天井Cとの間に取り付けられる。転倒防止装置1はダンパ10を備えている。ダンパ10は、シリンダ11、ロッド13、及びロッドカバー16を有している。シリンダ11は筒状に形成されている。ロッド13は、シリンダ11の一端から突出し、中心軸方向に往復移動自在に挿入されている。ロッドカバー16は、ロッド13の中心軸線上に伸びた筒状であり、ロッド13の先端側に一端部が連結されてロッド13とともにロッド13の中心軸方向に往復移動する。そして、ロッドカバー16は、ダンパ10が適正な減衰力を発揮する状態において、その他端部である開口部側の端部が、シリンダ11の開口部側端よりもシリンダ11の底部側端寄りに位置している。
【0036】
このような構成により、実施形態1の転倒防止装置1は、ロッドカバー16の開口部側の端部がどの位置にあるかを確認することで、ダンパが適正な減衰力を発揮する状態にあるか否か、すなわち、油圧ダンパにおける適正な減衰力を発揮する状態であるピストン14が作動油L内に浸漬している状態にあるか否かを容易に判別できる。
【0037】
したがって、転倒防止装置1は、適切に取り付けられているか否かを容易に判別できる。
【0038】
また、転倒防止装置1は、ダンパ10が、中心軸方向に摺動自在にシリンダ11内に収納されたピストン14を有している。ピストン14にはロッド13の基端部が連結されている。シリンダ11には作動油L及び圧縮ガスGが封入されている。ロッド13は、シリンダ11から上方に向けて突出している。そして、ダンパ10が適正な減衰力を発揮する状態は、ピストン14が作動液体内に浸漬された状態である。この場合、ロッドカバー16の位置を確認することで、油圧式ダンパであるダンパ10における適正な減衰力を発揮する状態、すなわち、ピストン14が作動油L内に浸漬された状態であるか否かを判別できる。
【0039】
また、転倒防止装置1は、シリンダ側ベース部21及び連結部材31を備えている。シリンダ側ベース部21は、シリンダ11の底部側の端部に連結され、家具Fの上面に当接する。連結部材31は、シリンダ側ベース部21と、ロッドカバー16と、を連結する。このため、転倒防止装置1を、ダンパ10が収縮した状態で容易に保持することができる。また、連結部材31は、ロッドカバー16及びシリンダ側ベース部21に着脱自在に設けられている。このため、不要時には取り外しておくことができる。また、連結部材31を収納する収納部を備えているので、取り外した際に収納しておくことで連結部材31の紛失を防止することができる。
【0040】
また、転倒防止装置1は、シリンダ側ベース部21が、ダンパ10を回動自在に軸支する回動軸であるピン24を介してダンパ10に連結されている。また、シリンダ側ベース部21は、目盛り23Bを有している。この目盛り23Bは、回動軸周りの角度を示す。連結部材31は、回動軸であるピン24の基端部に回動自在に軸支されてシリンダ側ベース部21に連結される。また、連結部材31は、指示部31Cを有している。この指示部31Cは、連結部材31の回動に伴って回動して目盛り23Cを指し示す。このため、ダンパ10の回動軸回りの傾斜角度を容易に認識できる。これにより、ダンパ10が適正な傾斜角度であるか否かを判別することができる。
【0041】
また、転倒防止装置1は、ダンパ10はロッドカバー16を有していることにより、ロッド13の外周面に塵埃が付着するのを抑制することができる。またロッド13の表面に塗装等の装飾を施すことは困難であるが、ロッド13を覆うロッドカバー16を有する場合には、このロッドカバー16に所望の装飾を施すことができる。したがって、ダンパがロッドカバーを有さない場合と比較して装飾可能な部位が増加するので、転倒防止装置の意匠性を向上させることができる。
【0042】
<実施形態2>
次に、図8などを参照し、実施形態2について説明する。
図8等で示す実施形態2の転倒防止装置201は、シリンダ211が、シリンダ本体211Cと、このシリンダ本体211Cの開口端からシリンダ211の中心軸方向に突出する突出部211Dと、を有している点で実施形態1の転倒防止装置1とは異なる。その他の部分は、実施形態1と略同一の構成をなし、同一の機能を有する。よって、他の部分については実施形態1と同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。また、以下の説明でも、物品の例として、設置面上に設置された家具Fを例示するが、家具以外の物品に適用してもよい。
【0043】
図8に示すように、突出部211Dは、シリンダ本体211Cの開口端縁から、ダンパ210が伸張する方向に沿って突出して設けられている。換言すると、突出部211Dは、シリンダ本体211Cの上端縁から上方に突出して設けられている。すなわち、突出部211Dは、シリンダ本体211Cよりも上方に延びている。この場合、シリンダ211の上端は突出部211Dの上端である。突出部211Dは、複数(図8中2個)設けられている。
【0044】
このような構成の転倒防止装置201は、以下の作用効果を奏する。すなわち、転倒防止装置201は、シリンダ211がシリンダ本体211Cの上端に突出する突出部211Dを有していることにより、ダンパ210が適正な減衰力を発揮する状態の最大長近傍まで伸張した場合に、そのことが容易に把握できる。例えば、突出部211Dを有さない場合、ロッドカバー16により覆われている部分が上端近傍であるのかは判別し難い。しかし、突出部211Dを有していることにより、シリンダ211の突出部211Dのみがロッドカバー16に覆われた状態であれば、それがシリンダ211の上端近傍であり、減衰力を適正に発揮し得る状態における長さの最大近傍であることが容易に把握できる。また、突出部211Dは複数設けられているので、より広範囲から視認できる。
【0045】
以上のように、本構成の転倒防止装置201は、実施形態1の転倒防止装置1と同様の作用効果を奏することに加えて、ダンパ210が適正な減衰力を発揮する状態の最大長近傍まで伸張しているか否かが容易に把握できる。
【0046】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態1及び2に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施形態1及び2では、転倒防止装置を家具に対して取り付けたが、これに限定されず、例えば、複数の寝台を上下方向に連結したベッド、大型テレビ、冷蔵庫、書棚、ショーケース、サーバーラック等、地震等の揺れによって転倒するおそれのある他の物品に対して取り付けてもよい。
(2)実施形態1及び2では、転倒防止装置を壁面に背面を対向させて床面上に載置された家具に対して取り付けたが、壁面に隣接させずに床面上に載置された家具等に対して取り付けてもよい。このとき、物品が、前方のみならず後方等の他の方向にも転倒するおそれがある場合には、取り付け位置や取り付け個数、ダンパの傾斜角度、傾斜方向などに注意して、物品が転倒する可能性のある方向に合わせて適切に取り付ける必要がある。
(3)実施形態1及び2では、圧効きダンパを利用したが、これに限定されず、例えば、両効きダンパ、伸効きダンパであってもよい。これらを用いる場合、ベース部を物品や天井に固定する、取り付け位置や取り付け個数、ダンパの傾斜角度、傾斜方向に注意するなど、ダンパの種類に応じて適切に取り付ける必要がある。
(4)実施形態1及び2では、圧縮ガスのガス圧でダンパを伸張させたが、これに限定されず、例えば、圧縮コイルばね等の他の手段又はそれらの組み合わせ等により付勢力を更に付与してダンパを伸張させるようにしてもよい。
(5)実施形態1及び2では、ダンパを液体圧式ダンパとし、シリンダ内に封入する作動液体として作動油を採用したが、これに限定されず、例えば、作動液体として他の液体(例えば、水等)を封入した液体圧式ダンパを採用してもよい。
(6)実施形態1及び2では、連結部材を備える例を示したが、本発明において、連結部材は必須の構成ではない。また、連結部材を備える場合には、実施形態1及び2の構成に限定されず、ロッドカバーとシリンダとを連結する連結部材など、連結部位(係合部位)等にかかわらず、ダンパの収縮動作及び伸張動作の少なくとも一方を規制し得るものであればよい。
(7)実施形態1及び2では、ロッドカバーとベース部のピンとを連結する連結部材を例示したが、連結部材の形態はこれに限定されない。例えば、図9に示すように、ベース部本体23に係合部23Cを設け、この係合部23Cとロッドカバー16とを係合ピン32によって係合することにより、ベース部本体23とロッドカバー16とを直接連結する形態であってもよい。この場合、係合ピン32が連結部材に相当する。
(8)実施形態1及び2では、連結部材を着脱自在に設ける例を示したが、これに限定されず、例えば、一方の端部側で着脱不能に設けられていてもよい。この場合、例えば、図10に示すように、ベース部本体23に一体に形成された係合爪23Dを形成し、この係合爪23Dによりロッドカバー16を直接係止する形態のように、着脱不能に設けられた側に固定されて設けられていてもよいし、また、上述のピンのような回動軸部材に挿脱不能且つ回動自在に設けられていてもよい。この場合、係合爪23Dが連結部材に相当する。
(9)実施形態1及び2では、連結部材は、ダンパを最も収縮させた状態に近い状態で連結するようにしたが、連結時のダンパの収縮量は特に限定されない。しかし、輸送時、保管時等の取扱いやすさの観点から、収縮量の大きい状態、すなわち、全長がより短い状態であることが好ましい。
(10)実施形態1及び2では、ベース部本体の側面に、ダンパの傾斜角度の目安となる目盛りを形成したが、本発明において、目盛りは必須の構成ではない。なお、目盛りを形成する場合には、実施形態1及び2の形態に限定されず、例えば、目盛りをベース部本体の両側面に形成したり、回動軸回りの15度〜25度の範囲及び−15度〜−25度の範囲の両方に形成したりなど、目盛りを複数箇所に形成するようにしてもよい。
(11)実施形態1及び2では、回動軸部材としてピンを例示したが、これに限定されず、例えば、ボルト等の他の軸部材を採用してもよい。
【符号の説明】
【0047】
C…天井、F…家具(物品)、G…圧縮ガス(ガス)、L…作動油(作動液体)、W…壁面、1,201…転倒防止装置、10,210…ダンパ、11,211…シリンダ(11A…ロッド側圧力室、11B…反ロッド側圧力室、211C…シリンダ本体、211D…突出部)、12…ロッドガイド、13…ロッド、14…ピストン、15…減衰部(15A…オリフィス、15B…逆止弁)、16…ロッドカバー(16A…被係合孔)、18…ジョイント部(18A…貫通孔)、21…シリンダ側ベース部、22…ロッド側ベース部、23…ベース部本体、23A…挿通孔、23B…目盛り、23C…係合部、23D…係合爪、24…ピン、24A…軸部、25…止め輪、26…ブッシュ、26A…凹部、26B…外周面、26C…内周面、31…連結部材、31A…ベース側係合部、31B…カバー側係合部、31C…指示部、32…係合ピン
図1
図2
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図6
図7
図8
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図10