【文献】
Journal of Applied Polymer Science,1984年,Vol.29,p.891-899
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ジアミンは、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,5−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、1,3−ビス(4,4’−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ジアミノ−1,5−フェノキシペンタン、4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ジアミノジフェニルプロパン、ビス(3,5−ジエチル−4−アミノフェニル)メタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノベンゾフェノン、ジアミノナフタレン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、9,10−ビス(4−アミノフェニル)アントラセン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’−トリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル及びこれらの混合物よりなる群から選択される芳香族ジアミン;1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,4−シクロヘキサンビス(メチルアミン)、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン(MCA)、4,4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)(MMCA)及びこれらの混合物よりなる群から選択される脂環式ジアミン;並びにエチレンジアミン(EN)、1,3−ジアミノプロパン(13DAP)、テトラメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン(16DAH)、1,12−ジアミノドデカン(112DAD)及びこれらの混合物よりなる群から選択される脂肪族ジアミンよりなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1に記載のポリイミド。
前記ジアミンは、1,6−ヘキサメチレンジアミン(16DAH)、1,12−ジアミノドデカン(112DAD)、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン(MCA)、及び4,4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)(MMCA)よりなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1に記載のポリイミド。
前記酸二無水物は、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸二無水物(TDA)、ピロメリット二無水物(1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、ビスカルボキシフェニルジメチルシラン二無水物(SiDA)、ビスジカルボキシフェノキシジフェニルスルフィド二無水物(BDSDA)、スルホニルジフタル酸無水物(SO2DPA)、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、イソプロピリデンジフェノキシビスフタル酸無水物(6HBDA)、及びビシクロ[2.2.2]−7−オクテン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物(BTA)よりなる群から選択された少なくとも1種をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリイミド。
前記ポリイミドフィルムは、フィルム厚さ10〜100μmを基準に550nmでの透過度が80%以上であり、1GHzの誘電率が3.3以下であることを特徴とする、請求項5に記載のポリイミドフィルム。
【発明を実施するための形態】
【0017】
特に他の定義がなければ、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明の属する技術分野における当業者に通常理解されるものと同じ意味を有する。一般に、本明細書で使用される命名法は、当該技術分野でよく知られており、通常使われるものである。
【0018】
本明細書全体において、ある部分が、ある構成要素を「含む」とするとき、これは、特に反する記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0019】
本発明は、ジアミンと酸二無水物が重合されたポリアミック酸をイミド化して得られるポリイミドにおいて、前記酸二無水物は、下記化学式1で表示される化合物を含むことを特徴とするポリイミド、及び該ポリイミドを含むポリイミドフィルムに関する。
<化学式1>
【0020】
一般に、脂肪族ポリイミドは、芳香族ポリイミドに比べて分子内の低密度、双極性、及び分子間または分子内の低い電荷移動特性を帯びるため、高透明性及び低誘電率を持っており、これにより光電子工学及び層間絶縁膜物質として多くの注目を浴びている。
【0021】
このため、本発明では、高透明性及び低誘電率特性を持っている脂肪族ポリイミドを製造するために、窒素を含有するN−アセチル化−1,2−エチレンジアミン−二コハク酸無水物(N−acetylated−1,2−ethylenediamine−disuccinic anhydride:化学式1で表示される酸二無水物)を合成する。
【0022】
本発明に係る化学式1で表示される酸二無水物は、分子内に1つ以上の窒素原子を含有することにより、窒素原子の孤立電子対により分子内または分子間の鎖の相互作用が起こり、これを用いてポリイミドが持つ固有の優れた特性を維持しつつ、ポリイミドの可溶性及び機械的強度を大幅に向上させることができる。
【0023】
本発明に係る酸二無水物は、アルキル化反応と脱水閉環反応の2段階で、簡単かつ容易に製造することができる。
【0024】
具体的に、本発明に係る酸二無水物の製造方法は、塩基触媒の存在下で、化学式2で表示される化合物をN−アルキル化反応させ、化学式3で表示される化合物を生成した後、前記生成された化学式3で表示される化合物を脱水剤の存在下で脱水閉環反応させ、下記化学式1で表示される酸二無水物を製造する。
【0025】
前述した本発明に係る酸二無水物の製造方法を要約すると、反応式1のとおりである。
[反応式1]
【0026】
まず、反応式1に示すように、化学式3で表示される化合物は、化学式2で表示される化合物(L−アスパラギン酸)を塩基触媒の存在下でN−アルキル化して得られる。
【0027】
この際、前記N−アルカリ化反応で使用される塩基触媒としては、価格及び取扱容易性の面で水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウムよりなる群から選択される少なくとも1種でありうるが、物質によるイオン転化及び交換率に応じて自由に選択して使用することができる。
【0028】
一方、本発明においては、反応態様として、反応基質自体を溶媒とすることが好ましいが、他の反応溶媒を使用することも可能である。この際、反応溶媒としては、反応を阻害しないものであれば特に制限されず、たとえば、1,4-ジオキサン、トルエン、NMP(N-Methyl-2-pyrrolidone)、DMAc(dimethylacetamide)、1,2-ジブロモエタンなどであり得る。
【0029】
このように生成された、化学式3で表示される化合物には、脱水剤(dehydrating agent)が投入されることにより、脱水閉環反応によって、化学式1で表示される脂肪族酸二無水物が製造される。この際、前記脱水閉環反応は40〜100℃で4〜28時間行うのであって、前記脱水閉環反応を100℃超過または28時間超過で行う場合には、触媒及び溶媒の蒸発により収率が低下し、前記脱水閉環反応を40℃未満で行う場合には、反応時間が増加するか、或いは十分な反応が進まないため収率が低下するというのであり得る。
【0030】
前記脱水剤としては、無水酢酸、ピリジン、イソキノリン及びトリエチルアミンなどの第3級アミンよりなる群から選ばれる少なくとも1種を使用することができ、効率の面で無水酢酸及び/またはピリジンを使用することが好ましい。
【0031】
また、前記脱水剤の含量は、化学式3で表示される化合物1モルに対して、2モル以上であり得、好ましくは2〜10モルである。脱水剤を化学式3で表示される化合物1モルに対して2モル未満で使用する場合には、十分に反応が起こらないために収率が低下するおそれがあり、10モル超過で使用する場合には、必要以上の量が投入されるので、費用の問題が発生するおそれがある。
【0032】
前述した反応の後、生成された化合物を通常の方法で濾過した後、乾燥させて、化学式1で表示される酸二無水物を製造する。
【0033】
前述した本発明の化学式1で表示される酸二無水物は、ジアミンとの重縮合反応によってポリアミック酸を製造した後、熱または触媒を用いた脱水閉環反応によってポリイミドに製造することができる。この際、前記ジアミン:酸二無水物の当量比は1:1であることが好ましい。
【0034】
前記ジアミンは、特に限定されるものではなく、従来のポリイミドの合成に用いられている各種ジアミンを使用することができる。その具体的な例としては、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、2,5-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、1,3-ビス(4,4’-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ジアミノ-1,5-フェノキシペンタン、4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2’-ジアミノジフェニルプロパン、ビス(3,5-ジエチル-4-アミノフェニル)メタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノベンゾフェノン、ジアミノナフタレン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、9,10-ビス(4-アミノフェニル)アントラセン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’-トリフルオロメチル-4,4’-ジアミノビフェニルなどの芳香族ジアミン;1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,4-シクロヘキサンビス(メチルアミン)、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン(MCA)、4,4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)(MMCA)などの脂環式ジアミン;エチレンジアミン(EN)、1,3−ジアミノプロパン(13DAP)、テトラメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン(16DAH)、1,12−ジアミノドデカン(112DAD)などの脂肪族ジアミンなどを挙げることができる。また、これらのジアミンは単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0035】
特に、光学特性及び電気的特性の観点から、本発明のジアミンは、1,6−ヘキサメチレンジアミン(1,6−diaminohexane、16DAH)、1,12−ジアミノドデカン(1,12−diaminododecane、112DAD)、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン(4,4’−methylene bis(cyclohexylamine)、MCA)及び4,4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)(4,4’−methylene bis(2−methyl cyclohexylamine)、MMCA)よりなる群から選択される少なくとも1種であることができる。
【0036】
本発明は、また、前記化学式1で表示される酸二無水物以外に、ポリイミドの物性を阻害しない範囲内で、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸二無水物(TDA)、ピロメリット二無水物(1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、ビスカルボキシフェニルジメチルシラン二無水物(SiDA)、ビスジカルボキシフェノキシジフェニルスルフィド二無水物(BDSDA)、スルホニルジフタル酸無水物(SO
2DPA)、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、イソプロピリデンジフェノキシビスフタル酸無水物(6HBDA)、及びビシクロ[2.2.2]−7−オクテン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物(BTA)よりなる群から選択される少なくとも1種をさらに含むことができる。
【0037】
特に、本発明は、光学的物性と誘電率を向上させる観点から、好ましくは、自由体積を増加させることができるフッ素が含有された2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)、分子内の分極率異方性を下げることができる脂肪族(aliphatic)あるいは脂環式(cycloaliphatic)の、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸二無水物(TDA)、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物(CPDA)、ビシクロ[2.2.2]−7−オクテン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物(BTA)、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(CHDA)、ビシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(HBPDA)などの酸二無水物を含むことができ、ピロメリット二無水物(1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)などの芳香族酸二無水物も、目標とする光学物性を阻害しない範囲内で添加して使用することができる。
【0038】
この際、さらに含まれる酸二無水物の含量は、酸二無水物の総モルに対して、80mol%以下、好ましくは10〜5mol%で投入することがよく、前記範囲の含量で含まれる場合には、光学特性と誘電率を阻害しない範囲で、耐熱性の向上を期待することができる。
【0039】
本発明のポリアミック酸を得る方法は、特に限定されるものではなく、前記化学式1で表示される酸二無水物とジアミンを、公知の製造方法によって反応、重合させればよいが、有機溶媒中で、化学式1で表示される酸二無水物とジアミンを混合し、反応させる方法が簡便である。
【0040】
この際、使用される有機溶媒の具体例としては、m−クレゾール、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどを挙げることができる。これらの溶媒は、単独で使用してもよく、2種以上混合して用いてもよい。また、ポリアミック酸を溶解しない溶媒であっても、均一な溶液が得られる範囲内で、前記溶媒に加えて使用してもよい。
【0041】
溶液重合の反応温度は、−20〜150℃、好ましくは−5〜100℃の任意の温度を選択することができる。また、ポリアミック酸の分子量は、反応に使用する化学式1で表示される酸二無水物とジアミンとのモル比を変えることにより制御することができ、通常の重縮合反応と同様に、このモル比が1に近いほど生成するポリアミック酸の分子量は大きくなる。
【0042】
本発明のポリイミドフィルムは、こうして得られたポリアミック酸を支持体にキャストし、脱水閉環させて得られる。ここで、ポリアミック酸からポリイミドへの変化率(脱水閉環率)をイミド化率として定義するが、本発明のポリイミドのイミド化率は100%に限定されるものではなく、必要に応じて1〜100%の任意の値を選択することができる。
【0043】
本発明において、ポリアミック酸を脱水閉環させる方法は、特に限定されないが、通常のポリアミック酸と同様に、加熱による閉環、または、公知の脱水閉環触媒を用いて化学的に閉環させる方法を採用することができる。前記加熱による方法であると、80℃から300℃まで段階的に昇温させることができる。
【0044】
化学的に閉環させる方法は、例えば、ピリジンやトリエチルアミンなどの有機塩基と、無水酢酸などの存在下で行うことができ、このときの温度は、−20〜200℃の任意の温度を選択することができる。この反応では、ポリアミック酸の重合溶液をそのまま、または希釈して使用することができる。また、後述する方法により、ポリアミック酸の重合溶液からポリアミック酸を回収し、これを適当な有機溶媒に溶解させた状態で行ってもよい。このときの有機溶媒としては、上述したポリアミック酸の重合溶媒を挙げることができる。
【0045】
こうして得られたポリイミド(を含む)溶液は、そのまま使用することもでき、また、メタノール、エタノールなどの溶媒を加えてポリマーを沈殿させ、これを単離して粉末として、またはその粉末を適当な溶媒に再溶解させて使用することができる。再溶解用溶媒は、得られたポリマーを溶解させるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、m−クレゾール、2−ピロリドン、NMP、N−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、DMAc、DMF(dimethylformamide)、γ−ブチロラクトンなどを挙げることができる。
【0046】
本発明では、上述のように得られたポリイミドフィルムについて、もう一度熱処理工程に適用して、フィルム内に残っている熱履歴及び残留応力を解消することにより、安定的な熱安定性を得て、優れた熱膨張係数を有することができる。熱処理を済ませたフィルムの残留揮発成分は5%以下であり、好ましくは3%以下である。
【0047】
このように製造されたポリイミドフィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、10〜250μmであることが好ましく、より好ましくは10〜100μmであるのがよい。
【0048】
以上で説明したような方法によって、ジアミンと酸二無水物とを反応させて得られるポリアミック酸をイミド化してポリイミド及びポリイミドフィルムを製造することができ、このように製造された前記ポリイミドフィルムは、N−メチル−2−ピロリドン(N−methyl−2−pyrrolidone、NMP)、ジメチルアセトアミド(dimethylacetamide、DMAc)、フタル酸ジメチル(dimethyl phthalate、DMP)、ジメチルスルホキシド(dimethylsulfoxide、DMSO)などの有機溶媒に対する高い溶解性を示すとともに、フィルム厚さ10〜100μmを基準に550nmでの透過度が80%以上であり、1GHzの誘電率が3.3以下である物性を示す。
【0049】
前述したように、本発明に係るポリイミドフィルムは、低誘電率を示すとともに無色透明であって、液晶表示素子や半導体における保護材料、絶縁材料などの電子材料、光導波路などの光通信用材料としての用途に有用である。
【0050】
以下、本発明の好適な実施例及び比較例を説明する。しかし、これらの実施例は、本発明の好適な一実施例に過ぎず、本発明が下記の実施例に限定されるのではない。
【0051】
<製造例1>
1−1:化学式3で表示される化合物の合成
化学式2で表示される化合物(L−アスパラギン酸)50.73g(0.38mol)に水酸化カリウム30ml(50%水溶液)、水酸化カリウム13.94g(0.19mol)及び蒸留水70mlを混合して1Lの3口フラスコに投入し、前記フラスコに凝縮器、50mlの等圧滴下漏斗、還流凝縮器及び磁気攪拌機を取り付けた。1,2−ジブロモエタン28ml(50%水溶液)を注意深く前記フラスコの3番目の口から加えた後、60℃に加熱して還流させ、ここに水酸化カリウム(24ml、50%水溶液)を6時間滴下しながら還流し続けた。前記還流が完了したら、水をフラスコに加えた後、さらに溶液を1時間還流した。前記還流物を1時間冷却させながら撹拌を行った後、前記の得られた還流物を濃塩酸でpH3まで酸性化して白色沈殿物を形成させた。前記白色沈殿物を濾過し、ここに蒸留水(225ml)を添加した後、水酸化ナトリウム(50%水溶液)でpH11に調整した。前記のpH11に調整された混合物を塩酸でpH3.5に再調整して沈殿物を形成させ、水で塩酸を洗浄した後、65℃で真空乾燥した(17.9g、収率30%)。前記の化学式2で表示される化合物の製造方法は、Neal J.A.等によって報告されている(Neal J. A., Rose N. J., Inorg Chem, 1968, 7, 2408)。
【0052】
前記の、得られた化学式3で表示される化合物に対して、融点(Buchi、M−560)、NMR(
1Hと
13C)(JEOL、JNM−LA400)及びIR(AVATAR、360 FT−IR)をそれぞれ測定した。
融点:215〜217℃(H
2O+MeOH)
1H NMR (400 MHz, D
2O/KOH) δ 2.38-2.50 (m, 2H, CH
2CO
2), 2.62-2.67 (m, 2H, CH
2CO
2), 2.91-3.01 (m, 4H, CH
2CH
2), 3.55-3.58 (m, 2H, CH), (NH and CO
2H not observed at this pH); Anal. Calcd. for C
10H
16N
2O
8; C: 41.10, H: 5.52, N: 9.59%. Found: C: 40.97, H: 5.60, N: 9.64%; IR (KBr, cm
-1): 3530 (νO-H), 3422 (νN-H), 3044, 2807, 1723 (νC=O).
【0053】
1−2:化学式1で表示される酸二無水物の合成
実施例1−1で得られた、化学式3で表示される化合物4.96g(17mmol)、ピリジン3.18g(35.7mmol)及び無水酢酸3.6g(35.7mmol)を、50mlの、凝縮器及び磁気攪拌機付きのフラスコに投入して60℃で24時間反応を行った。反応完了の後、反応物を冷却し、濾過した。前記の濾過された濾過物を、無水酢酸200mlと精製されたジエチルエーテル200mlで洗浄して、真空状態のオーブンにて40℃で乾燥させた後、無水酢酸100mlで再結晶を行い、化学式1で表示される化合物2.48gを得た(収率50%)。
【0054】
前記の、得られた化学式1で表示される化合物に対して、融点(Buchi、M−560)を測定し、NMR(
1Hと
13C)(JEOL、JNM−LA400)及びIR(AVATAR、360 FT−IR)をそれぞれ測定した。
融点:248〜250℃(Ac
2O)
1H NMR (400 MHz, d6-DMSO) δ 2.01 (s, 3H, -NCOCH
3), 2.12 (s, 3H, -NCOCH
3), 2.83-2.91 (m, 2H, CH
2CO
2), 3.30 (dd, 2H, overlapped signals, CH
2CO
2), 3.65 (bd, 4H, CH
2CH
2), 4.66-4.60 (m, 2H, CH);
13C NMR (100 MHz, d6-DMSO): δ 173.8 (-NCOCH
3), 173.4 (COOCO), 172.9 (COOCO), 59.7 (α-CH), 51.2 (N-CH
2CH
2), 51.0 (N-CH
2CH
2), 37.1 (β-CH
2), 23.3 (-NCOCH
3); Anal. Calcd. for C
14H
16N
2O
8; C: 49.41, H: 4.74, N: 8.23%. Found: C: 49.32, H: 4.80, N: 8.26%; IR (KBr, cm
-1): 2955, 1869, 1790 (νC=O), 1222, 1196, 1075 (C-O-C).
【0055】
<実施例1〜4>
30mlの機械式攪拌機付き3口フラスコ内に、製造例1で得られた酸二無水物(2.0mmol)とm−クレゾール4mLを投入し、窒素ガスをゆっくり流しながら酸二無水物が完全に溶けるまで混合物を攪拌した。ここで、表1に記載されたジアミン(2.0mmol)とm−クレゾール2mlをさらに投入した後、フラスコを60℃まで加熱し、2日間撹拌した。ポリアミック酸を含む重縮合溶液の一部を、ガラス板上にキャストし、真空下で、ガラス板を80℃で3時間、200℃で1時間、及び250℃で1時間加熱してポリイミドフィルムを作るのである。硬化の後、柔軟で支持体のないポリイミドフィルムを除去するためにガラス板を熱湯に浸漬して、ガラス板からフィルムを除去して厚さ15μmのポリイミドフィルムを得た。
【0056】
この際に得られたポリイミドフィルムは、FTIR(AVATAR 360 FT−IR)を用いて、イミドに現れる特徴的な1771〜1775cm
-1の吸収バンドを確認することができた(
図1)。これはカルボニル基の非対称的な伸縮振動によるものであり、1691〜1697cm
-1のものはカルボニル基の対称的な伸縮振動によるもので、芳香族環の不在により、イミドカルボニル基の非共役構造は、脂肪族ポリイミドの吸収変化の原因となるということを確認することができる。
【0058】
<実施例5〜21>
30mlの機械式攪拌機付き3口フラスコの中に、製造例1で得られた第1の酸二無水物とm−クレゾール4mLを投入し、窒素ガスをゆっくり流しながら、第1の酸二無水物が完全に溶けるまで混合物を攪拌した。ここに表2に記載の第2の酸二無水物を追加投入し、完全に溶解させた。その後、ジアミンとして4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)(MCA)(100mmol)とm−クレゾール2mlを投入した後、フラスコを60℃まで加熱し、2日間撹拌した。ポリアミック酸を含む重縮合溶液の一部を、ガラス板上にキャストし、真空下で、ガラス板を80℃で3時間、200℃で1時間、及び250℃で1時間加熱してポリイミドフィルムを作るのである。硬化の後、柔軟で支持体のないポリイミドフィルムを除去するためにガラス板を熱湯に浸漬して、ガラス板からフィルムを除去して厚さ15μmのポリイミドフィルムを得た。
【0060】
<比較例1>
実施例1と同様の方法でポリイミドフィルムを製造するが、酸二無水物としてピロメリット酸二無水物(pyromellitic dianhydride、PMDA)を用いてポリイミドフィルム(厚さ15μm)を製造した。
【0061】
<比較例2>
実施例1と同様の方法でポリイミドフィルムを製造するが、酸二無水物としてピロメリット酸二無水物(pyromellitic dianhydride、PMDA)を、ジアミンとして4,4’−オキシジアニリン(4,4’−oxydianiline、ODA)を、溶媒としてN,N−ジメチルアセトアミドを、それぞれ用いて、ポリイミドフィルム(厚さ15μm)を製造した。
【0062】
<物性評価>
実施例及び比較例で製造されたポリイミドフィルムを用いて、次の方法で分子量、光学特性、電気的特性及び熱的特性を測定し、その結果を表3に記載した。
【0063】
(1)分子量及び分子量分布度の測定
ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)(Waters:Waters707)によってポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を求めた。測定する重合体は、4000ppmの濃度となるようにテトラヒドロフランに溶解させて、GPCに100μLを注入した。GPCの移動相はテトラヒドロフランを使用し、1.0mL/分の流速で流し込み、分析は35℃で行った。カラムは、Waters HR−05,1,2,4Eを4つ直列に連結した。検出器としてはRI and PAD Detecterを用いて35℃で測定した。また、分子量分布度(PDI)は、測定された重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で割って算出した。
【0064】
(2)光透過率の測定
UV分光計(Konita Minolta、CM−3700d)を用いて550nmでの透過度を測定した。
【0065】
(3)誘電率の測定
Agilent社製のE4980A precision LCR meter機器を用いて測定し、2probe方式で上板の金スパッタリングを行った。周波数は1Mhz、Aは2mm×2mmであり、フィルム厚さはポイントごとに異なるので、アルファステップを用いて各ポイントの厚さを測定して計算した。下板はITOコーティング面を介して中央のフィルムの静電容量(capacitance)を測定した。測定された値と静電容量を用いて、下記式1によって誘電率を算出した。
[式1]
K=(C×d)/(A×ε
o)
式中、Kは誘電率であり、Cは静電容量であり、dはフィルム厚さであり、Aは試片(フィルム)の面積(2×2mm)であり、ε
oは真空状態の誘電率(8.85×10
-12Fm
-1)である。
【0066】
(4)ガラス転移温度(Tg)の測定
Perkin Elmer社製のDSC7装備を用いて、昇温速度10℃/minで50〜300℃まで2nd Runを実施し、2番目の値をガラス転移温度(Tg)で算出した。
【0068】
表3に示すように、実施例1〜21のフィルムは、比較例1及び2のフィルムに比べて低い誘電率と高い透過率を示すことが確認できた。また、実施例5〜21のように、製造例1の酸二無水物(第1の酸二無水物)に、所定のモル比の酸二無水物(第2の酸二無水物)を追加して製造されたフィルムの場合には、比較例1及び2に比べて透過率と誘電率に優れた値を維持しつつ、ガラス転移温度が上昇することが確認できた。
【0069】
本発明の単純な変形または変更はいずれも、当該分野における通常の知識を有する者によって容易に実施でき、それらの変形や変更も本発明の範囲に含まれるものと理解すべきである。