特許第6353872号(P6353872)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6353872
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】撮像装置および撮像方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/36 20060101AFI20180625BHJP
   G03B 15/00 20060101ALI20180625BHJP
   G06T 5/50 20060101ALI20180625BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20180625BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20180625BHJP
   H04N 5/232 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   G02B21/36
   G03B15/00 H
   G06T5/50
   G06T1/00 295
   H04N5/225 700
   H04N5/232 133
【請求項の数】16
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-138163(P2016-138163)
(22)【出願日】2016年7月13日
(65)【公開番号】特開2018-10104(P2018-10104A)
(43)【公開日】2018年1月18日
【審査請求日】2017年1月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】安田 拓矢
【審査官】 岡田 弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−014974(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/020038(WO,A1)
【文献】 特開2005−149500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 21/00
G02B 21/06−21/36
G06T 1/00
G06T 3/00−5/50
G06T 9/00−9/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を撮影して全焦点画像を生成する撮像装置であって、
前記対象物を撮影するカメラと、
前記対象物に向けて光を照射する投光部と、
前記カメラの焦点位置を光軸に沿って変化させる移動機構と、
前記カメラ、前記投光部、および前記移動機構を制御するとともに、前記カメラが取得した画像を処理する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
a)前記移動機構により前記焦点位置を変化させつつ、前記カメラによる撮影を行うことにより、複数の撮影画像を取得する工程と、
b)前記複数の撮影画像中の2画像ごとに、倍率変動量と平行移動量とを求めて倍率変動を算出する工程と、
c)前記複数の撮影画像の各々に対して、前記倍率変動の逆補正をかける工程と、
d)前記逆補正後の前記複数の撮影画像を用いて、全焦点画像を生成する工程と、
を実行し、
前記工程b)は、
b−1)前記2画像の一方を、予め設定された倍率ごとに拡大または縮小して、複数の候補画像を作成する工程と、
b−2)前記2画像の他方に対して前記候補画像を平行移動させて、前記候補画像ごとに、マッチングスコアが最大値となる平行移動量を求める工程と、
b−3)前記マッチングスコアの前記最大値が最も大きい前記候補画像を選択画像とする工程と、
b−4)前記選択画像の倍率を、前記2画像間の倍率変動量として決定し、前記選択画像の前記平行移動量を、前記2画像間の平行移動量として決定する工程と、
を有する撮像装置。
【請求項2】
請求項に記載の撮像装置であって、
前記2画像は、前記複数の撮影画像を前記焦点位置順に並べた場合の隣り合う2画像である撮像装置。
【請求項3】
請求項1または請求項に記載の撮像装置であって、
前記工程c)では、倍率が最も小さい前記撮影画像を基準として、他の前記撮影画像を縮小する撮像装置。
【請求項4】
請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の撮像装置であって、
前記制御部は、前記工程a)の後かつ前記工程b)の前に、前記撮像装置の機械的誤差に起因する前記撮影画像の位置のばらつきを補正する工程をさらに実行する撮像装置。
【請求項5】
請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の撮像装置であって、
前記移動機構は、静止した前記対象物に対して前記カメラを移動させる撮像装置。
【請求項6】
請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の撮像装置であって、
容器を保持するステージ
をさらに有し、
前記対象物は、前記容器内に液体またはゲル状の物質とともに保持される撮像装置。
【請求項7】
請求項に記載の撮像装置であって、
前記容器は、ウェルプレートである撮像装置。
【請求項8】
請求項または請求項に記載の撮像装置であって、
前記対象物は、前記容器内に、培養液またはゲル状の培地とともに保持される細胞である撮像装置。
【請求項9】
対象物を撮影して全焦点画像を生成する撮像方法であって、
a)カメラの焦点位置を光軸に沿って変化させつつ、前記カメラによる前記対象物の撮影を行うことにより、複数の撮影画像を取得する工程と、
b)前記複数の撮影画像中の2画像ごとに、倍率変動量と平行移動量とを求めて倍率変動を算出する工程と、
c)前記複数の撮影画像の各々に対して、前記倍率変動の逆補正をかける工程と、
d)前記逆補正後の前記複数の撮影画像を用いて、全焦点画像を生成する工程と、
を有し、
前記工程b)は、
b−1)前記2画像の一方を、予め設定された倍率ごとに拡大または縮小して、複数の候補画像を作成する工程と、
b−2)前記2画像の他方に対して前記候補画像を平行移動させて、前記候補画像ごとに、マッチングスコアが最大値となる平行移動量を求める工程と、
b−3)前記マッチングスコアの前記最大値が最も大きい前記候補画像を選択画像とする工程と、
b−4)前記選択画像の倍率を、前記2画像間の倍率変動量として決定し、前記選択画像の前記平行移動量を、前記2画像間の平行移動量として決定する工程と、
を有する撮像方法。
【請求項10】
請求項に記載の撮像方法であって、
前記2画像は、前記複数の撮影画像を前記焦点位置順に並べた場合の隣り合う2画像である撮像方法。
【請求項11】
請求項9または請求項10に記載の撮像方法であって、
前記工程c)では、倍率が最も小さい前記撮影画像を基準として、他の前記撮影画像を縮小する撮像方法。
【請求項12】
請求項から請求項11までのいずれか1項に記載の撮像方法であって、
前記工程a)の後かつ前記工程b)の前に、前記撮像装置の機械的誤差に起因する前記撮影画像の位置のばらつきを補正する工程をさらに有する撮像方法。
【請求項13】
請求項から請求項12までのいずれか1項に記載の撮像方法であって、
前記工程a)では、静止した前記対象物に対して前記カメラを移動させる撮像方法。
【請求項14】
請求項から請求項13までのいずれか1項に記載の撮像方法であって、
前記対象物は、容器内に液体またはゲル状の物質とともに保持される撮像方法。
【請求項15】
請求項14に記載の撮像方法であって、
前記容器は、ウェルプレートである撮像方法。
【請求項16】
請求項14または請求項15に記載の撮像方法であって、
前記対象物は、前記容器内に、培養液またはゲル状の培地とともに保持される細胞である撮像方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物を撮影して全焦点画像を生成する撮像装置および撮像方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、細胞を高解像度で撮影することによって、細胞の培養状態を観察する装置が記載されている。特許文献1の装置は、容器内に培養液とともに保持された細胞を、カメラで撮影する。このような装置では、1回の撮影で、培養液中の全ての細胞に焦点を合わせることが難しい。このため、カメラの焦点位置を変えて複数回の撮影を行い、得られた複数の画像を合成することによって、全体に焦点が合ったような全焦点画像を生成する。
【0003】
特許文献2には、全焦点画像の生成に関する従来の技術が記載されている。特許文献2の装置では、標本から撮像手段までの光学系が非テレセントリックであるため、カメラの焦点位置を変えると画像の倍率が変化する。このため、特許文献2の装置は、画像の倍率を補正により統一した上で、全焦点画像を生成している(特許文献2の図2等参照)。倍率の補正は、予め保存された拡大光学系の設計情報と、標本の位置情報とに基づいて、行われている(特許文献2の段落0054等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−14974号公報
【特許文献2】特開2011−7872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の装置のように、培養液中の細胞を撮影する場合には、表面張力によって、培養液の表面が凹状のメニスカスを形成する。このため、培養液の表面において光が屈折する。その結果、カメラの焦点位置によって、画像の倍率(視野の広さ)が変動する。したがって、全焦点画像の生成にあたっては、複数回の撮影により得られた画像の倍率を揃えることが必要となる。しかしながら、メニスカスの影響は、容器の形状、培養液の種類、経過時間、培養環境などの様々な条件によって変化する。このため、特許文献2のように、予め用意された情報に基づいて、画像の倍率を補正することはできない。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、カメラの焦点位置を変化させたときの画像の倍率変動が一定でない環境下において、倍率変動を考慮した高品質な全焦点画像を生成できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本願の第1発明は、対象物を撮影して全焦点画像を生成する撮像装置であって、前記対象物を撮影するカメラと、前記対象物に向けて光を照射する投光部と、前記カメラの焦点位置を光軸に沿って変化させる移動機構と、前記カメラ、前記投光部、および前記移動機構を制御するとともに、前記カメラが取得した画像を処理する制御部と、を備え、前記制御部は、a)前記移動機構により前記焦点位置を変化させつつ、前記カメラによる撮影を行うことにより、複数の撮影画像を取得する工程と、b)前記複数の撮影画像中の2画像ごとに、倍率変動量と平行移動量とを求めて倍率変動を算出する工程と、c)前記複数の撮影画像の各々に対して、前記倍率変動の逆補正をかける工程と、d)前記逆補正後の前記複数の撮影画像を用いて、全焦点画像を生成する工程と、を実行し、前記工程b)は、b−1)前記2画像の一方を、予め設定された倍率ごとに拡大または縮小して、複数の候補画像を作成する工程と、b−2)前記2画像の他方に対して前記候補画像を平行移動させて、前記候補画像ごとに、マッチングスコアが最大値となる平行移動量を求める工程と、b−3)前記マッチングスコアの前記最大値が最も大きい前記候補画像を選択画像とする工程と、b−4)前記選択画像の倍率を、前記2画像間の倍率変動量として決定し、前記選択画像の前記平行移動量を、前記2画像間の平行移動量として決定する工程と、を有する。
【0010】
本願の第発明は、第発明の撮像装置であって、前記2画像は、前記複数の撮影画像を前記焦点位置順に並べた場合の隣り合う2画像である。
【0011】
本願の第発明は、第1発明または発明撮像装置であって、前記工程c)では、倍率が最も小さい前記撮影画像を基準として、他の前記撮影画像を縮小する。
【0012】
本願の第発明は、第1発明から第発明までのいずれか1発明の撮像装置であって、前記制御部は、前記工程a)の後かつ前記工程b)の前に、前記撮像装置の機械的誤差に起因する前記撮影画像の位置のばらつきを補正する工程をさらに実行する。
【0013】
本願の第発明は、第1発明から第発明までのいずれか1発明の撮像装置であって、前記移動機構は、静止した前記対象物に対して前記カメラを移動させる。
【0014】
本願の第発明は、第1発明から第発明までのいずれか1発明の撮像装置であって、容器を保持するステージをさらに有し、前記対象物は、前記容器内に液体またはゲル状の物質とともに保持される。
【0015】
本願の第発明は、第発明の撮像装置であって、前記容器は、ウェルプレートである。
【0016】
本願の第発明は、第発明または第発明の撮像装置であって、前記対象物は、前記容器内に、培養液またはゲル状の培地とともに保持される細胞である。
【0017】
本願の第発明は、対象物を撮影して全焦点画像を生成する撮像方法であって、a)カメラの焦点位置を光軸に沿って変化させつつ、前記カメラによる前記対象物の撮影を行うことにより、複数の撮影画像を取得する工程と、b)前記複数の撮影画像中の2画像ごとに、倍率変動量と平行移動量とを求めて倍率変動を算出する工程と、c)前記複数の撮影画像の各々に対して、前記倍率変動の逆補正をかける工程と、d)前記逆補正後の前記複数の撮影画像を用いて、全焦点画像を生成する工程と、を有し、前記工程b)は、b−1)前記2画像の一方を、予め設定された倍率ごとに拡大または縮小して、複数の候補画像を作成する工程と、b−2)前記2画像の他方に対して前記候補画像を平行移動させて、前記候補画像ごとに、マッチングスコアが最大値となる平行移動量を求める工程と、b−3)前記マッチングスコアの前記最大値が最も大きい前記候補画像を選択画像とする工程と、b−4)前記選択画像の倍率を、前記2画像間の倍率変動量として決定し、前記選択画像の前記平行移動量を、前記2画像間の平行移動量として決定する工程と、を有する。
【0020】
本願の第10発明は、第発明の撮像方法であって、前記2画像は、前記複数の撮影画像を前記焦点位置順に並べた場合の隣り合う2画像である。
【0021】
本願の第11発明は、第発明または10発明の撮像方法であって、前記工程c)では、倍率が最も小さい前記撮影画像を基準として、他の前記撮影画像を縮小する。
【0022】
本願の第12発明は、第発明から第11発明までのいずれか1発明の撮像方法であって、前記工程a)の後かつ前記工程b)の前に、前記撮像装置の機械的誤差に起因する前記撮影画像の位置のばらつきを補正する工程をさらに有する。
【0023】
本願の第13発明は、第発明から第12発明までのいずれか1発明の撮像方法であって、前記工程a)では、静止した前記対象物に対して前記カメラを移動させる。
【0024】
本願の第14発明は、第発明から第13発明までのいずれか1発明の撮像方法であって、前記対象物は、容器内に液体またはゲル状の物質とともに保持される。
【0025】
本願の第15発明は、第14発明の撮像方法であって、前記容器は、ウェルプレートである。
【0026】
本願の第16発明は、第14発明または第15発明の撮像方法であって、前記対象物は、前記容器内に、培養液またはゲル状の培地とともに保持される細胞である。
【発明の効果】
【0027】
本願の第1発明〜第16発明によれば、カメラの焦点位置を変化させたときの画像の倍率変動が一定でない環境下においても、複数の撮影画像から倍率変動を求めることができる。このため、当該倍率変動を考慮した、高品質な全焦点画像を生成できる。また、倍率変動の中心が一定でない環境下においても、平行移動量を求めることによって、各撮影画像中の対象物の位置を、高精度に一致させることができる。
【0029】
特に、本願の第発明および第10発明によれば、2画像の間で、同一の対象物を対応付けやすい。
【0030】
特に、本願の第発明および第11発明によれば、撮影画像の解像度が低下せず、補間処理を行う必要もない。
【0031】
特に、本願の第発明および第12発明によれば、撮影画像間における倍率変動を、より正確に算出できる。
【0032】
特に、本願の第発明および第13発明によれば、倍率変動の大きさが、撮影中に変化することを抑制できる。
【0033】
特に、本願の第発明および第14発明によれば、液体またはゲル状の物質の表面形状の影響で、撮影画像の倍率変動が生じる。したがって、本発明が特に有用である。
【0034】
特に、本願の第発明および第15発明によれば、液体またはゲル状の物質の表面形状が、より撮影画像に影響しやすくなる。したがって、本発明がより有用である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】ウェルプレートの一例を示す斜視図である。
図2】撮像装置の構成を示した図である。
図3】制御部と、撮像装置内の各部との接続を示したブロック図である。
図4】撮影処理の流れを示したフローチャートである。
図5】1つのウェルにおける撮影処理の様子を示した図である。
図6】1つのウェルについて取得された5つの撮影画像の例を示した図である。
図7】撮影画像を単純に合成した場合の全焦点画像の例(比較例)を示した図である。
図8】全焦点画像を生成するための画像処理の流れを示したフローチャートである。
図9】倍率変動量および平行移動量の算出処理の例を示したフローチャートである。
図10】倍率変動量および平行移動量の算出処理の様子を、概念的に示した図である。
図11】逆補正後の5つの撮影画像の例を示した図である。
図12】逆補正後の撮影画像を合成した場合の全焦点画像の例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0037】
<1.撮像装置の構成>
図1は、撮像装置1にセットされるウェルプレート9の一例を示す斜視図である。ウェルプレート9は、複数のウェル(窪部)91を有する略板状の試料容器である。ウェルプレート9の材料には、例えば、光を透過する透明な樹脂が使用される。図1に示すように、複数のウェル91は、ウェルプレート9の上面に、規則的に配列されている。各ウェル91内には、培養液92とともに、撮影対象物となる複数の細胞93が保持される。なお、上面視におけるウェル91の形状は、図1のような円形であってもよく、矩形等の他の形状であってもよい。
【0038】
図2は、本発明の一実施形態に係る撮像装置1の構成を示した図である。この撮像装置1は、ウェルプレート9内の複数の細胞93を、カメラ40の焦点位置を変化させつつ複数回撮影して、全ての細胞93に焦点が合ったようなボケの少ない全焦点画像を生成する装置である。
【0039】
撮像装置1は、例えば、医薬品の研究開発分野において、医薬品の候補となる化合物を絞り込むスクリーニング工程に、使用される。スクリーニング工程の担当者は、ウェルプレート9の複数のウェル91に、濃度や組成の異なる化合物を添加する。そして、撮像装置1において、ウェルプレート9の各ウェル91内の細胞93の画像を取得する。その後、得られた画像に基づいて、細胞93の培養状態を比較・分析することにより、培養液92に添加された化合物の効用を検証する。
【0040】
ただし、撮像装置1は、IPS細胞やES細胞等の多能性幹細胞の研究・開発において、細胞の分化などを観察するために用いられてもよい。
【0041】
図2に示すように、本実施形態の撮像装置1は、ステージ10、投光部20、投光部移動機構30、カメラ40、カメラ移動機構50、および制御部60を備えている。
【0042】
ステージ10は、ウェルプレート9を保持する載置台である。撮像装置1内におけるステージ10の位置は、少なくとも撮影時には固定される。ステージ10の中央には、上下に貫通する矩形の開口部11が設けられている。また、ステージ10は、開口部11の縁に、環状の支持面12を有する。ウェルプレート9は、開口部11に嵌め込まれるとともに、支持面12によって水平に支持される。したがって、各ウェル91の上部および下部は、ステージ10に塞がれることなく露出する。
【0043】
投光部20は、ステージ10に保持されたウェルプレート9の上方に配置されている。投光部20は、LED等の光源を有する。後述する撮影時には、投光部20内の光源が発光する。これにより、投光部20から下方へ向けて、光が照射される。なお、投光部20は、カメラ40とは反対側からウェルプレート9に向けて、光を照射するものであればよい。したがって、投光部20の光源自体は、ウェルプレート9の上方から外れた位置に配置され、ミラー等の光学系を介して、ウェルプレート9に光が照射される構成であってもよい。
【0044】
投光部移動機構30は、ステージ10に保持されたウェルプレート9の上面に沿って、投光部20を水平に移動させる機構である。投光部移動機構30には、例えば、モータの回転運動をボールねじを介して直進運動に変換する機構が用いられる。撮像装置1は、投光部移動機構30を動作させることにより、各ウェル91の上方位置に、投光部20を配置することができる。なお、図2では、投光部20の移動方向として、矢印A1の1方向のみが示されている。しかしながら、投光部移動機構30は、投光部20を、ウェルプレート9の上面に沿って2方向(図2中の左右方向および奥行き方向)に移動させるものであってもよい。
【0045】
カメラ40は、ステージ10に保持されたウェルプレート9の下方に配置されている。カメラ40は、レンズ等の光学系と、CCDやCMOS等の撮像素子とを有する。後述する撮影時には、投光部20からウェルプレート9の一部分へ向けて光を照射しつつ、カメラ40が、ウェルプレート9の当該一部分を撮影する。これにより、ウェルプレート9内の細胞93の画像を、デジタルデータとして取得することができる。取得された撮影画像は、カメラ40から制御部60へ入力される。
【0046】
カメラ移動機構50は、カメラ40の姿勢を維持しつつ、カメラ40の高さおよび水平方向の位置を変化させる機構である。図2に示すように、カメラ移動機構50は、昇降移動機構51と水平移動機構52とを有する。
【0047】
昇降移動機構51は、カメラ40を上下に移動させる機構である。昇降移動機構51には、例えば、モータの回転運動をボールねじを介して直進運動に変換する機構が用いられる。昇降移動機構51を動作させると、カメラ40の高さが変化する。これにより、ステージ10に保持されたウェルプレート9とカメラ40との距離(すなわち、細胞93とカメラ40との間の撮影距離)が変化する。本実施形態のカメラ40は、一定の焦点距離を有する。このため、カメラ40の位置が上下に移動すると、カメラ40の焦点位置も、光軸に沿って上下に移動する。
【0048】
水平移動機構52は、カメラ40および昇降移動機構51を、一体として水平に移動させる機構である。水平移動機構52には、例えば、モータの回転運動をボールねじを介して直進運動に変換する機構が用いられる。撮像装置1は、水平移動機構52を動作させることにより、各ウェル91の下方位置に、カメラ40を配置することができる。なお、図2では、水平移動機構52によるカメラ40の移動方向として、矢印A2の1方向のみが示されている。しかしながら、カメラ移動機構50は、カメラ40を、ウェルプレート9の下面に沿って2方向(図2中の左右方向および奥行き方向)に移動させるものであってもよい。
【0049】
なお、上述した投光部移動機構30と、水平移動機構52とは、同期駆動される。これにより、投光部20とカメラ40とは、上面視において、常に同じ位置に配置される。すなわち、投光部20とカメラ40とは、同じ向きに同じ距離だけ移動し、あるウェル91の下方位置にカメラ40が配置されたときには、必ず、そのウェル91の上方位置に投光部20が配置される。
【0050】
制御部60は、例えば、コンピュータにより構成される。制御部60は、撮像装置1内の各部を動作制御する機能と、カメラ40から入力された撮影画像に基づいて全焦点画像を生成する機能と、を有する。図3は、制御部60と、撮像装置1内の各部との接続を示したブロック図である。図3中に概念的に示したように、制御部60は、CPU等のプロセッサ61、RAM等のメモリ62、およびハードディスクドライブ等の記憶部63を有する。記憶部63内には、撮像装置1内の各部を動作制御するための制御プログラムP1と、カメラ40から入力された撮影画像に基づいて全焦点画像を生成するための画像処理プログラムP2と、が記憶されている。
【0051】
また、図3に示すように、制御部60は、上述した投光部20、投光部移動機構30、カメラ40、昇降移動機構51、および水平移動機構52と、それぞれ通信可能に接続されている。制御部60は、制御プログラムP1に従って、上記の各部を動作制御する。これにより、ウェルプレート9の各ウェル91に保持された細胞93の撮影処理が進行する。また、制御部60は、カメラ40から入力された撮影画像を、画像処理プログラムP2に従って処理することにより、全焦点画像を生成する。
【0052】
<2.撮影処理について>
続いて、上述した撮像装置1の動作について、説明する。図4は、撮像装置1おける撮影処理の流れを示したフローチャートである。図5は、1つのウェル91における撮影処理の様子を示した図である。
【0053】
撮像装置1のステージ10に、ウェルプレート9がセットされて、制御部60に動作開始の指示が入力されると、制御部60は、まず、昇降移動機構51を動作させる。これにより、カメラ40を所定の高さに配置する(ステップS1)。図5に示すように、本実施形態では、カメラ40の高さを5段階(第1高さH1〜第5高さH5)に変更できるものとする。撮影処理の開始時には、まず、最も高い第1高さH1にカメラ40が配置される。
【0054】
次に、制御部60は、投光部移動機構30および水平移動機構52を、動作させる。これにより、投光部20およびカメラ40を、撮影すべきウェル91の上下に移動させる(ステップS2)。そして、制御部60は、投光部20およびカメラ40を動作させて、当該ウェル91内に保持された細胞93を撮影する(ステップS3)。すなわち、投光部20から下方へ向けて光Lを照射しつつ、カメラ40による撮影を行う。これにより、当該ウェル91内に保持された細胞93の、第1高さH1からの撮影画像が得られる。
【0055】
続いて、制御部60は、撮影対象となる次のウェル91があるか否かを判断する(ステップS4)。次のウェル91がある場合には(ステップS4においてyes)、投光部移動機構30および水平移動機構52を、動作させる。これにより、投光部20およびカメラ40を、次のウェル91の上下に移動させる(ステップS2)。そして、制御部60は、投光部20およびカメラ40を動作させて、当該ウェル91内に保持された細胞93を撮影する(ステップS3)。
【0056】
このように、制御部60は、投光部20およびカメラ40の移動(ステップS2)と、撮影(ステップS3)とを繰り返す。これにより、ウェルプレート9の撮影対象となる全てのウェル91について、第1高さH1から撮影した撮影画像を取得する。
【0057】
やがて、未撮影のウェル91が無くなると(ステップS4においてno)、制御部60は、カメラ40の高さを変更するか否かを判断する(ステップS5)。ここでは、予め用意された5つの高さH1〜H5のうち、まだ撮影を行っていない高さが残っていれば、カメラ40の高さを変更すべきと判断する(ステップS5においてyes)。例えば、第1高さH1における撮影処理が終了すると、制御部60は、次の高さである第2高さH2に、カメラ40の高さを変更すべきと判断する。
【0058】
カメラ40の高さを変更する場合、制御部60は、昇降移動機構51を動作させて、カメラ40を、変更すべき高さに移動させる(ステップS1)。これにより、カメラ40の焦点位置を変化させる。そして、上述したステップS2〜S4の処理を繰り返す。これにより、ウェルプレート9の各ウェル91について、変更後の高さから撮影した細胞93の撮影画像を取得する。
【0059】
以上のように、制御部60は、カメラ40の高さの変更(ステップS1)と、複数のウェル91についての撮影画像の取得(ステップS2〜S4)とを繰り返す。これにより、ウェルプレート9の複数のウェル91のそれぞれについて、5つの高さH1〜H5から撮影した5つ撮影画像が得られる。
【0060】
<3.全焦点画像の生成について>
続いて、カメラ40から入力された複数の撮影画像に基づいて、全焦点画像を生成するための画像処理について説明する。
【0061】
上述したステップS1〜S5が終了すると、ウェルプレート9のウェル91毎に、撮影距離の異なる5つの撮影画像D1〜D5が得られる。ただし、図5に示すように、ウェル91内の培養液92の表面は、表面張力の影響で凹状のメニスカスを形成する。このため、投光部20から照射された光Lは、培養液92の表面を通過する際に屈折して、拡散光となる。したがって、5つの撮影画像D1〜D5は、互いに倍率が異なる。また、光Lの拡散の大きさは、ウェル91毎に異なる。したがって、5つの撮影画像D1〜D5の倍率変動量も、ウェル91毎に相違する。
【0062】
図6は、1つのウェル91について取得された5つの撮影画像D1〜D5の例を示した図である。撮影画像D1〜D5は、それぞれ、高さH1〜H5に配置されたカメラ40の撮影画像である。各撮影画像D1〜D5には、ウェル91内に保持された2つの細胞93のうちの1つまたは2つの画像が含まれている。図中右側の細胞93は、高さH2に配置されたカメラ40の撮影画像D2において、最も焦点が合っている。図中左側の細胞93は、高さH4に配置されたカメラ40の撮影画像D4においてに、最も焦点が合っている。
【0063】
また、上述したメニスカスの影響により、撮影画像D1〜D5の倍率は、カメラ40の高さが低くなるにつれて(すなわち、細胞93とカメラ40との間の撮影距離が長くなるにつれて)拡大する。したがって、5つの撮影画像D1〜D5のうち、撮影画像D1は最も倍率が小さく、撮影画像D5は最も倍率が大きい。このため、これらの撮影画像D1〜D5を単純に合成すると、図7の全焦点画像DA(比較例)のように、各細胞93の周囲においてボケが大きくなる。
【0064】
図8は、5つの撮影画像D1〜D5から、1つの全焦点画像DAを生成するための画像処理の流れを示したフローチャートである。
【0065】
5つの撮影画像D1〜D5が得られると、制御部60は、まず、各撮影画像D1〜D5の誤差を補正する(ステップS6)。ここでは、撮像装置1の機械的誤差に起因する各撮影画像D1〜D5の位置のばらつきを補正する。例えば、水平移動機構52に既知の位置決め誤差がある場合には、その位置決め誤差の分だけ、各撮影画像D1〜D5の位置を補正する。これにより、次のステップS7において、5つの撮影画像D1〜D5の間の倍率変動量および平行移動量を、より正確に算出できる。
【0066】
次に、制御部60は、5つの撮影画像D1〜D5の間の倍率変動量および平行移動量を算出する(ステップS7)。ここでは、5つの撮影画像D1〜D5の間で、細胞93の大きさや細胞93の位置が、どれだけ変化しているかを検出する。これにより、培養液92のメニスカスに起因する倍率変動の大きさを算出する。
【0067】
図9は、ステップS7における処理の例を示したフローチャートである。本実施形態では、5つの撮影画像D1〜D5を焦点位置順に並べた場合の隣り合う2画像ごとに、倍率変動量と平行移動量とを求める。図10は、2つの撮影画像D2,D3について、倍率変動量と平行移動量とを求めるときの処理の様子を、概念的に示した図である。
【0068】
ステップS7では、まず、2つの撮影画像の一方を、予め設定された倍率ごとに拡大または縮小して、複数の候補画像を作成する(ステップS71)。図10の例では、2つの撮影画像D2,D3のうち、倍率の大きい(視野が狭い)方の撮影画像D3を、予め設定された倍率ごとに縮小して、複数の候補画像D31,D32,D33,・・・を作成している。
【0069】
次に、2つの撮影画像の他方と、作成された複数の候補画像のそれぞれとの間で、テンプレートマッチングを行う(ステップS72)。図10の例では、矢印Tのように、撮影画像D2と、複数の候補画像D31,D32,D33,・・・のそれぞれとの間で、テンプレートマッチングを行う。具体的には、撮影画像D2に対して、各候補画像D31,D32,D33,・・・を平行移動させる。そして、各位置におけるマッチングスコアを算出する。マッチングスコアには、SSD(Sum of Squared Difference)、SAD(Sum of Absolute Difference)、NCC(Normalized Cross-Correlation)、ZNCC(Zero-mean Normalized Cross-Correlation)などの既知の手法により算出される、画像の類似度を表す評価値を用いればよい。
【0070】
制御部60は、候補画像D31,D32,D33,・・・ごとに、マッチングスコアの最大値Sと、そのときの平行移動量Mとを求める(ステップS73)。そして、マッチングスコアの最大値Sが最も大きい候補画像を、その撮影画像D3についての選択画像とする(ステップS74)。選択画像が決まると、制御部60は、選択画像の倍率を、2つの撮影画像D2,D3の間の倍率変動量として決定する。また、選択画像の上記のマッチングスコアが最大値Sとなるときの平行移動量Mを、2つの撮影画像D2,D3の間の平行移動量として決定する(ステップS75)。
【0071】
制御部60は、5つの撮影画像D1〜D5を焦点位置順に並べた場合の隣り合う2画像ごとに、以上のステップS71〜S75の処理を実行する。これにより、2画像ごとに、倍率変動量と平行移動量とを決定する。
【0072】
2画像間の倍率変動量と平行移動量とが決まると、制御部60は、5つの撮影画像D1〜D5のうちの1つ(例えば撮影画像D1)を基準画像として、その基準画像に対する他の撮影画像の倍率変動量と平行移動量とを、算出する(ステップS76)。例えば、撮影画像D1に対する撮影画像D3の倍率変動量は、2つの撮影画像D1,D2の間の倍率変動量と、2つの撮影画像D2,D3の間の倍率変動量とを、掛け合わせた値とする。また、撮影画像D1に対する撮影画像D3の平行移動量は、2つの撮影画像D1,D2の間の平行移動量と、2つの撮影画像D2,D3の間の平行移動量とを、足し合わせた値とする。
【0073】
図8に戻る。ステップS7の処理が終わると、次に、制御部60は、5つの撮影画像D1〜D5のうち、基準画像以外の撮影画像を、ステップS76で算出された倍率変動量および平行移動量に基づいて、逆補正する(ステップS8)。図11は、逆補正後の5つの撮影画像D1〜D5の例を示した図である。図11の例では、倍率が最も小さい撮影画像D1を基準として、他の4つの撮影画像D2〜D5を、それぞれ、倍率変動量に基づいて縮小させるとともに、平行移動量に基づいて平行移動させている。
【0074】
その後、制御部60は、基準画像と、逆補正後の4つの撮影画像とを用いて、全焦点画像DAを生成する(ステップS9)。上述したステップS8の逆補正を行うと、図11のように、各撮影画像D1〜D5における細胞93の位置は一致する。このため、これらの撮影画像D1〜D5を合成することによって、図12のように、ボケの少ない全焦点画像DAを得ることができる。
【0075】
特に、この撮像装置1は、倍率変動量および平行移動量を、予め制御部60内に記憶するのではなく、カメラ40から入力された撮影画像D1〜D5に基づいて、倍率変動量および平行移動量を算出する。このため、培養液92のメニスカスの形状によって、倍率変動量および平行移動量が変化しても、その倍率変動量および平行移動量を考慮して、全焦点画像DAを生成できる。したがって、ウェルプレート9のウェル91毎に、高品質な全焦点画像DAを生成することができる。
【0076】
<4.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。
【0077】
撮影画像の倍率変動の中心が、ほぼ一定の位置となる場合には、上述したステップS8において、平行移動量の逆補正を省略してもよい。ただし、倍率変動の中心位置が変動しやすい場合には、上記の実施形態のように、各撮影画像を、倍率変動量および平行移動量の双方について、逆補正する方がよい。これにより、各撮影画像D1〜D5中の細胞93の位置を、高精度に一致させることができる。
【0078】
また、上記の実施形態では、5つの撮影画像D1〜D5を焦点位置順に並べた場合の隣り合う2画像ごとに、倍率変動量と平行移動量とを求めていた。しかしながら、互いに離れた2画像の間で、倍率変動量と平行移動量とを求めてもよい。ただし、隣り合う2画像の間では、各撮影画像中の細胞93の変化が小さい。このため、2つの撮影画像の間で、同一の細胞93を対応付けやすい。したがって、ステップS72のテンプレートマッチングによって、倍率変動量と平行移動量とを、より精度よく求めることができる。
【0079】
また、上記の実施形態では、ステップS75において、選択画像の倍率および平行移動量の値そのものを、2画像間の倍率変動量および平行移動量としていた。しかしながら、倍率変動量および平行移動量は、パラボラフィッティング等の関数近似によって、より高精度に算出してもよい。
【0080】
また、上記の実施形態では、ステップS8において、最も倍率の小さい撮影画像D1を基準として、他の撮影画像D2〜D5を縮小していた。このようにすれば、撮影画像D2〜D5の解像度が低下せず、補間処理を行う必要もない。しかしながら、ステップS8にでは、撮影画像D2〜D5のうちのいずれか1つを基準画像として、他の画像を拡大または縮小してもよい。
【0081】
また、上記のステップS7の処理を行う際に、撮影画像D1〜D5を縮小しておくことによって、制御部60の演算負担を減らすようにしてもよい。
【0082】
また、上記の実施形態では、観察対象となる細胞93が、ウェルプレート9の複数のウェル91内に保持されていた。しかしながら、細胞93は、ウェルプレート9以外の容器に保持されていてもよい。例えば、細胞93は、シャーレ内に保持されていてもよい。ただし、上記の実施形態のように、ウェルプレート9を使用する場合には、細胞93が保持される個々のウェル91が、比較的小さい。したがって、培養液92のメニスカスが、より撮影画像に影響しやすくなる。したがって、本発明が特に有用である。
【0083】
また、上記の実施形態では、ウェルプレート9内に培養液92とともに細胞93が保持されていた。しかしながら、細胞93は、ゲル状の培地とともに保持されていてもよい。ゲル状の培地も、表面形状が一定にはならない。このため、培地の表面形状の影響で、撮影距離に対する撮影画像の倍率変動が生じる。したがって、撮影画像を単純に合成するだけでは、綺麗な全焦点画像が得られない。しかしながら、上記の実施形態と同様に、倍率変動量および平行移動量を求めて逆補正を行えば、各撮影画像中の細胞93の位置を、揃えることができる。したがって、ボケの少ない全焦点画像を生成することができる。
【0084】
また、上記の実施形態では、単体の細胞93を撮影対象物としていた。しかしながら、撮影対象物は、複数の細胞が立体的に集合した細胞集塊(スフェロイド)であってもよい。また、撮影対象物は、容器内に液体またはゲル状の物質とともに保持される、細胞以外の物体であってもよい。
【0085】
また、上記の実施形態では、撮影対象物の上方に投光部20が配置され、撮影対象物の下方にカメラ40が配置されていた。しかしながら、撮影対象物の下方に投光部20が配置され、撮影対象物の上方にカメラ40が配置されていてもよい。また、投光部20とカメラ40とが、撮影対象物に対して同じ側に配置され、投光部20から出射された光の反射光が、カメラ40に入射する構成であってもよい。
【0086】
また、上記の実施形態では、カメラ40自体を昇降移動させることにより、カメラ40の焦点位置を光軸に沿って変化させていた。しかしながら、カメラ40の位置を固定して、レンズ等の光学系を移動させることにより、カメラ40の焦点位置を光軸に沿って変化させてもよい。また、撮影対象物を保持する容器を昇降移動させることにより、容器に対するカメラ40の焦点位置を、相対的に変化させてもよい。すなわち、本発明における「移動機構」は、光学系または容器を移動させる機構であってもよい。
【0087】
また、上記の実施形態では、撮影対象物を保持する容器の位置が固定され、投光部20およびカメラ40が水平方向に移動していた。しかしながら、投光部20およびカメラ40の位置を固定して、容器を水平方向に移動させてもよい。ただし、撮影の途中で培養液92の表面形状が変化すると、撮影画像の倍率変動量および平行移動量を、正確に算出しにくい。このため、上記の実施形態のように、撮影対象物の位置は、固定されていることが好ましい。
【0088】
また、上記の実施形態では、カメラ40の高さが5段階に変更可能であり、各ウェル91について、5つの撮影画像を取得していた。しかしながら、ウェル91毎の撮影画像の数は、2〜4つであってもよく、6つ以上であってもよい。
【0089】
また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0090】
1 撮像装置
9 ウェルプレート
10 ステージ
20 投光部
30 投光部移動機構
40 カメラ
50 カメラ移動機構
51 昇降移動機構
52 水平移動機構
60 制御部
91 ウェル
92 培養液
93 細胞
P1 制御プログラム
P2 画像処理プログラム
L 光
D1,D2,D3,D4,D5 撮影画像
D31,D32,D33 候補画像
DA 全焦点画像
S マッチングスコアの最大値
M 平行移動量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12