特許第6353977号(P6353977)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イーライ リリー アンド カンパニーの特許一覧

特許6353977BACE阻害剤としてのテトラヒドロピロロ[3,4−D][1,3]チアジン誘導体
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6353977
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】BACE阻害剤としてのテトラヒドロピロロ[3,4−D][1,3]チアジン誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07D 513/04 20060101AFI20180625BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20180625BHJP
   A61K 31/542 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   C07D513/04 375
   C07D513/04CSP
   A61P25/28
   A61K31/542
【請求項の数】10
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2017-514410(P2017-514410)
(86)(22)【出願日】2015年9月8日
(65)【公表番号】特表2017-530957(P2017-530957A)
(43)【公表日】2017年10月19日
(86)【国際出願番号】US2015048788
(87)【国際公開番号】WO2016043996
(87)【国際公開日】20160324
【審査請求日】2017年3月30日
(31)【優先権主張番号】14382347.4
(32)【優先日】2014年9月15日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100176094
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 満
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】コーツ,デイビッド アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ロザーダ,パブロ ガルシア
【審査官】 早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】 特表2016−512252(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/151832(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/098461(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/091016(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 513/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下の式:
【化1】
の化合物の結晶
【請求項2】
−[3−[(4aR,7aS)−2−アミノ−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−フルオロ−フェニル]−5−メトキシ−ピラジン−2−カルボキサミドである、請求項1に記載の結晶。
【請求項3】
0.2度の回析角に対する公差で、18.6°、19.3°、及び26.7°からなる群から選択されるピークのうち1つ以上と組み合わせて、11.8°の回析角2シータでのX線回析スペクトラムにおける実質的なピークにより特徴づけられる、請求項1または2のいずれかに記載の結晶。
【請求項4】
0.2度の回析角に対する公差で、18.1°、27.0°、及び19.7°からなる群から選択されるピークのうち1つ以上と組み合わせて、15.7°の回析角2シータでのX線回析スペクトラムにおける実質的なピークにより特徴づけられる、請求項1に記載の結晶。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか1項に記載の結晶を含む、アルツハイマー病を治療するための医薬組成物。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか1項に記載の結晶を含む、軽度認知障害がアルツハイマー病へと進行することを予防するための医薬組成物。
【請求項7】
療法における使用のための、請求項1〜のいずれか1項に記載の結晶
【請求項8】
アルツハイマー病の治療における使用のための、請求項1〜のいずれか1項に記載の結晶
【請求項9】
軽度認知障害からアルツハイマー病への進行の予防における使用のための、請求項1〜のいずれか1項に記載の結晶
【請求項10】
1つ以上の薬学的に受容可能な担体、希釈剤、または賦形剤と、請求項1〜のいずれか1項に記載の結晶を含有する、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な結晶質BACE阻害剤に関するものであり、当該結晶質BACE阻害剤を含有する医薬組成物に関するものであり、生理的障害を治療するための結晶質BACE阻害剤の使用方法に関するものであり、ならびにその合成に有用な中間体及び方法に関するものである。
【0002】
本発明は、アルツハイマー病、ならびにアミロイド前駆体タンパク質(APP:amyloid precursor protein)の神経毒性があり高度に凝集性のペプチド断片であるアミロイドβ(Aベータ)ペプチドが関与する他の疾患及び障害の治療の分野に属する。アルツハイマー病は、世界で数百万人の患者が罹患する悲惨な神経変性性疾患である。現在市販されている承認薬は一過性で対症的効果を患者にもたらすだけであることを鑑みると、アルツハイマー病の治療には、いまだ満たされていない多大なニーズが存在する。
【背景技術】
【0003】
アルツハイマー病は、脳内におけるAベータの生成、凝集及び沈着により特徴づけられる。β−セクレターゼ(アミロイド前駆タンパク質βサイト切断酵素;BACE:β−site amyloid precursor protein−cleaving enzyme)の完全阻害または部分阻害は、マウスモデルにおいてプラーク関連病変及びプラーク依存性病変に対し高い効果を有していることが示されており、このことからAベータペプチド値のわずかな低下でさえも、プラーク量及びシナプス欠損の長期的で大幅な低下をもたらし得ることが示唆され、従って、特にアルツハイマー病の治療における重要な治療利益をもたらすであろう。
【0004】
米国特許第8,158,620号は、BACE阻害活性を有する縮合アミノジヒドロチアジン誘導体を開示しており、さらに、たとえばアルツハイマー型認知症などのAβペプチドにより引き起こされる神経変性性疾患の有用な治療剤として開示している。さらに、J. Neuroscience, 31(46), pages 16507-16516 (2011)は、経口投与されるCNS活性BACE阻害剤である(S)−4−(2,4−ジフルオロ−5−ピリミジン−5−イル−フェニル)−4−メチル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−2−イルアミンを開示している。
【0005】
医薬製剤の調製の容易さ、及び安定性が改善された医薬組成物を提供するためには、結晶型のBACE阻害剤が望ましい。
【発明の概要】
【0006】
従って、本発明は、結晶質である式I:
【化1】

の化合物を提供するものである。
【0007】
本発明はまた、患者において、アルツハイマー病を治療する方法を提供するものであり、当該方法は、結晶質である式Iの化合物の有効量をかかる治療を必要としている患者に投与することを含む。本発明はさらに、患者において、軽度認知機能障害がアルツハイマー病へと進行することを予防する方法を提供するものであり、当該方法は、結晶質である式Iの化合物の有効量をかかる治療を必要としている患者に投与することを含む。本発明はまた、患者においてBACEを阻害する方法を提供するものであり、当該方法は、結晶質である式Iの化合物の有効量をかかる治療を必要としている患者に投与することを含む。本発明はまた、アミロイド前駆タンパク質のBACE介在性の開裂を阻害する方法を提供するものであり、当該方法は、結晶質である式Iの化合物の有効量をかかる治療を必要としている患者に投与することを含む。本発明はさらに、Aベータペプチドの生成を阻害する方法を提供するものであり、当該方法は、結晶質である式Iの化合物の有効量をかかる治療を必要としている患者に投与することを含む。
【0008】
さらに本発明は、療法における使用、特にアルツハイマー病の治療のための、または軽度認知機能障害がアルツハイマー病に進行することを予防するための、結晶質である式Iの化合物を提供するものである。さらには、本発明は、アルツハイマー病の治療のための医薬の製造のための、結晶質である式Iの化合物の使用を提供するものであり、または軽度認知機能障害がアルツハイマー病へと進行することを予防するための医薬の製造のための、結晶質である式Iの化合物の使用を提供するものである。
【0009】
本発明はさらに、1つ以上の薬学的に受容可能な担体、希釈剤、または賦形剤と、結晶質である式Iの化合物を含有する医薬組成物を提供する。本発明はまた、結晶質である式Iの化合物の合成のための新規中間体及び方法を包含する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
軽度認知機能障害は、臨床所見、及び軽度認知機能障害を示す患者が徐々にアルツハイマー型認知症へと進行することに基づいた、アルツハイマー病に関連した認知症の潜在的な前駆期として定義されている。(Morris, et al., Arch. Neurol., 58, 397-405 (2001); Petersen, et al., Arch. Neurol., 56, 303-308 (1999))。「軽度認知機能障害のアルツハイマー病への進行の予防」という用語は、患者において、軽度認知機能障害がアルツハイマー病へと進行することを減速させること、止めること、または反転させることを含む。
【0011】
本明細書において用いられる場合、「治療すること:treatingまたはto treat」という用語は、既存の症状もしくは障害の進行または重篤度を抑えること、減速させること、止めること、または反転させることを含む。
【0012】
本明細書において用いられる場合、「患者」という用語は、ヒトを指す。
【0013】
「Aベータペプチド生成の阻害」という用語は、患者において、Aベータペプチドのin vivoレベルの低下を意味すると解釈される。
【0014】
本明細書において用いられる場合、「有効量」という用語は、患者に単回投与または反復投与された際に、診断を受けた患者または治療を受けている患者において所望される効果をもたらす、本発明化合物もしくはその薬学的に受容可能な塩の量または投与量を指す。
【0015】
有効量は、公知の技術を使用することにより、及び類似の環境下で得られた結果を観察することにより、当分野の当業者としての担当診断医によって容易に決定することができる。患者の有効量の決定において、限定されないが、患者の種;大きさ、年齢、及び一般健康状態;関与する具体的な疾患または障害;疾患もしくは障害の程度、または関与、または重篤度;個々の患者の反応性;投与される特定の化合物;投与方法;投与される製剤の生体利用効率の特徴;選択される用法;併用薬の使用;及び他の関連状況をはじめとする多くの因子が担当診断医により考慮される。
【0016】
本発明の化合物は、一般的に広範な用量域で有効である。たとえば、1日当たりの用量は通常、約0.01〜約20mg/体重kgの範囲内にある。一部の例において、前述の範囲の下限値を下回る用量レベルがより適切である場合もあり、一方で他の場合においては、許容可能な副作用と共にさらに多量の投与量が用いられ得、従って、上述の用量域は決して本発明の範囲を限定することを意図していない。
【0017】
本発明化合物は、好ましくは、経口、経皮、及び非経口の経路をはじめとする、化合物が生体利用可能となる任意の経路により投与される医薬組成物として製剤化される。最も好ましくは、かかる組成物は経口投与、または経皮投与用であり、経口投与が特に好ましい。かかる医薬組成物、及び同組成物の調製方法は当分野に公知である。(たとえばRemington: The Science and Practice of Pharmacy (D.B. Troy, Editor, 21st Edition, Lippincott, Williams & Wilkins, 2006を参照のこと)。
【0018】
式Iの結晶質化合物は、本発明の治療方法において特に有用であるが、ある形態が好ましい。以下の項目においてかかる形態を記述する。これら好ましい形態は、本発明の治療方法及び新規化合物の両方に適用可能であることを理解されたい。
【0019】
N−[3−[(4aR,7aS)−2−アミノ−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−フルオロ−フェニル]−5−メトキシ−ピラジン−2−カルボキサミドの結晶型1;
N−[3−[(4aR,7aS)−2−アミノ−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−フルオロ−フェニル]−5−メトキシ−ピラジン−2−カルボキサミドの結晶型2;
0.2度の回析角の公差で、18.6°、19.3°、及び26.7°からなる群から選択されるピークの1つ以上と組み合わせて、11.8°の回析角2−シータでのX線回析スペクトラムの実質的なピークにより特徴づけられる、N−[3−[(4aR,7aS)−2−アミノ−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−フルオロ−フェニル]−5−メトキシ−ピラジン−2−カルボキサミドの結晶型2;
N−[3−[(4aR,7aS)−2−アミノ−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−フルオロ−フェニル]−5−メトキシ−ピラジン−2−カルボキサミドの結晶型3;及び
0.2度の回析角の公差で、18.1°、27.0°、及び19.7°からなる群から選択されるピークの1つ以上と組み合わせて、15.7°の回析角2−シータでのX線回析スペクトラムの実質的なピークにより特徴づけられる、N−[3−[(4aR,7aS)−2−アミノ−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−フルオロ−フェニル]−5−メトキシ−ピラジン−2−カルボキサミドの結晶型3、
が、好ましい。
【0020】
N−[3−[(4aR,7aS)−2−アミノ−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−フルオロ−フェニル]−5−メトキシ−ピラジン−2−カルボキサミドの結晶型2が特に好ましい。
【0021】
0.2度の回析角の公差で、18.6°、19.3°、及び26.7°からなる群から選択されるピークの1つ以上と組み合わせて、11.8°の回析角2−シータでのX線回析スペクトラムの実質的なピークにより特徴づけられる、N−[3−[(4aR,7aS)−2−アミノ−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−フルオロ−フェニル]−5−メトキシ−ピラジン−2−カルボキサミドの結晶型2が殊に好ましい。
【0022】
当分野の当業者であれば、本発明化合物がスキームAに表される互変異性体で存在し得ることを認識するであろう。本発明化合物の特定の互変異性体のうちの1つに本明細書において何らかの言及がなされた場合、互変異性体、及びそれらのすべての混合物の両方が包含されることを理解されたい。
【0023】
スキームA
【化2】

さらに、以下のスキームに記述されるある中間体は、1つ以上の窒素保護基を含有し得る。実施される特定の反応条件及び特定の変換様式に従い、各場合で様々な保護基が同じであっても、異なっていてもよい。保護及び脱保護の条件は当業者に公知であり、文献(たとえば、“Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis”, Fourth Edition, by Peter G.M. Wuts and Theodora W. Greene, John Wiley and Sons, Inc. 2007を参照のこと)に開示されている。
【0024】
明確性を目的として、以下のスキームにおいて、ある立体化学中心は特定されないままであり、及びある置換基は省略されており、何らかの形で当該スキームの教示を限定することは意図されていない。さらに個々の異性体、鏡像異性体、及びジアステレオマーは、本発明化合物の合成における任意の都合のよいポイントで、たとえば選択的結晶化技術またはキラルクロマトグラフィーなどの方法により、当分野の当業者により分離または分割されてもよい(たとえば、J. Jacques, et al., "Enantiomers, Racemates, and Resolutions", John Wiley and Sons, Inc., 1981、及びE.L. Eliel and S.H. Wilen,” Stereochemistry of Organic Compounds”, Wiley-Interscience, 1994を参照のこと)。「異性体1」及び「異性体2」という記号はそれぞれ、キラルクロマトグラフィーから1番目、及び2番目に溶出された化合物を指し、キラルクロマトグラフィーが合成の早い段階で開始された場合、この同じ記号は、以下の中間体及び実施例に適用される。
【0025】
以下のように、いくつかの略語を定義する:「APP」とは、アミロイド前駆体タンパク質を指す;「CSF」とは、脳脊髄液を指す;「DCM」とは、ジクロロメタンを指す;「DIPEA」とは、ジイソプロピルエチルアミン、またはN−エチル−N−イソプロピル−プロパン−2−アミンを指す;「DMEM」とは、ダルベッコ変法イーグル培地を指す;「DMF」とは、ジメチルホルムアミドを指す;「DMSO」とはジメチルスルホキシドを指す;「EDCI」とは、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩を指す;「ee」とは、鏡像体過剰率を指す;「EtOAc」とは、酢酸エチルを指す;「Ex」とは、実施例を指す;「F12」とは、ハムF12培地を指す;「FBS」とは、ウシ胎児血清を指す;「FRET」とは、蛍光共鳴エネルギー移動を指す;「HEK」とは、ヒト胎児腎細胞を指す;「HOAc」とは、酢酸を指す;「HOBt」とは、1−ヒドロキシルベンゾトリアゾール水和物を指す;「HPLC」とは、高速液体クロマトグラフィーを指す;「IC50」とは、その剤に可能な最大阻害反応の50%を生じさせる剤の濃度を指す;「min」とは、分(複数含む)を指す;「MTBE」とは、メチルtert−ブチルエーテルを指す;「PDAPP」とは、血小板由来アミロイド前駆タンパク質を指す;「Prep」とは、調製を指す;「RFU」とは、相対蛍光単位を指す;「SCX」とは、強カチオン交換樹脂を指す;「R」とは、保持時間を指す;及び「THF」とは、テトラヒドロフランを指す。
【0026】
本発明化合物は、当分野に公知の様々な手段により調製されてもよく、それらの一部は以下の調製及び実施例において解説される。記載される各経路の特定の合成工程は、別の方法で組み合わせてもよく、本発明化合物を調製するための別の調製工程と組み合わせてもよい。各工程の産物は、抽出、蒸着、沈殿、クロマトグラフィー、ろ過、粉砕、または結晶化をはじめとする当分野に公知の標準的な方法により回収することができる。試薬及び開始材料は当分野の当業者に容易に入手可能である。
【0027】
調製1
2−ブロモ−1−(5−ブロモ−2−フルオロフェニル)エタン−1−オン
【化3】

N−ブロモスクシンイミド(984g、5.53モル)を、1−(5−ブロモ−2−フルオロフェニル)エタン−1−オン(1000g、4.6モル)とp−トルエンスルホン酸(1315g、7.64モル)のDCM(7L)溶液に、35℃で分割して添加する。混合物を攪拌し、40℃まで加熱する。混合物を24℃まで冷却し、7%NaHCO(5L)を添加する。層を分離させ、有機層を10%NaSO(5L)と水(5L)で洗浄する。有機層を2〜3体積まで濃縮し、表題化合物を得て、さらなる精製を行うことなくそれを用いる。
【0028】
調製2
5−アリル−6a−(5−ブロモ−2−フルオロフェニル)−1−(4−メトキシベンジル)ヘキサヒドロ−1H−ピロロ[3,4−c]イソキサゾール
【化4】

2−ブロモ−1−(5−ブロモ−2−フルオロフェニル)エタン−1−オン(1363g、4.61モル)のトルエン(10L)溶液に、ジアリルアミン(537g、5.53モル)及びdipea(2381g、18.42モル)を加える。混合物を40℃で4時間攪拌し、単離されていない1−(5−ブロモ−2−フルオロフェニル)−2−(ジアリルアミノ)エタン−1−オンを得る。N−(4−メトキシベンジル)ヒドロキシルアミン(847g、5.53モル)及びTi(OiPr)(1965g、6.91モル)を、粗1−(5−ブロモ−2−フルオロフェニル)−2−(ジアリルアミン)エタン−1−オンを含有する混合物に添加する。混合物を2時間、90℃で攪拌する。混合物を20℃まで冷却し、50%クエン酸一水和物(4L)及び飽和NaCO(4L)を加える。層を分離させ、水層を、MTBE(5L)を用いて抽出する。有機抽出物を、水(5L)を用いて洗浄し、珪藻土を通してろ過し、乾燥するまで濃縮する。EtOAc(10L)及びシュウ酸(580g)を残留物に加え、固形物をろ過し、1NのNaOH(13L)に加える。MTBE(5L)を加え、混合物を、珪藻土を通してろ過する。層を分離させ、有機層を2体積まで濃縮する。ヘプタン(3L)を加え、溶液を10℃まで冷却する。得られた固形物をろ過して表題化合物(1330g、64%)を得る。1H NMR(400 MHz, CDCl3) δ 2.51-2.49(m, 3H), 3.09-3.04(m, 3H), 3.78-3.41(m, 6H), 4.01(m, 1H), 5.24-5.01(m, 2H), 5.89-5.85(m, 1H), 6.82-6.80(m, 2H), 7.51-7.13(m, 3H), 7.63-7.62(m, 1H), 7.65-7.64(m, 1H)。
【0029】
調製3
5−アリル−6a−(5−ブロモ−2−フルオロフェニル)ヘキサヒドロ−1H−ピロロ[3,4−c]イソキサゾール塩酸塩
【化5】

トリフルオロ酢酸(4L、52.9モル)を、5−アリル−6a−(5−ブロモ−2−フルオロフェニル)−1−(4−メトキシベンジル)ヘキサヒドロ−1H−ピロロ[3,4−c]イソキサゾール(1990g、4.45モル)のDCM(12L)溶液に、35℃未満の温度が維持される速度で滴下して加える。添加が完了した後、混合物を33〜43℃まで加温し、6時間攪拌する。NaOH(20%、10L)を、35℃未満の温度が維持される速度で加える。層を分離させ、有機層を、水(6L)を用いて洗浄する。溶液を濃縮し、エタノール(16L)を加え、混合物を、珪藻土を通してろ過する。ろ過物を濃縮し、EtOAc(10L)を加える。4M HClのEtOAc溶液(8L)を加え、得られた固形物をろ過し、乾燥させ、表題化合物(1385g、85.6%)を得る。ESm/z327.1(M+1)。
【0030】
調製4
(1−アリル−4−アミノ−4−(5−ブロモ−2−フルオロフェニル)ピロリジン−3−イル)メタノール
【化6】

炭酸ナトリウムの飽和水溶液を、pHが>9に達するまで、5−アリル−6a−(5−ブロモ−2−フルオロフェニル)ヘキサヒドロ−1H−ピロロ[3,4−c]イソキサゾール塩酸塩(1400g、3.85モル)のDCM(7L)溶液に加える。層を分離させ、有機抽出物を1.5体積まで濃縮する。酢酸(1.38L)を加え、溶液を2Lまで濃縮する。酢酸(7L)及び亜鉛粉末(2.5kg、38.5モル)を加え、混合物を40〜50℃まで加熱し、3時間攪拌する。EtOAc(9.8L)を加え、混合物を、珪藻土を通してろ過する。ろ過ケークを、EtOAc(4L)を用いて洗浄する。ろ過物を分離させ、水(7L)を混合有機物に加える。pH≧9に達するまで水酸化アンモニウムを加える。層を分離させ、有機層を2Lまで濃縮する。エタノール(2.8L)を加え、溶液を2Lまで濃縮する。エタノール(19L)を加え、混合物を、珪藻土を通してろ過し、表題化合物のエタノール溶液を得、それをさらなる精製を行うことなく用いる。
【0031】
調製5
[(3S,4R)−1−アリル−3−(5−ブロモ−2−フルオロ−フェニル)−4−(ヒドロキシメチル)ピロリジン−3−イル]アンモニウム;(2S,3S)−4−ヒドロキシ−2,3−ビス[(4−メチルベンゾイル)オキシ]−4−オキソ−ブタン酸塩
【化7】

ジ−p−トルオイル−L−酒石酸一水和物(1.04kg、2.69モル)を、(1−アリル−4−アミノ−4−(5−ブロモ−2−フルオロフェニル)ピロリジン−3−イル)メタノール(1264g、3.85ミリモル)のエタノール(21L)溶液に加える。混合物を65〜75℃まで加熱し、3時間攪拌する。混合物を5〜10℃まで冷却し、[(3S,4R)−1−アリル−3−(5−ブロモ−2−フルオロ−フェニル)−4−(ヒドロキシメチル)ピロリジン−3−イル]アンモニウム;(2S,3S)−4−ヒドロキシ−2,3−ビス[(4−メチルベンゾイル)オキシ]−4−オキソ−ブタン酸塩(1.0g)の種晶を加え、混合物を3時間攪拌する。固形物をろ過し、ろ過ケークを冷たいエタノール(1.4L)を用いて洗浄する。ろ過ケークを乾燥させ、白色固形物として表題化合物を得る。第二の溶離異性体のキラル解析:カラム:IC Chiralpak、4.6mm*250mm*5μm;溶離剤:90%ヘキサン(0.3%ジエチルアミン):10%エタノール(0.3%ジエチルアミン);1.0mL/分の流速、UV270nmで、R=7.4分で鏡像異性的に富化された(99%ee)鏡像異性体が確認される(1050g、38%)。1H NMR(400 MHz, CD3OD) δ 2.40(s, 6H), 3.05-3.04(m, 1H), 3.57-3.31(m, 3H), 3.66-3.58(m, 4H), 3.75-3.74(m, 2H), 5.38-5.36(m, 1H), 5.50-5.46(m, 1H), 5.88(s, 2H), 5.97-5.91(m, 1H), 7.10-7.05(m, 1H), 7.29(d, J=8.0 Hz, 4H), 7.53-7.51(m, 1H), 7.80-7.78(m, 1H), 8.01(d, J=8.0 Hz, 4H)。
【0032】
調製6
((3R,4S)−1−アリル−4−アミノ−4−(5−ブロモ−2−フルオロフェニル)ピロリジン−3−イル)メタノール
【化8】

1N HCl(500mL、500ミリモル)を、[(3S,4R)−1−アリル−3−(5−ブロモ−2−フルオロ−フェニル)−4−(ヒドロキシメチル)ピロリジン−3−イル]アンモニウム;(2S,3S)−4−ヒドロキシ−2,3−ビス[(4−メチルベンゾイル)オキシ]−4−オキソ−ブタン酸塩(100g、139.4ミリモル)の0℃のEtOAc(500mL)溶液に加える。混合物を1時間攪拌する。水層を分離させ、1N NaOHを用いてpH8に調節する。水層を、EtOAc(350mL×2)を用いて抽出する。有機層をひとつにまとめ、水(500mL)で洗浄し、濃縮させ、表題化合物を得る(40g、87%)。第二の溶離異性体のキラル解析:カラム:IC Chiralpak、4.6mm*250mm*5μm;溶離剤:90%ヘキサン(0.3%ジエチルアミン):10%エタノール(0.3%ジエチルアミン);1.0mL/分の流速、UV270nmで、R=7.4分で鏡像異性的に富化された(99.7%ee)鏡像異性体が確認される。1H NMR(400 MHz, CDCl3) δ 2.78-2.70(m, 5H), 3.16-3.00(m, 3H), 3.87-3.75(m, 1H), 3.90-3.84(m, 1H), 5.24-5.11(m, 2H), 5.91-5.87(m, 1H), 6.95-6.91(m, 1H), 7.35-7.32(m, 1H), 7.67- 7.65 (m, 1H)。
【0033】
調製7
N−(((3S,4R)−1−アリル−3−(5−ブロモ−2−フルオロフェニル)−4−(ヒドロキシメチル)ピロリジン−3−イル)カルバモチオイル)ベンズアミド
【化9】

((3R,4S)−1−アリル−4−アミノ−4−(5−ブロモ−2−フルオロフェニル)ピロリジン−3−イル)メタノール(30g、91.1ミリモル)の0℃のTHF(400mL)溶液に、イソチオシアン酸ベンゾイル(15.0g、91.9ミリモル)を加える。溶液を25℃まで加温し、1時間攪拌して、表題化合物のTHF溶液を得て、それをさらなる精製を行うことなく使用する。
【0034】
調製8
N−((4aR,7aS)−6−アリル−7a−(5−ブロモ−2−フルオロフェニル)−4,4a,5,6,7,7a−ヘキサヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル)ベンズアミド、二塩酸塩
【化10】

トリフェニルホスフィン(36.8g、140.3ミリモル)を、N−(((3S,4R)−1−アリル−3−(5−ブロモ−2−フルオロフェニル)−4−(ヒドロキシメチル)ピロリジン−3−イル)カルバモチオイル)ベンズアミド(91.1ミリモル)のTHF(400mL)溶液に加える。アゾジカルボン酸ジ−t−ブチル(31.6g、137.2ミリモル)のTHF(100mL)溶液を加える。混合物を2時間、20〜30℃で攪拌する。混合物を濃縮し、MTBE(400mL)を加える。溶液を、珪藻土を通してろ過し、ケークを、MTBE(130mL)を用いて洗浄する。ろ過物を1つにまとめ、
1N HClのEtOAc(200mL)溶液を加える。混合物を2時間攪拌し、次いで、500mLまで濃縮する。MTBE(320mL)を加え、溶液をろ過し、ヘプタン(130mL)を用いて洗浄する。固形物をEtOAc(650mL)中でスラリー化させ、2時間、50〜60℃で攪拌する。熱いスラリーをろ過し、固形物を、EtOAc(130mL)とヘプタン(130mL)を用いて洗浄する。固形物をEtOAc(650mL)中で再度スラリー化させ、2時間、50〜60℃で攪拌する。熱いスラリーをろ過し、EtOAc(130mL)とヘプタン(130mL)を用いて洗浄する。固形物を乾燥させ、ジ−HCl塩として表題化合物を得る(40g、80%、99.5%ee)。第一の溶離異性体のキラル解析:カラム:IC Chiralpak、4.6mm*250mm*5μm;溶離剤:85%ヘキサン(0.1%ジエチルアミン):15%イソプロピルアルコール(0.1%ジエチルアミン);1.0mL/分の流速、UV282で、R=12.5分で鏡像異性的に富化された(99.5%ee)鏡像異性体が確認される。
【0035】
調製9
N−((4aR,7aS)−6−アリル−7a−(2−フルオロ−5−(2,2,2−トリフルオロアセトアミド)フェニル)−4,4a,5,6,7,7a−ヘキサヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル)ベンズアミド
【化11】

15%炭酸ナトリウム(440mL)を、N−((4aR,7aS)−6−アリル−7a−(5−ブロモ−2−フルオロフェニル)−4,4a,5,6,7,7a−ヘキサヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル)ベンズアミド二塩酸塩(495g、717.88ミリモル)のEtOAc(3L)と水(784mL)の溶液に加える。混合物を1〜2時間攪拌する。層を分離させ、有機層を、シリカゲル(40g)を通してろ過し、EtOAc(600mL)を用いて洗浄する。ろ過物を濃縮し、乾燥させ、N−((4aR,7aS)−6−アリル−7a−(5−ブロモ−2−フルオロフェニル)−4,4a,5,6,7,7a−ヘキサヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル)ベンズアミドを得る。トリフルオロアセトアミド(136.7g、1.21モル)、NaI(182.5g、1.22モル)、4A分子篩(342g)、及びKCO(170.9g、1.24モル)を、N−((4aR,7aS)−6−アリル−7a−(5−ブロモ−2−フルオロフェニル)−4,4a,5,6,7,7a−ヘキサヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル)ベンズアミド(341g、494.54ミリモル)のDMSO(525mL)と1,4−ジオキサン(1.025L)の溶液に加える。トランス−N,N’−ジメチルシクロヘキサン(81.6g、573.66ミリモル)及びヨウ化銅(27.3g、143.34ミリモル)のDMSO(500mL)溶液を反応混合物に加える。混合物を5分間攪拌する。混合物を100℃まで加温し、8時間攪拌し、24℃まで冷却する。水(5.9L)及びDCM(5.9l)を加え、混合物をろ過し、層を分離させる。有機層を水(5.9L)で洗浄し、DCM溶液中で表題化合物を得て、それをさらなる精製を行うことなく使用する。
【0036】
調製10
N−((4aR,7aS)−6−アリル−7a−(5−アミノ−2−フルオロフェニル)−4,4a,5,6,7,7a−ヘキサヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル)ベンズアミド、塩酸塩
【化12】

水酸化ナトリウム(28.7g)及び水(2.7L)を、N−((4aR,7aS)−6−アリル−7a−(2−フルオロ−5−(2,2,2−トリフルオロアセトアミド)フェニル)−4,4a,5,6,7,7a−ヘキサヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル)ベンズアミド(250g、494.4ミリモル)のDCM溶液に加え、混合物を68時間、24℃で攪拌する。pH1〜3を得るために、1N HCl(3.5L)を加える。層を分離させ、水層をDCM(680mL)で洗浄する。DCM(4L)を水層に加え、次いで、21%水酸化アンモニウムを加え、pH8〜10とする。層を分離させ、有機抽出物を1つにまとめ、シリカゲル(170g)を通してろ過し、DCM(1.4L)で洗浄する。溶媒を濃縮して乾燥させ、EtOAc(4L)で希釈する。1N HClのEtOAc(700mL)溶液を、25℃未満の温度で加え、混合物を1時間攪拌する。混合物を約7〜8体積まで濃縮し、EtOAc(2.8L)を加える。得られた沈殿物をろ過し、EtOAc(400mL)で洗浄する。固形物を乾燥させ、表題化合物を得る(246g、52%)。
【0037】
調製11
N−((4aR,7aS)−7a−(5−アセトアミド−2−フルオロフェニル)−6−アリル−4,4a,5,6,7,7a−ヘキサヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル)ベンズアミド
【化13】

無水酢酸(23.5g、0.23モル)を、N−((4aR,7aS)−6−アリル−7a−(5−アミノ−2−フルオロフェニル)−4,4a,5,6,7,7a−ヘキサヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル)ベンズアミド塩酸塩(100g、0.153モル)及びトリエチルアミン(54.3g、0.535モル)のDCM(800mL)溶液に加える。1時間、20〜25℃で攪拌した後、飽和NaHCO(700mL)と水(600mL)を加える。層を分離させ、表題化合物を得て、それをさらに精製することなく、DCM溶液として用いる。
【0038】
調製12
N−((4aR,7aS)−7a−(5−アセトアミド−2−フルオロフェニル)−4,4a,5,6,7,7a−ヘキサヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル)ベンズアミド
【化14】

トリフェニルホスフィン(4.0g、0.015モル)及び1,3−ジメチルバルビツール酸(15.2g、0.097モル)を、N−((4aR,7aS)−7a−(5−アセトアミド−2−フルオロフェニル)−6−アリル−4,4a,5,6,7,7a−ヘキサヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル)ベンズアミド(0.153モル)のDCM溶液に加える。酢酸パラジウム(1.7g、7.7ミリモル)を加え、混合物を1時間、20〜30℃で攪拌する。25%水酸化アンモニウムを加え、層を分離させる。有機層をHOAc(500mLの水中、3.0等量)で洗浄し、pHを、25%水酸化アンモニウムを用いて8〜9に調節する。水層を、DCM(2x500mL)を用いて抽出する。有機抽出物を1つにまとめ、3〜4体積に濃縮する。MTBE(1L)を加え、混合物をろ過する。混合物を濃縮し、ヘプタン(1L)を加える。得られた固形物をろ過し、回収し、乾燥させて、表題化合物を得る(48g、76%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 2.15 (s, 3H), 2.87-2.83(m, 1H), 3.43-3.23(m, 5H), 3.70-3.67(m, 1H), 7.12-7.07 (m, 1H), 7.28-7.27 (m, 1H), 7.52-7.41(m, 4H), 7.79(m, 1H), 8.18-8.16(m, 2H)。ES m/z 413.1 (M+1)。
【0039】
調製13
N−((4aR,7aS)−7a−(5−アセトアミド−2−フルオロフェニル)−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,6,7,7a−ヘキサヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル)ベンズアミド
【化15】

2−クロロ−5−フルオロピリミジン(28.9g、218ミリモル)及び炭酸カリウム(33.46g、242.1ミリモル)を、N−((4aR,7aS)−7a−(5−アセトアミド−2−フルオロフェニル)−4,4a,5,6,7,7a−ヘキサヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル)ベンズアミド(50g、121.22ミリモル)のDMF(100mL)溶液に加える。混合物を8時間、80〜85℃まで加熱する。混合物を24℃まで冷却し、ろ過し、DMF(100mL)で洗浄する。固形物を水中(2L)でスラリー化させ、ろ過し、表題化合物を得る(68.5g、98%)。LC−MS:m/z=509.2(M+1)+、1H NMR (400 MHz, d6-DMSO) δppm 1.22 (t, J = 7.28 Hz, 2 H) 1.92 - 2.07 (m, 6 H) 2.89 - 3.20 (m, 2 H) 3.36 - 3.44 (m, 1 H) 3.67 (t, J=9.54 Hz, 1 H) 3.84 (br. s., 1 H) 4.16 (br. s., 2 H) 7.23 (br. s., 2 H) 7.35 - 7.61 (m, 8 H) 7.77 (br. s., 2 H) 7.85 - 8.18 (m, 4 H) 8.48 (s, 4 H) 10.15 (br. s., 1 H) 10.46 - 10.59 (m, 1 H)。
【0040】
調製14
(4aR,7aS)−7a−(5−アミノ−2−フルオロフェニル)−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,6,7,7a−ヘキサヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−アミン
【化16】

水酸化リチウム(8.6g、204.9ミリモル)を、N−((4aR,7aS)−7a−(5−アセトアミド−2−フルオロフェニル)−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,6,7,7a−ヘキサヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル)ベンズアミド(80g、157.3ミリモル)のメタノール(400mL)溶液に加える。混合物を4時間、60〜70℃に加熱する。濃縮HCl(132g)を加え、混合物を18時間、55℃で攪拌する。混合物を30℃まで冷却し、濃縮してメタノールを除去する。水を加え、水層をDCM(3x)で抽出し、920gの水溶液として表題化合物を得て、全質量の5.6%の表題化合物を、さらなる精製を行うことなく用いる。
【0041】
調製15
N−アリル−N−(2,2−ジメトキシエチル)カルバミン酸ベンジル
【化17】

N−(2,2−ジメトキシエチル)カルバミン酸ベンジル(50g、208.9ミリモル)のトルエン(180mL)溶液を、窒素雰囲気下、固形水酸化カリウム(51.6g、919.69ミリモル)で処置する。10分後、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム(0.8g、3.1ミリモル)を加える。さらに10分後、臭化アリル(33g、272.8ミリモル)のトルエン(50mL)溶液を、10分かけて滴下して加える。得られた混合物を50℃で48時間攪拌する。混合物を室温まで冷却し、水でクエンチする。有機層を分離させ、ブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、乾燥するまで濃縮し、表題化合物を得る(44g、75%)。ES/MS(m/e):280(M+H)。
【0042】
調製16
N−アリル−N−(2−オキソエチル)カルバミン酸ベンジル
【化18】

N−アリル−N−(2,2−ジメトキシエチル)カルバミン酸ベンジル(30g、107ミリモル)のギ酸(36.8mL、860ミリモル)及び水(4.84mL)の溶液を、室温で一晩攪拌する。混合物を濃縮し、ヘキサン/EtOAc(1:2)及び水で希釈する。有機層を分離させ、ブライン溶液でpH=6まで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させる。溶媒を蒸発させ、表題化合物を得る(25g、99%)。ES/MS(m/e):234(M+H)。
【0043】
調製17
N−アリル−N−[2−ヒドロキシイミノエチル]カルバミン酸ベンジル
【化19】

N−アリル−N−(2−オキソエチル)カルバミン酸ベンジル(25g、107ミリモル)のアセトニトリル(150mL)溶液を、ヒドロキシラミン塩酸塩(9.68g、139ミリモル)、及び酢酸ナトリウム三水和物(16g、117.9ミリモル)の水溶液(75mL)を用いて処置する。混合物を一晩、室温で攪拌する。アセトニトリルを蒸発させ、水溶液を、EtOAcを用いて抽出する。有機層を分離させ、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、真空下で濃縮し、表題化合物(24g、90%)を得る。ES/MS(m/e):249(M+H)。
【0044】
調製18
3,3a,4,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]イソキサゾール−5−カルボン酸ベンジル
【化20】

N−アリル−N−[2−ヒドロキシイミノエチル]カルバミン酸ベンジル(24g、96.6ミリモル)のDCM(338mL)溶液を、5%w/w次亜塩素酸ナトリウム水溶液(106.08ミリモル、143.06mL)を用いて、10分かけ滴下して処置する。得られた混合物を室温で一晩攪拌する。反応を、重亜硫酸ナトリウム(7g)の40%水溶液を用いてクエンチする。有機層を分離し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、真空下で濃縮する。粗生成物を、ヘキサン中、5%EtOAcで溶出するシリカゲル上で精製し、表題化合物を得る(18g、75%)。ES/MS(m/e):247(M+H)。
【0045】
調製19
6a−(5−ブロモ−2−フルオロ−フェニル)−3,3a,4,6−テトラヒドロ−1H−ピロロ[3,4−c]イソキサゾール−5−カルボン酸ベンジル
【化21】

n−ブチルリチウムの1.6Mヘキサン溶液(25.4mL、40.6ミリモル)を、−78℃の4−ブロモ−1−フルオロ−2−ヨードベンゼン(12.22g、40.6ミリモル)のTHF(60mL)溶液に滴下して加え、黄色溶液を得て、それを15分間、−78℃で攪拌する。
【0046】
三フッ化ホウ素エーテラート(5.14mL、40.6ミリモル)を加え、−78℃の3,3a,4,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]イソキサゾール−5−カルボン酸ベンジル(5g、20.3ミリモル)のTHF(60mL)溶液を分離させ、混合物を5分間、−78℃で攪拌する。この溶液を、カニューレを介して、従前に調製された−78℃のオルガノリチウム混合物に加える。まとめられた混合物を、−78℃で30分間攪拌する。混合物を、飽和塩化アンモニウム水溶液でクエンチして、室温まで加温する。混合物を、EtOAc(3x)を用いて抽出し、有機抽出物を1つにまとめ、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過し、真空下で溶媒を除去する。粗生成物を、ヘキサン勾配中、35分の5%〜100%EtOAcを用いてシリカゲル上で精製し、表題化合物を得る(2.27g、27%)。ES/MS(m/e):(79Br/81Br)421/423(M+H)。
【0047】
調製20
1−(ベンゾイルカルバモチオイル)−6a−(5−ブロモ−2−フルオロ−フェニル)−3,3a,4,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]イソキサゾール−5−カルボン酸ベンジル
【化22】

イソチオシアン酸ベンゾイル(2.87mL、21.28ミリモル)を、6a−(5−ブロモ−2−フルオロ−フェニル)−3,3a,4,6−テトラヒドロ−1H−ピロロ[3,4−c]イソキサゾール−5−カルボン酸ベンジル(5.977g、14.2ミリモル)のTHF(95mL)溶液に滴下して加え、一晩、窒素雰囲気下で攪拌する。溶媒を真空下で除去する。粗生成物を、ヘキサン勾配中、30分の5%〜100%EtOAcを用いてシリカゲル上で精製し、表題化合物を得る(6.05g、73%)。ES/MS(m/e):(79Br/81Br)584/586(M+H)。
【0048】
調製21
3−(ベンゾイルカルバモチオイルアミノ)−3−(5−ブロモ−2−フルオロ−フェニル)−4−(ヒドロキシメチル)ピロリジン−1−カルボン酸ベンジル
【化23】

1−(ベンゾイルカルバモチオイル)−6a−(5−ブロモ−2−フルオロ−フェニル)−3,3a,4,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]イソキサゾール−5−カルボン酸ベンジル(6.05g、10.4ミリモル)と亜鉛(粉末、10ミクロン未満)(6.77g、103.5ミリモル)の混合物を
、室温、窒素雰囲気下で一晩、酢酸(52mL)中で攪拌する。反応物を、EtOAcを用いて希釈し、珪藻土を通してろ過する。溶媒を真空下で除去し、残留物をEtOAc、水、及び飽和重炭酸ナトリウム水溶液を用いて希釈する。混合物を、EtOAc(3x)を用いて抽出し、混合有機層を1つにまとめ、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過し、溶媒を真空下で除去する。粗生成物を、ヘキサン勾配中、30分の5%〜100%EtOAcを用いてシリカゲル上で精製し、表題化合物を得る(5.222g、86%)。ES/MS(m/e):(79Br/81Br)586/588(M+H)。
【0049】
調製22
2−ベンズアミド−7a−(5−ブロモ−2−フルオロ−フェニル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−6−カルボン酸ベンジル
【化24】

1,1’−カルボニルジイミダゾール(2.87g、17.7ミリモル)を、3−(ベンゾイルカルバモチオイルアミノ)−3−(5−ブロモ−2−フルオロ−フェニル)−4−(ヒドロキシメチル)ピロリジン−1−カルボン酸ベンジル(5.198g、8.86ミリモル)のTHF(52mL)溶液に加える。混合物を室温で1.5時間攪拌し、次いで、反応物を、窒素雰囲気下で一晩、還流で加熱する。反応物を冷却し、水で希釈し、EtOAc(3x)を用いて抽出する。有機層を1つにまとめ、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過し、溶媒を真空下で除去する。粗生成物を、ヘキサン勾配中、30分の5%〜100%EtOAcを用いてシリカゲル上で精製し、表題化合物を得る(2.93g、58%)。ES/MS(m/e):(79Br/81Br).568/570(M+H)。
【0050】
調製23
N−[7a−(5−ブロモ−2−フルオロ−フェニル)−4a,5,6,7−テトラヒドロ−4H−ピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル]ベンズアミド
【化25】

ヨードトリメチルシラン(2.21mL、15.46ミリモル)を、室温の2−ベンズアミド−7a−(5−ブロモ−2−フルオロ−フェニル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−6−カルボン酸ベンジル(2.93g、5.15ミリモル)のアセトニトリル(44mL)溶液に滴下して加える。反応物を2時間、室温で攪拌し、溶媒を真空下で除去する。粗生成物を、3:1のDCM:メタノール、次いで2:1のDCM:7Nアンモニアのメタノール溶液を用いて、SCXカラムで精製し、表題化合物を得る(2.098g、94%)。ES/MS(m/e):(79Br/81Br)434/436(M+H)。
【0051】
調製24
2−ベンズアミド−7a−(5−ブロモ−2−フルオロ−フェニル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−6−カルボン酸tert−ブチル
【化26】

ジ−t−ブチルジカルボネート(1.16g、5.31ミリモル)及びトリエチルアミン(1.01mL、7.25ミリモル)を、N−[7a−(5−ブロモ−2−フルオロ−フェニル)−4a,5,6,7−テトラヒドロ−4H−ピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル]ベンズアミド(2.098g、4.83ミリモル)のDCM(48mL)溶液に加える。反応物を窒素雰囲気下で1時間、室温で攪拌する。溶媒を真空下で除去し、粗生成物を、ヘキサン勾配中、30分の5%〜100%EtOAcを用いてシリカゲル上で精製し、表題化合物を得る(2.556g、99%)。ES/MS(m/e):(79Br/81Br)534/536(M+H)。
【0052】
調製25
7a−(5−アミノ−2−フルオロ−フェニル)−2−ベンズアミド−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−6−カルボン酸tert−ブチル
【化27】

2−ベンズアミド−7a−(5−ブロモ−2−フルオロ−フェニル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−6−カルボン酸tert−ブチル(2.556g、4.8ミリモル)とトランス−N,N’−ジメチル−1,2−シクロヘキサンジアミン(150mg、1.1ミリモル)のエタノール(50mL)溶液を、アジ化ナトリウム(933mg、14.3ミリモル)で処置する。L−アスコルビン酸ナトリウム塩の水溶液(0.66M、3.2mL、2.1ミリモル)及び水(1mL)を加え、フラスコの蓋を窒素で洗浄する。混合物を、硫酸銅(II)五水和物の水溶液(0.33M、3.2mL、1.1ミリモル)で処置し、前もって加熱しておいたホットプレート上で混合物をただちに80℃で1.5時間、窒素雰囲気下で加熱する。均一な混合物を加熱で得る。反応物を冷却し、氷水で希釈し、混合物をEtOAc(3x)で抽出する。有機抽出物を1つにまとめ、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過し、溶媒を真空下で除去して粗アジ化産物を得る。粗アジ化産物を、冷エタノール(150mL)中で、10%パラジウム炭素(1g)と混合し、混合物を、真空/窒素を用いて洗浄し、次いで、真空/水素を用いて洗浄する。混合物を、室温で30psiの水素下、5時間攪拌する。反応物をベントし、珪藻土を通してろ過し、ろ過ケークをDCMでリンスする。溶媒を真空下でろ過物から除去し、粗生成物を、DCM中、50%EtOAcを用いてシリカゲル上で精製し、表題化合物を得る(2.014g、89%)。ES/MS(m/e):471(M+H)。
【0053】
調製26
N−[7a−(5−アミノ−2−フルオロ−フェニル)−4a,5,6,7−テトラヒドロ−4H−ピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル]ベンズアミド
【化28】

トリフルオロ酢酸(10mL)を、7a−(5−アミノ−2−フルオロ−フェニル)−2−ベンズアミド−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−6−カルボン酸tert−ブチル(2.013g、4.28ミリモル)のDCM(30mL)溶液に加え、混合物を4時間、窒素雰囲気下、室温で攪拌する。溶媒を真空下で除去し、粗生成物を、3:1のDCM:メタノール、次いで2:1のDCM:7Nアンモニアのメタノール溶液を用いて、SCXカラムで精製し、表題化合物を得る(1.555g、98%)。ES/MS(m/e):371(M+H)。
【0054】
調製27
N−[7a−(5−アミノ−2−フルオロ−フェニル)−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル]ベンズアミド
【化29】

N−[7a−(5−アミノ−2−フルオロ−フェニル)−4a,5,6,7−テトラヒドロ−4H−ピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル]ベンズアミド(705mg、1.90ミリモル)、5−フルオロ−2−クロロピリミジン(1.01g、7.61ミリモル)、及びDIPEA(1.66mL、9.52ミリモル)の溶液を、1,4−ジオキサン(20mL)中で加熱し、窒素雰囲気下で4時間、還流する。反応物を冷却し、水で希釈し、EtOAc(3×)を用いて抽出する。有機層を1つにまとめ、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過し、溶媒を真空下で除去し、粗生成物を得る。粗生成物を、ヘキサン勾配中、25分の5%〜100%EtOAcを用いてシリカゲル上で精製し、表題化合物を得る(590mg、66%)。ES/MS(m/e):467(M+H)。
【0055】
調製28
N−[(4aR,7aS)−7a−(5−アミノ−2−フルオロ−フェニル)−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル]ベンズアミド、(異性体1)
【化30】

ラセミ化合物のN−[7a−(5−アミノ−2−フルオロ−フェニル)−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル]ベンズアミド(1.694g、3.63ミリモル)を、キラルHPLC(カラム:Chiralcel OJ、8x35cm;溶離剤:90%メタノール(0.2%ジメチルエチルアミン)及び10%アセトニトリル;流速400mL/分、UV 280nm)により精製する。第一の溶離異性体(カラム:Chiralcel OJ−H 0.46x15cm;溶離剤:10:90アセトニトリル:メタノール(0.2%ジメチルエチルアミンを含む);流速0.6mL/分、UV 280nm)の解析により、R=6.70分で鏡像異性的に富化された(99%ee)鏡像異性体が確認される(723mg、43%)。ES/MS(m/e):467(M+H)。
【0056】
調製29
N−[3−[(4aR,7aS)−2−ベンズアミド−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−フルオロ−フェニル]−5−メトキシ−ピラジン−2−カルボキサミド、(異性体1)
【化31】

N−[(4aR,7aS)−7a−(5−アミノ−2−フルオロ−フェニル)−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル]ベンズアミド、異性体1(0.361g、0.77ミリモル)は、DCM(4mL)とDMF(0.5mL)の混合物中に溶解される。5−メトキシピラジン−2−カルボン酸(240mg、1.55ミリモル)、HOBT(210mg、1.55ミリモル)及びEDCI(300mg、1.55ミリモル)を混合物に加え、混合物を、一晩、室温で攪拌する。反応溶液を直接、12gのシリカゲルローディングカラム上に加え、40gのシリカゲルカラムを用いて精製し、0〜100%EtOAc/ヘキサン勾配で溶出する。生成物をEtOAc(200mL)に溶解し、1N NaOH(2×50mL)、及びブライン(1×50mL)で洗浄する。シリカゲル精製を上述のように繰り返し、表題化合物を得る(350mg、74%)。ES/MS(m/e):603(M+H)。
【0057】
調製30
5−アリル−6a−(2−フルオロフェニル)−3,3a,4,6−テトラヒドロ−1H−ピロロ[3,4−c]イソキサゾール
【化32】

フローケミストリー反応工程:343mlのシームレスのステンレススチール管型反応装置(O.D=1/8インチ)を、GCオーブンの内側に置き、20分間、20mL/分で、トルエンを用いてフラッシュする。窒素の背圧(720psig)を適用し、GCの温度を210℃に設定する。温度が210℃に達した後、2−(ジアリルアミノ)−1−(2−フルオロフェニル)エタノンオキシム(480.51g、1.74モル)のトルエン(5.81L)溶液を、連続モードで作動している高圧シリンジポンプの対を用いて、22.866mL/分で、反応装置にポンプで通し、15分の滞留時間を得る。すべてのストック溶液が消費された後、反応装置を、30分間、22.866mL/分でトルエンを用いてフラッシュする。GCオーブンの温度を25℃に設定し、完了溶液を回収し、真空下で濃縮する。溶媒を蒸発させ、残留物を塩化メチレン(2.5L)及び水(5L)に溶解する。塩酸を用いてpHを1に調節し、水層を分離させ、水酸化ナトリウムを用いて中和し、pHを10に調節する。水層を、MTBE(3x2.5L)を用いて抽出する。有機抽出物を1つにまとめ、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過し、乾燥するまで蒸着させ、粗表題化合物を得て(248g、47%)、さらなる精製を行うことなく使用する。ES/MS(m/e):249(M+1)。
【0058】
調製31
1−アリル−4−アミノ−4−(2−フルオロフェニル)ピロリジン−3−イル]メタノール
【化33】

亜鉛末(590g、9モル)を、5−アリル−6a−(2−フルオロフェニル)−3,3a,4,6−テトラヒドロ−1H−ピロロ[3,4−c]イソキサゾール(3559g、1.29モル)の、メタノール(2.85L)及び塩化アンモニウム飽和水溶液(3.56L)の混合溶液に添加し、混合物を16時間、70℃で加熱する。反応物を60℃まで冷却し、THF(2.85L)で希釈し、珪藻土上で熱したままろ過する。有機溶媒を除去するためにろ過物を蒸着させ、水性混合物をクエン酸10%w/w水溶液(4L)及びEtOAc(3.5L)を用いて希釈する。有機層を分離させ、水層をEtOAc(2x2L)で洗浄する。水層を水酸化ナトリウム50%w/wで中和し、pHを10に調節し、次いでEtOAc(2×1.5L)を用いて抽出する。有機抽出物を1つにまとめ、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過し、乾燥するまで蒸着させ、粗表題化合物を得る(299g、92%)。ES/MS(m/e):251(M+1)
【0059】
調製32
[(3R,4S)−1−アリル−4−アミノ−4−(2−フルオロフェニル)ピロリジン−3−イル]メタノール;2,3−ビス[(4−メチルベンゾイル)オキシ]ブタン二酸
【化34】

ジ−p−トルオイル−L−酒石酸(348.6g、884ミリモル)の1−メトキシ−2−プロパノール(1.13L)溶液を、従前に40℃まで加熱しておいた[(3R,4S)−1−アリル−4−アミノ−4−(2−フルオロフェニル)ピロリジン−3−イル]メタノール(225.9g、902ミリモル)の1−メトキシ−2−プロパノール(1.13L)溶液に加える。反応物を、22℃まで冷却し、18時間攪拌する。白色固形物をろ過により集め、1−メトキシ−2−プロパノール(600ml)を用いて洗浄する。回収した固形物を乾燥させ、表題化合物を得る(183.01g、31.8%)。ES/MS(m/e):251(M+1)。
【0060】
調製33
[(3R,4S)−1−アリル−4−アミノ−4−(2−フルオロフェニル)ピロリジン−3−イル]メタノール
【化35】

[(3R,4S)−1−アリル−4−アミノ−4−(2−フルオロフェニル)ピロリジン−3−イル]メタノール;2,3−ビス[(4−メチルベンゾイル)オキシ]ブタン二酸(211g、331ミリモル)を水(2.1L)及びEtOAc(2.3L)に溶解する。塩酸35%w/wを加えてpHを1に調節する。水層を分離させ、水酸化ナトリウム50%w/wを用いてpHを10に調節し、EtOAc(2×)で抽出する。水層のpHを、NaOH水溶液を用いて10に調節し、pH=10に水溶液のpHを維持したままMTBE(3×)を用いて抽出する。有機抽出物を1つにまとめ、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過し、乾燥するまで濃縮し、粗表題化合物を得る(73g、88%、94.8%ee)。生成物をキラルクロマトグラフィーにより解析する:Column AS−H、溶離剤10%イソプロピルアルコール、2%イソプロピルアミン;流速3mL/分、UVは220;35℃、100バールの圧力で、第二の溶離異性体として表題化合物を得る、R=2.26分。ES/MS(m/e):251(M+1)。
【0061】
調製34
N−[(4aR,7aS)−6−アリル−7a−(2−フルオロフェニル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル]ベンズアミド
【化36】

[(3R,4S)−1−アリル−4−アミノ−4−(2−フルオロフェニル)ピロリジン−3−イル]メタノール(129.7g、414ミリモル)のTHF(2,3L)溶液を窒素雰囲気下で0℃に冷却する。5℃未満の温度に維持しながらイソチオシアン酸ベンゾイル(61.5mL、456ミリモル)を加える。反応物を3時間かけて室温まで加温し、1,1’−カルボニルジイミダゾール(87.4g、538.9ミリモル)を加え、反応物を22℃で1時間攪拌し、次いで、70℃で16時間加熱する。反応混合物を22℃まで冷却し、溶媒を蒸発させる。残留物をEtOAc(1L)と水(1L)の中で分割させる。有機層を分離させ、水層をEtOAc(2×400mL)で抽出する。有機層を1つにまとめ、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過し、乾燥するまで蒸着させ、粗表題化合物を得る。粗生成物を、EtOAc/DCM 0〜40%DCMの勾配を用いて溶出するシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、残留溶媒を含有する淡黄色固形物として表題化合物を得る(170g、99%)。ES/MS(m/e):396(M+1)。
【0062】
調製35
N−[(4aR,7aS)−7a−(2−フルオロフェニル)−4a,5,6,7−テトラヒドロ−4H−ピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル]ベンズアミド
【化37】

2−メルカプト−安息香酸(122g、793ミリモル)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(4.15g、7.21ミリモル)、及び1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(3.14g、7.21ミリモル)を、N−[(4aR,7aS)−6−アリル−7a−(2−フルオロフェニル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル]ベンズアミド(178.21g、360ミリモル)の無水2−メチルテトラヒドロフラン(1.96L)溶液に、窒素雰囲気下で加える。溶液を真空/窒素サイクルを3回行って脱ガスし、次いで15分間、窒素を反応物に通気する。反応物に窒素を通気しながら、反応混合物を40℃まで加熱する。反応物が40℃に達したとき、通気を止め、反応混合物を窒素雰囲気下で3時間、40℃で攪拌する。反応物を22℃まで冷却し、水(2L)で希釈する。HCl(5M)溶液を加えてpHを1に調節する。水層を分離させ、追加のEtOAc(2×800mL)で洗浄する。水層のpHを、水酸化ナトリウム50%w/wを用いて10に調節し、次いでEtOAc(10L)を用いて抽出する。水層を追加のEtOAc(2×750mL)を用いて洗浄する。有機抽出物を1つにまとめ、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過し、乾燥するまで蒸着させ、淡黄色固形物として粗表題化合物を得る(124.7g、97%)。ES/MS(m/e):356(M+1)。
【0063】
調製36
N−[(4aR,7aS)−7a−(2−フルオロフェニル)−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル]ベンズアミド
【化38】

N−[(4aR,7aS)−7a−(2−フルオロフェニル)−4a,5,6,7−テトラヒドロ−4H−ピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル]ベンズアミド(124.7g、256ミリモル)、DIPEA(67mL)、5−フルオロ−2−クロロピリミジン(29.3ml、307ミリモル)のN−メチルピロリドン(997mL)溶液を16時間、100℃に加熱する。反応物を22℃に冷却し、15℃未満の温度を維持しながら、10℃の冷水(10L)へと注ぐ。淡いクリーム状の固形物をろ過により回収し、追加の水で洗浄する。湿性固形物をEtOAc(2L)中に溶解し、分離漏斗に移す。塩化ナトリウム水溶液5%w/w(1L)を加え、有機層を分離させ、硫酸ナトリウム上で脱水し、ろ過し、ろ過物を減圧下で濃縮させる。生成物を、0〜40%のEtOAc/イソヘキサンの勾配を用いたシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、淡黄色の固形物として表題化合物を得る(116g、70%)。ES/MS(m/e):452(M+1)。
【0064】
調製37
(4aR,7aS)−7a−(2−フルオロフェニル)−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−アミン
【化39】

水酸化リチウム(9.26g、386ミリモル)を、N−[(4aR,7aS)−7a−(2−フルオロフェニル)−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル]ベンズアミド(158.6g、351.6ミリモル)の混合物に、メタノール(1.6L)中で加える。混合物を4時間、70℃に加熱し、次いで22℃に冷却する。反応混合物を真空下で蒸着させ、黄色残留物を得る。残留物を水(1L)及びEtOAc(750mL)中で分割させる。HCl(5M水溶液)を加えてpHを1に調節する。水層を分離させ、有機層をEtOAc(2×200mL)で洗浄する。水層のpHを水酸化ナトリウム50%w/w水溶液を用いてpH=10に調節し、EtOAc(3×1L)を用いて抽出する。有機抽出物を1つにまとめ、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮し、淡黄色固形物として粗表題化合物を得る(133.3g、99%、12%残留EtOAcを含有する)。ES/MS(m/e):348(M+1)。
【0065】
調製38
(4aR,7aS)−7a−(5−アミノ−2−フルオロフェニル)−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−アミン
【化40】

硫酸(33.4ml、626.6ミリモル)を、(4aR,7aS)−7a−(2−フルオロフェニル)−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−アミン(45.8g、125,3ミリモル)のトリフルオロ酢酸(626mL)溶液に加える。混合物を0℃に冷却し、20分間攪拌する。発煙硝酸(6.2mL、144.1ミリモル)を加え、反応混合物を22℃に加温し、3時間攪拌する。反応混合物を蒸着させ、MTBE(250mL)を加え、2回蒸着させる。残留物を真空下で恒量まで乾燥させ、次いで水(147mL)及びエタノール(885mL)に溶解させ、15分間、窒素を通気させながら脱ガスする。溶液を耐圧反応装置へと移し、10%Pd/C 糊状 87L(6.6g、6.27ミリモル)を加える。混合物を追加のエタノール(700mL)を用いて希釈し、16時間、80psiで水素を用いて与圧する。反応混合物をろ過し、次いで10%Pd/C 糊状 87L(6.6g、6.27ミリモル)の第二のキャタリストチャージを加え、混合物を80psiに与圧し、耐圧反応装置中で3日間攪拌する。反応混合物を窒素で洗浄し、珪藻土上でろ過する。ろ過物を蒸着させ、残留物を水(200mL)とEtOAc(200mL)の間で分割させる。水層を分離させ、5℃に冷却し、水酸化アンモニウム15%w/wを用いて中和する。水層を、EtOAc(3×150mL)を用いて抽出する。有機層を1つにまとめ、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過し、減圧下で蒸着させ、淡褐色固形物として表題化合物を得る(47.7g、99%、残留EtOAcを含有する)。ES/MS(m/e):363(M+1)。
【実施例】
【0066】
実施例1
N−[3−[(4aR,7aS)−2−アミノ−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−フルオロ−フェニル]−5−メトキシ−ピラジン−2−カルボキサミド塩酸塩
【化41】

N−[3−[(4aR,7aS)−2−ベンズアミド−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−フルオロ−フェニル]−5−メトキシ−ピラジン−2−カルボキサミド、異性体1(0.350g、0.58ミリモル)をTHF(2mL)に溶解し、次いで、メタノール(4mL)及びエタノール(4mL)を加える。O−メチルヒドロキシルアミン塩酸塩(495mg、5.81ミリモル)及びピリジン(470μL、5.81ミリモル)を混合物に加え、反応物を50℃に加温し、一晩攪拌する。シリカゲル(約10g)を反応物に加え、混合物を濃縮する。シリカゲル上で乾燥させた試料を空のカートリッジ上にロードし、DCM中、7Nアンモニアメタノールの0〜10%勾配を用いて溶出し精製する。生成物を、3:1のDCM:メタノール、次いで2:1のDCM:7Nアンモニアのメタノール溶液を用いたSCXカラム上で2回目の精製を行う。生成物を、DCM中、7Nアンモニアメタノールの0%〜10%の勾配を用いてシリカゲル上で最後に精製し、表題化合物の遊離塩基を得る。この物質をDCM(5mL)に溶解し、1M塩化水素のジエチルエーテル溶液(0.20mL、660μモル)を加える。溶媒を真空下で除去し、表題化合物を得る(71mg、23%)。ES/MS(m/e):498(M+H)。
【0067】
粉末X線回析(XRD)
結晶質固形物のXRDパターンは、35kV及び50mAで操作する、CuKa線λ=1.54060Åを備えたBruker D4 Endeavor粉末X線回析装置及びVantec検出器で得る。試料は、工程サイズが2θの0.009°、及びスキャン速度が0.5秒/工程で、2θで4〜40°の間で、ならびに0.6mmの発散(divergence)、5.28の固定アンチスキャッター(anti−scatter)、及び9.5mmの検出スリットで、スキャンされる。乾燥粉末は石英の試料容器上にパックされ、ガラススライドを用いて滑面を得る。結晶形の回析パターンは大気温度及び相対湿度で集められる。結晶学の分野において、任意の所与の結晶形に関し、回析ピークの相対強度は、たとえば結晶形態及び傾向などの因子に起因する優先される方向性によって変化しうることが良く知られている。優先される方向性の効果が存在する場合、ピーク強度は変化するが、多形体の特徴的なピーク位置は変化しない。たとえば、The United States Pharmacopeia #23, National Formulary #18, pages 1843-1844, 1995を参照のこと。さらに、結晶学分野において、任意の所与の結晶形に関し、角度のピーク位置は若干変化し得ることが良く知られている。たとえば、ピーク位置は、試料が分析される温度もしくは湿度、試料の移動、または内部標準の有無によって変わり得る。本発明の場合、指定された結晶形の明確な特定を阻害することなく、2θで±0.2のピーク位置の変動性により、これらの潜在的な変化が考慮されている。結晶形の確認は、特徴的なピーク(°2θの単位)、典型的にはより突出したピークの任意の固有の組み合わせに基づき行われ得る。大気温度及び相対湿度で集められた結晶形回析パターンは、8.853及び26.774度2シータでのNIST675標準ピークに基づき調節される。
【0068】
実施例1a
結晶形1のN−[3−[(4aR,7aS)−2−アミノ−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−フルオロ−フェニル]−5−メトキシ−ピラジン−2−カルボキサミド
【化42】

N−[3−[(4aR,7aS)−2−アミノ−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−フルオロ−フェニル]−5−メトキシ−ピラジン−2−カルボキサミド(201mg、403.20μモル)を、4mLの酢酸ブチルと混合し、120℃の攪拌プレート(stirplate)上で攪拌する。固形物は約5分後に溶解し、透明無色の溶液となる。次いで試料を室温まで冷却し、白色固形物が溶液から分離して沈殿する。次いで試料を室温で10分間、スラリー化させ、白色固形物の厚いスラリーが形成される。白色固形物を真空ろ過により単離し、5分間、エアースチーム下で乾燥させる。得られた白色固形物のケークを、60℃の真空オーブン中で風袋計量したバイアル中に週末にかけて置き表題化合物を得る(110mg)。結晶形1のN−[3−[(4aR,7aS)−2−アミノ−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−フルオロ−フェニル]−5−メトキシ−ピラジン−2−カルボキサミドは室温、及び約15%未満の相対湿度で安定な結晶形である。
【0069】
実施例1b
結晶形2のN−[3−[(4aR,7aS)−2−アミノ−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−フルオロ−フェニル]−5−メトキシ−ピラジン−2−カルボキサミド(水和物)
塩化オキサリル(888μL、10.2ミリモル)を、5−メトキシピラジン−2−カルボン酸(1.6g、10.2ミリモル)のアセトニトリル(53mL)及びDMF(848μL)の溶液に加える。15分後、新たに調製した溶液を、あらかじめ50℃に加熱した、(4aR,7aS)−7a−(5−アミノ−2−フルオロフェニル)−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−アミン(2.65g、7.3ミリモル)の、水(53mL)及びエタノール(53mL)の混合溶液に加える。反応混合物を1時間、50℃で攪拌し、22℃に冷却し、次いでこの温度で一晩攪拌する。有機溶媒を真空下で蒸発させ、水性混合物を水酸化ナトリウム50%w/w水溶液で処置してpH=10に調節する。淡いクリーム状の固形物を単離し、追加の水で洗浄する。固形物をイソプロピルアルコール(2x)で希釈し、溶媒を蒸発させる。粗物質を、アンモニア処理したメタノール(2N)/塩化メチレンの勾配を用いたシリカゲルクロマトグラフィーにより精製する。所望される生成物を含有する分画を1つにまとめ、溶媒を蒸発させ、オフホワイトの固形物として表題化合物を得る(1.9g,52%)。ES/MS(m/e):499(M+1)。
【0070】
結晶形2のN−[3−[(4aR,7aS)−2−アミノ−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−フルオロ−フェニル]−5−メトキシ−ピラジン−2−カルボキサミド(水和物)の他の調製法
アセトニトリル(500mL)をDMF(19.2mL、248.9ミリモル)に加える。塩化オキサリル(39.3g、309.63ミリモル)、次いで5−メトキシピラジン−2−カルボン酸(46.0g、298.4ミリモル)を、DMF/アセトニトリル溶液に加える。分離フラスコにおいて、(4aR,7aS)−7a−(5−アミノ−2−フルオロフェニル)−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−アミン(56.8g、156.75ミリモル)の水溶液をアセトニトリル(500mL)に加え、水酸化アンモニウム(95mL)を用いてpHを9に調節する。次いで、この混合物を50〜55℃に加熱する。塩化オキサリル溶液を滴下して加え、混合物を3時間攪拌する。水酸化アンモニウムを用いてpHを8〜9に調節する。得られた沈殿物をろ過し、水で洗浄し、乾燥させて表題化合物を得る(123g)。固形物を1.5時間、アセトン(250mL)中でスラリー化させ、ろ過する。湿性ケークをアセトンで洗浄し、表題化合物を得る(110g、HPLCにより90.5%の純度)。THF(1L)及び活性炭(9g)を当該固形物に加え、混合物を一晩加熱して還流する。混合物を、珪藻土を通してろ過し、THF(150mL)で洗浄する。有機溶液を10体積まで濃縮し、60℃に加熱する。水(430mL)を加え、混合物を8時間、60℃で攪拌する。混合物を室温に冷却し、10時間攪拌する。得られた固形物をろ過し、THF/水(7:6)で洗浄し、乾燥させ、表題化合物を得る(69g、88%)。LC−MS:m/z=499(M+1)、純度:98.3%。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δppm 2.99 - 3.07 (m, 2 H) 3.07 - 3.14 (m, 1 H) 3.58 - 3.67 (m, 1 H) 3.68 - 3.76 (m, 1 H) 3.76 - 3.84 (m, 1 H) 4.02 (s, 3 H) 4.07 (d, J=10.92 Hz, 1 H) 6.08 (s, 2 H) 7.19 (dd, J=11.98, 8.72 Hz, 1 H) 7.78 - 7.89 (m, 2 H) 8.41 (s, 1 H) 8.44 (s, 2 H) 8.88 (s, 1 H) 10.60 (s, 1 H)。
【0071】
結晶形2のN−[3−[(4aR,7aS)−2−アミノ−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−フルオロ−フェニル]−5−メトキシ−ピラジン−2−カルボキサミド(水和物)の調製に関する一般的手順
N−[3−[(4aR,7aS)−2−アミノ−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−フルオロ−フェニル]−5−メトキシ−ピラジン−2−カルボキサミドをTHF中、約23℃、約71mg/mL溶媒の濃度でスラリー化する。約60℃〜約63℃で溶解が発生するまで攪拌しながらスラリーを加熱する。約95:5のTHF:水溶媒の比率を得るまで熱い溶液に水を加える。結晶形2のN−[3−[(4aR,7aS)−2−アミノ−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−フルオロ−フェニル]−5−メトキシ−ピラジン−2−カルボキサミドの種晶を加える(約3重量%ロード)。得られた薄いスラリーを約20分間、約60℃〜約63℃に維持し、次いで、約2〜約4時間をかけて、約5.3〜約5.5体積の水を加え、約69:31のTHF:水溶媒の比率を得る。次いでスラリーを約30分間、約60℃〜約63℃に維持し、次いで約1時間をかけて約23℃に冷却し、次いで約8〜12時間、攪拌する。次いでスラリーをろ過し、THF:水(35:65)を用いて軽くリンスし、低真空下、約40℃で約8〜12時間、乾燥させ、水和された所望の結晶形2 N−[3−[(4aR,7aS)−2−アミノ−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−フルオロ−フェニル]−5−メトキシ−ピラジン−2−カルボキサミドを得る。
【0072】
結晶形2のN−[3−[(4aR,7aS)−2−アミノ−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−フルオロ−フェニル]−5−メトキシ−ピラジン−2−カルボキサミドの調製試料は、以下の表1に記載されるように、回析ピーク(2シータ値)を有するとして、CuKa線を用いたXRDパターンにより特徴解析される。具体的には、当該パターンは、0.2度の回析角に対する公差で、18.6°、19.3°、及び26.7°からなる群から選択されるピークのうち1つ以上と組み合わせて、11.8°でピークを有する。
表1:実施例1bの結晶形2の粉末X線回析ピーク
【表1】
【0073】
結晶形2のN−[3−[(4aR,7aS)−2−アミノ−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−フルオロ−フェニル]−5−メトキシ−ピラジン−2−カルボキサミドは、室温及び約15%超の相対湿度で安定な結晶形である。
【0074】
実施例1c
結晶形3のN−[3−[(4aR,7aS)−2−アミノ−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−フルオロ−フェニル]−5−メトキシ−ピラジン−2−カルボキサミド
【0075】
N−[3−[(4aR,7aS)−2−アミノ−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−フルオロ−フェニル]−5−メトキシ−ピラジン−2−カルボキサミドを熱重量分析のパンにロードし、約170℃に加熱し、約5分間、170℃で維持する。室温に冷却し、表題化合物を得る。
【0076】
結晶形3のN−[3−[(4aR,7aS)−2−アミノ−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−フルオロ−フェニル]−5−メトキシ−ピラジン−2−カルボキサミドの他の調製法。
【0077】
N−[3−[(4aR,7aS)−2−アミノ−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−フルオロ−フェニル]−5−メトキシ−ピラジン−2−カルボキサミド(121mg)とアセトニトリル(5mL)をバイアル中で混合し、90℃の攪拌プレート上で加熱する。約30分後、固形物のほとんどが溶解し、濁った溶液を得る。結晶形3の種晶を加え、試料を約90℃で約1時間、攪拌する。加熱器を取り除き、混合物を攪拌して、明白色の固形物を得る。固形物を真空ろ過により単離し、約10分間、エアースチーム下で乾燥させ、次いで約8〜12時間、約80℃、低真空下で乾燥させ、表題化合物を得る。
【0078】
結晶形3のN−[3−[(4aR,7aS)−2−アミノ−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−フルオロ−フェニル]−5−メトキシ−ピラジン−2−カルボキサミドの調製試料は、以下の表2に記載されるように、回析ピーク(2シータ値)を有するとして、CuKa線を用いたXRDパターンにより特徴解析される。具体的には、当該パターンは、0.2度の回析角に対する公差で、18.1°、27.0°、及び19.7°からなる群から選択されるピークのうち1つ以上と組み合わせて、15.7°でピークを有する。
表2:実施例1cの結晶形3の粉末X線回析ピーク
【表2】
【0079】
In vitroアッセイの手順
in vitroの酵素分析及び細胞分析に関し、被験化合物をDMSO中で調製し、10mMのストック溶液を作成する。in vitroの酵素分析及び全細胞分析を行う前に、10mM〜0.05nMの範囲の最終化合物濃度での10点希釈曲線を作成するために、96ウェルの丸底プレート中でストック溶液はDMSO中で連続希釈される。
【0080】
in vitroプロテアーゼ阻害分析
ヒトBACE1の発現
ヒトBACE1(アクセッション番号:AF190725)は、全脳cDNAからRT−PCRによりクローニングされる。アミノ酸配列番号1〜460に対応するヌクレオチド配列を、ヒトIgG(Fc)ポリペプチドをコードするcDNAへと挿入する(Vasser, et al., Science, 286, 735-741 (1999))。このBACE1(1〜460)とヒトFcの融合タンパク質を、huBACE1:Fcと名付け、pJB02ベクター中に構築させる。ヒトBACE1(1〜460):Fc(huBACE1:Fc)を、HEK293細胞中で一過性発現させる。各構築物の250μgのcDNAをFugene6と混合し、1リットルのHEK293細胞に添加する。トランスフェクションの4日後、馴化培地を精製のために回収する。
【0081】
huBACE1:Fcの精製
huBACE1:Fcは、プロテインAクロマトグラフィーにより精製される。酵素は、小さなアリコート中、−80℃で保存される。
【0082】
BACE1 FRET分析
被験化合物の連続希釈は上述のように調製される。KHPO緩衝液中で化合物はさらに20x希釈される。各希釈の10μLを、反応混合液(25μLの50mMKHPO、pH4.6、1mM TRITON(登録商標)X−100、1mg/mL ウシ血清アルブミン、及び15μMのFRET基質)を含有する、対応するタンパク質低結合黒色プレートのA列〜H列の各ウェルに加える(Yang, et. al., J. Neurochemistry, 91(6) 1249-59 (2004)を参照のこと)。内容物を10分間、プレート振とう器上で良く混合する。KHPO緩衝液中の200pM ヒトBACE(1〜460):Fc(Vasser, et al., Science, 286, 735-741 (1999)を参照のこと)の15μLを、基質と被験化合物を含有するプレートに加え、反応を開始させる。0時点での混合物のRFUを、プレート振とう器上で軽く混合した後、励起波長355nm、及び発光波長460nmで記録する。反応プレートをアルミニウムホイルで覆い、16〜24時間、室温で、加湿された暗いオーブン内で維持される。インキュベーション終了時のRFUを、0時点で用いられたものと同じ励起及び発光の設定で記録する。0時点と、インキュベーション終了時のRFUの差は、化合物処置を行った下でのBACE1活性を表す。RFUの差は、阻害剤濃度に対してプロットされ、曲線は、4パラメーターロジスティック方程式に適合され、EC50値及びIC50値を得る(Sinha, et al., Nature, 402, 537-540 (2000)を参照のこと)。
【0083】
実施例1の化合物は、原則的に上述のように検証され、0.615nMのBACE1 IC50(±0.101、n=5)[平均±SEM;SEM=平均標準誤差]を示した。このデータは、実施例1の化合物が、in vitroで精製組み換えBACE1酵素活性を阻害したことを示す。
【0084】
PDAPP初代神経細胞分析
また、確認的全細胞分析を、PDAPPトランスジェニック胎児マウスから作製された初代神経細胞培養中で行う。初代皮質神経細胞は、胎児16日目のPDAPP胎芽から調製され、96ウェルプレート中で培養される(10%FBSを添加したDMEM/F12(1:1)中、15x10細胞/ウェル)。in vitroで2日後、培養培地を、B27サプリメント及び2μM(最終)のAra−C(Sigma社、C1768)を含有する血清フリーのDMEM/F12(1:1)と置き換える。in vitroで5日目、神経細胞を37℃で24時間、所望される濃度の阻害剤(DMSO希釈されている)の存在下/非存在下でインキュベートする。インキュベーション終了時、馴化培地を、たとえばAベータペプチドの分析により、ベータ−セクレターゼ活性の兆候に関して分析する。総Aベータペプチド(Aベータ 1−x)を、捕捉抗体としてモノクローナル抗体266を、及び報告抗体としてビオチニル化3D6を用いたサンドイッチELISAにより計測する。あるいは、Aベータ1〜40ペプチド及びAベータ1〜42ペプチドを、Aベータ1〜40に対する捕捉抗体としてモノクローナル抗体2G3を、Aベータ1〜42に対する捕捉抗体としてモノクローナル抗体21F12を用いたサンドイッチELISAにより計測する。Aベータ1〜40及びAベータ1〜42の両方のELISAとも、報告抗体としてビオチニル化3D6を使用する。化合物処置後の馴化培地中に放出されたAベータの濃度は、かかる条件下でのBACE1活性に相当する。10点阻害曲線をプロットし、及び4パラメーターロジスティック方程式に適合することにより、Aベータ低減効果に関するEC50値及びIC50値が得られる。実施例1の化合物は原則的に上述のように検証され、Aベータ低減効果に関し以下の活性を示す。
表3
【表3】

平均±SEM;SEM=平均の標準誤差。
【0085】
これらのデータから、実施例1の化合物は全細胞において、Aベータ産生を阻害することが示される。
【0086】
ベータ−セクレターゼのIn vivo阻害
マウス、モルモット、イヌ、及びサルをはじめとする数種類の動物モデルを用いて、化合物処置後のベータ−セクレターゼ活性のin vivoでの阻害に関しスクリーニングを行ってもよい。本発明に用いられる動物は、野生型動物であっても、トランスジェニック動物であっても、または遺伝子ノックアウト動物であってもよい。たとえば、PDAPPマウスモデルは、Games et al., Nature 373, 523-527 (1995)に記載されるように作製され、他の非トランスジェニック動物または遺伝子ノックアウト動物は、阻害化合物の存在下での、Aベータ及びsAPPベータ産生のin vivo阻害の解析に有用である。一般的に、2〜12か月齢のPDAPPマウス、遺伝子ノックアウトマウス、または非トランスジェニック動物に、たとえばトウモロコシ油、シクロデキストラン、リン酸緩衝液、PHARMASOLVE(登録商標)、または他の適切なビヒクルなどのビヒクル内に製剤化された化合物が投与される。化合物投与の1〜24時間後、動物は殺処分され、脳ならびに脳脊髄液及び血漿が、Aベータ、C99、及びsAPP断片の解析のために回収される(May, et al., Journal of Neuroscience, 31, 16507-16516 (2011)を参照のこと)。
【0087】
標準的なin vivo薬理学的実験に対し、動物は、様々な濃度の化合物を用いて投与され、同時に投与されたビヒクル処置対照群と比較される。基準値を確立するための0時点から始まり、実験経過の間に、脳組織、血漿、または脳脊髄液が選択された動物から採取される。化合物または適切なビヒクルが、他の群に投与され、投与後、様々な時点で殺処分される。脳組織、血漿、または脳脊髄液は選択された動物から採取され、Aベータペプチド、sAPPベータ、及び他のAPP断片をはじめとするAPP開裂産物の存在に関し、たとえば特異的サンドイッチELISA分析などにより解析される。検証期間の終了時に動物は殺処分され、必要に応じて、脳組織、血漿または脳脊髄液がAベータペプチド、C99、及びsAPPベータの存在に関し解析される。APPトランスジェニック動物の脳組織もまた、化合物処置後のベータ−アミロイドプラークの量に関し解析されてもよい。本明細書において用いられる場合、「Aベータ 1−xペプチド」とは、1残基から始まり、28残基超のC末端で終わるAベータ種の総和を指す。これによりAベータ種の大部分が検出され、しばしば、「総Aベータ」とも呼称される。
【0088】
阻害化合物を投与される動物(PDAPPまたは他のAPPトランスジェニックマウスまたは非トランスジェニックマウス)は、ビヒクル処置対照またはゼロ時対照と比較し、脳組織、血漿、または脳脊髄液中で、AベータまたはsAPPベータの低下を示すことができ、及び脳組織におけるベータアミロイドプラークの減少を示すことができる。実施例1に関し、0.3、1、または3mg/kgの化合物の経口投与の3時間後、Aベータ 1−xペプチド値は、ビヒクル処置マウスと比較し、それぞれ脳の海馬においておよそ31%、39%、及び61%低下し、大脳皮質においておよそ28%、42%、及び64%低下する。
【0089】
in vitroでのBACE酵素に対する実施例1の活性を考慮すると、これらAベータ低減効果はin vivoでのBACE阻害と一致しており、さらには、N−[3−[(4aR,7aS)−2−アミノ−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−フルオロ−フェニル]−5−メトキシ−ピラジン−2−カルボキサミドのCNSへの浸透が示唆される。
【0090】
これら実験から、本発明化合物はBACEを阻害し、従って、Aベータ値の低減に有用であることが示される。

本発明は以下の態様を含む。
[1]
結晶質である、以下の式:
【化43】

の化合物。
[2]
結晶形2のN−[3−[(4aR,7aS)−2−アミノ−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−フルオロ−フェニル]−5−メトキシ−ピラジン−2−カルボキサミドである、[1]に記載の結晶質化合物。
[3]
0.2度の回析角に対する公差で、18.6°、19.3°、及び26.7°からなる群から選択されるピークのうち1つ以上と組み合わせて、11.8°の回析角2シータでのX線回析スペクトラムにおける実質的なピークにより特徴づけられる、[1]または[2]のいずれかに記載の結晶質化合物。
[4]
結晶形1のN−[3−[(4aR,7aS)−2−アミノ−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−フルオロ−フェニル]−5−メトキシ−ピラジン−2−カルボキサミドである、[1]に記載の結晶質化合物。
[5]
結晶形3のN−[3−[(4aR,7aS)−2−アミノ−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−フルオロ−フェニル]−5−メトキシ−ピラジン−2−カルボキサミドである、[1]に記載の結晶質化合物。
[6]
0.2度の回析角に対する公差で、18.1°、27.0°、及び19.7°からなる群から選択されるピークのうち1つ以上と組み合わせて、15.7°の回析角2シータでのX線回析スペクトラムにおける実質的なピークにより特徴づけられる、[1]または[5]に記載の結晶質化合物。
[7]
[1]〜[6]のいずれかに記載の化合物の有効量を、かかる治療を必要としている患者に投与することを含む、患者において、アルツハイマー病を治療する方法。
[8]
[1]〜[6]のいずれか1項に記載の化合物の有効量を、かかる治療を必要としている患者に投与することを含む、患者において、軽度認知障害がアルツハイマー病へと進行することを予防する方法。
[9]
療法における使用のための、[1]〜[6]のいずれかに記載の化合物。
[10]
アルツハイマー病の治療における使用のための、[1]〜[6]のいずれかに記載の化合物。
[11]
軽度認知障害からアルツハイマー病への進行の予防における使用のための、[1]〜[6]のいずれかに記載の化合物。
[12]
1つ以上の薬学的に受容可能な担体、希釈剤、または賦形剤と、[1]〜[6]のいずれかに記載の化合物を含有する、医薬組成物。