(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記自己架橋型アクリル樹脂は、ガラス転移温度が−30〜90℃、数平均分子量が3000〜50000、及び重量平均分子量が10000〜200000であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の印刷層付き基材の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの記載に限定されるものではなく、以下の例示以外についても、本発明の主旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
【0012】
<基材>
本発明において使用される基材としては、後述の下塗り塗装における焼付硬化に耐え得る耐熱性を有するものであれば、特に限定されることなく使用することができる。好ましくは、基材到達最高温度が少なくとも140℃で、少なくとも60秒間の焼付に耐えるものであることがよい。このような材料としては、例えば、金属(例えば、ステンレス、アルミニウム、鉄、銅、チタンなど、及びその合金)などが挙げられ、これらの2種以上の材料を組み合わせたものでもよい。また、予め基材表面に、脱脂処理、化成処理、研磨などの前処理やシーラー及び/又はプライマー塗装等が施されていてもよい。基材表面は平滑であっても、又は凹凸を有するものや立体物であってもよい。本発明においては、このような材料及び性状を有する基材を用いることにより、とりわけ、家具、建材、金属製小物の用途で好適に使用することができる。
【0013】
<下塗り塗装>
本発明においては、基材に対して、後述の活性エネルギー線硬化型インクをインクジェット塗装するに際して、その前に下塗り塗装を行って下塗り塗膜を形成する。そして、本発明においては、当該下塗り塗膜を形成するための下塗り塗料中には、下記式(1)で表される架橋性官能基を有する自己架橋型アクリル樹脂を塗膜形成樹脂の必須成分として含有する。
【化2】
〔式(1)中、R
1は、水素原子又は炭素数が1〜8のアルキル基である。〕
当該式(1)で表される架橋性官能基を基体となるアクリル樹脂骨格中に有することにより、下塗り塗装後に施される焼付により当該官能基どうしが架橋(或いは、樹脂骨格中に水酸基を有する場合には、当該官能基と水酸基とが架橋する場合も含む)を形成し、それにより、硬度や耐擦り傷性などに優れた硬化塗膜が下塗り塗膜として形成される。当該官能基(或いは、それと水酸基)の熱処理(焼付)による架橋の機序は公知の通りであり、熱処理により式中のR
1(水素原子又はアルキル基)の脱離や、それと同時に引き起こされる脱水や、それに引き続きホルムアルデヒド(CH
2O)が脱離されることにより、最終的に−NH−CH
2−NH−の結合が生じることによるものであることが確認されている。本発明においては、このような式(1)の官能基による架橋を形成する機序を、前記した「自己架橋」と呼ぶものとする。
【0014】
そして、本発明においては、このような式(1)の架橋性官能基は、樹脂固形分に対して、3〜20質量%の割合で含有されることが好ましく、より好ましくは、5〜15質量%の割合である。このような割合で当該架橋性官能基を下塗り塗料中に含むことにより、これをその後の焼付により十分に硬化させて得られる下塗り塗膜は、後述する活性エネルギー線硬化型インクとの付着性に優れるようになると共に、塗膜としての性能も優れるようになるので好ましい。なお、本発明においては、当該式(1)の架橋性官能基を上記の割合で含むのであれば、従来技術において使用されている架橋剤(例えば、メラミン、ベンゾグアナミン、尿素、ブロックイソシアネートなどの化合物又は樹脂など)は使用しなくてもよいが、これら従来から使用されている架橋剤(架橋性官能基)についても、本発明の目的の範囲内で使用することが完全に排除されるものではない。好ましくは、架橋成分として上記式(1)で表される架橋性官能基だけを含むことが、後述の活性エネルギー線硬化型インクとの付着性を良好なものとする観点において望ましい。
【0015】
また、本発明における前記アクリル樹脂については、活性エネルギー線硬化型インクとの付着性や塗膜としての性能の観点から、その含有量(樹脂固形分)が下塗り塗料固形分中30〜100質量%であることが好ましく、より好ましくは、50〜100質量%であることがよい。また、当該アクリル樹脂については、活性エネルギー線硬化型インクとの付着性と塗膜としての性能の観点で、好ましくは、その数平均分子量(Mn)が3000〜50000、重量平均分子量(Mw)が10000〜200000、ガラス転移温度(Tg)が−30〜90℃であることがよく、より好ましくは、数平均分子量(Mn)が10000〜30000、重量平均分子量(Mw)が50000〜150000、ガラス転移温度(Tg)が−20〜60℃であることがよい。特に、ガラス転移温度が上記の範囲内の樹脂を使用することにより、後述の活性エネルギー線硬化型インクとの付着性に優れるため好ましい。
【0016】
また、本発明における前記アクリル樹脂については、以下のように得ることができる。すなわち、前記式(1)で表される架橋性官能基を有する下記式(2)で表されるアクリルモノマー又はメタクリルモノマー〔以下、これをまとめて「(メタ)アクリルモノマー」のように記載することがある。〕だけを使用してそれを公知の方法で重合して重合体とするか、又は当該式(2)で表される(メタ)アクリルモノマーとそれ以外のエチレン性不飽和基を有するモノマー及び/又はオリゴマーとを、公知の方法で共重合させたアクリル樹脂共重合体とすることにより得ることができるが、アクリル樹脂中における前記式(1)で表される架橋性官能基の割合を前述のように調整することが容易であるとの観点から、好ましくは、アクリル樹脂共重合体として使用することがよい。なお、このような本発明のアクリル樹脂の具体例としては、ダイヤナールSE5661、SE5456、SE5102、SE5482、RE1616、LR691(いずれも三菱レイヨン社製)等が挙げられる。
【化3】
〔式(2)中、R
1は、水素原子又は炭素数が1〜8のアルキル基であり、R
2は水素原子又はメチル基である。〕
このうち、式(2)で表わされる化合物としては、反応性の観点から、好ましくは、N−n−ブトキシメチルアクリルアミド、N−イソブトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリ
ルアミド及びN−メチロールアクリルアミドからなる群から選択された1種又は2種以上であることがよい。
【0017】
なお、式(2)で表される(メタ)アクリルモノマー以外のエチレン性不飽和基を有するモノマー及び/又はオリゴマーとしては、本発明の目的の範囲内で公知のものを適宜選択できるが、具体的には、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−n−ヘキシル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、スチレンなどが挙げられる。
【0018】
また、本発明の下塗り塗料中の塗膜形成樹脂としては、上記のアクリル樹脂以外の樹脂として、例えば、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、エポキシ樹脂を、本発明の目的の範囲内で使用することができる。この際、これらの他の樹脂については、インクの付着性と塗膜性能の観点から、下塗り塗料の塗膜形成樹脂固形分中、70質量%以下、より好ましくは、50質量%以下とすることがよい。
【0019】
また、本発明における下塗り塗料には、樹脂を溶解させるための溶剤(例えば、エステル系溶剤、アセテート系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、グリコール系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤など)を含むことができ、溶剤の含有量は、1〜80質量%であることが好ましい。また、各種機能を付与するため、着色及び/又は体質顔料、増粘剤、分散剤、消泡剤、沈降防止剤、防かび剤、防腐剤、紫外線吸収剤、又は光安定剤等が適宜添加されてもよい。これらの成分については、本発明の目的の範囲内で適宜調整して使用することができるが、塗膜物性の観点から、下塗り塗料中において体質顔料は50質量%以下、その他の添加剤は5質量%以下とすることが好ましい。
【0020】
そして、このような組成を有する下塗り塗料を基材に対して塗布する方法としては、スプレー、カーテンフロー、ロールコーター、ローラーカーテン、ダイコーター等の従来から使用されている各種塗装手段を用いることができ、必要に応じて、2回以上に分けて塗装、すなわち塗り重ねることもできる。下塗り塗料の塗布量としては、一回の塗装当たりのドライ塗布量が2〜80g/m
2であることが好ましい。下塗り塗装後の膜厚については、用途にもよるため限定されるものではないが、薄くしすぎると活性エネルギー線硬化型インクに侵されて膜がこわれる。また、厚くしすぎると内部に溶剤が残留して、ワキなどの塗膜欠陥が発生することから、通常5〜40μm、好ましくは、10〜25μmであることがよい。
【0021】
そして、下塗り塗料を前記の通り基材に対して塗布した後には、公知の方法により焼付を施して下塗り塗料を硬化させて下塗り塗膜を形成させる。この際、焼付条件としては、下塗り塗料を十分に硬化させることができるのであれば、適宜調整することが可能であるが、通常は基材到達最高温度150〜240℃で20秒〜60分、より具体的には、210℃で60秒程度とする。なお、下塗り塗膜は、この後に行われる活性エネルギー線硬化型インクのインクジェットにより形成する印刷層が事後の熱処理などにより動いたり割れや剥がれなどが発生したりしないように十分に硬化させることが望ましい。硬化の程度については、例えば、当業界において知られているゲル分率として規定することが可能であり、また、溶剤ラビング試験などにより確認することができる。本発明においては、下塗り塗膜のゲル分率が75%以上であることが、少なくとも“硬化”した状態と定めることができ、好ましくは、ゲル分率が80%超過であり、より好ましくはゲル分率が90%以上となるように硬化することがよく、95%以上として100%に近づけるように硬化することがさらに好ましい。当該ゲル分率については、前記焼付条件を調整することにより調整することが可能であり、後述する実施例にて示す方法のように、例えば、テトラヒドロフランに、温度23℃程度で48時間程度浸漬し、濾過や乾燥を施すことによって、未硬化に相当する塗膜が除かれた残存塗膜の質量と元の塗膜の質量との比から定めることができる。
【0022】
<印刷層>
本発明において、前述のように基材に下塗り塗膜を形成した後には、下塗り塗膜の表面に活性エネルギー線硬化型インク(インク組成物)をインクジェット方式により塗装して、基材の一部又は全面に対して模様や画像などの印刷層を形成する。当該印刷層としては、基材の一部又は全面を線により模様付けしたような形態の印刷層も含まれる。当該印刷層の膜厚については、印刷層の形状や形態によるため限定はされないものの、通常1〜30μmとされることが好ましい。ここで、活性エネルギー線硬化型インクとしては、紫外線(UV)又は電子線(EB)等の各種活性エネルギー線の照射により硬化して、硬化塗膜が形成されるものが使用できる。好ましくは、コスト及び設備投資の観点から、UV硬化型のインクがよい。
【0023】
活性エネルギー線硬化型インクを硬化させて硬化塗膜を形成する際の硬化反応としては、アニオン重合、カチオン重合又はラジカル重合等の各種反応機構を用いることができ、硬化性を向上させるために、これらの2種以上を組み合わせることもできるが、ラジカル重合によるものであることが好ましい。このような活性エネルギー線硬化型インクには、エチレン性不飽和基を有するモノマー及び/又はオリゴマーが含有される。ここで、本発明におけるエチレン性不飽和基を有するモノマー及び/又はオリゴマーとしては、後述するように、エチレン性不飽和基(以下、単に、「官能基」という場合が有る。)を複数有するものが1種又は2種以上組み合わせて使用される場合があるが、その場合に含まれるモノマー及び/又はオリゴマーのエチレン性不飽和基の数に基づいて定められる平均官能基数が2以下であることが、下地に対する付着性と上塗り塗料に対する付着性の観点において好ましい。なお、エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイルオキシ基が好適である。
【0024】
このようなラジカル重合性モノマーとしては、官能基の数に応じて、官能基数が1である単官能モノマー、官能基数が2である2官能モノマー及び官能基数が3以上の多官能モノマーに分類できる。
このうち、単官能モノマーは、その分子量が1000以下であるものが好ましく、具体例としては、ステアリルアクリレート、アクリロイルモルホリン、トリデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、デシルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、イソオクチルアクリレート、オクチルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、N − ビニルカプロラクタム、イソアミルアクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコールアクリレート、EO(エチレンオキシド)変性2−エチルヘキシルアクリレート、ネオペンチルグリコールアクリル酸安息香酸エステル、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルイミダゾール、テトラヒドロフルフリルアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、(2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルアクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマルアクリレート、及びエトキシ−ジエチレングリコールアクリレート等が挙げられる。これらの中でも、インクの粘度の観点から、エトキシ−ジエチレングリコールアクリレート、イソボルニルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、及びテトラヒドロフルフリルアクリレートが好ましい。なお、これら単官能モノマーは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
また、2官能モノマーは、その分子量が1000以下であるものが好ましく、具体例としては、1,10−デカンジオールジアクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジアクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,8−オクタンジオールジアクリレート、1,7−ヘプタンジオールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、及びジプロピレングリコールジアクリレート等が挙げられる。これらの中でも、インクの粘度の観点から、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート及びネオペンチルグリコールジアクリレートが好ましい。なお、これら2官能モノマーは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物において、官能基数が1〜2のラジカル重合性モノマーの合計含有量は、印刷層の硬化性や印刷層の強度のコントロールの観点から、インク組成物の全質量中50〜90質量% であることが好ましい。ここで、官能基数が1〜2のラジカル重合性モノマーに占める単官能モノマーの割合は、60〜100質量%であることが好ましく、65〜75質量%であることが特に好ましく、一方、官能基数が1〜2のラジカル重合性モノマーに占める2官能モノマーの割合は、0〜40質量%であることが好ましく、25〜35質量%であることが特に好ましい。
【0027】
上記ラジカル重合性モノマーのうち、3官能以上の多官能モノマーは、その分子量が2000以下であるものが好ましく、具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、EO変性ジグリセリンテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。これらの中でも、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート及びペンタエリスリトールトリアクリレートが好ましい。なお、これら多官能モノマーは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物において、官能基数が3以上のラジカル重合性モノマーの含有量は、印刷層の硬化性や印刷層の強度のコントロールの観点から、インク組成物の全質量中1〜20質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることが更に好ましい。
【0029】
また、本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物において使用されるオリゴマーとしては、印刷層の強度を上げるため、アクリレートオリゴマーを使用することができる。当該アクリレートオリゴマーは、アクリロイルオキシ基(CH
2=CHCOO−)を一つ以上有するオリゴマーであり、官能基数は3〜6であることが好ましい。また、アクリレートオリゴマーは、重量平均分子量(Mw)が2000〜20000であることが好ましい。そして、アクリレートオリゴマーの具体例としては、アミノアクリレートオリゴマー[アミノ基(−NH
2)を複数持つアクリレートオリゴマー]、ウレタンアクリレートオリゴマー[ウレタン結合(−NHCOO−)を複数持つアクリレートオリゴマー]、エポキシアクリレートオリゴマー[エポキシ基を複数持つアクリレートオリゴマー]、シリコーンアクリレートオリゴマー[ シロキサン結合(−SiO−)を複数持つアクリレートオリゴマー]、エステルアクリレートオリゴマー[エステル結合(−COO−)を複数持つアクリレートオリゴマー] 及びブタジエンアクリレートオリゴマー[ブタジエン単位を複数持つアクリレートオリゴマー]等が挙げられる。これらの中でも、耐候性や付着性の観点から、ウレタンアクリレートオリゴマーが好ましく、構造中に芳香環を持たない脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマーが更に好ましい。なお、アクリレートオリゴマーの含有量は、例えば、インク組成物の全質量中1〜10質量%である。
【0030】
また、本発明においては、下塗り塗膜との付着性を向上させる観点から、インク中に以下の式(3)で表されるラジカル重合性モノマー及び/又は式(4)で表されるラジカル重合性モノマーを含むことが好ましい。
【化4】
〔式(3)中、R
3は水素原子又はメチル基であり、nは1〜3の整数である。〕
【化5】
〔式(4)中、R
3は水素原子又はメチル基であり、R
4は炭素数2〜4のアルキレン基であり、R
4が炭素数2のアルキレン基である場合はnが2〜5の整数であり、R
4が炭素数3のアルキレン基である場合はnが1〜3の整数であり、R
4が炭素数4のアルキレン基である場合はnが1〜2の整数である。〕
【0031】
上記式(3)及び式(4)で表される化合物は、水酸基含有(メタ)アクリレートであるが、アクリロイルオキシ基(CH
2=CHCOO−)又はメタクリロイルオキシ基(CH
2=CCH
3COO−)とヒドロキシ基の間に、ε−カプロラクトンの開環物に由来する構造又はエチレンオキシドやプロピレンオキシド等のアルキレンオキシドに由来する構造を有しており、これによって、基材(下塗り塗膜)に対する印刷層の付着性を向上させることができる。このようなラジカル重合性モノマーの含有量は、インク組成物の全質量中0.5〜15質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることが更に好ましく、5〜10質量%あることが一層好ましい。
【0032】
上記式(3)において、R
3は水素原子又はメチル基であり、水素原子であることが好ましい。また、上記式(3)において、nは1〜3の整数であり、2〜3が好ましく、2が更に好ましい。なお、当該上記式(3)で表される化合物は、例えばヒドロキシエチルアクリレートを常法によりカプロラクトン変性することで得られるが、市販品を好適に使用できる。具体的には、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとε−カプロラクトンとの反応物等が挙げられ、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
また、上記式(4)において、R
3は水素原子又はメチル基であり、水素原子であることが好ましい。また、上記式(4)において、R
4は、炭素数2〜4のアルキレン基であり、炭素数2〜3のアルキレン基であることが好ましく、エチレン基(−CH
2CH
2−)であることが好ましい。更に、上記式(4)において、R
4が炭素数2のアルキレン基である場合はnが2〜5の整数であり、R
4が炭素数3のアルキレン基である場合はnが1〜3の整数であり、R
4が炭素数4のアルキレン基である場合はnが1〜2の整数である。なお、上記式(4)において、R
4が炭素数4のアルキレン基である場合は4−ヒドロキシブチルアクリレートが特に好適である。このような化合物は、例えばヒドロキシエチルアクリレートを常法によりアルキレンオキサイド変性することで得られるが、市販品を好適に使用できる。具体的には、4−ヒドロキシブチルアクリレート、ポリオキシエチレンモノアクリレート、ポリオキシプロピレンモノアクリレート及びポリオキシブチレンモノアクリレート等が挙げられ、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物には、光重合開始剤を用いることができ、その含有量は、インク組成物の全質量中1〜25質量%であることが好ましく、3〜20質量%であることが更に好ましい。更に、光重合開始剤の開始反応を促進させるため、光増感剤等の助剤を併用することも可能である。このような光重合開始剤としては、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、フォスフィンオキサイド系化合物等が挙げられるが、硬化性の観点から、照射する活性エネルギー線の波長と光重合開始剤の吸収波長ができるだけ重複するものが好ましい。なお、光重合開始剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0035】
また、本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物は、光安定剤を更に含有してもよい。光安定剤としては、シアノアクリレート系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾエート系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物、ベンジリデンカンファー系化合物、無機微粒子等が挙げられ、中でも、紫外線吸収がより短波長にあるヒドロキシフェニルトリアジン系化合物がインクの硬化性の観点から好ましい。硬化性の観点から、照射する活性エネルギー線の波長と光安定剤の吸収波長が出来るだけ重複しないものが好ましい。なお、光安定剤の含有量は、インク組成物の全質量中0.1〜15質量%であることが好ましく、0.2〜5質量%であることが更に好ましい。なお、これら光安定剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0036】
また、本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物は、重合禁止剤を更に含有してもよい。重合禁止剤を配合すると、更にインクの保存安定性を向上できるので好ましい。重合禁止剤の含有量は、インク組成物の全質量中0.001〜5質量%であることが好ましく、0.001〜1質量%であることが更に好ましい。このような重合禁止剤としては、ハイドロキノン系化合物、フェノール系化合物、フェノチアジン系化合物、ニトロソ系化合物、N−オキシル系化合物等が挙げられる。なお、これら重合禁止剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
また、本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物は、基材(下塗り塗膜)に対する印刷層の付着性を更に向上させるため、シラン化合物を含むことができる。シラン化合物の具体例としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソプロピルジエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、及びN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらの中でも、メチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル) エチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、及び3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランが好ましく、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。上記シラン化合物の含有量は、インク組成物の全質量中0.05〜2質量%であることが好ましい。
【0038】
また、本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物は、染料や顔料等の着色剤を更に含有してもよいが、耐候性と耐熱性の観点から、顔料を含有することが好ましい。なお、着色剤の含有量は、例えばインク組成物の全質量中0.1〜10質量%である。また、着色剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。具体的には、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、ホワイトなどの公知の着色剤を形成する印刷層に応じて制限なく使用することができる。上記着色剤として顔料を用いる場合、吐出安定性の観点から、インク組成物中に分散している顔料粒子は、体積平均粒子径が0.05〜0.4μmであり且つ体積最大粒子径が0.2〜1μmであることが好ましい。なお、当該体積平均粒子径及び体積最大粒子径は、動的光散乱法を用いた測定機器によって測定できる。なお、顔料を分散させるために、必要に応じて公知の顔料分散剤を更に含有してもよい。顔料分散剤の含有量は、例えばインク組成物の全質量中0.1〜5質量%とすることができ一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
なお、本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物には、その他の成分として、酸化防止剤、表面調整剤、可塑剤、防錆剤、溶剤、非反応性ポリマー、充填剤、pH調整剤、消泡剤、荷電制御剤、応力緩和剤、浸透剤、導光材、光輝材、磁性材、蛍光体等の添加剤を必要に応じて使用してもよい。
【0040】
本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物は、上記ラジカル重合性モノマー及び/又はオリゴマーと光重合開始剤と、必要に応じて適宜選択される各種成分とを混合し、必要に応じて、使用するインクジェットプリントヘッドのノズル径の約1/10以下のポアサイズを持つフィルターを用い、得られた混合物を濾過することによって調製できる。その際、当該インク組成物は、良好な吐出安定性の観点から、その45℃における粘度が5〜25mPa・sであることが好ましく、5〜15mPa・sであることが更に好ましい。インク粘度は、例えば、B型粘度計を用いて測定できる。さらに、同じく良好な吐出安定性の観点から、当該インク組成物は、その25℃における表面張力が20〜35mN/mであることが好ましい。インク表面張力は、例えば、プレート法により測定できる。
【0041】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物は、種々のインクジェットプリンタに使用することができる。インクジェットプリンタとしては、例えば、荷電制御方式又はピエゾ方式によりインク組成物を噴出させるインクジェットプリンタを挙げることができる。また、本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物は、特に大型インクジェットプリンタ、具体例としては工業ラインで生産される物品への印刷を目的としたインクジェットプリンタに好適に適用できる。インクジェットの条件としては、印刷される模様や画像などに応じて、適宜調整することが可能であり、例えば、印刷方式、プリンタヘッド温度、液滴量、光源、照射強度、積算光量などを適宜調整することにより、所望の模様や画像などからなる印刷層を形成することができる。特に、印刷層を硬化させるために照射する活性エネルギー線の波長は、光重合開始剤の吸収波長と重複していることが好ましく、本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物に対しては、活性エネルギー線の主波長が、360〜425nmであることが好ましい。
【0042】
<上塗り塗装>
本発明において、前記活性エネルギー線硬化型インクをインクジェット塗装して印刷層を形成した後には、表面仕上がり外観の調整や耐久性の確保を目的として、必要に応じて、印刷層上に上塗り塗料を塗布し、該印刷層を覆うように上塗り塗膜を形成させる工程を更に含むことができる。上塗り塗膜を形成させることで、基材又は下塗り塗膜に対する印刷層の付着性を更に向上させることができ、印刷物に対して耐候性や耐擦傷等の効果を付与することが可能となる。例えば、基材や下塗り塗膜の表面全体が印刷層で被覆されている場合、上塗り塗膜は、印刷層の表面にのみ形成されるが、基材や下塗り塗膜の一部が露出している場合、上塗り塗膜は、印刷層の表面にのみ形成される場合と、印刷層の表面と露出した基材や下塗り塗膜の表面にも形成される場合がある。
【0043】
上塗り塗料には、主溶媒として有機溶剤を用いる有機溶剤系塗料、主溶媒として水を用いる水系塗料、無溶剤系塗料、粉体塗料の各種エナメル又はクリア塗料等の従来から公知の各種塗料が利用可能である。また、上塗り塗料に使用できる樹脂としては、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂及びフッ素樹脂等の各種合成樹脂が挙げられる。なお、これら樹脂は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。上塗り塗料の塗装方法は、スプレー、カーテンフロー、ロールコーター、ローラーカーテン、ダイコーター等の従来から使用されている各種塗装手段が利用できるが、インクジェットプリンタによる印刷手段を利用してもよい。焼付硬化させる場合には、前述の下塗り塗膜の形成と同程度の条件を採用することができる。
【0044】
また、上塗り塗料としては、耐候性向上を目的として、紫外線吸収剤等の光安定剤を使用することができ、それら光安定剤の内2種以上を組み合わせて使用することもできる。また、上塗り塗料は、光沢及び意匠等の仕上がり外観を調整するために、各種体質顔料又は樹脂ビーズ等を添加することができ、これら2種以上を組み合わせることができる。更に、上塗り塗料は、その下層の印刷層との付着性を向上させるために、シランカップリング剤等を添加することができる。また更に、上塗り塗料に各種機能を付与するため、増粘剤、分散剤、消泡剤、沈降防止剤、防カビ剤又は防腐剤等が適宜添加されてもよい。
【0045】
上塗り塗料の塗布量としては、20〜200g/m
2であることが好ましく、また、上塗り塗装後の膜厚については、通常5〜40μm、具体的には10〜25μmである。
【実施例】
【0046】
以下に、本発明の方法について、実施例及び比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例及び比較例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例における「部」、「%」はとくに断らない限り質量を基準とする。
【0047】
<アクリル樹脂の合成>
(樹脂1)
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下槽が備わった反応容器に、ブタノール 20部、T−SOL100FLUID(東燃ゼネラル石油社製、芳香族系混合溶剤) 5部、及びキシレン 5.75部を入れ、加熱撹拌し、110℃に達してから、N−n−ブトキシメチルアクリルアミド 7.5部、スチレン 21.3部、アクリル酸ブチル 13.2部、メタクリル酸メチル 7部、アクリル酸 1部、及びナイパーBMT−K40(日油社製、有機過酸化物の混合物) 0.9部を予め混合した混合物を滴下槽に入れ、4時間かけて滴下した。
滴下終了後、滴下槽をT−SOL100FLUID 1部で洗浄し、110℃を保持したまま、ナイパーBMT−K40 1部、及びT−SOL100FLUID 1.5部を予め混合した混合物を1時間かけて滴下した。
滴下終了後、滴下槽をT−SOL100FLUID 0.5部で洗浄し、更に、110℃で1.5時間撹拌を続けた後、冷却した。その後、T−SOL100FLUID 14.35部を加えて攪拌し、アクリル樹脂1(以下、これを単に「樹脂1」などと表わす場合がある。)を得た(表1)。
【0048】
(樹脂2〜樹脂4)
樹脂1の場合と同様の手順で、以下の表1に示した配合で各原料を反応容器に入れて反応を行い、目的とする樹脂2〜樹脂4をそれぞれ得た。
【0049】
【表1】
【0050】
<下塗り塗料の調製>
以下の表2に示した配合に従って、撹拌しながら混合物を調製し、充分均質にして、下塗り塗料1〜10(以下、これを単に「塗料1」等と表す場合がある。)を得た。
【0051】
【表2】
【0052】
<アクリル樹脂のガラス転移温度の測定>
アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、プラスチックの転移温度測定方法(JIS K 7121−1987)の示差走査熱量測定(DSC法)に準じて測定した。具体的には、硬化した樹脂の塗膜片10mgを精秤し、αアルミナ容器に入れて、DSC曲線を測定して求めた。
【0053】
<アクリル樹脂の平均分子量の測定>
アクリル樹脂の平均分子量は、TSKgelカラム(東ソー社製)を備えたゲル・パーミュエイション・クロマトグラフィ(GPC)分析装置(RIを装備した東ソー社製;HLC−8220GPC)により、分子量分布の分析を行った結果、ポリスチレン換算の平均分子量として測定した。GPCの条件は、展開溶媒がテトラヒドロフランであり、流速が0.35ml/分であり、温度が40℃であった。
【0054】
<下塗り塗膜のゲル分率の測定>
SUS304板に下塗り塗料を膜厚約15μmとなるよう塗装し、160℃で20分間焼き付けて下塗り塗膜を形成した。その後、該SUS304板から塗膜を剥離し、塗膜の質量(Wc)を測定した。その後、該塗膜をテトラヒドロフランに浸漬し、25℃で48時間放置した後に、200メッシュのステンレススチール製金網で濾過した残渣塗膜を110℃で60分間乾燥し、残渣塗膜の質量(Wd)を測定し、下記の式に従ってゲル分率(質量%)を求めた。
ゲル分率(質量%)=(Wd/Wc)×100
【0055】
<活性エネルギー線硬化型インクジェットインクの調製>
以下の表3に示す各色のインク配合処方に従って各原料を混合し、得られた混合物をビーズミルで練合して均質にし、最後にフィルターで濾過して、各色の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを得た。
得られた各色のインクについて、粘度、表面張力、4℃の水に対する比重を測定した。
【0056】
【表3】
【0057】
<付着性>
先ず、上記表2に従って調製した下塗り塗料1〜10を、それぞれエアスプレーを用いてSUS304板に塗装し、次いで、それらを以下の表4及び5に示すような焼付条件によって焼付硬化させることにより、膜厚約15μmの下塗り塗膜をそれぞれ得た。その後、得られたそれぞれの下塗り塗膜の表面に、上記表3で調製した活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを搭載したインクジェットプリンタを用いて、各色のベタ画像を印刷し、その後、発光主波長が385nmの紫外線LEDランプを用いて活性エネルギー線を照射してインクを硬化させ、膜厚約8μmの印刷層を形成した。
そして、JIS K5600−5−6(クロスカット法)に準拠し、それぞれの印刷層を1mm間隔100マスの碁盤目状にカットし、粘着テープを用いて剥離試験を行い、剥離試験後の残存率を求め、下記の基準に従って、付着性を評価した。
◎:100/100(試験後に残ったカット部分の数/試験前のカット部分の総数)
○:85/100〜99/100
×:84/100以下
【0058】
<耐溶剤性>
先ず、上記表2に従って調製した下塗り塗料1〜10を、それぞれエアスプレーを用いてSUS304板に塗装し、次いで、それらを以下の表4及び5に示すような焼付条件によって焼付硬化させることにより、膜厚約15μmの下塗り塗膜をそれぞれ得た。その後、得られたそれぞれの下塗り塗膜の表面に、室温において、キシレンで湿らせたガーゼを4枚重ねて押し当て、1kgfの荷重をかけて往復100回のラビングテストを行った後、表面の状態を、下記の基準に従って、目視で評価した。
○:素地面の露出が見られなかった
×:素地面の露出が見られた
【0059】
<塗膜のリフティング>
前記の付着性の評価方法と同様に作製したそれぞれの印刷層に、クリア塗料としてデュラクロンCWクリア(大日本塗料製)を塗装し、温度160℃で20分の焼付条件で焼き付けた後の塗膜の外観を、下記の基準に従って、目視で評価した。
○:リフティングが見られなかった
×:リフティングが見られた
【0060】
<印刷画像の割れ>
前記の付着性の評価方法と同様に作製したそれぞれの印刷層について、印刷画像の割れの有無を、下記の基準に従って、目視で評価した。
○:割れが見られなかった
×:割れが見られた
【0061】
<評価結果>
上記の評価結果を、表4及び5に示した。
【0062】
【表4】
【0063】
【表5】
【0064】
表4及び5の評価結果から明らかなように、所定の自己架橋型アクリル樹脂を含む下塗り塗料を使用し、尚且つ下塗り塗膜を“硬化”させた実施例1〜32においては、下塗り塗膜の耐溶剤性、基材と下塗り塗料とインクの付着性に優れ、印刷画像の割れ、リフティングを起こさなかった。しかし、所定の自己架橋型アクリル樹脂を含む下塗り塗料を使用しつつも下塗り塗膜を未硬化とした比較例1〜8や、所定の自己架橋型アクリル樹脂を含まない下塗り塗料を使用した比較例9〜28においては、上記の結果に劣った。