特許第6353897号(P6353897)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6353897
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】伸縮式開創器ホルダ
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/02 20060101AFI20180625BHJP
【FI】
   A61B17/02
【請求項の数】7
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-509471(P2016-509471)
(86)(22)【出願日】2014年4月24日
(65)【公表番号】特表2016-516517(P2016-516517A)
(43)【公表日】2016年6月9日
(86)【国際出願番号】EP2014058377
(87)【国際公開番号】WO2014174031
(87)【国際公開日】20141030
【審査請求日】2017年3月27日
(31)【優先権主張番号】102013104300.3
(32)【優先日】2013年4月26日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502154016
【氏名又は名称】アエスキュラップ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボグザー ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ベック トーマス
(72)【発明者】
【氏名】モラレス ペドロ
(72)【発明者】
【氏名】ウェイスハウプト ディーター
【審査官】 宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0270042(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0026101(US,A1)
【文献】 米国特許第03710783(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00 − 17/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端部を手術台(O)に支持可能である、長さ調整可能な支持部(10)と、
一方の遠位の端部が、開創器(R)を解放可能に把持するように適合された開創器受容部(21)を備え、他方の近位の端部が、レバーの力を適用して、脱着可能な接続手段によって、伸縮式支持部(10)の他方の自由端部に、支持するとともに脱着可能な態様で動作可能に接続可能である開創器レバー(20)と、を備え、
前記開創器レバー(20)の前記近位の端部は、複数の長手方向に離間された、前記接続手段として機能する係合点/作用点(85)を備えており、
前記開創器レバー(20)は、前記係合点/作用点(85)上で、前記支持部(10)に動作可能に選択的に接続可能であり、
前記少なくとも1つの前記係合点/作用点(85)が、自由に進入可能なアンダーカットを形成し、
前記支持部(10)の前記他方の自由端部の拘束突出部またはピン(84)が、相対的な回動運動が前記支持部(10)と前記開創器レバー(20)の間で許容されながら、前記開創器レバー(20)がその長手方向において前記支持部(10)から滑り抜けることが防止されるような方法で前記アンダーカットの中にラッチ可能であり、
前記アンダーカット(85)が、ロッド状の前記開創器レバー(20)の切欠きまたは突起の形態で設計され、前記切欠きまたは前記突起が前記ロッド状開創器レバー(20)の外面の周りに形成されており
前記支持部(10)の前記自由端部に、クロス状/回動要素としてのピン/ボルト、又は、係合端が設けられており、これは、前記アンダーカットに当接するように適合されている、伸縮式開創器ホルダ。
【請求項2】
前記長さ調整可能な支持部(10)が、内側パイプ(11)および外側パイプ(12)を有する伸縮式支持パイプであり、前記内側パイプ(11)および外側パイプ(12)は、ハンドル(80)によって互いに移動可能であり、および選択された長さ設定で互いにロック可能であることを特徴とする、請求項1に記載の伸縮式開創器ホルダ。
【請求項3】
前記支持パイプ(10)がスピンドル機構として、伸縮式パイプとして機能する前記外側パイプ(12)の中を案内される、スピンドル及びねじ状のロッドとして設計された内側パイプ(11)を有するスピンドル機構として設計され、
前記ハンドル(80)が、前記スピンドル(11)に螺合され、前記伸縮式パイプ(12)に軸方向に支持された手動ホイールまたはスクリューナットを備えることを特徴とする、請求項2に記載の伸縮式開創器ホルダ。
【請求項4】
前記開創器レバー(20)が開創器ロッドであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の伸縮式開創器ホルダ。
【請求項5】
前記伸縮式支持部(10)が関節式に手術台(O)に支持可能であることを特徴とする、請求項1に記載の伸縮式開創器ホルダ。
【請求項6】
別個の適応的締結機構(50)を備え、前記別個の適応的締結機構(50)は、手術台(O)または同様のプラットフォームに固定するために特別にまたは普遍的に適合され、かつ、前記支持部(10)をそれに支持する態様で結合できる専用の締結レール(51)を備えることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の伸縮式開創器ホルダ。
【請求項7】
前記支持部(10)が、ヒンジの方法で、前記締結レール(51)に結合式に係合可能な締結受容部(60)を有することを特徴とする、請求項6に記載の伸縮式開創器ホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は伸縮式開創器ホルダに関し、詳細には、例えば乳腺動脈の切開のために、開創器を持ち上げるために片手で操作される手術用リフティング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの心臓外科手術は、外科医が心臓に働きかけることを可能にするように、患者の胸骨を長手方向に切断し、胸骨半部それぞれを隣接する肋骨と一緒に広げることを必要とする。この外科的開口部を広げるために開創器が使用される。手術が冠状心臓血管の循環障害の処置を含む場合、バイパス手術として知られる手術が行われる。乳腺動脈バイパスとして知られるものは最も一般的な手術方法の1つである。そのようなバイパス手術では、狭くなった冠状動脈の部分の周囲に経路が形成される。この目的のためバイパス血管として使用される内乳腺動脈(IMA:internal mammary artery)は、胸部の内側に沿って走っている。この動脈の一部は外科医によって自由に切開され、その端部は冠状動脈に縫合される。
【0003】
一般的に左内乳腺動脈(LIMA:left internal mammary artery)が使用されるが、右内乳腺動脈(RIMA:right internal mammary artery)もしばしば使用される。外科医に十分な作業空間とこの作業のための適切な視界とを提供するように、リフティングシステムが必要であり、これは切断された胸骨の片側半分を、隣接する肋骨と一緒に垂直に持ち上げて支持することが可能である。
【0004】
このタイプの多様なシステムが従来技術から知られている。リフティングシステムの第1のタイプは、例えば特許明細書の欧州特許第0 931 509 B1号明細書または米国特許第6,416,468 B2号明細書に開示され、これは、開創器に取り付けられ且つ開創器を一方の側で持ち上げるアダプタ装置を含む従来型開創器に基づいている。特許明細書の欧州特許第0 931 509 B1号明細書において、持ち上げは、支持プレートを有するねじと、開創器に回動可能に取り付けられたねじ山部材とによって行われる。リフティングシステムは開創器にクランプ、または螺合される。特許明細書の米国特許第6,416,468 B2号明細書によれば、ねじおよびねじ山部材は拘束機構に置き換えられるが、基本的な動作原理は同じである。胸骨の一方の側を持ち上げるために支持プレートが肋骨に押し付けられ、それにより、胸骨の、リフティングシステムが配置される側は外側に引かれる。
【0005】
リフティングシステムの第2のタイプは非常に類似しており、特別なブレードを用いて動作するが、その他の点では従来型開創器と同様に動作する。アダプタ装置を使用する代わりに、上記の持ち上げの原理は、ここでは関節式に開創器フレームに取り付けられた特別なブレードと、スペーサ要素とによって達成される。スペーサ要素は、特別なブレードの回動側と開創器フレームとの間の距離を設定し、ついては対応する胸骨の半分の持ち上げを設定するために使用される。このようなシステムは文献の米国特許第5,025,779 A号明細書および独国特許第10 325 393 B3号明細書に記載されている。
【0006】
同じく知られているのが純粋な乳腺動脈開創器であり、これは標準的な胸骨の拡張には使用されず、乳腺動脈の切開だけを行うために使用される。特許明細書の独国特許第3 717 915 C2号明細書はそのような開創器を記載し、これは別個の持上げ装置なしで機能する。開創器の歯付きラックに対して一定に固定された角度で配置されたブレードが、持ち上げられない胸骨の半分の中にクランプされ、それにより開創器は、胸骨がピニオンによって広げられるとき患者の垂直な胸郭表面に対して斜めに配置され、他方の胸骨の半分は爪状に設計された特別なブレードによって上方に引かれる。
【0007】
上に記載した3つの変形形態と実質的に異なる1つの教示は、外部取付け手段と組み合わせたケーブルまたはプルロッドによって胸骨の片側半分を持ち上げるというものである。この教示は公開された従来技術の米国特許第6,488,621 B1号明細書または米国特許第6,689,053 B1号明細書の中に見出すことができる。ここでは、所望の胸骨の半分だけが、ケーブルまたはプルロッドに設けられたフックによって持ち上げられ、ここでけん引力は、例えば手術台の側面に締結されたフレームまたはロッドなどの結合要素によって吸収される。
【0008】
このタイプの全ての従来型装置では、使用者、すなわち外科医は、一方で最適なプロセスを、および他方で外科手術の理想的な結果を阻止するようないくつかの欠点に対し準備をしなければならない。
【0009】
最大の欠点は、胸骨が持ち上げられおよび隣接する肋骨が広げられるときに発生し且つ通常は支持要素を通じて患者の体に分散される高い力である。対象となっている胸骨の半分はこのプロセスにおいて露出される、すなわち外側に曲げられ開放されるが、そうするために必要な力は、体の同じ側の隣接する肋骨に分散される。様々なレバーアームによって、これにより非常に高い力が患者にかけられるようになる。これが次に部分的な胸骨骨折、肋骨の骨折、および神経経路の損傷につながる高い危険性をもたらす。
【0010】
外部取付けの技術は、胸骨の半分を露出するために必要な力が患者でなくここでは取付けシステムに分散されるので、1つの例外が生まれる。しかしながらこの技術は、胸骨の片側半分の垂直方向の持ち上げだけが行われるので適切な視界を提供せず、水平軸上の適切な開口は提供されない。水平方向に働く力がないせいで、ここで標準的なブレードを使用することも不可能である。むしろツメ状のフックが必要であり、これは非常に局部的な態様で胸骨に据え付けられ、重大な骨折の原因となり得る。加えて、そのようなシステムは、作業レベルよりも非常に高い位置にあり、結果として手術要員の多くの作業の流れに干渉する。
【0011】
別の批判ポイントは、2つの乳腺動脈(左および右)が連続した切開を必要とする場合、リフティングシステムの反対側への非常に面倒な再配置作業である。この再配置は、開創器に適合された装置において依然として相対的に単純であるが、通常は助手が外科医を補助しなければならない。対照的に、特別なブレードを含む開創器は、外科的開口部から完全に取り外され、再配置しなければならず、これは手術プロセスの中断だけでなく、外科医は開創器が取り外されると心臓へのアクセス経路がもはやなくなるので、相対的に危険な瞬間を意味する。
【0012】
手術台に取り付けられる外部締結ロッドを含むシステムにおいて、システムを反対側に再配置するための実際的な方法はほとんどない。これの背後にある理由は、手術領域の下に垂直に位置する全ての領域は非無菌状態であると考えられることである。手術台上の取付け部分は従って非無菌領域内にあり、取り外して別の地点に再配置することは不可能である。同様に、クランプされた接続を緩めることなど、手術の間にこの領域で実行しなければならない作業ステップは容認できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
患者にもたらすストレスを最小にしながら、胸骨の半分を露出し且つ適切な水平の胸骨開口を形成することを可能にする開創器ホルダを作製することが本発明の目的である。片手だけで操作可能な開創器ホルダを作製することが本発明のさらなる目的である。片手を使って手術台の一方の側から反対側へ容易に再配置可能であるか、そのような再配置を完全に不要にする開創器ホルダを作製することが本発明のさらに別の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の目的は請求項1による伸縮式開創器ホルダによって達成される。さらなる有利な改良形態は従属請求項の主題である。
【0015】
本発明の一態様(任意選択で独立して特許請求され得る)によれば、伸縮式開創器ホルダであって、支持部であって、好ましくは伸縮式支持ロッド、より好ましくは内側パイプと、外側パイプと、自由に/個々に選択された支持ロッド長さを固定するためのロック機構とを有する支持部と、および開創器レバーであって、好ましくは開創器ロッドである開創器を解放可能に掴むか適合させるように適合された開創器受容部を遠位端に備え、及び、近位端で着脱可能な接続手段によって伸縮式支持ロッドに好ましくは緩やかに保持または支持された開創器レバーと、を備える伸縮式開創器ホルダが作製される。伸縮式支持ロッドは、手術台上に支持可能であり、作動機構を備え、作動機構によって、ロック機構を、支持ロッド長さが固定される(伸縮式支持ロッドの内側パイプおよび外側パイプが互いに移動不能に保持される)第1の位置から、支持ロッド長さが調整可能である(伸縮式ロッドの内側パイプおよび外側パイプがパイプの長手方向において互いに移動できる)第2の位置へ移行することができる。
【0016】
この実施形態では、本発明による開創器ホルダは、開創器が患者の胸骨に締結され、開創器受容部が開創器を掴む状態で患者に対して使用されるとき、実質的に直立した位置に保持される。このようにして開創器ホルダの確定された位置は、胸骨の支持力と、伸縮式支持ロッドの支持と、伸縮式支持ロッドのおよび開創器ロッドの長さとによって確立される。開創器ホルダの実質的に直立した位置とは、伸縮式ロッドがその結果実質的に垂直になっている位置のことを指す。換言すると、(長手方向に切断された)胸骨は、開創器の機能の慣習であるような方法で(知られている乳腺動脈開創器の方法で)開創器によって広げられ、またはてこの原理で開けられ、ここで開創器は、支持ロッドを長手方向に調整する(延ばす)ことによって開創器ロッドによって実質的に移動または回動される。従って開創器は、外科医にとって内乳腺動脈の最適な視界が確立されるまで、一方の側で(支持ロッドの側で)、対応する胸骨の半分と一緒に持ち上げられる。
【0017】
伸縮式支持ロッドの長さは、作動機構を使用してロック機構を解除し、作動機構を上げるか下げることによって伸縮式支持ロッドの長さを設定し、続いて作動機構を解放し、それによりロック機構が設定長さ(伸縮式支持ロッドの内側パイプおよび外側パイプの互いの位置)をロックすることによって、好ましくは変更可能である。ここに最初に示されるもっとも容易な事例では、伸縮式支持ロッドは手術台の表面に支持される。伸縮式ロッドが滑らないように凹部が手術台に設けられてもよい。
【0018】
任意選択で独立して特許請求され得る本発明の別の態様によれば、伸縮式支持ロッドは、関節/ヒンジ手段で手術台上に支持可能である。これは、伸縮式支持ロッドは手術台に対してきっちり垂直に配置されなくてもよく、その位置は別の形状に配置可能で、および患者の胸骨に対する開創器の支持状態に対して調整可能であることを意味する。本質的に、手術台の長手軸周りでの手術台に対する開創器ホルダのまたは伸縮式支持ロッドの回転は発生し、それにより伸縮式支持ロッドと開創器ロッドの間の接触点は、患者の方へ向かう方向および患者から離れる方向へ移動する。しかしながら、開創器が開創器ロッドによって保持されている間にさらに広げられる場合、胸骨は、ヒトのとりわけ肋骨の尾部側の対が頭部側の対よりも長くまた柔軟であるため、持ち上げる間、前額面に対して斜めに自動的に配置され、より詳細には尾部領域が頭部領域よりも高い状態に自動的に配置される。この高さの差は、胸骨の露出に応じて変化し、水平方向における開創器の回転をもたらす。従って伸縮式支持ロッドは、この方向における関節式の取付けか締結の特定程度の遊びのどちらかにより、少なくともある特定程度まで手術台の水平軸周りで回転することもでき、または回転は、対応する自由度を有する開創器ロッドによって吸収される。
【0019】
任意選択で独立して特許請求され得る本発明の別の態様によれば、伸縮式開創器ホルダの開創器ロッドは自由に伸縮する。自由に伸縮することはここでは、ロック機構が開創器ロッドに設けられず、従ってロッドはいつでも長さを自由に変えることができることを意味する。そのような伸縮式開創器ロッドは、伸縮式支持ロッドを実質的に非関節式に手術台に締結するために使用可能であり、および伸縮式支持ロッドが伸長されると、開創器ロッドもまた伸長され、その結果、患者は胸骨で持ち上げられず、胸骨の一方の側だけが開創器および開創器ホルダによって持ち上げられる。上記の水平面に対する開創器の自由な回転角度は、開創器ロッドの伸縮装置にも提供されてもよく、ここで自由に伸縮する開創器ロッドはねじれ力を吸収することも伝達することもできない。
【0020】
しかしながら、伸縮式開創器ロッドの代わりとして、またはそれに加えて、支持ロッドと開創器受容部の間の有効な開創器ロッド長さを変更できるような方法で、開創器ロッドと支持ロッドの間に着脱可能な接続手段を設計することも可能である。例えば、開創器ロッドは、開創器ロッドが支持ロッドに着脱可能に係合される/載ることができる接続手段の領域に、複数の長手方向に離間された作用点/係合点を含むことができる。加えて、接続手段は、その上に保持された開創器ロッドの長手方向の移動を可能にするように構成されてもよい。
【0021】
任意選択で独立して特許請求され得る本発明の別の態様によれば、作動機構は開創器ロッドとともに接続手段の領域に配置される。接続手段は開創器が広がる面に本質的に常に配置される。従って作動機構は同様にこの領域に配置され、その結果、常に無菌領域に配置される。従って外科医は最初に殺菌を再び実行する必要なく開創器ホルダを操作し得る。
【0022】
任意選択で独立して特許請求され得る本発明の別の態様によれば、伸縮式支持ロッドの内側パイプは手術台上に支持可能であり、伸縮式支持ロッドの外側パイプの一端は着脱可能な接続手段によって開創器ロッドに操作可能に接続され、作動機構は外側パイプの他端の領域に配置される。この場合、作動機構は上記の事例よりもわずかに低く配置されるが、無菌状態であると考えられ得る領域に依然として配置される。
【0023】
任意選択で独立して特許請求され得る本発明の別の態様によれば、開創器受容部は開創器を確実に掴むように適合され、または、開創器に適合される。このようにして開創器の力およびモーメントを開創器ホルダに伝達することは容易であり、その逆の伝達も容易である。
【0024】
任意選択で独立して特許請求され得る本発明の別の態様によれば、開創器受容部は実質的にU字形の凹部であり、その中に開創器のフレームを挿入可能であり、その結果、開創器のフレームは少なくとも2つの側で凹部の内壁と少なくとも部分的に接触する。拘束手段としての役割を果たす弾性的に予め負荷を与えられるタングの遠位端は、ロック用突起を備え、これは開創器フレームが挿入された後に開創器フレームに対して位置付けられ、それにより開創器フレームとの確実な嵌め合いを形成するように適合される。もっとも単純な事例では、U字形凹部は開創器構成要素/開創器フレームの3つの側に対して位置付けられ、ロック用突起は、開創器構成要素/開創器フレームが開創器受容部から滑り抜けることを防止するように開創器構成要素/開創器フレームの4番目の側に対して位置付けられる。把持された開創器構成要素は直角を成す必要はない。直角である場合は、把持された開創器構成要素は回転対称でない場合に有利であるに過ぎない。この事例では、非確動な接続が開創器と開創器受容部との間に確立されなければならない可能性があり、これは実行することが容易であるが、手術の間外科医によってそれを操作することをより複雑にする。
【0025】
本発明のさらなる態様によれば、タングは凹部の1つの側に回転可能に取り付けられ、ロック用突起を備えるタングの遠位端が凹部の方に押されるように弾性構成要素によって予め負荷を与えられる。これは以下の理由から有利な構成に一致する。すなわち、外科医は片手で開創器ロッドを掴み、および例えば同じ手の親指を使ってタングの近位端を押し、それによりタングの遠位端のロック用突起の、開創器構成要素の外方を向く側とのアンダーカット(undercut)を脱し、それにより開創器受容部から開創器を脱着することによって、開創器から開創器受容部を脱着することができるので、有利な構成に一致する。しかしながら、互いに鏡面対称状にふるまう2つの対向するタングも考えられる。開創器構成要素に挿入されその遠位端がU字形凹部から離れるように予め負荷を与えられるタングも同様に考えられる。
【0026】
本発明のさらなる態様によれば、弾性構成要素は圧縮ばねであり、これはタングの近位端を押す。この事例では、弾性構成要素はU字形凹部の底部の領域に配置可能である。この配置は2つのタングを含む開創器受容部にも適しており、ここでは各タングに1つの圧縮ばねをそれぞれ提供可能であり、または共有される圧縮ばねが提供されてもよい。
【0027】
本発明のさらなる態様によれば、タングの近位端は開創器受容部から開創器を解放するための作動用突起を含む。これは外科医がタングを感知することをより容易にし、同じくタングの近位端を押すことをより容易にする。従ってタングは、タングの近位端を収容するための凹部を外科医の親指または別の作動させるための指を受け入れるように構成しなくてもよいので、より小さい設計を有することができる。
【0028】
任意選択で独立して特許請求され得る本発明の別の態様によれば、開創器ロッドを伸縮式支持ロッドに接続する脱着可能な接続手段はヒンジジョイントであり、ヒンジジョイントは好ましくは回動要素として容易に取外し可能なコッタボルトを含む。そのようなヒンジジョイントは即時解放ジョイントの最も単純な形態であり、本発明による開創器ホルダにおいて、特に開創器ロッドが自由に伸縮する設計を有し、ひねり力を伝達しないとき、有利である。取外し可能なコッタボルトを使用する代わりに、クランプの態様で、完全に閉鎖されず開放されるように開創器ロッドの側面に支持用突起を設計する選択肢もあり、これは回動ピンに容易に弾性的に押し付け可能であり、同じ方法で回動ピンから容易に引くことができる。
【0029】
本発明のさらなる態様によれば、開創器ロッドを伸縮式ロッドに接続する脱着可能な接続手段はボール(ヘッド)ジョイントである。この態様によれば、ひねり力はボールジョイントによって伝達されないので、開創器ロッドはひねりに対して剛性であり得る。
【0030】
本発明のさらなる態様によれば、脱着可能な接続手段は少なくとも1つの、好ましくは複数の長手方向に離間されたアンダーカット/切欠き/溝等を開創器ロッドに含むことができ、それらは(単純な当接によって)支持ロッドの自由端部の保持用縁部またはクロスピン/回動ピンと選択的に協働し、それにより支持ロッド上の開創器ロッドの意図しない長手方向の移動を防止する。クランプ(パイプクリップ等)の形態の接続手段を提供する選択肢もあり、これは支持ロッドに回動可能および/または回転可能に保持され、任意選択的に開創器ロッドを摩擦係合式に保持する。
【0031】
任意選択で独立して特許請求され得る本発明のさらなる態様によれば、作動機構はリングであり、リングはロック機構を第1位置から第2位置へ移行するように伸縮式ロッドに対して移動可能である。リングが設けられるパイプに対してこのパイプの長手方向に移動可能なリングが、ロック機構を解除する、この目的のために有利である。しかしながら、作動機構は、様々な他の形態を取ることができ、それは例えば、ロック機構を解除するように押される作動ボタンまたはレバー、またはロック機構を解除するようにパイプの軸の周りまたは別の方向のどちらかに特定のパイプに対して回転されるリングまたは別の構成要素などである。支持ロッドはスピンドルロッドまたは歯付きラックとして設計されてもよく、ここでスピンドルの場合の作動機構は調整ねじであり、その回転によりスピンドル(内側パイプ)はスピンドルシリンダ(外側パイプ)に沿って移動される。歯付きラックが提供される場合、作動機構はクランク機構であることが考えられる。
【0032】
本発明のさらなる態様によれば、着脱可能な接続手段の反対側に配置される伸縮式支持ロッドの端部は、端部を上方から手術台レールに配置するための実質的にU字形の締結受容部を含む。最も単純な事例では、この締結受容部は、いかなる種類の確実な嵌め合いも密着した接触も形成することなく、手術台レールの上に単に配置される。このようにして伸縮式ロッドは全ての方向において手術台レールに対して十分に回転可能であり、従ってシステムの力およびモーメント状態に適合可能である。
【0033】
本発明のさらなる態様によれば、締結受容部の断面は、締結受容部が配置されるとき手術台レールの2つの側壁に少なくとも部分的に接触するように、手術台レールの断面にあわせて適合される。締結受容部はジョイント接続によって伸縮式ロッドに取り付けられる。手術台レールに対する伸縮式ロッドの回転は、余分な力が胸骨から開創器に、続いて開創器ホルダおよび手術台に、または反対の方向に伝達されないことを保証し、それにより患者の胸骨および周辺組織に損傷を与えることを確実に回避するために使用される。手術台に対する伸縮式ロッドの最も重要な回転は、手術台の長手軸周りでの回転である。他の方向の回転は、手術台への患者の不正確な配置、真直ぐでない胸骨の切断、および胸骨のさらなる拡張の結果として主に引き起こされる。しかしながら、これらの回転の大きさは、これらを様々な支持システムによって遊びを用いて吸収できるようなものである。さらに外科医は、上記の不注意による回転を最小化するような方法で患者の長手体軸に沿って伸縮式ロッドの支点の位置を適合させる選択肢を常に有する。
【0034】
本発明のさらなる態様によれば、伸縮式ロッドと締結受容部の間のジョイント接続は、伸縮式ロッドと締結受容部の間の回転運動が所定の角度範囲においてのみ可能であるように設計される。この角度範囲は、角度が制限されることなく伸縮式ロッドの長さの最大長さから最小長さまでの、またはその逆の変更が実行されることを許容するのに十分に広い。むしろこの角度の制限は、外科医が既に直接または間接的に締結受容部を手術台レールに締結したが開創器受容部を開創器にまだ締結していないとき、開創器受容部が傾いて非無菌領域に入ることを防止する働きをする。
【0035】
この状態において、開創器ホルダは、角度が制限されない場合、患者から離れる方向へ傾く可能性があり、それにより非無菌領域の中に傾く恐れがある。角度が制限される場合、ホルダは所定の角度だけ外方に傾くことができ、外科医が開創器ホルダを掴み作動する開創器ホルダの領域は無菌領域のままである。これはそのような開創器ホルダの使用者をさらにより安全にする。
【0036】
任意選択で独立して特許請求され得る本発明のさらに別の態様によれば、伸縮式開創器ホルダは少なくとも1つの締結機構を備え、この締結機構は締結レールを備え、手術台レールに着脱可能に締結可能であるように適合される。着脱可能な接続手段の反対側に位置する伸縮式支持ロッドの端部は締結受容部を含み、締結受容部は締結レール上に配置または押すことができる。開創器ホルダが手術台レールに支持されるか締結される場合、これらの手術台レールは手術台の全長に沿って連続的に設けられていないという問題がある。この理由は、とりわけ、手術台は患者および手術の多様な設定を可能にするように分割されていることである。さらに、手術台レールは一般的に無菌ドレープで覆われ、その結果見ることができない。開創器ホルダが手術台レールに沿って移動される場合、レール上に配置されたケーブル/配線/およびそれらの類似物をうっかり傷つける可能性がある。これらの問題を解決するように、本発明による伸縮式開創器ホルダは上記に記載した締結機構を含み、この締結機構は別個のユニットとして設計され、手術台レールに締結可能であり、(手術用ドレープの上におよびその結果として外科医に視認可能である)別個の締結レールを提供し、その上で伸縮式開創器ホルダの伸縮式支持ロッドを支持可能である。用語「押す(pushing on)」はここでは締結受容部を締結レール上でその長手方向に押すことを示す。
【0037】
本発明のさらなる態様によれば、別個の締結機構の締結レールは、実質的に円形の領域と別の領域とから構成された断面を有する。伸縮式支持ロッドの締結受容部は内壁と2つの側壁とを有する凹部を有し、凹部の断面は締結レールの断面に実質的に一致する。凹部の内壁は、締結受容部が押されるとき、締結レールと一緒に少なくとも1つのアンダーカットを形成し、アンダーカットは張力を伸縮式ロッドから締結レールへ伝達可能である。さらに凹部の側壁は、締結レールの断面領域の別の領域の横表面から離間しており、締結レールに対する伸縮式ロッドの回転が所定の角度範囲に制限されるような方法で方向付けられる。回転対称的構成要素と、回転対称でない別の構成要素、すなわち第1構成要素と同じ中心に関して少なくとも回転対称でない別の構成要素とから構成された締結レールの断面、および関連する締結受容部は、ある特定角度範囲内での締結レールに対する伸縮式ロッドの回転を許容する一方でそれを越える回転を防止するために使用される。このタイプの最も単純な組立て形態は鍵穴の形状であり、これは円形領域と、それに接続する、完全な回転対称でない円形セグメント領域とから構成される。
【0038】
本発明のさらなる態様によれば、締結受容部は伸縮式支持ロッドの一方の端部に配置される。このようにして伸縮式支持ロッドの下側パイプと締結受容部は一体部品として設計可能である。
【0039】
本発明のさらなる態様によれば、開創器ロッドは伸縮式ロッドの内側パイプに着脱可能に/緩やかに動作可能に接続され、作動機構は好ましくは伸縮式支持ロッドの内側パイプに設けられ、締結受容部は好ましくは伸縮式支持ロッドの外側パイプの側壁に設けられる。伸縮式支持ロッドの外側パイプの側面に配置される締結受容部は、手術台より上方のシステムの高さを上げることなく、伸縮式支持ロッドの長さを延ばすことを可能にする。手術台より上のシステムの高さが上がることは外科医を妨げる可能性があり、例えば視界または移動の自由度を制限する可能性がある。伸縮式支持ロッドがより長くなると、伸縮式開創器ホルダを使用して、伸縮式支持ロッドの長さを延ばすことによって、開創器ホルダが配置される胸骨の側が持ち上げられるときばかりでなく、伸縮式支持ロッドの長さを短くすることによって胸骨の反対側半分が同様に持ち上げられるとき、特に有利である。開創器は、全ケースにおいて、持ち上げられない胸骨の半分に支持され、肋骨は内側へ押し込むよりも外方に曲げることが著しく容易なので、これは容易に可能である。しかしながら、手術台より上方のシステムの高さが外科医を妨げるほど高くなることなく伸縮式支持ロッドの適切な長さを得るためには、伸縮式支持ロッドを手術台レールの下方に延ばすことが有利である。その後もなお伸縮式支持ロッドを手術台レールに締結できるように、締結受容部は伸縮式支持ロッドの側面に取り付けなければならない。
【0040】
本発明のさらなる態様によれば、伸縮式支持ロッドは少なくとも1つの別の中心パイプを含み、少なくとも1つの別の中心パイプは内側パイプと外側パイプの間に配置され、それらと一緒にマルチ伸縮式ロッドを形成する。このようにして、伸縮式ロッドが退縮されるときにその長さが増大されることなく、伸縮長さを延ばすことが可能である。
【0041】
本発明のさらなる有利性および特徴は添付の図面および例示的実施形態の詳細な記載から当業者に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】手術台に支持される伸縮式開創器受容部の第1の例示的実施形態を示す。
図2】手術台に支持される伸縮式開創器受容部の第2の例示的実施形態を示す。
図3】手術台に支持される伸縮式開創器受容部の第3の例示的実施形態を示す。
図4】手術台レールに支持される伸縮式開創器受容部の第4の例示的実施形態を示す。
図5】手術台レールに支持される伸縮式開創器受容部の第5の例示的実施形態を示す。
図6】締結機構を含む伸縮式開創器受容部の第6の例示的実施形態を示す。
図7】締結機構を含む伸縮式開創器受容部の第7の例示的実施形態を示す。
図8】開創器受容部の側面図を示す。
図9図8による側断面図を示す。
図10】第6の例示的実施形態の締結機構と締結受容部を詳細に示す。
図11】手術台および患者の胸部、ならびに第7の例示的実施形態による伸縮式開創器受容部の概略図である。
図12】手術台上の患者の上からの図を示す。
図13】手術台上の患者の横からの図を示す。
図14】締結機構を含む伸縮式開創器受容部の第8の例示的実施形態の斜視図を示す。
図15】締結機構を含む伸縮式開創器受容部の第8の例示的実施形態の側面図を示す。
図16】脱着された状態の本発明による伸縮式支持ロッドと開創器ロッドの間の脱着可能な接続手段の1つの変形形態の斜視図を示す。
図17】動作可能に接続された状態の図16による伸縮式支持ロッドと開創器ロッドの間の脱着可能な接続手段の変形形態の斜視図を示す。
図18】動作可能に接続された状態の図16による伸縮式支持ロッドと開創器ロッドの間の脱着可能な接続手段の変形形態の側面図を示す。
図19】スピンドルの原理による締結受容部を含む支持ロッドのさらなる変形形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1を参照して本発明の第1の例示的実施形態を詳細に記載する。
【0044】
本発明の第1の例示的実施形態による伸縮式開創器ホルダは、好ましくは内側パイプ11、外側パイプ12、およびロック機構を含む伸縮式支持ロッド10と、開創器ロッド20とを有する。開創器ロッド20の一方の遠位端は、開創器Rを解放可能に掴むことができる開創器受容部21を含む。他方の近位端において、開創器ロッド20は、着脱可能な/緩やかな接続手段30によって伸縮式支持ロッド10に動作可能に接続される。本例示的実施形態によれば、伸縮式支持ロッド10は、手術台O上に支持することができ、この際、単に外側パイプ12の(接続手段の反対側に配置された)自由端部が、手術台Oに位置付けられるか、手術台Oの特別の凹部に配置される。伸縮式支持ロッド10の内側パイプ11は、作動機構15を含み、それによってロック機構は、伸縮式支持ロッド10の内側パイプ11および外側パイプ12が互いに移動不能に保持される第1位置から、伸縮式支持ロッド10の内側パイプ11および外側パイプ12がパイプ11、12の長手方向において互いに移動可能である第2位置へ移行することができる。ある一定量の遊びが内側パイプ11と外側パイプ12の間に存在し、それにより2つのパイプ11、12はある一定の範囲内で各長手軸の周りを互いに回転することができる。
【0045】
伸縮式支持ロッド10は、伸縮式支持ロッド10を手術台Oの上に配置することによって、関節式に手術台Oの上で支持することができる。作動機構15は、開創器ロッド20とのジョイント接続部30の真下で、内側パイプ11に配置される。本例示的実施形態では、開創器受容部21は開創器Rを確実に掴むように適合される。このため、開創器受容部21は、図8および図9に示されるように、実質的にU字形の凹部22を有し、その中に開創器Rのフレームを挿入可能である。図11は、開創器Rが3つの側で凹部22の内壁23に対して配置されること、および弾性的に予め負荷を与えられるタング24の遠位端が、開創器RをU字形凹部内に確実に保持するロック用突起25を含むことを示している。タング24は凹部22の1つの側に回転可能に取り付けられ且つロック用突起25を含む端部の遠位端が凹部22の方に押されるように圧縮ばね26によって予め負荷を与えられる。さらに、タング24の近位端27は作動用突起28を含み、外科医は作動用突起28を作動するすなわち押すことにより開創器Rを開創器受容部から解放することができる。
【0046】
この例示的実施形態では、さらに、好ましくは取外し可能なコッタボルトを含むヒンジジョイントが、即時解放締結装置として機能し、また、伸縮式支持ロッド10の内側パイプ11と開創器ロッド20との間の着脱可能な接続手段30を形成する。作動機構15はここではリングであり、リングは、ロック機構を第1位置から第2位置へ移行するようにヒンジジョイント30の方向に伸縮式支持ロッド10に対して移動可能である。
【0047】
本例示的実施形態による伸縮式開創器ホルダは、以下のように使用される。外科医が患者Pの胸骨を開き、開創器Rを挿入し広げた後、外科医は伸縮式開創器受容部を着脱可能な接続手段30の領域で掴み、伸縮式支持ロッド10を手術台Oに配置する。次に外科医は親指を着脱可能な接続手段(ヒンジジョイント)30の上に置き、人差し指および薬指を使用してリング15を掴み、それを親指の方向に引き、それにより伸縮式支持ロッド10のロックを取り除く。次に外科医は伸縮式支持ロッド10の長さを患者Pの状態に適合させ、これは本質的に患者Pの胸部の寸法を意味する。片手で開創器ホルダを着脱可能な接続手段30の領域で保持し続ける一方で、外科医は反対の手を使用して開創器受容部21を開創器Rの方向または開創器Rの目的の締結地点の方向へ案内する。これは通常、開創器の2つの脚部の内の一方であり、2つの脚部は胸骨切断部と平行に延び、ブレードを移動する。次に外科医は、開創器受容部21を開創器Rの上で押すことによって、開創器Rを開創器受容部21に挿入する。ここで外科医は、作動機構を再び作動し且つ着脱可能な接続手段30を持ち上げることによって開創器ホルダが配置されている患者Pの胸骨の側を持ち上げることができる。しかしながら、開創器ロッド20は開創器Rに対し着脱可能であるがしっかり接続され、および従って開創器Rの一種の片持ちレバーを形成するので、支持ロッド10に面する胸骨の片側を持ち上げるまたは露出するために好みのレバーが作り出される。この例では、外科医は胸骨を露出するためにより少ない力を必要とする。さらなる事実は、肋骨を、胸の中に曲げることができるよりも外側により容易に(すなわちかなり少ない力で)曲げることができるということである。開創器ロッド20が持ち上げられるとき、伸縮式開創器ホルダが取り付けられる開創器の側の肋骨は、従って外側に曲げられる。これにより肋骨を胸部の反対側で内側に押す傾向のある力がもたらされる。しかしながら、肋骨は、そのような変形に激しく対抗し、それにより肋骨は胸骨の反対側半分を露出するための受け面としての役割を本質的に果たす。
【0048】
ここで外科医が開創器ホルダから手を離す場合、開創器ホルダは胸部の片側を上方に保持しながら手術台Oに支持される。患者Pの誤った配置および尾側および頭側の肋骨の異なる特性によりもたらされる上に記載した回転αおよびβは、開創器受容部の回転およびわずかな傾斜によって補償される。
【0049】
手術が経過する間、外科医が患者Pの胸骨の反対側を持ち上げることを望む場合、外科医は最初に、伸縮式支持ロッド10の長さを適切に低減することによって開創器Rをほぼ水平位置にし、開創器受容部21を開創器Rから取り外し、開創器ホルダを患者Pの反対側に配置し、開創器受容部21を開創器Rの他方の脚部に締結し、そして伸縮式支持ロッド10を再び延ばす。外科医は無菌領域を離れることなくこれらのステップを実行可能である。熟練の外科医は全プロセスのために片手だけを必要とし、開創器受容部を開創器Rに締結するまたは開創器Rを開創器受容部から取り外すために2つ目の手を一度も使わなくてもよい。
【0050】
この後、図2を参照して本発明の第2の例示的実施形態を記載する。第2の例示的実施形態は、伸縮式支持ロッド10の自由端部の支持プレート70においてのみ第1の例示的実施形態と異なる。第1例示的実施形態では、伸縮式支持ロッド10の自由端部は、伸縮式支持ロッド10と手術台Oとの間の摩擦が十分でないとき、またはヒトが開創器ホルダとぶつかるとき、滑る可能性がある。手術台Oにおける開創器ホルダの支持を改善するために、支持プレート70が提供され、支持プレート70は好ましくは下面に半球状の表面または半球状のキャップを有する。この例では、開創器ホルダは滑る可能性が低い。
【0051】
この後、図3を参照して本発明の第3の例示的実施形態を記載する。第3の例示的実施形態は、第2の例示的実施形態では内側パイプ11が上側パイプを形成し外側パイプ12が下側パイプを形成するが、第3例示的実施形態では内側パイプ11が下側パイプを形成し外側パイプ12が上側パイプを形成する点で第2の例示的実施形態と異なる。第2および第3例示的実施形態の支持プレート70の図示されない1つの代替策は同様のプレートであるが、その平らな側は手術台Oに据え付けられ、着脱可能なボールジョイントによって伸縮式支持ロッドの自由端部に取り付けられる。
【0052】
この後、図4を参照して本発明の第4の例示的実施形態を記載する。第4の例示的実施形態は、締結受容部40によって第1の例示的実施形態と異なり、締結受容部40はこの特定の例では伸縮式支持ロッド10の外側パイプ12の側面に取り付けられている。締結受容部40はヒンジジョイント45によって伸縮式支持ロッド10に取り付けられ、および手術台のレールに適合するU字形部を有する。ここで適合することは、締結受容部40が手術台のレールと3つの側で接触する一方、それにもかかわらず手術台のレールに沿って移動可能であることを意味する。加えて、伸縮式支持ロッド10は先の例示的実施形態より長く、それにより床の方向に締結受容部40を越えて、および結果として手術台レールを越えて延在する。残りの設計および動作原理は第1〜第3の例示的実施形態に一致し、ここで患者Pに対する開創器ホルダの傾斜はヒンジジョイント45によって可能であり、手術台の長手軸に沿った傾斜(角度β)は伸縮式支持ロッド10を手術台レールに対してわずかに回転することによって可能であり、およびここで水平面における開創器Rの誤った配置(角度α)は、締結受容部40を同時に移動し且つ傾けることによって補償可能である。片手操作および患者Pの片側から反対側への片手再配置は、先の例示的実施形態のように機能する。
【0053】
この後、図5を参照して本発明の第5の例示的実施形態を記載する。この特定の有利な例示的実施形態は、締結受容部40が伸縮式支持ロッド10に関節式ではなく固定式に取り付けられる点で第4例示的実施形態と異なる。従って、伸縮式支持ロッド10は、患者Pに対して傾斜できない。外科医が先行する例示的実施形態の1つにおいて伸縮式支持ロッド10の長さを延ばすことによって胸骨の片側半分を持ち上げるとき、胸骨と、開創器ロッド20および伸縮式支持部10の間の接続手段30との間の長さは固定されていたので、この支持ロッドは常に患者Pに対して傾斜し得る(患者Pが固定されていた場合)。この場合、胸骨の位置は、2つの分離した胸骨半部の間の中心に、すなわち開創器の形状のほぼ中心にある。
【0054】
しかしながら、本例示的実施形態の場合のように、支持ロッドが延ばされるとき伸縮式支持ロッド10が患者Pに対して傾斜できない場合、患者Pは伸縮式支持ロッド10の方へ引かれ、これは患者Pに相当の力が作用することを伴い、外傷を生じる可能性がある。本例示的実施形態では、従って開創器ロッド20は自由に伸縮するように設計され、それにより横方向の力は患者Pに作用しない。開創器ロッド20の内側部分20Bは、このため、十分に広い範囲にわたって開創器ロッド20の外側部分20A内を自由に前後に移動可能である。ロックは伸縮式開創器ロッド20に必要でないが、それは安定した空間節約の保持にとって有利であり得る。この伸縮式支持ロッド20において内側ロッドが外側ロッド20Aに対して回転できる場合、このようにして角度βによる回転を吸収することができる。
【0055】
この後、図6および図8〜13を参照して本発明の第6の例示的実施形態を記載する。
【0056】
この第6の例示的実施形態は、内側パイプ11、外側パイプ12、およびロック機構を有する伸縮式支持ロッド10と、開創器受容部21を一端に含む開創器ロッド20とを含む伸縮式開創器ホルダを示す。開創器受容部21は、開創器Rを解放可能に且つ確実に掴むように適合され、および先の例示的実施形態のものと同一である。固定長さを有する、すなわち伸縮式でない開創器ロッド20が、着脱可能なボールジョイント接続30によって伸縮式支持ロッド10の内側パイプ11に他端で取り付けられている。作動リング15(これによってロック機構がブロック位置から解除位置へ移行される)が、ボールジョイント30の真下で伸縮式支持ロッド10の内側パイプ11に取り付けられる。
【0057】
第6の例示的実施形態による伸縮式開創器ホルダは、締結機構50を含み、締結機構50は締結レール51を有し、および手術台Oの手術台レール100に取外し可能に締結されるように適合される。本例では、締結機構50は、手術台レール上に横方向に配置され、およびねじによってそれに締め付けられる。伸縮式支持ロッド10の外側パイプ12は締結受容部60を含み、締結受容部60は締結レール51の長手方向に沿って締結レール51上で押すことができる。
【0058】
締結レール51は、実質的に円形の領域52と別の領域53とから構成された断面を有し、ここでその他の領域は円形セグメント領域であり、その結果、2つの領域は一緒に鍵穴の形状に本質的に一致する。伸縮式支持ロッド10の締結受容部60は、内壁62と2つの側壁63とを有する凹部61を有し、凹部61の断面は締結レール51の断面に実質的に一致し、すなわちそれは同じく鍵穴の形状を本質的に有する。加えて、凹部61の内壁62は、締結受容部が摺動されると締結レール51と一緒に少なくとも1つのアンダーカットを形成する。このようにして伸縮式支持ロッド10に存在する引張力を締結受容部60から締結機構50の締結レール51へ伝達することができる。凹部61の側壁63は、締結レール51の断面領域の別の領域53の横表面54から離間され、および締結レール51に対する伸縮式支持ロッド10の回転が、特に図10および図11から明らかなように、所定の角度範囲に制限されるような方法で方向付けられる。
【0059】
図10および図11に示されるもののような締結凹部60の側壁63に対する締結レール51の横表面54の角度および距離は、開創器ホルダが傾いて離れることを防止するだけでなく、同様に開創器ホルダが患者Pの上に落下することも防止する。これは、伸縮式開創器ホルダが、締結機構50の締結レール51上で押されると、締結レール51に対して所定の角度範囲においてのみ回転できることを意味する。このようにして、それが患者Pの上に傾くまたは落下することによって患者Pに危害を与える可能性はなく、それが無菌領域を外れて、殺菌されてない領域へ、または少なくとも確実に殺菌されていない領域へ傾斜および落下する可能性はない。さらに開創器受容部21が開創器Rに締結されると、伸縮式支持ロッド10はもはや何かの事情で滑ることもできない。
【0060】
本発明の作動原理をこの例示的実施形態に基づいて図11〜13を参照して詳細に再度記載する。2つの異なる手順が本例示的実施形態に存在する。
【0061】
第1の手順は上に記載した手順に非常に似ている。このため、伸縮式開創器ホルダは、2つの締結機構50を含み、そのそれぞれは手術を始める前に手術台の一方の側で手術台レール100に締結される。
【0062】
外科医は最初に患者Pの胸骨を開き、開創器Rを挿入し、開創器Rを使用して患者Pの胸骨を広げる。胸骨の一方の側を露出するように、すなわち持ち上げるように、例えば胸の内壁に沿って延びる動脈を自由に切開するように、外科医は、持ち上げられるべき胸骨の半分の側の締結レール51に対し伸縮式開創器ホルダを押す。次に外科医は開創器受容部21を使用して開創器Rを開創器ホルダに固定する。ここで外科医が、開創器ホルダが配置されている胸骨の側を持ち上げることを望む場合、外科医は片手作動機構15を使用して伸縮式支持ロッド10を伸ばし、それにより開創器ロッド20は開創器Rと一緒に傾けられる。開創器Rの遠位脚部は、持ち上げられない胸骨の半分に支持され、開創器Rの近位脚部は持ち上げられるべき胸骨の半分を上方へ引き上げる。
【0063】
患者Pのこの側で作業を首尾よく実行した後、伸縮式支持ロッド10は非常に短くされるので開創器受容部21は実質的にモーメントがない。この状態で、開創器Rは特に容易におよび片手だけを使用して開創器受容部21から取り外すことができる。従って外科医は開創器Rを開創器受容部21から取り外し、伸縮式開創器ホルダを締結レール51の長手方向において横方向に締結機構50から離れるように押すまたは引く。次に外科医は伸縮式開創器ホルダを、握りを変えることなく、患者Pの反対側に取り付けられた第2の締結機構50の締結レール51に対して押し、開創器受容部21を開創器Rに、すなわち反対側の脚部に前のように取り付け、ここで再び胸骨の片側半分を、すなわち胸骨の他方の半分を、伸縮式支持ロッド10の延伸を使用して、持ち上げることができる。
【0064】
このようにして外科医は、スタッフの補助なしにおよび非無菌領域に入る危険にさらされることなく、所望の胸骨の半分を首尾よく露出するまたは持ち上げることができる。この第1の手順において、外科医は、伸縮式開創器ホルダが、胸骨が持ち上げられる患者Pの側に常に配置されるという利点を有する。これは患者Pの胸部内で切開されるべき領域の最良の視界を提供するので、外科医は、胸骨の半分の持ち上げられない側に好都合に常に位置する。
【0065】
第2の手順において、外科医は、手術を始める前、手術台Oの一方の側だけで手術台レール100に締結された1つの結合機構50だけを必要とする。
【0066】
外科医は最初に第1の手順のように全てのステップに従う、すなわち伸縮式開創器ホルダを締結機構50に固定し、開創器Rを開創器受容部21に締結し、開創器ホルダが配置されている側の胸骨の半分を持ち上げるように伸縮式支持ロッド10を延ばす。ここで外科医が他方の胸骨の半分を持ち上げることを望む場合、外科医は伸縮式開創器ホルダを患者Pの反対側に再配置する必要はなく、実質的にモーメントのない開創器受容部21の状態を越えて伸縮式支持ロッド10を単に短くすることができる。このプロセスにおいて、開創器ホルダが配置される側の胸骨の半分に圧力が加えられる。上に既に記載したように、肋骨は外方に曲げるよりも押し込むことがより難しいので、押された胸骨の半分は本質的に開始位置のままであり(たとえ広がっていても回転も上昇も下降もされない)、胸骨の反対側半分が持ち上げられる、または露出される。この場合、外科医が同じく位置する側に伸縮式開創器ホルダが配置される間、伸縮式支持ロッド10はかなり短くされるので、手術中、外科医を邪魔しない。患者Pにかけられる力は、伸縮式開創器ホルダを延ばすことによって胸骨の半分を露出するときよりも伸縮式開創器ホルダを短くすることによって胸骨の半分を露出するときにわずかにより大きい。しかしながらこれは患者Pの大部分に影響を及ぼすものではない。この第2の手順において、外科医は伸縮式開創器ホルダを再配置する必要がなく、締結機構50と再配置するための時間との両方を節約する。
【0067】
この後、図7を参照して本発明の第7の例示的実施形態を記載する。第7の例示的実施形態は、締結受容部60が伸縮式支持ロッド10の自由端部に配置されず伸縮式支持ロッド10の側面に、より具体的には外側パイプ12に取り付けられているという点で第6の例示的実施形態と異なる。さらに、容易に取出し可能なコッタボルトを含む着脱可能なヒンジジョイント30が例えばボールジョイントの代わりに開創器ロッド20と伸縮式支持ロッド10の間に設けられる。
【0068】
この後、本発明の、または本発明の各例示的実施形態のさらなる利点を記載する。
【0069】
1つまたは複数の締結機構50の使用は、外科医が、締結レール51を使用するとき、他の手術用品に損傷を与える危険性をなくすという利点も有する。外科医が伸縮式開創器ホルダを被覆された手術台レールに直接支持した場合、外科医は、手術台Oを覆うドレープの下に隠される可能性がありまた接続されてない可能性のあるケーブル、チューブおよび光ファイバが支点にないかどうかわからない可能性がある。
【0070】
図10は締結受容部60および締結レール51の形状を示す。内壁62から側壁63、63への移行部に設けられる突出部は、締結レール51の周囲表面55から横表面54、54への移行部とともにアンダーカットを形成する。図10から明らかなように、横表面54、54は互いに平行であり、一方で側壁63、63は互いの間である特定の角度を形成する。このようにして、締結レール51の周りでの伸縮式支持ロッド10のある特定の移動自由度が存在し、これにより使用中、伸縮式開創器ホルダの可変形状への適応性が許容される。同時に、側壁63、63は締結レール51周囲の伸縮式支持ロッド10の回転を制限し、それにより伸縮式支持ロッド10の上側領域は非無菌領域の中に傾斜できず、同様に患者Pの上に傾斜できない。2つの側壁63、63の角度は伸縮式支持ロッド10の長手軸に対して対称である必要はなく、必要に応じて形成されてよい。
【0071】
締結レール51上で締結受容部60を横方向へ押すことを容易にするように、締結レールを一端または両端でテーパすることができる。これは押すことを、特に片手操作において容易にする。さらに、外科医は締結受容部60の領域で、すなわち非無菌領域で伸縮式支持ロッド10を掴もうという気にならない。
【0072】
締結受容部はまた、伸縮式支持ロッド10の自由端部の方に開放されなくてもよく、伸縮式支持ロッド10の長手軸に対して任意の角度で配置されてよい。例えば、締結受容部60は手術台Oの方へ伸縮式支持ロッド10の長手軸に対して横方向に開放されてもよく、締結レールは90°回転されて配置され、手術台Oの外方を向いてもよい。
【0073】
さらに、2ピース伸縮機構の代わりに3ピースまたは多ピースの伸縮機構が伸縮式開創器ホルダに使用されてもよい。内側パイプ11は外側パイプ12に対して回転しないように固定されてもよいが、特定の範囲内で回転可能であってもよい。
【0074】
図14〜19は本発明による開創器ホルダの第8の例示的実施形態を示す。上に記載した例示的実施形態と対照的に、開創器ロッド(開創器レバー)20と支持ロッド(支持部)10との間の動作接続は、ここでは着脱可能なヒンジおよびボールジョイントによってではなく、緩やかなフック機構によって実現される。
【0075】
詳細には、図14および図15による支持ロッド10は内側パイプ11から構成され、内側パイプ11はここではスピンドルの形態をとり、受入シリンダの形態の外側パイプ12の中に軸方向に移動可能におよび回転可能に取り付けられる。受入シリンダ12の端面で軸方向に支持される刻み付きナット80がスピンドル11に螺合される。さらに、レバー81などによって手動で解放可能なさらに別のラッチ係合(詳細には示されない)が受入シリンダ12に設けられてもよく、および例えば支持部10の各セグメントを清掃できるように、スピンドル11を受入シリンダ12から取り外すようにスピンドル11を迅速に解放するために使用可能である。
【0076】
伸縮式開創器ホルダを手術台または同様のプラットフォームに固定するための締結機構50は図19に特に示されるように支持ロッド10の一方の(下側)端部に設けられる。上で既に記載したように、締結機構50は、手術台に固定するための手動作動可能なクランプまたはバークランプ82の形態の専用個別ユニットを含み、これに締結レール51が好ましくは回動式/回転式およびロック可能に取り付けられる。一方、支持ロッド10は下側端部または端部に締結受容部60を有し、これは好ましくはヒンジ状の態様で締結レール51と係合するように促されることができる。
【0077】
特に図16〜18に示されるように、U字形またはフォーク形の支持要素83が、支持要素83の2本の脚が互いに平行におよび支持ロッド10に関して軸方向に延びるように、支持ロッド10の反対側(上側)端部に配置される。2本の脚はクロスピン84によって互いに接続される。代替方法として、しかしながら、支持ロッドの上側端部で、クロスピンに対応し得る横方向縁部または部片を一体に形成すること、および各縁部長手方向端部にエンドストッパを備えた横方向縁部を提供又は設計することも考えられる。
【0078】
同じく図16〜18に特に示されるように、開創器ロッド20の近位端は、環状隆起部または溝の形態の複数の軸方向に離間された係合点/作用点85を有し、それにより対応する数の(半径方向)アンダーカットが形成される。換言すると、この例示的実施形態では開創器ロッド20に支持用突起は形成されず、半径方向に自由にアクセス可能なアンダーカットが形成され、この中に支持ロッド10のクロスピンまたはクロス部片84をピン/部片84の横方向において挿入可能である。クランプ状の態様で円周方向に閉鎖されず溝を付けられたある種の支持用突起を開創器ロッド20に形成してもよく、それによりこの場合クロスピンまたはクロス部片84をその横方向においてラッチ/クリップできることが指摘される。
【0079】
従ってアンダーカット85は開創器ロッド20が選択された作用点でクロスピン84から長手方向に滑り落ちることを防止し、および2本の脚部は開創器ロッド20がピン84から横方向に滑り落ちることを防止する。さらにアンダーカットは開創器ロッド20がクロスピン84の周りをヒンジ状の態様で回動することを許容し続けるが、ここで2つの構成要素(開創器ロッド20と支持部10)の間の動作接続は、解放可能な/緩やかな支持によって達成される。
【0080】
本発明によるリフティング装置の、すなわち伸縮式開創器ホルダの全体システムは結果として、3つの異なる別個の、すなわち着脱可能に接続された/接続可能な、主要構成要素から本質的に構成される。
【0081】
一例として、それは、開創器用の適合ユニット21を含む開創器レバー20から構成された部分と、高さ調整可能な装置を表す第2の部分、すなわちいわゆる支持部10と、レール51が配置される手術台レール用のアダプタ(締結機構)50を形成する第3の部分とから構成される。
【0082】
手術台は手術器具を準備するとき手術前にすでに無菌ドレープで覆われる。手術台アダプタ(締結機構)50が次に手術台レールに締結され、それにより無菌取付けおよび再配置の問題が回避される。アダプタ50それ自体はここで無菌であり、それに配置される支持部10は手術台の面の下の非無菌領域に突き出ない。患者の胸部の乳腺動脈の両方が切開される場合、各アダプタ50が手術台の両側に取り付けられる。その後支持部10を、クランプ82を解放することによって一方のアダプタから他方のアダプタ50へ無菌状態で再配置することができる。
【0083】
次に手術は、最初に開創器レバー20も支持部10も使用することなく、胸骨を切断し、開創器を挿入することによって開始する。乳腺動脈の切開のため、ここで外科医は支持部10を外科医の反対の手術台側に配置された手術台アダプタ50の締結レール51に配置する。次に外科医は、開創器レバー20の自由な近位端が支持部10の方向を指すような方法で、開創器を含む開創器受容部21に対し開創器レバー20を適合させる。2つの記載した作業ステップは、既に上に記載したように、単に開創器に対し開創器受容部21を単純に配置または押すことによって機能する。
【0084】
手術台アダプタ50自体は本例示的実施形態において、手術台レールの上に且つそれと平行に延びるまたは向けることができる締結レール51を含むので、外科医は、患者の大きさおよび位置によりもたらされる手術台アダプタ50と開創器との間の長手方向のずれを補償するのに十分に余裕がある。このレール51は、確実な適合地点/締結受容部60と協働して、支持部10を可能な限り垂直に向け、それにより支持部10は確実に配置され、手術領域に落下する可能性はない。別の利点は、外科医がレール51を適合地点として使用するとき、他の手術用品を損傷する危険性がなくなるということである。
【0085】
開創器レバー20が開創器に、および支持部10が手術台アダプタ50に接続された後、支持部10の高さが、作動要素/手動ホイール/刻み付きナット80を使用してある特定度まで上方に調整される。本例示的実施形態では、これは伸縮パイプ12内のねじ付きロッド11と、相対的に大きい作動要素として設計されたナット80とによって実行される。続いて選択された作用点85でクロスピン84上に垂直に解放式に配置される開創器レバー20を使用して、開創器を一方の側で持ち上げることができる。物理的に良好なレバー状態のおかげでこれは非常に円滑に実行可能である。開創器レバー20の自由な近位端は、支持部10の上側端部においてクロスピン/クロス部片84上で提供された作用点85に挿入され、ここで作用点85はアンダーカットの態様で設計され、それにより開創器レバー20は横に滑ることも長手方向にクロスピン84を外れて滑ることもできない。ここで支持部10はその長さを延ばすようにさらに調整可能であり、これは、外科医にとって最適な動脈の視界が得られるまで、スピンドルの駆動によって、手動で単に持ち上げられるよりもかなり精妙に行われる。開創器の支持部10はその開始位置に対して斜めに配置される。
【0086】
外科医がこのシステムに慣れている場合、開創器レバー20を支持部10に接続する前に支持部10の適切な長さが既に設定されたので、後続の調整は省略することができる。
【0087】
システムを使用するための別の選択肢は、まだ調整されておらずその最低高さである高さを有する支持部に開創器レバー20を取付け/配置すること、および続いて作動要素80だけを使用して開創器を斜めの位置にすることである。本発明により支持部10および開創器レバー20を2つの部品に分けた結果、およびこれらの解放式/脱着可能な接続の結果、外科医は非常に柔軟にかつ個々に作業することもできる。
【0088】
可能な限り人体を傷つけないように胸骨を持ち上げ、それに続いて胸骨のこの露出された位置を保持するように、開創器レバー20と支持部10の間に、固定されない、ロック不可能な、および形状をロックされない接続が存在する。このようにして、あらゆる面における開創器レバー20と支持部10の間の特定の角度的なずれは、患者に悪影響を及ぼすことなく補うことができる。支持部10の長手軸は常に実質的に垂直であり、それにより手術台の表面の外側に空間は取られない。さらに、支持部10は、斜めに配置された開創器よりも大幅に高いことはなく、これは外部締結手段を含む他のシステムに勝る別の利点を示す。
【0089】
本発明の第8の例示的実施形態による記載した変形実施形態において、高さ調整のためのスピンドルねじ山は、歯付きラックおよび対応するクランク機構で置き換えることもできる。さらに、支持部10は、第1の別個の要素を超える持上げ高さを達成するように、上に記載した例示的実施形態のように、多ピース伸縮部材として設計可能である。このようにして、全ての要素を非常にコンパクトな方法でそれぞれの他方の内側に埋没させること、さらに高い高さまで伸長されることも可能であり得る。
【0090】
既に上に示したように、小型作動要素81が、高さ調整可能な支持部10の別個のセグメント11、12の間に、セグメント11、12を分解しこれらをより丁寧に清掃できるように、任意選択的に設けられた。組み立てられた状態で、この要素81は使用者がセグメント11、12を意図せず引き離すことを防止する。最後に、別の変形実施形態は、完全な手術台アダプタ50を省略可能であり、支持部10は手術台レールに、または手術領域の他の保持装置に直接配置することができる。
【0091】
開創器レバー20の近位端は、(ハンドルの自由端部に1つまたは複数の作用点85を含む)人間工学的なハンドルとして設計可能であり、または支持部10の相手方部片(クロスピン84)を挿入するための作用点(拘束位置)85だけを含むことができる。
【0092】
理想的には開創器レバー20は結果としてどんなものであれ締結要素も作動要素も一切含まず、単に確実な嵌め合いによって、例えば単純に押すか差し込むことによって、開創器の相手方形状と結合することができる。
【0093】
個々の特徴のさらなる組合せが可能であり、および多数のさらなる修正形態および変更形態が、本記載ならびに添付の請求項および図面から当業者に明らかになる。
以下の項目は、国際出願時の請求の範囲に記載の要素である。
(項目1)
一方の端部を手術台(O)に支持可能である、長さ調整可能な支持部(10)と、
一方の遠位の端部が、開創器(R)を解放可能に把持するように適合された開創器受容部(21)を備え、他方の近位の端部が、好ましくは、レバーの力を適用して、脱着可能な接続手段によって、伸縮式支持部(10)の他方の自由端部に、支持するとともに脱着可能な態様で動作可能に接続可能である開創器レバー(20)と、
を備える、伸縮式開創器ホルダ。
(項目2)
前記長さ調整可能な支持部(10)が、内側パイプ(11)および外側パイプ(12)を有する伸縮式支持パイプであり、前記内側パイプ(11)および外側パイプ(12)は、ハンドル(80)によって互いに移動可能であり、および選択された長さ設定で互いにロック可能であることを特徴とする、請求項1または2に記載の伸縮式開創器ホルダ。
(項目3)
前記支持パイプ(10)がスピンドル機構として、好ましくは、伸縮式パイプとして機能する前記外側パイプ(12)の中を案内される、スピンドル及びねじ状のロッドとして設計された内側パイプ(11)を有するスピンドル機構として設計され、
前記ハンドル(80)が、前記スピンドル(11)に螺合され、前記伸縮式パイプ(12)に軸方向に支持された手動ホイールまたはスクリューナットを備えることを特徴とする、請求項3に記載の伸縮式開創器ホルダ。
(項目4)
前記開創器レバー(20)が開創器ロッドであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の伸縮式開創器ホルダ。
(項目5)
前記開創器レバー(20)の前記近位の端部が、少なくとも1つの、好ましくは複数の長手方向に離間された、前記接続手段として機能する係合点/作用点(85)を備え、
前記係合点/作用点(85)上で前記開創器レバー(20)を、好ましくは緩やかに配置される方法で、前記支持部(10)に動作可能に選択的に接続可能であることを特徴とする、請求項1または4に記載の伸縮式開創器ホルダ。
(項目6)
前記少なくとも1つの作用点(85)が、自由に進入可能なアンダーカットを形成し、
前記支持部(10)の前記他方の自由端部の拘束突出部またはピン(84)が、相対的な回動運動が前記支持部(10)と前記開創器レバー(20)の間で許容されながら、前記開創器レバー(20)がその長手方向において前記支持部(10)から滑り抜けることが防止されるような方法で前記アンダーカットの中にラッチ可能であることを特徴とする、請求項5に記載の伸縮式開創器ホルダ。
(項目7)
前記アンダーカット(85)が、好ましくはロッド状の前記開創器レバー(20)の切欠きまたは突起の形態で設計され、前記切欠きまたは前記突起が好ましくは前記ロッド状開創器レバー(20)の外面の周りに形成されることを特徴とする、請求項6に記載の伸縮式開創器ホルダ。
(項目8)
前記伸縮式支持部(10)が関節式に手術台(O)に支持可能であることを特徴とする、請求項1に記載の伸縮式開創器ホルダ。
(項目9)
前記開創器レバー(20)を前記支持部(10)に動作可能に選択的に接続される動作可能な接続部(30)が、好ましくはヒンジピンとして取外し可能なコッタピンを備える脱着可能なヒンジジョイントであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の伸縮式開創器ホルダ。
(項目10)
別個の適応的締結機構(50)を備え、前記別個の適応的締結機構(50)は、手術台(O)または同様のプラットフォームに固定するために特別にまたは普遍的に適合され、かつ、前記支持部(10)をそれに支持する態様で結合できる専用の締結レール(51)を備えることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の伸縮式開創器ホルダ。
(項目11)
前記支持部(10)が、ヒンジの方法で、前記締結レール(51)に結合式に係合可能な締結受容部(60)を有することを特徴とする、請求項10に記載の伸縮式開創器ホルダ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19