【実施例1】
【0022】
本発明の階段昇降機の使用状況の例が、外観図である
図1から
図5までに示されている。尚、利用者は、図示されていない。
図1は、門型昇降体が、階段の下階で待機している状態の説明図である。階段に沿ってその幅方向に於いて、実施例ではその踏板上に、平行に2本のレールが設置されている。レールから外れないように拘束されてレールを自走する門型昇降体は、レールから外れないように拘束されて走行する脚構造体と、左右の脚構造体の上部を連結する連結構造体で構成されている。
【0023】
左右の脚構造体の間に利用者を乗せる昇降踏板1が配置されている。昇降踏板1は、左右の脚構造体に設けられた昇降機構で支持されている。保護カバー5eは、昇降踏板が昇降する時に、利用者の着衣などが巻き込まれることを防止する。昇降踏板の昇降動作を案内するガイドスロープ10rが、階段踏板に設置されている。左側のガイドスロープ10eは、
図1では、隠れている。
図2を参照下さい。
【0024】
門型昇降体が下階で待機中、昇降踏板1は、下階の床或いは階段の下から一段目などの踏板に着地している。昇降踏板が階段の下から一段目の踏板に着地する場合は、昇降踏板が下階の床に着地する場合と比較して、階段昇降機の階段外への張り出しによる通行障害を回避または大幅削減することが出来る。
【0025】
操作手摺2eと3eが、左側の脚構造体に設けられている。同様に、操作手摺2rと3rが、右側の脚構造体に設けられている。階段昇降機の利用者は、昇降踏板1に立って乗り、操作手摺を把持する。操作手摺は、利用者の体勢保持機能と門型昇降体の運転操作スイッチ機能を合わせ持つ。
【0026】
運転操作スイッチの一例として、手摺棒に設けた押しボタンスイッチが考えられる。但し、押しボタンスイッチを適用すると、利用者は、スイッチの場所を握ることになる。これに対して、操作手摺による運転操作は、以下の利点がある。(1)利用者は、操作手摺の任意の場所を把持できる。(2)利用者は、操作手摺を体に引き寄せる様に操作して、その状態を保持することで、門型昇降体を運転する。門型昇降体の走行中、利用者は、操作手摺を体に引き寄せるように保持しているので、その体勢を確保することになり安全である。
【0027】
操作手摺の配置方法は、各種可能である。例えば、左側は下階側のみ、右側は、上階側のみの配置とすることが出来る。片側のみの配置とすることも出来る。実施例では、操作手摺を上階側と下階側に左右対称に設けた。これにより、門型昇降体の運転に必須な操作手摺の本数を、1本或いは2本に設定することが出来る。運転モードの切替スイッチを設けて、操作手摺を1本操作で運転する場合と、2本操作で運転する場合とで、運転速度を別に設定することが可能である。運転モードスイッチ6が、左側の脚構造体の下の上面に設けられている。
【0028】
門型昇降体の走行動力源は、連結構造体の内部に配置されている。操作電源及び信号を送るケーブルが、ケーブルチェーン11を介して、右側の脚構造体の下部に設けられた端子台8に接続されている。ケーブルチェーンガイド12が、右側のレールに取り付けられている。運転操作に介助を必要とする利用者の利用も考慮された。介助者用の操作スイッチ302(
図56参照)を接続するためのレセプタクル7が、左側の脚構造体の下部前面に設けられている。介助者用スイッチを接続すれば、介護や荷物運びにも利用できる。
【0029】
左右の脚構造体は、運転モードスイッチ6、レセプタクル7及び電源接続部分を除いて、互いに鏡像の関係にある。フットスイッチ13dが、下階の床14に配置されている。下階のフットスイッチは、上階に待機している門型昇降体を下階の待機位置に呼ぶ機能を有する。
【0030】
図1は、昇降踏板が、階段の下から一段目の踏板に着地している状態を示している。階段昇降機の利用者が、下階から上階へ移動する場合の門型昇降体の動きについて、
図1ないし
図5を使用して説明する。利用者は、昇降踏板1に乗ってから、上階側の操作手摺3eと3rを体に引き寄せる如くに操作して、その状態を保持する。昇降踏板1が上昇を開始する。
【0031】
図2は、昇降踏板1が、門型昇降体の走行時に対応した位置まで上昇して、停止した状態の説明図である。上階側の操作手摺3eと3rを内側に引き寄せている利用者は、図示されていない。尚、右側の操作手摺3rは、
図2では隠れている。昇降踏板1の上昇は、門型昇降体がレールに沿って走行中に、階段踏板と昇降踏板1が干渉しない位置で停止する。
【0032】
図3は、門型昇降体が、レールを上昇走行している状態の説明図である。上階側の操作手摺3eと3rを内側に引き寄せている利用者は、図示されていない。尚、右側の操作手摺3rは、
図3では隠れている。昇降踏板1の上昇が停止してから、門型昇降体がレールを上昇走行する。左側のレール下端部に下階側停止位置ターゲット65dが見えている。
【0033】
図4は、門型昇降体が、上階停止位置で走行を停止した状態の説明図である。上階側の操作手摺3eと3rを内側に引き寄せている利用者は、図示されていない。尚、右側の操作手摺3rは、
図4では隠れている。門型昇降体は、右側のレール上端部に設けた上階側停止位置ターゲット65u(
図51参照)を検出すると、上昇走行の停止動作を開始して走行を停止する。昇降踏板1の高さは、上階の床15の高さである。
【0034】
利用者が、体に引き寄せていた操作手摺3eと3rを離して、昇降踏板1から上階床15に移る。操作手摺3eと3rは、戻しばねの作用により待機位置に戻る。昇降踏板1は、操作手摺3eと3rが待機位置に戻ってから、予め設定された時間経過後に、上階床から一段下の階段踏板に降下して着地する。昇降踏板1が階段踏板に着地すると、門型昇降体は、上階での待機状態に入る。
【0035】
図5は、門型昇降体が、上階で待機している状態の説明図である。上階に配置されたフットスイッチ13uは、下階に待機している門型昇降体を上階に呼ぶ機能を有する。
【0036】
次に、利用者が、上階から下階へ移動する場合の門型昇降体の動きについて説明する。
図5を参照下さい。利用者が上階の床15に立って、門型昇降体の上階側の操作手摺3eと3rを、一時的に昇降機の内側へ寄せる操作をする。操作手摺3eと3rの同時操作を必要条件とするか、或いは、どちらか1本の操作を必要条件とするかは、制御設計で選択できる。2本同時操作を選択すると、誤操作の防止に役立つ。以下は、2本同時操作を選択した場合の説明である。
【0037】
利用者が、上階側の2本の操作手摺3eと3rを一時的に同時に操作すると、昇降踏板1が、待機位置から走行時に対応した位置、即ち上階の床15の高さに上昇して、予め設定された時間その位置を保持する。利用者が、この時間内に、下階側の操作手摺2eと2rを体に引き寄せる如くに操作しないと、昇降踏板1は、待機位置に降下して、門型昇降体は、上階で待機している状態に戻る。利用者は、この時間内に昇降踏板1に乗り、下階側の操作手摺2eと2rを体に引き寄せる如くに操作して、その状態を保持する。門型昇降体が降下走行を開始する。
【0038】
門型昇降体は、レールに設けた下階側停止位置ターゲット65d(
図3参照)を検出すると、降下走行の停止動作を開始して走行を停止する。引き続いて、昇降踏板1が降下して、待機位置に着地する。利用者は、体に引き寄せていた操作手摺2eと2rを離して下階床に移る。操作手摺2eと2rは、戻しばねの作用により待機位置に戻る。門型昇降体は、下階での待機状態に入る。
【0039】
尚、門型昇降体が走行中に、利用者が操作手摺の操作を止めると、門型昇降体は走行を停止し、利用者が操作手摺の操作を再開すると、門型昇降体は走行を再開することとする。
【0040】
以上、門型昇降体の運転操作と作動状況の説明である。尚、上記では、利用者が昇降踏板に乗ってする操作手摺の操作は、上階側の左右同時操作、或いは下階側の左右同時操作を前提として説明した。制御プログラムにより、左右どちらか1本での操作を設定することができる。運転モードスイッチ6の操作により制御プログラムを切り替えることで、門型昇降体の運転に必須な操作手摺の本数や走行速度の設定を変更することが可能である。
【0041】
図6に、門型昇降体の内部機構の概要を把握するために、門型昇降体のカバーを外した説明図を示した。配線類は、図示されていない。昇降踏板1は、階段の下から1段目の踏板に着地している。右側の脚構造体には、電源及び信号のケーブルを接続する端子台8とケーブルチェーン11の引留具49(
図10参照)とその付属部品および内部配線が追加されている。
【0042】
走行動力源及び制御機器は、連結構造体の内部に配置されている。走行動力源として、本実施例では、ブレーキ付きギヤードモータ73を適用した。脚構造体の下部に設けたセンサーの配線は、一旦、配線受け115に纏められている。
【0043】
図7は、左右の脚構造体のフレームと連結構造体のフレームの説明図である。左の上基盤21eと左の連結柱22eと左の下基盤23eが一体に成形されて左の脚フレーム20eとなる。連結柱は、2本の角パイプ22aと連結板22bが一体に成形されている。左の脚構造体のフレーム28eは、左の脚フレーム20eと左の台車基盤40eで構成される。右の上基盤21rと右の連結柱22rと右の下基盤23rが一体に成形されて右の脚フレーム20rとなる。右の脚構造体のフレーム28rは、右の脚フレーム20rと右の台車基盤40rで構成される。左の脚構造体のフレーム28eと右の脚構造体のフレーム28rは、互いに鏡像の関係になっている。
【0044】
連結構造体のフレーム30が、左右の脚構造体のフレーム28e、28rの間に図示されている。連結構造体のフレーム30は、左右の端板31e、31rとそれらを連結する部材が一体に成形された籠形のフレームである。走行動力ユニット取付基盤33が、内部に設けられた。走行動力ユニット取付基盤33の拡大図を、二点鎖線で囲んで示した。走行動力ユニット取付穴34は、長穴で、走行動力ユニットの水平方向の位置調整に備えている。
【0045】
左の上基盤21eに、位置合わせピン24が2本取り付けられている。右の上基盤21rにも、位置合わせ用のピンが取り付けられているが、これらは、図では隠れている。これらのピンが、連結構造体のフレーム30の左右の端板31e、31rに設けられた位置合わせ穴32に嵌合される。位置合わせ穴は、
図14,
図15にも図示されている。位置合わせピンと穴を使用することで、門型昇降体の組み立て調整完了後に、輸送のために脚構造体と連結構造体を分離しても、再組み立て時、調整が不要となる。これによって、輸送時の荷姿を小型化出来る。狭い屋内への搬入が容易となる。
【0046】
左の脚構造体のフレーム28eの上基盤21eと連結構造体のフレーム30の左の端板31eの締結は、平面と平面の締結である。同様に、右の脚構造体のフレーム28rの上基盤21rと連結構造体のフレーム30の右の端板31rの締結も、平面と平面の締結である。左右の脚構造体のフレームと連結構造体のフレームが平面と平面の突き合わせにより強固に締結される効果がある。。
【0047】
一般家庭の階段や廊下の幅は、概して必要最小限で狭い。本発明の如く、脚構造体を左右に設けると、脚構造体の厚さを薄くすることが重要な要件となる。その解決方法として、脚フレームを上基盤と連結柱と下基盤で構成した。これにより、
図6に示した様に、部品を基盤の両面に配置して、部品相互の干渉を避け、軸受ハウジングが基盤を貫通する配置方法を工夫して、脚構造体の厚さを薄くできた。配線及びケーブルが、連結柱の角パイプの中に通された。走行動力伝達用のチェーンと昇降踏板の昇降動力伝達用のコンロッドが、連結柱22の2本の角パイプの間の空間に配置された。
【0048】
現今の椅子式階段昇降機では、走行動力源を椅子の下に配置することが広く行われている。本発明では、門型昇降体の走行動力源としてブレーキ付ギヤードモータ73(
図11参照)が、連結構造体のフレーム30の内部に配置された。籠形のフレーム形状は、走行動力源の配置に好適である。搭乗台牽引方式の階段昇降機で、走行動力源が階段の外に張り出す不都合が、この配置により回避された。
【0049】
昇降踏板の昇降動力源のブレーキ付ギヤードモータ190(
図6,
図35参照)が、脚フレームの上基盤21に配置された。この配置方式によって、昇降踏板の昇降機構一式が、脚構造体のフレーム28に取り付けられた。脚構造体と連結構造体の分離と組立が簡便な配置は、門型昇降体の輸送に好都合である。
【0050】
階段の傾斜角度は、階段の仕様によって異なる。台車基盤40は、脚フレーム20に門型昇降体が垂直になるように取り付けられる。本実施例は、走行駆動用軌道としてチェーン支持兼転倒防止レール57(
図9参照)に沿って配置されたチェーン60(
図9参照)に、走行駆動輪であるピンギヤスプロケット111(
図16参照)を噛み合わせて、その回転により門型昇降体を走行させる設計を採用している。
【0051】
走行動力は、脚フレームに取り付けられた部品から走行駆動輪の駆動軸に伝達される。走行駆動輪の駆動軸と脚フレームとの相対位置が、台車基盤の取り付け角度によって変化することは好ましくない。台車基盤40は、走行駆動輪の駆動軸の軸受ハウジング108(
図8参照)を回転軸として脚フレーム20に連結される。台車基盤40と脚フレーム20の取り付け角度は、調整可能である。走行駆動輪の駆動軸と脚フレームとの相対位置は、台車基盤の取付角度によらずに不変である。
【0052】
図8に、左側の台車を示す。軸受穴41には、ピンギヤスプロケット軸の軸受ハウジング108が嵌められる。参考の為に、ピンギヤスプロケット軸の軸受ハウジング108を、二点鎖線で囲んで示した。走行車輪42、左側の脚構造体の外向き振れ止めローラー43、内向き振れ止めローラー44、上階側位置センサー45u、下階側位置センサー45d、センサープロテクター46、センサーコードカバー47が、左側の台車基盤40eに取り付けられている。カムフォロワーが、車輪、ローラーに適用された。
【0053】
図9は、左側レールの下階側端部を階段の内側から見た斜視図である。左側の下部走行レール56eと下部チェーン支持兼転倒防止レール57が、下部レールベース55に取り付けられている。走行車輪42は、下部走行レール56eと下部チェーン支持兼転倒防止レール57が作る間隙を走行する。これにより、門型昇降体が前後方向に転倒することを防止している。外向き振れ止めローラー43は、下部走行レール56eと下部チェーン支持兼転倒防止レール57の間の下部レールベース55の面を転がって、左側の脚構造体の外向きの振れを止める。
【0054】
左側の脚構造体の内向きの振れを止める下部内向き振れ止めレール58が、下部レールベース55に取り付けられている。左側の台車に設けた内向き振れ止めローラー44は、下部レールベース55と下部内向き振れ止めレール58の間に入って、下部内向き振れ止めレール58の面を転がって、左側の脚構造体の内向きの振れを止める。
【0055】
チェーン60が、下部チェーン支持兼転倒防止レール57の上に配置されている。チェーンガイド59が、チェーン60が下部チェーン支持兼転倒防止レール57から外れることを防止する。荷重によるチェーンの伸縮を吸収するためのチェーン引っ張り装置61eが、備えられている。
【0056】
車輪止め62が、下部レールベース55に取り付けられている。車輪止め機構の拡大図を、四辺形の二点鎖線で囲んで示した。車輪止め62のボルト穴は、長穴である。下部レールベース55に車輪止め62を重ねて、車輪止め62の上に皿ばね63を配置して、皿ばね与圧用段付きボルト64とナットで締めている。万一、車輪42が車輪止め62に当たった場合には、下部レールベース55と車輪止め62の摩擦で、衝突の衝撃を弱める。
【0057】
尚、チェーンとピンギヤスプロケットを利用する代わりに、走行駆動用軌道としてラックを、走行駆動輪としてピニオンを採用することができるが、コスト面を考慮して、本実施例では、チェーンとピンギヤスプロケットの方式を採用した。
【0058】
左側の下部走行レール56eの下端に取り付けられた下階側停止位置ターゲット65dは、センサーターゲットプロテクター66によって保護されている。本実施例では、下階側停止位置ターゲット65dは、左側のレールに取り付けられている。レール上端の上階側停止位置ターゲット65uは、右側のレールに取り付けられている(
図50、
図51参照)。この配置によって、左右どちらの台車に取り付けられたセンサーが位置検出したかによって、門型昇降体が、階段の上端にあるかそれとも下端にあるかを、制御システムが確実に把握できる。昇降踏板の制御方法は、上階停止位置と下階停止位置で異なるので、上階での停止か、下階での停止かを確実に把握することが重要である。
【0059】
台車に上階側位置センサー45uと下階側位置センサー45dを設けた理由を、門型昇降体が降下走行してレール下端に停止するまでの動きを例にとって説明する。左側のレールを例にする。門型昇降体が降下走行して、下階側位置センサー45dが、下階側停止位置ターゲット65dを検出する。その信号によって、降下走行速度の減速を開始する。門型昇降体は減速しながら降下を続け、上階側位置センサー45uが、下階側停止位置ターゲット65dを検出すると走行を停止する。
【0060】
尚、本実施例では、走行動力ユニットにエンコーダーを備えている(
図11参照)。下階側位置センサー45dが下階側停止位置ターゲット65dを検出した時点からのパルス数を計測して、走行停止動作を支援することが出来る。走行位置情報は、エンコーダーの検出パルス数で管理することが出来る。但し、本実施例では、荷重によるチェーンの伸びを考慮する必要があるので、エンコーダーの適用は、短距離の計測に特に有効である。
【0061】
図10は、右側の台車を示す。ケーブルチェーンの引留具49を取り付けた点を除くと、右側の台車の構成は、左側の台車の構成と鏡像の関係になっている。尚、本実施例では、左側の台車基盤40eにもケーブルチェーンの引留具49を取り付けるねじ穴を切ってある。左右の台車基盤の共通化のためである。
【0062】
図11に、走行動力ユニットを示す。電線、センサーコードの図示は省略されている。本実施例では、門型昇降体の走行速度が、エスカレータの速度並みとなるように、三相誘導電動機駆動のブレーキ付ギヤードモータ73が採用された。電動機タイプは、階段昇降機の仕様に合わせて、交流、直流、バッテリー駆動などを採用できることは、言うまでもない。
【0063】
走行動力出力軸70と駆動スプロケット軸103(
図17参照)を接続するカップリングの軸合わせの便を図って、走行動力出力軸70の位置が調整可能とされた。走行動力出力軸の高さは、軸受ユニット支持台71の取り付けナットの位置により調整される。水平方向の位置は、走行動力ユニット取付基盤33に設けた走行動力ユニット取付穴34(
図7参照)を長穴として、組立調整可能とされた。無励磁作動型電磁ブレーキ74が、ブレーキ付ギヤードモータ73のギヤボックスの万一の破損事故対策を主目的として、設けられている。
【0064】
走行動力出力軸70の回転方向、回転速度および回転数を計測するために、溝付円盤75が、走行動力出力軸70に取り付けられている。溝を検出する2個のセンサー76a、76bが、その出力が90度の位相差となるように取り付けられている。溝付円盤75と2個のセンサー76a、76bは、エンコーダーを構成している。検出パルスの計数が、停止位置制御に利用出来る。出力軸の回転方向と回転速度の計測により、ギヤボックス破損による門型昇降体の落下事故が検出できる。その場合、無励磁作動型電磁ブレーキ74を作動させて落下事故を回避することができる。
【0065】
図12は、制御基盤80に取り付けられた制御機器の斜視図である。配線類は図示されていない。電源が接続される主電磁接触機81、走行動力用のブレーキ付ギヤードモータを制御する電磁接触機82、無励磁作動型電磁ブレーキを制御する電磁接触機83、昇降踏板の左側を昇降駆動するブレーキ付ギヤードモータを制御する電磁接触機84、昇降踏板の右側を昇降駆動するブレーキ付ギヤードモータを制御する電磁接触機85、走行動力用ブレーキ付ギヤードモータのブレーキ電源用整流器86、無励磁作動型電磁ブレーキの電源用整流器87、昇降踏板の左側を昇降駆動するブレーキ付ギヤードモータのブレーキ電源用整流器88、昇降踏板の右側を昇降駆動するブレーキ付ギヤードモータのブレーキ電源用整流器89、フットスイッチの入り切り信号を制御器に入力するためのリレー90、補助リレー91、プログラマブルロジックコントローラー92、端子台とヒューズが、制御基盤に取り付けられている。
【0066】
図13は、
図12に図示された制御基盤80を裏面から見た斜視図である。配線類は、図示されていない。単相入力三相出力インバーター93、インバーター用リアクター94が、インバーター用制御基盤95に取り付けられている。インバーター及びインバーター用リアクターをインバーター用制御基盤95に取り付けたのは、連結構造体のフレーム30への組み込み作業を考慮したためである。
【0067】
図14は、走行動力ユニット(
図11参照)と制御機器(
図12,
図13参照)が、連結構造体のフレーム30に取り付けられた状態を示した斜視図である。配線類は図示されていない。
図15は、
図14とは視点を変えて見た斜視図である。単相入力三相出力インバーター93、インバーター用リアクター94は、走行動力出力軸70の上に配置されている。ブレーキ抵抗96が、連結構造体のフレーム30に直接に取り付けられている。
【0068】
以下に、脚構造体に備えられた門型昇降体の走行機構について述べる。
左右の脚構造体に備えられた走行機構は、互いに鏡像の関係になっているので、右側の脚構造体に備えられた走行機構について説明する。
図16は、右側の脚構造体のフレーム28r(
図7参照)に取り付けられた走行機構の斜視図である。
図17は、
図16とは視点を変えて見た斜視図である。説明に関与しない部材は、図の煩雑さを避けるために図示されていない。
図6も参照下さい。
【0069】
図18は、
図16の上基盤21rの部分拡大図である。
図19は
図17の上基盤21rの部分拡大図である。駆動スプロケット102が、駆動スプロケット軸103に取り付けられている。駆動スプロケット102及びチェーンループ100は、連結柱22rを構成する2本の柱が作る間隙に配置されている。駆動スプロケット軸103の軸受ハウジング101が、上基盤21rを貫通して取り付けられている。駆動スプロケット軸103は、走行動力ユニットの走行動力出力軸70(
図11参照)と図示されていないカップリングを介して結合される。
【0070】
図20は、
図16の下基盤23rの部分拡大図である。被動スプロケット105が、被動スプロケット軸106に取り付けられている。ピンギヤスプロケット111が、ピンギャスプロケット軸110に取り付けられている。
【0071】
図21は、
図17の下基盤23rの部分拡大図である。被動スプロケット軸106の軸受ハウジング104が、下基盤23rを貫通して取り付けられている。駆動歯車107が、被動スプロケット軸106に取り付けられている。被動歯車109が、ピンギヤスプロケット軸110に取り付けられている。ピンギヤスプロケット軸110の軸受ハウジング108(
図8,
図24参照)は、下基盤23rを貫通して取り付けられている。
【0072】
尚、配線受け115(
図17参照)に纏められた配線は、連結柱22rの柱の中を通して上基盤21rに引き出される。端子台117a、117b、117cが、引き出された配線の中継用に備えられている(
図18参照)。
【0073】
駆動スプロケット102が、チェーンループ100を回すと、被動スプロケット105が、回転する。これにより、被動スプロケット軸106に取り付けられている駆動歯車107が回転する。駆動歯車107が回転すると、駆動歯車107と噛み合っている被動歯車109が、回転する。被動歯車109が回転すると、ピンギヤスプロケット軸に取り付けられているピンギヤスプロケット111が回転して、門型昇降体が走行する。
【0074】
上記したチェーンループ100,被動スプロケット105、軸受ハウジング104,駆動歯車107、被動歯車109、軸受ハウジング108,ピンギヤスプロケット111の配置は、次の要求を満たすために工夫された。
(1)レールは、できるだけ階段踏板の端に設置して、通常歩行の妨げとならないこと。
(2)門型昇降体の左右の脚構造体の間隔は、出来るだけ広くすること。
レールをできるだけ階段踏板の端に設置することは、即ち、左右の走行駆動輪の間隔をできるだけ広げることに他ならない。左右の脚構造体の間隔をできるだけ広げるには、脚構造体の厚さを薄くすることが必要である。特に、門型昇降体の利用者の上半身に当たる部分の厚さを薄くすることが必要である。
【0075】
例えば、走行動力伝達のチェーンループで直接に走行駆動輪を駆動する場合を想定すると以下の不都合が生じる。
(イ)チェーンループを走行駆動輪の内側に配置すると、左右のチェーンループの間隔が、左右の走行駆動輪の間隔より狭くなる。このため、左右の脚構造体の間隔も狭くなり上記の(2)が満足できない。
(ロ)チェーンループを走行駆動輪の外側に配置すると、左右の走行駆動輪の間隔が狭くなる。即ち、左右のレールの間隔が狭くなり、上記の(1)が満足できない。
(ハ)チェーンループを走行駆動輪の内側、例えば下基盤23の昇降踏板側に配置すると、昇降踏板の昇降機構との干渉防止対策が追加で必要になりで、上記の(2)の達成がさらに困難になる。
【0076】
図16,
図17に示した様に、軸受ハウジング104と108が下基盤23rを貫通して配置された機構は、上記の不都合を回避する効果がある。即ち、走行動力伝達のチェーンループ100が、走行駆動輪であるピンギヤスプロケット111のほぼ真上に配置されている。これにより、上記の(1)、(2)の要求が満足された。走行駆動機構と昇降踏板の昇降機構との干渉防止の効果も認められた。
【0077】
以下に、チェーンループ100に設けられたチェーンテンショナーについて述べる。
門型昇降体に作用する重力により、張力がチェーンループ100に常に作用している。
図20にて、チェーンループ100の右側が、門型昇降体の上昇降下の走行方向に拘わらず、常に張り側になっている。チェーンテンショナーは、チェーンループ100のたるみ側である左側に設けられた。チェーンループの配置が垂直配置であるため、チェーンテンショナーの設計に配慮がされた。
【0078】
図22は、右側の脚フレームに設けられたチェーンテンショナー機構の斜視図である。被動スプロケット105とアイドラースプロケット122の間に張られたチェーンを、回転腕121rの先に取り付けたアイドラースプロケット123で押し込む方式のチェーンテンショナーが考案された。狭い空間を活用して、チェーンの伸びを吸収するのに有効な方式である。
【0079】
回転腕の駆動源に引っ張りばねの採用が検討された。回転腕を引っ張りばねで駆動する方式では、回転腕がチェーンの伸びに従って回転すると、駆動トルクが減衰する。そこで、回転腕を回すトルクの減衰の軽減が図られた。即ち、引っ張りばねが、別途に設けられた駆動腕を駆動する方式である。回転腕と駆動腕は、別途に設けられた駆動リンクで接続される。これにより、駆動トルクの伝達が制御されて、回転腕を回すトルクの減衰が軽減された。
【0080】
チェーンテンショナーの部品構成は、以下である。下基盤23rに固定された支軸120は、回転腕121r及びアイドラースプロケット122の回転軸である。回転腕121rは、ベルクランク形状で、一方の腕の先にアイドラースプロケット123が装着される。他方の腕に駆動リンク124が接続される。下基盤23rに固定された支軸125は、駆動腕126rの回転軸である。駆動腕126rはベルクランク形状で、一方の腕は、接続部材127を介して引張ばね128に接続される。他方の腕は、駆動リンク124に接続される。チェーン伸びセンサー129rが、駆動腕126rを検知して、チェーンの伸びが設定値に達したことを検出する。アイドラースプロケット130が、チェーンループ100と他の部品の干渉を防ぐために設けられている。
【0081】
回転腕121rを押す駆動リンク124に作用する力について考察する。引張ばね128の中心を通る線に支軸125の中心から下ろした垂線の長さは、駆動腕126rが回転すると増加する。即ち、駆動腕126rに作用するトルクは、駆動腕126rの回転による引張ばね128の張力の減衰ほどには、減衰しない。
【0082】
駆動腕126rが回転すると、駆動リンク124の二つのピンの中心を通る線に支軸125の中心から下ろした垂線の長さが、減少する。即ち、駆動腕126rに作用するトルクに対抗して発生する駆動リンク124を押す力は、垂線の長さが一定として計算した場合程には減少しない事が分かる。
【0083】
一方、支軸120の中心から駆動リンク124の二つのピンの中心を通る線に下ろした垂線の長さは、駆動腕126rが回転すると増加する。これによって、回転腕121rを回すトルクの減衰が、軽減される。その結果、チェーンの伸びに従って低下するチェーン張力の低下を軽減する効果がある。
【0084】
以下に、機械式非常ブレーキ機構について述べる。
図23は、右側の脚構造体に備えられた走行機構で、下基盤23rに設けられた部分を昇降踏板の側から見た平面図である。駆動歯車107は、ピンギヤスプロケット111(
図20参照)を駆動する被動歯車109と噛み合う。駆動歯車107は、同時に、超過速度検出器140を駆動するための第一増速歯車141と噛み合う。第一増速歯車141は、第二増速歯車142と噛み合う。第二増速歯車142と第三増速歯車143は、一体となっている。第三増速歯車143は、超過速度検出器140の駆動歯車147(
図28参照)と噛み合う。
【0085】
図24は、
図23の切断線A、Bでの断面の説明図である。非常ブレーキ機構が、下基盤23rと被動歯車109の間に配置されている。スプラグ160のばね162(
図26参照)は、図示されていない。台車基盤40rと下基盤23rは、ピンギヤスプロケット軸の軸受ハウジング108(
図8参照)のフランジとブレーキベース163に挟まれて、ボルト164で締められている。ピンギヤスプロケット軸の軸受ハウジング108は、台車基盤40rと下基盤23rとの取り付け角度調整の軸でもある。ブレーキベース163と下基盤23rの相対位置は、回り止めピン165で固定されている。
【0086】
図25は、非常ブレーキ機構の構成を分解して説明した斜視図である。非常ブレーキ機構は、門型昇降体の落下走行状態で作動する。
図25の(a)は、ブレーキベース163の図である。スプラグ160が、環状部分の内面166に接触する。
図25の(b)は、環状に配置されたスプラグ160とスプラグ軸161とばね162の図である。スプラグ軸161に留められたスプラグ160とばね162の拡大図が、
図26に示されている。スプラグ軸161の直径は、スプラグ160に設けられた軸穴径より小さく、スプラグ160が、ブレーキベースの環状部分の内面166とブレーキドラムの外輪面169に同時に接触することを妨げない。ばね162は、スプラグ160がブレーキベースの内面166とブレーキドラムの外輪面169の双方に接触するようにスプラグ160を押す。
【0087】
図25の(c)は、ブレーキドラムの図である。ブレーキドラム168は、ピンギヤスプロケット軸110(
図27参照)に取り付けられる。非常ブレーキが作動すると、スプラグ160が、ブレーキドラムの外輪面169とブレーキベースの環状部分の内面166に同時に接触して、ブレーキドラムの回転を止める。
図25の(d)は、スプラグ軸161の一端を支持する軸穴171を設けた蓋170の図である。スプラグ軸161の他端は、ブレーキベース163の軸穴167に固定される。蓋170は、ブレーキベース163に固定される。
【0088】
図25の(e)は、スプラグ引き留め環172rと掛け金174と引張ばね175の図である。スプラグ引き留め環172rは、スプラグ160の回転を規制する鉤173を備えている。スプラグ引き留め環172rがスプラグ160を鉤173に引っ掛けて、スプラグ160を押すばね162の力に抗して回転すると、スプラグ160とブレーキドラムの外輪面169の接触が外れる。掛け金174は、スプラグ引き留め環172rを、スプラグ160とブレーキドラムの外輪面169の接触が外れた回転位置に保持する。引張ばね175は、掛け金174が外された場合に、スプラグ引き留め環172rの回転を速やかにすると共に回転後のスプラグ引き留め環172rの位置を保持する。
図25の(f)は、ブレーキカバー176の図である。スプラグ引き留め環172rは、ブレーキカバー176とスプラグ軸の一端を支持する蓋170が作る間隙に配置されている。
【0089】
図27は、右側の下基盤23rに設けられた走行機構を、昇降踏板の側から見た斜視図である。非常ブレーキの待機状態を説明するために、被動歯車109(
図23、
図24参照)とブレーキカバー176(
図24,
図25参照)を外した説明図である。超過速度検出器140(
図28参照)の増速機構も示されている。駆動歯車107は、超過速度検出器を駆動するための第一増速歯車141とも噛み合っている。超過速度検出器140が作動すると、掛け金174が、ハンマー155(
図29,
図30参照)の衝撃により外される。
【0090】
掛け金174が外れると、スプラグ引き留め環172rは、スプラグ160を押すばね162の抗力及び引っ張りばね175の引っ張り力により回される。スプラグ160は、ばね162に押されてブレーキドラムの外輪面169とブレーキベースの環状部分の内面166の双方に接触してブレーキドラム168の回転を止める。ブレーキドラム168は、ピンギヤスプロケット軸110に装着されている。これにより、ピンギヤスプロケット軸110に装着されているピンギヤスプロケット111の回転が止まって、門型昇降体が停止する。
【0091】
スプラグを適用した上記の機械式の非常ブレーキ機構は、走行駆動輪であるピンギヤスプロケットの駆動軸に直接作用する。狭い空間に組み込むのに好適である。
【0092】
以下に、掛け金174を外す機械式の超過速度検出器140について述べる。
図28は、取り付けベース154にユニットとして組み立てられた超過速度検出器140の斜視図である。駆動歯車147が、第三増速歯車143(
図27参照)と噛み合う。ケーシングの蓋144が、ケーシングの本体145に留めねじ134で留められている。軸158が摺動する溝159が、ケーシングの蓋144及びケーシングの本体145に設けられている。
【0093】
図29は、待機状態に在る超過速度検出器140の内部構造を示した斜視図である。ケーシングの蓋144は、外されている。ハンマー155は、ケーシングの本体145の内部に設けた溝に案内されて、ケーシングの回転軸を含む面とその面に垂直な面の交線に沿って摺動する。ハンマー155の柄に相当する部分の中程に、リンク156が対称に軸留めされている。リンク156を貫通する軸158は、ハンマー155の動きに従って溝159を摺動する。溝159は、ケーシングの回転軸を含む面に平行で且つハンマー155の摺動方向に直交する面に設けられている。
【0094】
図30は、超過速度検出器の待機状態での、ハンマー155、リンク156、リンク156を貫通する軸158及び両側の軸158に引き留め張られた引っ張りばね157の図である。リンク156は、先端が軸である特殊ねじ135でハンマー155に軸留めされている。引っ張りばね157は、ハンマー155の柄に相当する部分の中程でリンク156が対称に軸留めされている部分に設けられた開口を貫通して、リンク156のフォーク状の間隙に配置されている。
【0095】
ハンマー155は、待機状態では
図29に示されている様に、両側の軸158の間に張られた引っ張りばね157の張力により待機位置に引き留められている。ケーシングの蓋144及び本体145とそれに組み込まれたハンマー155とリンク156およびケーシングの溝159を摺動する両側の軸158は、トグル機構を構成している。これにより、引っ張りばね157の張力によるハンマー155を待機位置に引き留める力は、待機位置で最大である。
【0096】
ケーシングの回転速度が上昇してハンマー155に作用する遠心力が、ハンマー155を待機位置に引き留める力を越えると、ハンマー155は、ケーシングから飛び出す方向に動き出す。ハンマー155が摺動してトグル機構の死点に至ると引き留め力は零になり、以後、ばね157の張力は、ハンマー155を突き出す方向に作用する。
【0097】
上記により、超過速度検出器の動作の安定が望める。引っ張りばね157をハンマー155の開口部を貫通して且つフォーク状に形成したリンク156の間隙に配置したことで、超過速度検出器を小型に出来た。これにより、超過速度検出器140を下基盤の昇降踏板側に組み込むことが可能になった。
【0098】
図31は、駆動歯車147とケーシングの本体145を、ベアリング149の外輪に固定する方法の説明図である。ベアリング149が、駆動歯車147に挿入される。ベアリング149の外輪が、駆動歯車147のフランジ148で止められる。環状の出張部146が、ケーシングの本体145に図示の如く設けられている。駆動歯車147が、駆動歯車に設けたフランジ148とケーシングの環状の出張部146にベアリング149の外輪を挟んで、ケーシングの本体145にねじ留めされる。
【0099】
図32は、ベアリング149の内輪を、シャフト150に固定する方法の説明図である。シャフト150は、上部にベアリング内輪を留めるフランジ151を有する。ベース152は、上部にベアリング149の内輪に当たる環状の出張部153を有する。ベアリング149の内輪が、シャフトのフランジ151とベースの出張部153に挟まれて、取り付けベース154に固定される。
【0100】
非常ブレーキの掛け金を外す別の方式の一例として、門型昇降体の落下時の加速度を検出するデバイスを使用して、制御装置を介して、ソレノイドを作動させる方式が考えられる。上記の機械式は、制御装置から独立して動作する特徴が在る。万が一の制御装置の不作動に対応出来る効果がある。
【0101】
以下に、傾斜角度の異なる階段に対応するために台車が設けられたこと及び台車の取り付け角度調整保持機構について述べる。
階段昇降機を設置する階段の傾斜角度は、階段毎に異なることが想定される。従って、走行車輪を直接に下基盤に取り付ける設計が採用されると、下基盤は階段毎に設計されることになる。そこで、台車基盤を設けて走行車輪を取り付けて台車とし、下基盤と台車基盤の取り付け角度を階段傾斜角度に合わせて組立調整する設計が採用された。
【0102】
走行駆動軌道と走行駆動輪の噛み合いを一定に保つには、走行駆動輪と走行車輪の相対位置を一定に保つことが重要である。走行駆動輪と走行車輪を台車基盤に取り付けることで、階段傾斜角度に拘わらずに、これらの相対位置を一定に保てる利点がある。走行駆動輪に走行動力を伝達する観点からは、下基盤での走行動力の伝達機構が階段の傾斜角度の影響を受けないことが望ましい。
【0103】
上記により、走行駆動輪の軸受ハウジングを下基盤と台車基盤の回転軸として、下基盤と台車基盤を締結する設計が採用された。台車の取り付け角度調整保持機構を右側の脚構造体を例に説明する。
図33は、下基盤23rに取り付けられた台車を示す斜視図である。台車基盤40rは、ピンギヤスプロケット軸110の軸受ハウジング108(
図8、
図24参照)を介して下基盤23rに取り付けられている。台車基盤取り付け角度固定ロッド180が、台車基盤40rと下基盤23rの取り付け角度を調整し且つ固定するために設けられている。補強ボルト181及び182が、下基盤23rと台車基盤40rの取り付けを補強している。
【0104】
図34は、
図33に図示の台車を昇降踏板の側から見た斜視図である。台車基盤取り付け角度調整用の弧状の溝183及び184が、下基盤23rに設けられている。補強ボルト181及び182は、これらの溝を通して取り付けられている。以上により、階段の傾斜角度の影響を受けることなく、走行動力が走行駆動輪に伝達される。下基盤と台車基盤の取り付け角度が台車基盤取り付け角度固定ロッド180の長さの調整で決定固定される。
【0105】
以下に、脚構造体に備えられた昇降踏板の昇降機構について述べる。
図35は、左右の脚フレームに取り付けられている昇降機構と昇降踏板を示している。その他の部材は、図の煩雑さを避けるために図示されていない。左右の昇降機構は互いに鏡像の関係にあるので、右側の昇降機構について説明する。
【0106】
昇降動力源のブレーキ付きギヤードモータ190を取り付けた支持基盤191(左側の図参照)が、上基盤21rに取り付けられている。ブレーキ付きギヤードモータ190の出力軸は、ユニバーサルジョイント192を介してコンロッド193と接続されている。コンロッド193の他端は、ユニバーサルジョイント194を介してねじ棒195と接続されている。
【0107】
ねじ棒195は、下基盤23rの外側に取り付けられた上軸受196と下軸受197により支持されている。ねじ棒195に、ナット198が装着されている。ねじ棒195の回転により、ナット198が昇降する。ガイドレール199(左側の図参照)が、下基盤23rの内側に、2本平行に取り付けられている。スライダー200は、ガイドレール199を走行する。踏板昇降案内盤203rは、スライダー200を備え、ガイドレール199に沿って昇降する。踏板昇降案内盤203rは、連結手段を介して昇降踏板1を支持している。
【0108】
図36は、踏板昇降案内盤203rの駆動機構の説明図である。下基盤23rは、駆動機構を見易くするために図示されていない。この為、ガイドレール199、踏板昇降案内盤等が透視された図になっている。フック201rに取り付けられているセンサー、架台204rに取り付けられているセンサーターゲット等は、フック201rと架台204rの相互関係を見易くするために図示されていない。
【0109】
フック201rが、踏板昇降案内盤203rに取り付けられている。架台204rが、ナット198に取り付けられている。架台204rの側面と対向するフックの面202は、互いに摺動する。これにより、ナット198が、ねじ棒195の回転と共に回転することが防止される。摺動外れ防止ブロック205が、踏板昇降案内盤203rに取り付けられている。摺動外れ防止ブロック205は、門型昇降体の輸送中及び設置組立中に、架台204rの側面とフックの面202の摺動が外れることを防止する。
【0110】
架台204rが、踏板昇降案内盤203rを押し上げる場合について説明する。ねじ棒195が、ナット198が上昇する方向に回される。架台204rがフック201rを押し上げて、踏板昇降案内盤203rが上昇する。ねじ棒195の回転は、昇降踏板1が門型昇降体の走行に適した位置に到達した時点で停止される。
【0111】
踏板昇降案内盤203rの降下停止過程について説明する。ねじ棒195が、ナット198が降下する方向に回される。架台204rが、フック201rを載せたまま降下する。昇降踏板1が階段踏板或いは床に着地すると、昇降踏板1に連結されている踏板昇降案内盤203rが、降下を停止する。即ち、踏板昇降案内盤203rに取り付けられているフック201rが、降下を停止する。
【0112】
ねじ棒195の回転は、
図37に説明する機構により停止される。センサー206rが、フック201rに取り付けられている。センサーコードは、ケーブルチェーン207に保護されて下基盤23rへ引き出されている。センサーターゲット208が、架台204rに取り付けられている。フック201rが降下を停止した後、ねじ棒195が回転を続けると、架台204rが下がり、センサー206rが、センサーターゲット208の外れを検出する。ねじ棒195の回転が、この検出信号を利用して停止される。尚、センサー206rをマイクロスイッチに、センサーターゲット208をアクチュエーターに置き換えることが出来る。
【0113】
図36と
図37で説明したように、フック201は、架台204によって押し上げられる。フックと架台が一体となって降下中に、フックが降下を停止すると、フックと架台の間に間隙が発生する。この間隙を検出して、フックの降下が停止したことを検出する上記の方式は、以下の利点がある。
(1)架台は、フックを引き下げる力を発生しないので、昇降踏板の着地時に、昇降踏板の昇降機構に異常な応力を発生しない。
(2)フックは、垂直に昇降する踏板昇降案内盤に取り付けられている。架台と当たるフックの面209(
図36参照)は、ねじ棒の中心線を含む面と架台の表面に平行な面の交線上に設定されている。ねじ棒を曲げる力の発生を防ぐ効果がある。但し、座屈応力は除く。
(3)万一、階段踏板上に障害物が在って、降下中の昇降踏板がその障害物に乗り上げた場合、その障害物が昇降踏板の昇降機構の駆動力によって圧迫されることがなく、ねじ棒の回転が停止される。
(4)門型昇降体の走行停止位置がずれると、踏板昇降案内盤の降下停止位置がずれる。上記の検出方式は、この走行停止位置ずれの影響を受けない。
【0114】
上記の利点は、昇降踏板の昇降機構に別方式を採用した場合を想定すると、より明確になる。例えば、ねじ棒の回転により昇降するナットと踏板昇降案内盤を一体に結合した方式では、昇降踏板の着地検出に別方式が必要である。踏板昇降案内盤の降下停止位置が、脚フレームの下基盤と踏板昇降案内盤との相対位置関係で固定されていると、門型昇降体の走行停止位置がずれた場合、昇降踏板の降下不足、あるいは、昇降踏板が階段踏板を圧迫して、昇降踏板の昇降機構に圧縮応力の発生を生じる。昇降踏板の下面に着地センサーを設ける案では、センサーの配置やセンサー出力の取り出しが面倒になる。架台にフックを乗せて昇降する方式は、これらの不都合を回避している。
【0115】
図38は、踏板昇降案内盤の上昇停止位置の検出機構の説明図である。踏板昇降案内盤の上昇停止位置は、門型昇降体がレールに沿って走行するときの、踏板昇降案内盤の下基盤に対する相対位置である。センサー210rが、下基盤23rに固定してある。センサーターゲット211rが、踏板昇降案内盤203rに、位置調整が可能となるように、抑え板212を介してねじ213で固定されている。センサー210rがセンサーターゲット211rを検出すると、昇降動力源のブレーキ付きギヤードモータ190が停止される。万一、門型昇降体の走行中にセンサーターゲット210rの検出が外れたら、門型昇降体の走行が停止される。
【0116】
センサーターゲット211rの位置調整は、次の手順で出来る。下基盤23rに取り付けられた内側カバー(
図1の4eに対応する右側のカバー)を外す。センサーターゲット211rを固定したねじ213が、現れる。ねじ213を緩めて、センサーターゲット211rの位置を調整する。門型昇降体と周囲の壁の間隔が狭い場合、昇降踏板の側から作業できる利点がある。
【0117】
踏板昇降案内盤の上昇停止位置は、次のようにして決めることが出来る。門型昇降体が上階の停止位置に到着した時、昇降踏板は、上階床の延長である階段踏板と同じ高さとする。門型昇降体の上階での走行停止位置は、階段踏板と昇降踏板との水平投影面上での間隙寸法を考慮して決められる。門型昇降体が決定した停止位置に止められる。昇降踏板が上階の床と同じ高さになるように、踏板昇降案内盤の位置が決められる。その位置が上昇停止位置となるように、センサーターゲットの位置が調整される。
【0118】
以下に、踏板昇降案内盤と昇降踏板の連結手段について述べる。
門型昇降体が階段の上階で待機している間、昇降踏板は階段踏板に着地している。階段を通行する人が、階段昇降機を使用せずに階段を上り下りする場合、階段踏板に着地している昇降踏板は、階段踏板からはみ出さないことが望まれる。上階の床に立つ利用者が、門型昇降体を始動すると、昇降踏板が、上階の床の高さに上昇する。上階の床と昇降踏板が同じ高さになっていることが、利用者のつまずきを防止するために望ましい。同時に、昇降踏板と階段踏板の干渉は、防止しなければならない。
【0119】
昇降踏板と踏板昇降案内盤の連結手段について、可動式と固定式の比較を、
図39と
図40に示した。次の2条件が、考慮された。
(1)上階で利用者が乗降するときの昇降踏板の高さは、上階の床の高さである。
(2)階段踏板に着地した昇降踏板は、階段踏板からはみ出さない。
条件(1)に基づいて、昇降踏板と階段踏板の間隙221gが設定された。階段には、鼻の出が設けられていると想定した。昇降踏板が、待機位置から門型昇降体の走行時の位置へ上昇する場合について比較した。昇降踏板の動きを、矢印で模式的に示した。
【0120】
図39は、上階での昇降踏板の動きの比較を、利用者の足の模擬図と共に示した説明図である。可動式の昇降踏板224の動きを
図39の(a)に示した。固定式の昇降踏板225の動きを
図39の(b)に示した。可動式の昇降踏板の奥行き寸法は、階段の踏面と鼻の出を合算した値である。一方、固定式の昇降踏板の奥行き寸法は、階段の踏面から間隙221gを減算した値である。昇降踏板の奥行き寸法が、可動式のそれと比較して狭い。利用者の足先が、昇降踏板225から大きくはみ出して、乗りずらくなる恐れがある。
【0121】
図40は、下階での昇降踏板の動きの比較を、利用者の足の模擬図と共に示した説明図である。可動式の場合の昇降踏板224の動きを
図40の(a)に示した。利用者のつま先は、図示のように階段の鼻の出の下へ入ることが通常であろう。昇降踏板224は、図示のように下階側へせり出しながら上昇する。このため、利用者のつま先は、階段の鼻の出と干渉しない。固定式の場合の昇降踏板225の動きを
図40の(b)に示した。固定式の場合、利用者のつま先が、階段の鼻の出に引っ掛かる恐れが多分にある。階段の鼻の出を埋めて危険防止をすると、利用者の踵が、昇降踏板225から大きくはみ出して、乗りずらくなる恐れがある。
【0122】
本実施例は、可動式の連結手段を採用して、固定式の短所を避けた。踏板昇降案内盤と昇降踏板の連結手段として、平行リンクを適用した連結機構が採用された。左右の連結機構は、互いに鏡像の関係にある。
図41、
図42及び
図43を使用して、昇降踏板の動きを説明する。昇降踏板、平行リンク、踏板昇降案内盤の動きを説明するために、説明に無関係な部分は、レールを含めて、図示していない。尚、図中、階段の鼻の出と蹴込板が創る空間に三角柱形状の部材232が、取り付けられている。これは、不測の事態に備えた、利用者の足先保護の一例である。
【0123】
図41は、門型昇降体が、下階の停止位置に達して降下走行を停止した状態を示している。右側の保護カバー5rに対応する左側のカバー5eは、左側の平行リンクを図示するために外してある。左側の踏板吊下支持基盤233eが、昇降踏板1の左端部に取り付けられている。同様に、右側の踏板吊下支持基盤233rが、昇降踏板1の右端部に取り付けられている。左側の踏板昇降案内盤203eと踏板吊下支持基盤233eが、平行リンク片231a、231bで連結されている。右側も同様に、踏板昇降案内盤203rと踏板吊下支持基盤233rが、平行リンク片231a、231bで連結されている。平行リンクの中程に保護カバー5の支持部材234が取り付けられている。
【0124】
踏板昇降案内盤203に平行リンクの振れを規制する振れ止め235が設けられている。平行リンク片231aは、昇降踏板1に作用する重力によりトルクが生じている位置に、振れ止め235で回転を止められている。これにより、昇降踏板1の下階側への振れが止められると共に、位置の安定が図られている。ガイドスロープ10e、10rが、階段踏板に設けられている。カムフォロワー238が、左右の踏板吊下支持基盤233e及び233rに設けられている。
【0125】
図42は、左右のねじ棒195の回転により踏板昇降案内盤203が降下して、左側のカムフォロワー238は左側のガイドスロープ10eに、右側のカムフォロワー238は右側のガイドスロープ10rに接した時点の状態を図示している。平行リンク片231aは、振れ止め235により回転を止められている。昇降踏板1は、
図41の状態から
図42の状態に降下している。
【0126】
左右のねじ棒195が回転して、踏板昇降案内盤203が
図42の位置からさらに降下すると、左右のカムフォロワー238がそれぞれ接しているガイドスロープ10e及び10rを転がりながら降下する。踏板昇降案内盤203の降下に連れて、昇降踏板1は、カムフォロワー238に案内されて階段の蹴込み板方向へせり出しながら降下する。昇降踏板1が、階段踏板に着地すると平行リンクを介して踏板昇降案内盤203が降下を停止する。これにより、
図37で説明したように、ねじ棒195の回転が停止される。
【0127】
図43は、昇降踏板1が階段踏板に着地した状態を示している。昇降踏板1が階段踏板に着地したときの階段踏板と昇降踏板1の相対位置関係は、ガイドスロープ10と踏板吊下支持基盤233に設けたカムフォロワー238の相対位置関係で決まる。例えば、門型昇降体の走行停止位置に誤差が発生して、
図42で説明したガイドスロープ10とカムフォロワー238の接触位置が変化しても、昇降踏板1がカムフォロワー238に案内されて階段踏板に着地する位置は不変である。昇降踏板1の着地位置が一定である効果がある。
【0128】
昇降踏板1の幅が狭い場合、利用者を乗せた昇降踏板の負荷は、左右の踏板吊下支持基盤233にほぼ均等に分担されると想定された。それ故、左右のねじ棒195は、それぞれ独立にブレーキ付きギヤードモータ190で駆動される方式とされた。左右の負荷の平衡が大きく破れる場合は、駆動装置の同期を取ることが考えられる。
【0129】
以下に、操作手摺の機構について、右側の上階側の操作手摺3rを例に述べる。
上階側の機構と下階側の機構は、互いに鏡像の関係にある。
図1ないし
図6の2e、2r、3e、3rを参照下さい。
【0130】
図44は、下部の支持機構を分解図として示した説明図である。下ベース251が、取付補助具116(
図16参照)を介して、脚フレームの下基盤23rに取り付けられている。下シャフト252が、下ベース251に設けられた軸穴に樹脂製ベアリング253を介して、嵌められている。
【0131】
回り止め棒254が、下シャフト252の上部に挿入されている。ストッパー255、256と回り止め棒254が、下シャフト252の回転角度を規制する。下シャフト252の下部は、下ベース251の下側に出ている。戻しばね257bが、下シャフト252の下部に装着されている。戻しばね機構については、
図45の戻しばね257aを参照下さい。門型昇降体の待機中、下シャフト252の回転は、戻しばね257bに押されて、図示の位置に止まっている。
【0132】
脚フレームの下基盤23rのカバー258は、下ベース251に取り付けられる。回り止め棒254とストッパー255、256は、カバー258に設けられた空隙に入る。ソケット259は、下シャフト252に装着される。ソケットの切り欠き260は、回り止め棒254に掛かる。下シャフト252に装着されたオ−リング261は、ソケット259と下シャフト252の遊びを止める。支持腕262aが、ソケット259に取り付けられている。操作手摺3rは、支持腕262aに支持されている。
【0133】
図45は、上部の支持機構とセンサー機構の説明図である。上部の支持機構は、下部の支持機構の鏡像である機構に、センサーターゲット263とその取り付け部分、センサー264a及びセンサー支持具265が追加された構成となっている。上シャフト266と下シャフト252は、一直線上に配置されている。利用者が、操作手摺を体に引き寄せるごとくに操作すると、センサーターゲット263が回転する。センサー264aが、センサーターゲット263の有無を検知して、信号を制御器に伝える。
【0134】
本実施例では、操作手摺のセンサー機構を各操作手摺の上部の支持機構に設けている。各操作手摺のセンサー機構は互いに独立しているので、操作の組み合わせで、異なる運転モードが構成出来る。
図46,
図47及び
図48は、操作手摺と昇降踏板を上から見た説明図である。利用者は、足の位置のみ図示されている。門型昇降体の走行方向が、矢印で示されている。
図46は、下階で待機している門型昇降体の操作手摺の待機位置を示している。それぞれの操作手摺は、戻しばねにより押されて、待機位置に止まっている。
【0135】
図47と
図48は、上階側或いは下階側の操作手摺の2本同時操作を必須とする運転モードの設定例を図示している。
図47は、門型昇降体が上階へ向けて走行中の操作手摺の位置を示している。上階側の左右の操作手摺3e、3rが、利用者により内側へ引き寄せられている。
図48は、門型昇降体が下階へ向けて走行中の操作手摺の位置を示している。下階側の左右の操作手摺2e、2rが、利用者により内側へ引き寄せられている。操作手摺を体に引き寄せるように操作することは、利用者の体勢保持に役立つので、階段昇降機の安全性が増すと考えられる。
【0136】
本実施例では、運転モードスイッチ6が、備えられている。
図1ないし
図6も参照下さい。例えば、家族の中に足腰の衰えた人がいると、低速度運転が望まれる場合が想定される。操作手摺2本同時操作を必須の運転条件として、その走行速度を低速に設定し、運転モードスイッチ6が操作された場合のみ、より高速の運転とすることが可能である。
【0137】
操作手摺1本操作を基本とする運転モードも設定できる。操作手摺1本操作でも或いは2本同時操作でも走行速度を同一に設定する。そして、この走行速度を基本速度とする。運転モードスイッチ6が操作された場合のみ、操作手摺2本同時操作を必須とする運転モードに切り替えて、その走行速度を基本速度より高速に設定する。片手が不自由な人でも運転できる様にする場合の設定例である。片手を自由にしておきたい場合の設定例でもある。
【0138】
例えば、家族の中に足腰の衰えた認知症の患者がいると、運転モードスイッチ6の使用が望ましくない場合が考えられる。患者が約束事を忘れて、運転モードスイッチ6を操作する恐れが想定される。そのような場合に備えて、運転モードスイッチ6を無効にする切替スイッチが設けられた。
【0139】
図49は、連結構造体を見上げた説明図である。モード選択無効切替スイッチ268、電源表示灯269、走行速度切替スイッチ270が備えられている。モード選択無効切替スイッチ268は、運転モードスイッチ6の信号を有効或いは無効に切り替えるスイッチである。走行速度切替スイッチ270は、走行速度の基準値を、低速運転、中速運転、高速運転のいずれかに選択して、その設定信号を制御器に送る。以上は、本実施例で想定した運転モードの設定例である。
【0140】
操作手摺の待機位置の別設定について述べる。下階から上階へ向かうときは、利用者が上階を向き操作手摺を体に引き寄せるように操作する。上階から下階へ向かうときは、利用者は下階を見下ろす向きに乗る。そこで、利用者の好みによっては、門型昇降体が降下する場合には、利用者が操作手摺を外側へ突張ることで操作する方式も考えられる。これは、操作手摺の待機位置と運転位置の設定を入れ替えることで達成できる。但し、待機位置で、下階側の操作手摺が、内側に張り出してくる。
【0141】
階段はその設置場所によって、仕様が異なることが想定される。階段昇降機を設置するにあたり、階段毎の取り付け設計を省略或いは軽減することは、コスト削減および納期短縮の利点が期待される。階段仕様の違いに幅広く対応できて、量産に適するレールシステムについて述べる。
【0142】
図50は、レールの設置状態の説明図である。昇降踏板の下階での着地位置が、階段の下から一段目の踏板の場合である。階段昇降機の階段外へのはみ出しを回避あるいは削減する効果が期待出来る。昇降踏板の下階での着地位置を下階床とする場合は、レールを階段一段分下方へ延長し、ガイドスロープ10e、10rを下階床に設置する。
【0143】
レールは、上部、中部、下部の3区間に分割して、それらを接続箇所280で接続している。
図51は、
図50で示したレールの上部区間の説明図である。
図52は、
図50で示したレールの下部区間の説明図である。上部区間及び下部区間のレールを標準品とすることで、量産によるコスト削減が期待される。中部区間のレールは、段階的に長さを変えた複数のレールを準備して、長さの異なる階段に対応することが有効と考えられる。レールを分割することで、狭い設置現場への搬入を容易にする効果が期待出来る。
【0144】
図53は、上部レールベース53、中部レールベース54、下部レールベース55の例の説明図である。
図9も参照下さい。
図54は、レール設置装置の部材の説明図である。レール固定用補助板51は、レールベースに取り付けられる。レール固定用基礎50は、階段踏板と階段に接続する床に適宜取り付けられる。リンク板52は、レール固定用補助板51とレール固定用基礎50を接続する。
【0145】
レール固定用補助板51には、レールベースに取り付けるためのねじ穴287、リンク板52を締結するためのボルト穴288、レールベースに装着されている締結具をよける為の穴289a、289bが設けられている。穴289a、289bは、レール固定用補助板51を表裏入れ替えて取り付けた場合に同じ位置になるように配置されている。ケーブルチェーンガイド12を取り付けるためのねじ穴290も設けられている。
【0146】
レールベースに設けられたレール固定用補助板51を取り付けるためのボルト穴291のピッチは、レール固定用補助板51に設けられたねじ穴287のレールベース長手方向の間隔である。レールベースに設けられた走行レールおよび内向き振れ止めレール(
図9参照)を取り付けるためのボルト穴は、レールベースにレール固定用補助板51を取り付けた場合に、レール固定用補助板51に設けられた締結具をよける為の穴289a、289bの位置に一致するように配置されている。
【0147】
図55は、レールを階段に設置する方法の説明図である。レール固定用補助板51は、レールベースに表裏の別なく取り付けられる。但し、レール固定用補助板51がその表裏を入れ替えて取り付けられると、リンク板52を締結するためのボルト穴288のレールベースの長手方向に測った位置がずれる。レールベースの長手方向に垂直に測ったボルト穴288の高さは不変である。ボルト穴288をレール固定用補助板51にこのように配置したことで、レール固定用補助板51をレールベースに取り付ける際に、取り付け位置の選択範囲が広がる効果がある。
【0148】
レール固定用補助板51の取り付け位置と向きは、レールベースと階段踏板の相対位置により決定される。レール固定用基礎50の位置は、レールベースに取り付けられたレール固定用補助板51と階段踏板あるいは床に置かれたレール固定用基礎50をリンク板52で接続することで決まる。本実施例では、レール固定用補助板51は、階段の内側から、低頭ねじ4本でレールベースに固定されている。レールは、2枚のリンク板52がレール固定用基礎50とレール固定用補助板51を挟んで接続することで、階段に固定されている。
【0149】
階段昇降機を介護に使用する場合の例について述べる。
図56は、介助者用スイッチの例の説明図である。プラグ300が、レセプタクル7(
図1ないし
図5参照)に接続される。介助者用スイッチ302は、ホイスト用押しボタン開閉器が適用出来る。ケーブル301は、4芯である。上げスイッチ線303、下げスイッチ線304、コモン線305及びプラグが接続されたことを検出するためのコモン線306である。介助者用スイッチが接続されると、階段昇降機の制御機能が、操作手摺から介助者用スイッチに移る。
【0150】
介助者が、門型昇降体の下階側に立ち、介助者用スイッチを操作しつつ、利用者を見守りながら階段を昇降する方式が計画された。門型昇降体の走行速度は、介助者の歩行速度以下に設定されるべきであろう。介助者用スイッチを使用すると、門型昇降体で荷物の搬送が可能となろう。
【0151】
階段昇降機の設置方法の例について以下に述べる。
設置作業は、レールを階段に設置することから始められる。
図50を参照下さい。その後、門型昇降体が、レールに装着される。門型昇降体は、レールから外れないように拘束されて走行する。この為、門型昇降体を、レール端から装着することが考えられる。但し、レール上端から装着する方法は、階段に接続する廊下等の天井高さが、制約となる恐れが考えられる。レール下端から装着する方法は、昇降踏板を下階の床に着地させる設定では、不可能になる恐れが考えられる。本実施例では走行駆動用軌道としてチェーンを、走行駆動輪としてピンギヤスプロケットを採用している。門型昇降体をレール端から装着するに当たっては、ピンギヤスプロケットの通過に支障となるチェーン端の支持装置を外すことが必要である。
【0152】
以下に、設置作業用架台を使用して、門型昇降体をレール下端に装着する方法の一例を述べる。
図57は、設置作業用架台の例を説明する斜視図である。パンタグラフ機構310により高さが調節出来るフレーム311が、上部に設けられている。ガイドレール312が、フレーム311上に取り付けられている。ガイドレール312に沿って移動する移動台313が設けられている。転倒防止腕314は、設置作業用架台の転倒を防止する。門型昇降体は、移動台313に載せられる。下部レールの走行レールとチェーン支持兼転倒防止レール(
図9参照)は、下部レールベースから外しておかれる。
【0153】
図58は、走行レールとチェーン支持兼転倒防止レールの仮支持装置の説明図である。左側の下部レールを例に、仮支持装置の適用方法を説明する。仮留用ブロック320が、下部走行レール56eとチェーン支持兼転倒防止レール57(
図9参照)の両端にねじ留めされる。仮留めされた2本のレールが、その間隙に走行車輪42(
図8参照)を挟み込む様に、左側の台車に取り付けられる。
【0154】
クランプ322は、門型昇降体の脚構造体の下部の前後のカバーに取り付けられる。支持腕323が、クランプ322に高さ調節可能に取り付けられる。支持枠324が、支持腕323の下部に取り付けられる。仮留ブロック320、321は、支持枠324の爪が嵌まる溝を備えている。仮留めブロック321が、上階側の支持枠324の爪がその溝に嵌まるように、上記の仮留めされたレールに両面テープで仮留される。仮留めされたレールは、仮留めブロックの溝と支持枠の爪が滑ることで長手方向に可動である。落下防止片325が、下方の仮留ブロック320に設けられている。
【0155】
図59は、チェーン牽引ジグの例である。走行レールとチェーン支持兼転倒防止レールをレールベース取り付けた後に、チェーン60が、図示のチェーン牽引ジグ326を使用して取り付けられる。
【0156】
図60は、昇降踏板を階段の下から一段目の踏板に着地させる階段昇降機の門型昇降体の設置作業例を図示している。設置作業は、以下の様に想定される。
(1)設置作業用架台の移動台313が、パンタグラフ機構310の上に配置される。
(2)脚構造体下部の内側カバー及び連結構造体のカバーが外された門型昇降体が、移動台313の上に置かれる。走行動力出力軸70(
図11参照)と駆動スプロケット軸103(
図17参照)のカップリングは、切り離されている。
(3)仮支持装置(
図58参照)が、門型昇降体に取り付けられる。上記の仮留めされたレールが、仮支持装置に取り付けられる。
(4)設置作業用架台が、図示の位置に設定される。
(5)門型昇降体は図示の位置に移動された後、パンタグラフ機構310を使用して高さ調整される。
(6)仮留めされた走行レールおよびチェーン支持兼転倒防止レールが、レールベースに固定される。
(7)仮支持装置が、外される。その後、チェーンが、チェーン牽引ジグを使用して取り付けられる。ピンギヤスプロケットは、チェーンの通過で回される。
(8)走行動力出力軸と駆動スプロケット軸のカップリングが接続される。
(9)設置作業用架台が外される。カバー及び給電装置が取り付けられる。