特許第6353933号(P6353933)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6353933
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】ステント
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/915 20130101AFI20180702BHJP
【FI】
   A61F2/915
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-574791(P2016-574791)
(86)(22)【出願日】2016年2月8日
(86)【国際出願番号】JP2016053647
(87)【国際公開番号】WO2016129551
(87)【国際公開日】20160818
【審査請求日】2017年7月13日
(31)【優先権主張番号】特願2015-26313(P2015-26313)
(32)【優先日】2015年2月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】599140507
【氏名又は名称】株式会社パイオラックスメディカルデバイス
(74)【代理人】
【識別番号】100086689
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 茂
(72)【発明者】
【氏名】豊川 秀英
(72)【発明者】
【氏名】白川 京典
【審査官】 和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0296362(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0111147(US,A1)
【文献】 特表2005−524488(JP,A)
【文献】 特表2014−503276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/915
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジグザグ状に屈曲し、その両端が連結されて環状に形成された複数のストラット部と、これらのストラット部どうしを、軸方向に連結する複数のブリッジ部とで構成されたステントであって、
前記ブリッジ部の全てが、連結した3本又は4本のフレームから構成されており、
各ストラット部における、前記ステントの一端側に突出した屈曲部を山部とし、他端側に突出した屈曲部を谷部としたとき、
前記一端側の先頭に位置するストラット部を除く各ストラット部の前記山部が、全て前記ブリッジ部に連結され、かつ、前記山部の全てが、前記ブリッジ部によって3個又は4個ずつ束ねられて、前記一端側に隣接する前記ストラット部の、前記谷部又は前記山部に連結されており、
各ストラット部の前記谷部が、前記ブリッジ部に連結されていないものを有することを特徴とするステント。
【請求項2】
前記一端側の先頭に位置するストラット部を除く各ストラット部の、3個又は4個の前記山部に連結された前記ブリッジ部は、前記一端側に隣接する前記ストラット部の前記谷部に連結されている、請求項1記載のステント。
【請求項3】
前記一端側の先頭に位置するストラット部を除く各ストラット部の、3個又は4個の前記山部に連結された前記ブリッジ部は、その途中で一本に束ねられ、この一本に束ねられた結束部が、前記一端側に隣接する前記ストラット部の、前記谷部又は前記山部に連結されている、請求項1又は2記載のステント。
【請求項4】
各ストラット部の前記谷部又は前記山部のうち、前記ブリッジ部に連結されたものどうしの間に、前記ブリッジ部に連結されていないものが、周方向に一定個数ずつ存在する、請求項1〜3のいずれか1つに記載のステント。
【請求項5】
前記一端側の先頭に位置するストラット部を除く各ストラット部の、3個又は4個の前記山部に連結された前記ブリッジ部が、前記ストラット部の周方向に3〜6個設けられている、請求項1〜4のいずれか1つに記載のステント。
【請求項6】
前記一端側の先頭に位置するストラット部を除く各ストラット部の、3個又は4個の前記山部に連結された前記ブリッジ部は、一端側に向かう途中で軸方向にずらして順次束ねられて一本に結束され、この一本に束ねられた結束部が、前記一端側に隣接する前記ストラット部の、前記谷部又は前記山部に連結されている、請求項1〜5のいずれか1つに記載のステント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、胆管、尿管、気管、血管等の管状器官や、体腔、その他の体内組織に留置されるステントに関する。
【背景技術】
【0002】
以前から、胆管、尿管、気管、血管、食道等の管状器官や体腔などの体内に生じた、狭窄部や閉塞部に、ステントを留置して、狭窄部や閉塞部を拡張させて、胆汁や血液等を流れやすくしたり、或いは、動脈瘤が生じた箇所にステントを留置して、その破裂を防止したりする等といった、ステントを用いた治療が行われている。
【0003】
ところで、胆管等の管状器官にステントを留置した場合には、時間の経過に伴って、胆汁等の体液や、癌細胞の増殖等によって、ステントの内腔が閉塞することがあり、体内からステントを回収する必要が生じることがあった。この場合には、例えば、管状器官内に留置されたステントの一端部を、鉗子やスネア等で把持した後、これを引っ張ることによって管状器官内壁からステントを引き剥がし、その後、更に引っ張って管状器官内からステントを抜き出すようにしている。
【0004】
体内からの除去を可能としたステントとして、例えば、下記特許文献1には、複数のセグメント支柱が、山型又は谷型の移行部を介してジグザグパターンに屈曲されて形成された、複数の環状セグメントを有しており、隣接する環状セグメントどうしが、複数のコネクタ支柱を介して、軸方向に連結されてなるステントが記載されている。このステントの一端部に位置する環状セグメントの山型屈曲部には、アイレット状のヘッド端が設けられており、同ヘッド体を把持して引っ張ったり、複数のヘッド端に糸等を挿通させて同糸を引っ張ることによって、体内からステントを引き抜き可能となっている。更に、隣接する環状セグメントの、前記ヘッド端側に向く山型の移行部どうしが、前記コネクタ支柱によってそれぞれ連結されている(図1及び補正後の段落0020参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2007−529245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、胆管等の曲がりが大きい管状器官にステントを留置する場合には、ステントも屈曲した状態で留置されるので、柔軟性や耐キンク性(屈曲しても折れにくく、内腔が閉塞しにくい性質)が要求される。また、ステント留置後に管状器官内で癌細胞等が増殖した場合にも、増殖した癌細胞等によってステントが圧迫されて屈曲することがあり、この場合も上記の柔軟性や耐キンク性が要求される。
【0007】
しかしながら、上記特許文献1記載のステントにおいては、所定の環状セグメントの山型移行部のすべてと、隣接する他の環状セグメントの山型移行部のすべてとが、コネクタ支柱によって連結されてるので、コネクタ支柱の個数が多くなり、ステントが屈曲した場合に曲がりにくくキンクしやすい(折れて内腔が閉塞しやすい)という不都合があった。
【0008】
したがって、本発明の目的は、体内に留置したステントを体内からスムーズに抜き出すことができると共に、良好な柔軟性や耐キンク性を得られる、ステントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、ジグザグ状に屈曲し、その両端が連結されて環状に形成されているか、又は、所定形状に屈曲した形状をなす枠状体が、周方向に複数並んで連結されて環状に形成された、複数のストラット部と、これらの各ストラット部を、軸方向に複数連結するブリッジ部と、を有するステントであって、各ストラット部における、前記ステントの一端側に突出した屈曲部を山部とし、他端側に突出した屈曲部を谷部としたとき、前記一端側の先頭に位置するストラット部を除く各ストラット部の前記山部が、全て前記ブリッジ部に連結され、かつ、前記ブリッジ部によって複数個ずつ束ねられて、前記一端側に隣接する前記ストラット部の、前記谷部又は前記山部に連結されており、各ストラット部の前記谷部が、前記ブリッジ部に連結されていないものを有することを特徴とする。
【0010】
本発明のステントにおいては、前記一端側の先頭に位置するストラット部を除く各ストラット部の前記山部が、前記ブリッジ部によって3個又は4個ずつ束ねられて、前記一端側に隣接する前記ストラット部の、前記谷部又は前記山部に連結されていることが好ましい。
【0011】
本発明のステントにおいては、前記一端側の先頭に位置するストラット部を除く各ストラット部の、前記山部に連結された前記ブリッジ部は、前記一端側に隣接する前記ストラット部の前記谷部に連結されていることが好ましい。
【0012】
本発明のステントにおいては、前記一端側の先頭に位置するストラット部を除く各ストラット部の、複数個の前記山部に連結された前記ブリッジ部は、その途中で一本に束ねられ、この一本に束ねられた結束部が、前記一端側に隣接する前記ストラット部の、前記谷部又は前記山部に連結されていることが好ましい。
【0013】
本発明のステントにおいては、各ストラット部の前記谷部又は前記山部のうち、前記ブリッジ部に連結されたものどうしの間に、前記ブリッジ部に連結されていないものが、周方向に一定個数ずつ存在することが好ましい。
【0014】
本発明のステントにおいては、前記一端側の先頭に位置するストラット部を除く各ストラット部の、複数個の前記山部を束ねて、前記一端側に隣接する前記ストラット部の、前記谷部又は前記山部に連結する前記ブリッジ部が、前記ストラット部の周方向に3〜6個設けられていることが好ましい。
【0015】
本発明のステントにおいては、前記一端側の先頭に位置するストラット部を除く各ストラット部の、前記山部に連結された前記ブリッジ部は、他端側を3つ以上の前記山部に連結され、一端側に向かう途中で軸方向にずらして順次束ねられて一本に結束され、この一本に束ねられた結束部が、前記一端側に隣接する前記ストラット部の、前記谷部又は前記山部に連結されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、胆管等の管状器官や体腔等の体内に、ステントを他端側から挿入して留置することにより、ステントを回収する必要が生じたときには、ステントの一端側を鉗子やスネア等によって把持して引っ張ることにより、一端側の先頭に位置するストラット部を除く各ストラット部の全ての山部が、ブリッジ部を介して引っ張られ、山部どうしが収束して縮径されやすくなるので、山部を管状器官や体腔の内壁などに引っ掛かりにくくして、ステントを体内からスムーズに抜き出すことができる。
【0017】
また、各ストラット部の谷部は、ブリッジ部に連結されていないものを有するので、ストラット部とブリッジ部とで囲まれた空間が広くなり、ステントの柔軟性が高められ、屈曲したときにキンクしにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係るステントの第1実施形態を示しており、(a)はステントを構成するステント本体の斜視図、(b)はステント本体にカバーが被覆された状態の斜視図である。
図2】同ステントの断面図である。
図3】同ステントを構成するステント本体の展開図である。
図4図3のA部拡大図である。
図5】同ステントを体内から引き抜く際の状態を示す拡大説明図である。
図6】同ステントを体内に留置した状態を示す説明図である。
図7】同ステントを体内から引き抜く際の状態を示す説明図である。
図8】同ステントを構成するステント本体の変形例を示す展開図である。
図9】同ステントを構成するステント本体の、他の変形例を示す展開図である。
図10】本発明に係るステントの第2実施形態を示しており、同ステントを構成するステント本体の展開図である。
図11】本発明に係るステントの第3実施形態を示しており、同ステントを構成するステント本体の展開図である。
図12】本発明に係るステントの第4実施形態を示しており、同ステントを構成するステント本体の要部拡大展開図である。
図13】本発明に係るステントの第5実施形態を示しており、同ステントを構成するステント本体の要部拡大展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1〜9を参照して、本発明に係るステントの第1実施形態について説明する。
【0020】
図1(a)に示すように、この実施形態のステント10は、両端部が開口した略円筒状をなしたステント本体20を有しており、更に図1(b)に示すように、ステント本体20の内側に内側カバー50が被覆され、ステント本体20の外側に外側カバー60が被覆された構造をなした、いわゆるカバードステントとなっている。もちろん、内側カバー50や外側カバー60を被覆させないステントや、一方のカバーのみを被覆させたステントとしてもよい。
【0021】
図3の展開図を併せて参照すると、前記ステント本体20は、フレーム31を、山部35及び谷部37を形成するように、ジグザグ状に屈曲させて、その両端が連結されて環状になる、複数のストラット部30を有している。そして、これらのストラット部30が、ブリッジ部40を介して、ステント10の軸方向に複数連結されることで、ステント本体20が構成されるようになっている。
【0022】
なお、ストラット部としては、ジグザグ状に屈曲し両端が連結されて環状に形成された構造のみならず、所定形状に屈曲した形状をなす枠状体を、ステント周方向に複数並んで連結されて環状に形成された構造としてもよい。このストラット部が「枠状体」をなす構造については、後述する第2実施形態(図10参照)で説明する。
【0023】
また、ストラット部30の、隣接するフレーム31,31がV字状に屈曲してなるV字屈曲部分32(図4の二点鎖線で囲った部分)は、各ストラット部30について、その周方向に8〜24個設けることが好ましく、12〜16個設けることがより好ましい。
【0024】
なお、以下の説明において、ストラット部30の軸方向一端側(図3,4では左側、以下、単に「一端側」という)に突出した屈曲部を山部35とし、軸方向他端側(図3,4では右側、以下、単に「他端側」という)に突出した屈曲部を谷部37とする。
【0025】
図3に示すように、ステント10の一端側の先頭に位置する、ストラット部30の山部35には、一個おきに、リング状をなした引き抜き部39が設けられている。これらの複数の引き抜き部39には、ループ状をなした引き抜きワイヤ25が挿通されており、図5に示すように、この引き抜きワイヤ25を鉗子5等で把持して引っ張ることで、体内からステント10を引き抜き可能となっている。なお、図5においては、便宜上ステント本体20のみが示されている。
【0026】
また、ステント10は、カテーテルやシース等の図示しない医療用チューブ内に、縮径状態で収容されて、同医療用チューブの先端側から、体内へ押し出されて配置されるようになっている。この場合、ステント10は、谷部37が設けられた他端側を押出方向に向けて収容され、他端側から体内に挿入される。そして、ステント10を体内から回収する際には、山部35が向いた前記一端側から引き抜いて医療用チューブに収容することになる。
【0027】
すなわち、本発明における「ステントの他端側」は、ステントを体内に挿入する際の挿入方向側の端部となり、「ステントの一端側」は、ステントを体内から回収する際の引き抜き方向側の端部となる。
【0028】
なお、前記引き抜き部39は、ステント10の一端側の先頭に位置するストラット部30の、山部35の全てに設けてもよい
そして、図3及び図4に示すように、ステント10の一端側の先頭に位置する、引き抜き部39を有するストラット部30を除く、各ストラット部30の山部35は、前記ブリッジ部40によって複数個ずつ(ここでは3個)束ねられて、ステントの一端側に隣接するストラット部30の、谷部37に連結されている。また、ステント10の一端側の先頭に位置する引き抜き部39を有するストラット部30を除く、各ストラット部30の山部35は、全てブリッジ部40に連結され、各ストラット部30の谷部37は、ブリッジ部40に連結されていないものを有している。
【0029】
上記構造に関して、図3及び図4を参照して詳述すると、この実施形態におけるブリッジ部40は、先端どうしが連結した3本のフレーム41を有し、各フレーム41の基端が、各ストラット部30の、ステント周方向に隣接する3個の山部35,35,35にそれぞれ連結されて、山部35が3個ずつ束ねられており、更にブリッジ部40の先端が、ステント一端側に隣接するストラット部30の、1個の谷部37に連結された構造をなしている。
【0030】
また、上記のように、複数のストラット部30がブリッジ部40を介して連結されることにより、ステント軸方向に隣接するストラット部30,30と、ステント周方向に隣接するブリッジ部40,40とで囲まれた空間S(図3及び図4参照)が、ステント本体20に複数形成されるようになっている。
【0031】
なお、図3に示すように、前記ブリッジ部40は、各ストラット部30の周方向に、3〜6個設けられていることが好ましく、3〜4個設けられていることがより好ましい。
【0032】
また、このステント10は、図3に示すように、各ストラット部30の谷部37のうち、ブリッジ部40に連結されたものどうしの間に、ブリッジ部40に連結されていないものが、周方向に一定個数ずつ存在するように構成されている。
【0033】
この実施形態では、各ストラット部30の、ブリッジ部40に連結された谷部37と谷部37との間に、ブリッジ部40に連結されてない、谷部37が2個存在するように構成されている。
【0034】
なお、ブリッジ部40に連結された谷部37と谷部37との間に設けられる、ブリッジ部40に連結されてない谷部37の個数は、1個でもよく、3個以上であってもよいが、1〜3個であることが好ましく、1〜2個であることがより好ましい。
【0035】
また、この実施形態では、ステント10の一端側の先頭に位置する引き抜き部39を有するストラット部30を除く、各ストラット部30の山部35が、ブリッジ部40によって3個ずつ束ねられているが、ブリッジ部40により束ねられる、ストラット部30の山部35の個数は、特に限定されない。例えば、図8に示すように、ブリッジ部40を4本のフレーム41を有するものとし、その基端を各ストラット部30の周方向に隣接する4個の山部35にそれぞれ連結させて、山部35を4個ずつ束ねてもよい。
【0036】
更に図9に示すように、ブリッジ部40を2本のフレーム41を有するものとし、各基端を各ストラット部30の周方向に隣接する2個の山部35にそれぞれ連結させて、山部35を2個ずつ束ねてもよい。
【0037】
また、この実施形態では、各ストラット部30の複数の山部35を束ねたブリッジ部40の先端は、隣接するストラット部30の谷部37に連結されているが、山部35に連結してもよい。この山部35に連結する構造については、後述する第3実施形態(図11参照)で説明する。
【0038】
なお、この実施形態におけるステント本体20は、金属円筒を、レーザー加工やエッチング等で加工して、複数のストラット部やブリッジ部を形成することで構成されている。ただし、例えば、金属板を加工して、ジグザグ状又は枠状体からなる複数のストラット部やブリッジ部を設け、この金属板を円筒状に屈曲させてステント本体を形成してもよい。
【0039】
また、上記ステント本体20は、常時は拡径した状態となる自己拡張型であるが、バルーンカテーテル等に装着しておき、ステントの内側に配置されたバルーンを膨らませることで、拡径させるバルーン拡径型としてもよい。
【0040】
上記ステント本体20の材質は、特に限定されないが、例えば、ステンレス、Ta、Ti、Pt、Au、W等や、Ni−Ti系合金、Co−Cr系合金、Co−Cr−Ni系合金、Cu−Zn−X(X=Al,Fe等)合金、Ni−Ti−X(X=Fe,Cu,V,Co等)合金等の形状記憶合金などが好ましい。
【0041】
また、ステント本体20の所定位置に、例えば、Pt、Ti、Pd、Rh、Au、W、Ag、Bi、Ta及びこれらの合金や、BaSO4、Bi、W等の粉末を含有した合成樹脂、ステンレスなどからなる、X線不透過性のX線マーカーを設けてもよい。
【0042】
ステント10の外径は、特に限定されず、用途に応じて適宜設定することができるが、例えば、胆管用ステントに用いる場合、4〜20mmが好ましく、6〜12mmがより好ましい。また、ステント本体20を構成する各ストラット部30、ブリッジ部40の幅は、特に限定されないが、0.05〜0.4μmが好ましく、0.1〜0.3μmがより好ましい。更に、ステント本体20を構成する各ストラット部30、ブリッジ部40の厚さは、特に限定されないが、0.05〜0.4μmが好ましく、0.1〜0.3μmがより好ましい。
【0043】
更に上述したように、ステント本体20の内側に内側カバー50が被覆されていると共に、外側に外側カバー60が被覆されている。図2の断面図に示すように、内側カバー50は、ステント本体20の内側を被覆すると共に、その厚さ方向途中に至る部分まで埋設し、外側カバー60は、ステント本体20の外側を被覆すると共に、内側カバー50に埋設されていない部分に至るまで埋設しており、両カバー50,60によって、ステント本体20のメッシュ開口(ストラット部30の複数のフレーム31と、ブリッジ部40の複数のフレーム41とで画成される空隙)が塞がれている。
【0044】
また、内側カバー50及び外側カバー60は、例えば、ポリウレタン、シリコーン、天然ゴム、ナイロンエラストマー、ポリエーテルブロックアミド、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、酢酸ビニルや、更には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、四フッ化エチレン−エチレン共重合体(ETFE)等のフッ素系樹脂、ポリブタジエン等のオレフィン系ゴム、スチレン系エラストマーなどで形成されることが好ましい。
【0045】
なお、上記実施形態では、本発明における「前記一端側の先頭に位置するストラット部を除く各ストラット部」とは、引き抜き部39を有するストラット部30以外の、全てのストラット部30を指すものであり、また、本発明における「各ストラット部」とは、引き抜き部39を有するストラット部30を含む、全てのストラット部30を指すものであり、更に本発明における「前記一端側に隣接する前記ストラット部」とは、ある所定のストラット部30に対して、それに隣接する所定のストラット部30を指すものである(例えば、図3においては、紙面右端(軸方向他端側)のストラット部30に対して、その隣に位置する、紙面右端から2つ目のストラット部30を指す)。これは後述する実施形態においても同様である。
【0046】
次に、上記構成からなる本発明のステント10の、使用方法の一例について説明する。なお、この使用方法は一例であり、特に限定はされない。
【0047】
図6に示すように、十二指腸1の下部には、乳頭2が設けられており、この乳頭2から胆管3や膵管4が分岐して伸びている。また、図示しない肝臓により生成される胆汁は、胆管3内を流動し、乳頭2を通過して十二指腸1へと供給されるようになっている。ここでは、乳頭2を通して、胆管3内にステント10を留置する際の手順について説明する。
【0048】
なお、本発明のステント10は、胆管3以外にも、膵管4や、食道、気管、大腸、血管等の管状器官や、体腔、その他の体内組織に留置することもでき、適用箇所は特に限定されない。
【0049】
まず、ステント10を縮径させて、カテーテルやシース等の図示しない医療用チューブ内に収容する。この際には、引き抜き部39を有するストラット部30があるステント一端側を手元側に向け、ステント他端側をチューブ先端側に向けて、医療用チューブ内にステント10を縮径させた状態で収容する。
【0050】
この状態で周知の方法によって、図示しない内視鏡のルーメンを通じてガイドワイヤを胆管3に挿入した後、同ガイドワイヤを介して医療用チューブを挿入していくことで、ステント10を、その他端側から胆管3内に挿入する。そして、医療用チューブの先端部が胆管3の所定位置に達したら、医療用チューブの挿入を終了する。その後、プッシャ等を介してチューブ先端からステント10を解放することで、ステント10を拡径させて、図6に示すように、ステント他端側を胆管3内に配置すると共に、ステント一端側を乳頭2からやや突き出るように配置して、ステント10を留置する。
【0051】
こうして胆管3内に留置されたステント10によって、胆管3が拡径した状態に維持されるが、胆汁等の体液や、癌細胞の増殖等によって、ステント10の内腔が閉塞されたり、或いは、治療が終了したりした場合には、ステント10を体内から回収したい場合がある。
【0052】
この場合には、図7に示すように、例えば、図示しない内視鏡のルーメンを通じて、鉗子5を十二指腸1内に挿入し、該鉗子5で、ステント一端側に設けたループ状の引き抜きワイヤ25を把持して、図5に示すように、鉗子5を操作者の手元側に向けて引っ張る。なお、ループ状のスネアを、ステント一端側に引っ掛けて、同スネアを介してステントを引っ張ってもよく、ステントを引っ張る手段は特に限定されない。
【0053】
このとき、ステント10の一端側の先頭に位置する引き抜き部39を有するストラット部30を除く、各ストラット部30の山部35が、ブリッジ部40によって複数個ずつ束ねられ、ステント一端側に隣接するストラット部30の谷部37に連結され、かつ、ステント10の一端側の先頭に位置する引き抜き部39を有するストラット部30を除く、各ストラット部30の山部35は、全てブリッジ部40に連結された構造をなしているので、上記のように、ステント一端側から引っ張ると、ステント一端側の先頭に位置するストラット部30を通じて、ステント10の一端側の先頭に位置する引き抜き部39を有するストラット部30を除く、各ストラット部30の全ての山部35が、それらを複数個ずつ束ねるブリッジ部40を介して引っ張られる。
【0054】
その結果、図5に示すように、各ストラット部30における山部35どうしが収束して、ステント10が縮径されやすくなると共に、ステント10の一端側の先頭に位置する引き抜き部39を有するストラット部30を除く、各ストラット部30の全ての山部35は、全てブリッジ部40に連結されているため、ステント10の一端側に突出した屈曲部が、独立して存在しなくなるので、複数の山部35を胆管3の内壁に引っ掛かりにくくすることができ、胆管3等の管状器官や、内腔、その他の体内組織から、ステント10をスムーズに抜き出すことができる。なお、この実施形態の場合は、胆管3から抜き出されたステント10は、図示しない内視鏡のルーメンを通じて、体内から回収することができる。
【0055】
また、各ストラット部30の谷部37は、ブリッジ部40に連結されていないものを有するので、ブリッジ部40とストラット部30とで囲まれた空間Sを広く確保することができ、それによって、ステント10の柔軟性を高めることができ、ステント10を屈曲した管状器官に留置して屈曲したときや、ステント10が癌細胞等の増殖により圧迫され屈曲したときなどに、ステント10をキンクしにくくすることができる。
【0056】
更にこの実施形態においては、図3及び図4に示すように、ステント10の一端側の先頭に位置する引き抜き部39を有するストラット部30を除く、各ストラット部30の山部35が、ブリッジ部40によって3個ずつ束ねられて、一端側に隣接するストラット部30の谷部37に連結されているので、ストラット部30とブリッジ部40とで囲まれた空間Sをより広くすることができ、ステント10の柔軟性を高めて、よりキンクしにくくすることができる。なお、図8に示すように、ステント10の一端側の先頭に位置する、引き抜き部39を有するストラット部30を除く、各ストラット部30の山部35が、ブリッジ部40によって4個ずつ束ねられ、一端側に隣接するストラット部30の谷部37に連結されている場合にも、同様の効果が得られる。
【0057】
また、この実施形態においては、図3及び図4に示すように、ステント10の一端側の先頭に位置する、引き抜き部39を有するストラット部30を除く、各ストラット部30の山部35に連結されたブリッジ部40が、一端側に隣接するストラット部30の谷部37に連結されているので、ストラット部30やブリッジ部40の線材(フレーム31やフレーム41)が、周方向に集中して配置されることを抑制することができ、ステント10を曲がりやすく、かつ、キンクしにくくすることができる。
【0058】
更に、各ストラット部30の谷部37のうち、ブリッジ部40に連結されたものどうしの間に、ブリッジ部40に連結されていないものが、周方向に一定個数ずつ存在する場合には(この実施形態では2個)、ステント10が曲がるときの柔軟性を均等に得ることができ、ステント10がどの方向に曲がってもキンクしにくくなる。
【0059】
また、ステント10を縮径状態から拡張するときの拡張性も均等に確保されて、胆管3等の管状器官や、その他の体内の内壁に対して、バランスよく均等に留置することができ、更に、ステント10を拡径状態から縮径させるときの収縮力も均等となり、縮径作業性を高めることができる。
【0060】
なお、図11に示される第3実施形態のステント10bのように、各ストラット部30の山部35のうち、ブリッジ部40に連結されたものどうしの間に、ブリッジ部40に連結されていないものが、周方向に一定個数ずつ存在する場合にも、同様の効果を得ることができる。
【0061】
また、ステント10の一端側の先頭に位置する引き抜き部39を有するストラット部30を除く、各ストラット部30の複数個の山部35を束ねて、一端側に隣接するストラット部30の谷部37又は山部35に連結するブリッジ部40が、各ストラット部30の周方向に3〜5個設けられている場合には(この実施形態では4個)、ストラット部30とブリッジ部40との間の空間Sを広く確保することができ、ステント10の柔軟性を高めることができ、耐キンク性をより向上させることができる。
【0062】
図10には、本発明に係るステントの第2実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0063】
すなわち、前記第1実施形態のステント10が、ジグザグ状をなしたストラット部30を有しているのに対して、図10に示すように、この実施形態のステント10aは、そのストラット部30Aが、所定形状に屈曲した形状をなす枠状体を、ステント周方向に複数並んで連結されて環状に形成された構造となっている。
【0064】
この実施形態における枠状体は、ステント軸方向に長くステント周方向が短い、略菱形状をなしているが、例えば、亀の子のような略六角形状としたり、両端がエッジ状をなした略紡錘形状等としたりしてもよく、山部35及び谷部37を有し、枠状をなす形状であれば特に限定はない。
【0065】
この実施形態におけるステント10aにおいても、前記第1実施形態のステント10と同様の効果が得られる。
【0066】
図11には、本発明に係るステントの第3実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0067】
図11に示すように、この実施形態のステント10bは、ブリッジ部40を構成する3本のフレーム41が、ステント10bの一端側の先頭に位置する引き抜き部39を有するストラット部30を除く、各ストラット部30の3個の山部35にそれぞれ連結されていると共に、3本のフレーム41が、ステント一端側に向かう途中で一本に束ねられて結束されており、この結束部45が、一端側に隣接するストラット部30の山部35に連結された構造をなしている。
【0068】
この実施形態のステント10bにおいては、ステント10bの一端側の先頭に位置する引き抜き部39を有するストラット部30を除く、各ストラット部30の山部35に連結されたブリッジ部40が、その途中で一本に束ねられ、この一本に束ねられた結束部45が、一端側に隣接するストラット部30の山部35に連結されているので、ストラット部30とブリッジ部40とで囲まれた空間Sを、より広く確保することができ、ステント10bの柔軟性をより一層高めることができる。
【0069】
図12には、本発明に係るステントの第4実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0070】
図12に示すように、この実施形態のステント10cは、前記第3実施形態のステント10bと同様に、ブリッジ部40の途中が一本に束ねられて結束されており、この結束部45が、一端側に隣接するストラット部30の谷部37に連結された構造をなしている。
【0071】
この実施形態のステント10cにおいては、前記第1,第3実施形態のステント10,10bと同様の効果が得られる。
【0072】
図13には、本発明に係るステントの第5実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0073】
図13に示すように、この実施形態のステント10dは、ブリッジ部40を構成する3本のフレーム41が、ステント10dの一端側の先頭に位置する引き抜き部39を有するストラット部30を除く、各ストラット部30の3個の山部35にそれぞれ連結されていると共に、3本のフレーム41が、ステント一端側に向かう途中で軸方向にずらした位置で順次束ねられて一本に結束されており、この一本に束ねられた結束部45が、一端側に隣接するストラット部30の谷部37に連結された構造をなしている。
【0074】
なお、この実施形態におけるブリッジ部40は、その他端側(各フレームの基端側)が3個の山部35に連結されているが、3個以上の山部35に連結されていてもよい。
【0075】
そして、この実施形態のステント10dにおいては、ステント10dの一端側の先頭に位置する引き抜き部39を有するストラット部30を除く、各ストラット部30の3つ以上の山部35に連結された各ブリッジ部40は、一端側に向かう途中で軸方向にずらして順次束ねられて一本に結束されているので、ステント10dを拡径状態から縮径させるときに、3つ以上の山部35に連結されたブリッジ部40の各フレーム41が順次折り畳まれるようにして縮径することとなり、ステント10を縮径させやすくすることができる。なお、複数のブリッジ部40が一点で束ねられていると、折り畳まれる際に応力が集中するので、ステントを縮径しにくくなる。
【0076】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0077】
10,10a,10b,10c,10d ステント
20 ステント本体
30,30A ストラット部
32 空間
35 山部
37 谷部
40 ブリッジ部
45 結束部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13