(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6353969
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】搬送具と搬送方法と搬送具ユニット
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20180625BHJP
B65G 49/06 20060101ALI20180625BHJP
B65G 49/07 20060101ALI20180625BHJP
B25J 15/06 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
H01L21/68 B
B65G49/06 A
B65G49/07 E
B25J15/06 A
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-228627(P2017-228627)
(22)【出願日】2017年11月29日
【審査請求日】2017年12月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503053435
【氏名又は名称】株式会社ユー・エム・アイ
(74)【代理人】
【識別番号】100155550
【弁理士】
【氏名又は名称】田嶋 諭
(72)【発明者】
【氏名】植村 豪彦
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 有治
(72)【発明者】
【氏名】宮原 崇之
【審査官】
中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−101192(JP,A)
【文献】
特開2007−281254(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/096208(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
B25J 15/06
B65G 49/06
B65G 49/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
台座と、
前記台座の表面に配置された複数の柱状の突起と、を含み、
前記複数の柱状の突起は、それぞれ頂部に1つの凹部を有し、それぞれその頂部からの加圧で変形し、側面方向へ均等に広がり、
前記凹部は、吸着用であり、
前記複数の柱状の突起は、その頂部からの加圧で変形し、異なる4方向の前記柱状の突起とそれぞれ接触する搬送具。
【請求項2】
台座と、
前記台座の表面に配置された複数の柱状の突起と、を含み、
前記複数の柱状の突起は、それぞれ頂部に1つの凹部を有し、
前記複数の柱状の突起は、その頂部からの加圧で変形し、前記複数の柱状の突起間で接触し、
前記加圧により、前記複数の柱状の突起で周囲が囲まれた吸着するための凹部が形成される搬送具。
【請求項3】
台座と、
前記台座の表面に配置された複数の柱状の突起と、を含み、
前記複数の柱状の突起は、それぞれ頂部に1つの凹部を有し、
前記複数の柱状の突起は、高さが同じで、断面積が異なる複数の第1突起と第2突起を含み、
前記複数の第1突起と第2突起は、それぞれ、その頂部からの加圧で変形し、前記第1突起は、4つの前記第2突起と接触し、前記第2突起は、4つの前記第1突起と接触する搬送具。
【請求項4】
前記第1突起の列と前記第2突起の列があり、前記複数の柱状の突起は、千鳥配列である請求項3に記載の搬送具。
【請求項5】
前記複数の柱状の突起は、円柱形状である請求項1〜4のいずれか1項に記載の搬送具。
【請求項6】
前記請求項1〜5のいずれか1項に記載の搬送具の上に対象物を保持させ、前記対象物を搬送する前記対象物の搬送方法。
【請求項7】
前記請求項1〜5のいずれか1項に記載の搬送具を、複数個、搬送台上に重ねずに、前記突起を表面として配置した大型搬送具。
【請求項8】
前記請求項1〜5のいずれか1項に記載の搬送具を、中間体に接着し、前記中間体に物理的に保持する請求項7記載の大型搬送具。
【請求項9】
前記請求項1〜5のいずれか1項に記載の搬送具を、複数個、搬送台上に重ねずに、前記突起を表面として配置した大型搬送具を用いて、製造の対象物を搬送する搬送方法。
【請求項10】
前記請求項1〜5のいずれか1項に記載の搬送具の複数個を、前記台座を1つとして、1つの搬送具とした搬送具ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送具と搬送方法と搬送ユニットに関する。特に、製造ライン等で一時的に対象物を搬送するための搬送具と搬送方法と搬送ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
製造ラインでは、基板やガラスなどが搬送する搬送具が、従来から使用されている(特許文献1)。この搬送具では、金属板上にゴムが設けられている。ゴムに、対象物が一時的に粘着され搬送され、目的地で対象物が搬送具から外される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−186398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この搬送具では、吸着力が弱く適切に対象物を保持できない。よって、本願課題は、粘着力の強い搬送具と搬送方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記従来の課題を解決するために、台座と、前記台座の表面に配置された複数の柱状の突起と、を含み、前記複数の柱状の突起は、それぞれ頂部に1つの凹部を有する搬送具を用いる。
また、上記搬送具を、複数個、プレート上に重ねずに、前記突起を表面として配置した大型搬送具を用いる。
さらに、上記搬送具を、複数個、プレート上に重ねずに、前記突起を表面として配置した大型搬送具を用いて、製造の対象物を搬送する搬送方法を用いる。
上記搬送具の複数個を、上記台座を1つとして、1つの搬送具とした搬送具ユニットを用いる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の搬送具では、対象物を十分に保持し、目的の場所まで確実に搬送できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】(a)実施の形態1の搬送具の平面図、(b)対象物を保持した実施の形態1の搬送具の側面図、(c)実施の形態1の搬送具の拡大平面図、(d)実施の形態1の搬送具に対象物を保持させた状態での実施の形態1の搬送具の拡大平面図
【
図2】実施の形態2の搬送具の平面図、(b)実施の形態2の搬送具の側面図、(c)実施の形態2の搬送具に対象物を保持させた側面図
【
図3】(a)対象物を保持する前の実施の形態2の搬送具の拡大平面図、(b)対象物を保持中の実施の形態2の搬送具の拡大平面図
【
図4】(a)実施の形態3の突起の拡大側面図、(b)実施の形態3の突起上に対象物が保持された場合の拡大側面図、(c)実施の形態3の突起の拡大平面図
【
図5】(a)実施の形態4の大型搬送具の対象物を保持しているところの側面図、(b)実施の形態4の大型搬送具の平面図、(c)実施の形態4の搬送具ユニットの平面図、(d)実施の形態4の搬送具ユニットの側面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0009】
(実施の形態1)
図1(a)〜
図1(d)を用いて、実施の形態1の搬送具10を説明する。
図1(a)は、搬送具10の平面図である。
図1(b)は、対象物16を保持した搬送具10の側面図である。
図1(c)は、搬送具10の拡大平面図である。
図1(d)は、搬送具10に対象物16を保持させた状態での搬送具10の拡大平面図である。対象物16を除いて表示されている。
【0010】
<構造>
搬送具10は、台座15と突起11と凹部13と隙間14とを含む。
台座15は、平板状で、一方の面に突起11を有する。台座15は、約30mm角の正方形形状である。1cm〜100cmまで作製できる。
突起11は、円柱状の突起である。円の直径は、約0.5mm〜2mmである。高さも、約0.5mm〜2mmである。円の直径に対する高さの比(アスペクト比)は、0.5から1.5が好ましい。円柱に限られず柱状ならよい。
【0011】
突起11の頂部の面積の割合(占有面積、突起11が存在する領域での単位面積あたりの面積密度)は50%以上がよい。60%以上が好ましい。対象物16を保持するため、多いほどよい。ただし、突起11は変形する必要があるので、それぞれ独立した複数の突起11としている。頂部の面積の割合を増やすため、突起11は、千鳥配列としている。また、突起11は、変形した時に均等に広がるように円柱形状が好ましい。そのため、頂部の面積の割合は、95%以下がよい。90%以下が好ましい。
凹部13は、突起11と台座15とで囲まれた空間である。
【0012】
隙間14は、突起11間の隙間である。突起11が、対象物16を保持した時、変形できるように、隙間14が必要である。隙間14は、0.1mm以下である。
搬送具10は、材質が、化学的に安定なフッ素ゴムが好ましく、プレス成型もしくは注型成型で作製される。
【0013】
フッ素ゴムとしては、フッ化ビニリデン由来の構成単位、ヘキサフルオロプロピレンの構成単位、および、テトラフルオロエチレン由来の構成単位を主とした構成をもつフッ素ゴム組成物も利用できる。なお、フッ素ゴム全般に適応できる。テトラフルオロエチレン由来の構成単位、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)又は、パーフルオロ(アルコキシアルキルビニルエーテル)由来の構成単位を主とした構成を含有するパーフルオロエラストマーも利用できる。
また、ゴムとして、上記以外のフッ素ゴムも使用できる。シリコンゴム、エラストマーも使用できる。室温で、加圧で変形できるものなら使用できる。
【0014】
<製造方法>
搬送具10の形状に対応する凹部を施した金型を作成し、プレス機に金型を設置する。金型を180℃まで熱しておき、ゴム成型後にゴムが剥がれやすくするよう離型剤(フッ素系、シリコン系など)を塗布する。
ゴムシートを適切なサイズにカットし下型に置きプレスを行う。プレスは180℃、240秒で設定する。ゴムの材質により温度・時間は設定を変える。適切なサイズより少ないようであれば未加硫状態となりゴムが成型できない。
【0015】
プレス後、ゴムがちぎれないよう丁寧に金型からゴムを剥がす。剥がし終わった後、外観確認をして問題なければそのゴム製品をオーブンにいれ232℃、10時間熱を加える。温度・時間が少ないとゴムの物性が出ない恐れがある。ゴムの材質により温度・時間は設定を変える。オーブンでの作業後、外観確認をして問題なければ製品の完成である。
【0016】
なお、ゴムシートの成形でなくともよい。通常の成形加工でもよい。台座15と突起11は一体で作製した方が好ましい。なぜなら、突起11は、対象物16により圧を受け、変形するので、破損しやすい。そのため、台座15と突起11とは、1つの材料で形成される方が、強度的によい。
【0017】
<保持状態>
図1(b)は、搬送具10で対象物16を保持している状態を示す。搬送具10では、突起11の頂部で対象物16と接し、対象物16を保持する。突起11の頂部には粘着性があり、対象物16を粘着保持する。
【0018】
図1(c)は、対象物16を保持していない時の搬送具10の拡大平面であり、
図1(d)は、対象物16を保持している時の搬送具10の拡大平面である。
突起11の頂部は、対象物16の重さで変形し、広がり、対象物16を保持する。このため、突起11間には隙間14が設けられている。より突起11の頂部の面積を増やすことで対象物16をより保持しやすい。そのため、突起11を平面内で密に配置している。
なお、突起11は、対象物16により、圧縮変形し広がるので、複数の非接触の突起11が好ましい。
【0019】
搬送具10の硬さは、20〜90がよい。好ましくは、60〜80が好ましい。ここで、硬さは、デユロメータータイプAでの値である。搬送具10の硬さは、突起11の変形のしやすさ、保持性から上記範囲となる。
【0020】
(実施の形態2)
図2(a)〜
図2(c)を用いて、実施の形態2の搬送具20を説明する。
図2(a)は、搬送具20の平面図である。
図2(b)は、搬送具20の側面図である。
図2(c)は、搬送具20に対象物16を保持させた側面図である。記載しない事項は実施の形態1と同様である。
【0021】
<構造>
搬送具20は、台座15と第1突起11aと第2突起11bと凹部13と隙間14とを含む。
台座15は、平板状で、一方の面に第1突起11aと第2突起11bとを有する。
第1突起11aは、円柱状の突起である。実施の形態1の突起11と同様である。
第2突起11bは、円柱状の突起である。第1突起11aより、断面積が小さく、第1突起11aと同じ高さである。第1突起11aがメインの突起である。
【0022】
凹部13は、第1突起11aと第2突起11bと台座15とで囲まれた空間である。
隙間14は、第1突起11aと第2突起11bとの間の隙間である。
第1突起11aの直径は、第2突起11bより大きい。突起の占有面積を増やすため、密に並べると、第1突起11aの直径は、第2突起11bの2.3倍までである。
なお、第1突起11aのアスペクト比は、実施の形態1の突起11と同様で1前後である。そのため、第2突起11bは、細長い突起となる。第1突起11aが対象物16を受け止め、第2突起11bは補助的に受け止める。第2突起11bは、粘着性のアップ、真空吸着性のために存在する。
【0023】
<保持状態>
図3(a)は、対象物16を保持する前の搬送具20の拡大平面図である。
図3(b)は、対象物16を保持中の搬送具20の拡大平面図である。対象物16を省略してあらわされている。
【0024】
対象物16が、第1突起11aと第2突起11b上に乗せられた時、第1突起11aと第2突起11bとは、圧縮され、隙間14は無くなり、第1突起11aと第2突起11bとが接触する。この状態で、凹部13は、第1突起11aと第2突起11bと台座15と対象物16とで密閉された空間となる。この時、この空間は、少し真空状態となり、対象物16を搬送具10により吸着、保持する。
つまり、第1突起11aと第2突起11bの頂部の粘性と凹部13の真空とで、対象物16を保持できる。
【0025】
対象物16を取り外す時に、少し端部を持ち上げると、すき間14ができ、真空状態が解除され、取り出しやすい。つまり、複数の凹部13が、端部から徐々に、その真空が解除され、対象物16を取り出しやすい。
【0026】
(実施の形態3)
図4(a)〜
図4(c)を用いて、実施の形態3を説明する。説明しない事項は、実施の形態1,2と同様である。
図4(a)は、実施の形態3の突起11cの拡大側面図である。
図4(c)は、突起11cの拡大平面図である。
図4(b)は、突起11c上に対象物16が保持された場合の拡大側面図である。突起11cは、実施の形態1または2の搬送具の突起である。
【0027】
突起11cは、円柱形状で頂部に1つの凹部41を有する。凹部41の周囲は、突起凸部11dで囲まれる。円柱形状でなくとも柱状であればよい。凹部41の深さは、数ミクロン、1〜5μである。突起11dの直径は、約0.5mm〜1.5mmである。凹部41の深さが、深いと、空気が、凹部41と対象物16間に残り、吸着性がよくない。
突起11c上に対象物16が保持されると、突起11cは、頂部の突起凸部11dが変形し、突起11cの側面が膨らみ、突起側部11eができる。この時、突起11cの頂部は、より広い面として、対象物16を保持できる。円柱でなく角柱でもよい。
突起11cは、実施の形態1,2の突起として使用できる。さらに、実施の形態1,2とは無関係に単独で使用してもよい。
【0028】
(実施の形態4)
実施の形態4を
図5(a)と
図5(b)で説明する。記載しない事項は、上記の実施の形態と同様である。
図5(a)は、大型搬送具50の対象物16を保持しているところの側面図である。
図5(b)は、大型搬送具50の平面図である。
対象物16が大きくなると、上記実施の形態の搬送具10,20を大きくしてもよいが、作製上の問題、コスト面から好ましくない。
【0029】
そこで、この実施の形態では、複数の搬送具30を用いる。搬送具30は、上記実施の形態の搬送具のいずれかである。複数種類の搬送具を用いてもよい。搬送具30の大きさは、10mm角〜50mm角の面積で正方形、長方形、ひし形、台形でもよい。
大型搬送具50は、搬送台17と搬送具30とを含む。
搬送台17は、金属板などで運搬用の台座である。
搬送具30は、上記実施の形態の搬送具のいずれか1つまたは複数である。
大型搬送具50は、その表面に、複数の搬送具30を配置されている。複数の搬送具30上に対象物16が乗り、対象物16が保持されている。
【0030】
搬送具30は、対象物16に対して、均等に配置されるのが好ましい。ただし、搬送具30を、周辺部のみ、端部部のみに配置してもよい。全体として対象物16とを保持する。搬送具30は、搬送台17に接着固定されている。
【0031】
結果、搬送具30を大きくしなくとも、大型搬送具50が実現できる。
また、
図5(c)の平面図、
図5(d)の側面図で示す搬送具ユニット51を用いることができる。搬送具ユニット51は、搬送具30を複数有する。これは、搬送具30を作製する時に、台座15を共通にして複数の搬送具30を作製したものである。搬送具ユニット51で供給し、マーク52に沿ってカットして、複数の搬送具30として利用するものである。マーク52は、搬送具ユニット51の製造時に金型により設けることができる。マーク52は無くともよい。搬送具ユニット51において、搬送具30間は、突起のない台座15のみの平面である。
【0032】
搬送具30は、直接、搬送台17に接着材などで固定することができる。しかし、搬送具30を一端、中間体に接着材で貼り付け、その中間体をネジなど物理的に搬送台17に固定するのが好ましい。搬送具30は定期的に、消耗し交換されるが、搬送台17は、長期間使用されるので、長期間使用できるように、搬送台17に接着材などを直接使用しないのが好ましい。
【0033】
(全体として)
上記実施の形態1〜4は組み合わせできる。
対象物16は、ガラスパネル、半導体チップ、レンズ、ウエハーなどであり、限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の搬送具と大型搬送具は、半導体、デイスプレイなどをデバイスの製造において、対象物を搬送する時に利用できる。その他の製品の製造でも利用できる。
【符号の説明】
【0035】
10,20,30 搬送具
11,11c 突起
11a 第1突起
11b 第2突起
11d 突起凸部
11e 突起側部
13,41 凹部
14 隙間
15 台座
16 対象物
17 搬送台
30 搬送具
50 大型搬送具
51 搬送具ユニット
52 マーク
【要約】
【課題】粘着力の強い搬送具と搬送方法を提供すること。
【解決手段】台座と、前記台座の表面に配置された複数の柱状の突起と、を含み、前記複数の柱状の突起は、それぞれ頂部に1つの凹部を有する搬送具を用いる。上記搬送具を、複数個、プレート上に重ねずに、前記突起を表面として配置した大型搬送具を用いる。上記搬送具を、複数個、プレート上に重ねずに、前記突起を表面として配置した大型搬送具を用いて、製造の対象物を搬送する搬送方法を用いる。
【選択図】
図1