(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記スリット、前記メンブレン 、及び 、前記内部リングは、患者の外側から患者の体腔の内側まで延びる作業チャンネルを形成するように構成されている、請求項3に記載の外科用接近器具。
前記外部リングの一部に結合された前記メンブレン の一部は、前記外部リングと前記ゲルパッドとの間に配置されている、請求項1〜9のいずれか1項に記載の外科用接近器具。
前記ゲルパッド、前記外部リング、及び 、前記メンブレン は、約12mmよりも小さい範囲の道具寸法を受け入れるようになっている、請求項1〜9のいずれか1項に記載の外科用接近器具。
前記ゲルパッド、前記外部リング、及び 、前記メンブレンは、約ガイドワイヤの寸法から外科医の腕の寸法までの範囲の道具寸法を受け入れるようになっている、請求項1〜9のいずれか1項に記載の外科用接近器具。
【発明を実施するための形態】
【0009】
患者が、
図1に全体を符号10で示されている。患者10は、手術台12の上にうつ伏せになった状態で示されており、この手術台上で、腹部手術が、腕16及び手17を持つ外科医14によって行われている。図示の例では、手術手技は、腹壁21を貫通して設けられた道具接近手段を用いて腹腔18内で行われる。腹腔鏡下手術と通称されるこの種の手術では、例えば把持器27及び内視鏡30のような道具のために腹壁21を貫通する低侵襲接近手段となるようトロカール23,25が一般に用いられる。
【0010】
本明細書は特に好ましい腹腔鏡手技に関心を寄せるが、腹腔鏡下手術は手技を体壁を貫通した最小接近手段により体腔内で行うことができる種類の手術の単なる代表例に過ぎないことは注目されよう。
上述の一般性にもかかわらず、腹腔鏡下手術に関し、外科医14は自分の手17を腹壁21を通って腹腔18内へ挿入できることがしばしば望ましいことに注目することは重要である。手17のこの挿入により、外科医14は解剖学的構造の種々の要素に直に接近できる。
【0011】
外科医14の手17及び腕16を受け入れるため、小さな切開部32が代表的には腹壁21に形成される。本発明の接近器具34を、外科医14の手によるこの接近を一段と容易にするよう設けるのがよい。特に腹腔鏡下手術の場合、腹腔18にガス、例えば、二酸化炭素を注入して腹壁21を持ち上げ、それにより腹腔18内の作業空間の容積を増大させるのが有利である。このガス注入圧力の維持(これは、気腹術と通称されている)は、接近が腹壁21を横切って、例えば、トロカール23,25並びに接近器具34を通って行われることが望ましい場合には特に困難である。この理由で、相当な労力を向けてかかる接近器具に、道具、例えば、把持器29、スコープ30及び手27の存在と不在の両方において密封特性をもたらしている。
【0012】
かくして、典型的には、トロカール23,25は、複雑な弁構造体を備えており、かかる弁構造体としては、道具のサイズの狭い範囲の各々について道具の存在下において道具シールを形成する道具弁及び道具の不在においてゼロシールを形成するゼロ弁が挙げられる。道具シールとゼロシールの両方を提供することにより、弁構造体は、道具の存在と不在の両方においてトロカールを通るガスの漏出を阻止することができている。
【0013】
道具シールは、上述のように特に厄介であり、道具直径の狭い範囲について効率的であるに過ぎない。例えば、直径が2フレンチ〜3フレンチに過ぎない場合のある道具、例えばガイドワイヤについて別個の道具シールが必要とされている。直径が3mm〜5mmの中程度のサイズの道具の場合、第2の道具シールが必要とされている。或る場合には、第3の道具シールが、直径が例えば9mm〜12mmの道具を受け入れるために必要であった。代表的には、道具の種々のサイズも又、各範囲について個々のゼロシールを必要としていた、かくして、複雑なトロカール、例えばトロカール23では、接近器具と関連して6という多い数の別々のシールが設けられる場合がある。
【0014】
気腹状態を維持するのが望ましくなければ、トロカール23,25又は接近器具34は不要であろう。腹壁21に切開部を設けて道具を直接切開部を通して挿入すればよい。しかしながら、適当な弁又はシールが無ければ、注入ガスは単に切開部を通って逃げ出ることになろう。これは、外科医14の手17を受け入れるのに十分大きくなければならない切開部32の場合には特に好ましくないであろう。かくして、接近器具34の主目的は、切開部32と共に接近又は作業チャネル34を形成し、気腹状態の維持のために作業チャネル34を横切る弁又は他の密封構造体を提供することにある。
【0015】
接近器具34の一実施形態の拡大図が、
図2に示されており、この
図2も又、腹壁21及び切開部32を示している。この簡単な例では、接近器具34は、パッド35の全体的形態を有し、これは、パッドが全体として平らであり、平面、例えば平面38内に設けられることを意味している。代表的には、この平面38に平行に、1対の主要表面41,43が設けられ、これら主要表面は、パッド35に相当大きな表面積を与えている。開口部又はスリット45を全体として平面38に垂直な軸線47に沿って、パッド35を貫通して形成できる。
【0016】
パッド35の開口部45は、操作的に設けられると、切開部32と連通し、この場合、切開部32と一緒になって作業チャネル36を形成する。開口部45と切開部32の整列は、パッド35が
図2に示すように腹壁の外部に設けられ、
図3に示すように腹壁21の内部に設けられ、又は
図4に示すように腹壁21の内部に設けられた状態で生じることができる。これら位置のうち任意のものにおいて、腹腔21に対するパッド35の操作的な配置では、パッド35をその操作位置に維持し、パッド35が切開部32の周りにシールを形成することが必要である。
図5の平面図を参照すると、これら2つの機能は、接着剤50をパッド35と腹壁21との間で切開部32の周りに施した状態で達成される。
【0017】
この接着剤50が
図5に示すように連続したリング52として形成される場合、リング52を切開部32の周りに円周方向に配置した状態でパッド35を配置すると、パッド35と腹壁21との間にシールを形成することができる。図示の例では、パッド35を操作的に位置決めすると、注入ガスの漏出は、接着剤リング52によってパッド35と腹壁21との間で阻止される。
パッド35を形成する材料の自動密封特性によりパッド35の開口部45を通る注入ガスの漏出が阻止される。この材料及びその非常に有利な特性については、以下に詳細に説明する。
【0018】
接着剤リング52の機能は、多くの種々の材料及び形状を用いて多くの互いに異なる方法で達成できることは理解されよう。例えば、接着剤以外の多くの材料を切開部32上の位置にパッド35を維持するのに用いることができる。切開部32の周りにおけるシールの形成も又、接着方式以外の方法で達成できる。さらに、接着剤50によって形成される連続シールの形状は、円の形状をしている必要はない。それどころか、切開部32の周りに周囲を形成するのに十分大きな連続パターンが、所望の密封関係の確立を容易にすることができる。最後に、例えば
図3に示すように腹壁21の内部にパッド35を単に配置しても、単に注入ガス圧力の結果として周囲シールが形成できることは注目されよう。
接近器具32の別の実施形態が、
図6に示されており、この場合、上述の実施形態と類似した構造の要素には同一番号の次にaを付けて示されている。この実施形態では、位置維持及び密封の機能は、アクセス器具それ自体についての変形形態で達成される。パッド35はこの場合、
図4に示すように切開部32内に設けられる。しかしながら、外部フランジ54及び内部フランジ56が、パッド35と一体に形成されている。
【0019】
外部フランジ54は、操作的に配置されると、腹壁21の外部に位置決めされ、内部フランジ56は腹壁21aの内部に配置される。このように、パッド35を切開部32a内に配置した状態でフランジ54,56によって定位置に保持できる。外科医14の手17が接近器具34を通って挿入されると、外部フランジ54は、パッド35aが遠位側に動くのを阻止する。これと同様に、外科医14の手17が引き抜かれると、内部フランジ56は、パッド35aが近位側へ動くのを阻止する。
この実施形態では、開口部45aは、パッド35a及びフランジ54,56を通って延び、切開部32を貫通する作業チャネル34を完全に構成する。
【0020】
接近器具34aと腹壁21との間に必要とされる主シールは、
図6を参照して説明するように接着剤リング52aを備えるのがよい。変形例として、内部フランジ56を有するこの実施形態は、フランジ56aと腹壁21との間の表面接触を単に利用するだけのものであってもよい。この場合、主シールをこれら構造要素相互間に形成し、内部フランジ56を複数の矢印58で示すように腹壁に押し付ける気腹圧力によって性能を向上させるのがよい。このシールは、主として、全体として軸線47に垂直な半径方向平面内に形成される。
主シールの機能は、パッド35aと切開部32を形成する腹壁21の部分との間に生じる追加の密封作用により一段と高めることができる。この場所では、腹壁21は、パッド35を単に切開部32内に設けるだけで半径方向に圧縮される。その結果得られた圧力は、パッド35aと腹壁21との間に軸方向シールを生じさせる。
【0021】
接着剤リング52aがこの実施形態に望ましい場合、接着剤リングを外部フランジ54と腹壁21との間で切開部32の周りに配置すると最も有利である。
道具、例えば外科医14のアーム16又は手17がパッド35を通って挿入されると何時でも、パッドの材料は、道具の表面に形状が一致し、道具と一緒になって道具シールを形成することは注目されよう。したがって、器具の挿入で始まり、器具の取出しで終わる期間全体の間、パッド35aを通る注入ガスの損失は実質的にゼロであり、或いは、腹腔18内の気腹状態の消失は生じない。
【0022】
次に
図7を参照すると、外科医14の腕16及び手17は、接近器具34aを通って挿入できる道具の単なる例に過ぎないことは理解されよう。道具の不在、又は
図7の場合では手17の不在において、開口部又はスリット45aはそれ自体単に閉じてゼロシールを形成し、かくして、接近器具34aを通る注入ガスの漏出を阻止する。道具、例えば手17が開口部又はスリット45aを通って挿入されると、道具シールが、接近器具34aの材料と道具の外面との間に形成される。これにより、道具が存在しているときでも、接近器具34aを通る注入ガスの漏出が阻止される。かくして、注入ガス圧力を、道具が定位置にあっても無くても何れにせよ、腹腔18内に維持することができる。これらシール、即ち、ゼロシール、腹部シールを、全範囲の道具サイズを受け入れる特性を備えた単一の弁構造体として形成することができることに注目されたい。
【0023】
パッド35aの形成は、代表的には、以下に詳細に説明する単純成形方法で達成される。かかる成形方法では、開口部又はスリット45aを成形工程の一部として形成することができる。
大抵の場合、単一の接近開口部45aが、手術手技に対応するのに十分であろう。しかしながら、接近器具34aのもう1つの利点は、パッド35aを通るそれ以上の接近手段を必要とする外科医14によって特に理解されよう。例えば、外科医14が別の道具が手術手技に必要であると判断した際に開口部45aを通って自分の腕16を挿入している場合を考える。これら状況の下では、パッド35aを通る別の開口部は、単に所望の手術道具をパッド35aを通って挿入することによって達成できる。このように、道具は、主要開口部45aとは別にそれ自体の接近穴を形成できる。
【0024】
特に先の尖った遠位端部を備える手術道具の場合、かかる道具を、遠位側へ動かしながらパッド35a中に単に押し込むのがよく、それによりそれ自体の接近穴、例えば開口部45aを形成する。手術道具それ自体によって形成されたこの開口部は、道具を挿入しているときに道具シールを自動的に形成すると共に道具を取り出しているときにゼロシールを形成することになろう。
先の尖った遠位端部を備えていない手術道具の場合、補助的器具、例えばトロカール栓塞子を用いて新たな接近穴を形成することが可能である。接近穴を形成した後、栓塞子を取り出すのがよく、それにより接近穴を空にして手術道具を受け入れるようにする。最初に接近穴を形成し、最終的に手術道具を接近穴に挿入するこの方法の全体を通じ、ゼロシールと道具シールの両方を形成して気腹状態を形成する。
【0025】
広範な直径に対応する単一弁で道具シール及びゼロシールを形成すること及び道具それ自体を用いて道具開口部を形成することと関連した利点に関し、本発明の技術的思想は、代表的には、特に接近器具34の構成材料で決まる構造体で具体化されることは理解されよう。好ましい実施形態では、パッド35は、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン(S−E/B−S)構造のクラトントリ−ブロック(KRATON Tri-block)と鉱物油との組合せから成るクラトン/油混合物で形成されている。他のトリ−ブロックポリマーを、例えば、スチレン−イソプレン(Isoprene)−スチレン(S−I−S)、スチレン−ブタジエン−スチレン(S−B−S)、クラレコーポレイションにより商標SEPTONで製造されているスチレン−エチレン/プロピレン−スチレン(S−E/P−S)をこの用途に用いることができる。これら一般的な配合物は、スチレンとゴムの含有量の比によって更に識別でき、例えばグレード1650は、29/71のスチレンとゴムの比を持つS−E/B−Sトリ−ブロックである。
【0026】
トリ−ブロックに加えてスチレンが化学式の一端にのみ存在しているこれら材料のジ−ブロック形態、即ち、スチレン−エチレン/ブチレン(S−E/B)ジ−ブロックも又存在する。
種々のベース配合物も又、合金化すると種々の中間特性を達成することができる。例えば、クラトン(KRATON) G1701X は、全体的なスチレンとゴムの比が28/72の70%S−E/B30%S−E/B−S混合物である。ほぼ無限の数の組合せ、合金及びスチレンとゴムの比を処方でき、各々が本発明の特定の実施形態に利点をもたらすことができることは理解できる。これら利点としては、代表的には、ジュロメータが低いこと、伸び率が高いこと及び引裂強さが良好であることが挙げられるであろう。
【0027】
パッド35の材料としては、シリコーン、軟質ウレタン及び発泡剤の添加により所望の密封性をもたらす硬質のプラスチックも又挙げられる。シリコーン材料は、エレクトロニクス封入処理に現在用いられているタイプのものであるのがよい。硬質のプラスチックとしては、PVC、イソプレン、クラトンニート(KRATON neat )及び他のクラトン/油混合物が挙げられる。例えば、クラトン/油混合物では、油、例えば、野菜油、石油及びシリコーン油を鉱物油に代えて用いてもよい。最も広い意味において、これら混合物は全て一般にゲルと呼ぶことができる。ゲルは代表的には、流体の性質に近い流れる能力を含む性質を有している。特に、接近器具34を貫通して延びる開口部又はスリット45の付近において、開口部の伝搬は関心事である。道具の存在に起因して生じる応力は、かかる開口部又はスリットの端のところに集中することになる。この理由で、良好な引裂抵抗がゲル材料にとって望ましい。かかる引裂抵抗はクラトン/油混合物において固有の性質である場合が多く、これを向上させるには、ゲルを他の材料に封入するのがよい。例えば、低引裂抵抗のゲルをウレタンシース内に封入すると、その結果得られる製品の引裂抵抗を向上させることができる。かかるシースは、弾性である必要はなく、例えば、非弾性材料のシートを互いにオーバーラップさせて構成したものであってもよい。
【0028】
使用意図のあるゲル材料をどれであっても改質すると、種々の特性、例えば、潤滑性の向上、外観、創傷保護性を達成し、又は、抗がん性又は抗菌性をもたらすことができる。
添加剤を例えば医薬品の場合、ゲル中に直接混ぜ込むのがよく、或いは、表面処理剤として例えばゲルに塗布して潤滑性又は外観を向上させることができる。他の化合物をゲルに添加してその物理的性質を変え又は結合部位又は表面電荷をもたらすことにより、次に行う表面の改質を助けることができる。酸化防止剤及び放射線防護剤を混合物に添加すると、完成品の保存寿命を延ばし又は放射線による滅菌に耐えるその能力を増強させることができる。
【0029】
従来の医用接近器具で用いられた密封材料は、主として、これらのジュロメータ及び伸び率の観点から選択されていた。トロカールの作業チャネルを横切って道具シールを形成するのに必要である場合、材料が小さな空間や隙間に入り込む可能性を測定するものはこれら特性である。例えば、従来、医用弁ではシリコーン混合物が用いられていた。この混合物は、次の特性、即ち、約1000%以下の極限伸び率及び約5ショアAスケール硬度以上のジュロメータを持っていた。
従来技術の材料のこれら性質よりも、或る点においては、顕著な利点をもたらす本発明と関連した性質のほうが遙に優れている。事実、従来技術の材料と本発明の材料の差は、恐らくは本発明の材料を単にゲルと呼んだのでは誤解を招くほど相当大きい。したがって、約1000%以上の極限伸び率及び約5ショアAスケール硬度以下のジュロメータを含む性質を有する本発明の材料を本明細書においては「ウルトラゲル(ultragel)」と呼ぶことにする。
【0030】
本発明の好ましい実施形態では、ウルトラゲルは、クラトン及び鉱物油を含み、以下の特性、即ち、約1500%以上の極限伸び率及び約200ブルーム以下のジュロメータを持つ密封材料となる。ジュロメータはこの場合、従来技術の材料のジュロメータよりもかなり低い。事実、本発明の材料のジュロメータは、非常に軟質なので、ショアAスケール硬度では測定できない。
本発明の材料の結果的に得られる伸び率及びジュロメータは、全範囲の道具サイズを持つシールを形成できるが、ゼロシールとしても機能することができる接近弁にその本発明の材料を使用しやすくする。従来技術の接近器具は、全範囲の道具サイズに対応するためには6という多い数の別々のシールを必要としているが、今や接近器具をウルトラゲル材料で作られた単一の弁だけを備えた状態で製造できる。
【0031】
代表的な製造方法では、クラトン G1651を1:9の重量比で鉱物油と混合する。この材料を製造するためには、この混合物を約200℃の温度まで加熱する。好ましい製造方法では、金型は、ゲルの状態に成形される周囲リングインサート及び開口部又はスリット45を形成するようゲルから取出し可能なスリットインサートを備える。その結果得られるゲルをコーンスターチで覆って粘着性を減少させて室温で冷却させるのがよい。
クラトン/油混合物の特性のうち多くは、成分の重量比の調整で変化することになる。
一般に、鉱物油の割合を多くすればするほどそれだけ一層混合物の流動性が高くなり、クラトンの割合を多くすればするほどそれだけ一層材料の剛性が高くなる。1:5という低いクラトンと油の重量比が剛性のより高い構造を得るのに用いられている。クラトン/油の重量比が1:10に近づくと混合物は一層液状になる。1:15という高い重量比が本発明に用いられている。
【0032】
処理温度も又、これが主として用いられるクラトンの性状で決まるのでかなりばらつきのある場合がある。約150℃〜約250℃の範囲の温度が計画されている。
これらの比及び温度はかなり異なる性質を生じさせる場合があるということを理解したうえで、これら材料を層状化すると各層内に一般に異なる性質をもたらすことができるということは明らかである。例えば、外側の層を剛性の高い性質を持つクラトン/油混合物で作り、それにより、パッド35に剛性の高い外側層を設ける。その層が少なくとも部分的に硬化した後、材料の別の層を外側層の内部に注ぎ込むのがよい。この第2の層は、軟質であり、パッド35に相当大きな密封性を与える。連続して位置する層はこれらのインタフェースのところで僅かに融合する傾向があるが、一般にこれらの別個独立の性質を維持することが判明している。追加の層を付け加えると、特定の器具の性質の推移をもたらすことができる。
【0033】
ゲル材料に望ましい特性及び製造方法を説明したが、特定の外科手技について別の利点をもたらすことができる技術的思想の他の実施形態に今や取り組むことができる。
図6に使用位置で示された接近器具34の実施形態が、
図8の軸方向断面図に単独で示されている。
この実施形態を
図9に示すようにOリング61,63で補強することができ、この場合、構造の要素は、同一の符号の次に「b」を付けて示されている。これらOリング61,63を設けることにより、接近器具34bと関連した幾つかの機能の実行が容易になる場合がある。例えばリング61,63は代表的には、開口部45bの全ての側部に加わる半径方向密封圧力を維持するのを助ける。リング61,63は又、フランジ54b,56bをそれぞれこれらの全体として平らな形態に維持する傾向がある。これにより、フランジ54,56は道具、例えば、外科医の手17の挿入又は引抜きの際に切開部32内へ崩れることはない。当然のことながら、Oリング61,63は、挿入及び取出し中、道具を受け入れるほど大きいものでなければならない。
【0034】
本発明の別の実施形態が、
図10に示されており、この場合、上記において開示された構造要素と類似する構造要素は、同一の符号の次に「c」を付けて示されている。この実施形態は、開口部又はスリット45cを備えたパッド35cを有している。外部周囲Oリング61cが、パッド35cの周囲部中へインサート成形されている。内部Oリング63cは、例えば、メンブレン65によってOリング61cに取り付けられることによりパッド35cに結合されている。この場合、メンブレン65は、全体として円筒形の形をしていて、エラストマーの性質を備えている。好ましい実施形態では、メンブレン65は、ウレタン、ネオプレン又はイソプレンで作られている。
【0035】
図10の実施形態を操作的に位置決めしているとき、内部Oリング63bをまず最初に縮めて切開部32(
図2)中へ挿入する。パッド35c及び外部Oリング61cを切開部32の外部に残し、切開部32を横切って延びる唯一の材料がメンブレン65だけであるようにする。この場合、作業チャネル36cは、スリット45c、円筒形メンブレン65及び内部Oリング63bで形成されることは注目されよう。
この特定の実施形態では、パッド35cは全体として
図2を参照して説明したように機能する。パッド35cと腹壁21との間の一次シールを周囲リング、例えば、接着剤リング52cで又は内部Oリング63b及びメンブレン65に対する注入ガスの密封特性を利用して形成できる。
【0036】
図10のこの実施形態は、器具34cと腹壁21との間に注入ガス圧力により容易に構成される一次シールを提供しながらパッド35cを恐らくはその最も簡単な形態で有するので特に有利である。さらに、メンブレン65は、器具34cの密封特性を高め、切開部32の裏当てとなる。メンブレン65が設けられているので、切開部32を作業チャネル36cを通って挿入される道具により必要とされる直径よりも大きな直径に引き伸ばす必要はない。
本発明の別の実施形態が、
図11に示されており、この場合、上記において開示された構造要素と類似する構造要素は、同一の符号の次に「d」を付けて示されている。この実施形態は、パッド35b、スリット45d、外部フランジ54d及び内部フランジ56dを有している点において
図8の実施形態と類似している。
図11の実施形態が
図8の実施形態と異なる点は、スリット45dと連通した引き込み空所又はキャビティ70を有していることである。
【0037】
好ましい実施形態では、この空所70は、
図7に示す方法で、外科医14の腕16を受け入れるような寸法形状になっている。この場合、スリット45dは、主としてゼロシールを維持するよう機能し、空所70を形成するパッド35d又はフランジ54dの部分は主として道具シールを形成するよう機能する。
本発明の別の実施形態が、
図12の平面図並びに
図13及び
図14の断面図に示されている。この実施形態では、上記において開示された構造要素と類似する構造要素は、同一の符号の次に「e」を付けて示されている。この場合、引き込み空所は、パッド35eの軸線47eと同一直線上に位置した軸線を備える筒72の全体形状をしている。
【0038】
恐らくは
図13に最もよく示されているように、スリット45eは、台形の形をしている。かくして、このスリットは近位側が、筒72の直径にほぼ等しい短い長さで始まっている。スリット45eの長さは、空所70eからパッド35eを通って遠位側へ位置が次々に進むにつれて増大している。図示の実施形態では、台形スリット45eは、2等辺3角形の切頭体として形成されている。
本発明の別の実施形態が、
図15及び
図16に示されており、この場合、上記において開示された構造要素と類似する構造要素は、同一の符号の次に「f」を付けて示されている。
図12を参照して上述したように、この実施形態のパッド35fは、近位表面71及び遠位表面73を備えている。パッド35fは、同軸の引き込み筒72f及び台形スリット45fを更に有している。しかしながら、この場合、ゼロシールの特性を一段と高めるためにダックビル(duck-bill :かものはし)形弁74が設けられている。図示のように、作業チャネル36fは、引き込み空所70f、スリット45f及びダックビル形弁74fによって構成されるスリット45fの延長部によって形成されている。
【0039】
ダックビル形弁74は、遠位表面73の遠位側に延びる対向したフランジ76,78を備えるのがよい。操作的に配置する場合、パッド35fをその遠位表面73が腹壁21(
図2)の外面に当たり、フランジ76,78が切開部32内へ延びる状態で位置決めするのがよい。この形態及び操作的な配置方法では、切開部32のところの腹壁21は、特に道具の不在下において、スリット45fを閉じる傾向のある逆方向の力を生じさせてこれをかかる力をフランジ76,78に及ぼすことになろう。このように、ダックビル形弁74を利用するとゼロシールの特性を高めることができる。
【0040】
本発明の別の実施形態が
図17及び
図18に示されており、この場合、上記において開示された構造要素と類似する構造要素は、同一の符号の次に「g」を付けて示されている。この実施形態の接近器具34gでは、一般的にはパッド35gを
図13を参照して説明したように形成するのがよい。しかしながら、この実施形態では、パッド35gは、その側部及び遠位表面73gに沿ってベース81によって包囲されるのがよい。この場合、パッド35gは、上述した高弾性材料で作られ、ベース81はこれよりも剛性であるが、それにもかかわらず可撓性の材料、例えばウレタンで形成する。この形態では、ダックビル形弁74fは、ベース81と関連した遠位表面83の遠位側へ延びるような構造になっている。これにより、ダックビル74fを超弾性材料ではなく、ベース材料で作ることができる。これによっても、特定の手術用途についてゼロシールの特性が向上する。
【0041】
本発明の別の単純化された形態が、
図19及び
図20に示されており、この場合、上記において開示された構造要素と類似する構造要素は、同一の符号の次に「h」を付けて示されている。引き込み空所78hはこの場合、近位表面71hのところに底辺又はベースを、遠位表面73hに近いところに頂点を有する逆円錐形87として形成されている。かくして、引き込み空所70hは、パッド35hを通って遠位側へ位置が進むにつれて減少する半径方向断面積を有している。この実施形態では、円錐形87の底辺の近くの遠位領域は、道具シールを形成し、円錐形の頂点のところの遠位領域は、ゼロシールを形成する。引き込み空所70hが、円錐形になっていることにより、円錐形87の頂点まで遠位側に延びる開口部45h内へ道具が導き入れられがちになる。
【0042】
一般に、スリット45及び引き込み空所70は、多くの互いに異なる個々の且つ互いに協働する形態を備えるのがよいことは理解されよう。一例を挙げると、パッド35について恐らくは最も簡単な形態が、
図21及び
図22の実施形態に示されており、この場合、上記において開示された構造要素と類似する構造要素は、同一の符号の次に「j」を付けて示されている。この実施形態では、近位表面71j及び遠位表面73jを備えたパッド35jは、簡単な台形スリット45jを備えている。この場合、スリット45jは、近位表面71jと遠位表面73jとの間に延びている。
【0043】
図21のこの実施形態のスリット45jは、平らな形態をしたスリット45jを構成する多くの構造の代表例である。かかる場合、スリットを形成するパッド35jの部分は、例えば
図22の符号90,92で示された対向した平らな表面を構成することになろう。
スリット45を平らな形態をした対向した表面によって形成する必要がないということは明らかであろう。それにもかかわらず、これらの向かい合った表面は、ゼロシールを構成するために互いに密封接触できることが必要である。この機能を果たすことができる他のスリット形態は、特定の手技において別途利点をもたらすことができる。スリット形態の他の例が、
図23〜
図26に単に例示として示されている。
【0044】
図23の実施形態は、開口部45jが近位表面71jから遠位表面73jまで延びる単一のスリットを有している点において
図22の実施形態と類似している。
図22の実施形態の場合、軸線47jが、スリット45jの平面内に位置している。
図23の実施形態の場合、スリット45jの平面は、軸線47jを含んでいない。スリット45jは、軸線47j、近位表面71j及び遠位表面73jと角度をなした関係を持つ平面内に形成されている。この構成により、スリット45jは、パッド35jの厚さよりも大きな長さを持つことができる。
【0045】
図24の実施形態では、上記において開示された構造要素と類似する構造要素は、同一の符号の次に「k」を付けて示されている。この場合、開口部45kは、互いに角度をなして間隔を置いて位置する個々の平面内に形成された2つのスリット94,96として構成されている。当然のことながら、平らなスリット94,96のうち2以上は、軸線47kの周りに等角度間隔を置いて位置するのがよい。一実施形態では、個々の平らなスリット94,96は、軸線47kのところで交差している。変形例として、スリット94,96は、道具シールの形成を容易にするために軸方向に間隔を置いて位置してもよい。
図25の実施形態では、上記において開示された構造要素と類似する構造要素は、同一の符号の次に「m」を付けて示されている。この実施形態では、開口部45mは、平らな形態ではなく湾曲した形態を持つスリット98として構成されている。図示の実施形態では、湾曲したスリット98は、軸線47mの周りに螺旋として形成されている。螺旋スリット98を形成する対向した表面は、軸線47mに沿って、互いに密封した近接状態に「流動」してゼロシールを形成することができる。
【0046】
図26は、螺旋スリットを有する類似の実施形態を示している。この図では、上記において開示された構造要素と類似する構造要素は、同一の符号の次に「n」を付けて示されている。螺旋スリット98nはこの実施形態では、パッド35nの軸線47nの周りに形成されているが、この場合、スリット98nを形成する部分は、軸線47nまで完全には延びていない。その結果、軸方向チャネル100が、軸線47nに沿って少なくとも部分的に形成されている。このチャネル100は、
図11及び
図12を参照して説明した引き込み空所70と類似した仕方で機能することができる。このチャネル100は、
図19を参照して説明した形態と類似の円錐形の形を備えるのがよい。
【0047】
チャネル100が開かれたままの実施形態では、隔メンブレン 弁をチャネル100を横切って位置決めすることによりゼロシールを構成する。かかる実施形態は、
図27に示されており、隔メンブレン 弁は、符号101で示され、上述した要素に類似した構造の他の要素には同一符号の次に「p」を付けて示されている。かくして、
図27の実施形態は、螺旋スリット98p、パッド35p及び軸線47pを有している。
図27のこの実施形態は、スリット、例えばスリット98pと他の弁構造部材、例えば隔メンブレン 弁101を組み合わせた他の多くの実施形態の単なる代表例である。
【0048】
他の湾曲したスリット形態は、スリットが側面図で見て湾曲形、正弦波形又はS字形である実施形態を含む。かかる形態は、パッドの厚さよりも大きな長さを持つスリット部分をもたらす。通常、スリット経路が回り道になっていればいるほどそれだけ一層密封特性が良好になる。
【0049】
開口部45についての別の更に複雑な形態が
図28の実施形態に示されており、この場合、上記において開示された構造要素と類似する構造要素は、同一の符号の次に「q」を付けて示されている。この実施形態は、単一の弁と協働して、ゼロシール並びに全範囲の道具サイズに対応できる道具シールを形成するという所望の機能を達成するために複雑な形状及び互いに異なる材料で形成できる他の多くの複雑な実施形態の代表例である。
図28の実施形態では、パッド35qは、コア112の円周方向に設けられたベース110を備えている。この場合、コア112は、超弾性材料又はゲルで形成され、
図19及び
図20を参照して説明したような円錐形87qの形状を備えている。ベース110は、弾性ではないが、好ましくは可撓性の材料から作られている。好ましい実施形態では、ベース110は、ウレタンで作られている。
【0050】
この構成では、ベース110は、複数本のスポーク114を備え、これらスポークは各々、ベース116から先端部118まで半径方向内方に延びている。コア112は、軸線47qからスポーク114の先端部118まで外方に延びている。図示の実施形態では、コア112は、先端部118を越え、スポーク114の隣接した各対相互間のベース116に向かって延びるフィンガ121を有している。これらフィンガ121は、端面123まで半径方向外方に延び、この端面は、ベース116の手前で終端し、これらの間には空所又は空所125が形成されている。
【0051】
空所125は、この実施形態にとっては特に関心のあるものであり、これら空所を上述の実施形態の何れにも組み込むことができる。かかる空所125は、高弾性材料、例えばフィンガ121の高弾性材料が道具、例えば腕16(
図7)の挿入中膨張して入り込むことができる空間又は材料の不在部を構成している。ゲル材料はその性質上、ほぼ流体なので、空所125は、ゲルの膨張を可能にし、しかもこれに対する抵抗は非常に小さい。空所、例えば、
図28の実施形態の空所125を、ゲル材料中にのみ、又はゲル材料と任意他のベース材料との間に構成することができる。
【0052】
図28の場合、スポーク114及びフィンガ121は、全体として、軸線47qに平行な平面内に形成される。
図31の実施形態に示す類似のフィンガは、全体として、この軸線に垂直な平面内に構成される。この実施形態では、上記において開示された構造要素と類似する構造要素は、同一の符号の次に「r」を付けて示されている。図示のように、パッド35rは、同軸筒130の形態を持つ比較的大きな開口部45rを備えるのがよい。
複数のフィンガ又はフラップ132が開口部45r内へ延び、例えば
図19を参照して説明した特性を備える引き込み空所70rを形成する傾向がある。この場合、環状フラップ132は、ベース134から頂点136まで延びる円錐形の形態をしている。フラップ132相互間の領域は、道具、例えば、腕16の挿入の際にフラップ132が入り込むことができる空所125rを形成していることは注目されよう。
【0053】
本発明の別の実施形態が、
図32に示されており、この場合、上記において開示された構造要素と類似する構造要素は、同一の符号の次に「s」を付けて示されている。この分解図に示す接近器具34sは、パッド35sを有するだけでなく、パッド35sの位置を維持し、パッド35sと腹壁21との間にシールを形成し、そして外科医14の要望に応じて切開部32を可変に拡張する相補構造体を有している。この場合、接近器具34sは、3つの部品、即ち、ゲルキャップ143、ベース145及び開創シース147を有している。 ゲルキャップ143は、ゲルパッド35sを有するだけでなく、パッド35sに挿入してこれに一体成形できる周囲キャップリング154を有している。その結果得られたゲルキャップ143は、ベース145と一緒になってシールを形成し、それにより、パッド35s、キャップリング154、ベース145及び開創シース147を通る作業チャネル36sを構成する。この作業チャネル36sは、上述したように、ゲルパッド35sによって形成された単一の弁を有し、このゲルパッドは、ゼロシールと広範な道具直径について道具シールの両方を提供する。
【0054】
ゲルキャップ143と関連した構造について
図33及び
図34を参照して詳細に説明する。
図33の平面図では、この実施形態は周囲キャップリング154内の中央に設けられたゲルパッド35sを有していることが分かる。キャップリング154の半径方向外方に延びるよう保持タブ156を設けるのがよい。これら保持タブ156は、以下に詳細に説明する仕方のゲルキャップ143とベース145の密封係合を容易にすることができる。
ゲルパッド35sを、上述の材料のうちの任意のもので作ることができる。ただし、好ましい実施形態では、クラトン/鉱物油ゲルが用いられる。かかる実施形態のキャップリング154をクラトンだけで形成すると有利な場合がある。これにより、パッド35sとリング154との間に優れた材料インタフェースを維持した状態で、キャップリング154がゲルパッド35sよりも剛性になる。代表的な製造作業では、キャップリングをゲルパッド35sのための金型内にあらかじめ配置し、その結果、ゲルキャップ143の一体構造が得られる。
【0055】
図34の断面図は、ゲルキャップ143sを示すと共にキャップリング154の内周部上に形成された環状空所158を示している。この空所158は、以下に詳細に説明する仕方でベース154と密封関係をなす上で特に有利である。
この実施形態のベース154は、
図34の平面図及び
図35の断面図に詳細に示されている。これらの図から、ベース145は、滑らかな全体として円筒形の内面161を備えるのがよく、この円筒形内面は、丸い端面163まで近位側へ延び、そして端面163から環状唇部165に沿って外方に延びている。複数のタブ167を、唇部165の周囲の周りに外方且つ遠位側へ延びるよう等間隔を置いて設けるのがよい。
【0056】
環状フランジ170が、内面163の遠位側のところに、環状突出部172を備えるのがよく、この環状突出部は、ゲルキャップ143とベース145との間に所望の密封関係を形成するような寸法形状になっている。ベース145の製造工程を容易にするには、ベースを例えば
図35に点線174で分割された2つの別々の部品として形成するのがよい。好ましい実施形態では、ベース145は、ポリカーボネート材料から成形される。
開創シース147の好ましい実施形態が、
図37に示されている。この図において、開創シース147は、管状壁175を有し、この管状壁175は、その遠位端部のところに切頭円錐176の形態及びその近位端部のところに筒177の形態を有している。可撓性保持リング152が、遠位端部の終わりをなしており、他方、折り目154が近位端部のところに形成されている。管状壁175は、外面180及び内面181を有するものとして示されている。好ましい実施形態では、シース147は、エラストマー、例えばネオプレンで形成され、したがって、その切頭円錐形及び円筒形形態は、主として自然な引き伸ばされていない状態で生じる。
【0057】
シース147を軸方向に引き伸ばすと、円筒形近位端部の直径は増大し、それにより、半径方向力が切開部32に加わる。シース147を軸方向に引き伸ばせば引き伸ばすほどそれだけ一層シースの直径が大きくなり、その結果、切開部32を通る開口部が大きくなる。この特徴は、これにより外科医がシース147に適度の軸方向張力を加えた状態で切開部32のサイズを決定できるので特に有利である。この張力を維持することにより、切開部132の好ましいサイズが、作業全体を通じて維持される。好ましい器械及び方法では、軸方向張力を維持するのに、シース147をベース145のタブ167(
図34)上に引き伸ばす。シース147の軸方向引き伸ばしと切開部32のサイズの関係が分かるようにするために、標識182をシース147上に印刷するのがよい。
【0058】
折り目153は、シース147の近位端部を掴みやすくするために設けられている。この折り目153は又、シース147の壁がベース145のタブ167に係合する補強手段となるよう働くことができる。
図38に示す実施形態では、追加の折り目184,186が互いに間隔を置いた軸方向場所、例えば、
図37に標識182で構成された場所に設けられている。これら折り目184,186が設けられた状態で、追加の補強箇所が、シース147に切開部32の互いに異なるサイズと関連した所定の軸方向引き伸ばし度を与えながら、タブ167に係合するよう設けられている。
【0059】
図32の実施形態を用いる方法が、
図39〜
図42の順次使用段階で示されている。
図39では、テンプレート195が切開部32の位置設定を容易にするため位置決めされた状態で患者10の腹壁21の平面図が示されている。切開部32のサイズを例えば多くの長さの線197を示すテンプレート195上の標識182で決定でき、各長さは、外科医の手17(
図7)についての手袋のサイズと同等であると見なされる。外科医は、自分の手袋サイズを知ったうえで、適当な長さの線197に従って単に切開部を入れることになる。これよりも長い長さの線197は、これよりも大きな切開部、大きな手袋サイズ及びしたがって大きな手17と関連している。切開部32を線197に沿って切断形成した後、テンプレート195を取り外すのがよい。
【0060】
図40に示すように、次に、開創シース147を切開部32を貫通して取り付けるのがよい。まず最初に、リング152を圧縮し、切開部32を通って送り込む。リング152は、腹壁21の内面上において、
図40に点線158で示すように、その大きな直径まで自由に拡張することができる。筒177を構成する壁176の部分は、
図40に示すように開口部32を近位側に貫通したままである。
シース147の挿入の前又は後に、ベース145を切開部32の周りに配置するのがよい。すると、シース147の露出部分は、切開部32を貫通し、周囲ベース145内に延びる。
図41に示すように、次に、シース147の壁176を
図41の紙面の外方へ近位側に引っ張ってシース147を軸方向に引き伸ばすのがよい。注目されるように、シース147を軸方向に引き伸ばすと、これにより、切開部32を拡張させる傾向のある半径方向の力が生じ、かかる力が腹壁21に加わることになる。軸方向の引き伸ばしが大きければ大きいほどそれだけ一層切開部32が大きくなる。
【0061】
切開部32が所望の大きさを持つと、引き伸ばし状態のシース147をタブ167上でこれに沿って引っ張って軸方向引き伸ばし度を維持すると共に切開部32の所望の大きさを維持することができる。
図36に示すような標識182又は
図37に示すような追加の折り目184,186をタブ167に整列させて切開部32について所定の大きさをもたらすのがよい。この時点において、腹壁21とシース147とベース145との間のシールが完全に構成される。
この方法における最終段階は、ベース145へのゲルキャップ143の取付けである。
これは、
図36に示すように、ベース145の唇部172をゲルキャップ143の環状空所158内に捕捉することにより達成される。保持タブ156を上方且つ外方へ曲げることにより、この係合が容易になり、それにより最終的にベース145とゲルキャップ143との間にシールが形成される。
【0062】
本発明を或る特定の構造的形態について開示したが、これら形態は、本発明の多くの種々の実施形態の代表例に過ぎないことは理解されよう。したがって、本発明の技術的思想を開示した実施形態にのみ限定するものではなく、本発明の範囲は特許請求の範囲の記載に基づいてのみ定められる。