特許第6353914号(P6353914)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6353914
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】噴射器
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/24 20060101AFI20180625BHJP
   A61M 5/315 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   A61M5/24 500
   A61M5/315 550P
【請求項の数】15
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2016-550552(P2016-550552)
(86)(22)【出願日】2015年2月3日
(65)【公表番号】特表2017-506099(P2017-506099A)
(43)【公表日】2017年3月2日
(86)【国際出願番号】EP2015000205
(87)【国際公開番号】WO2015117746
(87)【国際公開日】20150813
【審査請求日】2016年10月20日
(31)【優先権主張番号】202014001134.6
(32)【優先日】2014年2月5日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515217487
【氏名又は名称】ハーゼルマイアー アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 秀樹
(74)【代理人】
【識別番号】100091867
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 アキラ
(74)【代理人】
【識別番号】100202016
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 喬
(72)【発明者】
【氏名】カイテル ヨアヒム
【審査官】 安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−509662(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/117332(WO,A1)
【文献】 特表2013−506457(JP,A)
【文献】 特表2012−502766(JP,A)
【文献】 特表2009−519788(JP,A)
【文献】 特表2012−506273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/24− 5/315
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(2)と、長手中心軸線(50)と、回転可能に且つ前記長手中心軸線(50)の方向に位置固定して前記ハウジング(2)内に保持されている配量機構(18,138)とを備え、該配量機構が、第1のねじ山結合部(19)を介して、前記ハウジング(2)に対し相対回転不能に且つ前記長手中心軸線(50)の方向に変位可能に保持されている噴射スリーブ(17,97,107,127,137)と結合されている噴射器であって、
噴射液の噴出量を調整する際に、前記配量機構(18,138)が第1の回転方向において前記ハウジング(2)に対し回転し、前記噴射スリーブ(17,97,107,127,137)が前記第1のねじ山結合部(19)により末端方向(30)に移動し、調整した噴射液量を噴出させる際に、前記配量機構(18,138)が前記第1の回転方向とは逆の第2の回転方向において前記ハウジング(2)に対し回転し、前記噴射スリーブ(17,97,107,127,137)が前記第1のねじ山結合部(19)により基端方向(31)に移動し、噴射液を容器(5)から噴出させるための配量ピストン(11)が設けられ、該配量ピストン(11)が第2のねじ山結合部(22)を介して前記配量機構(18,138)と結合され、噴射液の噴出量を調整する際に、前記配量ピストン(11)が前記配量機構(18,138)と相対回転不能に結合されて該配量機構(18,138)と一緒に回転し、調整した噴射液量を噴出させる際に、前記配量ピストン(11)が前記噴射スリーブ(17,97,107,127,137)と相対回転不能に結合され、且つ前記第2のねじ山結合部(22)により前記基端方向(31)に移動し、少なくとも前記容器(5)から噴出させる噴射液量を調整する際に作用するロック装置(35,125,135)が設けられている前記噴射器において、
前記ロック装置(35,125,135)が、前記噴射器(1,121,131)の、噴出させる噴射液量を調整する際に互いに相対的に移動する2つの構成部材の間で作用し、これら2つの構成部材相互の各相対位置に、調整した噴射液量が一義的に割り当てられ、その結果、必要とする複数のロック位置を互いに異なる間隔で配置することができることを特徴とする噴射器。
【請求項2】
前記ロック装置(35,125,135)が、少なくとも1つのロック要素(41,42,43,44,101,102,103,104,128,141,142)と、ロック位置で該ロック要素(41,42,43,44,101,102,103,104,128,141,142)と協働する少なくとも1つの対向ロック要素(40,110,130,140)とを有していることを特徴とする、請求項1に記載の噴射器。
【請求項3】
前記ロック装置(135)が中間で作用する前記2つの構成部材のうちの一方の構成部材が前記配量機構(138)であり、前記2つの構成部材のうちの他方の構成部材が前記噴射スリーブ(137)であることを特徴とする、請求項1または2に記載の噴射器。
【請求項4】
前記ロック装置(125)が中間で作用する前記2つの構成部材のうちの一方の構成部材が前記噴射スリーブ(137)であり、前記2つの構成部材のうちの他方の構成部材が前記ハウジング(2)であることを特徴とする、請求項1または2に記載の噴射器。
【請求項5】
前記噴射器(1,121,131)が操作要素(6)を有し、該操作要素が、第1の連結部(16)を介して、前記配量機構(18,138)と相対回転不能に結合される駆動体(14,114,124)と相対回転不能に結合され、且つ第2の連結部(20)を介して、前記噴射スリーブ(17,97,107,127,137)と相対回転不能に結合され、前記操作要素(6)が、前記噴射スリーブ(17,97,107,127,137)に対し末端位置(90)と基端位置(91)とを有し、前記末端位置(90)において、前記操作要素(6)が前記第1の連結部(16)を介して前記駆動体(14,114,124)と相対回転不能に結合され、且つ前記第2の連結部(20)が開いており、その結果前記操作要素(6)が前記噴射スリーブ(17,97,107,127,137)に対し回転可能であり、前記基端位置(91)において、前記第1の連結部(16)が開いており、且つ前記操作要素(6)が前記駆動体(14,114,124)に対し回転可能であり、且つ前記操作要素(6)が前記第2の連結部(20)を介して前記噴射スリーブ(17,97,107,127,137)と相対回転不能に結合されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一つに記載の噴射器。
【請求項6】
前記ロック装置(35)が前記操作要素(6)の前記末端位置(90)で作用し、前記操作要素(6)の前記基端位置(91)において、前記少なくとも1つのロック要素(41,42,43,44)と前記少なくとも1つの対向ロック要素(40)とが、前記2つの構成部材の互いの相対位置とは関係なく、係合解除されていることを特徴とする、請求項5に記載の噴射器。
【請求項7】
前記ロック装置(35)が中間で作用する前記2つの構成部材のうちの一方の構成部材が前記駆動体(14,114)であり、前記2つの構成部材のうちの他方の構成部材が前記噴射スリーブ(17,97,107)であることを特徴とする、請求項5または6に記載の噴射器。
【請求項8】
前記駆動体(14,114,124)が、前記長手中心軸線(50)の方向で前記噴射スリーブ(17,97,107,127,137)の位置に連結されていることを特徴とする、請求項5から7までのいずれか一つに記載の噴射器。
【請求項9】
前記少なくとも1つのロック要素(101,102,103,104,128,141,142)は、前記ロック装置(125,135)が中間で作用する前記2つの構成部材のうちの一方の構成部材に配置され、前記少なくとも1つの対向ロック要素(110,130,140)が前記2つの構成部材のうちの他方の構成部材に配置されていることを特徴とする、請求項2から8までのいずれか一つに記載の噴射器。
【請求項10】
前記少なくとも1つのロック要素(41,42,43,44)がロック部分(15,95)に配置され、該ロック部分は、前記ロック装置(35)が中間で作用する前記2つの構成部材のうちの一方の構成部材と相対回転不能に、且つ該一方の構成部材に対し前記長手中心軸線(50)の方向に変位可能に結合され、前記少なくとも1つのロック要素(41,42,43,44)が、前記ロック部分(15)の第1の軸線方向位置において、前記少なくとも1つの対向ロック要素(40)と係合することができ、且つ前記ロック部分(15)の第2の軸線方向位置(89)において、前記2つの構成部材相互の相対位置に関係なく、前記少なくとも1つの対向ロック要素(40)との係合を解除されていることを特徴とする、請求項2から8までのいずれか一つに記載の噴射器。
【請求項11】
前記ロック部分(15,95)がその前記第1の軸線方向位置(88)の方向にあらかじめ付勢されていることを特徴とする、請求項10に記載の噴射器。
【請求項12】
前記ロック部分(15,95)が、該ロック部分(15,95)をその前記第1の軸線方向位置(88)にあらかじめ付勢している少なくとも1つのスプリングアーム(96)を有していることを特徴とする、請求項11に記載の噴射器。
【請求項13】
前記噴射スリーブ(17,97)と前記配量機構(18)との間で、該配量機構(18)を前記第2の回転方向にあらかじめ付勢しているばね(23,93)が作用することを特徴とする、請求項1から12までのいずれか一つに記載の噴射器。
【請求項14】
前記ばね(93)が、一端(84)を前記噴射スリーブ(97)に固定され、他端(85)を前記駆動体(14)に固定されていることを特徴とする、請求項13に記載の噴射器。
【請求項15】
前記ばね(93)が、一端(84)を前記ロック部分(15)に固定され、他端(85)を前記駆動体(14)に固定されていることを特徴とする、請求項13に記載の噴射器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部に記載した種類の噴射器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1から、操作ボタンと相対回転不能に結合されて噴射スリーブと協働するロック部分を設けた噴射器が知られている。操作ボタンは、噴射液噴出量を調整する際にハウジングに対し回転し、噴射液を噴出させる際にはハウジングに対し相対回転不能に保持されて噴射器の長手方向に案内されている。噴射スリーブは、噴射液の噴出量を調整する際と噴射液を容器から噴出させる際とに、ハウジングに対し回転することなく、噴射器の長手中心軸線の方向に移動する。これにより、各噴射過程の際に噴射スリーブに対する操作ボタンの回転位置が変化する。
【0003】
前記特許文献1の第2のロック装置は、ハウジング部分と配量機構との間で作用する。配量機構は、噴射液の噴出量を調整する際に回転し、噴射液の噴出量を噴出させる際には戻り回転する。配量機構は長手中心軸線のまわりで複数回回転可能であるので、最大配量を調整する際に各ロック位置が複数回達成される。
【0004】
治療のためにたとえば0.2mlと0.25mlの噴射液調整量が必要な場合、公知の噴射器は、最大で0.05mlの配量ステップが調整可能であるように設計されている。このことは、一方では、治療のために設定された最少配量に達するまでに、使用者が複数のロックステップに打ち勝たねばならないことを意味している。他方では、たとえば0.05mlの最少固定配量の場合、プライミング過程で放出されるべき噴射液量は比較的多い。それ故、プライミング過程に対しては、これよりもかなり少量の配量ステップが望ましい。しかしながら、このような少量の配量ステップにより、配量を調整する際に操作者が打ち勝たねばならないロック位置の数量が著しく増大する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2013/117332A1号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、複数のロック位置を異なる間隔で配置することを可能にする、この種の噴射器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1の構成を備えた噴射器によって解決される。
【0008】
本発明は、ロック装置が、噴射器の、噴出させる噴射液量を調整する際に互いに相対的に移動する2つの構成部材の間で作用し、これら2つの構成部材相互の各相対位置に、調整した噴射液量が一義的に割り当てられていることを提案する。これにより、必要とする複数のロック位置を互いに異なる間隔で配置することができる。たとえば、冒頭で例を挙げて説明した治療のためには、プライミング過程に対しては0.01mlの、噴射すべき配量に対しては0.20mlと0.25mlの3つのロック位置を提供する噴射器を設けることができる。これによって噴射器の操作がかなり容易になる。以下で「2つの構成部材」に関して述べる場合、「2つの構成部材」とは、これら2つの構成部材の中間でロック装置が作用し、これら2つの構成部材相互の相対位置に対し一義的な噴射液調整量が割り当てられているという意味で使用する。
【0009】
有利には、ロック装置は、少なくとも1つのロック要素と、ロック位置で該ロック要素と協働する少なくとも1つの対向ロック要素とを有している。
【0010】
有利には、ロック装置が中間で作用する前記2つの構成部材のうちの一方の構成部材は配量機構であり、前記2つの構成部材のうちの他方の構成部材は噴射スリーブである。配量機構と噴射スリーブとは、噴射液の噴出量を調整する際に互いにねじ線状に相対移動する。というのは、配量機構は回転運動を実施し、噴射スリーブは噴射器の長手中心軸線の方向の運動を実施するからである。噴射液を噴出させる際には、配量機構と噴射スリーブとはその出発位置へ互いに相対的に復帰運動する。これにより、配量機構と噴射スリーブ相互の各相対位置には、調整された噴射液量が正確に割り当てられている。
【0011】
また、ロック装置が中間で作用する前記2つの構成部材のうちの一方の構成部材が噴射スリーブであり、前記2つの構成部材のうちの他方の構成部材がハウジングであるように構成してもよい。噴射スリーブは、噴射液の噴出量を調整する際、噴射器の長手中心軸線の方向に移動する。噴射液の噴出の際、噴射スリーブはその出発位置へ戻る。これにより、噴射スリーブの各軸線方向位置には、正確に1つの一義的な噴射液量が対応している。
【0012】
ロック装置が前記2つの構成部材の間で作用するという記載は、ロック装置がこれら構成部材の間で作用するという意味であり、ロック要素と対向ロック要素とを前記2つの構成部材事態に配置せねばならないということを意味するものではない。むしろ、ロック要素と対向ロック要素とは他の構成部材に形成され、すなわちこれら2つの構成部材相互の相対運動を同様に実施し、これによってこれら2つの構成部材の間で作用するような他の構成部材に形成されていてよい。
【0013】
噴射器は操作要素を有している。操作要素は、有利には、噴射液の噴射量を調整する際に操作要素が占める末端位置と、噴射液噴出量を噴出させる際に操作要素が占める基端位置とを有している。操作要素の末端位置と基端位置とは、噴射スリーブに対する操作要素の相対位置である。操作要素は、有利には、第1の連結部を介して、配量機構と相対回転不能に結合される駆動体と相対回転不能に結合可能で、且つ第2の連結部を介して、噴射スリーブと相対回転不能に結合可能である。操作要素の末端位置では、操作要素は有利には第1の連結部を介して駆動体と相対回転不能に結合されている。第2の連結部は、有利には末端位置で開いており、その結果操作要素は噴射スリーブに対し回転可能である。操作要素の基端位置においては、有利には第1の連結部は開いており、且つ操作要素は駆動体に対し回転可能であり、且つ操作要素は第2の連結部を介して噴射スリーブと相対回転不能に結合されている。調整すべき噴射液量を調整する際、操作要素を回転させる。操作要素とともに、駆動体、配量機構、操作要素と相対回転不能に結合されている配量ピストンも回転する。噴射液を噴出させる際には、操作要素は噴射スリーブと相対回転不能に結合され、これによってハウジングに対し相対回転不能に案内される。駆動体は、配量機構と一緒に噴射器の長手中心軸線のまわりに回転し、第2のねじ山結合部を介して配量ピストンを基端方向へ移動させる。これによって噴射液が容器から噴出される。
【0014】
ロック装置が噴射液の噴出量を調整する際だけ作用し、噴射過程では作用しないならば、快適な操作が得られる。これは、ロック装置が操作要素の位置に連結され、操作要素の末端位置で作用することによって、簡単に達成できる。操作要素の基端位置において、少なくとも1つのロック要素と少なくとも1つの対向ロック要素とは、前記2つの構成部材の互いの相対位置とは関係なく、係合解除されている。ロック装置が噴射液の噴出量を調整する際にだけ作用する場合には、ロック要素および/または対向ロック要素は非対称に形成されていてよく、その結果調整した噴射液量を減少させるためにロック位置に打ち勝つためには、噴射液の噴出量を調整するための力よりもかなり大きな力を必要とする。
【0015】
有利には、ロック装置が中間で作用する前記2つの構成部材のうちの一方の構成部材は駆動体であり、前記2つの構成部材のうちの他方の構成部材は噴射スリーブである。これにより、噴射器の簡潔な構成が得られる。操作要素が最大配量に達するまでに1回転以下の回転を行うような噴射器の場合、駆動体と噴射スリーブとの各相対回転位置には、一義的な噴射液量が割り当てられている。駆動体は、有利には長手中心軸線の方向で噴射スリーブの位置に連結され、その結果噴射液の噴出量を調整する際に駆動体が末端方向へ移動し、調整した噴射液量を噴出させる際には基端方向へ移動する。これにより、駆動体と操作要素との間で作用する第1の連結部の簡潔な構成が可能になる。
【0016】
少なくとも1つのロック要素が前記2つの構成部材のうちの一方の構成部材に配置され、少なくとも1つの対向ロック要素が前記2つの構成部材のうちの他方の構成部材に配置されていれば、噴射器の簡潔な構成が得られる。ロック要素または対向ロック要素がそれぞれの前記構成部材と一体に形成されているのが特に有利である。それぞれの前記構成部材との固定結合も、特に該構成部材の製造を容易にするために有利である。
【0017】
ロック装置が噴射液の調整量を調整する際にだけ作用し、噴射液を噴出させる際には作用しないことを簡単に達成するため、少なくとも1つのロック要素がロック部分に配置され、該ロック部分が前記2つの構成部材のうちの一方の構成部材と相対回転不能に、且つ該一方の構成部材に対し長手中心軸線の方向に変位可能に結合されているのが有利である。有利には、少なくとも1つの対向ロック要素は前記2つの構成部材のうちの他方の構成部材に配置されている。少なくとも1つのロック要素は、ロック部分の第1の軸線方向位置において、有利には少なくとも1つの対向ロック要素と係合することができる。ロック部分の第2の軸線方向位置においては、少なくとも1つのロック要素は、2つの構成部材相互の相対位置に関係なく、少なくとも1つの対向ロック要素との係合を解除されている。
【0018】
ロック部分の位置が操作要素の位置に連結され、その結果ロック部分が操作要素の末端位置でその第1の軸線方向位置にあり、操作要素の基端位置でその第2の軸線方向位置にあれば、簡潔な構成が得られる。有利には、ロック部分はその第1の軸線方向位置の方向にあらかじめ付勢されており、好ましくは少なくとも1つのばねによってあらかじめ付勢されている。
【0019】
ロック部分が、該ロック部分をその第1の軸線方向位置にあらかじめ付勢している少なくとも1つのスプリングアームを有していれば、個々の部品数が少ない簡潔な構成が得られる。スプリングアームは、有利にはロック部分と一体に形成され、その結果ロック部分をその第1の軸線方向位置へ予め付勢するための付加的なばねを必要としない。
【0020】
有利には、噴射スリーブと配量機構との間で、該配量機構を第2の回転方向にあらかじめ付勢しているばねが作用する。これにより、操作要素が2つのロック位置の間で離されたときに、配量機構は、噴射液の次に低い調整量に相当する次のロック位置の方向に復帰する。これにより、噴射液の設定していない量が誤って噴出するのが簡単に阻止される。噴射液の噴出量を調整する際に噴射スリーブが配量機構に対し長手中心軸線の方向に移動するので、ばねは、有利には、配量機構と相対回転不能に結合されている駆動体と結合されている。有利には、ばねは、一端を噴射スリーブに固定され、他端を駆動体に固定されている。ロック部分を有している噴射器に対しては、ばねが、一端をロック部分に固定され、他端を駆動体に固定されていれば、簡潔な構成が得られる。配量機構を第2の回転方向にあらかじめ付勢しているばねは、特にロック装置が噴射液量の調整の際のみ作用し、噴出の際には作用しないような噴射器の場合に有利である。有利には、ロック装置は、噴射液の噴出量の調整の際にロック位置に打ち勝つために、逆方向への戻り回転のために必要な力よりも小さな力しか必要でないように構成されている。これにより、2つのロック位置の間で操作要素を離した時に配量機構が次に低いロック位置までしか戻らず、このロック位置に打ち勝つことができないよう保証することができる。同時に、配量機構を第2の回転方向にあらかじめ付勢しているばねは、好ましくない摩擦状態および公差の際にも配量機構の確実な戻り回転が保証されているほどの強度を持つように設計できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
次に、本発明の実施形態を、図面を用いて説明する。
図1】噴射器の第1実施形態をゼロ位置で示した側面図である。
図2図1の線II−IIによる断面図である。
図3】噴射液の噴出量を調整した後の図1の噴射器の側面図である。
図4図3の線IV−IVによる断面図である。
図5】噴射液の噴出量を調整し、操作要素を基端方向に変位させた後の図1の噴射器の側面図である。
図6図5の線VI−VIによる断面図である。
図7図1ないし図6の噴射器の駆動体、ばね、ロック部分の側面図である。
図8図7の矢印VIII方向に見た図7の配置構成の側面図である。
図9図7の矢印IXの方向に見た平面図である。
図10図9の部分Xの拡大図である。
図11図1ないし図6の噴射器の駆動体の斜視図である。
図12図1ないし図6の噴射器の駆動体の斜視図である。
図13】駆動体の側面図である。
図14図13の矢印XIVの方向に見た側面図である。
図15図14の線XV−XVによる断面図である。
図16図1ないし図6の噴射器のロック部分の斜視図である。
図17図1ないし図6の噴射器のロック部分の斜視図である。
図18図16および図17のロック部分の側面図である。
図19図18の線XIX−XIXによる断面図である。
図20】噴射器の操作要素の斜視図である。
図21】噴射器の操作要素の斜視図である。
図22】操作要素の側面図である。
図23図22の線XXII−XXIIによる断面図である。
図24図22の矢印XXIVの方向に見た操作要素の図である。
図25】噴射器の噴射スリーブの斜視図である。
図26】噴射器の噴射スリーブの斜視図である。
図27】噴射器の噴射スリーブの斜視図である。
図28】噴射スリーブの側面図である。
図29】噴射スリーブの側面図である。
図30図29の線XXX−XXXによる断面図である。
図31図30の部分XXIの拡大図である。
図32図30の線XXXII−XXXIIによる断面図である。
図33】配量機構の側面図である。
図34】配量機構の側面図である。
図35図33の線XXXV−XXXVによる断面図である。
図36図33の線XXXVI−XXXVIによる断面図である。
図37図1なし図6のピストン棒の斜視図である。
図38図37のピストン棒の側面図である。
図39図38の線XXXIX−XXXIXによる断面図である。
図40図1ないし図6の噴射器のハウジング部分の側面図である。
図41図1ないし図6の噴射器のハウジング部分の側面図である。
図42図41の線XLII−XLIIによる断面図である。
図43図41の線XLIII−XLIIIによる断面図である。
図44図1ないし図6の噴射器のホールダの側面図である。
図45図44の線XLV−XLVによる断面図である。
図46】噴射器の1実施形態の噴射スリーブ、ロック部分、駆動体の図である。
図47図46の線XLVII−XLVIIによる断面図である。
図48図46および図47のロック部分の斜視図である。
図49図46および図47のロック部分の斜視図である。
図50図46および図47のロック部分の斜視図である。
図51図46および図47のロック部分の斜視図である。
図52図46および図47のロック部分の斜視図である。
図53】噴射器の噴射スリーブの1実施形態の側面図である。
図54図53の線LIV−LIVによる断面図である。
図55図54の線LV−LVによる断面図である。
図56】噴射器の駆動体の1実施形態の側面図である。
図57図56の線LVII−LVIIによる断面図である。
図58図57の部分LVIIIの拡大図である。
図59】噴射液噴出量を調整した後の噴射器の1実施形態の側面図である。
図60】噴射液噴出量を調整した後の噴射器の1実施形態の側面図である。
図61図60の線LXI−LXIによる断面図である。
図62図61の部分LXIIの拡大図である。
図63】配量機構の1実施形態の斜視図である。
図64図63の部分LXIVの拡大図である。
図65図63の配量機構の側面図である。
図66図65の線LXVI−LXVIによる断面図である。
図67】噴射スリーブの1実施形態の側面図である。
図68図67の線LXVIII−LXVIIIによる断面図である。
図69図67の線LXIX−LXIXによる断面図である。
図70】噴射器をゼロ位置で示した側面図である。
図71図70の線LXXI−LXXIによる断面図である。
図72】噴射液噴出量を調整した後の図70の噴射器の側面図である。
図73図72の線LXXIII−LXXIIIによる断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、ハウジング2を有する噴射器1を示している。ハウジング2は、末端側の上部ハウジング部分3と、上部ハウジング部分3の基端側に配置されているホールダ4とを含んでいる。ホールダ4の基端側には噴射針8が固定されている。ホールダ4は噴射針8に隣接してロック装置9を有し、ロック装置には、図2に示した容器5がホールダ4内でロックされている。噴射器1の末端側には操作要素6が配置されている。図1が示すように、噴射器1は、噴射器1の長手方向に延びている長手中心軸線50を有している。上部ハウジング部分3は、少なくとも部分的に透明に形成されている視認窓7を有している。図1では視認窓7は概略的に示されており、透明には示しておらず、その結果その下にある構成要素は図1では見えない。
【0023】
噴射器1の末端部は、噴射器に保持されている噴射針8とは逆の側の端部である。「基端」とは、噴射器1の、噴射時に穿刺部位に対向する側であり、「末端」とは、穿刺部位とは逆の側である。基端方向とは噴射方向を指すものであり、すなわち噴射針8へ向かう方向、または、噴射液が容器5がから噴出する方向である。末端方向はこれとは逆の方向、すなわち噴射針8から離間する方向である。
【0024】
図2が示すように、容器5内には栓10が配置され、栓には配量ピストン11のピストンディスク13が当接している。配量ピストン11は、さらに、雄ねじ92を担持しているピストン棒12を含んでいる。
【0025】
上部ハウジング部分3内には噴射スリーブ17が配置され、その外面は上部ハウジング部分3の視認窓7を通じて見ることができる。噴射スリーブ17は開口部26を有し、該開口部を通じて、噴射スリーブ17内部に配置されている配量機構18の外周を見ることができる。配量機構18(スケールパイプと呼ぶこともできる)はその外周に、図2では見えないスケールを担持し、スケールは視認窓7と開口部26とを通じて操作者が見ることができる。
【0026】
噴射スリーブ17は、上部ハウジング部分3内で、長手中心軸線50の方向に変位可能に且つ上部ハウジング部分3に対し相対回転不能に保持されている。配量機構18と噴射スリーブ17とはねじ山結合部19を介して互いに結合されている。配量機構18内部には駆動体14が配置され、駆動体は配量機構18と相対回転不能に結合されている。駆動体14は周溝63を有し、周溝内には噴射スリーブ17の保持縁64が突出している。保持縁64は遊びをもって周溝63で保持されている。これにより、噴射スリーブ17と駆動体14とは長手中心軸線50の方向において互いに連結されている。しかしながら、遊びのために、長手中心軸線50の方向において噴射スリーブ17と駆動体14との間のわずかな相対運動が可能である。
【0027】
配量機構18は、ロック部71を介して、長手中心軸線50の方向において上部ハウジング部分3内に固定保持されている。本実施形態では、ロック部71は配量機構18の基端部に配置されている。配量機構18は、ピボット軸受21を介して、上部ハウジング部分3内に回転可能に支持されている。配量機構18は、第2のねじ山結合部22を介して、配量ピストン11のピストン棒12と結合されている。操作要素6は連行部分51を介してピストン棒12と相対回転不能に結合されている。
【0028】
操作要素6は、図2では、噴射スリーブ17に対するその末端位置90で示されている。操作要素6は、第1の連結部16を介して駆動体14と結合可能である。操作要素6の末端位置で、該操作要素6と駆動体14とは第1の連結部16を介して互いに相対回転不能に結合されている。操作要素6内にはロック部分15が配置されている。本実施形態では、ロック部分15はリング状に形成され、駆動体14の外周に配置されている。駆動体14とロック部分15との間には、以下で詳細に説明するロック装置35が形成されている。ロック部分15は噴射スリーブ17と相対回転不能に結合されている。ロック部分15は長手中心軸線50の方向に可動であり、ばね23によって、図2に示した第1の軸線方向位置88の方向にあらかじめ付勢されている。
【0029】
操作要素6と噴射スリーブ17との間には、第2の連結部20が設けられている。第2の連結部は、図2に示した噴射器1のゼロ位置28では開いている。これによって、操作要素6は噴射スリーブ17に対し回転可能である。ゼロ位置28では配量は調整されていない。ゼロ位置28では、噴射スリーブ17は上部ハウジング部分3に設けた第1のストッパー24に当接している。
【0030】
噴射液量を調整するため、操作者は操作要素6を第1の回転方向に、本実施形態では時計方向に回転させる。第1の連結部16を介して、駆動体14と、該駆動体14と相対回転不能に結合されている配量機構18も、一緒に回転する。操作要素6の連行部分51を介してピストン棒12も一緒に回転する。第1のねじ山結合部19と、上部ハウジング部分3内での噴射スリーブ17の回転不能な固定とのために、噴射スリーブ17は末端方向30へ移動する。噴射スリーブ17とともに駆動体14および操作要素6も末端方向に移動する。駆動体14が噴射スリーブ17と相対回転不能に結合されているロック部分15に対し回転するので、ロック装置35のロックステップを操作者は知覚でき、聞くことができる。噴射液の噴出量を調整する際、ロック装置35が作用する。
【0031】
図3および図4は、噴射液噴出量を調整した後の噴射器1を噴射位置29で示している。この場合操作要素6は、上部ハウジング部分3に対し完全に1回転した場合よりも少なく回転する。噴射スリーブ17は、末端方向において部分的に上部ハウジング部分3から抜け出している。図4が示すように、ばね23は圧縮ばねとして形成されているばかりでなく、付加的にねじりばねとして作用する。このため、ばね23は第1の端部84でもってロック部分15で掛止され、第2の端部85でもって駆動体14で掛止されている。操作要素6が第1の回転方向に回転する際、ばね23が緊張せしめられる。操作者が操作要素6をロック装置35の2つのロック位置の間で離すと、ばね23が駆動体14を回転させ、駆動体により配量機構18を次に低いロック位置へ戻し、すなわち次に低い噴射液所定量に対応するロック位置へ戻す。ばね23はさらにロック部分15をその第1の軸線方向位置88へ予め付勢している。ロック部分15には、該ロック部分15を介して同様にその末端位置90へ予め付勢されている操作要素6が当接している。
【0032】
噴射液の調整した量を噴出させるには、操作者は操作要素6を、長手中心軸線50の方向に作用するばね23の力に抗して基端方向31へ移動させねばならない。図4が占めかように、操作要素6はストッパー要素32を有している。ストッパー要素は、図4に示した位置では、噴射スリーブ17の第1のストッパー33に当接している。この場合ストッパー要素32は第1のストッパー33の基端側にあり、ばね23によって第1のストッパー33に対し押圧される。また図4が示すように、噴射スリーブ17は第2のストッパー34を有し、該第2のストッパー34は、ストッパー要素32の基端側に配置され、図4に示した位置でストッパー要素32に対し間隔をもって配置されている。また図4が示すように、噴射スリーブ17は、図4に示した噴射位置29において、噴射液の最大調整量を制限している、上部ハウジング部分3のストッパー25に当接している。
【0033】
図5および図6は、噴射器1を、操作要素6をその末端位置90からその基端位置91へ変位させた後にして、噴射液を噴出させる前に示したものである。操作要素6の基端位置91では、ストッパー要素32は第2のストッパー34に当接している。また図6が示すように、ロック部分15は操作要素6によって基端方向31においてその第2の軸線方向位置89へ変位している。この位置で、ロック装置35はアクティブではなく、その結果噴射液の噴出の際にロック位置は聞こえず、または感知できない。
【0034】
第1の連結部16は、操作要素の基端位置91で開いている。これにより、駆動体14は操作要素6に対し回転することができる。図6が示すように、第1の連結部16は駆動体14にロック歯38を有し、ロック歯は、連結部16が閉じているときに、操作要素6のロック歯53の間に係合する。連結部16が開いているとき、ロック歯38は長手中心軸線50の方向においてロック歯53から間隔をもって配置され、互いに係合解除されている。第2の連結部20は、操作要素6の基端位置91において閉じており、その結果操作要素6は噴射スリーブ17と相対回転不能に結合されており、よって上部ハウジング部分3とも相対回転不能に結合されている。操作要素6を、図6に示した位置から基端方向31に変位させると、噴射スリーブ17はストッパー要素32と第2のストッパー34とを介して基端方向に移動する。配量機構18は第1のねじ山結合部19を介して回転させる。ピストン棒12は、操作要素6と相対回転不能に結合され、且つ操作要素6を介して上部ハウジング部分3と相対回転不能に結合されている。配量機構18の回転により、ピストン棒12が基端方向に移動し、これによって噴射液の調整した量を容器5から噴出させる。駆動体14は、噴射スリーブ17によって基端方向に連行される。操作要素6が基端方向31に移動すると、ばね23が少なくとも部分的に弛緩し、これによって噴射過程を支援する。
【0035】
図7ないし図10は駆動体14と、ロック部分15と、ばね23とを示している。図8は、ばね23の両端部84と85をロック部分15と駆動体14とに掛止している状態を示している。ロック部分15は、噴射スリーブ17との相対回転不能な結合のために縦溝37を有している。駆動体14は、その基端側筒状部分に、配量機構18との相対回転不能な結合のための縦溝36を有している。この基端側筒状領域は、その末端側で縁48によって画成される。駆動体14は、図9および図10が示すように、内側へ突出しているロック歯38を有している。ロック歯38は、駆動体14の内周全体にわたって延在していない。本実施形態では、それぞれ3つのロック歯38の4つのグループが設けられ、それぞれのグループは対称に配置されている。ロック歯38の他の数量または配置も有利である。駆動体14は、図14および図15も示しているように、ロック歯38の基端側にそれぞれ開口部47を有している。これにより、ロック歯38の基端部を製造技術的に簡単に形成させることができる。開口部47の領域には、第1の連結部16が開いているときに、操作要素6の、図6に示したロック歯53がある。ばね23は圧縮ばねとねじりばねとを組み合わせたばねとして形成され、ロック部分15を末端方向にあらかじめ付勢しているとともに、駆動体14を長手中心軸線50のまわりの回転方向においてゼロ位置28の方向にあらかじめ付勢している。
【0036】
図9および図10は、ロック装置35の詳細をも示している。ロック装置35は、ロック部分15に形成されたロック要素43を含んでいる。ロック要素43は、駆動体14に設けた対向ロック要素40と協働する。対向ロック要素40はロックアーム39に形成され、材料の固有弾性により弾性がある。ロック要素43も対向ロック要素40も周方向に非対称に形成されている。対向ロック要素40はロック側面45を有し、ロック側面の背後でロック要素43がロック位置を占めるようになる。対向ロック要素40の他の側面は案内側面46として形成され、比較的平坦に延びている。対応的に対向ロック要素43も非対称に形成されており、ロック側面45と案内側面46とを有している。噴射液の噴出量を調整する際、駆動体14は操作要素6とともに第1の回転方向に回転する。この回転の際、複数の案内側面46は互いに接触する。ロック要素43の案内側面46は対向ロック要素40を半径方向内側へ偏位させ、その結果複数のロック位置を簡単に達成できる。操作要素6が第1の回転方向とは逆方向の第2の回転方向に回転する際、複数の急傾斜のロック側面45が互いに接触する。ばね23は、該ばね23の力がロック側面45に打ち勝つほど十分でなく、その結果操作要素6を離した時に噴射器1が2つのロック位置の間で常に次に低いロック位置へ戻るように、設計されている。しかしながら、ロック要素40および/または43を対称に構成することも有利である。ロック側面は次のように構成されていてよく、すなわち操作者が一度設定したロック位置に打ち勝って、操作要素6をより低い調整配量へ戻すことができるように、構成されていてよい。また、ロック側面はこれが不可能であるように構成されていてもよい。
【0037】
図11は、駆動体14に設けた開口部94を示しており、該開口部にはばね23の第2の端部85(図8)が掛止されている。図12および図13は、対向ロック要素40を担持しているロックアーム39の構成を示している。また図13が示すように、縁48は、噴射スリーブ17の保持縁64(図2)が突出している周溝63を画成している。
【0038】
図16ないし図19はロック部分15を示している。特に図19が示すように、ロック部分15は、噴射スリーブ17との相対回転不能な結合のために、互いに対向しあうように配置されている2つの縦溝37を外周に有している。本実施形態では、ロック部分15に4つのロック要素41,42,43,44が形成され、これらのロック要素は同一に構成され、互いに異なる間隔で周部に配分して配置されている。ロック要素41はゼロ位置に対応し、ロック要素42はプライミング位置に関係づけられ、ロック要素43は第1の配量に関係づけられ、ロック要素44は第2の配量に関係づけられている。ロック部分15はその末端側端面49において面取りされて形成されている。この端面49でもってロック部分15は操作要素6に当接している。面取りされた構成により、ロック部分15に対する操作要素6の回転時に摩擦力が少なくなる。
【0039】
図20ないし図24は操作要素6を示している。図20および図21が示すように、操作要素6をピストン棒12と相対回転不能に結合させている(図1)、操作要素6の連行部分51は、噴射器1の長手方向に延在している2つのアーム52によって形成されている。図23が示すように、操作要素6は、その州へ区の末端側領域に、内側にある歯部54を担持し、該歯部は、噴射スリーブ17の外周に設けた歯部55(図25に図示)と協働し、この歯部とともに第2の連結部20を形成している。図24が示すように、駆動体14のロック歯38とともに第1の連結部16を形成しているロック歯53は、同様に操作要素6の全周にわたって配分されているのではなく、それぞれ部分範囲にのみ配置されている。ロック歯53とロック歯38とは、駆動体14に対する操作要素6の各回転位置で、少なくとも1つのロック歯50が少なくとも1つのロック歯38と係合するよう保証されているように配置される。図23および図24が示すように、ストッパー要素32は内側へ突出する縁として形成されている。本実施形態では、連続する縁は設けられておらず、互いに分断されてストッパー要素32を形成している4つの個々の縁部分が設けられている。操作要素の組み立ての際、ストッパー要素32は噴射スリーブ17の第1のストッパー33の背後に掛かる。しかしながら、全周にわたって延在する連続したストッパー要素32も有利である。
【0040】
図25ないし図32は噴射スリーブ17を示している。噴射スリーブ17はスリーブ状に形成され、末端部分59と基端部分60とを有し、末端部分と基端部分とは溝56によって互いに分断されている。溝56を画成している側面には、ストッパー33と34が形成されている。溝56内には、操作要素6のストッパー要素32が突出している。噴射スリーブ17は、その内面に、図26に示した2つの縦細条部58を有し、これら縦細条部はロック部分15との相対回転不能な結合のために用いられ、ロック部分15の縦溝37内へ突出している。図25および図26には、開口部26も示されており、該開口部を通じて配量機構18の外面が操作者に見える。図28および図30ないし図32が示すように、噴射スリーブ17の基端部分60は、開口部26に対向する側に、外周に設けた隆起部として形成されている縦細条部61を有している。縦細条部61は長方形の凹部62を有している。凹部62の構成は図31に詳細に示されている。
【0041】
凹部62は末端側エッジ86を有している。末端側エッジ86は、噴射器1のゼロ位置28において、上部ハウジング部分3に設けた末端側エッジ78(図42に図示)と協働して、これとともに第1のストッパー24を形成している。凹部62は基端側エッジ87を有し、該基端側エッジは、図4に示した、噴出される噴射液の最大調整可能な量に相当する噴射位置29において、上部ハウジング部分3の基端側エッジ79(図42)に当接して、これとともに第2のストッパー25を形成する。第2のストッパー25は、噴出される噴射液の最大調整可能な量を制限する。
【0042】
図42および図43が示すように、上部ハウジング部分3は凹部76を有し、該凹部はほぼ長方形の縦溝として形成され、該凹部から縦細条部77が隆起している。凹部76内には、噴射スリーブ17の縦細条部61が突出している。これにより、噴射スリーブ17は周方向においてハウジング2に対し回転を阻止されている。上部ハウジング部分3の縦細条部77は噴射スリーブ17の凹部62内へ突出し、これとともにストッパー24と25を形成している。縦細条部77および凹部62も、噴射スリーブ17のための回転阻止部を形成している。特に図30が示すように、噴射スリーブ17はその基端側部分60に雌ねじ57を担持している。
【0043】
図33ないし図36は配量機構18の詳細を示している。配量機構18はその外面に雄ねじ65を担持し、該雄ねじは、噴射スリーブ17の雌ねじ57(図30)とともに第1のねじ山結合部19を形成している。配量機構18は、雄ねじ65の領域に、図33および図34に示したスケール66を有し、該スケールは操作者に噴射液の調整量を示す。図33ないし図35が示すように、配量機構18はその基端側にロックフック67を有している。図42が示すように、上部ハウジング部分3は、周回するように延在しているロック縁75を有し、該ロック縁にロックフック67が掛止され、したがってロック部71を形成する。図34および図35が示すように、その基端側に、上部ハウジング部分3の支持スリーブ74(図42)で支持されているピボットピン70を有している。これによって配量機構18は上部ハウジング部分3内で回転可能に支持されている。図35が示すように、ピボットピン70内には雌ねじ68が配置されている。雌ねじ68は、図37および図38に示したピストン棒12の雄ねじ92と協働し、これとともに第2のねじ山結合部22を形成している。図36が示すように、実質的にスリーブ状の配量機構18は、その内周に、駆動体14との相対回転不能な結合に用いられる全部で4つの縦細条部69を有している。このため、縦細条部69は、図11ないし図13に示した駆動体14の縦溝36内へ突出する。
【0044】
図37ないし図39が示すように、ピストン棒12はその末端側に案内部分72を有し、案内部分は四角形の、本実施形態では正方形の横断面を有している。図39に概略を図示した、操作要素6のアーム52は、案内部分72の対向する縦面に当接し、これによって操作要素6とピストン棒12との間に相対回転不能な結合を形成させる。ピストン棒12はその基端側領域に溝73を有し、この溝でピストンディスク13(図2)が掛止されている。
【0045】
図42が示すように、上部ハウジング部分3は、その基端領域に、図44および図45に示したホールダ4とのロックのために用いるロックフック80を有している。ホールダ4はその末端領域にロック穴81を有し、該ロック穴にロックフック80が掛止される。本実施形態では、2つのロックフック80と2つのロック穴81とが示されている。図44および図45にはロック装置9が示されている。ロック装置9は互いに対向しあっている2つのロックフック82によって形成され、これらのロックフックは容器5にロックされる。ホールダ4は、その基端領域にしてその外周に、噴射針8(図1)を取り付けるための雄ねじ83を有している。
【0046】
図1ないし図45の実施形態では、ばね23は二重機能を満たしている。というのは、ばね23は、駆動体14とロック部分15との間にトルクをもたらすとともに、ロック部分15と操作要素6とを末端方向にあらかじめ付勢させねばならないからである。ばね23の構成を簡潔にするため、軸線方向の力をもたらしてトルクを提供する別個のばね要素を設けてよい。これに対応する実施形態は、図46ないし図52に示されている。なお、本願の全図において、同じ参照符号は互いに対応する構成要素を表している。図46および図47は、内部にロック部分95と駆動体14とを配置した噴射スリーブ97を示している。噴射スリーブ97は、内側へ突出している支持縁98を有し、該支持縁にばね93の第1の端部84が固定されている。ばね93の第2の端部85は駆動体14に掛止されている。ばね93は、噴射スリーブ97と駆動体14との間にトルクをもたらすために用いる。駆動体14が配量機構18と相対回転不能に結合されているので、トルクは配量機構18と噴射スリーブ17との間に作用し、配量機構18をこの配置構成のゼロ位置28の方向にあらかじめ付勢している。
【0047】
図48ないし図52が示すように、ロック部分95はその基端側に2つのスプリングアーム96を有している。本実施形態では、スプリングアーム96はロック部分95と一体に形成され、好ましくはプラスチックから成っている。スプリングアーム96はその固有弾性によりロック部分95を末端方向にあらかじめ付勢している。スプリングアーム96の代わりに、コイル圧縮ばね、または、ロック部分95と操作要素6とを長手中心軸線50の方向にあらかじめ付勢するための他の構成のばね要素であってもよい。
【0048】
図53ないし図58は噴射器の他の実施形態を示すもので、この場合噴射スリーブ107および駆動体114のみが図示されている。図示していない他の構成要素は、噴射器1に対し図示し説明した構成要素に対応している。図54が示すように、噴射スリーブ107はその内周にロック要素101,102,103,104を有している。ロック要素101,102,103,104は噴射器1のロック位置を設定している。図55が示すように、ロック要素101ないし104は周部において互いに異なる間隔を有している。ロック要素101はゼロ位置に割り当てられ、ロック要素102はプライミング位置に、ロック要素103と104は第1および第2の噴出噴射液量に割り当てられている。
【0049】
図56ないし図58が示すように、駆動体114はロックアーム109を有し、該ロックアームに対向ロック要素110が形成され、該対向ロック要素は、複数のロック位置を決定するためにロック要素101ないし104と協働することができる。噴射スリーブ107と駆動体114の相対位置が、周溝63内へ突出している保持縁107により設定されているので、ロック要素101ないし104と対向ロック要素110とによって形成されるロック機構は、噴射液の噴出量を調整する際にも、噴射液を容器から噴出させる際にも作用している。図55および図58が示すように、ロック要素101ないし104と対向ロック要素110とは周方向においてほぼ対称に形成されており、その結果噴射液を噴出させる際には、ロック位置に打ち勝つための大きな力を必要としない。図53ないし図58に示した噴射器の場合、配量機構をゼロ位置方向にあらかじめ付勢するばねは設けられていない。噴射スリーブ107の内周には、圧縮ばねを載置するための段部108が設けられ、該圧縮ばねは、噴射スリーブ107と図53ないし図58には図示していない操作要素との間で作用して操作要素を末端方向にあらかじめ付勢している。
【0050】
噴射器121の他の実施形態が図59ないし図62に示されている。噴射器121は上部ハウジング部分23を有し、該上部ハウジング部分にロックアーム129が形成されている。本実施形態では、ロックアーム129は外部から見ることができる。しかしながら、ロックアーム129は、有利には、操作者にとって見えないように形成されている。噴射器121は、実質的に噴射器1の噴射スリーブ17に対応する噴射スリーブ127を有している。しかしながら、噴射スリーブ127はその外面にロック要素128を有し、該ロック要素は凹部として形成され、該凹部には、ロックアーム129に形成されている対向ロック要素130(本実施形態では移動止めとして形成されている)をロックすることができ、これとともにロック装置125を形成している。図61が示すように、噴射器121は駆動体124を有し、駆動体はロック要素または対向ロック要素を担持していない。ロック部分も設けられていない。操作要素6内には、該操作要素6を末端方向にあらかじめ付勢しているばね133が配置されている。本実施形態では、ロック要素125は、上部ハウジング部分123と噴射スリーブ127との間において、噴射液の噴出量を調整する際にも、噴射液を容器5から噴出させる際にも作用する。しかしながら、操作要素6をその基端方向に位置調整することで、ロックアーム129を、対向ロック要素130がロック要素128と協働できないように偏位させるようにしてもよい。これは、特に、ロックアーム129を上部ハウジング部分123に配置するのではなく、噴射スリーブ127に配置し、ロック要素128を上部ハウジング部分123に配置する場合に合目的である。
【0051】
図59ないし図62に示した噴射器121の場合、配量機構を第2の回転方向にあらかじめ付勢し、噴射スリーブ127と配量機構との間で作用するばねも設けられていてよい。図62が示すように、ロック要素128と対向ロック要素130とは、図示した実施形態では、対称に実施されている。付加的に、配量機構を第2の回転方向にあらかじめ付勢するためのばねを設ける場合には、ロック要素を非対称に形成し、その結果噴射液を調量する際および噴出させる際に、ロック位置に打ち勝つための異なる力が生じ、付加的なばねが配量機構を次に低い噴射液設定量までしか戻り回転できないように構成するのが合目的である。
【0052】
図63ないし図73は、噴射器131(図70および図72)の他の実施形態を示している。図63ないし図66は、噴射器131の配量機構138を示している。配量機構138はその末端側にロックアーム139を有し、該ロックアームは対向ロック要素140を担持している。配量機構138のこの他の構成は、実質的に配量機構18の構成に対応している。本実施形態では、図66が示すように、対向ロック要素140は対称に形成されている。図67ないし図69が示すように、噴射器131は噴射スリーブ137を有し、該噴射スリーブはその内周にロック要素141と142を担持している。本実施形態では、ロック要素141と142は凹部として形成されている。他のロック要素を設けてもよい。ロックアーム139を配量機構138に形成する代わりに、噴射スリーブ137に形成して、対応するロック要素またはロック凹部を配量機構138に設けるのが有利である。ロック要素141と142は互いに長手中心軸線50の方向にも周方向にもずれている。ロック要素141と142は、配量機構138の雄ねじ65のねじ溝に対応するねじ線状軌道上にある。ロック要素141と142が長手中心軸線50の方向にも周方向にも互いにずれていることにより、複数のロック位置との間の比較的短い間隔が可能になる。
【0053】
図70および図71は、噴射器131をゼロ位置で示している。ロック要素141は対向ロック要素140にロックされ、これとともにロック装置135を形成している。図72および図73では、噴射器131は噴射位置にある。対向ロック要素140はロック要素142にロックされている。ロック要素141,142および対向ロック要素140が対称に形成されているので、操作者は2つの回転方向で複数のロック位置に簡単に打ち勝つことができ、その結果操作者は、噴射液を噴出させることなく、一度調整した配量からゼロ位置まで戻すことができる。しかし、ロック要素の非対称な他の構成も合目的である。図63ないし図73に示した噴射器131の実施形態でも、配量機構138を第2の回転方向にあらかじめ付勢するばねを噴射スリーブ137と配量機構138との間に設けてよい。噴射スリーブ137が配量機構138に対し周方向に移動するばかりでなく、軸線方向にも移動するので、操作要素6が最大配量まで複数回回転しても、噴射スリーブ137と配量機構138との各相対位置には一義的に噴射液の調整量が割り当てられている。
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