(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記したようなファインバブル発生装置は、ファインバブルの発生に高圧ポンプや大型の装置を要し、そのため設置スペースや導入コストの増大の問題があった。また、従来の装置のままで省スペース・低コストの小型ポンプを用いる場合には、水量および水圧に制限があるため、ファインバブルの発生が十分に得られないという問題があった。
【0009】
したがって、従来の装置よりも、低い水圧および少ない水量であっても所望の量のファインバブルを発生することができる、小型で低コストのファインバブル発生装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明はそのような状況に鑑み、大型のポンプを必要とせず、小型かつ低コストで、十分に気泡径が小さく、気泡密度の高いファインバブルを発生させることができる装置を提供することを目的とする。また、そのような装置を用いた、ファインバブルの製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
したがって、本発明によれば、以下のファインバブル発生装置および製造方法が提供される。
(1)液体と空気との混合流体からファインバブル含有流体を発生させるためのファインバブル発生機構を備えたファインバブル発生装置であって、
前記ファインバブル発生機構は、
前記混合流体の導入側と、ファインバブル含有流体の排出側とを区画する壁を備え、
前記壁は、底部が開口した錐体、錐台および柱体からなる群から選択される形状を有し、
前記壁で区画された形状の側面の少なくとも1部に、混合流体を壁の内側に導入するための貫通孔が形成されており、
前記混合流体は、貫通孔を通じて壁内部に導入され、ファインバブル含有流体となって前記開口部から排出されることを特徴とする、ファインバブル発生装置。
(2)前記混合流体を導入する気液流入管と、
前記気液流入管を筒の中心に設けた円筒状の気液混相流発生機構と、
前記気液混相流発生機構内部を二分するように設け、2〜4個の孔を有する上面と前記上面の孔とずらして配置された2〜4個の孔を有する下面を備え、前記上面の孔と前記下面の孔とはそれぞれ対応するように貫通する渦流発生機構と、
前記気液混相流発生機構の側面に設けた排出管と、
をさらに備え、
前記バブル発生機構が前記気液流入管の混合流体排出側に設けられており、
前記気液流入管は前記円筒の上面から中心に貫通し、かつ混合流体排出側の端部を筒本体の底部と隙間を空けて設けた、(1)に記載のファインバブル発生装置。
(3)前記混合流体を導入する気液流入管と、
1mm以上の粒径を有する気泡を分離する大径気泡除去機構と、
前記大径気泡除去機構とそれに隣接する中槽部の間に設けた、2〜8個の連絡孔を有する第1仕切部と、
前記連絡孔を介して前記大径気泡除去機構から前記混合流体が流入する中槽部と、
前記中槽部内に下部を開口させて設けた円筒状のスカート部と、
前記スカート部内に上部を開口させて設け、内部の螺旋構造により渦流を発生させる円筒状の渦流発生機構と、
前記中槽部に隣接する下槽部内に配置した、気泡を細断する気泡細断機構と、
前記下槽部の側面に設けた排出管と、
をさらに備え、
前記バブル発生機構が、前記渦流発生機構下流に設けられている、(1)に記載のファインバブル発生装置。
(4)前記貫通孔の数が2〜6個であり、前記貫通孔が前記側面の周囲に等間隔で設けられている、(1)〜(3)のいずれかに記載のファインバブル発生装置。
(5)前記貫通孔の内径が、2mm〜10mmである、(1)〜(4)のいずれかに記載のファインバブル発生装置。
(6)1〜4個の前記バブル発生機構を、前記排出管中にさらに備える、(1)〜(5)のいずれかに記載のファインバブル発生装置。
(7)前記気液流入管における最大圧力が、0.15〜0.25MPaである、(1)〜(6)のいずれか一項に記載のファインバブル発生装置。
(8)(1)〜(7)のいずれかに記載のファインバブル発生装置を用いる、ファインバブル製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によるファインバブル発生装置は、本発明者らが発明したバブル発生機構を用いることにより、従来の装置と比較して、比較的低い圧力および少ない水量であっても、所望の粒径および濃度のファインバブルを発生させることが可能であり、したがって小型かつ低コストのファインバブル発生装置を提供可能にするものである。
【0013】
また、本発明者らは、本発明者らが発明したバブル発生機構と、渦流発生機構、および大径気泡分離機構を組み合わせることにより、更に効率的なファインバブルの発生を可能にすることを見出した。
【発明を実施するための形態】
【0015】
バブルの定義
ファインバブル
本発明において、ファインバブルとは、直径100μm以下の気泡のことをいい、その内、直径1〜100μmの目視可能な白濁の気泡をマイクロバブル、直径1μm以下の目視不可能な無色透明なものをウルトラファインバブルというものとする。マイクロバブルとウルトラファインバブルとの明確な差は、ウルトラファインバブルでは可視光を散乱しないため肉眼では直接観察できず、マイクロバブルでは白濁により存在を確認できる点である。本発明においては、マイクロバブルを含むファインバブルの発生確認は、このような白濁を目視で確認することにより行った。またウルトラファインバブルについては、以下で詳述するレーザー回折により個数分布による粒度分布を測定し、その存在を確認した。
【0016】
ウルトラファインバブルの粒度分布測定方法
ウルトラファインバブルの個数分布による粒度分布測定は、以下の条件にて行った。
分析装置:測定機器 マイクロトラックシリーズ(microtrac version 10.5.3-22tR)(マイクロトラック・ベル株式会社)
バブル発生装置:
図1に記載の装置
バブル発生溶媒:水道水(室温)
【0017】
ミリバブル・サブミリバブル
本発明において、ミリバブルとは、1〜100mmの気泡のことをいい、サブミリバブルとは、100μm〜1mmの気泡のことをいう。本発明においては、これらのバブルの発生確認は目視で確認することにより行った。
【0018】
実施形態
本発明によるファインバブル発生装置について図面を参照しながら説明する。
【0019】
本発明の一実施形態によるファインバブル発生装置を、
図1を参照しながら説明する。第1の実施形態によるファインバブル発生装置20は、液体と空気の混合流体を導入する気液流入管21と、気液流入管21の混合流体排出側に設けられたバブル発生機構22と、気液流入管21が管の中心に設置されるようにした円筒状の気液混相流発生機構25と、該気液混相流発生機構25の側面に設けられた、ファインバブルを含む液体を排出するための排出管26とを備えている。気液混相流発生機構25は、円筒形状を有しており、筒本体の上面から気液流入管21が筒の中心に貫通され、気液流入管21の混合流体排出側の端部が、筒本体の底部と隙間を空けて配置されている。また、筒本体の内部は、渦流発生機構24によって、筒本体の底部側の下槽部23aと、筒本体の上部側の上槽部23bに二分されている。渦流発生機構24は、2個ないし4個の孔を有する上面27aと、上面の孔とずらして配置された2個ないし4個の孔を有する下面27bとを備えており、上面の孔と下面の孔とはそれぞれが対応するように貫通している。即ち、
図2に示すように、渦流発生機構の断面において、各貫通孔28が、上面27aまたは下面27bの面と一定の角度を有するように傾斜して配置されている。
【0020】
まず、気液流入管21に導入された水系組成物と空気の混合流体は、バブル発生機構22に導入され、ここでバブルを含む混合流体となる。バブル発生機構22は、円錐形状を有する中空の部材からなり、該円錐面の一部に1ないし複数の貫通孔29が設けられた構造を有している。気液流入管に導入された混合流体は、バブル発生機構22の外側から貫通孔29を通過して、バブル発生機構22の内部に導入され、ここでバブルが発生する。このようなバブル発生機構22を設けることによって、比較的低い水圧および少ない水量であっても十分にファインバブルを生成することができる。
【0021】
バブル発生機構22によってバブルを含む混合流体となった水系組成物は、気液流入管21の端部から排出されて、気液混相流発生機構25の下槽部23aに導入され、続いて、渦流発生機構24の貫通孔28を通過して、気液混相流発生機構25の上槽部23bに導入される。貫通孔28は、上記したように断面方向において斜傾して設けられているため、該貫通孔28をバブルを含む水系組成物が通過すると、バブルを含む水系組成物は上槽部23b内で渦流となる。上槽部23b中で気液流入管21のパイプを中心に渦を作り、その際に、比重の軽い大きな径のバブルを含む水系組成物は上槽部23bの内側(円筒形状の中心側)に集まり、上槽部23bの上部へと分離され、一方、小さな径のバブルを含む水系組成物は遠心力により上槽部23bの外側(円筒形状の外周側)へ押し出される。このようにして、径が小さいバブルを多く含む水系組成物を生成させ、気液混相流発生機構25の側面に設けられた排出管26を通じて排出する。
【0022】
排出管26には、所望により、気液流入管21と同様に、その管内部にバブル発生機構22を設けることができ、小さな径のバブルを含む水系組成物が通過すると、より一層、径の小さなバブルを含む水系組成物とすることができる。所望により、排出管26中のバブル発生機構22は2個以上を並列に配置してもよく、装置全体20におけるバブル発生機構22を3個以上とすることで、ファインバブルの発生効率を向上することが可能である。気液流入管21中に1個、排出管26中に1〜4個のバブル発生機構22を設けることが好ましい。
【0023】
本発明の第2実施形態によるファインバブル発生装置30を
図3を参照しながら説明する。第2実施形態によるファインバブル発生装置30は、水系組成物と空気の混合流体を導入する気液流入管37と、径の比較的大きな気泡を分離する大径気泡除去機構31と、大径気泡除去機構31とその下の中槽部33とを仕切り、貫通孔32aを備える第一仕切部32と、大径気泡除去機構31からの気液混相流が流入する中槽部33と、中槽部33内に下部を開口させて配置したスカート部34と、螺旋構造により渦流を発生させる渦流発生機構35と、渦流発生機構35内に配置され、貫通孔36aを備えるバブル発生機構36と、下槽部40内に配置された、気泡細断機構38と、気泡細断機構上に設けられた貫通孔38aと、下槽部40の側面に設けられたファインバブルを含む水系組成物を排出するための排出管39とを備えている。大径空気除去機構31、中槽部33、下槽部40、スカート部34、渦流発生機構35、気泡細断機構38は、いずれも円筒形状を有しているが、他の実施形態として、断面が円形以外の多角形を有する筒状形状としてもよい。
【0024】
まず、ファインバブル発生装置30へポンプを用いて気液流入管37から空気および水系組成物を圧送すると、大径気泡除去機構31の底面へ衝突する際に気泡を発生させながら空気と水系組成物との混合流体が大径気泡除去機構31中心部に設置された径の小さな円筒機構31aに溜まる。その後、該円筒機構31aから気泡を含んだ混合流体があふれ出る際に、比較的径の大きな気泡は大径気泡除去機構31の上部へと分離する。円筒機構31aからあふれ出た混合流体が第一仕切部32に備えられた貫通孔32aから中槽部33へと浸入すると、スカート部34と
図4に示すように内部に螺旋構造を有する渦流発生機構35との間を進む。気液混合流体が該渦流発生機構35の上端部へ到達すると、渦流発生機構35上部の空隙に比較的大きな径の気泡がトラップされる。該トラップされた気泡は渦流発生機構35へ流入する気液混相流に削られて取り込まれ、渦流発生機構35内部に形成された螺旋構造により混相流が誘導されて渦流が発生する。該渦流は、円錐形状のバブル発生機構36上の外側から貫通孔36aを通過して、バブル発生機構36の内部に導入され、ここでバブルが発生する。このようなバブル発生機構36を設けることによって、比較的低い水圧および少ない水量であっても十分にファインバブルを生成することができる。その後、水流の進行方向に対して垂直に配置された円筒状の気泡細断機構38内で更に微小にファインバブルが細断される。そのようにして発生したファインバブルを多く含む水系組成物は、円筒状の気泡細断機構38から貫通孔38aを通じて下槽部40へ排出され、その後、下槽部40側面に設けられた排水管39から排出される。また、本発明による別の実施形態では、所望により円錐形状のバブル発生機構36を複数配置することができる。
【0025】
図5に示すように、本発明によるバブル発生機構は、液体と空気との混合流体の導入側と、バブル含有流体の排出側とを区画する壁を備え、該壁は、底部が開口した錐体、錐台および柱体からなる群から選択される形状を有し、該壁で区画された形状の側面の少なくとも一部に、混合流体を壁の内側に導入するための貫通孔が形成されている。混合流体は、貫通孔を通じて壁内部に導入され、バブル含有流体となって、底部の開口部から排出される。
【0026】
本発明によるバブル発生機構の壁に設けられた貫通孔の数は、好ましくは3〜6個であり、壁部の周囲に等間隔で設けられることが好ましい。また、孔の形状は、任意の形状とすることができ、限定されるものではないが、好ましくは、円である。貫通孔が円である場合、その内径は、2mm〜10mmであり、好ましくは2mm〜6mmである。
【0027】
バブル発生機構が、円錐形状の場合、高さを8mm〜50mm、好ましくは10mm〜30mm、最も好ましくは12mm〜25mmとすることができ、底部の内径を6mm〜20mm、好ましくは8mm〜18mm、最も好ましくは10mm〜16mmとすることができる。
【0028】
バブル発生機構が円錐台形状の場合、円錐台部の高さを8mm〜50mm、好ましくは10mm〜30mm、最も好ましくは12mm〜25mmとすることができ、上底部の内径を5mm〜10mm、好ましくは6mm〜9mm、最も好ましくは7mm〜8mmとすることができ、下底部の内径を6mm〜20mm、好ましくは8mm〜18mm、最も好ましくは10mm〜16mmとすることができる。
【0029】
バブル発生機構が、円柱形状の場合、高さを8mm〜50mm、好ましくは10mm30mm、最も好ましくは12mm〜25mmとすることができ、底部の内径を6mm〜20mm、好ましくは8mm〜18mm、最も好ましくは10mm〜16mmとすることができる。
【0030】
また、バブル発生機構を構成する壁の厚さは、0.5mm〜8mm、好ましくは1mm〜5mm、最も好ましくは2mm〜3mmであり、好ましくはアルミ合金、ステンレス鋼、黄銅などの金属または樹脂等で製造される。
【0031】
貫通孔は、2個〜8個、好ましくは2個〜6個、最も好ましくは2個〜4個とすることができ、複数配置する場合には、好ましくは、均等な角度で間隔を空けて配置する。例えば、貫通孔が2個の場合には、180°の角度で配置する。また、バブル発生機構が円錐の場合には、孔は円錐頂部から、軸方向下向きに2mm〜18mm、好ましくは3mm〜15mm、最も好ましくは5mm〜10mmの位置に配置することができる。錐台および柱体の場合には、孔は上底部から、軸方向下向きに1mm〜18mm、好ましくは2mm〜15mm、最も好ましくは2mm〜10mmの位置に配置することができる。
【0032】
孔の直径は、8.9L毎分の出力のポンプを用いる場合、1mm〜4mm、好ましくは1mm〜3mm、最も好ましくは2mm〜3mmである。孔の直径は、用いるポンプの性能などにより適宜変更することが好ましい。
【0033】
渦流発生機構として、スカート部および螺旋構造を用いる場合、渦流発生機構の2種類の管の内、外管の内径は、10mm〜30mm、好ましくは15mm〜25mm、最も好ましくは17mm〜20mmとすることができる。また、内管の内径は、6mm〜〜24mm、好ましくは11mm〜21mm、最も好ましくは13mm〜16mmとすることができる。
【0034】
また、渦流発生機構の外管の長さは、25mm〜95mm、好ましくは30mm〜85mm、最も好ましくは35mm〜75mmとすることができ、内管の長さは、35mm〜95mm、好ましくは45mm〜85mm、最も好ましくは55mm〜75mmとすることができる。
【0035】
内管の内面に形成された螺旋部材の螺旋ピッチは、1mm〜30mm、好ましくは5mm〜20mm、最も好ましくは10mm〜15mmとすることができる。螺旋部材の溝幅は、2mm〜20mm、好ましくは3mm〜15mm、最も好ましくは5mm〜10mmとすることができる。内面に溝が施されている部分の長さは、10mm〜85mm、好ましくは20mm〜75mm、最も好ましくは30mm〜60mmとすることができる。
【0036】
本発明の別の実施形態によれば、
図3に示すファインバブル発生装置30の中槽部33において、バブル発生機構36を複数個並列に配置してもよい。例えば、2個のバブル発生機構36を並列して配置することができる。並列に配置する場合には、直列に配置する場合と比較して、ポンプの出力性能による影響を受けにくい。
【0037】
本発明の更に別の実施形態によれば、
図3に示すファインバブル発生装置30の中槽部33において、バブル発生機構と他のバブル発生機構とを組み合わせて使用することができる。そのような機構としては、例えば、加圧溶解方式の機構を使用することができる(図示せず)。本発明によるバブル発生機構の上流に加圧溶解機構を付与することによって、発生するバブルの濃度を更に向上することができる。ここで、加圧溶解機構を付与することにより、装置全体の圧力(ポンプの要求圧力)が上がるため、小型化するには加圧溶解機構の圧力は低いことが好ましく、例えば、0.2MPa〜0.15MPaとすることが好ましい。
【0038】
本発明の更に別の実施形態によれば、
図3に示すファインバブル発生装置30の中槽部33において、渦流発生機構35およびバブル発生機構36をそれぞれ複数個直列に配置してもよい(図示せず)。例えば、第一渦流発生機構、第一バブル発生機構、第二渦流発生機構、第二バブル発生機構などの順番で、交互に配置することができる。該バブル発生機構36を複数備える場合には、所望の条件により2個以上とすることができるが、好ましくは2個〜4個である。
【0039】
本発明の更に別の実施形態によれば、
図3に示すファインバブル発生装置30の中槽部33において、渦流発生機構35およびバブル発生機構36の上流に、気泡を粗粉砕する機構を更に備えていても良い。そのような機構としては、これらに限定されるものではないが、例えば、ベンチュリー管や、軸方向に対して垂直方向に配置し、前後の機構と連通した横筒とすることができる。これらの機構を更に配置することにより、バブルをより細かく効率よく発生させることができる。
【0040】
図3に記載のように、下槽部40は、中槽部33で発生したファインバブルを更に粉砕し、増幅するバブル粉砕部38と、発生したファインバブルを排出する排出管39とを備える。中槽部33で発生したバブルは、前記バブル発生機構36の下部開口部を通じてバブル粉砕部38へ供給され、該粉砕部38内で更に細かく粉砕される。
【0041】
図3に示したファインバブル発生装置30において、バブル粉砕部38は、軸方向に垂直に配置された中空状の円筒形状を有する。該円筒の上底および下底は閉じられており、その両端の円周上に複数の孔38aを備える。粉砕部38へ中槽部の軸方向に流入してきたバブルを含む旋回流が、軸方向に対して垂直方向へ方向転換されることにより、バブルを更に細かく粉砕することができる。また、細かく粉砕されたバブルは、円筒上の複数の孔38aから排出され、該円筒を含む下槽部40内で増幅されたのち、排出管39を介してファインバブル発生装置30から排出される。
【0042】
前記円筒は、20mm〜50mm、好ましくは25mm〜45mm、最も好ましくは30mm〜40mmの長さ、5mm〜30mm、好ましくは10mm〜25mm、最も好ましくは15mm〜20mmの内径を有する。
【0043】
前記円筒上の孔は、2個〜10個、好ましくは2個〜8個、最も好ましくは4個〜8個とすることができる。また、前記孔のサイズは、1mm〜6mm、好ましくは2mm〜5mm、最も好ましくは3mm〜4mmとする。また、孔は円周上に等間隔に配置することが好ましい。孔の形状は、任意の形状とすることができ、限定されるものではないが、好ましくは、円である。
【0044】
前記円筒壁の厚さは、1mm〜5mm、好ましくは1mm〜4mm、最も好ましくは2mm〜3mmとすることができ、好ましくは、アルミ合金、ステンレス鋼、黄銅などの金属または樹脂等で製造される。
【0045】
図3に示したファインバブル発生装置30において、本発明の別の実施形態によれば、バブル発生機構の下流にバブルの粒度を調整する機構を更に備えていても良い(図示せず)。そのような機構としては、これらに限定されるものではないが、例えば、ベンチュリー管、超音波粉砕等とすることができる。より詳細には、例えば、バブル発生機構から流入した水を排出口39と逆側に放出し、下槽部40内で方向転換をさせることにより、バブルの大きな塊を粉砕したり、または壁部へ衝突させる衝撃により、更に粉砕したりすることができる。これらの機構を配置することにより、前工程で発生したファインバブルを更に粉砕することができる。
【0046】
図3に示したファインバブル発生装置30において、本発明の更に別の実施形態によれば、下槽部40の排出管39の中に更にバブル発生機構を配置することができる。バブル発生機構は、好ましくは、中槽部33内に配置したものと同様の構造を有する。
【0047】
図3に示したファインバブル発生装置30において、上記したいずれの実施形態においても、上槽部31、中槽部33、および下槽部40をこの順序で接続する限り、任意の形態で接続し配置することができる。例えば、上槽部31のみを独立して配置し、中槽部33および下槽部40を縦に重ねて配置することができる。また、例えば、上槽部31の下に中槽部33を、中槽部33の下に下槽部40を縦に重ねて一列に配置することができる。
【0048】
本発明によるファインバブル発生装置は、これらの組合せに限定されるものではなく、所望の装置の大きさやバブルの発生濃度・量に応じて、本発明による効果が発揮できるような任意の組合せにより配置することができる。
【実施例】
【0049】
本発明を、以下の実施例により具体的に説明するが、例示のためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0050】
実施例1 バブル発生機構および渦流発生機構の構造の違いによるバブル発生の差異
バブル発生機構および渦流発生機構の形状や有無による、バブル発生状況への影響を試験した。
(1)バブル発生機構
本発明のファインバブル発生装置に使用されるバブル発生機構として、円錐形状であり、孔を180°の角度(即ち、中心を挟んで反対側)で2個設けたもの(高さ:25mm、底面内径:16mm、孔径:2mm)を使用した。また、別形状のバブル発生機構の例としては、直方体形状(高さ:25mm、縦:10mm、横:10mm)であり、孔を180°の角度(即ち、向かい合う平面上)で2個設けたものを使用した。バブル発生機構無しの例では、中槽部と下槽部との境界平面上に、同径の孔を2個配置した。
(2)渦流発生機構
本発明のファインバブル発生装置に使用される渦流発生機構については、2つの管(外管内径:17mm、外管長さ:75mm、内管内径:15mm、内管長さ:75mm、螺旋ピッチ:15mm、螺旋溝幅:10mm、螺旋部長さ:55mm)の内、口径の大きい外管(スカート部)を変化させてバブルの発生状況を比較した。具体的には、スカート部を中槽部の最下端から5mm上にずらして配置したものを通常のスカート部として用い、別形態の例として、スカート部が無いもの、およびスカート部の長さが半分のものを用いた。
(3)手順
ポンプ(浅野製作所製)を用いて、8.9L/分の出力で本発明によるファインバブル発生装置に水を導入し、10Lの水(水道水、室温)を入れた水槽内でファインバブルを発生させた。装置の稼働開始後1分で停止し、バブルの発生状況を調べた。ファインバブルの発生状況については、目視で行った。
(4)結果
バブルの発生結果を以下の表1にまとめる。
【0051】
【表1】
【0052】
例1−1は、発生機構として円錐を用い、スカート部(外管)を第二槽部の下端から5mm上にずらして配置したものである。本例における装置を用いて試験を行ったところ、水槽内の水は完全に白濁し、良好にファインバブルが発生した。
【0053】
例1−2は、発生機構を除去し、スカート部は例1−1と同様に設置したものである。本例における装置を用いて試験を行ったところ、バブルは発生しなかった。例1−1では良好にファインバブルが発生したことから、円錐形状の発生機構無しではファインバブルが発生しない条件下でも、円錐形状の発生機構があることでファインバブルが発生することがわかった。したがって、低水圧および少ない水量でファインバブルを発生させるために、バブル発生機構が重要な役割を果たしていると考えられる。
【0054】
例1−3は、発生機構の形状を直方体とし、スカート部は例1−1と同様に設置したものである。本例における装置を用いて試験を行ったところ、ファインバブルの発生は見られたがその濃度が低く、水槽内の水が完全に白濁するまでには至らなかった。したがって、バブル発生機構の形状として、直方体よりも円錐の方が好ましいと考えられる。
【0055】
例1−4は、発生機構は例1−1と同様に円錐を用い、スカート部を除去したものである。本例における装置を用いて試験を行ったところ、ファインバブルではなく径の大きいミリバブルが発生した。また、例1−5においてスカート部の長さを例1−1の半分の長さにしたところ、発生したのは大部分がミリバブルであり、マイクロバブルは少量しか発生しなかった。これらの結果から、スカート部がファインバブル化を阻害する浮力が強くサイズの大きな空気塊が渦流発生機構および円錐形状のバブル発生機構へ流れこむのを防いでいると考えられる。
【0056】
実施例2 円錐形状のバブル発生機構が発生限界圧力へ与える影響
本発明のファインバブル発生装置における発生機構の、バブルが発生する限界圧力への効果を検証するために、円錐形状の発生機構を除去したものと、円錐形状の発生機構を通常通り備えたものに対して、装置へ導入する水量を変化させてファインバブルの発生状況を比較した。円錐の有無と導入する水量以外の条件については、実施例1の例1−1と同様の条件で試験を行った。結果を以下の表2に記載する。
【0057】
【表2】
【0058】
発生機構として円錐を用いると、円錐を用いなかった場合よりも、低水圧、低水量でファインバブルが発生した。したがって、本発明による円錐形状の発生機構を用いることにより、従来のような大型のポンプで大型の装置へ水を高圧で圧送する必要がないことから、小型のポンプを用いた小型の装置でファインバブルを発生させることができる。
【0059】
本発明によるバブル発生装置を用いると、従来装置よりも低い、0.1MPaの装置入口圧力で十分な濃度のファインバブルを発生させることが可能である。従来よりも低い圧力で、所望の用途に用いるのに十分な濃度を発生させることが可能であるため、高圧な寸法の大きいポンプを用いる必要がなく、設置スペースやコスト面で優れたファインバブル発生装置を提供することが可能である。
【0060】
また、ポンプの出力を上げたところ、出力 9.2L/分(装置入口圧力 0.16MPa)、出力 16L/分(装置入口圧力 0.2MPa)、および出力 22L/分(装置入口圧力 0.25MPa)でファインバブルが発生した。より大型のポンプを用いて出力を68L/分まで上げたところ、装置入口圧力は1MPaまで上昇したが、ファインバブルの発生濃度は、本実施形態によるポンプを用いて出力を22L/分とした場合と同程度であった。したがって、本発明によるファインバブル発生装置は、大型ポンプを用いなくても、従来の大型の装置と遜色ない程度にファインバブルを発生させることが可能である。
【0061】
実施例3 円錐上の孔の位置および個数がバブル発生へ与える影響
本発明のバブル発生機構における孔の位置および個数が、バブルの発生状況へ与える影響について検証した。孔の位置および個数は、
図6に示すように、a〜fのパラメータにより規定した。ここで、aは円錐底部から孔下端部までの軸方向の距離、bは円錐頂部から孔上端部までの軸方向の距離、cは孔の個数、dは孔の内径、eは円錐底部の内径、fは円錐部の軸方向の長さ、gは孔の配置角度である。孔の位置および個数以外は、実施例1と同様の条件で試験を行った。結果を以下の表3に記載する。
【0062】
【表3】
【0063】
これらの結果から、円錐に設けられる孔は、2つ以上であることが望ましい。また、2つ以上の孔を設置する場合には、45°〜180°の角度で設置することが可能である。特に、2つの孔を設置する場合には、180°で設置することが最も好ましい。孔のサイズは、本実施例においては、内径を1〜4mmとしたが、好ましいサイズは設定する水量によって変化するため適宜調整する必要がある。
【0064】
また、本実施例の3−1と同条件にて、ポンプの出力水量を22L/分まで上げたところ、孔の内径が8mmまではファインバブルの十分な発生を確認することができた。さらに孔の内径を10mmにしたところ、その濃度は低いもののファインバブルの発生を確認することができた。したがって、本発明による装置に用いる場合、バブル発生機構の円錐部に設けられる孔の内径として、1〜10mmが好ましい範囲である。
【0065】
実施例4 改良形態を用いたファインバブル発生試験
図1に記載のファインバブル発生装置を用いてファインバブルを発生させ、その粒径を測定した。
【0066】
(1)粒径測定条件
測定機器
マイクロトラックシリーズ(microtrac version 10.5.3-225R)
光学台:MT3000II
水槽容積:4L
【0067】
(2)粒径測定方法
水道水およびカゼインナトリウムを0.01%加えた水中でファインバブルを発生させた。該装置稼働5分後および停止5分後におけるサンプルの粒径を、上記の測定条件にて測定した。
【0068】
(3)粒径測定結果
本発明による添加剤のうち、カゼインナトリウムを加えて生成したファインバブルおよび添加剤無添加の水道水中で生成したファインバブルの、ファインバブル発生装置稼働開始5分後および該装置の停止後5分後における、最頻出粒径、平均粒径および累積50%粒径の測定値を以下の表4に記載する。
【0069】
【表4】
【0070】
このように、本発明の
図1に記載のファインバブル発生装置を用いて、ファインバブルが発生することが確認された。
【0071】
実施例5 ウルトラファインバブル発生試験
図1に記載のファインバブル発生装置を用いた場合の、ファインバブルの発生に伴うウルトラファインバブルの発生状況を確認した。
【0072】
(1)粒度分布測定条件
測定機器
マイクロトラックシリーズ(microtrac version 10.5.3-225R)
光学台:UPA−UZ
水槽容積:4L
【0073】
(2)粒度分布測定方法
水道水(室温)中で
図1に記載の装置を稼働させ、バブルを発生させた。該装置の稼働5分後および停止5分後のサンプルの、0.800nm〜6,540nmの測定範囲内における粒度分布(個数分布)を、上記の測定条件にて測定した。
【0074】
(3)粒度分布測定結果
水道水中でバブル発生装置を稼働させた5分後と、停止した5分後における、最頻出粒径、平均粒径および累積50%粒径の測定値を以下の表5に記載する。
【0075】
【表5】
【0076】
上記の結果から、1μm(=1000nm)以下のウルトラファインバブルの発生を確認することができた。また、ウルトラファインバブルに特徴的な挙動である、経時的な粒径の減少も確認することができた。ウルトラファインバブルの発生のためには、通常、ファインバブルの発生よりも大型で高額な装置を必要とするため、本発明による装置は、非常に小型で簡易な構造を有する点において非常に優れているといえる。
【0077】
産業上利用可能性
本発明によるファインバブル発生装置、および該装置を用いたファインバブルの製造方法は、例えば、衣服等の洗浄に用いるためのファインバブルの製造、医療施設における入浴に用いるためのファインバブルの製造等において有用である。
【解決手段】気泡分離機構、渦流発生機構24、バブル発生機構22及び粉砕機構を組み合わせ、気液流入管21に導入された水系組成物と空気の混合流体は、バブル発生機構22に導入され、ここでバブルを含む混合流体となり、バブル発生機構22は、円錐形状を有する中空の部材からなり、該円錐面の一部に1ないし複数の貫通孔29が設けられた構造を有しており、気液流入管に導入された混合流体は、バブル発生機構22の外側から貫通孔29を通過して、バブル発生機構22の内部に導入され、ここでバブルが発生し、比較的低い水圧及び少ない水量で所望の粒径及び濃度のファインバブルを発生させることを可能にし、従って小型かつ低コストのファインバブル発生装置1。