【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度 経済産業省「産業技術開発(次世代産業用三次元造形システム技術開発)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記調整手段は、前記ノズルヘッドの移動に応じて、前記光源からの光線が前記光学系に到達するように、前記光源の光線射出高さを調整する請求項1に記載の光加工装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明を適用した好適な実施形態について、図面を参照して、例示的に詳しく説明記載する。ただし、以下の実施の形態に記載されている、構成、数値、処理の流れ、機能要素などは一例に過ぎず、その変形や変更は自由であって、本発明の技術範囲を以下の記載に限定する趣旨のものではない。
【0015】
以下に説明する2つの実施形態、ならびに、それらの実施例もしくは変形例は、本発明の光加工装置を、粉体材料を加工光線(加工光、光線、光線ビーム)により溶融して積層
造形を行う造形装置に適用したものである
。
【0016】
<実施形態
の概略>
第1、第2実施形態の加工装置は、
図1乃至
図6により説明される。第3乃至第5実施形態の装置は、
図7乃至
図13により説明される。
【0017】
第1実施形態
乃至第5実施形態の共通の課題は、ノズルヘッドを移動させながら光加工する場合において、ノズルヘッドへの光線エネルギーの伝搬を、従来のような光ファイバーに頼らずに
行なうことにある。即ち、ノズルヘッド動作に対して物理的な外乱力として働く懼れのある光ファイバーのような光伝搬媒体を用いずに、開放空間を伝搬媒体として、光源からの光線エネルギーを、ノズルヘッドを介して加工点に伝搬することにある。
ここで、光線エネルギーは、可視光、ミリ波、赤外線、紫外線などあらゆる波長域の電磁波のエネルギーでよい。
【0018】
第1実施形態では、光源から射出される加工光線は「平行光線」を用いる。他方、第3乃至第5実施形態では、回転対称体ミラー(楕円体ミラー、や回転放物面体ミラー)を用いる
が、この際
、楕円体ミラー
に対しては「集光光線」を用い
、放物面体ミラーに対しては平行光線を用いる。
【0019】
(第1実施形態)
以下、
図1乃至
図6を参照して、第1実施形態
にかかる光加工装置
100と、その変形例であるマルチヘッド光加工装置について詳細に説明する。
【0020】
光加工装置100は
、光源と独立して移動する(つまり、相対位置が可変である)ノズルヘッド
110を含み、その適用分野は、ノズルヘッド(加工用ノズル)
110が集光した光が生み出す熱で流体中の粉体材料を溶融することにより三次元造形物を造形する、もしくは、肉盛溶接を生成する装置である。
【0021】
光加工装置
100は、ノズルヘッド
110の他に、加工光線(加工光、光線、光線ビーム)を発生してその加工光線を平行ビーム(平行光線)の形態でノズルヘッド
110に向けて射出する光源
101と、加工対象である加工基板
108を載置するステージ
105と、粉体材料を収容する材料収容装置
106と、粉体材料をノズルヘッド
110に供給する
供給パイプ
103と、ノズルヘッド
110を移動するノズルヘッド移動機構
104と、光加工装置
100の動作を制御する制御部
102とを備えている。
【0022】
光源
101としては、本明細書では、便宜上、レーザ光源を用いることとするが、LED(
Light Emitting Diode)、ハロゲンランプ、キセノンランプなども用いることができる。材料の溶融に使う光線はレーザ光に限るものではなく、加工点
160で粉体材料を溶融することができるものであればどのような光線でもよい。例えば、マイクロ波から紫外線領域の電磁波などの光線であってもよい。
【0023】
材料収容装置
106は、ノズルヘッド
110に対し、
供給パイプ
103を介して材料(粉体、粉体材料)を含むキャリアガスを供給する。例えば、材料は金属粒子、樹脂粒子などの粉体材料である。キャリアガスは、不活性ガスであり、例えばアルゴンガス、窒素ガス、ヘリウムガス、などの流体でよい。
供給パイプ
103は例えば樹脂あるいは金属のホースであり、キャリアガスに材料を混入させた粉体流をノズルヘッド
110へと導く。ただし、材料は線材でもよく、この場合、キャリアガスは不要となる。
【0024】
ノズルヘッド
110は、たとえばコアキシャル型と呼ばれる構造を有していてもよい。その場合、ノズルヘッド
110は回転対称軸を有し、加工点
160へ向かい先細りする回転対称な外部筐体と内部筐体から構成される。両者は、間隙(スリット)が形成されるように配置される。粉体流は、このスリットを通り加工点
160へと射出され、加工点
160で収束される。このとき、スリットの幅を変化させることで、粉体のスポット径を変化させることができる。つまり、外部筐体をスライドさせてスリット幅を変化させることにより、線状の造形物の幅を変化させることが
でき、細書きあるいは太書きを実現できる。制御部
102は、細書きまたは太書きなどの造形条件を入力し、入力した造形条件に応じて光源
101からのレーザ光の出力値を変更すると共に、ノズルヘッド
110の外側筐体をスライドさせる。これにより、ノズルヘッド
110から射出される粉体の粉体スポット径を、加工基板
108上に形成する溶融プール径に合わせて制御する。
【0025】
<ヘッド走査移動機構>
図2はノズルヘッド移動機構
104の詳細構成
を示す図である。
【0026】
ノズルヘッド移動機構
104は、ノズルヘッド
110を、制御部
102内の所定のプログラムに従ってX軸(
120X)とY軸(
120Y)が成すXY平面内で所望の位置に移動し位置決めするもので、ノズルヘッド
110を、任意のXY座標系の座標位置に移動する。ここで、XY平面は、鉛直方向に垂直な水平面であり、Z軸(
120Z)方向は、このXY平面に垂直な軸である。ただし、これに限るものではなく、XY平面の法線は鉛直ではなくどのような方向を向いていても構わない。XY平面の法線を鉛直方向に限るものではなく、鉛直方向にした場合、加工に使用されなかった余剰な粉体材料が鉛直方向に落ちるため、回収しやすいという利点がある。
【0027】
Y軸方向に沿って伸びたY軸ガイドレール
104YRの一端は、制御部
102の位置決めプログラムの座標系の所定の固定位置に対応する固定物に固定されている。このY軸ガイドレール
104YR上に沿ってY軸スライダー
104YSが位置決めプログラムに即して自在に移動する。
【0028】
X軸ガイドレール
104XRは、このX軸ガイドレール
104XRがY軸ガイドレール
104YRに直交するように、Y軸スライダー
104YSに固定されている。ただし、この限りではなく、X軸ガイドレール
104XRは、Y軸ガイドレール
104YRに斜交するように取り付けられてもよい。以上により、Y軸スライダー
104YSがY軸ガイドレール
104YR上を移動するにつれて、Y軸スライダー
104YSに固定されたX軸ガイドレール
104XRが、そのY軸ガイドレール
104YRに対する直交状態(あるいは斜交状態)を保ちながら移動する。
【0029】
X軸に平行なX軸ガイドレール
104XR上をX軸スライダー
104XSは自在に移動する。ノズルヘッド
110本体はこのX軸スライダー
104XSに固定されている。ノズルヘッド
110のX軸位置は、X軸スライダー
104XSがX軸ガイドレール
104XRに沿って移動させることによって位置決めすることができる。
【0030】
X軸スライダー
104XSと同じく、Y軸スライダー
104YSは、X軸ガイドレール
104XRの所定の位置に固定され、Y軸スライダー
104YS自体は、内部を貫通するY軸ガイドレール
104YRに沿ってY軸方向
120Yにスライドするが、X軸方向
120Xには移動しない。
【0031】
したがって、
制御部102は、所定の制御プログラムにより、ノズルヘッド
110を座標(x1,Y1)に移動するときは、X軸スライダー
104XSを「x1」位置に移動させる指令と、Y軸スライダー
104YSを「Y1」位置に移動させる指令を送る。
【0032】
かくして
、ノズルヘッド移動機構
104は、制御部
102の位置決めプログラムを介してX軸スライダー
104XSとY軸スライダー
104YSに対してコマンドを送ることにより、ノズルヘッド
110を所望の加工位置(X、Y)に位置決めすることができる。
【0033】
<光源>
光源101は、ノズルヘッド
110に光線方向反転光学系として設けられた平板ミラー
146に光線が到達するように、平行光線
142を射出する
。
【0034】
ノズルヘッド
110がXY平面内を自在に移動するのと対照的に、光源
101は固定位置に不動である
。
【0035】
また、
光源101は、平行光線(
142Xあるいは
142Y)を、走査系が1次元であれば直接ノズルヘッド
110に向けて、XY二次元走査系では、中継用の光線方向変換ミラー
145に向けて照射する。
【0036】
平行光線はその性質故に、開放空間中を進行しても、平行状態は変わらない。また、光源
101とノズルヘッド
110との間では、光線方向変換ミラー
145や平板ミラー
146のみが設けられ、レンズなどの像を変倍する光学系は用いられていない。この平行光線
142は、光源
101とノズルヘッド
110との間では、ノズルヘッド
110がXY平面内をいかに移動しようとも、光源
101と光線方向
変換ミラー
145間の距離、あるいは、光線方向変換ミラー
145と平板ミラー
146の間の距離が伸縮することはあっても、平行光状態は保たれ、即ち、光線のエネルギー密度は射出時のものに保たれて、ノズルヘッド
110に到達する。
【0037】
本実施形態において、光線方向変換ミラー
145と平板ミラー
146とは、それぞれY軸スライダー
104YSおよびノズルヘッド
110に固定である。しかし、光線方向変換ミラー
145と平板ミラー
146との協働により、ノズルヘッド
110のXY平面内の任意の移動があっても、移動したノズルヘッド
110の平板ミラー
146に平行光線をリアルタイムで導く方法も考えられる。
【0038】
<ノズルヘッドの構成>
ノズルヘッド110は、ノズル部分
107を備えており、ノズル部分
107はたとえば内部に同心円状の2層の中空の管路を備えている。ただし、このような構造に限るものではない。また
、ノズルヘッド
110は、ノズル部分
107と光学系部分とからなる。ノズル部分
107の中心側の管路の中を集光される光線が通り、その外側の管路には粉体流が通る。光線と粉体流とは、ノズルヘッド
110の先端から射出され、加工基板
108上の加工点で合流して溶融プールを形成し、造形が行われる。
【0039】
ノズルヘッド
110のノズル部分
107の内部では、ノズルヘッド
110の集光光学系により加工点
160に向けて集光された加工光線(加工光、光線、光線ビーム)と共に、材料収容装置
106から供給された粉体が同じく加工点
160に向けて供給され、結果的に、ノズル部分
107の出口から両者が加工点
160に送られて、粉体が加工光線(加工光、光線、光線ビーム)の熱により溶融される
。
【0040】
図3は、ノズルヘッド110内に設けられた光線方向変換光学系140の構成のXZ断面図である。図3は、説明の簡略化のために、2つのガイドレールのうち、X軸スライダー
104XSが摺動するX軸ガイドレール
104XRのみを示し、Y軸スライダー
104YSなどの図示は省略している。即ち、
図1では、光源
101からの射出光線はY軸スライダー
104YSに向かうが、
図3では、Y軸スライダー
104YSの図示は省略して、X軸スライダー
104XSの平板ミラー
146に向かう光線のみ示している。
図3で、光源101からの射出光は集光レンズ301の働きにより、平行光線となる。図3に示すように、ノズルヘッド
110は、
光線を集光させる集光レンズ
270を内部に備え、その集光レンズ
270の下流に、ノズル部分
107を備えている。ノズルヘッド
110に供給されたレーザ光は、内部に設けられた集光レンズ
270を介することで、加工
点160において集光するように調整されており、ノズル部分
107内部を経て加工
点160に照射される。なお、集光レンズ
270は、ノズル部分
107に対する相対位置を制御することで、集光位置を制御可能に設けられている。
【0041】
ノズル部分
107の直上方には集光レンズ
270が設けられ、光源
101からの平行光線
142を集光してエネルギー密度が高められた加工光線(加工光、光線、光線ビーム)が加工点
160に到達する。
【0042】
集光レンズ
270の直上方には、平板ミラー
146の法線が、X軸とZ軸の両軸に対して45度傾けられて設けられている。
【0043】
X軸ガイドレール
104XRに平行な平行光線
142Xは、平板ミラー
146に入射すると、反射により光路がZ軸に沿うように90度折り曲げられて、平行光
線142のまま、集光レンズ
270に向かう。
図4で、光源
101から射出された平行光線
142Yは、Y軸スライダー
104YSの光線方向変換ミラー
145に入射し、そこで、反射により90度だけ折り曲げられ、X軸スライダー
104XSの平板ミラー
146に入射する。
平板ミラー
146は、この平行光線
142Xを反射により90度折り曲げて下方(鉛直下向き)の集光レンズ
270に入射させる。集光レンズ
270は集光光
142Z−Fを加工点
160に向けて集光する。
図4では、光源
101からの平行光線
142Xは
、光線方向変換ミラー
145を経て、X軸スライダー
104XSの平板ミラー
146に到達する。平板ミラー
146で反射されて折り曲げられた平行光線
142Z−Cは同じく集光レンズ
270に入射する。集光レンズ
270は、平行光線を加工点
160に向けて集光光(集光光線)
142Z−Fに変換する。
【0044】
<光線方向変換ミラー
145の動作>
次に、図
5を参照しつつ、ノズルヘッド
の移動に対し、加工光線(加工光、光線、光線ビーム)である平行光線
の追跡動作について説明する。 図
5は
、Y軸スライダー
104YSが座標位置Y0に停止しているときのノズルヘッド
110と光源
101を示した図である。時刻tが、t1→t2→t3と変化したとき、X軸スライダー
104XSの座標値が、x1→x2→x3と変化する。このとき、平行光線
142の経路が、
142(t1)→
142(t2)→
142(t3)と変化し、その経路長が変化しても、平行光の状態は保たれる。従って、加工点
160における加工光線の照射エネルギーに変動はなく等量であることを示している。したがって、加工点
160における加工は加工プログラムの仕様通りに行われる。
【0045】
光加工装置
100は、ノズルヘッド
110が移動している際、切れ目なく加工光線をノズルヘッド
110に連続して供給することにより、加工のリードタイムを短縮できる。ただし、この限りではなく、加工光線はパルスレーザーなどでもよい。また、敢えて加工光線を止めることにより、造形物の冷却を促し、造形精度を向上させることもある。一方、
光源101は固定位置に置かれ、X,Y,Zのいずれの方向に対しても移動することはない。
【0046】
光加工装置
100では、光源
101からY軸方向
120Yに沿って射出された加工光線を、ノズルヘッド
110に到達させるために
、Y軸スライダー
104YSに平板の光線方向変換ミラー
145を設ける。これによりX軸方向
120Xに向けて光線を反射させることができる。
【0047】
このような構成とすることで、光線方向変換ミラー
145のY軸スライダー
104YSに対する相対位置を、ノズルヘッド
110の移動に応じて変化させる必要がない。つまり、光線方向変換ミラー
145の駆動機構が必要ないため、シンプルな構成になるという利点がある。
【0048】
光線方向変換ミラー
145により反射されX軸方向
120Xに沿って伝搬する加工光線(光線、光線ビーム、平行光線)は、X軸スライダー
104XSに設けられた平板ミラー
146により、ノズル部分
107に向けて下方(Z
軸方向
120Z)に折り曲げられる。
【0049】
Y軸スライダー
104YS上の光線方向変換ミラー
145の法線は、Y軸とX軸の双方に対して45度傾いており、Z軸方向に直交している。同じく、ノズルヘッド
110上の平板ミラー
146は、Y軸とZ軸に対して45度傾いている。
光線方向変換光学系140は、X軸に平行な平行光線142Xの伝搬方向をZ軸方向に変換する平板ミラー146と、Z軸方向に方向を変換された光線を集光する集光レンズ270とからなる。
【0050】
X軸とY軸は、それぞれX軸ガイドレール
104XSとY軸ガイドレール
104YSに平行なので、X軸ガイドレール
104XSとY軸ガイドレール
104YSとが形成する平面は、X座標軸とY座標軸とが形成するXY平面に平行である。また、光源
101からY軸スライダー
104YS側に向けられた光線
142Yと、Y軸スライダー
104YSに設けられた光線方向変換ミラー
145により反射された光線
142Xとがなす平面も、上記XY平面に平行である。
【0051】
光源
101から射出された
平行光線
142Yは、Y軸スライダー
104に設けられた光線方向変換ミラー
145によってX軸ガイドレール
104XSに沿った
平行光線
142Xに変換される。これより、平板ミラー
146には常に同じ入射角を持った光線が入射される。したがって、X軸スライダー
104XSに固定されて設けられたノズルヘッド
110が、X軸スライダー
104XSとY軸スライダー
104YSとにより、いかなる位置に移動されても、光源
101から射出された光線は、ノズルヘッド
110の移動に追随するので、ノズルヘッド
110のノズル部分
107に精度高く到達する。
【0052】
光線方向変換
ミラー145と平板ミラー
146とにより、ノズルヘッド
110がXY平面上のどの位置に移動しても、そのノズルヘッド
110の位置に
平行光線
142を導いている。即ち、
光加工装置
100は、ノズルヘッド
110が移動しても、加工光線はノズルヘッド
110の移動に正確に追随し、ノズルヘッド
110に到達する。
【0053】
光加工装置
100は、ノズルヘッド
110の位置、移動速度、移動方向の如何によらず、ノズルヘッド
110に到達する光線のエネルギーを変動させない。換言すれば、開放空間中の伝搬による光線のエネルギーの損失は極小である。
【0054】
集光された集光光
142Z−Fは、ノズル部分
107の、内側の管路の
射出開口324に入射し、加工点
160に向けて照射される。
【0055】
前述したように、粉体流はノズル
部分107の外側の管路を通り、加工点
160に向けて吹き出される。
【0056】
こうして、集光光
142Z−Fは加工点
160上で積層加工などを行う。
【0057】
この積層加工の過程で、ノズルヘッド
110は、X軸スライダー
104XSあるいはY軸スライダー
104YSの移動により、二次元の平面領域での積層加工することができる。
【0058】
図5に示すとおり、光源
101からの平行光線は、平行光線のまま、ノズルヘッド
110が設けられたX軸スライダー
104XSに設置された平板ミラー
146に入射
される。
【0059】
この平板ミラー
146により平行光線のまま方向を変換されて反射され、さらに、集光レンズ
270により集光光
142Fに変換され、加工点
160の加工に用いられる。
【0060】
即ち
、光源
101からノズルヘッド
110までは平行光線であるので、X軸スライダー
104XSやY軸スライダー
104YSがどのように移動しようとも、平行光線が保たれる。従って、加工光線(加工光、光線、光線ビーム)は光源
101と平板ミラー
146との間では、集光もしなければ発散もせずに、平行光
線のまま保たれる。
【0061】
即ち、ノズルヘッド
110の平板ミラー
146で受光される加工光線(加工光、光線、光線ビーム)のエネルギーは、光源
101から射出された加工光線のエネルギーと同量である。換言すれば、ノズルヘッド
110が、XY平面内のどの位置に、いかなる速度で移動しようとも、加工点
160に照射されるエネルギーは等量である。即ち、均一な溶融加工が実現される。
【0062】
<第1実施形態の効果>
以上説明した本実施形態の光加工装置によれば、以下の効果が得られる。
【0063】
A:ノズルヘッド
110と光源
101とは分離されており、互いに独立して相対位置を変化させることができる。加工用の光線は、光源
101からノズルヘッド
110に向けて開放空間を介して送っている。そのため、従来ではヘッドの機動的動作の障害になっていたファイバーケーブルをノズルヘッド
110と光源
101との間で不要にしたことにより、ノズルヘッド
110の動作の機動性が向上できる。
【0064】
B:光源
101は、
集光レンズ
301を用いて平行光線に変換することができる。つまり、光源
101の光源スポットと加工点
160側の集光スポットは共役関係にある。これにより、光源スポットの大きさを変化させることで加工点
160側の集光スポットの大きさを変化させることができる。つまり、光加工時に造形幅を調整できるという効果がある。光源スポットを可変にするには、ズームレンズなどの機構を用いればよい。また、
光源101から発せられる光線のビームプロファイルを変化させ、造形精度の向上を図ることも可能である。このとき、ビームプロファイルを変化させる機構は、光源
101に備えれば良い。
【0065】
以上により、光源
101に光源スポットを可変にするズームレンズ機構(光源スポット可変機構)や、ビームプロファイル可変機構を盛り込むことができる。これにより、それらをノズルヘッド
110に搭載した場合と比べ、ノズルヘッド
110を軽量にでき、機動性を向上させることができる。
【0066】
C:光源
101からノズルヘッド
110への光線エネルギーの伝搬は平行光線を用いているので、光源
101からの光線をノズルヘッド
110に届けるまでの間に中継用の
平板ミラー145や光線方向変換用の
平板ミラー146が存在しても、光線エネルギーは発散も収束もされないので、ノズルヘッド
110の移動にも拘わらず、集光点(加工点)においては均一なエネルギーで光加工が実現でき、加工の高精度化が達成できる。
【0067】
D:ノズルヘッド
110の移動機構は、中継用の
平板ミラー145や光線方向変換用の
平板ミラー146により、光源
101からの平行光線はY軸スライダーYSに平行に、ノズルヘッド
110への平行光線はX軸スライダーXSに平行に伝搬させることが可能になっている。これにより、平板ミラー
146に入射する平行光線の入射状態(入射角、入射位置)を、ノズルヘッド
110の移動に関わらず常に同じにすることができる。これにより、ノズルヘッド
110に到達する光線は光源
101から射出された時点光線と同じエネルギー密度の平行光線となる。これにより、全ての加工対象領域での積層加工の均一な加工精度が保たれている。
【0068】
E:また、光線方向変換ミラー
145及び平板ミラー
146は各スライダー
104XS,
104YSに固定であり、ノズルヘッド
110の移動に合わせ、各スライダー
104XS,
104YSに対する相対位置を変化させなくてもよいという効果がある。
【0069】
F:以上の効果は
以下の3つの事項によって達成される。
・光源
101からの光線が集光レンズ
270に到達するまで平行光
線状態が保たれること、
【0070】
・光源
101からの射出光
142YはY軸に平行であり、また、X軸と平行なX軸ガイドレール
104XRと共にY軸方向に移動する光線方向変換ミラー
145の移動方向もY軸に平行であること、
【0071】
・平行光
線142XはX軸ガイドレールXRに平行であること
【0072】
G:即ち、ノズルヘッド
110がXY平面上を二次元的に移動することにより発生する、ノズルヘッド
110の、光源
101に対する方位角方向の変位によらず、光線方向変換ミラー
145の移動によって吸収されることにより、第1実施形態において、二次元平面内で自在移動するノズルヘッド
110の平板ミラー
146に対する、光源
101からの射出光の追従性が確保できる。
【0073】
(第2実施形態)
上述の
光加工装置
100において、ガイドレールはX軸ガイドレール
104SRとY軸ガイドレール
104YRとの2つにより、二次元平面を走査可能にしていた
。しかし、X軸ガイドレール
104SRとY軸ガイドレール
104YRとのいずれか一方のみ、即ち、1次元の操作用との加工装置に対しても適用可能である。同様に、
光加工装置100は単独のノズルヘッド
110を有する適用例であったが、複数の
ノズルヘッド(マルチヘッド)を用いる変形も可能である。
【0074】
複数(5個)の
ノズルヘッドを用いる例を、第2実施形態(マルチヘッド実施例)として
図6を用いて説明する。
【0075】
本実施形態に係る
光加工装置
600は第1実施形態と同様に、X軸に平行な5対のX軸方向ガイドレール(X−GR(n))と、Y軸に平行な1対のY軸ガイドレール(Y−GR(n))により形成される平面上で、5個の
ノズルヘッド(HEAD−#1〜#5)が自在に位置決めされるように構成される。変形例の個々の
ノズルヘッド(HEAD)は、
図2のノズルヘッド
110と異なるところは無い。即ち、夫々の
ノズルヘッド(HEAD)は、X軸に平行な平行光
線を鉛直下方に屈折させるフル反射ミラー(FM)と、X軸ガイドレール(X−GR)に沿って移動することによりフル反射ミラー(FM)を移動するX軸スライダー(X−SLD)を有する。
【0076】
n番目のX軸ガイドレール(X−GR(n))は、Y軸ガイドレール(Y−GR)に沿って自在に移動するY軸スライダー(Y−SLD(n))に支持される。かくして、任意のn番目のY軸スライダー(Y−SLD(n))がY軸ガイドレール(Y−GR)上を移動し
、移動するY軸スライダー(Y−SLD(n))に支持されたX軸ガイドレール(X−GR(n))上をX軸方向にX軸スライダー(X−SLD(n))が移動することにより、任意のヘッド(HEAD(n))をX軸とY軸上の任意の座標位置において位置決めできる。
【0077】
Y軸スライダー(Y−SLD(n))に設けられているミラーHMは、
光線方向変換ミラー
145と異なり、入射した光線の一部を反射し一部を透過させるハーフミラーである。
【0078】
光加工装置
600は、1つの光源(不図示)からの一本の加工光線を5つの
ノズルヘッド(HEAD(n))が共有する例である。1つの光源からの光線のエネルギーを5つの
ノズルヘッド(HEAD(n))に分配し、併せて、ハーフミラー(HM(n))の透過率(T)と反射率(R)とを適当に調整することにより、個々の
ノズルヘッド(HEAD(n))のフル反射ミラー(FM(n))に注がれる光線のエネルギー量を、個々に制御できる。
【0079】
光加工装置600において、個々の
ノズルヘッド(HEAD(n))で等量のエネルギーに設定する場合における、個々のハーフミラー(HM(m))の透過率(T)と反射率(R)は下記表(表1)に示されたセッティングを用いる。ここで、
ノズルヘッド(HEAD(n))の数を5個とし、それをnとする。光源からの1本の平行光線のエネルギーをI(W:ワット)とすると、5個の
ノズルヘッド(HEAD(n))の各々に均等に供給される、とする設計の下では、1個あたりのエネルギーは5分のI(W)である。
【0081】
以上のセッティングにより
、各
ノズルヘッド(HEAD(n))に供給されるエネルギー量は、光源からの射出エネルギーをI(ワット)とすると、一様に、I/5(W)となる。ここで、表1より明らかなように、m番目のハーフミラー(FM(m))の反射率は1/(n-m+1)
×100となる。
【0082】
(第3実施形態)
第
3実施形態
としての光加工装置700では、第1実施形態で採用した光線方向反転光学系としての平板ミラー
146を、回転対称ミラーにより置き換える
。さらにいえば、
第1実施形態の反転光学系と集光レンズの2機能を平板ミラー146に集約している。
【0083】
<加工装置の全体構成>
図7を用い
て光
加工装置
700の概念を説明する。
【0084】
光加工装置
700は、第1実施形態と
同様に、光源
701とノズルヘッド
710と、ノズルヘッド
710を移動させる走査移動機構(不図示)、さらに、制御装置(不図示)、材料供給系(不図示)、などから構成される。光源
701は、光線
742(あるいは光)を
ノズルヘッド
710に向けて射出する。かくして、光加工装置
700は、光加工装置
100と同様に、光源
701とノズルヘッド
710との間には光ファイバーなどの光線伝搬媒体を不要である。
【0085】
<走査移動機構>
本実施形態では第1実施形態の
ノズルヘッド移動機構
104がそのまま用いられている
。
【0086】
本実施形態の走査移動機構
は、第1実施形態の
ノズルヘッド移動機構
104と異
なり、平板ミラー
146と光線方向変換ミラー
145とを不要にしている
。光線方向変換ミラー
145は、光源
101から、Y軸沿いに送られてきた平行光線
142をX軸に平行に平板ミラー
146に送るものである
。しかし、光源
701からの光線をノズルヘッドに直接送出する
本実施形態では光線方向変換ミラー
145を用いる必要はない。
【0087】
<光源>
光源
701は、光加工装置
700に固定されている。光源
701は、たとえばRAYLASE社の3Dスキャナーでよく、3Dスキャナーからの光線の集光点を3次元空間内に自由に走査できる。このとき、ノズルヘッド
710に備えられた入射開口に集光点を追随させることができる。ただし、光源
701の構成は様々であり、たとえば一部稼働してもよく、光源
701の固定は、X座標方向とY座標方向に関して固定し、Z
軸方向と光源
701の鉛直軸周りの回転方向については固定されてなくても良い。このような構成で、光源
701からの光線をノズルヘッド
710に備えられた入射開口に入射させることができる。このとき、第2実施形態の光源
701は、Z座標(
図12参照)における光源
701の高さ位置(高さ調整)と、光源
701の方位角方向(
図11の角度Δα)と、光源
701のチルト角度については調整(
図13の角度Δβ)が必要である
。
【0088】
光源
701は、
光源101と同様に、固体レーザ、ファイバーレーザ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、などでよい。ただし、これに限らず、電磁波を発生するものならばなんでもよい。
【0089】
光源
701は、光源自体をZ軸(
720Z)の周りに角度αだけ回動するタレットテーブル
780により回転させられる。
【0090】
<ノズルヘッド>
ノズルヘッド
710のノズル
707内部では、光線方向変換光学系
としての回転対称ミラー
740により
加工光線742Fが加工点
160に向けて集光され
る。そして、材料供給装置から供給された粉体と共に加工点
160に向けて供給され、結果的に、加工点
160において、粉体が加工光線の熱により溶融され、溶融プールを形成する
。
【0091】
光源
701は、光線
742をノズルヘッド
710に向けて射出する。光線
742は、ノズルヘッド
710の入射開口
722に到達し、回転対称ミラー
740によって光路を鉛直方向に変換され、方向変換された光線
742Fは射出開口
724を介してノズル
707に入り、ノズル707の先端
から射出されて加工基板
108の加工点
160で光加工を行う。
【0092】
<光線方向変換光学系(回転対称ミラー)の採用>
回転対称ミラー
740は、平板ミラー
146と異なり、
内壁に反射面を有し回転対称に構成されたミラーである。
【0093】
回転対称ミラー
740は、その回転対称軸
723はノズル
707の中心軸と一致し、ミラー面はノズル
707の内側に形成されている。
【0094】
回転対称ミラー
740は少なくとも1つの焦点を形成することができ、その焦点は、ノズル
707に対して加工点側に設定することが可能である。
【0095】
一方、回転対称ミラー
740は、ノズルヘッド
710の中心軸の周りに回転対称となるように、ミラー面を形成されているので、その回転対称のミラー面によって形成される一群の焦点列はノズルヘッド
710の中心軸に一致させることができ、そのようにミラー面を形成することができる。
【0096】
<射出光線の方位方向の補正>
回転対称ミラー
740の形状をノズルヘッド
710の中心軸の周りに回転対称に設定することの技術上の長所は
、ノズルヘッド
710がXY水平面内を任意方向に移動していく過程で、位置座標の変動ΔX、ΔYが大きくなる
ことである。ここで、方位角のずれ量をΔαとすると、
【0097】
tanΔα=ΔY/ΔX
であらわされる。
【0098】
これよりX方向の移動量ΔXが相対的に小さいとき、あるいはY方向の移動量ΔYが大きいときは、Δαが大きくなる。光源
701は、加工光線をノズルヘッド
710の入射開口
722に合致させて照射し続けることができる。光源
701の光線射出方向をノズルヘッド
710の
入射開口722の方向に合致させる調整は
、タレットテーブル780が光源
701を回動軸
720の周りに角度αだけ自転させることによって実現できる。
【0099】
図
8は
、光加工装置
700において、ノズルヘッド
710による
光線742の焦点Fが、座標位置XYZが(X0,Y0,0)から(X1,Y1,0)に移動しようとする場合において、座標XYZα(0,0,L0、0)にあった光源
701を角度αだけ自転させる様子を示している。
【0100】
回転対称ミラー
740の回転対称軸上にある焦点FがXY水平面上を(X0,Y0,0)から(X1,Y1,0)に移動しようとする場合、光源
701からの
光線742の方位角の変位量Δαは、
【0101】
tan Δα=(Y1−Y0)/(X1−X0)
によって決定される。
【0102】
ノズルヘッド
710が(X0,Y0,0)から(X1,Y1,0)に移動しようとする場合に、光源
701からの光線
742は方位角変化Δαだけ回転させれば、ノズルヘッド
710の入射開口
722を捉えることができる。
【0103】
この場合、ノズルヘッド
710の走査移動機構は、第1実施形態と同じく、X軸とY軸の2次元テーブルであるので、ノズルヘッド
710自体のX軸とY軸に対する姿勢は変動しない。即ち、ノズルヘッド
710が(X0,Y0,0)にあるときのノズルヘッド
710のX軸に対する姿勢角度(図
8では角度ゼロ度)は、ノズルヘッド
710が(X1,Y1,0)に移動した時点でも変わらない。しかし、ノズルヘッド
710の光線
742に対する角度は、(X0,Y0,0)での光線
742−0に対するゼロ度から、(X1,Y1,0)におけるΔαに変化している。
【0104】
ノズルヘッド
710の回転対称ミラー
740の中心軸に対する回転対称性という性質
により、ノズルヘッド
710の光線
742に対する姿勢変位Δαが変化しても、常に同様の光線変換を行える
。
【0105】
図
9は、
本実施形態のノズルヘッド
710が、座標位置(X0,Y0,0)から(X1,Y1,0)に移動し、光源
701からノズルヘッド
710の入射開口
722までの距離Dの変化(D0からD1)した場合を示す。図
9は、光源
701の高さを、初期高さ位置L0からΔZだけ変位させれば光源
701からの光線
742は、ノズルヘッド
710の位置(X0,Y0,0)から(X1,Y1,0)への位置変化に対しても、光線方向を変化させなくても良いことを示している。
【0106】
光源
701の初期高さL0が既知であるとすると、簡単な計算から調整後の光源
701の高さLzは、
【0107】
Lz=L0・√(X
12−Y
12)/√(X
02−Y
02)
により得ることができる。
【0108】
図
9の例では、光源
701のZ軸方向移動は平行移動であるとして、移動前後の光源
701のZ軸に対する光線射出方向のチルト角βは既知であり、移動前後で変わらないことを仮定した。
【0109】
上記の光源
701の高さ方向への高さ調整により、ノズルヘッド
710のXY水平面内での移動があっても、光源
701からの光線
742がノズルヘッド
710の入射開口
722を捕捉し続けることができる。
【0110】
なお、図
9の手法は、光線
742が平行光線である場合により効果的である。平行光
線であれば、光源
701から入射開口
722までの距離が変わっても、平行光
線状態は変わらない
。
【0111】
(第4実施形態)
<回転楕円体ミラー面の適用>
次に、回転対称ミラー(光線方向変換光学系)
740の具体例を、
図10乃至図12を用いて第4実施形態として説明する。
【0112】
図10は、回転対称ミラー740の第1の具体例としての回転楕円体ミラー1040を示す。
【0113】
図
10は、光加工装置
1000に設けられた、ノズルヘッド
1010の内部断面図を図示する。
【0114】
ノズルヘッド
1010の内部に回転対称回転楕円体ミラー(以下「回転楕円体ミラー」と称す)
1040、具体的には、回転楕円体の表面形状を有するミラー面によって光線変換光学系は構成されている。
【0115】
ノズルヘッド
1010は、入射開口
1022と射出開口
1024を備えている。入射開口
1022に連続して、回転楕円体ミラー
1040の内
壁面にミラー面が形成されている。回転楕円体ミラー
1040のミラー面は、ノズルヘッド
1010の射出
開口1024まで続いている。
【0116】
なお、光線方向変換光学系が回転対称ではなく、回転対称軸を持たない場合、中心軸
1023は入射開口
1022から射出開口
1024に向かう方向を正とする軸とする。
【0117】
図
11は、回転楕円体ミラー
1040が
回転楕円体鏡面を構成する場合の幾何学的な分析について説明する
図である。
【0118】
一般に、回転楕円体は2つの焦点F1とF2とを有する。楕円体の中心軸
1023を、走査移動機構のZ軸に一致させ、楕円の長軸をa、短軸をbとし、楕円体の中心OをXYZ座標系の原点にとると、焦点F1とF2の(X、Z)座標値は、
【0119】
F1:(0,√(a2−b2))
F2:(0,−√(a2−b2))
に位置する。
【0120】
楕円の性質として、いずれか一方の焦点(例えばF1)を通り、当該楕円体の任意の位置の壁面に結ぶ線分が、その壁面と成す角度は、他の焦点(例えばF2)から同壁面上の点にまで結ぶ線分が当該壁面で成す角度に等しい。即ち、楕円体の一方の焦点(F1)に入力した光線が、当該楕円体の壁面にあたって反射すると、その反射光線は、他方の焦点(F2)を通ることになる。
【0121】
そこで、光源
1001からの集光光線を、回転楕円体ミラー
1040の第1の焦点(図
11のF1)に集光させ
る。即ち、光源
1001の集光レンズ
1043の焦点位置を、回転楕円体ミラー
1040の第1の焦点に一致させるように集光レンズ
1043を配置して
光線842Fを第1焦点F1に入射させ
る。集光レンズ
1043からの全ての
光線1042Fの全光束を第1焦点F1に入射させれば、その光線束は全て、回転楕円体ミラー
1040の第2の焦点(F2)に合焦する。そこで、第2の焦点位置(F2)を加工点
160とすると、加工点
160に光線エネルギーが集中して、溶融加工が実現する。
【0122】
この楕円体は中心軸
1023の周りに回転対称である。したがって、光源
1001が、
図10の配置に対して、中心軸
1023に対して任意の角度回転した位置に存する場合でも、
光線842Fは、
図10や
図11の楕円体鏡面上の点に入射し、そこで、反射して、第2焦点F2に集光する。
【0123】
回転楕円体ミラー
1040を用い
た光加工装置
1000の光源
1001に対して、タレットテーブル
780により、光源
1001に方位角αの回転を与えることにより光源
1001からの
光線842Fは回転楕円体ミラー
1040の
入射開口722に到達する。即ち、ノズルヘッド
710の回転楕円体ミラー
1040の回転対称性を巧みに利用して方位角方向のノズルヘッド
710のずれを調整することができる。もしも回転楕円体ミラー
1040の楕円体が方位角方向の対称性がなければ、図
8の手法で、光源
1001を角度Δαだけまわしても、
入射開口722は捉えることはできているかも知れないが、回転楕円体ミラー
1040による反射光の加工基板上での焦点は、移動前の焦点とずれている懼れがあるからである。回転楕円体ミラー
1040が回転対称であるからこそ、移動前の加工点
160の走査機構上のXY座標値(X0,Y0)が(X1,Y1)に移動することにより、回転楕円体ミラー
1040の第2の焦点F2は移動前後でずれが発生せず、正確な光加工が保証される。
【0124】
さらに、ノズルヘッド
710のXY平面上に移動が入射開口
722を光源
1001から距離方向の距離Dの変動をもたらす(D1≠D0)場合には、図
9で説明した光源の高さ方向(Z軸方向)の調整(ΔZの調整)も適用される。
【0125】
即ち
、光線方向変換光学系
740の具体例としての回転対称ミラー
740は、楕円体の中心軸周りの回転対称性を具備している。したがって、
図7のノズルヘッド
710によって得られた、ノズルヘッド
710のXY平面内の移動によるノズルヘッド
710の位置変化に対する、光源光線による追従性が維持される。
【0126】
<光源高さ調整の変形例>
図8で説明したように、回転楕円体ミラー
1040のミラー面の1つの性質である方位角方向の対称性を利用
することができる。ノズルヘッド
710の移動により、光源
1001からの射出光線がノズルヘッド
1010の入射開口
1022を外れてしまうのを、光源
1001の光線照射方向を角度Δαだけ調整することにより、入射開口
1022の位置に照射方向を合わせるものである。回転楕円体ミラーや回転放物面体ミラーの「方位角方向の対称性」とは、回転楕円体や回転放物面体の回転対称軸のある点(例えば楕円体の第1焦点F1)を通る入射光線について、そのある点から見た入射光線の仰角を一定にした場合、任意の方位方向からの入射光線のミラー面による反射角が同じであることをいう。
【0127】
図11に示すように、楕円体のもう一つの性質として、第1焦点F
1を通る入射光線は、その入射光線の仰角に拘わらず、第2焦点を通る性質があ
る。換言すれば、光源
1001からの入射光線は集光光線であ
る。光源
1001の焦点位置が回転楕円体ミラー
1040の第1焦点の位置に一致していれば、その焦点位置F
1に表れる像は光源
1001の発光体の像であ
る。従って、第1焦点F
1の位置に合焦して結像した発光体の像は、その入射光線の仰角が変化しても、全て、第2焦点F2に結像する
。即ち、第2の焦点位置(加工点
160でもある)では回転楕円体ミラー
1040によって、発光体の合焦像が表れるから、高温になり、溶融処理ができる
。
【0128】
光源
1001からの集光光線の合焦画像を、回転楕円体ミラー
1040の第1焦点に合わせるためには、移動後の光源
1001から回転楕円体ミラー
1040の第1焦点までの距離D1に、
集光レンズ
1043の焦点距離を調整して一致させる必要がある。そこで、
図12に示すように、光源
1001の射出光線の仰角
βについて、回転楕円体ミラー
1040を用いて、ノズルヘッドがXY平面内で任意に(ΔX,ΔY)だけ移動しても、光源
1001のチルト角度βの調整角度Δβについて:
【0129】
Δβ=tan
-1(D0/L0)−tan
-1(D1/L0)
但し
D0=√(X
02−Y
02)
D1=√(X
12−Y
12)
となる角度調整を行う。
【0130】
ノズルヘッド
710の位置が(X0,Y0)から(X0+ΔZ,Y0+ΔY)に移動しても
、光源
1001の発光体の像が、集光レンズ
1043により、回転楕円体ミラー
1040の第1焦点F1の位置に合焦して結像
する。
【0131】
そして、その発光体像が回転楕円体ミラー
1040の壁面で反射して、この反射像が回転楕円体ミラー
1040の第2焦点F2に結像して、その結果、加工点
160上における光エネルギーの密度は極大化して、効率のよい光加工が達成できる。この補正はズームアクチュエータを用いる。
【0132】
回転楕円体ミラー
1040によれば、ノズルヘッド
710がいかなる移動を行ってもその移動量(ΔX,ΔY)に見合った光源
1001のチルト角度補正を
行えば、光加工を行うことができる。換言すれば、ノズルヘッド
710の移動に合致して最適な方位角補正と、焦点距離補正と、チルト角度補正、とが同時に達成できる。
【0133】
(第5実施形態)
回転体曲面は
第4実施形態の如き楕円体に限られない。例えば、鏡面の曲面が、図
13のように、回転放物面体の場合には、その放物面体の唯一の焦点Fに加工点
160を一致させることが可能である。
図13は、回転対称ミラー740の第2の具体例としての回転放物面体ミラー1340を示す。回転楕円体ミラー1040や回転放物面体ミラー1340を総称して「回転対称ミラー」と呼ぶ。
【0134】
図13の回転放物面体ミラー
1340に対して、光源
1301から照射する光線は平行光線
1342である。これは回転放物面体ミラー
1340に平行光線
1342が入射すると、その平行光線
1342の元の光源
1301の発光源の像が、放物面体の焦点に結像するという性質を利用するためである。
【0135】
回転放物面体ミラー
1340のミラー面は、回転楕円体の場合と同じく、放物面体の焦点近傍のミラー壁面に
射出開口1324を設ける必要がある。回転放物面体は、回転楕円体と異なり、焦点と反対側は外に開いている。このために、この開いている入射
開口1322に入射光線を入射する。この場合、入射光線は平行光線
1342とする必要があり、
平行光線1342の全ての反射光線束が、放物面体の焦点に集中する。これにより、平行光線が
加工点
160で集光される。
【0136】
なお、回転放物面体ミラー
1340も、回転楕円体ミラー
1040と同様に、光源の方位角(α)の補正(図
8)、光源の高さ補正(図
9)が必要であることは変わらない。ただし、
本実施形態では、平行光線を用いるために、
図13の合焦のための焦点距離補正は不要である。
【0137】
[他の実施形態]
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、それぞれの実施形態に含まれる別々の特徴を如何様に組み合わせたシステムまたは装置も、本発明の範疇に含まれる。
【0138】
また、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用されてもよいし、単体の装置に適用されてもよい。さらに、本発明は、実施形態の機能を実現する情報処理プログラムが、システムあるいは装置に直接あるいは遠隔から供給される場合にも適用可能である。したがって、本発明の機能をコンピュータで実現するために、コンピュータにインストールされるプログラム、あるいはそのプログラムを格納した媒体、そのプログラムをダウンロードさせるWWW(World Wide Web)サーバも、本発明の範疇に含まれる。特に、少なくとも、上述した実施形態に含まれる処理ステップをコンピュータに実行させるプログラムを格納した非一時的コンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)は本発明の範疇に含まれる。