【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例における「部」および「%」は特記しない限り「質量部」および「質量%」を表す。
【0038】
また、以下の実施例および比較例における油状物の物性の測定条件、および化粧料の評価方法は以下のとおりである。
(1)組成分析:GC2010(島津製作所社製)を用いるガスクロマトグラフィー分析によって測定した。
(2)透明性:目視で観察した。
(3)屈折率:アッベ屈折率計(ATAGO社製、Model:NAR-2T)を用いて、医薬部外品原料規格の屈折率測定法に従って40℃での屈折率を測定した。
(4)水酸基価:医薬部外品原料規格2006に従って測定した。
(5)粘度:BM型粘度計(BROOKFIELD社製 Model:DV3T)を用いて医薬部外品原料規格2006の粘度測定法(第2法)に従って測定した。
【0039】
(透明性の評価)
80℃に加温した試料を100mlのビーカーに入れて常温で1日放置した後、その外観を4段階で評価する。
A:透明である
B:わずかに濁りがある
C:濁りがある
D:不透明である
【0040】
(リップグロスの評価)
艶: リップグロスの艶の指標として屈折率を測定し、下記の4段階で評価する。
A:屈折率が1.445以上である
B:屈折率が1.440〜1.445である
C:屈折率が1.435〜1.440である
D:屈折率が1.435未満である
密着性: 一定量の試料を左手の甲に塗布し、下記の4段階で評価する。パネラーは5名であり、評価はその平均である。
評価基準
4点 非常によい
3点 よい
2点 ややよい
1点 悪い
評価
A 3.5以上
B 2.5〜3.5
C 1.5〜2.5
D 1.5未満
【0041】
(ヘアワックスの評価)
試料5gを手のひらにとり広げた後、髪になでつけてセットし、髪の艶、髪全体のまとまり具合、および試料を塗布した毛束のまとまり具合(毛束感)を下記の4段階で評価する。パネラーは5名であり、評価はその平均である。
評価基準
4点 非常によい
3点 よい
2点 ややよい
1点 悪い
評価
A 3.5以上
B 2.5〜3.5
C 1.5〜2.5
D 1.5未満
【0042】
(クリームの肌評価:TEWL:Trans Epidermal Water Loss)
試料0.1gを内腕に滴下し、3cm×3cm(縦横)の面積中に人差し指で左右各10往復して塗布する。その状態で温度20℃、湿度50%の部屋に30分間とどまり、Cutometer DUAL MPA580(Courage+Khazaka社製)を用いて経表皮水分蒸散量(TEWL)を測定する。さらに、そのままの状態で4時間経過した時点および8時間経過した時点でのTEWLを測定する。TEWLの評価は、塗布前の値を100としたときの指数で表す。
【0043】
実施例1
原料のフィトステロールとして、大豆油および菜種油から得られた、β-シトステロール44.8%、カンペステロール27.6%、スチグマステロール17.2%およびブラシカステロール6.4%を含み、不純分としてフィトステロール脂肪酸エステル1%および水3%を含む常温で固体状のフィトステロールを用意した。攪拌機、温度計、窒素吹き込み管を備えた500mLの反応器に上記のフィトステロール400g(1.0モル)、パラトルエンスルホン酸・一水和物0.4gを仕込み、窒素気流下220〜240℃に加熱し、留出する水を分離しながら8時間反応させた。冷却後、活性白土を加えてパラトルエンスルホン酸・一水和物を吸着させた後、反応液をろ過することにより淡黄色、透明な液状の生成物351gを得た。液状物の収率は87.8%であり、ステラジエンの生成量は331gであった。この生成物の組成は、β-シトステロール、カンペステロール、スチグマステロールおよびブラシカステロールの脱水反応により生成したステラジエンの混合物96%、残存フィトステロール3%、原料由来のフィトステロールエステル1%であり、水酸基価5.2、屈折率(40℃)1.5230、25℃での粘度は41,300 mPa・sであった。また、この油状物のUV−Cの吸収能(波長235nmにおける極大吸収)を島津製作所社製のUV−1800を用いて測定したところ、モル吸光係数εは34,000であり、きわめて高い吸収能を有していた。この油状組成物を油性基剤1とする。
【0044】
実施例2
反応時間を6時間に短縮すること以外は実施例1と同様にして、淡黄色で透明な液状の生成物355gを得た。液状物の収率は88.8%であり、ステラジエンの生成量は320gであった。この油状組成物を油性基剤2とし、その性状を表1に示す。
【0045】
実施例3
パラトルエンスルホン酸・一水和物の使用量を1.2gに増量すること以外は実施例1と同様にして、淡黄色で透明な液状の生成物350gを得た。液状物の収率は88.8%であり、ステラジエンの生成量は320gであった。この油状組成物を油性基剤3とし、その性状を表1に示す。
【0046】
実施例4
実施例1で得た油性基剤1 67部とフィトステロール脂肪酸エステル(ヒマワリ油由来のフィトステロールと脂肪酸のエステル、純度90%)15部を混合して、ステラジエン82%、残存フィトステロール4%、フィトステロールエステル14%の淡黄色で透明な油状混合物を調製した。この油状組成物を油性基剤4とし、その性状を表1に示す。
【0047】
比較例1
パラトルエンスルホン酸・一水和物の使用量を2gに増量すること以外は実施例1と同様にして、ペースト状の生成物348gを得た。ペースト状物の収率は87.0%であり、ステラジエンの生成量は205gであった。この油状組成物を比較油性基剤1とし、その性状を表1に示す。
【0048】
比較例2
反応温度を160〜180℃にすること以外は実施例1と同様にして、固体状の生成物357gを得た。固体状物の収率は89.3%であり、ステラジエンの生成量は204gであった。この油状組成物を比較油性基剤2とし、その性状を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
実施例5〜8および比較例3〜8
<リップグロス>
表2に示す処方のリップグロスを下記の製造手順に従って調製し、屈折率、艶、および密着性について評価した。比較のため、ステラジエン油を含まないリップグロス、ステラジエン油に代えて市販のフィトステロール脂肪酸エステルを用いるリップグロスについても同様にして評価した。その結果を表2に示す。
(製造手順)
(1)表2に示す(A)相の成分を約90℃に加熱し、均一に混合する。
(2)上記(1)で調製した混合液を容器に充填してリップグロスとする。
【0051】
【表2】
【0052】
本発明の油性基剤1〜4を使用するリップクロスは屈折率が大きく光沢に優れており、密着性においても良好な性能を有している(実施例5〜8)。これに対して、比較油性基剤1〜2を用いるリップクロスおよび市販のフィトステロール脂肪酸エステルを用いるリップグロスは、無添加の場合(比較例8)に比較して密着性の点で改良されているが、本発明例に比較すると屈折率が小さく光沢が十分とはいえない(比較例3〜7)。
【0053】
実施例9〜12および比較例9〜14
<ヘアワックス>
表3に示す処方のヘアワックスを下記の製造手順に従って調製し、艶、髪のまとまり具合、および毛束感について評価した。比較のため、市販のフィトステロール誘導体を用いるヘアワックスについても同様にして評価した。その結果を表1に示す。
(製造手順)
(1)表2に示す(A)相および(B)相の成分を約70℃に加熱し、均一に混合する。
(2)上記(1)で得た混合液に表3に示す(C)相および(D)相の成分を添加し、均一に混合する。
(3)上記(2)で混合液を、撹拌しながら35℃まで冷却する。
(4)上記(3)で調製した混合液を容器に充填してヘアワックスとする。
【0054】
【表3】
【0055】
本発明の油性基剤1〜4を使用するヘアワックスは光沢に優れており、毛束感においても良好な性能を有している(実施例9〜12)。これに対して、比較油性基剤1〜2を用いるヘアワックスおよび市販のフィトステロール脂肪酸エステルを用いるヘアワックスは、無添加の場合(比較例14)に比較して髪のまとまり性や毛束感の点で改良される傾向を示しているが、本発明例に比較すると光沢が十分とはいえない(比較例9〜14)。
【0056】
実施例13〜16および比較例15〜20
<クリーム>
表4に示す処方の水中油型クリームを下記の製造手順に従って調製し、塗布前、塗布直後(塗布してから30分経過後)、4時間経過後、および8時間経過後の経皮水分蒸散量を測定した。比較のため、市販のフィトステロール誘導体を用いるクリームについても同様にして評価した。その結果を表3に示す。
(製造手順)
(1)表4に示す(A)相の成分を約70℃に加熱し、(B)相を添加し均一に混合する。
(2)上記(1)で得た混合液に表4に示す(C)相および(D)相の成分を添加し、均一に混合する。
(3)上記(2)で調製した混合液を容器に充填してクリームとする。
【0057】
【表4】
【0058】
本発明の油性基剤1〜4を使用するクリームは、無添加の場合(比較例20)、市販のフィトステロール脂肪酸エステルを用いる場合(比較例17〜19)に比べて、塗布8時間後における水分保持性が良好である(実施例13〜16)。光沢に優れており、毛束感においても良好な性能を有している(実施例9〜12)。