特許第6353960号(P6353960)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6353960
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】給電レール
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/90 20180101AFI20180625BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20180625BHJP
   H02G 11/00 20060101ALI20180625BHJP
   B60N 2/06 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   B60N2/90
   B60R16/02 620A
   H02G11/00
   B60N2/06
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-120973(P2017-120973)
(22)【出願日】2017年6月21日
(65)【公開番号】特開2018-70136(P2018-70136A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2018年1月16日
(31)【優先権主張番号】特願2016-205653(P2016-205653)
(32)【優先日】2016年10月20日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000114145
【氏名又は名称】ミック電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130410
【弁理士】
【氏名又は名称】茅原 裕二
(72)【発明者】
【氏名】宮田 致良
(72)【発明者】
【氏名】森下 英明
【審査官】 森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−56046(JP,A)
【文献】 特開2005−59745(JP,A)
【文献】 特開2007−116780(JP,A)
【文献】 特開2008−11581(JP,A)
【文献】 特開2010−213376(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/90
B60R 16/02
H02G 11/00 − 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長筒型のケースと、
前記ケースの内面に敷設されたレールと、
前記ケース内の前記レールの内部に収容されたフレキシブルフラットケーブルと、
前記フレキシブルフラットケーブルの一端に設けられ、前記ケースに固定された固定端子と、
前記フレキシブルフラットケーブルの他端に設けられ、前記ケースの長手方向に可動する可動端子と、
前記可動端子を収容し、前記ケースのスリットに沿って移動するアクチュエーターと、
断面形状が前記フレキシブルフラットケーブルに向かって凸となる湾曲状に成形され、前記レールの内部に湾曲両端部が押さえ付けられた状態で収容され、前記アクチュエーターの移動に対応して、前記フレキシブルフラットケーブルをばね力で押さえ付けながらその動きを案内するガイドプレートを備えて構成されていることを特徴とする給電レール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に搭載されたスライドシートに電力を供給するための給電レールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の装置として、例えば特許文献1に記載されたスライドシート用給電装置が知られている。この給電装置は、ハーネス収容部を有するケースと、ケースに沿って進退する可動体と、可動体に一端部を支持し、ケースに他端部を支持してハーネス収容部内で屈曲するワイヤハーネスを備えて構成されている。また、ワイヤハーネスは可動体に沿って配索されてスライドシート側の回路に接続され、ケースのコネクタに車両の電源側の回路が接続される。これにより、スライドシートの進退と同時に可動体が進退し、車両の電源側の回路からワイヤハーネスを介してスライドシート側の回路に電力を供給するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−59745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記のような従来の給電装置によると、ケースのハーネス収容部内にワイヤハーネスが屈曲した状態で収容されているため、スライドシートの進退に合わせて可動体が進退する際に、ワイヤハーネスがケース内で引っ掛かって可動体の動きを妨げたり、ワイヤハーネスがねじれたり引っ張られたりして動作不良を起こす恐れがある。このため、車両の電源からスライドシートに対する電力の供給が不安定になるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、車両の電源からスライドシートに対して安定して電力を供給し続けることができる給電レールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本発明に係る給電レールは、長筒型のケースと、前記ケースの内面に敷設されたレールと、前記ケース内の前記レールの内部に収容されたフレキシブルフラットケーブルと、前記フレキシブルフラットケーブルの一端に設けられ、前記ケースに固定された固定端子と、前記フレキシブルフラットケーブルの他端に設けられ、前記ケースの長手方向に可動する可動端子と、前記可動端子を収容し、前記ケースのスリットに沿って移動するアクチュエーターと、断面形状が前記フレキシブルフラットケーブルに向かって凸となる湾曲状に成形され、前記レールの内部に湾曲両端部が押さえ付けられた状態で収容され、前記アクチュエーターの移動に対応して、前記フレキシブルフラットケーブルをばね力で押さえ付けながらその動きを案内するガイドプレートを備えて構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、給電レールを介してスライドシートと車両の電源とを電気的に接続することができ、特にケースの空洞部内にワイヤハーネス等の複雑な電線類がないので、ワイヤハーネスの配索をする面倒な手間が省けるという効果がある。
【0009】
また、スライドシートが進退する際、電線類が空洞部内で引っ掛かって動きを妨げることや電線類がねじれたり引っ張られたりして動作不良を起こすことがない。すなわち、スライドシートの動きに応じてアクチュエーターが移動し、アクチュエーターの移動に対応して、ガイドプレートがフレキシブルフラットケーブルを押さえ付けながらその動きを案内するように構成されているので、フレキシブルフラットケーブルが折れ曲がったり波打って撓んだりすることがなく、空洞部内でフレキシブルフラットケーブルがスムーズに伸縮するようになっている。したがって、車両の電源からスライドシートに対して安定して電力を供給し続けることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の給電レールが装着された自動車のスライドシート周辺の構造を示す正面図である。
図2】本発明の給電レールが装着された自動車のスライドシート周辺の構造を示す側面図である。
図3】本発明の給電レールの全体構造を示す図である。
図4図3のA部拡大断面図とフレキシブルフラットケーブルの詳細図である。
図5図3のフレキシブルフラットケーブルの他の構成例を示す断面図である。
図6図3のB−B拡大断面図である。
図7】本発明の給電レールを構成するフレキシブルフラットケーブルとガイドプレートの拡大斜視図である。
図8】本発明の給電レールにおいて、(a)はアクチュエーターが前方位置にある状態を示す図、(b)はアクチュエーターが後方位置にある状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1に示すように、本実施形態の給電レール1は、自動車等の車両に搭載されるスライドシート2に対し、車両の電源から電力を供給するためのものである。この給電レール1は、スライドシート2がサイドレール3に沿って前後に往復移動する際に電力を供給し続けられるように、サイドレール3の側面に取り付けられて一体化される。なお、本発明は、スライドシート2が電動式、非電動式(手動式)のいずれのタイプであっても適用可能である。
【0013】
図2に示すように、給電レール1の上には樹脂製のレールカバー4が被せられており、車内の埃や砂などの異物が入り込まないように保護されている。
【0014】
図3に示すように、本実施形態の給電レール1は、ロングスライドタイプのスライドシート2の移動距離に合わせて設計されたアルミニウム製の型枠5に収容されており、全体が長尺状に成形されている。また、型枠5の両端には、給電レール1の内部の部品が飛び出さないように抜け止め用のキャップ6,6が嵌め込み固定されており、このキャップ6に設けられた取付孔7,7を螺子止め固定することにより、給電レール1をサイドレール3の側面に取り付けることができる。
【0015】
ケース8は、アルミニウム等の金属からなり、型枠5内に収容できるように細長い角筒型に成形されている。ケース8の内部にはその長手方向に広がる空洞部9が設けられており、この空洞部9内を以下の可動機構10が長手方向に沿って往復移動するようになっている。
【0016】
図4に拡大して示すように、可動機構10は、フレキシブルフラットケーブル11と、固定端子12と、可動端子13と、バスバー14,15と、アクチュエーター16と、ガイドプレート17の各部品を備えて構成されている。
【0017】
フレキシブルフラットケーブル11は、導体からなる薄板(本実施形態では銅板)18と、その外表面を耐熱絶縁テープ(本実施形態ではポリイミドテープ)19で被覆した長尺平型に成形され、ケース8内の空洞部9に収容される。本実施形態ではフレキシブルフラットケーブル11を3枚重ね合わせてあるが、その理由はフレキシブルフラットケーブル11に大電流が流れたときに薄板18が熱で溶けないように電気容量を増やすためである。なお、フレキシブルフラットケーブル11は、撓み変形できる範囲内であればより多くの枚数を重ね合わせても良く、十分な電気容量が確保できれば1枚のみから構成されていても良い。また、大電流による熱を緩和させるために、図5に示すように薄板18を重ね合わせたフレキシブルフラットケーブル11としても良い。
【0018】
フレキシブルフラットケーブル11の一端には、薄板18,18,18の各々に導体からなる固定端子12,12,12が一体に設けられている。固定端子12は、ケース8の先端に設けられたキャップ6の内部に収容され、それぞれに銅板製のバスバー(以下これを「固定側バスバー」という)14,14,14が溶接により固定されている。この固定側バスバー14は、車両側の配線に接続される車両側コネクタとして機能する。
【0019】
これに対し、フレキシブルフラットケーブル11の他端には、薄板18,18,18の各々に導体からなる可動端子13,13,13が一体に設けられている。可動端子13は、アクチュエーター16の内部に収容され、それぞれに銅板製のバスバー(以下これを「可動側バスバー」という)15,15,15が溶接により固定されている。この可動側バスバー15は、シート側の配線に接続されるシート側コネクタとして機能する。
【0020】
アクチュエーター16は、ABS樹脂等の絶縁体からなり、図6に示すように空洞部9に合わせた幅を有する断面凸型に成形されており、ケース8のスリット20に嵌合して支持される凹部21,21が設けられている。これにより、可動側バスバー15を収容したアクチュエーター16は、スリット20に沿ってスライドし、ケース8の長手方向に往復移動可能に構成されている。
【0021】
このように、フレキシブルフラットケーブル11の両端に固定側バスバー14と可動側バスバー15を固定することにより、リード線で接続するよりも配線作業が簡単であり、電気抵抗が少ないため大容量の電流を流すことができる。なお、固定端子12と固定側バスバー14、可動端子13と可動側バスバー15の固定方法は溶接に限られず、半田付け、溶着、ネジ止め、あるいはカシメなど他の方法を利用しても良い。
【0022】
ガイドプレート17は、ステンレス等の金属板からなり、図7に示すようにフレキシブルフラットケーブル11と同程度の幅を有する長尺平型に成形されており、金属板に絞り加工を施すことによりその断面形状がフレキシブルフラットケーブル11に向かって凸となる湾曲状(円弧状)に成形されている。このガイドプレート17は、図6に示すようにケース8の内面に敷設されたレール22の内部に収容され、その先端部がアクチュエーター16に固定されており、アクチュエーター16の移動に対応して、フレキシブルフラットケーブル11をばね力で押さえ付けながらその動きを案内するように構成されている。なお、ガイドプレート17の素材はステンレス以外の金属材料や樹脂材料であっても良く、フレキシブルフラットケーブル11をばね力で押さえ付けることができればその断面形状は湾曲状に限られない。
【0023】
以上のように構成された給電レール1は、ケース8の内部に可動機構10が設けられており、型枠5に収容され、両端のキャップ6,6を介してサイドレール3の側面に取り付けられる。このとき、可動側バスバー15を収容したアクチュエーター16がケース8の外部に突出しているので、この可動側バスバー15にスライドシート2のモーター回路の配線を接続し、固定側バスバー14に車両側の電源回路の配線を接続すれば良い。これにより、給電レール1を介して、車両の電源回路とスライドシート2のモーター回路とを電気的に接続することができる。
【0024】
すなわち、図8(a)に示すように、給電レール1のアクチュエーター16がケース8の前方位置にあるとき、固定側バスバー14と可動側バスバー15がフレキシブルフラットケーブル11を介して接続されているので、車両の電源回路からスライドシート2のモーター回路に対して電力を供給することができる。
【0025】
ここで、図1に示すスライドシート2がサイドレール3に沿って後退したときには、図8(b)に示すように、可動側バスバー15を収容したアクチュエーター16がケース8の後方に押され、スライドシート2に連動して図の矢印R方向に移動する。このとき、アクチュエーター16の移動に対応して、フレキシブルフラットケーブル11がガイドプレート17のばね力で押さえ付けられながら、空洞部8内を矢印R方向にスライド動作する。
【0026】
これに対し、図1に示すスライドシート2がサイドレール3に沿って前進したときには、図8(a)に示すように、可動側バスバー15を収容したアクチュエーター16がケース8の前方に押され、スライドシート2に連動して図の矢印F方向に移動する。ここで、アクチュエーター16に繋がったフレキシブルフラットケーブル11が空洞部8内を矢印F方向にスライド動作するが、このときフレキシブルフラットケーブル11は、ガイドプレート17のばね変形に追従して元の位置に戻る。すなわち、フレキシブルフラットケーブル11はガイドプレート17に押さえ付けられて単独での動きが規制されるので、移動の最中に途中で折れ曲がったり波打って撓んだりせず、フレキシブルフラットケーブル11は常に一定のテンションが付与された状態でスムーズに移動するようになっている。
【0027】
このように、スライドシート2が前進又は後退したとき、その動作に連動してアクチュエーター16がケース8のスリット20に沿ってスライド移動し、これに追従してガイドプレート17とフレキシブルフラットケーブル11が一体で伸縮するようになっている。また、空洞部9内にはワイヤハーネス等の複雑な電線類がないので、ワイヤハーネスの配索をする面倒な手間が省けるとともに、スライドシート2が進退する際に電線類が空洞部9内で引っ掛かって動きを妨げたり、ねじれたり引っ張られたりして動作不良を起こす恐れもない。しかも、ガイドプレート17のばね変形に追従してフレキシブルフラットケーブル11を伸縮させるようにしたので、図8(a)(b)に示すようにアクチュエーター16がケース8の長手方向に沿って先端から後端まで移動することができ、移動距離を長く確保することが可能になる。
【0028】
したがって、この給電レール1によれば、スライドシート2の動きに追従してガイドプレート17に案内されたフレキシブルフラットケーブル11がスムーズに伸縮するため、車両の電源回路からスライドシート2に対して安定して電力を供給し続けることができる。
【0029】
なお、本実施形態では、可動機構10を空洞部9内に1個設けて1回路としたが、回路構成はこれに限られない。例えば、フレキシブルフラットケーブル11を上下に重ねて可動機構10をケース8の高さ方向に複数個配置したり、幅を狭くしたフレキシブルフラットケーブル11を左右に並べて可動機構10をケース8の幅方向に複数個配置したりして、2回路以上の回路構成とすることも可能である。これにより、いずれか一つの回路の可動機構10に障害が発生した場合でも、残りの回路の可動機構10が正常に動作することによって安全性を確保するフェイルセーフ機能を発揮することができる。
【0030】
また、本実施形態では、車両の電源回路から給電レール1を介してスライドシート2のモーター回路に対して電力を供給しているが、用途はこれに限られない。例えば、車両に搭載されたUSB充電器、シートのヒーター装置、シートベルトリマインダー(警報装置)、後部座席への電力供給・信号伝送などの用途に、この給電レール1を使用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1:給電レール
2:スライドシート
3:サイドレール
4:レールカバー
5:型枠
6:キャップ
7:取付孔
8:ケース
9:空洞部
10:可動機構
11:フレキシブルフラットケーブル
12:固定端子
13:可動端子
14:固定側バスバー
15:可動側バスバー
16:アクチュエーター
17:ガイドプレート
18:薄板
19:耐熱絶縁テープ
20:スリット
21:凹部
22:レール

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8