(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る穿孔装置および穿孔装置の制御方法について説明する。この穿孔装置は、コンクリート等の穿孔対象物に対して穿孔を行うものである。特に、本穿孔装置は、ストッパーによって電動ドリルの前進が規制されたときに、電動ドリルの駆動を強制停止させることで、ストッパーによって規制される穿孔深さを超えて穿孔が行われないようにしたものである(ストッパーによる前進規制時の強制停止機能)。なお、以下の説明では、説明の便宜上、「前後方向」、「左右方向」および「上下方向」を、各図に示す通りに規定する。
【0018】
図1に示すように、穿孔装置1は、コンクリート等の穿孔対象物Cを湿式で穿孔を行うドリルビット2と、ドリルビット2を回転させる電動ドリル3と、ドリルビット2と電動ドリル3との間に介設され、ドリルビット2を介して穿孔部分に冷却剤を供給する冷却剤供給アタッチメント4と、電動ドリル3に装着され、電動ドリル3による穿孔対象物Cに対しての穿孔をガイドするガイドアタッチメント5と、を備えている。また、穿孔装置1は、冷却剤供給アタッチメント4に冷却剤を供給する冷却剤供給手段6と、穿孔部分に供給された冷却剤等を、ガイドアタッチメント5を介して吸引回収する冷却剤回収手段7と、を備えている。
【0019】
また、冷却剤供給アタッチメント4の基部側には、冷却剤供給手段6に連なる供給チューブ9が接続されている。一方、ガイドアタッチメント5の先端側には、冷却剤回収手段7に連なる回収チューブ10が接続されている。
【0020】
冷却剤供給手段6は、冷却剤を貯留する供給タンク11と、供給タンク11から冷却剤供給アタッチメント4に冷却剤を圧送して供給する圧送装置12と、を備えている。圧送装置12を駆動すると、供給タンク11内の冷却剤が供給チューブ9を介して冷却剤供給アタッチメント4に圧送される。これによって、冷却剤が、冷却剤供給アタッチメント4およびドリルビット2を介して、穿孔部分に供給される。なお、冷却剤は、作業後の乾燥(気化)を促進すべくアルコールが混合したものを用いることが好ましい。
【0021】
冷却剤回収手段7は、穿孔部分に供給された冷却剤を穿孔対象物Cの研削粉と共に吸引する吸引ポンプ16と、粉塵混じりの冷却剤を貯留する回収タンク17と、を備えている。吸引ポンプ16を駆動すると、回収チューブ10を介して、穿孔部分の冷却剤および研削粉が吸引される。これにより、穿孔部分の冷却剤および研削粉が、回収チューブ10を介して、回収タンク17に回収される。
【0022】
穿孔作業では、図外の制御部による制御の下、電動ドリル3の駆動に連動して、圧送装置12および吸引ポンプ16を駆動する。すなわち、電動ドリル3の駆動開始と同時に、圧送装置12および吸引ポンプ16の駆動を開始する。これによって、穿孔部分に対し冷却剤の供給および回収を行いながら、湿式で穿孔が行われる。また、圧送装置12および吸引ポンプ16の駆動停止は、電動ドリル3の駆動停止から所定の遅延時間遅れて実施される。これによって、穿孔終了後に、穿孔部分の研削粉が除去されて、穿孔した孔内が洗浄される。なお、本実施形態では、圧送装置12および吸引ポンプ16の駆動停止の遅延時間を、20秒以内とする。また、本実施形態では、吸引ポンプ16の駆動停止の遅延時間が、圧送装置12の駆動停止の遅延時間より若干長くなっている。例えば、圧送装置12の駆動停止の遅延時間を5秒とし、吸引ポンプ16の駆動停止の遅延時間を6秒とする。
【0023】
ドリルビット2は、コア部を残すようにして穿孔対象物Cを断面リング状に研削するダイヤモンドコアビットであって、穿孔対象物Cを穿孔する切刃21(ダイヤモンド切刃)と、先端部(前方端部)に切刃21を保持すると共に基端部(後方端部)で冷却剤供給アタッチメント4に着脱自在に装着されるシャンク22と、を有している。ドリルビット2の軸心部分には、穿孔された穿孔対象物Cのコア片を呼び込むと共に、冷却剤の流路となるビット内流路23が形成されている。冷却剤は、ビット内流路23を通って切刃21の先端に導かれ、他方、研削された穿孔対象物Cのコア片は、相対的に切刃21からビット内流路23に導かれる。
【0024】
切刃21は、コア部を残すようにして穿孔対象物Cを研削すべく円筒状に形成されると共に、シャンク22に比べて幾分太径に形成されている。シャンク22は、前端部に切刃21が固定され、後端部に筒状の接合凹部24が形成されている。接合凹部24の内周面には、雌ネジが形成され、出力軸44の接合凸部78(
図2参照)に螺合する。これにより、ドリルビット2が冷却剤供給アタッチメント4に着脱自在に装着されるようになっている。
【0025】
電動ドリル3は、常用電源で駆動するモーターおよびモーターの回転を減速して出力する減速機(いずれも図示省略)が収容されたモーターハウジング31と、モーターハウジング31から後方に延びるグリップ部32と、を有している。減速機から延びる主軸34は、モーターハウジング31の前方端において、冷却剤供給アタッチメント4に係合している。また、グリップ部32には、作業者が電動ドリル3の駆動の開始・停止を制御するトリガースイッチ35が設けられている。なお、本実施形態の電動ドリル3には、慣性によるドリルビット2の回転を阻止する機構が組み込まれている。よって、トリガースイッチ35をOFFにする(トリガースイッチ35を戻す)と、それと同時にドリルビット2の回転が停止する構成となっている。
【0026】
また、モーターハウジング31の側面には、電動ドリル3の駆動を強制停止させる停止ボタン36(強制停止手段)が設けられている。詳細は後述するが、停止ボタン36は、ストッパーによって電動ドリル3の穿孔方向への前進が規制されたとき、ガイドアタッチメント5と係合して押下される構成となっている。これによって、ストッパーによって電動ドリル3の穿孔方向への前進が規制されたとき、電動ドリル3の駆動を強制停止させる機能(以下、前進規制時の強制停止機能)を実現している。
【0027】
次に
図2を参照して、冷却剤供給アタッチメント4について説明する。
図2に示すように、冷却剤供給アタッチメント4は、円筒形の外観を有し、モーターハウジング31に固定されるアタッチメントケース41と、アタッチメントケース41に回転自在に支持され、電動ドリル3の主軸34が接続される入力軸42と、入力軸42と一体回転自在に且つ軸方向にスライド自在に保持されると共に、上記したビット内流路23に連通する出力軸内流路43を形成した出力軸44と、入力軸42に対し出力軸44を一体回転自在に且つ軸方向にスライド自在に保持するための連結キャップ45と、を備えている。
また、入力軸42と出力軸44との間隙には、加圧流路46が構成されており、冷却剤供給アタッチメント4は、この加圧流路46と出力軸内流路43との連通または遮蔽を行う弁機構47を、更に備えている。
【0028】
アタッチメントケース41は、後端部にモーターハウジング31に装着するための鍔状の環状凸部を有し、全体として略円筒形状をなしている。また、アタッチメントケース41の前後中間部には、アタッチメントケース41を径方向に貫通する冷却剤導入口51が形成され、冷却剤導入口51には、継手を介して供給チューブ9が接続(ネジ接合)されている。
【0029】
また、アタッチメントケース41の前後には、入力軸42を回転自在に支持する前方軸受52および後方軸受53(いずれもボールベアリング)が、それぞれ抜止め状態で嵌合している。前方軸受52の後側および後方軸受53の前側には、入力軸42の外周面に接するシールパッキン54が配設されている。この一対のシールパッキン54により、アタッチメントケース41の内周と入力軸42の外周との間には、環状の冷却剤溜り55が液密に形成されている。そして、この冷却剤溜り55には、冷却剤導入口51が連通しており、冷却剤導入口51から導入した冷却剤で満たされるようになっている。
【0030】
入力軸42は、電動ドリル3の主軸34に連結された主軸連結部61と、主軸連結部61の前方に連なり、有底円筒状に形成された入力軸本体62と、で一体に形成されている。入力軸42は、上記した、前方軸受52と後方軸受53とにより、アタッチメントケース41に両持ちで回転自在に支持されている。また、入力軸本体62の前方外周面には、前方軸受52の抜止めとして機能する環状の抜止めフランジ部63が突設されている。
【0031】
入力軸本体62の外周面の前方端部には、連結キャップ45が螺合する連結雄ネジ部65が形成されている。この連結雄ネジ部65には、後述する出力軸44に嵌合したキー74が係合する切欠き部66が、前方から切り込むように形成されている。
【0032】
入力軸本体62の軸心には、出力軸44を一体回転自在且つ軸方向にスライド自在に保持する摺動支持部67が形成されている。摺動支持部67は、細径の第1摺動支持部68と、第1摺動支持部68の前方に連なり、その前端を開放した太径の第2摺動支持部69と、を有している。なお、第1摺動支持部68と第2摺動支持部69とは、同軸上に設けられている。
【0033】
第1摺動支持部68は、円柱状の内部空間を形成しており、出力軸44の後端部を摺動自在に支持している。また、第1摺動支持部68の後端部には、上記した冷却剤溜り55に連通する導入流路68aが径方向に貫通形成されている。
【0034】
第2摺動支持部69は、全体として第1摺動支持部68よりも太径の円柱状の内部空間を形成しており、出力軸44の中間部を摺動自在に支持している。具体的には、第2摺動支持部69は、第1摺動支持部68の前端に連なる通液部位69aと、通液部位69aよりも細径に形成され、前端を開放した摺接部位69bと、通液部位69aと摺接部位69bとの間に形成されたテーパー部位69cと、を有している。通液部位69aは、出力軸44との間に空間(後述の第2加圧流路46b)を形成し、摺接部位69bは、出力軸44の中間部を摺動自在に支持している。
【0035】
出力軸44は、第1摺動支持部68に摺動自在に支持される細径部71と、細径部71の前端に連なり、第2摺動支持部69に摺動自在に支持される太径部72と、太径部72の前端に連なるビット装着部73と、を有している。これら細径部71、太径部72およびビット装着部73は、同軸上に形成されており、出力軸44は、これらにより一体の段付き軸の形態をなしている。
【0036】
細径部71は、第1摺動支持部68に対し、太径部72は、第2摺動支持部69の摺接部位69bに対し、それぞれ摺動可能な寸法公差をもって挿入されている。このように、出力軸44の前後方向への摺動は、入力軸42の前後2箇所(第1摺動支持部68および第2摺動支持部69の摺接部位69b)でガイドされるため、出力軸44は、安定した直進性をもって摺動させることができる。
【0037】
ビット装着部73は、太径部72の前端に連なり、出力軸44の後方への移動を規制する出力フランジ部76と、出力フランジ部76の背面に添設され、連結キャップ45への突き当たりの衝撃を和らげるための緩衝Oリング77と、出力フランジ部76の前方に連なる接合凸部78と、を有している。接合凸部78には、外周面に雄ネジが形成されており、ドリルビット2のシャンク22(接合凹部24)が螺合する。なお、ドリルビット2を出力軸44に固定するために、接合凹部24および出力フランジ部76にそれぞれ工具掛け部(図示省略)が形成されている。
【0038】
この出力軸44は、入力軸本体62の連結雄ネジ部65に螺合した連結キャップ45により、太径部72の部分で入力軸42に抜止め状態に係止されている。一方、太径部72の外周面の軸方向略中央には、キー74が嵌合するキー溝75が形成されている。このキー溝75およびキー74により、出力軸44は、入力軸42(入力軸本体62)に対し、一体回転自在且つ軸方向に摺動自在に装着される。
【0039】
一方、上記したように、入力軸42と出力軸44との間隙には、冷却剤が流通する加圧流路46が形成されている。詳細には、加圧流路46は、第1摺動支持部68と細径部71とで囲まれた第1加圧流路46aと、第2摺動支持部69の通液部位69aと太径部72および細径部71との間隙からなる第2加圧流路46bと、を有している。詳細は後述するが、第1加圧流路46aに流入した冷却剤により、細径部71が加圧(押圧)され、第2加圧流路46bに流入した冷却剤により、太径部72と細径部71との間の段部が加圧(押圧)される。
【0040】
また、出力軸44の軸心には、加圧流路46とビット内流路23とを連通させる出力軸内流路43が形成されている。詳細には、出力軸内流路43は、細径部71の軸心に形成された第1出力軸内流路43aと、太径部72の軸心に形成された第2出力軸内流路43bと、を有している。
第1出力軸内流路43aは、後端を開放して第1加圧流路46aに連通すると共に、前端部で径方向に貫通形成された第1径方向流路43cを介して第2加圧流路46bに連通している。一方、第2出力軸内流路43bは、後端部で径方向に貫通形成された第2径方向流路43dを介して第2加圧流路46bに連通すると共に、前端を開放して装着されたドリルビット2のビット内流路23に連通している。
【0041】
つまり、
図2(b)に示すように、冷却剤供給手段6から供給チューブ9を介して供給された冷却剤は、上流側(後方)から、冷却剤導入口51、冷却剤溜り55、導入流路68a、第1加圧流路46a、第1出力軸内流路43a、第1径方向流路43c、第2加圧流路46b、第2径方向流路43d、第2出力軸内流路43b、そして、ビット内流路23へと流れ、下流端(前方端)の切刃21(穿孔部分)に供給される。
【0042】
また、
図2に示すように、出力軸44は、加圧流路46に臨み、加圧流路46に導入した冷却剤により前進方向の圧力を受ける第1受圧部80aおよび第2受圧部80bを有している。第1受圧部80aは、細径部71の後端面(第1出力軸内流路43aの開口縁部)で構成されており、第2受圧部80bは、太径部72と細径部71との間の段部で構成されている。第1受圧部80aが、第1加圧流路46a内に導入された冷却剤の圧力を受け、他方、第2受圧部80bが、第2加圧流路46b内に導入された冷却剤の圧力を受けることで、出力軸44に前進させる力を作用させる。これによって、出力軸44およびこれに装着されたドリルビット2が、穿孔方向に押圧された状態になっている。なお、第1加圧流路46aおよび/または第2加圧流路46bに、当該押圧を補助するためのバネ(図示省略)を配設する構成であっても良い。
【0043】
弁機構47は、第2加圧流路46bと第1出力軸内流路43aとの連通または遮蔽を行って、穿孔部分への冷却剤の供給を制御するものである。具体的には、弁機構47は、太径部72の外周面に取り付けられ、弁体をなす一対のOリング81と、第2摺動支持部69の摺接部位69bで構成した弁座82と、を有している。なお、一対のOリング81は、太径部72の後端部外周面に軸方向に並んで形成された一対の環状溝に嵌合され、各Oリング81は、ゴム等の弾性部材で構成されている。
【0044】
一対のOリング81が嵌合した太径部72は、弁座82(摺接部位69b)に対し摺動自在に且つ液密に密着している。そして、一対のOリング81の間には、上記した第2径方向流路43dが開口している。
【0045】
穿孔作業の際、ドリルビット2の先端(切刃21)を穿孔対象物Cに押し付けると、
図2(b)に示すように、出力軸44が入力軸42に対して相対的に後退する。すると、後側のOリング81および第2径方向流路43dは、通液部位69a(またはテーパー部位69c)に臨む位置にずれ、第2径方向流路43dと第2加圧流路46bとが連通(開弁)する。そして、第2加圧流路46b内の冷却剤は、第2径方向流路43dを通って第2出力軸内流路43bへと流れ込み、ビット内流路23に供給される。このとき、前側のOリング81は、弁座82(摺接部位69b)に密接しているため、第2加圧流路46bは、液密に保たれている。
【0046】
一方、穿孔作業終了後または穿孔作業前には、第1加圧流路46aおよび第2加圧流路46bに導入された冷却剤による圧力が、第1受圧部80aおよび第2受圧部80bに作用することで、
図2(a)に示すように、出力軸44が入力軸42に対して相対的に前進する。すると、後方のOリング81および第2径方向流路43dは、弁座82に密接する位置に臨み、第2径方向流路43dと第2加圧流路46bとが遮蔽(閉弁)され、ビット内流路23への冷却剤の供給が停止する。このとき、後方のOリング81は、テーパー部位69cにガイドされて円滑に摺接部位69bに入り込み、適切な閉弁状態となる。
【0047】
このように、弁機構47は、弁体であるOリング81が、ドリルビット2と共に前進方向(穿孔方向)に押圧された状態となっており、ドリルビット2を穿孔対象物Cに押し付けていないときには、当該押圧によって閉弁し、ドリルビット2を穿孔対象物Cに押し付けているときには、押付け時の力で当該押圧に抗して開弁する構成となっている。これによって、ドリルビット2を穿孔対象物Cに押し付けたときのみ、穿孔部分に冷却剤が供給される。
【0048】
次に
図3ないし
図5を参照して、ガイドアタッチメント5について説明する。
図3ないし
図5に示すように、ガイドアタッチメント5は、電動ドリル3の前端部に突出形成された一対のガイドホルダー101a、101bと、穿孔対象物Cに突き当てられるノーズブロック102と、ガイドホルダー101a、101bとノーズブロック102との間に渡した一対のスライドガイド103a、103bと、各スライドガイド103a、103bに巻回するように設けた一対のコイルスプリング104a、104bと、を有している。一対のスライドガイド103a、103bとドリルビット2とは、左右のスライドガイド103a、103bの中間にドリルビット2を位置させて、相互に平行に且つ前方に延在している。なお、以下、右側のスライドガイド103aを、第1スライドガイド103aと呼称し、左側のスライドガイド103bを、第2スライドガイド103bと呼称する。
【0049】
各ガイドホルダー101a、101bは、電動ドリル3の左右両端に配設され、各スライドガイド103a、103bの後端部を支持している。具体的には、各ガイドホルダー101a、101bには、前後方向に軸貫通孔106が貫通形成されており、各軸貫通孔106には、ガイドナット107が嵌合している。各ガイドナット107は、径方向から固定ネジ108により各軸貫通孔106に固定されている。そして、この各ガイドナット107に各スライドガイド103a、103bの後端部が螺合する形で、各スライドガイド103a、103bがガイドナット107を介して各ガイドホルダー101a、101bに支持されている。なお、本実施形態では、各ガイドホルダー101a、101bを電動ドリル3と一体に形成しているが、各ガイドホルダー101a、101bを別部材として電動ドリル3に固定するようにしても良い。また、以下、右側のガイドホルダー101aを、第1ガイドホルダー101aと呼称し、左側のガイドホルダー101bを、第2ガイドホルダー101bと呼称する。
【0050】
図3に示すように、ノーズブロック102は、穿孔対象物Cに突き当てる突当てガイド部112と、各スライドガイド103a、103bの前端部がそれぞれ固定される左右一対のガイド固定部113a、113bと、突当てガイド部112の挿通開口111(後述する)に装着したダストシール114と、で構成されている。ダストシール114は、穿孔部分を囲むように穿孔対象物Cに密着し、粉塵混じりの冷却剤の飛散や漏れを防止する。なお、突当てガイド部112および一対のガイド固定部113a、113bは、アルミダイキャスト等で一体に形成され、ダストシール114は、ゴム等の弾性材で形成されている。
【0051】
突当てガイド部112は、その中心部に、ドリルビット2の先端部が臨みドリルビット2を挿通する挿通開口111が貫通形成されている。一方、突当てガイド部112の穿孔対象物Cに突き当てる面(以下、当接面)には、ゴム等の弾性材で形成された当接シート115が貼着されている。当接面とドリルビット2の軸方向とは、直交しており、突当てガイド部112を穿孔対象物Cに突き当てると、ドリルビット2は穿孔対象物C(穿孔面)に対して直角に対峙する。この状態で、電動ドリル3による穿孔作業を行うことで、穿孔面と直交する方向に孔を形成することができる。
【0052】
また、挿通開口111の内周面から斜め後方に向かって排出口121が貫通形成されている。排出口121には、接続部材122(継手)の一端が螺合固定され、接続部材122の他端には、回収チューブ10が接続される。これにより、挿通開口111には、排出口121、接続部材122および回収チューブ10を介して冷却剤回収手段7が接続され、穿孔部分に供給された冷却剤は、冷却剤回収手段7により吸引回収される。
【0053】
各ガイド固定部113a、113bは、突当てガイド部112の上側左右両端に配設され、各スライドガイド103a、103bの前端部に固定されている。具体的には、各ガイド固定部113a、113bには、前後方向に固定雌ネジ孔126が貫通形成されており、各固定雌ネジ孔126には、各スライドガイド103a、103bの前端部が螺合している。このように、各ガイド固定部113a、113bの固定雌ネジ孔126に各スライドガイド103a、103bの前端部が螺合することで、ノーズブロック102が、一対のスライドガイド103a、103bに支持されている。なお、以下、右側のガイド固定部113aを、第1ガイド固定部113aと呼称し、左側のガイド固定部113bを、第2ガイド固定部113bと呼称する。
【0054】
第1ガイド固定部113aの固定雌ネジ孔126には、第1スライドガイド103aの第1ガイドロッド147(後述する)が度当りする度当り部材127が嵌合固定されている(
図5参照)。詳細は後述するが、この第1ガイドロッド147が、度当り部材127に度当りすることで、ドリルビット2によって所定の深さ(目標深さ)まで穿孔したときに、電動ドリル3の穿孔方向への前進を規制するストッパーを構成している。
【0055】
図4および
図5に示すように、第1スライドガイド103aは、前端部でノーズブロック102を支持する第1ガイド筒146と、後端部で第1ガイドホルダー101aに支持された第1ガイドロッド147と、を有し、第1ガイド筒146に対して第1ガイドロッド147が入れ子式で摺動自在に連結されている。
【0056】
第1ガイド筒146は、いわゆるストレート孔が軸心に貫通形成された筒状の部材であり、その前端部の外周面に、ノーズブロック102の第1ガイド固定部113aに螺合固定する筒雄ネジ部146aと、筒雄ネジ部146aの後方に配設され、工具掛け部を有する筒フランジ部146bと、が形成されている。筒雄ネジ部146aは、第1ガイド固定部113aの固定雌ネジ孔126に螺合し、固定される。一方、筒フランジ部146bは、固定雌ネジ孔126の周縁部に当接し、筒雄ネジ部146aのねじ込みを規制する。
【0057】
第1ガイドロッド147は、第1ガイド筒146に摺動自在に係合する摺接部147aと、第1ガイドホルダー101aのガイドナット107に螺合する調整雄ネジ部147bと、穿孔深さを指標する第1スケールプレート149(後述する)に対するポインターとなる指示部147cと、で一体に形成されている。
【0058】
また、上記したように、第1ガイドロッド147と、第1ガイド固定部113aの度当り部材127とにより、ドリルビット2によって所定の深さ(目標深さ)まで穿孔したときに、電動ドリル3の穿孔方向への前進を規制するストッパーが構成されている。すなわち、穿孔作業では、ノーズブロック102を穿孔対象物Cに突き当てて電動ドリル3による穿孔を進めると、ノーズブロック102に対し第1ガイドロッド147および電動ドリル3が前進する。すると、
図5に示すように、摺接部147aの前方端面が、度当り部材127に当接(度当り)する。これにより、第1ガイドロッド147の前進が規制され、第1ガイドホルダー101aを介して第1ガイドロッド147を支持した電動ドリル3の前進が規制される。これによって、穿孔装置1による穿孔が所定の穿孔深さ(後述の調整した穿孔深さ)で規制される。
【0059】
調整雄ネジ部147bは、電動ドリル3に対し第1ガイドロッド147を進退させて、ストッパーによって規制される穿孔深さを調整するためのものである。具体的には、調整雄ネジ部147bは、第1ガイドホルダー101a(ガイドナット107)を貫通して後方に延在しており、この延在した調整雄ネジ部147bには、後方からガイドナット107の後端部に添接するロックナット148(六角ナット)が螺合している。また、この延在した調整雄ネジ部147bに沿うように、モーターハウジング31には、穿孔深さを指標する目盛りが刻まれた第1スケールプレート149が貼着されている。
【0060】
ストッパーによって規制される穿孔深さの調整は、指示部147cの位置が、第1スケールプレート149の目盛り上における所望の穿孔深さ(ストッパーによって規制したい穿孔深さ:目標深さ)に来るように、第1ガイドロッド147の位置を調整することで行われる。すなわち、ロックナット148を緩めた後、調整雄ネジ部147bを正逆回転させて第1ガイドロッド147を進退させ、指示部147cの位置が、第1スケールプレート149の目盛り上の所望の穿孔深さに来るようにする。その後、ロックナット148を締め付けて、調整雄ネジ部147bの位置を固定し、穿孔深さの調整を終了する。これによって、第1ガイドロッド147(摺接部147a)の前方端面と度当り部材127との離間距離を調整され、ストッパーによって規制される穿孔深さが所望の穿孔深さに調整される。なお、基本的には、穿孔対象物Cに形成する孔の深さに合わせて、ストッパーによって規制される穿孔深さを調整する。これによって、任意の深さの孔を穿孔対象物Cに形成することができる。
【0061】
第2スライドガイド103bは、後端部で第2ガイドホルダー101bに支持された第2ガイド筒151と、前端部(先端側)でノーズブロック102を支持する第2ガイドロッド152(ガイドロッド)と、を有し、第2ガイド筒151に対して第2ガイドロッド152が入れ子式で摺動自在に連結されている。また、第2スライドガイド103bは、第2ガイドロッド152の後端側に固定され、電動ドリル3の停止ボタン36と係合する係合部材153を有している。
【0062】
第2ガイド筒151は、いわゆるストレート孔が軸心に貫通形成された筒状の部材であり、その後端部の外周面には、第2ガイドホルダー101bのガイドナット107に螺合する雄ネジ(図示省略)が形成されている。また、第2ガイド筒151のストレート孔は、前端部のみ環状の段部を存して幾分細径に形成され、この部分に第2ガイドロッド152の抜止めとして機能する抜止め部151aが形成されている(
図4参照)。
【0063】
第2ガイドロッド152は、第2ガイド固定部113bの固定雌ネジ孔126に螺合するロッド雄ネジ部152aと、ロッド雄ネジ部152aの後方に連なり、工具掛け部を有するロッドフランジ部152bと、ロッドフランジ部152bの後方に連なるロッド本体152cと、ロッド本体152cの前後中間部に形成された摺接部152dと、で一体に形成されている。
【0064】
ロッド雄ネジ部152aは、第2ガイド固定部113bの固定雌ネジ孔126に螺合し、固定される。一方、ロッドフランジ部152bは、第2ガイド固定部113bの固定雌ネジ孔126の周縁部に当接し、ロッド雄ネジ部152aのねじ込みを規制する。また、ロッド本体152cは、第2ガイドホルダー101b(ガイドナット107)を貫通して後方に延在している。上記係合部材153は、この第2ガイドホルダー101bから後方に延在した部分に固定されている。
【0065】
摺接部152dは、ロッド本体152cより太径に形成されており、第2ガイド筒151に対して抜止め状態で係合している。すなわち、上記した抜止め部151aに、摺接部152dが突き当たることで、第2スライドガイド103b(ノーズブロック102)の最前進端位置が位置規制される(
図4参照)。これによって、各スライドガイド103a、103bの拡張が所定長で規制される。また、ロッド本体152cは、第2ガイド筒151の抜止め部151aの内周面に摺接し、摺接部152dは、ストレート孔の内周面に摺接する。これにより、第2ガイドロッド152は、第2ガイド筒151に対し、常に2箇所で摺接し、直進性を維持しつつ円滑に摺動するようになっている。これによって、第2ガイドロッド152は、第2ガイド筒151を介して、第2ガイドホルダー101bにスライド自在に支持されている。
【0066】
各コイルスプリング104a、104bは、後方端をガイドナット107に当接すると共に前方端を筒フランジ部146bまたはロッドフランジ部152bに当接して、圧縮ばねとして機能している。すなわち、各コイルスプリング104a、104bは、ガイドナット107(ガイドホルダー101a、101b)を受けとしてノーズブロック102を前方に付勢している。
【0067】
図4に示すように、穿孔作業前の状態では、各コイルスプリング104a、104bの付勢力によって、各スライドガイド103a、103bが拡張してノーズブロック102が前進する。そして、第2ガイドロッド152の摺接部152dが、第2ガイド筒151の抜止め部151aに突き当たることで、各スライドガイド103a、103bの拡張およびノーズブロック102の前進が規制される(抜止め部151aによる拡張規制)。一方、
図5に示すように、穿孔作業時の状態では、作業者によって、ドリルビット2が穿孔対象物Cに押し付けられることで、各コイルスプリング104a、104bの付勢力に抗して、各スライドガイド103a、103bが収縮して電動ドリル3が前進する。そして、第1ガイドロッド147の摺接部147aが、ノーズブロック102の度当り部材127に度当りすることで、各スライドガイド103a、103bの縮小および電動ドリル3の前進が規制される(ストッパーによる前進規制)。
【0068】
次に
図4ないし
図6を参照して、前進規制時の強制停止機能に係る停止ボタン36および係合部材153の構成について説明する。上記したように、前進規制時の強制停止機能は、ストッパーによって電動ドリル3の穿孔方向への前進が規制されたとき、電動ドリル3の駆動を強制停止させる機能である。
【0069】
図4および
図5に示すように、停止ボタン36は、モーターハウジング31の側面に配設され、モーターハウジング31の側面から左方向に突出して設けられている。具体的には、停止ボタン36は、先端が半球状に形成されたボタン本体36aと、ボタン本体36aを戻り側に付勢する戻りバネ36bと、を有している。
【0070】
ボタン本体36aは、その押下によって、モーターハウジング31内に配設されたマイクロスイッチ171と係合する。このマイクロスイッチ171は、作動によって、電動ドリル3のモーターへの電力供給を遮断し、電動ドリル3の駆動を停止させるものである。よって、ボタン本体36aが押下されると、ボタン本体36aがマイクロスイッチ171と係合して、マイクロスイッチ171が作動し、マイクロスイッチ171によって、電動ドリル3の駆動が停止される。一方、ボタン本体36aの押下が解除されると、戻りバネ36bによって、ボタン本体36aが元の位置に戻る。これによって、ボタン本体36aとマイクロスイッチ171との係合が解除され、マイクロスイッチ171の作動が解除される。これにより、電動ドリル3を駆動可能な状態に戻る。
なお、ボタン本体36aの押下によってマイクロスイッチ171を作動させ、ボタン本体36aの押下の解除によって、マイクロスイッチ171の作動を解除可能な構成であれば、ボタン本体36aとマイクロスイッチ171とが常に係合している構成であっても良い。かかる場合、ボタン本体36aの押下が解除されると、ボタン本体36aとマイクロスイッチ171との係合が解除されないまま、マイクロスイッチ171の作動が解除される。
【0071】
なお、マイクロスイッチ171は、トリガースイッチ35による駆動制御に優先して、電動ドリル3の駆動を停止させる。よって、停止ボタン36は、トリガースイッチ35による駆動制御に優先して、電動ドリル3の駆動を停止させる構成となっている。すなわち、トリガースイッチ35を引いた状態であっても、停止ボタン36が押下されることで、電動ドリル3の駆動が強制停止する。
【0072】
一方、係合部材153は、第2ガイドロッド152と共に前後方向に進退自在に構成されている。具体的には、係合部材153は、第2ガイドロッド152を挿通する挿通孔181a(
図6参照)を有すると共に、第2ガイドロッド152にスライド自在に支持された部材本体181と、部材本体181を第2ガイドロッド152に固定する止めネジ182と、を備えている。すなわち、本実施形態では、第2ガイドロッド152における係合部材153の位置を調整自在に構成されている。
【0073】
図6に示すように、部材本体181は、停止ボタン36と同一高さに形成された係合凸部181bと、係合凸部181bの上方に配設されたマーク形成面181cと、をその右側面に有している。
【0074】
係合凸部181bは、右側に突出する山形に形成されており、右側にせり出した上り斜面と、右側から引っ込んだ下り斜面と、を有している。穿孔作業時には、
図5に示すように、係合凸部181bの上り斜面が、停止ボタン36に係合して、停止ボタン36を押下する。なお、係合凸部181bに下り斜面を形成することで、動作試験時等に、係合凸部181bに停止ボタン36が引っ掛かるのを防止している。
【0075】
図5に示すように、マーク形成面181cは、ポインターとなるマークMが形成されていると共に、マークMが上方から確認しやすいように、鉛直から傾いて形成されている。モーターハウジング31には、第2ガイドロッド152に添うように、穿孔深さを指標する第2スケールプレート183が形成されている。マーク形成面181cに形成されたマークMは、第2スケールプレート183の目盛りに対するポインターとして機能する。
【0076】
第2スケールプレート183上の目盛りは、停止ボタン36が作動する穿孔深さを示している。すなわち、各スライドガイド103a、103bを最大限拡張した状態(抜止め部151aによってノーズブロック102の前進が規制された状態)において、マークMが指し示す目盛り上の穿孔深さが、停止ボタン36が作動する穿孔深さとなる。マークMの位置が、第2スケールプレート183の目盛り上の、ストッパーによって規制される穿孔深さに来るように、係合部材153の位置を調整することで、停止ボタン36が押下される穿孔深さが、ストッパーによって規制される穿孔深さと同一になるように調整される。この調整の結果、ストッパーによって電動ドリル3の穿孔方向への前進が規制されたとき、停止ボタン36が押下され、電動ドリル3の駆動が停止される。
【0077】
なお、当該マークMは、マークMが印刷された貼着シールSをマーク形成面181c上に貼り付けることで形成されている。停止ボタン36が、上り斜面上のどの位置に来たときに、マイクロスイッチ171が作動するかは、マイクロスイッチ171の経時的な劣化によって変化する虞がある。そのため、定期的に(例えば穿孔作業の都度、穿孔作業に先駆けて)、貼着シールSの貼付け位置を調整し、マークMの位置を調整することが好ましい。
【0078】
次に、穿孔装置1による穿孔作業について説明する。この穿孔作業では、各スライドガイド103a、103bを最大限拡張させた状態で、第1ガイドロッド147の位置調整および係合部材153の位置調整を行った後、実行されるものとする。すなわち、指示部147cの位置が、第1スケールプレート149の目盛り上の所望の穿孔深さに来るように、第1ガイドロッド147の位置を調整し、係合部材153のマークMの位置が、第2スケールプレート183の目盛り上の、ストッパーによって規制される穿孔深さ(調整した穿孔深さ)に来るように、係合部材153の位置を調整した後に、実行されるものとする。
【0079】
穿孔作業では、まず、作業者は、ドリルビット2の先端を穿孔対象物Cにあてがうように、電動ドリル3を手持ちする。その後、トリガースイッチ35を引いて電動ドリル3の駆動を開始する。このとき、図外の制御部の制御の下、電動ドリル3の駆動開始と同時に、冷却剤供給手段6の圧送装置12と、冷却剤回収手段7の吸引ポンプ16とが駆動を開始し、穿孔部分への冷却剤の供給および回収が開始する。
【0080】
電動ドリル3の駆動を開始したら、作業者は、ドリルビット2を穿孔対象物Cに押し付け(押し当て)、電動ドリル3を穿孔方向に前進させることで、穿孔対象物Cに対する穿孔を行っていく。このとき、電動ドリル3の前進に伴って、ノーズブロック102に対し第1ガイドロッド147が前進すると共に、停止ボタン36に対し第2ガイドロッド152上の係合部材153が相対的に後退していく。
【0081】
電動ドリル3による穿孔が進行していき、穿孔が所定の穿孔深さ(調整した穿孔深さ)に達すると、前進していた第1ガイドロッド147が、ノーズブロック102の度当り部材127に度当たりし、電動ドリル3の穿孔方向への前進が規制される。すなわち、ストッパーによって、電動ドリル3の穿孔方向への前進が規制される。
【0082】
一方、ストッパーによって電動ドリル3の穿孔方向への前進が規制されると、これと同時に、相対的に後退していた係合部材153が、停止ボタン36と係合する。これによって、停止ボタン36が押下され、これに連動したマイクロスイッチ171が作動する。これにより、モーターへの電力供給が遮断され、電動ドリル3の駆動が停止する。このとき、トリガースイッチ35を引いた状態になっているが、トリガースイッチ35による駆動制御に優先して、電動ドリル3の駆動が強制停止される。
【0083】
電動ドリル3の駆動が停止すると、図外の制御部による制御の下、電動ドリル3の停止から所定の遅延時間を遅れて、冷却剤供給手段6の圧送装置12および冷却剤回収手段7の吸引ポンプ16が停止される。厳密には、吸引ポンプ16の遅延時間は、圧送装置12の遅延時間より長く設定されているため、圧送装置12が停止した後、その一定秒後(例えば1秒後)に吸引ポンプ16が停止する。これによって、本穿孔作業を終了する。
【0084】
以上、上記実施形態の構成によれば、ストッパー(第1ガイドロッド147および度当り部材127)によって電動ドリル3の前進が規制されたとき、電動ドリル3の駆動が強制停止される。このため、電動ドリル3の前進が規制されてから電動ドリル3の駆動が停止するまでに、タイムラグが生じることがない。よって、ストッパーによって電動ドリル3の前進が規制された後に、電動ドリル3が駆動し続ける事態を避けることができる。これにより、ストッパーによって規制される穿孔深さを超えて穿孔が行われるのを防止することができる。特に、冷却剤供給アタッチメント4に弁機構47が搭載された構成において、ドリルビット2が弁体のストローク分だけ前進し、ストッパーにより規制される穿孔深さを超えて穿孔が行われてしまうのを防止することができる。ひいては、前進規制後、ドリルビット2が弁体のストローク分だけ前進することがないため、弁機構47が閉弁することがなく、穿孔後の孔内洗浄を正常に行うことができる。
【0085】
また、冷却剤供給手段6および冷却剤回収手段7の駆動停止を、電動ドリル3の駆動停止から所定の遅延時間遅れて実施することで、電動ドリル3の駆動停止後も所定の遅延時間、冷却剤の吸引や圧送が継続される。そのため、穿孔部分で生じた粉塵を、穿孔に引き続いて除去することができる。これにより、ドリルビット2を引き抜いた後、孔内部の清掃を別途行う必要がなく、円滑に、その後の工程(アンカー埋設等)に移行することができる。
【0086】
さらに、ストッパーが搭載されたガイドアタッチメント5が、停止ボタン36に係合して、電動ドリル3の駆動を停止させる構成であるため、電動ドリル3の前進規制を検出するセンサー等なしに強制停止手段を構成することができる。よって、強制停止手段を簡単な構成にすることができる。
【0087】
なお、上記実施形態においては、ストッパーによって規制される穿孔深さに合わせて、作業者が、係合部材153の位置を調整し、停止ボタン36が押下される穿孔深さを調整する構成であったが、ストッパーによって規制される穿孔深さを調整したとき、調整した穿孔深さに合わせて、自動的に、停止ボタン36が押下される穿孔深さが調整される構成であっても良い。例えば、リンク機構やラックアンドピニオン機構等によって、第1ガイドロッド147の位置を調整すると、これと同時に、係合部材153の位置が調整される構成であっても良い。
【0088】
また、上記実施形態においては、ストッパーによって規制される穿孔深さを調整可能とする構成とし、これに合わせて、停止ボタン36が押下される穿孔深さを調整可能とする構成であったが、ストッパーによって規制されるべき穿孔深さが固定である場合、係合部材153の位置を調整不能とする構成であっても良い。かかる場合、ストッパーによって規制される穿孔深さに達したときに、停止ボタン36が押下される位置に、係合部材153が配設される。
【0089】
なお、上記実施形態においては、ガイドアタッチメント5と係合する停止ボタン36によって、強制停止手段を構成したが、ストッパーによって電動ドリル3の穿孔方向への前進が規制されたとき、電動ドリル3の駆動を停止させる構成であれば、これに限るものではない。例えば、ストッパーによって電動ドリル3の穿孔方向への前進が規制されたことを検出する検出手段と、検出手段による検出結果に基づいて、電動ドリル3の駆動を停止させる制御回路と、を備え、検出手段により、ストッパーによって電動ドリル3の穿孔方向への前進が規制されたことを検出したとき、電動ドリル3の駆動を停止させる構成であっても良い。
【0090】
なお、上記実施形態においては、電動ドリル3にダイヤモンドビットを装着して穿孔装置1(湿式)としたが、穿孔装置1は、振動ドリルにコンクリートビットを装着したもの(乾式)であっても良い。
穿孔対象物Cに穿孔を行うドリルビット2と、ドリルビット2を回転させる電動ドリル3と、ドリルビット2によって所定の深さまで穿孔したとき、電動ドリル3の穿孔方向への前進を規制するストッパー127、152と、ストッパー127、152によって電動ドリル3の穿孔方向への前進が規制されたとき、電動ドリル3の駆動を停止させる停止ボタン36と、を備えた。