(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記転写膜における上記支持部材に接する位置から第一開口に接する位置までの傾斜角が、水平面に対して下方向に1°以上60°以下であることを特徴とする請求項8に記載の生体分子分析装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術に係る水平型装置では、ゲルフレームは水平方向に設けられ、転写膜は垂直方向に引き上げられる(このような構成を、本明細書において、「水平型」とも称する)。上記水平型装置では、ゲルフレームの上面は外気と接し、ゲルフレームの下面は装置の構造物と接しているため、ゲルフレームの冷却が不十分となり、電気泳動時にゲルが発熱する場合がある。ゲルが発熱すると、電気泳動パターンが歪む、分解能が低下する、分離したDNA等が転写膜に転写されない等の不具合が生じるおそれがある。また、転写膜は、一般的に薄いプラスチックフィルムであり、伸縮性がある。そのため、矩形の転写膜フレームに固定された膜は、中央が周縁部よりも伸び易く、縁に近づくほど張力が強く掛かった状態となる。そのため中央付近は転写パターンが歪んでしまうおそれがある。
【0006】
そこで、本発明者らは、独自の発想に基づき、独自の構成を有する垂直型装置について検討した。当該垂直型装置では、ゲル等の分離媒体を収納する分離部が略垂直方向に起立している(このような構成を、本明細書において、「垂直型」とも称する)。上記垂直型装置では、分離部の上部は陰極バッファーと接し、分離部の下部は陽極バッファーと接するため、分離部を水冷によって十分に冷却することができる。また、転写膜は、矩形の転写膜フレームに固定せずに搬送することができる。
【0007】
但し、上記垂直型装置では、転写膜を、陽極バッファー槽内で略水平方向に移動させる必要がある。ここで、従来技術に係る水平型装置のように、転写膜搬送機構を、転写膜の上流に配置しようとした場合、陽極バッファー槽から飛散した緩衝液が当該転写膜搬送機構の耐用性を低下させるおそれ、及び、当該転写膜搬送機構が上記垂直型装置に対する各
種操作の妨げになるおそれがある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、好適な転写膜搬送機構を備えた垂直型の排出転写方式の電気泳動−転写装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る生体分子分析装置は、上記課題を解決するために、第一緩衝液槽、第一緩衝液槽の上方に配置された第二緩衝液槽、分離媒体が収納され、第一緩衝液槽内に開口する第一開口及び第二緩衝液槽内に開口する第二開口を有し、略垂直方向に起立している分離部、第一開口に対向する位置に配置された転写膜を保持するアーム部、並びに第一緩衝液槽下に設けられ、該アーム部を略水平方向に駆動する駆動部を備え、該アーム部は、該駆動部につながっており、上記第一開口から分離されたサンプルが排出されるタイミングで上記転写膜に転写されるよう駆動される。
【0010】
また、本発明の一態様に係る生体分子分析装置は、上記課題を解決するために、第一緩衝液槽、第一緩衝液槽の上方に配置された第二緩衝液槽、分離媒体が収納され、第一緩衝液槽内に開口する第一開口及び第二緩衝液槽内に開口する第二開口を有し、略垂直方向に起立している分離部、第一開口に対向する位置に配置された転写膜を保持するアーム部、並びに第一緩衝液槽下に設けられ、該アーム部を略水平方向に駆動する駆動部を備え、該アーム部は、第一緩衝液槽の側壁の外側を通り、該側壁の上端を回り込んで、該側壁の内側につながっている。
【0011】
上記の構成によれば、分離部が略垂直に起立する構成とすることで、分離部が第一又は第二緩衝液槽内の緩衝液に浸漬され、分離媒体を水冷することができる。但し、生体分子分析装置をこのように構成した場合、転写膜を第一緩衝液槽内において移動させる必要がある。
【0012】
ここで、上記の構成によれば、駆動部を第一緩衝液槽下に設け、かつ、アーム部の形状を、第一緩衝液槽の側壁の外側を通り、当該側壁の上端を回り込んで、当該側壁の内側につながっている形状とすることによって、緩衝液による駆動部の耐用性の低下及び駆動部による各種操作の妨害を避けつつ、転写膜を第一緩衝液槽内において首尾よく移動させることができる。これにより、好適な転写膜搬送機構を備えた垂直型の排出転写方式の電気泳動−転写装置を提供することができる。
【0013】
本発明の一態様に係る生体分子分析装置では、上記転写膜は、上記アーム部の駆動による移動方向前方の第一端部及び該移動方向後方の第二端部を有し、上記アーム部は、第一端部を固定する第一固定部、第二端部を固定する第二固定部、及び第一固定部と第二固定部とを互いに背向する方向に付勢する弾性体を備えていてもよい。
【0014】
転写膜が緩んだ状態であると、転写膜を移動させたときに、転写膜と第一開口との隙間が大きくなって、転写結果がぼやける場合がある。
【0015】
上記の構成によれば、弾性体によって、転写膜の移動方向両端部を固定する第一および第二固定部が互いに背向する方向に付勢されるため、転写膜に対して一定の張力を付与することができる。これによって、転写膜を張った状態にすることができ、良好な転写結果を得ることができる。
【0016】
本発明の一態様に係る生体分子分析装置では、第一緩衝液槽の底部には、当該転写膜を、当該転写膜における上記分離部とは反対側から支持する支持部材が設けられており、上記転写膜は、上記分離部によって、上記分離部とは反対側が凸になるように折り曲げられていてもよい。
【0017】
上記の構成によれば、支持部材によって転写膜が支持され、分離部がそれを押さえて、下に(分離部とは反対側に)凸になるように折り曲げられる。これによって、転写膜に張力が掛かり、転写膜を第一開口に密着させることができる。特に、転写膜は上記弾性体によって張った状態に維持されているため、転写膜を第一開口に好適に押しつけることができる。これにより分離媒体から転写膜への転写をより好適に行うことができる。
【0018】
本発明の一態様に係る生体分子分析装置では、上記支持部材は、上記底部において第一開口に対向する位置を対になって挟む位置に夫々形成されていてもよい。
【0019】
上記の構成によれば、分離部の両側に配置された支持部材によって転写膜が支持され、分離部がそれを押さえて、下に(分離部とは反対側に)凸になるように折り曲げられる。これによって、転写膜により均一に張力が掛かり、転写膜を第一開口により均一に密着させることができる。これにより分離媒体から転写膜への転写をより好適に行うことができる。
【0020】
本発明の一態様に係る生体分子分析装置では、上記転写膜は、上記アーム部の駆動による移動方向前方の第一端部及び該移動方向後方の第二端部を有し、上記アーム部は、第一端部を固定する第一固定部、第二端部を固定する第二固定部及び第一固定部と第二固定部とを所定距離離間して連結する連結部を備えていてもよい。
【0021】
上記の構成によれば、転写膜の第一及び第二端部を、所定距離離間して連結された第一及び第二固定部によって夫々固定することにより。転写膜を、その移動方向に沿って緩み無く張ることができる。これにより、転写結果が転写膜の緩みによりぶれることを抑制し、測定感度を向上させることができる。
【0022】
本発明の一態様に係る生体分子分析装置では、上記連結部は、上記転写膜を上記移動方向側方から挟む位置に配置されていてもよい。
【0023】
上記の構成によれば、転写膜の表面(第一開口と対向する面)及び裏面(第一開口とは反対側の面)に連結部が重なることを避けることができる。これによって、分離媒体から転写膜への転写や、転写膜の裏面へ他部材の当接等が連結部によって阻害されることを防ぐことができる。
【0024】
本発明の一態様に係る生体分子分析装置では、第一緩衝液槽の底部には、当該転写膜を、当該転写膜における上記分離部とは反対側から支持する支持部材が設けられており、上記転写膜は、上記分離部によって、上記分離部とは反対側が凸になるように折り曲げられていてもよい。
【0025】
上記の構成によれば、支持部材によって転写膜が支持され、分離部がそれを押さえて、下に(分離部とは反対側に)凸になるように折り曲げられる。これによって、転写膜に張力が掛かり、転写膜を第一開口に密着させることができる。これにより分離媒体から転写膜への転写をより好適に行うことができる。
【0026】
本発明の一態様に係る生体分子分析装置では、上記支持部材は、上記底部において第一開口に対向する位置を対になって挟む位置に夫々形成されていてもよい。
【0027】
上記の構成によれば、分離部の両側に配置された支持部材によって転写膜が支持され、分離部がそれを押さえて、下に(分離部とは反対側に)凸になるように折り曲げられる。これによって、転写膜により均一に張力が掛かり、転写膜を第一開口により均一に密着させることができる。これにより分離媒体から転写膜への転写をより好適に行うことができる。
【0028】
本発明の一態様に係る生体分子分析装置では、上記転写膜における上記支持部材に接する位置から第一開口に接する位置までの傾斜角が、水平面に対して下方向に1°以上60°以下であってもよい。
【0029】
上記の構成によれば、転写膜に掛かる張力を適切に調整して、分離媒体から転写膜への転写をより好適に行うことができる。
【0030】
本発明の一態様に係る生体分子分析装置では、上記アーム部における上記側壁の上端を回り込む部位は、上記駆動部から着脱可能になっており、第一緩衝液槽が上記生体分子分析装置から着脱可能になっていてもよい。
【0031】
上記の構成によれば、第一緩衝液槽を取り外しできることにより、駆動部に洗浄液等を付着させることなく、容易に第一緩衝液槽を洗浄することができる。また、第一緩衝液槽を取り外す際に、アーム部における第一緩衝液槽の側壁の上端を回り込んで当該側壁の内側につながっている部位を、駆動部から分離することができるため、第一緩衝液槽を容易に取り外すことができる。
【0032】
本発明の一態様に係る生体分子分析装置では、上記アーム部は、上記駆動部につながっており、上記側壁の外側を、当該側壁の上端に並ぶ位置まで延伸している第一部位と、第一部位に嵌合し、上記側壁の上端を跨いで当該側壁の内側に延伸している第二部位とを有していてもよい。
【0033】
上記の構成によれば、第二部位は、駆動部に対して容易に着脱することができる。第一部位は、第一緩衝液槽の側壁の外側に配置されており、第一緩衝液槽の取り外しや電極のセット等の各種操作の邪魔になることはない。そのため、第二部位を適宜外すことにより、各種操作を首尾よく行うことができる。
【0034】
本発明の一態様に係る生体分子分析装置では、第一緩衝液槽、第二緩衝液槽及び分離部が透明であってもよい。
【0035】
上記の構成によれば、装置の動作中において、分離媒体及び転写膜の様子を観察することができる。これにより、例えば、可視マーカーの移動を肉眼により確認することができる。
【0036】
本発明の一態様に係る生体分子分析装置では、第一緩衝液槽には第一電極が配置され、第二緩衝液槽には第二電極が配置され、上記転写膜は、第一開口及び第一電極に挿まれるように配置されてもよい。
【0037】
上記構成によれば、分離媒体に対し、第一緩衝液槽内に開口する第一開口と第二緩衝液槽内に開口する第二開口との間に電圧を印加することができるので、生体分子の電気泳動を首尾よく行うことができる。また、第一開口と第一電極との間に転写膜が挿まれるため、第一開口から転写膜への分離された生体分子の転写を首尾よく行うことができる。
【0038】
本発明の一態様に係る生体分子分析装置では、上記分離部は、第二緩衝液槽に対して着脱可能に取り付けられており、第二緩衝液槽は、第一緩衝液槽に対して着脱可能に取り付けられていてもよい。
【0039】
上記構成によれば、分離部及び第二緩衝液槽を取り外すことができるため、駆動部に洗浄液等を付着させることなく、容易に分離部及び第二緩衝液槽を洗浄することができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、好適な転写膜搬送機構を備えた垂直型の排出転写方式の電気泳動−転写装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0042】
〔実施形態1〕
本発明の一実施形態について、図面に基づいて説明すれば以下のとおりである。
【0043】
まず、本実施形態に係る生体分子分析装置100の概略的な構成について、
図1及び
図2を参照して説明する。
図1は、生体分子分析装置100の構成を概略的に示す斜視図である。
図2は、生体分子分析装置100の構成を概略的に示す側方断面図である。
【0044】
図1及び
図2に示すように、生体分子分析装置100は、垂直型の排出転写方式の電気泳動−転写装置であり、クランプ(アーム部、第一固定部)20、クランプ(アーム部、第二固定部)21、クランプフレーム(アーム部、連結部)22、キャリア(アーム部、側壁の上端を回り込む部位、第二部位)23、陽極バッファー槽(第一緩衝液槽)30、テーブル31、陰極バッファー槽(第二緩衝液槽)40、分離部50、モータ(駆動部)62、ボールネジ(駆動部)63、ガイドシャフト(駆動部)64、シャフトホルダ(駆動部)65、ガイドポール(アーム部、第一部位)66、並びに制御部68を備えている。また、説明のために図示していないが、安全のため、動作時に全体を覆う蓋をさらに備えている。
【0045】
ここで、分離部50は、分離ゲル(分離媒体)52を収納しており、陽極バッファー槽30内に開口する第一開口50a及び陰極バッファー槽40内に開口する第二開口50bを有している。また、陽極バッファー槽30内には、転写膜1が第一開口50aに対向するように配置されている。また、陽極バッファー槽30内には陽極(第一電極)32が配置されており、陰極バッファー槽40内には陰極(第二電極)41が配置されている。
【0046】
このため、生体分子分析装置100では、陰極バッファー槽40及び陽極バッファー槽30に緩衝液を満たすことによって、陰極バッファー槽40内の陰極41と陽極バッファー槽30内の陽極32とが、2つの槽における緩衝液、分離ゲル52、及び転写膜1を介して電気的に接続される。すなわち、生体分子分析装置100は、陰極41と陽極32との間に電圧を印加することによって、第二開口50bから導入されたサンプルを分離ゲル52によって分離し、分離された各成分を第一開口50aから排出させて転写膜1に吸着させる装置である。
【0047】
以下に、主要な各部材について
図1及び
図2を参照して詳細に説明する。
【0048】
(陽極及び陰極)
陽極32は陽極バッファー槽30内に配置されており、陰極41は陰極バッファー槽40内に配置されている。陽極32及び陰極41は、金属などの導電性を有する材料から形成される。陽極32及び陰極41を形成する材料としては、例えば電極のイオン化を抑制する観点から白金が好ましい。
【0049】
これらの電極配置に関しては、陽極32は陽極バッファー槽30内に配置されており、陰極41は陰極バッファー槽40内に配置されていればよく、特に限定されないが、例えば、陰極41、第一開口50a、及び陽極32が、略一直線上に配置されていてもよい。このような配置において
図1に示すように転写膜1が配置されれば、第一開口50aを通る電気力線は転写膜1に対して略垂直になるため、サンプルの吸着の精度を向上し得る。
【0050】
また、陽極32は、転写膜1から離して配置することが好ましい。これによって、陽極32から発生する気泡が、転写膜1に対する分離成分の吸着に悪影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0051】
陽極32及び陰極41は、例えば、制御部68に接続して使用してもよいし、外部のパワーサプライ(直流電源装置)に接続して使用してもよい。外部のパワーサプライに接続して使用する場合、当該パワーサプライに時間、電流及び電圧をセットした後、パワーサプライの動作開始と同時に、制御部68を操作して生体分子分析装置100を動作開始させればよい。
【0052】
(陽極バッファー槽及び陰極バッファー槽)
陽極バッファー槽30及び陰極バッファー槽40は、緩衝液(バッファー)を滞留させる絶縁性の容器である。陰極バッファー槽40は、陽極バッファー槽30に対して上方に設けられている。なお、本実施形態では、陽極バッファー槽30はテーブル31上に固定されており、陰極バッファー槽40は陽極バッファー槽30に固定されているが、本発明はこの構成には限定されない。
【0053】
陽極バッファー槽30及び陰極バッファー槽40に入れる緩衝液は、導電性を有するあらゆる緩衝液であり得、特に、弱酸性〜弱塩基性に緩衝域を有する緩衝液を好適に用いることができる。そのような緩衝液としては、例えば、Tris/グリシン系緩衝液、酢酸緩衝溶液、炭酸ナトリウム系緩衝液、CAPS緩衝液、Tris/ホウ酸/EDTA緩衝液、Tris/酢酸/EDTA緩衝液、MOPS、リン酸緩衝液、Tris/トリシン系緩衝液等の緩衝液を用いることができる。
【0054】
また、詳細は後述するが、陽極バッファー槽30の底部には、転写膜1の移動経路中において、転写膜1を、転写膜1の裏面(分離部50とは反対側の面)から支持するガイド(支持部材)33・34が設けられている。
【0055】
(分離部)
分離部50は、その内部に分離ゲル(分離媒体)52を収納している。本実施形態において、分離部50は、略垂直方向に起立しており、その下部は陽極バッファー槽30内に配置され、その上部は片面が陰極バッファー槽40に接するように配置されている。これにより、分離ゲル52は、陽極バッファー槽30内の緩衝液および陰極バッファー槽40内の緩衝液の少なくとも一方によって水冷され、十分に冷却することができる。
【0056】
また、分離部50は、陽極バッファー槽30内に開口する第一開口50a及び陰極バッファー槽40内に開口する第二開口50bを有する。これにより、分離ゲル52は、第一開口50aを介して陽極バッファー槽30内に面し、第二開口50bを介して陰極バッファー槽40内に面するようになっている。なお、本実施形態では、分離部50は、陰極バッファー槽40に設けられたロック42によって、陰極バッファー槽40に固定されているが、本発明はこの構成には限定されない。
【0057】
分離部50は、ガラス又はアクリルなどの絶縁体から形成された2枚の絶縁板51・53から構成され得る。一実施形態において、分離部50は、第二開口50bにおいて絶縁板53の一部が欠けることによって、分離ゲル52を露出させており、これによって、分離ゲル52に対してサンプルを容易に導入することができる。
【0058】
分離ゲル52は、第二開口50bから導入されたサンプル成分を分子量にしたがって分離するためのゲルである。分離ゲル52は、分離部50の生体分子分析装置100に対する取り付け前、又は取り付けた後に、分離部50内に充填され得る。また、分離ゲル52が充填された市販のページチップを分離部50として用いてもよい。分離ゲル52の例としては、アクリルアミドゲル及びアガロースゲルなどが挙げられる。分離ゲル52の横幅は、例えば、10〜12レーンのサンプルを分離することが可能な長さとすることができる。
【0059】
なお、本実施形態においては、分離部50内に分離ゲル52を充填する構成を採用しているが、絶縁板51と絶縁板53との間にナノピラーと呼ばれる多数の超微細柱を設ける構成も採用し得る。
【0060】
また、分離部50の第一開口50aは、その周囲を含めて、導電性の多孔質材料(例えば、親水性PVDF(Polyvinylidene difluoride)膜、親水性PTFE(Polytetra fluoro ethylene)膜等)によって形成された被覆部によって覆われていてもよい。これによって、第一開口50aに転写膜1が接するあるいは押付けられている場合(第一開口50aと転写膜1の間に距離を設けない場合)において、転写膜1が搬送される時に転写膜1が分離部50及び分離ゲル52から受ける摩擦抵抗及び損傷を低減することができる。
【0061】
なお、分離部50が、略垂直方向に起立していることにより、分離部50が、略水平方向に設置されている構成に比べて、サンプル導入量を増大させることができる。なぜなら、水平型の電気泳動装置では、分離ゲルに設けるウェルの深さを変えることが困難であるが、垂直型の電気泳動装置では、ウェルの深さを容易に変えることができるため、サンプル導入量を容易に増大させることができるからである。
【0062】
(転写膜1)
転写膜1は、分離ゲル52によって分離されたサンプルを長期間にわたって安定に保存可能にし、さらに、その後の分析を容易にするサンプルの吸着・保持体であることが好ましい。転写膜1の材質としては、高い強度を有し、かつサンプル結合能(単位面積当たりに吸着可能な重量)が高いものが好ましい。転写膜1としては、サンプルがタンパク質である場合にはPVDF膜などが適している。なお、PVDF膜は予めメタノールなどを用いて親水化処理を行っておくことが好ましい。これ以外には、ニトロセルロース膜又はナイロン膜など、従来からタンパク質、DNA及び核酸の吸着に利用されている膜も使用可能である。
【0063】
なお、生体分子分析装置100において分離及び吸着され得るサンプルとしては、これらに限定されないが、生物材料(例えば、生物個体、体液、細胞株、組織培養物、もしくは組織断片)からの調製物、又は、市販の試薬などが挙げられる。例えば、ポリペプチド又はポリヌクレオチドが挙げられる。
【0064】
転写膜1は、陽極バッファー槽30内において緩衝液に浸漬された状態で使用される。
【0065】
本実施形態において、転写膜1は、1回の電気泳動・転写に使用される長さ、換言すれば、1回の電気泳動・転写において陽極バッファー槽30内を移動する距離の長さを有していればよい。転写膜1をこのように構成することにより、1回の電気泳動・転写毎に、転写膜1を切断する操作が不要となり、生体分子分析装置100の使用性を向上させることができる。また、転写膜1の横幅は、分離ゲル52の横幅に対応する長さとすればよい。
【0066】
(アーム部)
本実施形態において、転写膜1は、その移動、及び、第一開口50aとの相対位置の維持のために、アーム部によって保持された状態で使用される。本実施形態において、アーム部は、連結された一連の部材であるクランプ20・21、クランプフレーム22、キャリア23及びガイドポール66から構成される。このうち、クランプ20・21及びクランプフレーム22から構成される構造体をアジャスターと称することもある。アジャスターは、陽極バッファー槽30の側壁の内側に配置されている。また、
図3は、アジャスターの概略構造を示す斜視図である。
図3に示すように、クランプ20は、下部20a及び上部20bから構成されており、クランプ21は、下部21a及び上部21bから構成されている。
【0067】
図3の(b)に示すように、下部20aと上部20bとの間、及び、下部21aと上部21bとの間は、夫々開くようになっている。この状態で、下部20aと上部20bとの間に転写膜1の移動方向前方の端部(第一端部)を挟み、下部21aと上部21bとの間に転写膜1の移動方向後方の端部(第二端部)を挟んだ後、
図3の(a)に示すように、下部20aと上部20bとの間、及び、下部21aと上部21bとの間を、夫々閉じることにより、クランプ20によって転写膜1の移動方向前方の端部を固定し、クランプ21によって転写膜1の移動方向後方の端部を固定することができる。これによって、アーム部が、転写膜1を保持することができる。なお、クランプ20・21は、閉じた状態で固定するためのロックを備えていてもよい。
【0068】
クランプフレーム22は、クランプ20・21を連結する軸部材であり、クランプ20・21を所定距離離間して連結している。これにより、クランプ20・21によって転写膜1の両端部を固定したときに、転写膜1を、その移動方向に沿って緩み無く張ることができる。これにより、転写結果が転写膜1の緩みによりぶれることを抑制し、測定感度を向上させることができる。また、クランプ20の移動に伴って搬送される転写膜1に加えられる張力を一定にすることができる。従って、転写膜1に対してサンプルをムラなくより好適に転写することができる。但し、クランプ21及びクランプフレーム22を省略する構成であってもよい。
【0069】
クランプフレーム22は、転写膜1を移動方向側方から挟む位置に配置されており、これによって、転写膜1の表面(第一開口50aと対向する面)及び裏面(第一開口50aとは反対側の面)にクランプフレーム22が重なることを避けることができる。これによって、分離ゲル52から転写膜1への転写や、転写膜1の裏面へ他部材の当接等(詳細については後述する)がクランプフレーム22によって阻害されることを防ぐことができる。
【0070】
ガイドポール66は、後述する駆動部(シャフトホルダ65)に連結し、陽極バッファー槽30の側壁の外側を通るように配置されている軸部材である。キャリア23は、ガイドポール66に連結し、陽極バッファー槽30の側壁の上端を回り込んで、クランプ20に連結している部材である。
【0071】
以上のように、アーム部は、駆動部に連結している位置から、陽極バッファー槽30の側壁の外側を通り、該側壁の上端を回り込んで、該側壁の内側につながっている。
【0072】
なお、本発明を限定するものではないが、本実施形態では、ガイドポール66は、陽極バッファー槽30の側壁の外側を、当該側壁の上端に並ぶ位置まで延伸している。そして、キャリア23は、ガイドポール66に嵌合し、陽極バッファー槽30の側壁の上端を跨いで当該側壁の内側に延伸している。
【0073】
このように構成することにより、キャリア23は、駆動部に対して容易に着脱することができる。ガイドポール66は、陽極バッファー槽30の側壁の外側に配置されており、必要に応じて行われる、陽極バッファー槽30の取り外し(詳細は実施形態2において説明する)や電極のセット等の各種操作の邪魔になることはない。そのため、キャリア23を適宜外すことにより、各種操作を首尾よく行うことができる。
【0074】
(駆動部)
駆動部は、アーム部を略水平方向に駆動するものであり、本実施形態では、モータ62、ボールネジ63、ガイドシャフト64及びシャフトホルダ65によって構成されている。
【0075】
モータ62は、ボールネジ63を回転させる。モータ62は、回転数を変化可能なものを使用してもよいし、回転数が固定のものをギアと組み合わせて使用してもよい。ボールネジ63は、シャフトホルダ65を貫通すると共に、シャフトホルダ65に螺合している。ガイドシャフト64は、シャフトホルダ65を貫通しており、シャフトホルダ65は、ガイドシャフト64に沿って移動可能に構成されている。そして、モータ62がボールネジ63を回転させることにより、シャフトホルダ65が図中X方向(略水平方向)に駆動される。シャフトホルダ65は、アーム部(ガイドポール66)に連結しており、これによって、駆動部は、アーム部を、図中X方向(略水平方向)に駆動することができる。そして、アーム部は、転写膜1を保持しているため、転写膜1は、図中X方向(略水平方向)に移動する。
【0076】
但し、本発明はこれに限定されず、アーム部を略水平方向に駆動することができるものであれば、その他の駆動機構(例えば、ベルト、ギア等)によって駆動部を構成するようにしてもよい。
【0077】
また、駆動部は、陽極バッファー槽30下に設けられている。これによって、陽極バッファー槽86から飛散した緩衝液が駆動部の耐用性を低下させるおそれ、及び、駆動部が生体分子分析装置100に対する各種操作の妨げになるおそれを防止することができる。
【0078】
(制御部)
制御部68は、生体分子分析装置100の各種制御(アーム部の位置の制御、陽極32及び陰極41に印加する電流・電圧の制御等)を行う制御盤である。制御部68は、ユーザからの入力を受けるためのボタン、スイッチや、動作状態をユーザに通知するためのランプ、表示部等を備えていてもよい。
【0079】
(サンプルの電気泳動及び転写)
次に、生体分子分析装置100におけるサンプルの電気泳動及び転写の流れについて、
図4を参照して説明する。
図4は、本実施形態におけるサンプルの電気泳動及び転写を説明するための断面図である。なお、
図4では、説明の便のため、陽極バッファー槽30、陰極バッファー槽40等は省略している。
【0080】
図4に示すように、サンプルの電気泳動及び転写時において、転写膜1は、クランプ20・21(アジャスター、アーム部)によって、第一開口50aに対向する位置に配置された状態で保持される。このとき、陽極バッファー槽30の底部に設けられたガイド33・34によって、転写膜1は、転写膜1の裏面(分離部50とは反対側)から支持されている。
【0081】
ガイド33・34は、陽極バッファー槽30の底部に、転写膜1が移動する移動経路中において転写膜を支持するように設けられている。ガイド33・34は、その長手方向が、転写膜1の移動方向(X方向)に直交しており、第一開口50aの長手方向と平行になっている。
【0082】
そして、分離部50(の第一開口50a側)が、転写膜1の表面(分離部50側)に当接することにより、転写膜1は、分離部50とは反対側が凸になるように折り曲げられている。このように、ガイド33・34によって転写膜1が支持され、分離部50がそれを押さえて、下に(分離部50とは反対側に)凸になるように折り曲げられる。これによって、転写膜1に張力が掛かり、転写膜1を第一開口50aに密着させることができる。これにより分離ゲル52から転写膜1への転写をより好適に行うことができる。
【0083】
特に、ガイド33・34が、陽極バッファー槽30の底部において第一開口50aに対向する位置を対になって挟む位置に夫々形成されていることにより、分離部50の両側に配置されたガイド33・34によって転写膜1が支持され、分離部50がそれを押さえて、下に(分離部とは反対側に)凸になるように折り曲げられる。これによって、転写膜1により均一に張力が掛かり、転写膜1を第一開口50aにより均一に密着させることができる。これにより分離ゲル52から転写膜1への転写をより好適に行うことができる。
【0084】
より詳細には、分離ゲル52から転写膜1へサンプルを転写する際の転写膜1の張力は、例えば、1N以上、12N以下の範囲内の張力であることが好ましく、6N程度であることが最も好ましい。転写膜に加えられる張力が、以上の範囲であれば、分離ゲル52から転写膜1へサンプルを感度よく転写することができると共に、過度な張力によって転写膜1が損傷することを防止することができる。
【0085】
転写膜1の張力を上記範囲にすることは、例えば、転写膜1におけるガイド33・34に接する位置から第一開口50aに接する位置までの傾斜角θを、水平面に対して下方向に好ましくは1°以上60°以下、より好ましくは10°程度とすることにより、好適に実現することができる。転写膜1の張力は、上記傾斜角によって規定されるため、当該傾斜角を上述した範囲内とすることにより、転写膜1の張力を上述した範囲にすることができる。
【0086】
なお、上述したように、クランプフレーム22は、転写膜1を移動方向側方から挟む位置に配置されているため、ガイド33・34が、転写膜1をその裏面から支持することを妨げない。
【0087】
そして、分離部50の第二開口50bから、サンプルを分離ゲル52に導入する。サンプルには、分析対象となる生体分子の他、電気泳動の進行状態を確認するための可視分子量マーカーを加えることが好ましい。
【0088】
以上の状態で、サンプルの電気泳動による分離を行う。制御部68は、モータ62を制御して、転写膜1の位置をスタート位置に設定し、陽極32と陰極41との間に電流を流し、電気泳動を開始する。陽極32と陰極41との間に流す電流値としては、特に限定されないが、50mA以下であることが好ましく、20mA以上、30mA以下であることがより好ましい。なお、電流値が一定になるように制御してもよいし、電圧が一定になるように制御してもよいし、その他の態様で電流・電圧を制御してもよい。
【0089】
転写膜1は、分離部50における電気泳動の進行に合わせて、駆動部によるアーム部(アジャスター)の駆動によりX方向(略水平方向)に向かって徐々に移動される。X方向は、第一開口50aの長手方向と直交する方向である。転写膜1の移動速度は、特に限定されないが、例えば、60〜120分間に、5〜10cm移動するペースとすることができる。
【0090】
そして、第一開口50aから、電気泳動によって排出されるサンプル(分離ゲル52内で分離されたもの)が、転写膜1における排出されるタイミングに従った位置(排出されたタイミングにおいて第一開口50aに対向していた位置)に吸着される。これにより、転写膜1に分離されたサンプルが転写される。
【0091】
転写後、転写膜1を回収し、染色又は免疫反応(ウェスタンブロット法におけるブロッキング及び抗原抗体反応)などに供することができる。その後、蛍光検出器などによって、転写膜1に転写された成分の分離パターンが検出される。このような蛍光検出器は、生体分子分析装置100に組み込まれていてもよく、これによって電気泳動、転写、及び検出の全工程を自動化することができる。
【0092】
以上のように、分離部50が略垂直に起立する構成とすることで、分離部50が陽極バッファー槽30及び陰極バッファー槽40の少なくとも一方の緩衝液に浸漬され、分離ゲル52を水冷することができる。
【0093】
そして、生体分子分析装置100をこのように構成した場合には、(i)転写膜1を陽極バッファー槽30内において移動させる必要があり、(ii)従来技術のように、駆動部を、転写膜1の上流に配置しようとした場合には、陽極バッファー槽30から飛散した緩衝液が当該駆動部の耐用性を低下させるおそれ、及び、当該駆動部が生体分子分析装置100に対する各種操作の妨げになるおそれがあるが、(iii)本実施形態では、駆動部を陽極バッファー槽30下に設け、かつ、アーム部の形状を、陽極バッファー槽30の側壁の外側を通り、当該側壁の上端を回り込んで、当該側壁の内側につながっている形状とすることによって、緩衝液による駆動部の耐用性の低下及び駆動部による各種操作の妨害を避けつつ、転写膜1を陽極バッファー槽30内において首尾よく移動させることができる。これにより、好適な転写膜搬送機構を備えた垂直型の排出転写方式の電気泳動−転写装置を提供することができる。
【0094】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、
図5〜8に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0095】
生体分子分析装置100において、陽極バッファー槽30、陰極バッファー槽40及び分離部50は、生体分子分析装置100から着脱可能になっていてもよい。これにより、陽極バッファー槽30、陰極バッファー槽40及び分離部50を取り外して洗浄することができるため、駆動部に洗浄液等を付着させることなく、容易に第一緩衝液槽を洗浄する
ことができる。
【0096】
図5は、生体分子分析装置100から分離部50を取り外した様子を示す斜視図である。分離部50は、ロック42によって陰極バッファー槽40に固定されているため、ロック42を解除することにより、容易に取り外すことができる。なお、分離部50は、陰極バッファー槽40に着脱可能に取り付けられていればよく、その方式はロック42を使用する方式に限定されない。
【0097】
図6は、生体分子分析装置100からさらに陰極バッファー槽40を取り外した様子を示す斜視図である。陰極バッファー槽40は、特に限定されないが、例えば、ネジ、ロック等によって、陽極バッファー槽30に着脱可能に固定されていればよい。
【0098】
図7は、生体分子分析装置100からさらにキャリア23を取り外した様子を示す斜視図である。キャリア23は、ガイドポール66及びクランプ20に夫々嵌合することによって、ガイドポール66及びクランプ20に結合しているため、容易に取り外すことができる。なお、キャリア23は、少なくとも駆動部から着脱可能になっていればよく、例えば、ガイドポール66がシャフトホルダ65から分離可能になっていてもよい。
【0099】
図8は、生体分子分析装置100からさらに陽極バッファー槽30を取り外した様子を示す斜視図である。上述したように、本実施形態では、アーム部における陽極バッファー槽30の側壁の上端を回り込む部位であるキャリア23を、駆動部から分離することができるため、陽極バッファー槽30を容易に取り外すことができる。陽極バッファー槽30は、特に限定されないが、例えば、嵌合することによって、テーブル31に着脱可能に固定されていればよい。
【0100】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、
図9に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0101】
図9は、本実施形態に係る生体分子分析装置100の概略構成を示す斜視図である。
図9に示すように、本実施形態では、陽極バッファー槽30、陰極バッファー槽40及び分離部50は、例えば、透明な樹脂、ガラス等を用いて、その全体または部分が透明になるように構成されている。また、上述した動作時に全体を覆う蓋についても、透明になるように構成されている。なお、好ましくは、さらにアーム部(クランプ20・21、クランプフレーム22、キャリア23及びガイドポール66)も、その全体または部分が透明になるように構成されていてもよい。これにより、装置の動作中において、分離ゲル52及び転写膜1の様子を観察することができる。これにより、例えば、可視マーカーの移動を肉眼により確認することができる。
【0102】
〔実施形態4〕
本発明の他の実施形態について、
図10に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。本実施形態は、実施形態1とアジャスターの構成が異なっており、その他の構成について、実施形態1と同様である。以下、アジャスターの構成の違いについて説明する。
【0103】
図10の(a)は、実施形態1におけるアジャスターの構成を示す断面図であり、(b)は、本実施形態におけるアジャスターの構成を示す断面図である。両アジャスターは、転写膜1の移動方向前方の端部(第一端部)を固定するクランプ(第一固定部)20、転写膜1の移動方向後方の端部(第二端部)を固定するクランプ(第二固定部)21、および、クランプ20とクランプ21とを連結するクランプフレーム(連結部)22とを備えている。
【0104】
ここで、本実施形態に係るアジャスターでは、
図10の(b)に示すように、クランプフレーム22におけるクランプ21側の部分、直径が細い挿通部22aになっており、挿通部22aがクランプ21に挿通されている。これにより、クランプ21は、クランプフレーム22に沿ってスライド可能に構成されている。さらに、クランプフレーム22と、クランプ21とに挟まれる位置に弾性体22bが設けられており、弾性体22bの弾性力によって、クランプフレーム22に接続されたクランプ20と、クランプ21とが互いに背向する方向に付勢されている。ここで、例えば、クランプ20とクランプ21とを、上記弾性力に逆らって近づけた状態で、転写膜1の両端をクランプ20および21に夫々固定し、クランプ20とクランプ21とを近づけている状態から解放すれば、転写膜1の両端が互いに背向する方向に引っ張られ、転写膜1に一定の張力を付与し、張った状態にすることができる。転写膜1が緩んだ状態であると、転写膜1を移動させたときに、転写膜1と第一開口50aとの隙間が大きくなって、転写結果がぼやける場合があるが、上記構成によれば、転写膜1を張った状態にすることができるため、良好な転写結果を得ることができる。
【0105】
特に、
図4に示すように、ガイド33・34によって転写膜1が支持され、分離部50がそれを押さえて、下に(分離部50とは反対側に)凸になるように折り曲げられる状態において、転写膜1が弾性体22bによって張った状態に維持されていることにより、転写膜1は、折り曲げられていない状態に戻ろうとして、第一開口50aに押しつけられることになる。これにより、転写膜1を第一開口50aに離れないように押し付けて、良好な転写結果を得ることができる。
【0106】
なお、弾性体22bは、その弾性力によってクランプ20・21を互いに背向する方向に付勢するものであれば、その材質、配置等は特に限定されないが、電気分解を起こさない材質で構成されているか、電気分解を起こさない材質で被覆されている事が好ましい。例えば、弾性体22bは、材質は電気分解を起こさない樹脂、または、樹脂で被覆した金属によって構成されたバネであり得る。弾性体22bは、また、スポンジ、ゴム等の弾性体であってもよい。
【0107】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。