(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
紡糸溶液を紡糸して、ナノ繊維が多数の気孔を有する不織布の形態で集積されたナノウェブ前駆体を製造し、前記ナノウェブ前駆体をナノウェブ前駆体におけるMD側の張力とTD側の張力が同じである状態でロールツーロール方式で移送させながら前記ナノウェブ前駆体を硬化することを含む、多孔性支持体の製造方法。
前記ナノウェブ前駆体を硬化する前に、ナノウェブ前駆体を80〜200kgf/cmの線圧力下でカレンダリングすることをさらに含む、請求項7に記載の多孔性支持体の製造方法。
前記ナノウェブ前駆体を硬化することは、ナノウェブ前駆体の横方向の硬化収縮率が5〜15%になるようにナノウェブ前駆体を硬化することを含む、請求項7に記載の多孔性支持体の製造方法。
前記ナノウェブ前駆体をロールツーロール方式で移送させることは、ナノウェブ前駆体を無張力状態でロールツーロール方式で移送させることである、請求項7に記載の多孔性支持体の製造方法。
前記ナノウェブ前駆体をロールツーロール方式で移送させることは、前記ナノウェブ前駆体をローラーで巻いて移送させ、ローラーによってナノウェブ前駆体の機械方向に加えられる張力と同じ大きさの張力をナノウェブ前駆体の横方向に加えながらナノウェブ前駆体を移送させることである、請求項7に記載の多孔性支持体の製造方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。但し、これは例示として提示されるもので、これによって本発明が制限されず、本発明は、後述する請求項の範疇によって定義されるだけである。
【0026】
本発明で使用した用語は、単に特定の実施例を説明するために使用されるもので、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上明らかに別の意味を示すものでない限り、複数の表現を含む。本発明において、「含む」又は「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、一つ又はそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものの存在又は付加の可能性を予め排除しないものと理解しなければならない。
【0027】
本明細書に記載された「ナノ」という用語は、ナノスケールを意味し、5,000nm以下の大きさを含む。
【0028】
本明細書に記載された「直径」という用語は、繊維の中心を通る短軸の長さを意味し、「長さ」とは、繊維の中心を通る長軸の長さを意味する。
【0029】
本発明の一実施例に係る多孔性支持体は、ナノ繊維が多数の気孔を有する不織布の形態で集積されてなるナノウェブを含む。
【0030】
前記ナノ繊維は、優れた耐化学性を示し、疎水性を有することで高湿の環境で水分による形状変形のおそれがない炭化水素系高分子を好ましく使用することができる。具体的に、前記炭化水素系高分子としては、ナイロン、ポリイミド、ポリアラミド、ポリエーテルイミド、ポリアクリロニトリル、ポリアニリン、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、スチレンブタジエンゴム、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル(ポリビニルクロライド)、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン(ポリビニリデンフルオライド)、ポリビニルブチレン、ポリウレタン、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾイミダゾール、ポリアミドイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、これらの共重合体、及びこれらの混合物からなる群から選択されるものを使用することができ、その中でも、耐熱性、耐化学性、及び形状安定性が、より一層優れたポリイミドを好ましく使用することができる。
【0031】
前記多孔性支持体は、例えば、電気紡糸によって製造されたナノ繊維がランダムに配列されたナノ繊維の集合体、すなわち、ナノウェブを含む。このとき、前記ナノ繊維は、ナノウェブの多孔度及び厚さを考慮して、走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、JSM6700F、JEOL)を用いて50個の繊維の直径を測定し、その平均から計算したとき、40〜5,000nmの平均直径を有することが好ましい。もし、前記ナノ繊維の平均直径が40nm未満である場合、多孔性支持体の機械的強度が低下することがあり、前記ナノ繊維の平均直径が5,000nmを超える場合、多孔度が著しく低下し、厚さが厚くなることがある。
【0032】
前記ナノウェブは、前記のようなナノ繊維からなることによって、70〜95%、75〜95%、80〜95%、又は80〜88%の多孔度を有することができる。このような多孔度を有することによって、多孔性支持体の比表面積が大きくなるため、分離膜に適用するとき、電解質の含浸が容易であり、その結果、電池の効率を向上させることができる。一方、前記ナノウェブは、前記範囲以下の多孔度を有することが好ましい。もし、前記ナノウェブの多孔度が前記範囲を超える場合、形状安定性が低下することにより、後工程が円滑に行われないことがある。前記多孔度は、当業界に知られている方法を用いて測定することができる。一つの例示において、前記多孔度は、ISO 15901−1:2005(Mercury porosimetry)によって測定することができる。また、他の例示において、前記多孔度は、下記の数式1によって、多孔性支持体の全体積に対する空気の体積の比率によって計算することができる。このとき、全体積は、矩形状のサンプルを製造し、横、縦、厚さを測定して計算し、空気の体積は、サンプルの質量を測定した後、密度から逆算した高分子の体積を全体積から減算して得ることができる。
【0033】
[数式1]
多孔度(%)=(ナノウェブ内の空気の体積/多孔性支持体の全体積)×100
【0034】
また、前記ナノウェブは、5〜50μmの平均厚さを有することができる。前記ナノウェブの厚さが5μm未満であると、分離膜への適用時に機械的強度及び寸法安定性が著しく低下することがあり、一方、厚さが50μmを超えると、分離膜への適用時に抵抗損失が増加し、軽量化及び集積化が低下することがある。より好ましいナノウェブの厚さは10〜30μmの範囲である。前記ナノウェブの平均厚さは、製造されたナノウェブの厚さの平均値であってもよく、ナノウェブの厚さは、当業界に知られている方法により測定することができる。例えば、前記ナノウェブの厚さは、KS K ISO 9073−2(不織布の厚さの測定方法)によって測定することができる。
【0035】
前記の多孔度及び厚さを有するナノウェブは、2〜10g/cm
2の坪量を有することができる。前記ナノウェブの坪量が2g/cm
2未満であると、分離膜に適用するときに機械的強度及び寸法安定性が著しく低下することがあり、一方、坪量が10g/cm
2を超えると、多孔度が低下することがある。より好ましいナノウェブの坪量は4〜8g/cm
2の範囲である。
【0036】
前記ナノウェブは、様々な用途に活用するために要求される加工工程に耐えられるように、1〜10%の切断伸度を有することが好ましい。もし、前記ナノウェブの切断伸度が1%未満であると、電気化学素子に適用するとき、多孔性支持体の縁部が破損することがあり、一方、切断伸度が10%を超えると、加工性、使用安定性、寸法変化率が不利であり得る。前記切断伸度は、KS M 7272に準拠した条件である25mmの幅(TD方向)及び100mmの長さ(MD方向)を有するナノウェブに、KS K 0521に準拠した方法によりInstron 5566試験機で1kgのロードセル(load cell)荷重を加えた後、1分当たり100mmの速度で定速引張して切断された時点での伸びた長さの比を%で示すことによって測定することができる。
【0037】
前記ナノウェブは、10,204gfの荷重下で0.7〜5%の中間伸度を有するものであってもよい。もし、前記ナノウェブの中間伸度が0.7%未満であると、電気化学素子の工程安定性及び駆動安定性が低下することがあり、一方、中間伸度が5%を超えると、加工性、使用安定性、寸法変化率が不利である。前記中間伸度は、切断伸度を測定する方法を用い、10,204gfの荷重下で伸びた長さの比を%で示すことによって測定することができる。
【0038】
前記ナノウェブは、10〜50MPa、10〜40MPa、10〜35MPa、15〜50MPa、20〜50MPa、15〜40MPa又は20〜35MPaの引張強度を有することができる。前記ナノウェブの引張強度が前記範囲未満であると、分離膜への適用時にナノウェブが破損したり、分離膜が適用される電気化学素子の駆動時にナノウェブが損傷し、電気化学素子の寿命を短縮させることがあり、一方、引張強度が前記範囲を超えると、ナノウェブの他の物性を、目的とする範囲に調節することが難しい。前記引張強度は、KS M 7272に準拠した条件である25mmの幅(TD方向)及び100mmの長さ(MD方向)を有するナノウェブに、KS K 0521に準拠した方法によりInstron 5566試験機で1kgのロードセル荷重を加えた後、1分当たり100mmの速度で定速引張して切断された時点での強力値(kgf)をMPa値に換算することによって測定することができる。
【0039】
前記ナノウェブが、優れた多孔度及び最適化された直径を有するナノ繊維と厚さを有し、製造が容易であり、優れた引張強度を示すためには、前記ナノウェブを構成する高分子が30,000〜500,000g/molの重量平均分子量を有することが好ましい。もし、前記ナノウェブを構成する高分子の重量平均分子量が30,000g/mol未満である場合、ナノウェブの多孔度及び厚さを容易に制御することができるが、多孔度及び引張強度が低下することがある。一方、前記ナノウェブを構成する高分子の重量平均分子量が500,000g/molを超える場合、耐熱性は多少向上させることができるが、製造工程が円滑に行われず、多孔度が低下することがある。
【0040】
また、前記ナノウェブは、上述したような範囲の重量平均分子量を有し、最適の硬化条件で高分子前駆体が高分子に変換されることによって、耐熱性が180℃以上、好ましくは300℃以上であってもよい。もし、前記ナノウェブの耐熱性が180℃未満である場合、耐熱性の低下により高温で容易に変形し得、これによって、これを用いて製造した電気化学素子の性能が低下することがある。また、前記ナノウェブの耐熱性が低下する場合、異常発熱により形状が変形してしまい、性能が低下し、激しい場合、破裂して爆発するという問題が発生し得る。
【0041】
前記ナノウェブは、常温乃至100℃で有機溶媒に不溶であるため、化学的に安定性を有することができる。前記有機溶媒は、NMP、DMF、DMAc、DMSO、THFなどの通常の有機溶媒であってもよい。
【0042】
前記ナノウェブは、変形率が10長さ%以下であってもよく、好ましくは、5長さ%以下であってもよい。前記変形率は、横100mm、縦100mmのナノウェブ試片を200℃で24時間放置し、放置前後の横及び縦の変形率の平均として測定することができる。前記変形率が10長さ%を超える場合、支持体の寸法安定性の低下、及び高温環境下での形状変形が発生し得る。
【0043】
前記ナノウェブは、ポリイミドからなる場合、イミド転化率が90%以上であってもよく、好ましくは99%以上であってもよい。前記イミド転化率は、前記ナノウェブに対して赤外線スペクトルを測定して、1375cm
−1でのイミドC−N吸光度に対する1500cm
−1でのp−置換されたC−H吸光度の比を計算して測定することができる。前記イミド転化率が90%未満である場合、未反応物質により、物性の低下及び形状安定性を担保することができない。
【0044】
前記ナノウェブは、空気透過度が50〜250lpmであってもよく、好ましくは100〜150lpmであってもよい。前記空気透過度は、ISO 9237方法により測定することができる。前記空気透過度が50lpm未満である場合、電解液の吸収が難しくなり、250lpmを超える場合、電解液を十分に含ませることができない。
【0045】
一つの例示において、前記ナノウェブは、70〜95%の多孔度を有し、1〜10%の切断伸度を有することが好ましい。このようなナノウェブを含む多孔性支持体を分離膜に適用する場合、電気化学素子の製造時に優れた工程安定性を提供することができ、電気化学素子の駆動時に優れた性能及び駆動安定性などを提供することができる。前記多孔性支持体が電気化学素子用分離膜に使用される場合、燃料電池の高分子電解質、二次電池、電気分解装置又はキャパシタの分離膜に使用され得る。特に、多孔性支持体は、燃料電池の高分子電解質に適用され、膜−電極接合体の製造時に工程安定性を著しく向上させることができる。また、前記多孔性支持体は、スタックを製造するために膜−電極接合体を直列又は並列に接続して組み立てるとき、膜−電極接合体の縁部の破断を防止することができる。
【0046】
しかし、前記多孔性支持体の用途が電気化学素子の分離膜に限定されるものではない。前記多孔性支持体は、通気度及び通水度に優れるだけでなく、耐熱性及び耐化学性に優れるため、耐熱性及び耐化学性が要求される気体又は液体フィルタ用の濾過材、防塵マスク用濾過材、自動車用ベンティング(venting)、携帯電話用ベンティング、プリンタ用ベンティングなどといったフィルタ用の素材、透湿防水布といった高級衣類用素材、傷治療用ドレッシング、人工血管用支持体、包帯、化粧品用マスクなどといった医療用素材などに使用することができる。
【0047】
本発明の他の一実施例に係る多孔性支持体の製造方法は、紡糸溶液を紡糸して、ナノ繊維が多数の気孔を有する不織布の形態で集積されたナノウェブ前駆体を製造し、前記ナノウェブ前駆体をナノウェブ前駆体におけるMD側の張力とTD側の張力が同じである状態で、ロールツーロール方式で移送させながら、前記ナノウェブ前駆体を硬化させることを含む。
【0048】
一例として、前記ナノ繊維が、疎水性ポリマーであるポリイミドからなる場合、前記多孔性支持体の製造方法は、ジアミン及びジアンヒドリドから重合された高分子を、溶媒に添加して紡糸溶液を製造するステップ、前記製造された紡糸溶液を紡糸して、ナノ繊維が多数の気孔を有する不織布の形態で集積されたポリアミック酸ナノウェブを製造するステップ、及び前記ポリアミック酸ナノウェブをイミド化させてポリイミドナノウェブを製造するステップを含む。
【0049】
以下、各ステップ別に説明すると、前記紡糸溶液は、前記ナノ繊維を形成するための高分子を含む溶液であって、前記ナノ繊維を形成するための高分子は、優れた耐化学性を示し、疎水性を有することで、高湿の環境で水分による形状変形のおそれがない炭化水素系高分子を形成できるものを好ましく使用することができる。具体的に、前記炭化水素系高分子には、前述した種類の高分子が含まれてもよい。そして、前記炭化水素系高分子を形成できる高分子としては、耐熱性、耐化学性及び形状安定性が、より一層優れたポリイミドを形成できる高分子を使用することが好ましい。
【0050】
前記ポリイミドを形成できる高分子としては、有機溶媒によく溶けるポリイミド前駆体として、ポリアミック酸(polyamic acid、PAA)を使用することができる。そして、ポリアミック酸ナノウェブを製造した後、後続の硬化工程でイミドとの反応を通じて、ポリイミドを含むナノウェブを形成することができる。
【0051】
前記ポリアミック酸ナノウェブは、通常の製造方法により製造することができ、具体的には、ジアミン(diamine)及びジアンヒドリド(dianhydride)を重合してポリアミック酸を製造した後、ポリアミック酸を溶媒に混合した紡糸溶液を紡糸して製造することができる。
【0052】
前記ジアンヒドリドとしては、ピロメリト酸二無水物(pyromellitic dianhydride、PMDA)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(3,3’,4,4’−benzophenonetetracarboxylic dianhydride、BTDA)、4,4’−オキシジフタル酸無水物(4,4’−oxydiphthalic anhydride、ODPA)、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(3,4,3’,4’−biphenyltetracarboxylic dianhydride、BPDA)、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物(bis(3,4−dicarboxyphenyl)dimethylsilane dianhydride、SiDA)及びこれらの混合物からなる群から選択される化合物を使用することができる。また、前記ジアミンとしては、4,4’−オキシジアニリン(4,4’−oxydianiline、ODA)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(1,3−bis(4−aminophenoxy)benzene、RODA)、p−フェニレンジアミン(p−phenylene diamine、p−PDA)、o−フェニレンジアミン(o−phenylene diamine,o−PDA)及びこれらの混合物からなる群から選択されるものを使用することができる。前記ポリアミック酸を溶解させる溶媒としては、m−クレゾール、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、ジエチルアセテート、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルム、γ−ブチロラクトン及びこれらの混合物からなる群から選択される溶媒を使用することができる。
【0053】
前記単量体から重合されたナノ繊維を形成するための高分子の重量平均分子量は、上述したナノウェブを構成する高分子のように調節することができる。
【0054】
前記ナノ繊維を形成するための高分子は、前記紡糸溶液の全重量に対して11.5〜13.5重量%含まれることが好ましい。もし、前記高分子の含量が前記範囲未満である場合、上述した切断伸度を有する多孔性支持体を製造することができず、一方、前記高分子の含量が前記範囲を超える場合、上述した多孔度を有する多孔性支持体を製造することができない。
【0055】
ステップ2では、前記紡糸溶液を紡糸してナノウェブ前駆体、すなわち、ポリアミック酸ナノウェブを製造する。前記紡糸は、本発明において特に限定されないが、電界紡糸(electrospinning)、エレクトロブロー紡糸(electro−blown spinning)、遠心紡糸(centrifugal spinning)又はメルトブローイング(melt blowing)などであってもよく、好ましくは、電界紡糸を用いることができる。
【0056】
以下では、電界紡糸を用いる場合について詳細に説明する。
【0057】
図1は、ノズル型電界紡糸装置の概略図である。前記
図1を参照すると、前記電界紡糸は、前記紡糸溶液が保管された溶液タンク1から、定量ポンプ2を用いてノズル3に前記紡糸溶液を一定量で供給し、前記ノズル3を介して前記紡糸溶液を吐出した後、飛散と同時に凝固したナノ繊維前駆体を形成し、追加的に、このような凝固したナノ繊維前駆体をコレクタ4で集束させてナノウェブ前駆体を製造することができる。
【0058】
このとき、前記電界紡糸は、前記ノズルの周辺の正電荷密度を高め、前記コレクタの周辺の負電荷密度を高めた状態で行われ得る。これを通じて、高分子液滴が紡糸され、飛散されると同時に互いに反発してナノ繊維として収集される効果を得ることができる。前記ノズルの周辺又は前記コレクタの周辺は、前記ノズル又は前記コレクタの表面から半径10cm以内の空間を意味し得るが、本発明において特に限定されない。
【0059】
具体的に、前記ノズルの周辺の正電荷密度は、前記ノズルの周辺に正電荷を供給できる高電圧発生器(図示せず)を設置して調節することができ、前記コレクタの周辺の負電荷密度は、前記コレクタの周辺に負電荷を供給できる高電圧発生器(図示せず)を設置して調節することができる。
【0060】
前記ノズルの周辺の正電荷密度を高める程度は、前記ノズルの周辺に正電荷を+10〜+100kVで供給することによって調節することができ、前記コレクタの周辺の負電荷密度を高める程度は、前記コレクタの周辺に負電荷を0〜−100kVで供給することによって調節することができる。前記正電荷供給量が+10kV未満である場合、紡糸力が不足し、+100kVを超える場合、電気絶縁が破壊され得、前記負電荷供給量が0未満である場合、電位差が不足し得、−100kVを超える場合、絶縁が破壊され得る。
【0061】
このとき、高電圧発生部6及び電圧伝達ロード5によって印加された前記ノズル3とコレクタ4との間の電場の強度は、850〜3,500V/cmであることが好ましい。もし、前記電場の強度が850V/cm未満である場合、連続的に紡糸溶液が吐出されないため、均一な厚さのナノ繊維を製造することが難しく、また、紡糸された後に形成されたナノ繊維がコレクタに円滑に集束することができないため、ナノウェブの製造が困難であり得、電場の強度が3,500V/cmを超える場合、ナノ繊維がコレクタ4に正確に据え付けられないため、正常な形態を有するナノウェブを得ることができない。
【0062】
前記紡糸工程を通じて、均一な繊維直径、好ましくは、0.01〜5μmの平均直径を有するナノ繊維が製造され、前記ナノ繊維は、一定の方向又はランダムに配列されて不織布の形態を有する。
【0063】
前記多孔性支持体の製造方法は、ロールツーロール方式を採用することができる。具体的に、前記ステップ2で製造されたナノウェブ前駆体は、ロールツーロール方式によって後続ステップに移送され得る。
【0064】
このように移送されたナノウェブ前駆体は、硬化する前にカレンダリング工程を経ることができる。前記カレンダリング工程は、必要に応じて省略してもよい。
【0065】
一つの例示において、上述した多孔度及び切断伸度を有するナノウェブを形成するために、ナノウェブ前駆体のカレンダリング工程を行うことができる。前記カレンダリング工程は、複数のローラーの間をナノウェブ前駆体が通過するようにし、ナノウェブ前駆体の両面に接触するローラーによってナノウェブ前駆体に一定の圧力を加えることで行うことができる。また、ナノウェブ前駆体がロールツーロール方式によって移送中であれば、ナノウェブ前駆体が通過する位置にナノウェブ前駆体の両面に接触する複数のローラーを設置して、ナノウェブ前駆体の製造工程とカレンダリング工程を同時に行うことができる。
【0066】
前記カレンダリング工程は20〜100℃の温度で行うことができる。もし、カレンダリング工程の温度が20℃未満であると、ナノウェブ前駆体の交絡点での交絡面積の増加の効果が僅かであり、カレンダリングローラーの圧力によってナノウェブ前駆体が損傷するおそれがあり、一方、カレンダリング工程の温度が100℃を超えると、ナノウェブ前駆体が不均一に硬化し得るため、適切な強度を示すことができない。
【0067】
また、カレンダリング工程の線圧力は80〜200kgf/cmであってもよい。もし、カレンダリング工程の線圧力が80kgf/cm未満であると、ナノウェブ前駆体の交絡点での交絡面積の増加が僅かであり、適切な伸度のナノウェブを形成することができず、一方、カレンダリング工程の線圧力が200kgf/cmを超えると、ナノウェブ前駆体の多孔度及び強度が低下することがある。
【0068】
ステップ3では、前記ナノウェブ前駆体のナノ繊維前駆体を硬化させる。
【0069】
前記ナノ繊維前駆体を前記ナノ繊維に転換させるためには、前記ナノ繊維前駆体に対する追加工程として硬化工程を行う。例えば、前記電気紡糸を通じて製造されたナノ繊維前駆体がポリアミック酸からなる場合、硬化工程の間のイミド化を通じてポリイミドに変換される。
【0070】
これによって、前記硬化工程時の温度は、前記ナノ繊維前駆体の変換率を考慮して適宜調節することができる。具体的に、80〜650℃で硬化工程を行うことができる。前記硬化時の温度が80℃未満である場合、変換率が低くなり、その結果、ナノウェブの耐熱性及び耐化学性が低下するおそれがあり、硬化温度が650℃を超える場合には、前記ナノ繊維の分解によりナノウェブの物性が低下するおそれがある。
【0071】
一つの例示において、前記硬化工程時の温度は、ナノウェブ前駆体の横方向(TD)の硬化収縮率が5〜15%になるように調節することができる。前記のような硬化収縮率を示す場合、製造されたナノウェブは、上述した多孔度、引張強度及び切断伸度を有することができる。もし、前記ナノウェブの横方向(TD)の硬化収縮率が5%未満であると、適切な引張強度を有するナノウェブを形成することができず、一方、横方向の硬化収縮率が15%を超えると、収縮によるシワ発生の問題が発生し得る。このような硬化収縮率を示すようにするために、前記硬化温度は300〜500℃に調節することができる。
【0072】
前記ステップ3でナノウェブ前駆体がロールツーロール方式によって移送されたものであれば、ナノウェブ前駆体が通過する位置に加熱装置を設置して、ナノウェブ前駆体の製造工程と硬化工程を同時に行うことができる。
【0073】
上記のようにナノウェブを製造するためにロールツーロール方式を採用する場合、MD側及びTD側の張力を制御して、上述した多孔度及び切断伸度を有するナノウェブを提供することができる。前記において、MD側は、ナノウェブ前駆体又はナノウェブがロールツーロール方式によって移動する方向である機械方向(Machine Direction:MD)である。そして、TD側は、ナノウェブ前駆体又はナノウェブの移動方向と垂直方向であるナノウェブ前駆体又はナノウェブの横方向(Transverse Direction:TD)である。
【0074】
具体的に、ナノウェブ前駆体のMD側及びTD側の張力を同一に制御して、上述したナノウェブを提供することができる。
【0075】
一つの例示において、ナノウェブ前駆体にいかなる張力も加えずにナノウェブ前駆体をロールツーロール方式によって移送することができる。具体的に、ナノウェブ前駆体を無張力で移送するために、ナノウェブ前駆体は、コンベアベルトなどに置かれた状態で移送され得る。このように、ナノウェブ前駆体の機械方向及び横方向の両方で張力を加えない場合、上述した切断伸度を有するナノウェブを提供することができる。
【0076】
また、他の例示において、前記ナノウェブ前駆体をローラーで巻いて移送させ、ローラーによってナノウェブ前駆体の機械方向に加えられる張力と同じ大きさの張力をナノウェブ前駆体の横方向に加えながらナノウェブ前駆体を移送させることができる。ナノウェブ前駆体に横方向に張力を加える方法としては、例えば、ナノウェブ前駆体の横方向に張力が加えられるようにナノウェブ前駆体の縁部をクリップなどで固定する方法を採用することができる。このように、ナノウェブ前駆体の機械方向及び横方向に同じ張力を加える場合、上述した切断伸度を有するナノウェブを提供することができる。
【0077】
本発明の他の一実施例に係る強化膜は、前記多孔性支持体、及び前記多孔性支持体の気孔内に充填されたイオン交換ポリマーを含む。
【0078】
前記多孔性支持体の気孔内に前記イオン交換ポリマーを充填させる方法としては、含浸(impregnation)を挙げることができる。前記含浸方法は、前記多孔性支持体を、イオン交換ポリマーを含む溶液に浸漬させることで行うことができる。また、前記イオン交換ポリマーは、関連モノマー又は低分子量のオリゴマーを前記多孔性支持体に浸漬させた後、前記多孔性支持体内でインサイチュ(in−situ)重合して形成されてもよい。
【0079】
前記含浸温度及び時間は、様々な要素の影響を受けることができる。例えば、ナノウェブの厚さ、イオン交換ポリマーの濃度、溶媒の種類、多孔性支持体に含浸させようとするイオン交換ポリマーの濃度などによって影響を受けることができる。ただし、前記含浸工程は、前記溶媒の氷点以上で100℃以下の温度で行われてもよく、より一般的に、常温から70℃以下の温度で行われてもよい。ただし、前記温度は、前記ナノ繊維の融点以上にすることはできない。
【0080】
前記イオン交換ポリマーは、プロトンといったカチオンの交換基を有するカチオン交換ポリマーであるか、またはヒドロキシイオン、カーボネート又はバイカーボネートといったアニオンの交換基を有するアニオン交換ポリマーであってもよい。
【0081】
前記カチオン交換基は、スルホン酸基、カルボキシル基、ボロン酸基、リン酸基、イミド基、スルホンイミド基、スルホンアミド基及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つであってもよく、一般的にスルホン酸基又はカルボキシル基であってもよい。
【0082】
前記カチオン交換ポリマーは、前記カチオン交換基を含み、主鎖にフッ素を含むフルオロ系高分子;ベンズイミダゾール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルイミド、ポリエステル、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリアリールエーテルスルホン、ポリホスファゼン、またはポリフェニルキノキサリンなどの炭化水素系高分子;ポリスチレン−グラフト−エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、またはポリスチレン−グラフト−ポリテトラフルオロエチレン共重合体などの部分フッ素化された高分子;スルホンイミドなどを挙げることができる。
【0083】
より具体的に、前記カチオン交換ポリマーが水素イオンカチオン交換ポリマーである場合、前記高分子は、側鎖にスルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基、ホスホン酸基及びこれらの誘導体からなる群から選択されるカチオン交換基を含むことができ、その具体例としては、スルホン酸基を含むポリ(ペルフルオロスルホン酸)、ポリ(ペルフルオロカルボン酸)、スルホン酸基を含むテトラフルオロエチレンとフルオロビニルエーテルの共重合体、脱フッ素化された硫化ポリエーテルケトン、またはこれらの混合物を含むフルオロ系高分子;スルホン化されたポリイミド(sulfonated polyimide、S−PI)、スルホン化されたポリアリールエーテルスルホン(sulfonated polyarylethersulfone、S−PAES)、スルホン化されたポリエーテルエーテルケトン(sulfonated polyetheretherketone、SPEEK)、スルホン化されたポリベンゾイミダゾール(sulfonated polybenzimidazole、SPBI)、スルホン化されたポリスルホン(sulfonated polysulfone、S−PSU)、スルホン化されたポリスチレン(sulfonated polystyrene、S−PS)、スルホン化されたポリホスファゼン(sulfonated polyphosphazene)及びこれらの混合物を含む炭化水素系高分子を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0084】
前記アニオン交換ポリマーは、ヒドロキシイオン、カーボネート又はバイカーボネートといったアニオンを移送させることができるポリマーであって、アニオン交換ポリマーは、ヒドロキシド又はハライド(一般的にクロライド)の形態が商業的に入手可能であり、前記アニオン交換ポリマーは、産業的浄水(water purification)、金属分離又は触媒工程などに使用することができる。
【0085】
前記アニオン交換ポリマーとしては、一般的に、金属水酸化物がドープされたポリマーを使用することができ、具体的に、金属水酸化物がドープされたポリ(エーテルスルホン)、ポリスチレン、ビニル系ポリマー、ポリ(ビニルクロライド)、ポリ(ビニリデンフルオライド)、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ(ベンズイミダゾール)またはポリ(エチレングリコール)などを使用することができる。
【0086】
前記イオン交換ポリマーは、前記強化膜の全重量に対して50〜99重量%含まれてもよい。前記イオン交換ポリマーの含量が50重量%未満であると、前記強化膜のイオン伝導度が低下するおそれがあり、前記イオン交換ポリマーの含量が99重量%を超えると、前記強化膜の機械的強度及び寸法安定性が低下することがある。
【0087】
前記イオン交換ポリマーは、前記多孔性支持体の気孔の内部に充填されることと共に、その製造工程上、前記多孔性支持体の一面又は両面の表面にコーティング層を形成することもできる。前記イオン交換ポリマーのコーティング層は、その厚さを30μm以下に調節することが好ましく、前記イオン交換ポリマーのコーティング層が前記多孔性支持体の表面に30μmを超える厚さで形成される場合には、前記強化膜の機械的強度が低下することがあり、前記強化膜の全厚の増加につながり抵抗損失が増加することがある。
【0088】
前記強化膜は、前記多孔性支持体の気孔内に前記イオン交換ポリマーを充填した構造であるため、40MPa以上の優れた機械的強度を示す。このように機械的強度が増加することによって、前記強化膜全体の厚さを80μm以下に減らすことができ、その結果、材料コストの低減と共に、イオン伝導速度が増加し、抵抗損失が減少する。
【0089】
また、前記強化膜は、耐久性に優れた多孔性支持体を含むと共に、多孔性支持体を構成するナノ繊維とイオン交換ポリマーの結着力に優れるため、水分による強化膜の3次元的な膨張を抑制することができ、長さ及び厚さの膨張率が相対的に低くなる。具体的に、前記強化膜は、水に膨潤させたとき、5%以下の優れた寸法安定性を示す。前記寸法安定性は、前記強化膜を水に膨潤させたとき、膨潤前後の長さの変化から下記の数式2によって評価される物性である。
【0090】
[数式2]
寸法安定性=[(膨潤後の長さ−膨潤前の長さ)/膨潤前の長さ]×100
【0091】
前記強化膜は、優れた寸法安定性及びイオン伝導度を有するため、燃料電池用高分子電解質膜又は逆浸透フィルタ用メンブレインとして好ましく使用することができる。